(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6589072
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】3次元プリンタ用の微粉末リコータ
(51)【国際特許分類】
B29C 64/329 20170101AFI20191001BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20191001BHJP
B22F 3/105 20060101ALI20191001BHJP
B22F 3/16 20060101ALI20191001BHJP
B28B 1/30 20060101ALI20191001BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20191001BHJP
【FI】
B29C64/329
B29C64/153
B22F3/105
B22F3/16
B28B1/30
B33Y30/00
【請求項の数】20
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-560191(P2018-560191)
(86)(22)【出願日】2017年5月22日
(65)【公表番号】特表2019-516585(P2019-516585A)
(43)【公表日】2019年6月20日
(86)【国際出願番号】US2017033834
(87)【国際公開番号】WO2017205289
(87)【国際公開日】20171130
【審査請求日】2019年1月22日
(31)【優先権主張番号】15/161,361
(32)【優先日】2016年5月23日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516046581
【氏名又は名称】ザ エクスワン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【弁理士】
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】デュガン、アンソニー、エス
(72)【発明者】
【氏名】クライン、アンドリュー、ピー
(72)【発明者】
【氏名】ボルト、ジョゼフ、ジェイ
【審査官】
北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−517194(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/196149(WO,A1)
【文献】
特開2012−246541(JP,A)
【文献】
特開2014−125643(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/176432(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00−64/40
B22F 3/105
B22F 3/16
B28B 1/30
B33Y 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リコータであって、
(i)造形粉末を収容するように適合されたホッパー、
(ii)メッシュを含む底部を有するチェンバ、および
(iii)当該ホッパーから当該チェンバへ当該造形粉末を制御可能に側方へ放出するように適合された開口
を具備する移動式粉末ディスペンサと、
当該粉末ディスペンサに作動的に接続された振動装置とを備え、
当該チェンバは当該開口の脇にあり、当該振動装置は当該造形粉末を当該ホッパーから当該開口を介して選択的に流出させることにより、当該造形粉末が当該メッシュから放出されるように適合されていることを特徴とするリコータ。
【請求項2】
前記チェンバは前記開口から放出された前記造形粉末の少なくとも一部を受け取り、当該受け取った造形粉末を前記メッシュへ運ぶように適合された傾斜面を含むことを特徴とする、請求項1のリコータ。
【請求項3】
前記ホッパーは前記開口に近接して弓状面を有する底部区間を備える、請求項1のリコータ。
【請求項4】
前記ホッパーは傾斜した平坦面を有する底部区間を備える、請求項1のリコータ。
【請求項5】
輸送支持装置および振動緩衝装置をさらに含むリコータであって、当該輸送支持装置は前記粉末ディスペンサを粉末床の上で輸送するように適合されており、前記粉末ディスペンサは当該振動緩衝装置によって少なくとも部分的に当該輸送支持装置の振動から隔離されていることを特徴とする、請求項1のリコータ。
【請求項6】
前記振動装置は超音波周波数領域で振動するように適合されている、請求項1のリコータ。
【請求項7】
前記メッシュを介して放出された前記粉末を平滑化するように適合された平滑化装置をさらに含む、請求項1のリコータ。
【請求項8】
前記開口のサイズを選択的に制御するように適合されたゲートをさらに含む、請求項1のリコータ。
【請求項9】
前記メッシュの少なくとも一部を塞ぐように適合された平面カバーをさらに含む、請求項1のリコータ。
【請求項10】
前記ホッパーは前記開口に近接して弓状面を有する底部区間を備え、当該弓状面の半径は1.2センチメートル以上であることを特徴とする、請求項1のリコータ。
【請求項11】
リコータを備える粉末層3次元プリンタであって、当該リコータは、
(i)造形粉末を収容するように適合されたホッパー、
(ii)メッシュを含む底部を有するチェンバ、および
(iii)当該ホッパーから当該チェンバへ当該造形粉末を制御可能に側方へ放出するように適合された開口
を具備する移動式粉末ディスペンサと、
当該粉末ディスペンサに作動的に接続された振動装置とを含み、
当該チェンバは当該開口の脇にあり、当該振動装置は当該造形粉末を当該ホッパーから当該開口を介して選択的に流出させることにより、当該造形粉末が当該メッシュから放出されるように適合されていることを特徴とする粉末層3次元プリンタ。
【請求項12】
前記チェンバは前記開口から放出された前記造形粉末の少なくとも一部を受け取り、当該受け取った造形粉末を前記メッシュへ運ぶように適合された傾斜面を含むことを特徴とする、請求項11の粉末層3次元プリンタ。
【請求項13】
前記ホッパーは前記開口に近接して弓状面を有する底部区間を備える、請求項11の粉末層3次元プリンタ。
【請求項14】
前記ホッパーは傾斜した平坦面を有する底部区間を備える、請求項11の粉末層3次元プリンタ。
【請求項15】
輸送支持装置および振動緩衝装置をさらに含む粉末層3次元プリンタであって、当該輸送支持装置は前記粉末ディスペンサを粉末床の上で輸送するように適合されており、前記粉末ディスペンサは当該振動緩衝装置によって少なくとも部分的に当該輸送支持装置の振動から隔離されていることを特徴とする、請求項11の粉末層3次元プリンタ。
【請求項16】
前記振動装置は超音波周波数領域で振動するように適合されている、請求項11の粉末層3次元プリンタ。
【請求項17】
前記メッシュを介して放出された前記粉末を平滑化するように適合された平滑化装置をさらに含む、請求項11の粉末層3次元プリンタ。
【請求項18】
前記開口のサイズを選択的に制御するように適合されたゲートをさらに含む、請求項11の粉末層3次元プリンタ。
【請求項19】
前記メッシュの少なくとも一部を塞ぐように適合された平面カバーをさらに含む、請求項11の粉末層3次元プリンタ。
【請求項20】
前記ホッパーは前記開口に近接して弓状面を有する底部区間を備え、当該弓状面の半径は1.2センチメートル以上であることを特徴とする、請求項11の粉末層3次元プリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元印刷に使用するための粉末リコータ、およびかかる粉末リコータを有する3次元プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、さまざまな種類の3次元プリンタがある。3次元プリンタとは、1つ以上の材料を系統的に積み重ねることにより3次元の物品の電子的表現を物品それ自体に変換する装置である。本発明の装置は、順次積み重ねられた粉末層の予め選択された領域を選択的に結合させることにより3次元の物品を作り出す種類の3次元プリンタに特に有用である。このような種類の3次元プリンタは、3次元物品を構築するために造形材料として粉末の層を用いるので、本明細書では「粉末層3次元プリンタ」と呼ぶことにする。このような粉末層3次元プリンタの例として、結合剤噴射3次元プリンタ、選択的焼結3次元プリンタおよび電子ビーム溶融3次元プリンタが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0003】
「粉末」という用語は、当技術分野では「粒子物質」または「粒子」と呼ばれることもあると理解されたい。「粉末」という用語は、本明細書では、どのような名称であれ、3次元プリンタで層形成材料として使われるあらゆる材料を意味するものと解釈されるべきである。粉末は、粉末の形態にできる物質であれば、例えば金属、プラスチック、セラミックス、炭素、黒鉛、複合材料、鉱物およびこれらの組み合わせなど、いかなる種類のもので構成してもよい。本明細書で使用する「造形粉末」という用語は、粉末層を形成するために用いられる粉末であって、粉末層3次元プリンタで物品を構築するための材料となる粉末を意味する。
【0004】
粉末層3次元プリンタの動作中、造形粉末の第1の層は垂直方向に割り出しできる造形プラットフォームの上に堆積し、次いで、第1の粉末層の上に後続の粉末層が一度に1層ずつ堆積していく。選択された粉末層の選択部分が互いに結合されるように処理することにより、1つ以上の3次元物品が形成される。堆積した粉末層のうち互いに結合していない部分を、本明細書では「粉末床」と総称する。
【0005】
粉末層を形成するプロセスを当技術分野では「リコーティング」と呼ぶことがあり、本明細書ではその呼称を用いる。リコーティングを行う特定の粉末層3次元プリンタの装置またはそのような複数の装置の組合せを当技術分野では「粉末リコータ」又はより単純に「リコータ」と呼ぶことがあり、本明細書ではその呼称を用いる。
【0006】
一部の粉末層3次元プリンタでは、まず、貯蔵部内で粉末を支持するプラットフォームを所定量だけ上方に割り送ることによって貯蔵部壁の上方に所定量の粉末を上昇させ、次に、例えばドクターブレードや反転ローラを用いて当該プラットフォームまたは粉末床の上面全体に当該所定量の粉末を押し出し、上部が開いた定置式の粉末貯留部から所定量の造形粉末を移送することにより、各粉末層を形成する。そのようなリコータの例は、Cimaらに付与された米国特許第5,387,380号に記載されている。そのようなリコータは、一般的に、リコーティング方向の長さが数十センチメートル以下の比較的小型の粉末床での使用に限られる。
【0007】
一部の粉末層3次元プリンタでは、移動式の粉末ディスペンサを備えるリコータによって、造形プラットフォームまたは既存の粉末床の上に各粉末層を堆積させ、当該ディスペンサは、当該造形プラットフォームまたは当該粉末床をトラバースする際に開口スリットを介して造形粉末を分配する。そのようなリコータの例は、Hochsmannらに付与された米国特許第7,799,253B2号に記載されている。そのようなリコータは、粉末層の上部を平滑にするように適合された装置を含んでも含まなくてもよい。本明細書で使用する「平滑化」という用語は、或る量の粉末に関して次の少なくとも1つの操作を実施することを意味する。すなわち、(a)当該或る量の粉末の少なくとも一部を層に成形すること、(b)当該或る量の粉末から成る層の少なくとも一部の表面の粗さを低減すること、および(c)当該或る量の粉末から成る層の少なくとも一部を圧縮すること、のうちの少なくとも1つである。本明細書では、或る量の粉末を平滑化するための機構を「平滑化装置」と呼ぶ。
【0008】
近年開発された粉末層3次元プリンタ用のリコータは、側面または底面にメッシュ(スクリーンまたは篩い)を備えた移動式粉末ディスペンサから粉末を放出することにより、当該メッシュを介して粉末を粉末床に分配することができる。そのようなリコータの例は、Bullerらへ付与された米国特許第9,254,535B2号に記載されている。そのようなリコータは、平滑化装置を含んでも含まなくてもよい。
【0009】
移動式粉末ディスペンサを含む先行技術のリコータにおける1つの問題点は、微粉末の使用にあまり適合していないことである。本明細書で使用する微粉末という用語は、重力と比較して表面に関連する力が無視できないために流れおよび/または凝集の問題が生じやすい造形粉末を意味する。一般的に、微粉末の平均有効径は20ミクロン未満であるが、表面関連の力が大きい一部の粉末物質では、平均有効径が20ミクロンを超えるものがこの微粉末の定義に当てはまる。表面関連の力は、或る粒子が別の粒子を引き寄せる生来的な力のみならず、粒子の表面を少なくとも部分的に覆う物質(例えば吸着湿分)によって生じる力も含まれることを理解されたい。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、微粉末とともに使用するように適合された粉末層3次元プリンタ用リコータを提供する。本発明のリコータは、造形粉末を収容するように適合されたホッパー部を有する制御可能に振動する移動式粉末ディスペンサと、当該粉末を制御可能に側方のチェンバ内に放出するための開口とを備え、当該チェンバは当該開口の脇にあり、当該チェンバの底部の少なくとも一部を構成するメッシュを有する。当該リコータはまた、移動式粉末ディスペンサに作動的に接続された振動装置を備え、当該振動装置は、当該粉末を当該ホッパーから当該開口を介して選択的に流出させ、当該粉末が当該メッシュを介して放出されるように適合されている。このようなリコータは、微粉末の分配に関わる前述の問題を克服することができるが、一部の実施態様において、当該リコータは、粉末層3次元印刷のための任意のサイズまたは種類の造形粉末を分配するように適合されていることを理解されたい。
【0011】
一部の実施態様において、本発明のリコータは、当該メッシュを介して分配された当該粉末を平滑にするように適合された平滑化装置をさらに含む。平滑化装置の例として、ローラ、反転ローラ、ドクターブレードおよびタンピングプラテンが挙げられる。一部の実施態様において、当該平滑化装置は、分配された粉末を選択可能な量だけ圧縮して密度レベルを高めるように適合されている。
【0012】
別の局面において、本発明は、上の2つの段落で説明したリコータを有する粉末層3次元プリンタをも含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の特徴および利点の重要性を、添付の図面を参照して以下により詳しく説明する。ただし、添付の図面は説明目的のためにのみ作成されており、本発明の範囲を規定するものではないことを理解されたい。
【0014】
【
図1】粉末層3次元プリンタ10の一実施態様の概略斜視図である。
【0015】
【
図2A-2C】一実施態様のリコータ22の、それぞれ正面、背面および底面の斜視図である。
【0016】
【
図3A】
図2Aの横断面3−3に沿って切断した粉末ディスペンサ24を、リコータ22の他の部分から切り離して示す断面斜視図である。
【0017】
【
図3B】粉末ディスペンサ24のうち
図3Aの破線枠3Bに囲まれた下部を拡大して示す側面断面図である。
【0018】
【
図4】粉末ディスペンサの一実施態様(粉末ディスペンサ60)を、移動支持機構から切り離して示す断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本セクションでは、本発明の好ましい実施態様のいくつかを、当業者が過度な実験を行うことなく本発明を実施できるよう十分詳細に示す。ただし、本セクションに記載される限られた数の好ましい実施態様は、特許請求の範囲に示す本発明の範囲を何ら制限するものではないことを理解されたい。
【0020】
本セクションまたは本明細書の他のいずれかの部分に値の範囲が記載される場合、当該範囲は常に、両端点とその間にあるすべての点をあたかもそれらが明示的に記載されているかのように含むことを理解されたい。他に明記しない限り、本明細書で使用する用語「約」および「実質的に」は、その「約」および「実質的に」という語が修飾する値または状態に関連する通常の計測限度および/または製造限度を意味するものとして解釈されたい。特に断りのない限り、本明細書で使用する「実施態様」という用語は、本発明の実施態様を意味する。
【0021】
「移動式粉末ディスペンサ」という用語は、造形プラットフォームまたは粉末床を制御可能にトラバースし、その際に造形粉末を造形プラットフォームまたは粉末床の上に分配するように適合された装置を意味すると理解されたい。
【0022】
本発明のリコータは、粉末層3次元プリンタに特に有用である。リコータは任意の種類の粉末層3次元プリンタとともに使用できるが、本セクションでは簡潔化のため、粉末層3次元プリンタの種類として結合剤噴射式3次元プリンタのみを論じる。結合剤噴射式3次元プリンタは、インクジェット印刷用に開発されたものによく似た印刷ヘッドを用いて結合剤を噴射するので、当技術分野では「3次元インクジェットプリンタ」と呼ばれることもある。基本的な結合剤噴射式3次元印刷プロセスは、マサチューセッツ工科大学(MIT)で1980年代に発明され、さらに1990年代に開発されたものであり、以下を含む数々の米国特許に記述されている。Cimaらの第5,387,380号、Sachsらの5,490,882号、Cimaらの第5,490,962号、Cimaらの第5,518,680号、Bredtらの第5,660,621号、Sachsらの第5,775,402号、Sachsらの第5,807,437号、Sachsらの第5,814,161号、Bredtらの第5,851,465号、Cimaらの第5,869,170号、Sachsらの第5,940,674号、Sachsらの第6,036,777号、Sachsらの第6,070,973号、Sachsらの第6,109,332号、Sachsらの第6,112,804号、Vacantiらの第6,139,574号、Sachsらの第6,146,567号、Vacantiらの第6,176,874号、Griffithらの第6,197,575号、Monkhouseらの第6,280,771号、Sachsらの第6,354,361号、Sachsらの第6,397,722号、Sherwoodらの第6,454,811号、Yooらの第6,471,992号、Sachsらの第6,508,980号、Monkhouseらの第6,514,518号、Cimaらの第6,530,958号、Sachsらの第6,596,224号、Sachsらの第6,629,559号、Teungらの第6,945,638号、Sachsらの第7,077,334号、Sachsらの第7,250,134号、Payumoらの第7,276,252号、Pryceらの第7,300,668号、Serdyらの第7,815,826号、Pryceらの第7,820,201号、Payumoらの第7,875,290号、Pryceらの第7,931,914号、Wangらの第8,088,415号、Bredtらの第8,211,226号、およびWangらの第8,465,777号。
【0023】
説明を容易にするために、本明細書のいくつかの箇所において、本発明のリコータからの粉末の放出を、望ましい量の粉末という意味で記述する。本発明は、リコータからの粉末の放出量およびリコータからの粉末の放出速度のうちの一方または両方の制御を含むと理解されたい。
【0024】
図1は、粉末層3次元プリンタ10の一実施態様の概略透視図を示す。粉末層3次元プリンタ10は、垂直方向に割り出しできる造形プラットフォーム(図示せず)を有する取り外し可能な造形ボックス12を含み、さらに粉末床14、リコータ16、および選択的に位置調整可能な結合剤噴射式印刷装置18を備える。動作中、リコータ16は造形プラットフォームまたは粉末床14の上を移動し、造形プラットフォームまたは粉末床14の上に粉末層を堆積させる。リコータ16が平滑化装置(例えば平滑化装置20)を含む場合、堆積した粉末を平滑にして既存の粉末床14の頂面の上に均一な厚さの粉末層を形成するために当該平滑化装置を使用する。この操作は、リコータ16が粉末を分配する粉末床14のトラバース時に行ってもよいし、後にする粉末床14のトラバース時に行ってもよい。所望であれば、さらに別の粉末層を堆積させてもよく、あるいは、結合剤噴射印刷装置18を粉末床14の上で移動させて新たな堆積層の上に結合剤を選択的に堆積させてから、結合剤噴射印刷装置18を粉末床14の左側に退避させて、次の粉末層が粉末床14の上に堆積できるようにしてもよい。
【0025】
図2A〜2Cは、一実施態様のリコータ22の、それぞれ正面、背面および底面の斜視図である。リコータ22は、移動式粉末ディスペンサ24と、モータ駆動式ローラ26の形態をとる平滑化装置とを含み、その両者ともブリッジトロリー28に支持され、粉末床を選択的にトラバースできるようになっている。粉末ディスペンサ24は、所望の量の造形粉末(図示せず)を収容するホッパー30と、粉末を選択的に放出する際に通すメッシュ32とを含む。リコータ22はさらに、粉末ディスペンサ24に作動的に接続された振動装置34を含み、この振動装置34を選択的に作動させることにより、粉末をホッパー30から流出させ、粉末がメッシュ32から放出される。
【0026】
次に
図3A、3Bを参照する。
図3Aは、
図2Aの横断面3−3に沿って切断した粉末ディスペンサ24を、リコータ22の他の部分から切り離して示す断面斜視図である。
図3Bは、粉末ディスペンサ24のうち
図3Aの破線枠3Bに囲まれた下部を拡大して示す側面断面図である。前述のように、粉末ディスペンサ24は、所望の量の粉末を収容するように適合された粉末ホッパー30と、粉末を選択的に放出する際に通すメッシュ32とを含む。粉末ホッパー30の底部には、側方開口36(両端に矢印のある破線で示す)、第1の傾斜した平坦面38、弓状面40、および第2の傾斜した平坦面42がある。粉末ディスペンサ24は、開口36に隣接して選択的に制御可能なゲート44を有し、当該ゲートは開口36から放出される粉末の量を調節するように適合されている。粉末ディスペンサ24はさらに、開口36の脇にチェンバ46を含む。チェンバ46の底部にはメッシュ32がある。粉末ディスペンサ24はまた、チェンバ46の中を目視したり洗浄したりするための、摘みねじ(例えば摘みねじ50)によって取り外し可能にされているウィンドウ48を有する。
【0027】
動作中、粉末ホッパー30に収容される粉末(図示せず)は、振動装置(例えば
図2Bに示す振動装置34)によって攪拌されるまでは所定の場所に留まる。振動装置の選択的な動作によって攪拌された粉末は、粉末ホッパー30の底面全体、すなわち第1の傾斜した平坦面38、弓状面40、および第2の傾斜した平坦面42を流れる。粉末は開口36を介して粉末ホッパー30から流出し、ゲート44の底部を通過してチェンバ46に流入し、そこからメッシュ32を介して粉末ディスペンサ24の外へ分配される。分配は、粉末ディスペンサ24がトロリー(例えば
図2A〜2Cに示すブリッジトロリー28)に支持されながら粉末床または粉末支持プラットフォームを横断する移動の際に行われるのが好ましい。
【0028】
図4は、粉末ディスペンサの別の一実施態様(粉末ディスペンサ60)を、移動支持機構から切り離して示す断面斜視図である。粉末ディスペンサ60は、粉末ディスペンサ24よりも簡単な設計である。粉末ディスペンサ60に含まれる粉末ホッパー62は、底部の弓状面64と側方開口66(両端に矢印のある破線で示す)とを有する。粉末ディスペンサ60はまた、底部にメッシュ70を有するチェンバ68を含む。粉末ディスペンサ60はまた、チェンバ68を部分的に画定する傾斜した平坦面72を含む。メッシュ70の一部を平面カバー74によって選択的に塞ぐことにより、粉末を放出するために利用可能なメッシュ70の量および部分を制御できる。メッシュ70の頂面を塞ぐ平面カバー74が示されているが、メッシュの頂面および/または底面の所望の部分を塞ぐために1つ以上の平面カバーを使用することができる。そのような平面カバーは、例えば長方形、曲線など任意の形状とすることができ、カバーは連続的であってもよいし、粉末が流出できる切り抜きがあってもよい。
【0029】
上述の2つの実施態様のそれぞれで、移動式粉末ディスペンサの粉末ホッパー部は、粉末ホッパーの側方放出開口に近接して底部またはその近傍に弓状面を有するが、すべての実施態様がそのような弓状区間を有するわけではないし、或いは複数の弓状面を有する別の実施態様もある。好ましい実施態様は少なくとも1つの弓状面を含むが、それは、そのような表面が粉末の放出開口への側方の流れを補助すると考えられるからである。また、実施態様においては任意の半径の弓状面を使用できるが、リコータを微粉末とともに使用する場合、そのような弓状面の半径は1.2センチメートル以上であることが好ましい。
【0030】
メッシュは、粉末ディスペンサが粉末床の全幅にわたって造形粉末を放出できるようなサイズであるのが好ましい。一部の実施態様においては、メッシュは、リコータが固定位置から粉末床の全体にわたって粉末を放出できるようなサイズになっている。開口のサイズと形状、構成材料、撚り線サイズなど、メッシュの特性に関する選択は、粒径分布、粒子形状、質量密度、および本発明のリコータとともに使用する造形粉末の流動性に影響するその他の要因によって決まる。粉末のブリッジ形成によって、振動装置を止めたときにメッシュを通した粉末の流れが減る可能性があるので、メッシュ開口のサイズは造形粉末の平均粒径よりずっと大きいことが多い。
【0031】
図2A〜2Cおよび
図3A〜3Bに示す実施態様の一部である振動装置34は、モータ駆動偏心式であり、モータはブリッジトロリー28に支持され、振動機構は粉末ディスペンサ30に直接取り付けられている。あるいは、振動緩衝装置(例えば緩衝支持体29)によって粉末ディスペンサ30を別途ブリッジトロリー28の振動から隔離することにより、粉末ディスペンサ30を作動させるのに必要な振動エネルギー量を最小限に抑え、振動装置構成機器に不要な摩擦が生じたり、振動に伴ってブリッジトロリー28の留め具が緩んだりするのを防ぐ。実施態様においては、粉末ディスペンサを、そのトロリーまたは他の輸送支持装置の振動から少なくとも部分的に隔離するために、当技術分野で既知の任意の振動緩衝装置を使用することができる。どのような振動緩衝装置を使用するかは、その使用場所において粉末ディスペンサが輸送装置に懸架されるか、それとも着座するかによって決まる。ただし、本発明は、粉末ディスペンサがその輸送支持装置の振動から隔離されていない実施態様をも含む。
【0032】
本発明の振動装置に、当技術分野で既知の任意の種類の振動装置を使用することができる。振動装置は、可聴音波および/または超音波範囲で作動することができる。造形粉末の性質および量、粉末ディスペンサの質量および他の物理特性、ならびに粉末ディスペンサがその輸送支持装置の振動から隔離されているか否かに応じて、複数の振動装置および複数種類の振動装置を使用してもよい。1つまたは複数の振動装置は、例えば手動または自動制御システムを用いて、粉末を、粉末ホッパーの側方開口から開口の脇にあるチェンバ内のメッシュの上に選択的に流出させてメッシュを通過させるような配置で作動するように適合されている。実施態様においては、振動装置は、単に粉末ディスペンサに作動的に接続するだけでよく、当該粉末ディスペンサの粉末ホッパー内の造形粉末を当該粉末ホッパーの側方開口を介して選択的に流出させ、当該造形粉末がメッシュを介して分配されるように適合されている。
【0033】
前述の粉末ホッパー30、62の上部は互いに形状が似ているが、実施態様におけるリコータの粉末ホッパーの上部は、所望の量の造形粉末を収容するのに適した任意の形状とすることができる。
【0034】
本発明のリコータ(例えば
図2A〜2Cを参照して説明したリコータ22)は平滑化装置を含んでもよいが、すべての実施態様が平滑化装置を含むわけではない。そのような平滑化装置の例として、ローラ、反転ローラ、ドクターブレードおよびタンピングプラテンが挙げられる。一部の実施態様において平滑化装置は、分配された粉末を選択可能な量だけ圧縮して密度レベルを高めるように適合されている。
【0035】
本発明はまた、前述のいずれかのリコータの実施態様を含む粉末層3次元プリンタ(例えば
図1に示す粉末層3次元プリンタ10)を含む。
【0036】
本発明のごく少数の実施態様のみを示し、説明してきたが、当業者にとっては、請求項に記載される発明の精神と範囲から逸脱することなく本発明に多くの変更と修正を行えることは明らかである。本明細書で特定される米国のすべての特許および特許出願、ならびに米国外のすべての特許および特許出願等の文書は、法の下で認められる最大限の範囲で、本明細書内に省略せずに記載されているかの如く参照により本明細書に組み込まれる。