(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の電極構成及び前記第2の電極構成は、前記アクチュエータ材料の前記少なくとも第1の部分と前記アクチュエータ材料の前記少なくとも第2の部分とが部分的に又は完全に重なり合うように構成されている、請求項2に記載の装置。
前記コントローラは、前記電気的な第1の制御信号と前記電気的な第2の制御信号とを重ね合わせることによって、結合された電気的制御信号を生成するように構成され、前記コントローラは、前記結合された電気的制御信号を1つ以上の電極構成に提供するための電気出力端子を有する、請求項3又は4に記載の装置。
前記センシング素子は更に、前記測定した1つ以上の電気パラメータから、又は前記決定した前記アクチュエータのインピーダンスから、前記1つ以上の時点において前記アクチュエータに印加された機械的負荷の大きさを決定する、ように構成されている、請求項6に記載の装置。
前記アクチュエータ材料は、例えば無機リラクサ強誘電体材料及び/又は有機リラクサ強誘電体材料である電気活性材料を有する、請求項1乃至10の何れかに記載の装置。
前記電気的な第1の制御信号と前記電気的な第2の制御信号とを重ね合わせることによって、結合された電気的制御信号を生成するステップ、を更に有する請求項13又は14に記載の方法。
1つ以上の時点の各々で、前記電気的な第1の制御信号の、又は前記結合された電気的制御信号の、1つ以上の電気パラメータを測定するステップであり、該測定した1つ以上の電気パラメータから、前記1つ以上の時点の各々における前記アクチュエータのインピーダンスが決定可能である、ステップ、又は
1つ以上の時点の各々で、前記電気的な第1の制御信号の、又は前記結合された電気的制御信号の、1つ以上の電気パラメータを測定し、且つその後、該測定した1つ以上の電気パラメータから、前記1つ以上の時点の各々についての前記アクチュエータのインピーダンスを決定するステップ、
を更に有する請求項13乃至15の何れかに記載の方法。
前記測定した1つ以上の電気パラメータから、又は前記決定した前記アクチュエータのインピーダンスから、前記1つ以上の時点において前記アクチュエータに印加された機械的負荷の大きさを決定するステップ、を有する請求項16に記載の方法。
【発明の概要】
【0008】
本発明の1つの目的は、上述のニーズを少なくとも部分的に満足することである。この目的は、独立請求項で規定される発明を用いて達成される。従属請求項が有利な実施形態を提供する。
【0009】
本発明によれば、アクチュエーション及びセンシングを同時に行うことができる装置が提供される。アクチュエータはトランスデューサとすることができる。装置は、アクチュエータ及び/又はセンサ又はトランスデューサ装置とすることができる。
【0010】
本発明によれば、アクチュエータを用いた同時センシング及びアクチュエーションの方法も提供される。以下で、装置に関して記載される特徴は、別段の指示がない限り、方法の特徴又はステップに転換されることができ、その逆もまた然りである。転換された特徴は、少なくとも、元の特徴に関して記載されるのと同じ利点を有する。
【0011】
本発明において、第1の制御信号は、装置のアクチュエーションに使用されるものであり、電気的な第2の制御信号は、装置によるセンシングに使用されるものである。装置は、故に、アクチュエーション信号とセンシング信号とで効果的に構成される制御信号を用いて制御される。
【0012】
アクチュエータは、電気活性材料により、電場又はそのようなフィールド(場)によって生成される力に応答する。従って、少なくともセンシング信号は電気信号であり、それ故に、その電気的なセンシング信号からアクチュエータの機械的共振を決定することができる。
【0013】
第1の制御信号は、それがアクチュエーションを生じさせるのに適したものである限り、如何なるタイプの制御信号ともし得る。故に、第1の制御信号は、光制御信号とすることができる。その場合、電気活性材料はまた、光信号の印加にも変形を伴って応答しなければならない。当業者は、そのような材料を技術的にどこで見つけるかを知ることになる。そのようなケースにおいて、装置の構成は、光信号を材料の第1の部分に導くためのユニットを有することができる。そのようなユニットは、ミラー、レンズ、光ファイバなどを有することができる。センシングに使用されるアクチュエータの電気活性特性を、アクチュエータを作動させるためにも使用することが好都合である。後者のケースでは、アクチュエーション信号は電気アクチュエーション信号である必要があり、装置及び/又は電気活性構造は、そのようなアクチュエーション制御信号を印加するための1つ以上の電極構成を有することができる。
【0014】
アクチュエーション信号及びセンシング信号は、双方が電気的であるとき、1つ以上の電極構成に別々に提供されることができるが、結合された制御信号を形成するように重ね合わされて、その後にその結合された制御信号を1つ以上の電極構成に提供することもできる。好ましくは、アクチュエーション信号とセンシング信号とを提供する唯一且つ同一の電極構成が存在する。
【0015】
本発明の装置及び方法は以下の効果を利用する。センシング信号が、EAM構造の機械的共振周波数又はその調波のうちの1つに合致する周波数で印加されるとき、構造内に機械的定在波が構築され、代わってそれが構造の電気的特性に影響を及ぼす。特に、構造のインピーダンスは、機械的振動がセンシング信号と同相(インフェイズ)となることに起因して、共振周波数に合致するセンシング信号に対して(及び故に、制御信号のその部分に対して)の方が低くなる。逆に、材料のインピーダンスは、機械的振動がセンシング信号と異相(アウトオブフェイズ)になることに起因して、材料の反共振周波数に合致するセンシング信号に対しての方が高くなる。このような周波数では、センシングが極めて効果的でありながら、より長期の同時アクチュエーションを妨げることはないと考えられる。
【0016】
電気活性構造に印加される例えば圧力などの機械的負荷は、構造内での減衰(ダンピング)を引き起こすことができ、その共振周波数(及び反共振周波数)を通常の非ダンピング値から遠ざかるようにシフトさせ、それにより、高周波センシング信号と機械的振動の基本周波数(又は反共振を合致させる場合には反共振について等価なもの)との間の不一致を誘起し得る。共振周波数のシフトの変化によって引き起こされる共振電気活性材料構造の特性の全ての変化は、高められた感度で機械的負荷を検出するために有利に使用されることができる。故に、共振周波数のシフトを検出及び/又は決定することができる。以下ここで説明するように、インピーダンスの検出及び/又は決定を有利に行うことができる。以上は、EAMに基づいたアクチュエーション及びセンシングの双方のための全ての装置に当てはまる。本発明は、故にまた、US2014/0139329(上記特許文献1)に記載されているような装置で使用されることができる。本発明はまた、電気活性材料構造が、アクチュエーション用の第1の部分とセンシング用の第2の部分とを有し、第2の部分が第1の部分とは異なり、そして、アクチュエーション信号が第1の部分に印加され且つセンシング信号が第2の部分に印加されるように制御信号が電気活性材料構造に印加される装置を用いて使用されることができる。
【0017】
本発明において、アクチュエーション信号をセンシング信号と結合することは、アクチュエーション信号をセンシング信号と時間的に少なくとも部分的に重ね合わせることを有し又はそれから構成され得る。このようにして生成される制御システムは、同時アクチュエーション(アクチュエーション信号部分による)及びセンシング(センシング信号部分による)能力を装置に提供することができる。これは、作動中のセンシング能力を装置に与える。ここで前述したように、US2014/0139329(上記特許文献1)は、センシングが開始される前にアクチュエーションを停止させる必要があることを意味する順次のセンシング及びアクチュエーションを記載するのみである。
【0018】
特に前段落の特徴に関連して、制御信号は好ましくは、活性材料構造の同じ部分に提供される。これは、アクチュエーション信号が第1の部分に印加され且つセンシング信号が第2の部分に印加されるように制御信号が電気活性材料構造に印加され、そして、第2の部分が第1の部分とは異なるという状況に代わるものである。後者は、前者のように、同時アクチュエーション及びセンシングを提供するが、これは空間的に異なる位置(空間的に異なるアクティブな電気活性材料構造領域)においてであり、それに対し、前者では、これは同じ位置(EAM構造の単一のアクティブ領域)においてとし得る。前者はいっそう有利となる。何故なら、そのセンシングがそれ故にいっそう正確であり得るとともに、装置が、1つの部分のみを制御信号で提供及びアドレスすればよいのでいっそう小さいもの且つ/或いはあまり複雑でないものとなり得るからである。
【0019】
US2002/0130673は、低振幅の高周波ACセンシング信号を主駆動(アクチュエーション)信号の上に重ね合わせることによって、ポリマーの同じアクティブ領域内で、組み合わされたセンシング及びアクチュエーションを達成する可能性について言及している。しかしながら、本発明の電流バリエーションは、印加される機械的負荷の大きさの正確なリアルタイム測定を信頼性高く支援することができる高いセンシング感度を達成するための、装置及び方法の最適化を提供する。
【0020】
より低振幅の高周波数のセンシング信号を、より高振幅の主アクチュエーション信号の上に重ね合わせることにより、センシング及びアクチュエーションの機能が同時に達成され得る。センシング信号の振幅は、アクチュエーション信号の振幅よりもかなり小さくてよく、例えば、アクチュエーション信号の振幅の、<10%、<5%、又は更には、<1%とし得る。斯くして、センシング信号に対するアクチュエータにおける変形応答は、アクチュエーション信号によって刺激されるものと比較して無視できるとし得る。従って、アクチュエータとしての装置の精度、正確さ及び安定性が損なわれることはない。
【0021】
第1の制御信号は、センシング信号周波数よりも低い周波数を持つことができる。例えば、第1の制御信号の信号レベルは、センシング信号が交番する期間内で実質的に一定(DC信号)であるとすることができる。それに代えて、アクチュエーション周波数は、センシング周波数の、1/2、又は1/5、又は1/10、又は1/20、又は1/50、又は1/100、又はそれ未満とすることができる。
【0022】
双方の信号が交流信号である場合、アクチュエーション信号及びセンシング信号は各々、振幅を持つ。どちらの信号も或る範囲の振幅を備えることができ、すなわち、それらは可変振幅信号として提供されることができる。振幅の範囲は、或る最大振幅を有することができる。双方の信号が電気信号である場合、アクチュエーション信号は、DC信号(望まれるアクチュエーションに応じて変化するDCレベルを持つものである)を有する信号であってもよいし、又は、交流振幅(AC信号)を有していてもよい。後者のケースにおいて、センシング信号の最大振幅(ピーク振幅)は、アクチュエーション信号のピーク振幅の、<10%、<5%、又は更には<1%とし得る。後者のケースでのアクチュエーション信号の周波数も、測定信号とのアクチュエータ信号の干渉を避けるために、センシング信号の周波数よりもかなり低い(例えば、大きさで少なくとも2桁小さい)とし得る。
【0023】
センシング信号が(非ダンピングでの)反共振周波数に合致する周波数で印加されるケースでは、例えば、印加された負荷によって誘発される突然のミスマッチが、EAM構造にわたって測定されるインピーダンスの低下(ミスマッチの結果として生じる)として検出され得る。あるいは、(非ダンピングでの)共振周波数に(ミスマッチの結果として生じる)合致するセンシング信号が印加されるケースでは、ミスマッチが、EAM構造にわたって測定されるインピーダンスにおけるジャンプとして検出され得る。何れの場合も、センシング信号は、斯くして、共振又は反共振の実質的に外側である状況とは対照的に、高められた感度でのセンシングを可能にする。
【0024】
センシング信号のパラメータを測定するために、装置は更に、アクチュエータと電気的に接続されたセンシング素子を有し得る。好ましくは、そのようなパラメータは、少なくとも1つの時点又は更にはもっと多くの時点における電気活性ポリマー構造のインピーダンスの決定を可能にし、それらのパラメータが経時的に測定され、ひいては、インピーダンスが経時的に決定され得るようにされる。それらパラメータは典型的に、経時的な電圧及び経時的な電流を、例えばこれら2つの間の位相差を推定するために有する。センシング素子は、(測定されたパラメータから決定された)インピーダンスを経時的にモニタすることができ、それにより、インピーダンスの変化(例えば、構造への機械的負荷の印加を指し示すために使用され得る)の検出又は決定を可能にする。特定の例において、センシング素子は、例えば、装置にわたる直列抵抗を測定するように適応され得る。素子は、インピーダンスを決定するように適応された1つ以上の回路要素を有することができ、又は、例において、この目的に合わせて適応された1つ以上のICチップを有することができる。センシング素子は、例えば、より広い分析要素又はユニットの一部を有していてもよい。センシング素子及びドライバ機構は、例において、どちらも、より広いプロセッシングアセンブリ又はユニットの一部として含められてもよい。あるいは、センシング素子は、駆動機構に含められてもよい。
【0025】
センシング素子は更に、所与の時において装置に印加された機械的負荷の大きさを、該所与の時におけるポリマー構造の決定されたインピーダンスに基づいて決定するように適応され得る。従って、インピーダンスの変化を用いて、負荷が印加されたことだけでなく、その負荷の大きさ又は大きさを指し示すインジケーションを指し示し得る。これは、装置の使用前にイニシャル較正ステップを実行することによって達成され得る。例えば、2つの駆動信号を不変のままにしながら、ますます増大する大きさの力/負荷が装置に印加されるときに、装置にわたるインピーダンスが測定され得る。そして、これが、基準グラフ又は一組の基準値を提供し、それにより、使用時の装置にわたる特定の測定インピーダンスが、特定の大きさの印加力に関連付けられ得る。一部の例において、異なるアクチュエーション状態(及び異なる対応するアクチュエーション信号)に対応して、複数の較正測定が実行され得る。
【0026】
電気活性ポリマー構造は、リラクサ強誘電体材料を有し得る。リラクサ強誘電体材料は、無機リラクサ強誘電体材料、有機リラクサ強誘電体材料、又は、無機リラクサ強誘電体材料及び有機リラクサ強誘電体材料のうちの1つ以上を含む複合材料を有することができ、又はそれから構成されることができる。複合材料は、それ自体が電気活性材料であってもよいしそうでなくてもよいマトリクス材料を有することができる。リラクサ強誘電体は、印加電圧なしでは強誘電性でなく、これが意味することは、駆動信号が印加されないときには電気機械的な結合が存在しないということである。例えば、駆動信号が印加されるとき、電磁結合は非ゼロになることができる。リラクサ強誘電体は、他の既知の電気活性材料と比較して、より大きい大きさのアクチュエーション変形(すなわち、より大きい電歪定数を有する)及びより大きいセンシング感度を提供する。しかしながら、この装置はリラクサ強誘電体の使用に限定されず、例えば、圧電材料も使用され得る。
【0027】
装置は、各々が異なる共振周波数を持つ複数のアクチュエータを有し得る。例えば、それら複数の各々が、異なる大きさ及び/又は形状及び/又は幾何学的構成を有し、それによって異なる共振周波数を与え得る。これら複数の構造は、例えば、構造化されたアセンブリ又はアレイを形成するように構成され得る。異なる共振周波数は、測定されたインピーダンス信号において検出可能であり、これは、例えば、特には何らかの負荷が、アレイ又はアセンブリ内のどのEAM構造に印加されているか、を決定するために使用され得る。従って、印加された圧力の位置のいっそう正確な決定が可能となり得る。
【0028】
本発明はまた、同時センシング及びアクチュエーションの方法を提供する。この方法は、電気活性ポリマー構造のインピーダンスを時間にわたって決定することと、該インピーダンスに基づいて、該時間にわたって構造に印加された何らかの機械的負荷の大きさを更に決定することとを有し得る。例えば、インピーダンスは、駆動信号の1つ以上の電気パラメータを測定することによって決定され得る。例えば、これら得られたインピーダンスの測定から、経時的に、駆動信号の電流及び電圧がモニタされ得る。
【0029】
1つ以上の実施形態によれば、この方法は更に、第1の制御信号の振幅又は信号レベルを、1つ以上の定数値の間で切り換えること、又は第1のコンポーネント信号の最大振幅を、1つ以上の定数値の間で切り換えることを、それによりアクチュエータの1つ以上の関連アクチュエーション状態を実現するために有し得る。構造に誘起される変形の程度は、構造に印加される電圧の大きさに関係する。異なる変形程度に対応する異なるアクチュエーション状態は、第1の制御信号を変化させることによって実現され得る。この変化は、制御信号の最大振幅を複数の離散的な所定値の間で切り換えることを有し、又は例えば値の連続スペクトルに沿って値を変更することを有し得る。
【0030】
一部のケースにおいて、この方法は更に、アクチュエータの共振周波数を決定するための較正ステップ、及び/又はアクチュエータの較正負荷を決定するための較正ステップを有し得る。そのような較正の値を決定すること、及び場合により、決定された値を格納することを用いることで、アクチュエータの機械的共振周波数を事前に知る必要なく、装置の機械的負荷の決定精度を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、電気活性材料(EAM)構造と、EAM構造への印加用の駆動信号を生成するコントローラとを有するアクチュエータ及びセンサデバイスを提供する。コントローラはまた、(小さい)高周波ACセンシング信号を、より大きいアクチュエーション駆動信号の上に生成するものであることができ、センシング信号は、EAM構造の機械的共振周波数と共振するか又は反共振するかの何れかである周波数を持つ。装置への機械的負荷の印加が、機械的共振の弱小化によって引き起こされるEAP構造のインピーダンスの変化にて特定され得る。斯くして、装置は、同時センシング及びアクチュエーションを容易にし且つ/或いは改善する。同時センシング及びアクチュエーションの方法も提供される。
【0033】
図1及び2は、本出願の背景技術のセクションで説明されており、EAPデバイスが一般的な意味でどのように動作するかを説明するために使用されている。
【0034】
図3には、2つの電極の間に挟まれた(サンドイッチされた)上部EAP材料層24を有するEAPアクチュエータ22が示されている。このサンドイッチは、下部キャリア層26の上に配置され取り付けられている。電極は、信号処理素子28を介して第1の(DC)駆動信号入力32及び第2の(AC)駆動信号入力34(A信号コントローラ)に電気的に接続されている。第1の駆動信号入力32は、(相対的に)高い電力(又は高電圧)のアクチュエーション駆動信号の印加用である。第2の信号入力34は、(相対的に)低い電力(低電圧)の交流センシング信号の印加用である。信号処理素子は、第1及び第2の駆動信号を重ね合わせて、第3の結合された駆動信号(制御信号と称する)を形成し、それがEAPアクチュエータ22の電極間に印加される。信号処理素子はまた、第1及び第2の駆動信号を、それらが組み合わせて印加されるようにEAP材料層に提供する複数の出力を有することができる。
【0035】
信号処理素子は、例において、信号生成、信号の結合及び/又は分離、信号の切り換え、信号のカップリング及びデカップリング、信号検知、信号解析という機能のうちの1つ以上を実行するための多数の構成要素を有し得る。後者のケースにおいて、第1及び第2の駆動信号入力32及び34は、処理ユニット28それ自体に包含されてもよく、処理ユニットは、AC信号及び/又はDC信号を生成するための素子と、一部のケースで一方又は双方の信号の電気パラメータの解析用の素子とを有する。
【0036】
図3の構成の電気接続は、例えばEAP層構造の頂面及び底面の平面状の表面にある電極構成の電極に接続されて示されている。この目的のために、フレキシブル電極構成が使用され得る。これらは、金属又は導電性有機材料の薄い電極とすることができる。電極へのDC電圧及び/又はAC電圧の印加は、EAP層を横切る電場の生成を可能にし、それが、対応する変形を刺激する。
【0037】
図3の構成における第1の駆動信号入力32はDC入力を有しているが、これに代わる構成では、この入力はAC駆動信号入力を有していてもよい。何れのケースでも、アクチュエーション駆動信号の相対的な電力(電圧)は好ましくは、印加されるセンシング信号のそれをかなり上回る。双方の信号がAC信号を有するケースにおいて、(34で印加される)センシング信号の最大振幅は、(32で印加される)アクチュエーション駆動信号の最大振幅の10%未満、例えば、アクチュエーション駆動信号の最大振幅の5%未満又は更には1%未満とし得る。センシング信号がAC信号を有し、アクチュエーション信号が固定振幅のDCバイアス信号を有するケースにおいて、AC信号の最大振幅は、DCバイアス信号の固定振幅の10%未満、例えば、DCバイアス信号の固定振幅の5%未満又は更には1%未満とし得る。
図3の例では、信号処理素子28によって生成される制御信号は、高振幅のDCバイアス信号の上に重ね合わさせた高周波の低振幅AC信号を有する。
【0038】
図3の例において、EAPは誘電エラストマー材料である(以下を参照)。先行セクションで説明したように、電気活性ポリマー層24への十分な振幅のDCバイアスの印加は、層スタック24/26に対して垂直な第1の垂直方向に沿った、層の圧縮を刺激し、それにより、
図1に関して説明したように、第1の垂直方向に対して垂直な方向に層が膨張する。層が受動キャリア層26と結合されている場合、ポリマーの膨張は、
図2に関して説明したような変形をもたらす。変形は、例えば、構造全体の曲げ、すなわち、反りを有することができ、これを用いて作動力を提供し得る。
図3において、アクチュエータ構造22は、構造の曲げ変形を生じさせるのに十分な大きさでDCバイアスが印加されている‘アクティブ’状態又は‘作動’状態で示されている。周知のように、膨張の程度は、デバイスに印加される電場/電流の大きさに関係して変化する。従って、DCバイアスの振幅を変化させることによって、異なる度合い/程度の変形を誘起することができ、印加される作動力の大きさが異なるものとなる(又は、例えば、為される作動作業量が異なるものとなる)。
【0039】
DCバイアスの上に重ね合された高周波AC信号も、材料における機械的変形応答を刺激するが、固定的というより周期的な変形応答(すなわち振動)である。しかしながら、高周波信号の最大振幅は、DCバイアス信号の振幅よりもかなり低いので(例えば、DCバイアス信号の振幅よりも大きさで2桁低く、例えば、DC信号の振幅の1%)、刺激される変形に対応する変位振幅は、主のアクチュエーション変位と比較して実効的に無視できるものである。従って、アクチュエーションの精度及び安定性は、センシング信号の重ね合わせによっては実質的に影響されない。
【0040】
DCバイアスの上への低振幅高周波数発振信号の重ね合わせは、主たるアクチュエータ駆動機構それ自体の中に電気的フィードバック機構を組み込むことを可能にする。特定の周波数では、特に、アクチュエータ構造22の機械的共振周波数に一致する又はそれと調和する周波数では、小さい機械的定常波がアクチュエータの材料内に構築される。これが代わって、材料の電気特性に影響を及ぼす。センシング信号が材料の共振周波数で駆動されるとき、材料の対応するインピーダンスは、機械的振動が電気駆動信号と同相であることにより、(非共振で駆動されるときと比較して)低くなる。
【0041】
構造の機械的共振周波数は、構造がその平衡位置から変位されると、その周波数において構造が自然に振動する傾向にある周波数であり、構造の固有構造特性(例えば、幾何学構成、大きさ、形状、厚さ、質量など)によって決定される。EAP構造の機械的振動は、必ずしも、それに印加される電気信号の駆動周波数に従うわけではないが、駆動周波数が固有振動周波数(共振周波数)と異相又は同相の何れかである程度に応じて駆動周波数がその振動と建設的又は相殺的の何れかで干渉して、その固有共振周波数に戻る傾向がある。
【0042】
高周波信号がEAP構造の反共振周波数で駆動されるとき、材料の機械的振動が駆動信号の振動と異相である(電気的に誘起される機械的歪みが電気的励起と異相である)ことにより、EAPのインピーダンスはより高くなる。換言すれば、例えば、駆動信号によって正の電流がEAPに印加されるときは常に、同じ瞬間において、位相のずれた機械的歪みが逆方向の電流を誘起している(すなわち、異相挙動)。理想的な(モデルの)ケースでは、これら反対の電流が互いに相殺し合って、電流は全く流れることができない(すなわち、無限インピーダンス)が、現実の状況では、完全な相殺は起こらず、この効果が、電流の(実効的に)高い抵抗(すなわち、より高いインピーダンス)として測定される。特に、アクチュエータ材料の反共振周波数で信号が駆動されるとき、EAPのインピーダンスは最大にある。
【0043】
この関係は、以下の式(1)を検討することによって更に理解され得る。共振及び反共振での理想的なEAPのインピーダンスは、変形の具体的なタイプ又はモードに依存する。EAPを側方共振(すなわち、長さ又は幅)に持ち込むのが最も一般的である。EAPのインピーダンスは、材料の誘電特性と、電気機械的結合と、電気的及び機械的な損失とによって支配される。単純化のために、電気的及び機械的な損失を無視すると、横方向の広がりにおいて変形する長さl、幅w及び厚さtを持つEAPでは、EAPのインピーダンスは:
【0044】
【数1】
によって与えられ、ここで、ε
T33は誘電率であり、k
31は横方向の電気機械結合係数であり、pはEAPの密度であり、s
E11は横方向の弾性コンプライアンスである。反共振周波数ω
aにおいて、
【0046】
実際のEAPは損失を有し、反共振周波数で最大となる抵抗を持つ抵抗器を直列に有するキャパシタによってモデル化又は表現されることができる。以下の記載では、故に、‘インピーダンス’及び‘直列抵抗’(R
S)が、装置を参照して交換可能に使用され得る。しかしながら、直列抵抗は、この文脈において、抵抗R
Sを持つ抵抗器と直列のキャパシタによってアクチュエータ/センサが電子的に表現されるモデルを単に参照するものとして理解されるべきである。
【0047】
インピーダンスと共振との間の上述の関係の結果として、駆動信号が反共振周波数で駆動されているとき、その周波数において生じる反共振周波数からの小さい逸脱は、EAP構造22の測定可能なインピーダンスにおける対応する急峻な低下にて検出可能である。この物理的効果こそが、高められた精度で機械的(負荷)センシングを達成することを可能にするものである。EAP構造への圧力又は負荷の印加は、材料内で起こっている共振効果の弱小化をもたらす。負荷が印加されるときに駆動信号が材料の反共振周波数又は共振周波数で振動している場合、この弱小化効果は、共振の突然の停止が結果的にインピーダンスの急峻な低下を生じさせるので、EAPインピーダンス(すなわち、直列抵抗R
S)の実時間測定内で特定可能である。従って、アクチュエータが動作している間に構造のインピーダンスを経時的にモニタすることによって(例えば、高周波信号の電圧及び電流を経時的にモニタすることによって)、構造に印加された圧力及び負荷を検知することができ、(後述するように)一部のケースでは定量的に測定することができる。
【0048】
一方での、インピーダンスと、他方での、信号の電気的駆動周波数と材料の機械的振動周波数との間の位相差と、の間のこの結び付きは、制御信号の電気特性のモニタリングのみを通じて、EAPに印加される機械的な力の高感度測定を達成することを可能にする。これは、従って、単一のEAPデバイスを使用して同時アクチュエーション及びセンシングを達成するための、高度に単純で直接的且つ効率的な手段を提供する。また、本発明の実施形態は、EAP構造の同じ領域での同時センシング及びアクチュエーション(すなわち、空間的に同時のセンシング及びアクチュエーション)を可能にする。これが意味することは、例えばセンシングの感度又は分解能を犠牲にすることなく、双方の機能を果たすデバイスを、遥かに小さいフォームファクタで作製し得るということである。さらに、(従来技術の装置では、各々専用のセンシング領域又はアクチュエーション領域に1つずつで、2組以上の接続が必要とされるのとは対照的に、)単一組の(電気)接続のみを装置に設ければよく、これは、コスト及び低減された複雑さに関して有利であり、また、例えば水密接続が必要とされるケース(例えば、髭剃り/カテーテル/口腔ヘルスケア)、及び/又はアクチュエータ/センサのアレイが構築されるべきケースで有利である。
【0049】
高周波センシング信号の周波数は典型的に、アクチュエータの具体的な幾何学構成に依存して、1kHzから1MHzの範囲内とし得る。なお、アクチュエータ駆動信号がAC駆動信号を有するケースにおいて、この信号の周波数は交流センシング信号の周波数よりもかなり低いものである。その場合の(低周波数)アクチュエーション電圧は、測定信号とのアクチュエータ信号の干渉を避けるために、例えば、高周波信号電圧よりも大きさで少なくとも2桁低いとし得る。
【0050】
図4は、本発明の実施形態に従ったEAPアクチュエータ及びセンサデバイスの第2の例を示しており、信号駆動及び処理素子の構成が更に詳細に示されている。例えば
図3を参照して説明したものなどの、EAP材料層24及び受動キャリア層26を有するEAPアクチュエータ22が、ハウジング42内に保持されるとともに、コントローラ30と電気的に結合されている。
図4の例におけるコントローラは、信号生成素子(駆動素子)及び信号処理・解析素子(センサ素子)の双方を有している。
【0051】
アクチュエータ制御素子44が、高振幅のアクチュエータ駆動信号(例えば、固定DCバイアス電圧)を生成し、それが信号増幅器デバイス46に送られる。センサ制御素子48が、高振幅センサ信号を生成するドライバ素子50と、アクチュエータ通過後のセンサ信号の電気特性を解析する処理素子52との双方を有している。この目的のため、駆動機構30は更に、EAPアクチュエータ22にまたがって接続された電圧計54と、アクチュエータの出力電気端子60とセンサ制御素子48との間に直列接続された電流計56とを有している。電圧計54及び電流計56はどちらも、これらが生成したデータが、アクチュエータ22のインピーダンス(すなわち、直列に抵抗器を有する理想キャパシタとしてデバイスがモデル化される場合の等価直列抵抗R
S、すなわち、複素インピーダンスの実部)を決定するためにセンサ素子52によって利用され得るように、センサ制御素子48と信号的に接続される。
【0052】
アクチュエータ制御素子44及びセンサ制御素子48によって生成された駆動信号は、それらを組み合わせての増幅に先立って、又はそれらの独立した増幅の後に、の何れかで増幅器素子46によって重ね合わされる。一部の例において、増幅器素子46は、単純に結合器(コンバイナ)によって置き換えられてもよい。その場合、アクチュエータ制御素子44及びセンサ制御素子48は、それらが生成したアクチュエーション信号及びセンシング信号を、それらを結合器へと出力するのに先立って、ローカルに増幅するように適応され得る。その場合、コンポーネント46は、単純に、(
図3における)信号処理素子28と同様の素子とし得る。
【0053】
そして、結合された駆動信号が、EAPアクチュエータ22の入力端子62に送られる。結合された駆動信号の高振幅DC成分が、
図4に例示するように、アクチュエータにおける変形応答を刺激する。EAPは、図示のハウジング42内に保持されている。非常に再現性のある(すなわち、信頼でき/正確な)結果のため、EAPは適切な位置にクランプされ得る。例えば、アクチュエータがハウジング42内にクランプされ、そして、ハウジングが、デバイスを標的アクチュエーション領域とアライメントするように位置付けられる。
【0054】
例示のために、標的アクチュエーション領域66が
図4に示されており、アクチュエータがDC駆動信号によって変形されることで、標的領域に圧力が印加される。例において、標的領域は、例えば、人の皮膚の領域を有することができ、例えば、圧力が皮膚に加えられ、それと同時に、皮膚によってアクチュエータに与えられた力が装置によって検知されるようにし得る(例えば、ユーザがアクチュエータ収容装置をどれほど強く皮膚に押し付けているかを検知することができる)。一部の例において、アクチュエータ表面への又はからの制御された方式での力の送達のために、(オプションの)力伝達機構が追加的に提供され得る。
【0055】
駆動信号の低振幅AC成分が、例えば構造をその共振周波数又は反共振周波数で振動させるなど、EAP層24における低振幅周期応答を刺激する。
【0056】
結合された駆動信号の電圧及び得られる電流が、センサ制御素子48に送られる。典型的に、このAC電流は、0.1mAから1mAの範囲内であり得るが、10mAに至ることもあり得る。より高い電流は、過大な加熱を引き起こしてしまい得る。
【0057】
一部のケースにおいて、駆動機構30は更に、センサ制御素子48のセンシング素子52による解析のために高周波成分を分離する目的で、例えばハイパスフィルタといった1つ以上の信号デカップリング素子を有し得る。
【0058】
センサ制御素子48のセンシング素子52は、印加された(1つ以上の)駆動信号によって経験されるアクチュエータにわたる直列抵抗を決定するために、電圧計54及び電流計56によって提供される測定値を使用し得る。直列抵抗は、リアルタイムで決定されることができ、例えば抵抗の突然の変化についてモニタされ得る(これは、上述のように、アクチュエータ22に印加された負荷及び圧力の存在及び大きさを指し示すために使用され得る)。
【0059】
高感度状態の共振振動又は反共振振動をアクチュエータ構造22内に構築するために(それにより、測定された直列抵抗の変化によって圧力及び力が容易に検出され得るように)、デバイスの共振周波数又は反共振周波数を決定するために、アクチュエータの動作に先立って、1つ以上の較正を実行することが必要な又は望ましいことがある。この目的のために、或る範囲のセンサ信号周波数にわたって、2つ以上の固定アクチュエーション電圧の各々について、‘スイープ’を実行することができ、それらのセンサ周波数の各々について、対応する直列抵抗が測定される。
図5は、スイープの一例についての一組の結果を示しており、測定された直列抵抗(Ω単位)がy軸72に示され、センサ信号周波数(Hz単位)がx軸74に示され、そして、ライン76は、0Vのアクチュエーション電圧(すなわち、アクチュエーションなし)についてのトレースを示し、ライン78は、150Vのアクチュエーション電圧についてのトレースを示している。グラフから見て取れるように、150Vスイープについての抵抗値は、およそ24KHzにおいてと、およそ40KHzにおいてとで、スイープに沿って2箇所において僅かなジャンプを例証している。
【0060】
0Vスイープについての抵抗値は、AC周波数が変化されるときに、主カーブ(これは単に容量性の複素インピーダンス関数を反映する)に関して変化を示していない。EAP材料における電気機械的なカップリングの効率は、DCバイアス電圧の大きさに依存する(DCバイアスが大きいほど、カップリングが良好である)。0Vバイアスでは、カップリングが殆ど又は全く存在せず、従って、AC信号に対する材料の変形応答はゼロである(又は、測定できないほど小さい)。従って、0Vバイアスでのスイープは、より高い(アクチュエーション誘起)DC電圧でのAC周波数スイープを比較するための都合の良いベースライン(故に、較正ライン)を提供する。
【0061】
デバイスの反共振周波数は、2つのDC電圧について測定された抵抗値間の差が最大であるAC周波数を見つけることによって特定され得る。
図6には、2つの信号トレース76と78との間の差がより明瞭に示されており、測定された抵抗の差82がy軸上にとられ、対応するセンサ信号周波数74がx軸上にとられている。このグラフでは、抵抗における2つの大きめのジャンプをはっきりと視認することができ、2つのうち大きい方は、24kHzで起こっているジャンプである。従って、
図5及び6によって表されたデバイス例での反共振周波数は24kHzである。これが、デバイスの最も高感度の点、すなわち、印加される駆動信号の周波数における変化に対して(又は、印加される駆動周波数が固定である場合に、構造の反共振周波数における変化に対して)直列抵抗が最も敏感である点である。
【0062】
図5及び
図6の例では、0VのDCバイアスが第1のスイープに使用されているが、これに代わる例では、異なる(非ゼロの)第1のバイアスが使用されてもよい。その場合、第1の電圧の大きさに依存して、第1のスイープは中心カーブに対する変化又はピークを示し得る。しかしながら、反共振周波数は、2つのDC電圧について測定された抵抗値間の差が最大である周波数を特定することによって依然として見出され得る。
【0063】
デバイスに負荷を印加する効果を例示するため、
図7は、同じ固定(150V)DCバイアス電圧についてであるが、アクチュエータに印加される異なる負荷に対応した、2つの抵抗72を、周波数74の‘スイープ’に対して示している。ライン86は、デバイスに負荷が印加されない場合のスイープを表している。従って、このラインは、
図5のライン78と等しいが、より狭い範囲の周波数及び抵抗について示されている。ライン88は、アクチュエータに0.01Nの負荷が印加される場合のスイープを表している。見て取れるように、負荷の効果は、〜24kHzのデバイス共振周波数における抵抗の隆起を実効的に‘アイロンがけする’(伸ばす)ことである。デバイスへの0.01Nの印加は、印加される高周波信号によって引き起こされる共振効果の大部分を弱小化するのに十分である。この弱小化は、いっそう小さい負荷の存在を検出することを可能にする。
【0064】
この弱小化効果は、印加される負荷力の大きさが大きいほど高くなる。この関係は、印加された負荷を単に検出するだけでなく、定量的に測定することをも可能にする。負荷の測定を達成するためには、アクチュエータの動作に先立って、追加の較正ステップを実行することが必要なことがある。この較正ステップは、(上述の)反共振周波数の決定の後に実行される。反共振周波数が分かると、固定されたDCバイアス電圧について且つ固定されたAC周波数(すなわち、反共振周波数)についてであるが、デバイスに印加される負荷の関数として直列抵抗を測定して、スイープが実行され得る。この関係が分かると、所与の固定周波数信号について、装置が動作している間にこの関係を利用することで、測定される直列抵抗が、印加された負荷の大きさのほぼ直接的な指標を提供することが可能になる。
【0065】
これを例示するために、
図8に、150Vの固定DCバイアス且つ24kHz(問題としているデバイスの共振周波数)の固定AC周波数でアクチュエータデバイスが駆動される一例についての、測定された直列抵抗94(Ω単位)を時間(任意単位)に対して表す信号92を示す。時間t=350及び時間t=500にて、10グラムの負荷でアクチュエータが荷重されている。これは、各々のケースで抵抗94における鋭い低下をもたらしており、それが、各々に負荷が印加される期間にわたって続いている。
図8から明らかなように、このデバイスは、印加された負荷に対して高速で高精度な応答(これは、センサ用途にとって理想的である)を提供する。このケースでは印加された力の大きさが既に分かっているが、動作に先立って上述の較正ステップを実行することを通じて、
図8に示す種類のグラフをたやすく用いて、負荷イベントのタイミングだけでなく、それらの正確な大きさをも決定し得る。
【0066】
上述のように、アクチュエータと、印加される負荷の大きさ及びタイミングを測定することが可能なセンサとの双方としての、装置の完全な機能性のために、複数の準備としての較正ステップが必要とされ得る。
図9に、装置の動作プロセスの一例におけるステップを示す概略図を示す。装置を動作させるのに先立って実行される準備の較正ステップを表す第1組のステップ群100が示されている。装置の使用中に実行されるステップを表す第2組のステップ群102が示されている。
【0067】
準備ステージ100は、デバイスの共振周波数を決定し、そして、決定された共振周波数において、測定される抵抗と印加された負荷との間の関係を決定するステップを有する。第1の周波数スイープ104が、0Vの印加DCバイアスで実行され、抵抗応答が測定される。次いで、ステップ106にて、好ましくはデバイスの所望のアクチュエーション状態に対応した、固定DCバイアスが印加される。次いで、ステップ108にて、第2の周波数スイープが、固定の非ゼロのDCバイアスで実行され、対応する抵抗値が記録される。次いで、ステップ110にて、2つのスイープの結果が比較され、各々で得られた抵抗値の差が周波数範囲にわたって決定される(
図5及び6参照)。ステップ112にて、測定された抵抗値が最も大きい量だけ異なる周波数が決定され、それによって直接的に反共振周波数が特定される。最後に、ステップ114にて、固定DCバイアス電圧、且つステップ112で決定された反共振周波数に等しい固定AC信号周波数について、印加される負荷に対するデバイスの直列抵抗の較正データが得られる。
【0068】
なお、例えば、装置の動作において可変アクチュエーション範囲が使用されるケースにおいて複数の異なるアクチュエーション位置に関するデータを集めるために、望まれる数のDC電圧に対してステップ106−114を繰り返し得る。
【0069】
較正ステップ100が実行されると、動作ステージ102のステップに従って装置が動作され得る。これは単に、装置が使用されているときに、センサ制御素子48(
図4参照)を利用して(ステップ116)、ステップ112で決定された反共振周波数に等しい周波数で高周波センシング信号を駆動し、そして同時に、EAPの抵抗を経時的に測定することを有する。
【0070】
同時に、ステップ118にて、必要時に、高振幅のアクチュエーションバイアスが印加され、応答しての対応する変形を刺激する。
【0071】
ステップ120にて、ステップ114で得られた較正データによって、ステップ116によって得られた抵抗値がモニタされ、デバイスに印加された負荷の大きさがリアルタイムに決定され得る。異なる大きさの印加アクチュエーション電圧に対して、異なる組の較正データを使用してもよく、例えば、それにより、特定のアクチュエーション状態におけるセンシング機能が可能にされ得る。
【0072】
図9は、装置を使用することに関する1つの単純な例を示している。しかしながら、これに代わる1つ以上の実施形態では、装置の堅牢性及び感度を損なうことなく、準備ステージ100の較正ステップが省略されてもよく、斯くしてシステムの複雑さ及びコストが有利に低減され得る。これらの実施形態によれば、反共振(又は共振)周波数が事前に既知であって、経時的に又は異なる条件下で変化しないことを当てにし得るように、アクチュエータの共振周波数f
rが、装置の製造中に厳密に制御される。
【0073】
これらの実施形態によって得られる結果のロバスト性は、(例えば、温度変化による材料共振周波数の可能な変動を考慮に入れるよう、)それらについて小さい負荷依存(インピーダンス)応答が分かっている(1つ以上の)印加駆動信号周波数についてデバイスのインピーダンスを経時的に追加測定することによって、更に高められ得る。例えば、調波(すなわち、f
r/2、f
r/3、f
r/5)との同時性を回避し、ひいては、測定インピーダンスの考え得る負荷依存性を実質的に排除するために、理想的には、共振周波数よりも低い周波数(例えば、
図5−8に表された装置では、〜20KHz)が使用され得る。
【0074】
より高い(共振に合致する)周波数に関してと実質的に同時にこれらの周波数でのインピーダンスをモニタする(例えば、2つの周波数間で順次に交互にして双方のデータを集める)ことにより、これら2つを比較して、より高い周波数で測定されたインピーダンス変化が、印加された負荷によって引き起こされているのか、それともむしろ、材料の温度(又はその他の物理的な)変化に起因して何らかの自然ドリフトによって引き起こされているのかを決定することが可能である。非共振周波数でのインピーダンス値が期待される‘工場’値からのドリフトを示す場合、これは、負荷に関連しない理由で材料の共振周波数が変化したことを示しており、例えば、共振周波数での負荷を評価することに、異なるように較正されたルックアップテーブルを参照するように切り換えることによって、この変化に対処することができる。
【0075】
この実施形態に従った方法は更に、例えば温度などの外部要因の影響に対して制御された負荷関連インピーダンス測定を提供するために、共振周波数及び非共振周波数についてのインピーダンス測定間の比を決定することを有し得る。
【0076】
1つ以上の実施形態によれば、例えばアレイ又はその他所望のレイアウト/形状にて配置された、上述の例に従った複数のアクチュエータデバイスを有するアクチュエーション及びセンシング装置が提供され得る。例において、それら複数のデバイスは、各々が固有の機械的共振周波数f
rを有するように設けられ得る。斯くして、デバイスのアレイに高周波センシング信号を印加すると、各デバイスの特性(固有)共振周波数を用いて、アレイ内のどのアクチュエータがセンサとして刺激されているかを決定することができ、すなわち、アレイ内のそのセンサ/アクチュエータの位置を与えることができる。
【0077】
例えば、アレイ内の全てのデバイスに、異なる周波数(すなわち、それらのデバイスの既知の異なる共振周波数又は反共振周波数)の信号の順次シリーズを有する共通の駆動信号が印加され得る。周波数の時間スイープがセンサ入力よりも速い場合、それらのデバイスにわたって、刺激された特定のデバイスに対応する周波数についてのみ、対応するインピーダンス低下(又は上昇)が検出可能となる。すなわち、デバイスにまたがって対応する電圧降下(又は上昇)が検出される。すなわち、測定されるインピーダンスは、周波数スイープが刺激されたデバイスに対応するf
rに移動するときに低下し、次いで、スイープがf
rから移動するときに再び上昇すること(又はその逆)になる。
【0078】
以上の詳細な説明では、本発明に従った装置及びシステムの構成及び動作をEAPについて説明したが、本発明は、実際には、他の種類のEAM材料に基づく装置に使用されることができる。従って、別段の指示がない限り、以上でのEAP材料は、他のEAM材料で置き換えられることができる。そのような他のEAM材料は技術的に知られており、当業者は、それらをどこで見つけるべきか及びそれらをどのように適用すべきかを知ることになる。多数のオプションを以下に記載する。
【0079】
EAMデバイスの一般的な細分類は、フィールド駆動EAMと、電流又は電荷(イオン)駆動EAMである。フィールド駆動EAMは、直接的な電気機械的カップリングを通じて電場によって作動されるが、電流又は電荷駆動EAMのアクチュエーション機構は、イオンの拡散を伴う。後者の機構は、例えばEAPなどの対応する有機EAMで、より頻繁に見られる。フィールド駆動EAMは、一般に、電圧信号で駆動され、対応する電圧ドライバ/コントローラを必要とするが、電流駆動EAMは、一般に、電流信号又は電荷信号で駆動され、時にして、電流ドライバを必要とする。どちらのクラスの材料も複数の系列メンバを有し、各々が自身の利点及び欠点を有する。
【0080】
フィールド駆動EAMは、有機材料又は無機材料とすることができ、有機である場合、単一分子、オリゴマー又はポリマーとすることができる。本発明では、それらは好ましくは、有機であり、その場合にはまた、オリゴマー又は更にはポリマーである。有機材料及び特にポリマーは、アクチュエーション特性を、例えば軽量、安価な製造、及び容易な処理などの材料特性と組み合わせるので、ますます関心が高まっている新たに出現したクラスの材料である。
【0081】
フィールド駆動EAM、及び故にまたEAPは、一般的に圧電性であるとともに場合により強誘電性の材料であり、故に、自発的な永久分極(双極子モーメント)を有し、又は、電歪材料であり、故に、駆動時のみに分極(双極子モーメント)を有し、駆動されないときには分極を有さず、又は、誘電リラクサ材料である。そのようなポリマーは、以下に限られないが、圧電ポリマー、強誘電性ポリマー、電歪ポリマー、リラクサ強誘電性ポリマー、誘電エラストマー、液晶エラストマーを含む。
【0082】
自発分極の欠如は、非常に高い動作周波数であっても電歪がヒステリシス損失を殆ど又は全く示さないことを意味する。これらの利点は、しかしながら、温度安定性の犠牲の下で得られる。リラクサは、温度がおよそ10℃以内に安定化されることが可能な状況で最良に動作する。これは、一見すると極端に制限的であるように見え得るが、電歪が高周波及び非常に低い駆動フィールドで優れることを考慮すると、用途は特殊なマイクロアクチュエータにある傾向がある。このような小型デバイスの温度安定化は、比較的単純であり、全体的な設計及び開発のプロセスにおいて僅かな問題しか示さないことが多い。
【0083】
好ましくは、EAM又はEAP材料は電歪ポリマーである。より好ましくは、それはリラクサ強誘電体材料である。そのような材料は、良好な実用的用途に十分な高さの電歪定数を有することができ、すなわち、同時センシング及びアクチュエーション機能に有利である。リラクサ強誘電体材料は、それにゼロ駆動電界(すなわち、電圧)が印加されているときは非強誘電性であるが、駆動中は強誘電性となる。従って、非駆動時には材料内に電気機械的な結合が存在しない。電気機械的な結合は、駆動信号が印加されたときに非ゼロになり、上述の手順に従って駆動信号の上に小振幅高周波信号を印加することによって測定されることができる。リラクサ強誘電体材料は、また、非ゼロの駆動信号での高い電気機械的結合と良好なアクチュエーション特性との独特な組み合わせの恩恵を受ける。
【0084】
最も一般的に使用される無機リラクサ強誘電体材料の例は、マグネシウムニオブ酸鉛(PMN)、マグネシウムニオブ酸鉛−チタン酸鉛(PMN−PT)及び鉛ランタンジルコン酸チタン酸鉛(PLZT)である。しかし、他のものも技術的に知られている。
【0085】
フィールド駆動EAPの例は、圧電ポリマー、強誘電性ポリマー、電歪ポリマー(例えば、PVDFベースのリラクサポリマー又はポリウレタンなど)、誘電エラストマー及び液晶エラストマー(LCE)である。故に、好ましくは、EAP材料は、例えば、PVDF系リラクサ強誘電体ベースのポリマーなどの、リラクサ強誘電性ポリマーである。そのような材料は、以下の材料の群から選択されるいずれか1つとし得る。
【0086】
電歪ポリマーのサブクラスは、以下に限定されないが、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン−三フッ化エチレン(PVDF−TrFE)、ポリフッ化ビニリデン−三フッ化エチレン−クロロフルオロエチレン(PVDF−TrFE−CFE)、ポリフッ化ビニリデン−三フッ化エチレン−クロロトリフルオロエチレン(PVDF−TrFE−CTFE)、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVDF−HFP)、ポリウレタン、又はそれらの混合物を含む。
【0087】
電流駆動されるEAM及びEAPは、共役ポリマー、イオン性ポリマー金属複合材料、イオン性ゲル、及びポリマーゲルを有する。
【0088】
イオン駆動EAPの例は、共役ポリマー、カーボンナノチューブ(CNT)ポリマー複合材料、及びイオン性ポリマー金属複合材料(IPMC)である。
【0089】
誘電エラストマーのサブクラスは、以下に限定されないが、アクリレート、ポリウレタン、シリコーンを含む。
【0090】
共役ポリマーのサブクラスは、以下に限定されないが、ポリピロール、ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン、ポリ(p−フェニレンスルフィド)、ポリアニリンを含む。
【0091】
以上の材料は、純粋材料として、又はマトリクス材料に懸濁された材料として実装され得る。マトリクス材料はポリマーを有することができる。
【0092】
EAM材料を有する何らかのアクチュエーション構造に対して、印加駆動信号に応答してEAM層の挙動に影響を及ぼすための追加の受動層が設けられてもよい。
【0093】
EAPデバイスのアクチュエーション構成又は構造は、電気活性材料の少なくとも一部に制御信号又は駆動信号を提供するための1つ以上の電極を有することができる。好ましくは、この構成は2つの電極を有する。EAPは、2つ以上の電極間に挟まれ得る。この挟み込みは、エラストマー誘電材料を有するアクチュエータ構成に必要とされる。何故なら、そのアクチュエーションが、とりわけ、電極が駆動信号によって互いに引き付け合うことによって加えられる圧縮力に因るからである。これら2つ以上の電極は、エラストマー誘電材料に埋め込まれることもできる。電極はパターン化されていてもいなくてもよい。
【0094】
基板は、アクチュエーション構成の一部とすることができる。それは、EAP及び電極の集合体に、電極間に、又は外側で電極のうちの一方上に、取り付けられることができる。
【0095】
電極は、それらがEAM材料層の変形に追従するように伸張可能とし得る。これは、EAP材料にとって特に有利である。電極に適した材料も知られており、例えば、金、銅、又はアルミニウムなどの薄い金属膜、又は例えばカーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、ポリアニリン(PANI)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)(例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS))などの有機導電体からなる群から選択され得る。例えば、(例えばアルミニウムコーティングを用いて)金属化されたポリエチレンテレフタレート(PET)などの、金属化ポリエステル膜も使用され得る。
【0096】
これら様々な層の材料は、例えば、これら様々な層の弾性率(ヤング率)を考慮して選択されることになる。
【0097】
デバイスの電気的又は機械的挙動を適応させるために、上述したものへの追加の層(例えば追加のポリマー層など)が使用されてもよい。
【0098】
このデバイスが単一のアクチュエータとして使用されてもよいし、あるいは、例えば2D又は3Dの輪郭の制御を提供するために、列又はアレイをなす複数のデバイスが存在してもよい。
【0099】
本発明は、アクチュエータのパッシブマトリクスアレイに関心ある場合の例を含め、多くのEAP用途に適用されることができる。
【0100】
多くの用途において、製造物の主な機能は、ヒト組織の(局所的な)操作、又は組織接触境界面の作動を当てにする。そのような用途において、EAPアクチュエータは、小さいフォームファクタ、柔軟性、及び高いエネルギー密度に主に起因して、特有の利点を提供する。従って、EAPは、軟らかい、3D形状をした、且つ/或いは小型の製造物及び境界面に、容易に統合されることができる。そのような用途の例は、以下である:
例えば、皮膚にハリを与えたり皺を減らしたりするために皮膚に一定又は周期的な伸張を適用するEAPベースの皮膚パッチの形態の皮膚作動装置などの、皮膚美容処置;
顔の赤い跡を抑制又は防止する交番正常圧力を皮膚に提供するための、EAPベースのアクティブクッション又はシールを有する患者インターフェイスマスクを備えた呼吸装置;
適応シェービングヘッドを備えた電気シェーバであり、密接性と刺激との間のバランスに影響を与えるために、EAPアクチュエータを用いて皮膚接触面の高さを調節することができる電気シェーバ;
例えば、特に歯間の隙間において、スプレイの到達範囲を改善するために動的なノズルアクチュエータを用いるエアーフロスなどの、口腔洗浄装置であり、それに代えて、歯ブラシが、アクティブにされるタフトを備えていてもよい、口腔洗浄装置;
ユーザインタフェースの中又は近くに統合されたEAPトランスデューサのアレイを介して局所的な触覚フィードバックを提供する家電機器又はタッチパネル;
蛇行した血管内での容易なナビゲーションを可能にする操縦可能な先端を有するカテーテル。
【0101】
EAPアクチュエータの恩恵を受ける別カテゴリーの関連用途は、光の変更に関する。EAPアクチュエータを用いた形状又は位置の適応によって、例えばレンズ、反射面、回折格子などの光学素子を適応可能なものにすることができる。ここでのEAPの利点は、例えば、低めの電力消費である。
【0102】
開示の実施形態への他の変形が、図面、本開示及び添付の請求項の検討から、特許請求される発明を実施する際に当業者によって理解されて実現され得る。請求項において、用語“有する”はその他の要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞“a”又は“an”は複数を排除するものではない。特定の複数の手段が相互に異なる従属項に記載されているという単なる事実は、それらの手段の組合せが有利に使用され得ないということを指し示すものではない。請求項中の如何なる参照符号も、範囲を限定するものとして解されるべきでない。