(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
主方向に沿って延び、主方向に垂直な平面において延びる補強断面(40)を有する主部分(30)を少なくとも備えている、自動車のドアの構造を補強するための補強要素(7)であって、補強断面(40)が、7つの隣接する枝部(42a、42b、42c、42d、42e、42f、42g)を備え、各枝部が異なる方向に延び、2つの連続する枝部が非ゼロの角度を形成し、少なくとも2つの前記非ゼロの角度が反対符号であり、
前記隣接する枝部が第1の枝部(42a)、第2の枝部(42b)、第3の枝部(42c)、第4の枝部(42d)、第5の枝部(42e)、第6の枝部(42f)、および第7の枝部(42g)を備え、前記第1の枝部(42a)が前記第2の枝部(42b)とともに第1の非ゼロの角度(αab)を形成し、前記第2の枝部(42b)が前記第3の枝部(42c)とともに第2の非ゼロの角度(αbc)を形成し、第3の枝部(42c)が第4の枝部(42d)とともに第3の非ゼロの角度(αcd)を形成し、第4の枝部(42d)が第5の枝部(42e)とともに第4の非ゼロの角度(αde)を形成し、第5の枝部(42e)が第6の枝部(42f)とともに第5の非ゼロの角度(αef)を形成し、第6の枝部(42f)が第7の枝部(42g)とともに第6の非ゼロの角度(αfg)を形成し、第1の非ゼロの角度(αab)と第2の非ゼロの角度(αbc)とが同じ符号であり、前記第3の非ゼロの角度(αcd)と第4の非ゼロの角度(αde)が、第1の非ゼロの角度(αab)と第2の非ゼロの角度(αbc)の符号と逆の符号であり、第5の非ゼロの角度(αef)と第6の非ゼロの角度(αfg)が、第1の非ゼロの角度(αab)と第2の非ゼロの角度(αbc)の符号と同じ符号であり、
第1の枝部(42a)と第2の枝部(42b)とが第1の弧状の連結部によってともに結合しており、第2の枝部(42b)と第3の枝部(42c)とが第2の弧状の連結部によってともに結合しており、前記第1の弧状の連結部の曲率半径と前記第2の弧状の連結部の曲率半径が、dを前記第1の枝部(42a)と前記第3の枝部(42c)との間の距離とする、5mmとd/2との間に含まれ、
第3の枝部(42c)と第4の枝部(42d)とが第3の弧状の連結部によってともに結合しており、第4の枝部(42d)と第5の枝部(42e)とが第4の弧状の連結部によってともに結合しており、第5の枝部(42e)と第6の枝部(42f)とが第5の弧状の連結部によってともに結合しており、第6の枝部(42f)と第7の枝部(42g)とが第6の弧状の連結部によってともに結合しており、
第1の枝部(42a)、第2の枝部(42b)、および第3の枝部(42c)がともに第1の方向に向けられた凹状カーブを形成し、第3の枝部(42c)、第4の枝部(42d)、および第5の枝部(42e)がともに、第1の方向とは反対側の第2の方向に向けられた凹状カーブを形成し、第5の枝部(42e)、第6の枝部(42f)、および第7の枝部(42g)がともに第1の方向に向けられた凹状カーブを形成し、
補強断面(40)がさらに、それぞれ第1の枝部(42a)と第7の枝部(42g)に結合され、それぞれ第1の枝部(42a)と第7の枝部(42g)とともに非ゼロの角度を形成する2つの脚部(44a、44b)を備え、
この脚部(44a、44b)が、マルテンサイト、ベイナイト、および任意選択的にフェライトを含む構造を有し、主部分(30)の残りの部分がマルテンサイトで構成された構造を有することを特徴とする、補強要素(7)。
前記第1の枝部(42a)が第1の平面において延び、第2の枝部(42b)が第2の平面において延び、第3の枝部(42c)が第3の平面において延び、第1の平面と第2の平面とが、第1の交差線に沿って交差しており、第2の平面と第3の平面とが、第2の交差線に沿って交差しており、第1の交差線と第2の交差線とが平行であり、dが、第1の交差線と第2の交差線との間の距離である、請求項1に記載の補強要素(7)。
前記第1の弧状の連結部の曲率半径と前記第2の弧状の連結部の曲率半径は、5mmと15mmとの間に含まれている、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の補強要素(7)。
少なくとも1つの枝部の長さ、および/または、補強断面の少なくとも1つの角度の絶対値が、主方向に沿って変化する、請求項1から6のいずれか一項に記載の補強要素(7)。
ウインドウフレーム(22)およびドアパネル(20)を備えたドア構造を備え、ドアパネル(20)にわたって延びる、請求項1から7のいずれか一項に記載の補強要素(7)をさらに備えていることを特徴とする、自動車のドアアセンブリ(3)。
ドアパネル(20)が、前縁部(20a)、前縁部(20a)と平行な後縁部(20b)、ならびに、前縁部(20a)の端部と後縁部(20b)の端部との間に延びる下縁部(20c)および上縁部(20d)によって範囲が規定され、前記上縁部(20d)がウインドウフレーム(22)の縁部(22c)を規定し、補強要素(7)が前縁部(20a)から後縁部(20b)に、上縁部(20d)と下縁部(20c)との間に、上縁部(20d)に平行に延びる、請求項8または9に記載のドアアセンブリ(3)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述の問題を解決すること、具体的には、厚みおよび重量が低減されるとともに、依然として、側部の衝撃に対する耐性の向上を確実にする、補強要素を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため、本発明は、主方向に沿って延び、主方向にほぼ垂直な平面において延びる補強断面を有する主部分を少なくとも備えている、自動車のドアの構造を補強するための補強要素であって、補強断面が、少なくとも4つの隣接する枝部を備え、各枝部が異なる方向に延び、2つの連続する枝部が非ゼロの角度を形成し、少なくとも2つの前記非ゼロの角度が反対符号であることを特徴とする、補強要素に関する。
【0009】
具体的には、本発明は、主方向に沿って延び、主方向にほぼ垂直な平面において延びる補強断面を有する主部分を少なくとも備えている、自動車のドアの構造を補強するための補強要素であって、補強断面が、少なくとも4つの隣接する枝部を備え、各枝部が異なる方向に延び、2つの連続する枝部が非ゼロの角度を形成し、少なくとも2つの前記非ゼロの角度が反対符号であり、前記隣接する枝部が第1の枝部、第2の枝部、および第3の枝部を備え、前記第1の枝部が前記第2の枝部とともに第1の非ゼロの角度を形成し、前記第2の枝部が前記第3の枝部とともに第2の非ゼロの角度を形成し、第1の非ゼロの角度と第2の非ゼロの角度とが同じ符号であり、第1の枝部と第2の枝部とが第1の弧状の連結部によってともに結合しており、第2の枝部と第3の枝部とが第2の弧状の連結部によってともに結合しており、前記第1の弧状の連結部の曲率半径と前記第2の弧状の連結部の曲率半径が、dを前記第1の枝部と前記第3の枝部との間の距離とする、5mmとd/2との間に実質的に含まれることを特徴とする、補強要素に関する。
【0010】
第1の枝部は実質的に第1の平面において延び、第2の枝部は実質的に第2の平面において延び、第3の枝部は実質的に第3の平面において延び、第1の平面と第2の平面とは、第1の交差線に沿って交差しており、第2の平面と第3の平面とは、第2の交差線に沿って交差しており、第1の交差線と第2の交差線とはほぼ平行である。dは、第1の交差線と第2の交差線との間の距離である。
【0011】
主な断面の幾何学形状により、補強要素は、曲がる前にエネルギの大部分を吸収し得、こうして、大である断面積を必要とすることなく、平坦な補強要素に比べ、衝撃に対する耐性を向上させる。
【0012】
本発明の他の有利な態様によれば、補強要素は、単一で考慮されるか、任意の技術的に可能な組合せに従って、
主部分の少なくとも一部が、1300MPa以上の引張り強度を有するプレス硬化鋼(press hardening steel)で形成されていることと、
プレス硬化鋼がUsibor(R)であることと、
補強断面には、少なくとも5つの隣接する枝部が含まれ、各枝部が異なる方向に延び、第1の枝部が第2の枝部とともに第1の非ゼロの角度を形成し、第2の枝部が第3の枝部とともに第2の非ゼロの角度を形成し、第3の枝部が第4の枝部とともに第3の非ゼロの角度を形成し、第4の枝部が第5の枝部とともに第4の非ゼロの角度を形成し、前記第1の角度と第2の角度とは同じ符号であり、前記第3の角度と第4の角度とが、第1の角度と第2の角度の符号と逆の符号であることと、
非ゼロの角度が実質的に、絶対値において、80度から90度の間に含まれることと、
2つの連続した枝部が、弧状の連結部によってともに結合されていることと、
弧状の連結部の曲率半径が実質的に、5mmから15mmの間に含まれることと、
少なくとも1つの枝部の長さ、および/または、補強断面の少なくとも1つの角度の絶対値が、主方向に沿って変化することと、の特徴の1つまたは複数を備えている。
【0013】
本発明は、ウインドウフレームおよびドアパネルを備えたドア構造を備え、ドアパネルにわたって延びる、本発明による補強要素をさらに備えていることを特徴とする、自動車のドアアセンブリにも関する。
【0014】
本発明の他の有利な態様によれば、ドアアセンブリは、単一で考慮されるか、任意の技術的に可能な組合せに従って、
ドア構造が、補強要素の材料とは異なる金属材料で形成されていることと、
ドアパネルが、前縁部、前縁部とほぼ平行な後縁部、ならびに、前縁部の端部と後縁部の端部との間に延びる下縁部および上縁部によって範囲が規定され、前記上縁部がウインドウフレームの縁部を規定し、補強要素が前縁部から後縁部に、上縁部と下縁部との間に、上縁部にほぼ平行に延びることと、の特徴の、1つまたは複数を備えている。
【0015】
本発明は、本発明によるドアアセンブリを備えた自動車にも関する。
【0016】
本発明は、本発明による補強要素を製造するための方法であって、
主部分の補強断面を形成するように、補強要素ブランクを熱間圧造(hot stamping)するステップと、
マルテンサイトで構成された構造を得るために、27℃/秒以上の冷却率で補強要素を冷却するステップと、を含む方法にも関する。
【0017】
本発明の他の特徴および利点が、添付図面を参照して与えられる以下の詳細な説明を読むことにより、よりよく理解される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の説明では、内側、外側、前方、後方、横断方向、長手方向、垂直、および水平との用語は、自動車構造に組み付けられた際の図示の要素、部品、または構造の通常の向きを参照して解釈される。
【0020】
一実施形態による自動車両のドアアセンブリ3を
図1に示す。
【0021】
この例示的実施形態のドアアセンブリ3は、旅客車両、たとえばピックアップトラックの、前方のドライバ側のドアである。
【0022】
ドアアセンブリ3は、ドア構造5および補強要素7を備えている。
【0023】
ドアアセンブリ3はさらに、ヒンジ補強要素9および11、ならびに胴体中央部補強要素13を備えている。
【0024】
ドア構造5は、ドアパネル20およびウインドウフレーム22を備えている。
【0025】
ドアパネル20は、ドア外側パネル(示されていない)に結合するように定められたドア内側パネルである。これらパネルがともに結合される場合、ドア内側パネル20とドア外側パネルとが、自動車の前部に面する前部と、自動車の後部に面する後部とを有する中心空間を規定する。
【0026】
ドア内側パネル20は、前縁部20a、後縁部20b、下縁部20c、および上縁部20dによって範囲が規定されている。前縁部20aと後縁部20bとは、互いに対してほぼ平行であり、ほぼ垂直方向に延びている。下縁部20cと上縁部20dとは、前縁部20aの端部と後縁部20bの端部との間に延びている。下縁部20cと上縁部20dとは、互いに対してほぼ平行であり、ほぼ水平方向に延びている。
【0027】
ウインドウフレーム22は、ドアガラスを受領するように定められた開口24を規定する。ウインドウフレーム22は、前縁部22a、後縁部22b、下縁部22c、および上縁部22dによって範囲が規定されている。下縁部22cは、ドア内側パネル20の上縁部20dによって規定されている。下縁部22cと上縁部22dとは、互いに対してほぼ平行であり、ほぼ水平方向に延びている。前縁部22aと後縁部20bとは、下縁部22cの端部と上縁部22dの端部との間に延びている。後縁部20bは、ほぼ垂直方向に延びている。前縁部22aは、前方および後方に斜め方向に、上縁部22dの前端部から下縁部22cの前端部に延びている。前縁部22a、後縁部22b、下縁部22c、および上縁部22dは、開口24を規定している。
【0028】
たとえば、ウインドウフレーム22は、ドア内側パネル20と一体に形成されている。
【0029】
ドア内側パネル20およびウインドウフレーム22は、鋼、たとえば、高い成形性の鋼で形成されている。鋼は、コーティングされているか、コーティングされていなくてもよい。
【0030】
たとえば、ドア内側パネル20は、0.65mmの厚さを有している。
【0031】
たとえば、ウインドウフレーム22は、1.1mmの厚さを有している。
【0032】
ドア構造5は、たとえば、レーザ溶接したブランクを圧造することによって製造される。このブランクは、いくつかのブランクを溶接によって組み合わせることにより形成される。
【0033】
胴体中央部補強要素13は、たとえば溶接またはボルトにより、前縁部20aにおいてドア内側パネル20に取り付けられている。
【0034】
胴体中央部補強要素13は、たとえば、390MPaから450MPaの間に含まれる引張り強度と、300MPaから360MPaの間に含まれる降伏強度とを有する、冷間形成鋼などの鋼で形成されている。
【0035】
ヒンジ補強要素9と11とは、上方ヒンジ補強要素9と下方ヒンジ補強要素11とを備えている。上方ヒンジ補強要素9と下方ヒンジ補強要素11とは、ドア内側パネル20の外側において、ドア内側パネル20に取り付けられ、それにより、ドア内側パネル20とドア外側パネルとの間に形成された中心空間内に受領されるようになっている。
【0036】
上方ヒンジ補強要素9と下方ヒンジ補強要素11とは、ドアアセンブリ3を車両ボディに結合するヒンジのエリアにおいて、ドア内側パネル20を補強する。
【0037】
上方ヒンジ補強要素9と下方ヒンジ補強要素11とは、鋼、好ましくは、プレスがされると引張り強度が1300MPa以上となるプレス硬化鋼で形成されている。
【0038】
たとえば、プレス硬化鋼は、重量パーセントで、0.10%≦C≦0.5%、0.5%≦Mn≦3%、0.1%≦Si≦1%、0.01%≦Cr≦1%、Ti≦0.2%、Al≦0.1%、S≦0.05%、P≦0.1%、0.0005%≦B≦0.010%を含み、残りが鉄と、製造の結果として避けられない不純物で構成されている組成を有している。
【0039】
プレス硬化鋼は、たとえばUsibor(R)、具体的には、Usibor(R)1500またはUsibor(R)2000である。
【0040】
鋼は、コーティングされているか、コーティングされていなくてもよい。
【0042】
側部の衝撃の衝突が生じる事象において、補強要素7は、衝撃力からのエネルギを吸収して、ドアアセンブリ3の他の部分の陥没および破損を防止するように定められ、それにより、車両の乗員を保護するようになっている。
【0043】
ドア内側パネル20に取り付けられる場合、補強要素7は、ドア内側パネル20にわたって、前縁部20aと後縁部20bとの間を長さ方向に延びる。ドア内側パネル20とドア外側パネルとがともに結合される場合、補強要素7は、ドア内側パネル20とドア外側パネルとの間に形成された中心空間の、前部と後部との間にわたって長さ方向に延びる。
【0044】
補強要素7は、前縁部20aと後縁部20bとの間を、主方向に沿って、たとえば、ほぼ水平な長手方向に沿って延びている。
【0045】
補強要素7はこうして、上縁部20dまたはドア内側パネル20にほぼ平行になっている。
【0046】
補強要素7は、主部分30と、2つの端部、すなわち、前端部32aと後端部32bとを備えている。主部分30は、前端部32aと後端部32bとの間に延びている。
【0047】
補強要素7は、ドア内側パネル20に、前端部32aおよび後端部32bにより、たとえば溶接によって取り付けられるように定められている。
【0048】
主部分30は通常、補強要素7がドア内側パネル20に取り付けられる際に、ドア内側パネル20に向けられるように定められた内側面と、ドア外側パネルに向けられるように定められた外側面とを備えている。
【0049】
図2および
図3にさらに詳細に示すように、主部分30は、主方向に対してほぼ垂直な平面において延びる補強断面40を有している。
【0050】
補強断面40は通常、少なくとも4つの隣接する枝部42を備え、各枝部が異なる方向に延び、2つの連続する枝部の各組が非ゼロの角度を形成し、少なくとも2つの前記非ゼロの角度が逆の符号である。
【0051】
補強断面40はこうして、折り曲げられた形状を有している。
【0052】
この折り曲げられた形状により、補強要素7が衝撃を受けた際に、曲げられる前に、最初に広がる。したがって、補強要素7は、乗員のコンパートメント内に侵入することを避けることで自動車の乗員を保護し、また、最初に広がり、次いで曲がることにより、エネルギの大部分を吸収し得る。
【0053】
好ましくは、非ゼロの角度が実質的に、絶対値において、80度から90度の間、好ましくは、85度から90度の間に含まれる。
【0054】
この非ゼロの角度の値が高いことにより、補強要素7を広げるには大量のエネルギが必要であり、これにより、衝撃が生じる際に、補強要素7が、曲がる前にエネルギの大部分を吸収し得る。
【0055】
さらに、以下にさらに詳細に説明するように、隣接する枝部42は、第1の枝部、第2の枝部、および第3の枝部を備え、第1の枝部が第2の枝部とともに第1の非ゼロの角度を形成し、第2の枝部が第3の枝部とともに第2の非ゼロの角度を形成し、第1の非ゼロの角度と第2の非ゼロの角度とは同じ符号である。第1の枝部は実質的に第1の平面において延び、第2の枝部は実質的に第2の平面において延び、第3の枝部は実質的に第3の平面において延び、第1の平面と、第2の平面と、第3の平面とは別々のものである。
【0056】
第1の枝部と第2の枝部とは、第1の弧状の連結部によってともに結合しており、第2の枝部と第3の枝部とは、第2の弧状の連結部によってともに結合している。
【0057】
そのような弧状の連結部はむしろ、鋭角の連結部よりも低い応力集中係数Ktを与えている。
【0058】
第1の弧状の連結部の曲率半径と第2の弧状の連結部の曲率半径は、5mmとd/2との間に実質的に含まれている。dは、第1の枝部と第3の枝部との間の距離である。この距離dは、第2の平面において測定される第1の平面と第3の平面との間の距離である。
【0059】
より具体的には、第1の平面と第2の平面とは、第1の交差線に沿って交差しており、第2の平面と第3の平面とは、第2の交差線に沿って交差している。第1の交差線と第2の交差線とは、ほぼ平行である。距離dはこのため、第1の交差線と第2の交差線との間の距離である。
【0060】
たとえば、上のように規定された、第1の枝部と第3の枝部との間の距離dは30mmである。この例では、第1の弧状の連結部の曲率半径と第2の弧状の連結部の曲率半径は、5mmと15mmとの間に実質的に含まれている。
【0061】
曲率半径のこの値により、十分かつ一様な機械的特性を有する補強要素7を得ることができる。
【0062】
むしろ、以下にさらに詳細に開示するように、補強要素7は、たとえば、ほぼ平坦な補強要素ブランクを熱間圧造することによって製造される。圧造の間、曲率半径の選択された値により、ダイと、まだ形成されていない補強要素ブランクのエリアとの間の接触面が最小になる。したがって、そうでなければこれらエリアとダイとの間に生じ得る熱伝達が低減され、これにより、これらエリアが制御されずに冷却されることを防止する。制御されずに冷却がされると、機械的特性の一様性が劣り、かつ/または一様ではなくなる結果となる場合がある。
【0063】
隣接する枝部42はさらに、第3の枝部とともに第3の非ゼロの角度を形成する第4の枝部をさらに含んでいる。第3の非ゼロの角度は、第1の非ゼロの角度および第2の非ゼロの角度とは逆の符号である。好ましくは、第3の枝部と第4の枝部も、弧状の連結部43によってともに結合されている。
【0064】
主部分30は、可変断面を有する場合がある。たとえば、少なくとも1つの枝部42の長さ、および/または、補強断面40の少なくとも1つの角度の絶対値が、主方向に沿って変化する場合がある。
【0065】
図2および
図3に示す例では、補強断面40は、7つの枝部である、第1の枝部42a、第1の枝部42aに隣接する第2の枝部42b、第2の枝部42bに隣接する第3の枝部42c、第3の枝部42cに隣接する第4の枝部42d、第4の枝部42dに隣接する第5の枝部42e、第5の枝部42eに隣接する第6の枝部42f、および、第6の枝部42eに隣接する第7の枝部42fを備えている。
【0066】
補強断面はさらに、それぞれ第1の枝部42aと第7の枝部42gとに結合され、それぞれ第1の枝部42aと第7の枝部42gとともに非ゼロの角度を形成する、2つの脚部44a、44bを備えている。
【0067】
たとえば、補強断面40は、第4の枝部42dの中間を通過するほぼ水平な線について対称である。
【0068】
枝部42a、42b、42c、42d、42e、42fは、異なる方向に延びている。
【0069】
むしろ、各枝部42は、各々の隣接する枝部とともに非ゼロの方向付けられた角度を形成している。したがって、第1の枝部42aは第2の枝部42bとともに第1の角度α
abを形成し、第2の枝部42bは第3の枝部42cとともに第2の角度α
bcを形成し、第3の枝部42cは第4の枝部42dとともに第3の角度α
cdを形成し、第4の枝部42dは第5の枝部42eとともに第4の角度α
deを形成し、第5の枝部42eは第6の枝部42fとともに第5の角度α
efを形成し、第6の枝部42fは第7の枝部42gとともに第6の角度α
fgを形成している。これら角度は非ゼロの角度である。
【0070】
第1の枝部は実質的に第1の平面において延び、第2の枝部は実質的に第2の平面において延び、第3の枝部は実質的に第3の平面において延び、第4の枝部は実質的に第4の平面において延び、第5の枝部は実質的に第5の平面において延び、第6の枝部は実質的に第6の平面において延び、第7の枝部は実質的に第7の平面において延びている。
【0071】
たとえば、第1の枝部42a、第3の枝部42c、第5の枝部42e、および第7の枝部42gは、ほぼ水平であり、第2の枝部42b、第4の枝部42d、および第6の枝部42fは、ほぼ垂直である。したがって、第1の平面と、第3の平面と、第5の平面と、第7の平面とは、ほぼ平行である。第2の平面と第6の平面とはほぼ同じであるとともに、第4の平面に平行である。
【0072】
各枝部は、好ましくは、弧状の連結部によって隣接する枝部(複数の場合もある)に結合している。
【0073】
第1の枝部42aと第2の枝部42bとは、第1の弧状の連結部によってともに結合され、第2の枝部42bと第3の枝部42cとは、第2の弧状の連結部によってともに結合され、第3の枝部42cと第4の枝部42dとは、第3の弧状の連結部によってともに結合され、第4の枝部42dと第5の枝部42eとは、第4の弧状の連結部によってともに結合され、第5の枝部42eと第6の枝部42fとは、第5の弧状の連結部によってともに結合され、第6の枝部42fと第7の枝部42gとは、第6の弧状の連結部によってともに結合されている。
【0074】
第1の角度α
ab、第2の角度α
bc、第5の角度α
ef、および第6の角度α
fgは同じ符号を有し、一方、第3の角度α
cdと第4の角度α
deは、第1の角度α
ab、第2の角度α
bc、第5の角度α
ef、および第4の角度α
fgとは逆の符号を有する。
【0075】
したがって、第1の枝部42a、第2の枝部42b、および第3の枝部42cはともに、第1の方向、たとえば、ドア内側パネル20に向けられた凹状カーブを形成している。第3の枝部42c、第4の枝部42d、および第5の枝部42eはともに、第1の方向とは反対側の第2の方向、すなわち、ドア外側パネルに向けられた凹状カーブを形成している。第5の枝部42e、第6の枝部42f、および第7の枝部42gはともに、第1の方向に向けられた凹状カーブを形成している。
【0076】
第1の枝部42a、第2の枝部42b、および第3の枝部42cを結合する弧状の連結部、すなわち、第1の弧状の連結部および第2の弧状の連結部は、第1の方向に向けられている。同様に、第5の枝部42e、第6の枝部42f、および第7の枝部42gを結合する弧状の連結部、すなわち、第5の弧状の連結部および第6の弧状の連結部は、第1の方向に向けられている。
【0077】
第3の枝部42c、第4の枝部42d、および第5の枝部42eを結合する弧状の連結部は、第2の方向に向けられている。
【0078】
第1の弧状の連結部の曲率半径と第2の弧状の連結部の曲率半径は、5mmとd
1/2との間に実質的に含まれている。d
1は、第1の枝部42aと第3の枝部42cとの間の距離である。この距離d
1は、第2の平面において測定される第1の平面と第3の平面との間の距離である。具体的には、上で説明したように、第1の平面と第3の平面とが、2つのほぼ平行な交差線に沿って第2の平面に交差し、距離d
1は、
図3に示すように、これら2つの交差線間の距離である。
【0079】
同様に、第5の弧状の連結部の曲率半径と第6の弧状の連結部の曲率半径は、5mmとd
2/2との間に実質的に含まれている。d
2は、第5の枝部42eと第7の枝部42gとの間の距離である。この距離d
2は、第6の平面において測定される第5の平面と第7の平面との間の距離である。具体的には、第5の平面と第7の平面とが、2つのほぼ平行な交差線に沿って第6の平面に交差し、距離d
2は、これら2つの交差線間の距離である。
【0080】
第1の弧状の連結部、第2の弧状の連結部、第5の弧状の連結部、および第6の弧状の連結部は、特に距離d
1およびd
2が約30mmである場合に、好ましくは、5mmから15mmの間に含まれる曲率半径を有している。
【0081】
たとえば、第3の弧状の連結部の曲率半径と第4の弧状の連結部の曲率半径も、実質的に、5mmから15mmの間に含まれる。
【0082】
たとえば、ドア内側パネル20に向けられた弧状の連結部、すなわち、第1の弧状の連結部、第2の弧状の連結部、第5の弧状の連結部、および第6の弧状の連結部の曲率半径は、ドア外側パネルに向けられた弧状の連結部、すなわち、第3の弧状の連結部および第4の弧状の連結部の曲率半径より大である。
【0083】
たとえば、自動車の内側に向けられた弧状の連結部の曲率半径は、11mmにほぼ等しく、自動車の外側に向けられた弧状の連結部の曲率半径は、8mmにほぼ等しい。
【0084】
主部分30は、0.6mmから3mmの間、たとえば、1mmから1.5mmの間に含まれる、横断方向に沿う主部分の寸法として規定された厚みを有している。
【0085】
補強断面40の折り曲げられた幾何学形状により、主部分30は、主部分30の凸状の覆いの厚みとして規定され、横断方向に沿う主部分30の厚みより大である厚み、たとえば、30mmから40mmの間に含まれる厚み、たとえば36mmの全体の厚みを有している。
【0086】
しかし、この全体の厚みは、補強要素が、ドア内側パネル20とドア外側パネルとの間に規定された中心空間内に、やはりこの中心空間内に置かれた他の構造および機構に干渉することなく取り付けられ得るように、十分に小さいままである。
【0087】
好ましくは、補強要素7の主部分30は、プレスされると、1300MPa以上の引張り強度を有するプレス硬化鋼で形成されている。
【0088】
たとえば、プレス硬化鋼は、重量パーセントで、0.10%≦C≦0.5%、0.5%≦Mn≦3%、0.1%≦Si≦1%、0.01%≦Cr≦1%、Ti≦0.2%、Al≦0.1%、S≦0.05%、P≦0.1%、0.0005%≦B≦0.010%を含み、残りが鉄と、製造の結果として避けられない不純物で構成されている組成を有している。
【0089】
プレス硬化鋼は、たとえばUsibor(R)、具体的には、Usibor(R)1500またはUsibor(R)2000である。
【0090】
鋼は、コーティングされているか、コーティングされていなくてもよい。
【0091】
好ましくは、プレス硬化鋼は、鋼がプレスされる前は、基本的にフェライトおよびパーライトで構成された構造を有し、プレスした後は、マルテンサイトで構成された構造を有している。
【0092】
こうして、補強要素7の主部分30は、マルテンサイトで構成された構造を有する鋼で形成されている。
【0093】
補強要素7は、たとえば、補強要素ブランクを熱間圧造することによって製造される。補強要素ブランクは、このブランクが補強要素7を形成するように熱間圧造され得るように適合した形状を有するほぼ平坦なブランクである。
【0094】
補強要素7を形成するための熱間圧造プロセスが
図4から
図8に示されている。
【0095】
補強要素ブランク50は、最初に適切な温度、たとえば900度に加熱され、下方ダイ54、ウィッパダイ56、およびパンチ58を含む、ダブルアクションのプレス52内に置かれる。
【0096】
最初に(
図4)、ブランク50が下方ダイ54上に置かれる。この下方ダイ54の形状は、形成される補強要素7の形状と相補的である。下方ダイ54で折り曲げられる補強要素7の曲率半径により、まだ形成されていないブランク50と、下方ダイ54との間の接触が最小になりそれにより、ブランク50から下方ダイ54への熱伝達が低減されるようになる。
【0097】
第2の枝部から第6の枝部の、補強要素7の部分とほぼ相補的な形状を有するパンチ58は、これら枝部(
図5および
図6)を形成するために、ブランク50上に押圧される。
【0098】
図5および
図6に示すように、下方ダイ54とパンチ58で折り曲げられる補強要素7の曲率半径により、一方ではブランク50と、他方ではパンチ58および下方ダイ54との間の接触面が、すでに形成されたか、形成されているブランクのエリアに実質的に低減される。したがって、このステップの間、まだ形成されていないブランク50のエリアから下方ダイ54およびパンチ58への熱伝達が低減される。
【0099】
ウィッパダイ56は次いで、第1の弧状の連結部を伴う第1の枝部と、第6の弧状の連結部を伴う第7の枝部とを形成するように、ブランク50に押圧される。このステップの間、
図7および
図8に示すように、ブランク50とウィッパダイ56との間の接触面も、すでに形成されたか、形成されている、ブランク50のエリアに実質的に低減される。
【0100】
熱間圧造の後には、補強要素は、マルテンサイトで構成された構造を得るために、27℃/秒以上の冷却率で、周囲の温度まで冷却される。
【0101】
具体的には、冷却率は、枝部42間の連結部を形成する領域におけるフェライトの形成を避けるように選択される。むしろ、これら領域は、熱間圧造の間に最も変形される領域であり、それにより、フェライトの形成がこれら領域に生じ得る。
【0102】
プレス52と、まだ形成されていない、加熱されたブランク50のエリアとの間の熱伝達が低減されるため、微細構造、そしてひいては、補強要素7の機械的特性が制御され、一様になる。
【0103】
たとえば、いくつかの補強要素7は、ブランクを圧造し、次いで、補強要素を形成するように、圧蔵されたブランクをカットすることにより、製造することができ、切断線は、2つの別個の補強要素7の2つの隣接する脚部44aと44bとの間に位置している。
【0104】
代替的には、脚部44a、44bは、マルテンサイト、ベイナイト、および任意選択的にフェライトを含む構造を有し、主部分30の残りの部分は、マルテンサイトで構成された構造を有する。したがって、マルテンサイト、ベイナイト、および任意選択的にフェライトを含む構造を有する脚部44a、44bを有することにより、切断がより容易になる。
【0105】
むしろ、いくつかの補強要素7が、ブランクを圧造し、次いで、圧造されたブランクを切断することによって製造される場合、マルテンサイト、ベイナイト、および任意選択的にフェライトを含む構造を有する脚部44a、44bを有することにより、切断がより容易になる。
【0106】
補強要素7内の様々な構造は、圧造の間、脚部44a、44bに、主部分30の残りの部分に適用される温度とは異なる温度を適用することによって得られる。
【0107】
1300MPa以上の引張り強度を有する鋼の使用により、補強要素7によって与えられる、側部の衝撃に対する保護を向上させることが可能になる。さらに、プレス硬化鋼の使用により、鋼のネッキングまたは厚みの増大を得ることなく、補強要素7を形成するように、ブランクが熱間圧造されるような、ブランクの良好な成形性と、熱間圧造された後の補強要素7の高い強度と、の両方が与えられる。
【0108】
主セクションの折り曲げられた幾何学形状により、補強要素7に衝撃が生じた際に、補強要素7が曲がる前に、補強断面40が衝撃の場所で最初に広がる。こうして、補強要素は、曲がる前にエネルギの大部分を吸収し得る。
【0109】
例示的実施形態のドアアセンブリ3は、旅客車両のフロントのドライバ側のドアであるが、ドアアセンブリは代替的に、乗客側または後方の車両ドアとしての使用のために構成することができる。ドアアセンブリ3は、たとえば、ピックアップトラック、スポーツ汎用車、トラック、個人輸送車両を含む、旅客車両および他のタイプの自動車の各セグメントの全領域に適用されるように構成することもできる。
【0110】
別の実施形態によれば、2つの連続する枝部によって形成された各角度は、各隣接する角度の符号とは逆の符号を有している。すなわち、2つの他の枝部に隣接する各枝部42は、これら2つの枝部とともに、反対の符号の2つの角度を形成する。補強断面は、たとえば、Wの形状を有する場合がある。