特許第6589084号(P6589084)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本たばこ産業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6589084-加熱式喫煙物品の製造方法 図000003
  • 特許6589084-加熱式喫煙物品の製造方法 図000004
  • 特許6589084-加熱式喫煙物品の製造方法 図000005
  • 特許6589084-加熱式喫煙物品の製造方法 図000006
  • 特許6589084-加熱式喫煙物品の製造方法 図000007
  • 特許6589084-加熱式喫煙物品の製造方法 図000008
  • 特許6589084-加熱式喫煙物品の製造方法 図000009
  • 特許6589084-加熱式喫煙物品の製造方法 図000010
  • 特許6589084-加熱式喫煙物品の製造方法 図000011
  • 特許6589084-加熱式喫煙物品の製造方法 図000012
  • 特許6589084-加熱式喫煙物品の製造方法 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6589084
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】加熱式喫煙物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A24D 1/02 20060101AFI20191001BHJP
   A24F 47/00 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
   A24D1/02
   A24F47/00
【請求項の数】17
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-520916(P2019-520916)
(86)(22)【出願日】2018年10月5日
(86)【国際出願番号】JP2018037340
【審査請求日】2019年4月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】山本 法生
(72)【発明者】
【氏名】豊島 重博
【審査官】 黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】 特表2017−501676(JP,A)
【文献】 特表2013−523109(JP,A)
【文献】 特開昭62−118876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24D 1/00− 1/18
A24F 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
たばこロッド、当該たばこロッドに当接する冷却セグメント、ならびにフィルターセグメントを備える喫煙物品の製造方法であって、
(A)チップペーパーの一方の面に、単位面積当たりの固化後の接着剤重量が多い部分と少ない部分を形成するように接着剤を配する工程であって、
前記たばこロッドをラップする領域に、前記接着剤重量が多い部分を設ける工程、ならびに
(B)前記たばこロッド、冷却セグメント、ならびにフィルターセグメントを備える複合セグメントを準備して当該チップペーパーで当該複合セグメントをラップする工程、
を備える製造方法。
【請求項2】
前記接着剤重量が多い部分における前記接着剤重量が、前記接着剤重量が少ない部分の当該重量の1.5〜3倍である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記工程(A)において、前記接着剤重量が多い部分を、前記たばこロッドと冷却セグメントとの当接面を始点として、たばこロッドの長手方向に20〜40%の位置を終点とする領域に設ける、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記チップペーパーで巻装した場合にたばこロッド側の最先端に位置するチップペーパーの領域をチップペーパーの先端とするとき、
前記工程(A)において、当該先端部分に非接着部分を設ける、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記工程(A)において、前記チップペーパーの冷却セグメントをラップする領域に、非接着部分を設ける、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記工程(B)における複合セグメントが、1対の前記複合セグメントを、フィルターセグメント端面同士が当接するように配置してなる倍長複合セグメントである、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記当接部をラップする領域近傍に、非接着部分を設ける、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記非接着部分に開孔を設ける工程をさらに含む、請求項5に記載の製造方法。
【請求項9】
前記非接着部分に印刷を施す工程をさらに含む、請求項5または8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記たばこロッドの直径が、隣接する冷却セグメントの直径よりも大きい、請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
前記たばこロッドの直径が、隣接する冷却セグメントの直径より0.05〜0.15mm大きい、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記たばこロッドの直径が、隣接する冷却セグメントの直径より0.5〜2.5%大きい、請求項10に記載の製造方法。
【請求項13】
前記たばこロッドと隣接する冷却セグメントの剛性が、当該たばこロッドの剛性よりも大きい、請求項1〜12のいずれかに記載の製造方法。
【請求項14】
たばこロッド、当該たばこロッドに当接する冷却セグメント、フィルターセグメント、ならびにこれらをラップするチップペーパーを備える喫煙物品であって、
当該チップペーパーが、単位面積当たりの固化後の接着剤重量が多い部分と少ない部分を有し、
当該チップペーパーの前記たばこロッドをラップする領域に、前記接着剤重量が多い部分を備える、喫煙物品。
【請求項15】
前記接着剤重量が多い部分における前記接着剤重量が、前記接着剤重量が少ない部分の当該重量の1.5〜3倍である、請求項14に記載の喫煙物品。
【請求項16】
前記チップペーパーが、前記冷却セグメントをラップする領域に非接着部分を有する、請求項14または15に記載の喫煙物品。
【請求項17】
前記チップペーパーが、前記フィルターセグメントをラップする領域に非接着部分を有する、請求項14〜16のいずれかに記載の喫煙物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加熱式喫煙物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気加熱たばこ等の加熱式喫煙物品は発生したエアロゾルを十分に冷却する必要がある。このため特許文献1にはたばこロッドに隣接した紙管を備える加熱式喫煙物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/198838号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的な燃焼式喫煙物品と異なり、加熱式喫煙物品は剛度等の性質の異なる部材を備える。このため、チップペーパーに接着剤を一様に塗布して加熱式喫煙物品を製造すると、たばこロッド部分が脱落するいわゆる首抜けや、製品に皺が発生する等の不具合が生じていた。かかる事情を鑑み、本発明は首抜けや皺の発生が低減された加熱式喫煙物品を製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らは、チップペーパーの特定の領域における接着剤量を最適化することで前記課題を解決した。すなわち、前記課題は以下の本発明によって解決される。
[態様1]たばこロッド、当該たばこロッドに当接する冷却セグメント、ならびにフィルターセグメントを備える喫煙物品の製造方法であって、
(A)チップペーパーの一方の面に、単位面積当たりの固化後の接着剤重量が多い部分と少ない部分を形成するように接着剤を配する工程であって、
前記たばこロッドをラップする領域に、前記接着剤重量が多い部分を設ける工程、ならびに
(B)前記たばこロッド、冷却セグメント、ならびにフィルターセグメントを備える複合セグメントを準備して当該チップペーパーで当該複合セグメントをラップする工程、製造方法。
[態様2]前記接着剤重量が多い部分における前記接着剤重量が、前記接着剤重量が少ない部分の当該重量の1.5〜3倍である、態様1に記載の製造方法。
[態様3]前記工程(A)において、前記接着剤重量が多い部分を、前記たばこロッドと冷却セグメントとの当接面を始点として、たばこロッドの長手方向に20〜40%の位置を終点とする領域に設ける、態様1または2に記載の製造方法。
[態様4]前記チップペーパーで巻装した場合にたばこロッド側の最先端に位置するチップペーパーの領域をチップペーパーの先端とするとき、
前記工程(A)において、当該先端部分に非接着部分を設ける、態様1〜3のいずれかに記載の製造方法。
[態様5]前記工程(A)において、前記チップペーパーの冷却セグメントをラップする領域に、非接着部分を設ける、態様1〜4のいずれかに記載の製造方法。
[態様6]前記工程(B)における複合セグメントが、1対の前記複合セグメントを、フィルターセグメント端面同士が当接するように配置してなる倍長複合セグメントである、態様1〜5のいずれかに記載の製造方法。
[態様7]前記当接部をラップする領域近傍に、非接着部分を設ける、態様6に記載の製造方法。
[態様8]前記非接着部分に開孔を設ける工程をさらに含む、態様5に記載の製造方法。
[態様9]前記非接着部分に印刷を施す工程をさらに含む、態様5または8に記載の製造方法。
[態様10]前記たばこロッドの直径が、隣接する冷却セグメントの直径よりも大きい、態様1〜9のいずれかに記載の製造方法。
[態様11]前記たばこロッドの直径が、隣接する冷却セグメントの直径より0.05〜0.15mm大きい、態様10に記載の製造方法。
[態様12]前記たばこロッドの直径が、隣接する冷却セグメントの直径より0.5〜2.5%大きい、態様10に記載の製造方法。
[態様13]前記たばこロッドと隣接する冷却セグメントの剛性が、当該たばこロッドの剛性よりも大きい、態様1〜12のいずれかに記載の製造方法。
[態様14]たばこロッド、当該たばこロッドに当接する冷却セグメント、フィルターセグメント、ならびにこれらをラップするチップペーパーを備える喫煙物品であって、
当該チップペーパーが、単位面積当たりの固化後の接着剤重量が多い部分と少ない部分を有し、
当該チップペーパーの前記たばこロッドをラップする領域に、前記接着剤重量が多い部分を備える、喫煙物品。
[態様15]前記接着剤重量が多い部分における前記接着剤重量が、前記接着剤重量が少ない部分の当該重量の1.5〜3倍である、態様14に記載の喫煙物品。
[態様16]前記チップペーパーが、前記冷却セグメントをラップする領域に非接着部分を有する、態様14または15に記載の喫煙物品。
[態様17]前記チップペーパーが、前記フィルターセグメントをラップする領域に非接着部分を有する、態様14〜16のいずれかに記載の喫煙物品。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、首抜けや皺の発生が低減された加熱式喫煙物品を製造する方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】加熱式喫煙物品の一態様を示す図
図2】本発明のチップペーパーの一態様を示す図
図3】本発明のチップペーパーの別態様を示す図
図4】ローラーによって接着剤を配する工程の説明図
図5】ローラーによって接着剤が配されたチップペーパーの概要図
図6】ノズル吐出によって接着剤が配されたチップペーパーの概要図
図7】剛性の測定方法を説明する図
図8】工程(B)を実施する装置の一態様を示す図
図9】工程(B)の一態様を示す図
図10】工程(B)の一態様を示す図
図11】実施例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、たばこロッド、当該たばこロッドに隣接する冷却セグメント、ならびにフィルターセグメントを備える加熱式喫煙物品の製造方法に関する。本発明においてX〜Yはその端値であるXおよびYを含む。
【0009】
1.加熱式喫煙物品
本発明の加熱式喫煙物品(以下単に「喫煙物品」ともいう)は、たばこロッド、冷却セグメント、およびフィルターセグメントを備える。たばこロッドの一方の端と冷却セグメントの一方の端は当接しており、両者は隣接している。図1(i)は本発明の喫煙物品の一態様を示す。図中、100は喫煙物品、1はたばこロッド、3は冷却セグメント、5はフィルターセグメント、7はチップペーパーである。
【0010】
(1)たばこロッド
たばこロッドとは、たばこ原料に含まれる香喫味成分を発生するための略円柱状の部材であり、たばこ充填材とその周囲を巻装する巻紙を備える。たばこ充填材としては限定されず、例えばたばこ刻、たばこシート等を使用できる。具体的には、乾燥したたばこ葉を幅0.8〜1.2mmに裁刻したたばこ刻を巻紙内に充填してよい。また乾燥したたばこ葉を平均粒径が20〜200μm程度になるように粉砕して均一化したものをシート加工し、それを幅0.8〜1.2mmに裁刻したものを巻紙内に充填してもよい。当該シートを裁刻せずにギャザー加工、折り畳み、あるいは渦巻き状にして巻紙内に充填してもよい。当該シートを短冊状に裁断してこれらを巻紙内に、同心円状にあるいは短冊の長手方向がたばこロッドの長手方向と平行になるように充填してもよい。
【0011】
たばこロッド1は、加熱に伴ってエアロゾルを発生してもよい。エアロゾルの発生を促進するためにたばこ充填材にグリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール等のポリオール等のエアロゾル源を添加することが好ましい。エアロゾル源の添加量は、たばこ充填剤の乾燥重量に対して5〜50重量%が好ましく、10〜30重量%がより好ましい。この他、たばこロッドはメントール等の香料を含んでいてもよい。たばこロッド1の長さは限定されないが15〜25mmであることが好ましい。その直径も限定されないが6.5〜7.5mmであることが好ましい。ただし、隣接する冷却セグメント3の剛性が、当該たばこロッドの剛性よりも高い場合は、たばこロッドの直径は、冷却セグメント3の直径より大きいことが好ましい。たばこロッドの変形を低減できるからである。この観点から、たばこロッドの直径は冷却セグメント3の直径より0.5〜2.5%大きいことが好ましく、1.0〜2.0%大きいことがより好ましい。実寸法では、たばこロッドの直径は、冷却セグメント3の直径より0.05〜0.15mm程度大きいことが好ましい。
【0012】
本発明における「剛性」は、特表2016−523565号公報明細書段落0010〜0014に開示されているとおり、部材が変形するときの抵抗を意味する。たばこロッドの側面に負荷Fをかける前と後での直径の変化から剛性を求めることができる。図7において負荷Fがかけられる前のたばこロッドの直径をDs、負荷をかけた後の直径をDdとするとき、押し下げ量はd=Ds−Ddであり、剛性は以下の式で定義される。他の部材についても同様である。
剛性(%)=Dd/Ds×100
【0013】
(2)冷却セグメント
冷却セグメントは、たばこロッド1で発生した香喫味成分やエアロゾルを冷却するための部材である。冷却セグメント3は中空の紙管であってよい。紙管は巻紙やチップペーパーよりも剛性の高いカードボードで構成されることが好ましい。当該紙管には、開孔(ベンチレーション)を設けてもよい。開孔は紙管の円周に沿って複数設けられることが好ましい。作業効率の観点から、開孔は、完成した喫煙物品にレーザー加工を施して設けることが好ましい。また冷却セグメント3内には、熱交換効率を高めるためにギャザー付けされたシートを充填してもよい。冷却セグメント3の寸法は限定されないが、長さは15〜25mmであることが好ましく、直径は5.5〜7.5mmであることが好ましい。ただし、冷却セグメント3に隣接する部材の剛性が、冷却セグメント3の剛性よりも低い場合、冷却セグメント3の直径は、隣接する部材の直径に対して0.5〜2.5%小さいことが好ましく、1.0〜2.0%小さいことが好ましい。一般に、冷却セグメント3がカードボードで構成される紙管を備える場合、当該セグメントの剛性はたばこロッド1の剛性よりも高い。
【0014】
(3)フィルターセグメント
フィルターセグメントはフィルターを備える部材である。フィルターとしてはアセテートフィルターやペーパーフィルター等の公知のフィルター部材を使用できる。ペーパーフィルターとは、紙をクレープローラ等で加工して皺を付けこれをプラグ巻取紙で巻上げて調製される、紙が充填されたフィルターである。アセテートフィルターとはセルロースアセテート繊維が充填されたフィルターである。図1(ii)に示すとおり、フィルターセグメント5は複数の部材から構成されることが好ましく、フィルター51とセンターホール53を備えることがより好ましい。センターホールとしては、例えばアセテートフィルターの中央部に空間を設けたものを使用できる。フィルターセグメント5の長さは限定されないが10〜20mmであることが好ましい。フィルターセグメントとしてセンターホールとアセテートフィルターの両方を配置する場合、その順番は限定されない。また個々の部材がフィルター巻紙(フィルターインナーラッパー)によって巻装され、それらがフィルター成型紙(フィルターアウターラッパー)によって接続されていてもよい。フィルターセグメントの直径は限定されないが、たばこロッド以外の他のセグメントとほぼ同じ直径を有することが好ましい。チップペーパーの破れや皺の発生が抑制できるからである。
【0015】
(4)チップペーパー
チップペーパーは、たばこロッド、冷却セグメント、フィルターセグメントのうち2つ以上を接続するために用いる紙をいう。一方、巻紙は、たばこロッド、冷却セグメント、またはフィルターセグメントを構成する個々の部材を巻装するための紙をいう。例えば、前述のとおり、フィルターセグメントがセンターホールとアセテートフィルターを備える場合、センターホールを巻装する紙、アセテートフィルターを巻装する紙はそれぞれ巻紙である。
【0016】
チップペーパーおよび巻紙に用いられる原紙は、限定されず、セルロース繊維を用いたものを挙げることができる。そのようなセルロース繊維としては、植物由来のもの、化学合成されたもののいずれを用いてもよく、これらの混合物であってもよい。植物由来の繊維としては、亜麻繊維や木材繊維、種子繊維等のパルプが挙げられ、漂白していない有色の未晒パルプとしてもよいが、白く清潔感のある外観とするために、酸化剤、還元剤等の漂白剤を用いて漂白した晒パルプの使用が好ましい。
【0017】
通常のシガレット用の巻紙の場合、巻紙の自然燃焼速度に影響を及ぼし得る通常の燃焼調節剤(助燃剤等)としてクエン酸アルカリ金属塩等が使用される。本発明では燃焼式ではなく加熱式喫煙物品とすることが好ましく、この場合は巻紙を燃焼させる必要がないため、巻紙は燃焼調節剤を含まなくてもよい。
【0018】
巻紙の坪量の下限は、好ましくは30g/m2以上であり、より好ましくは35g/m2以上であり、さらに好ましくは40g/m2以上である。上限は、好ましくは65g/m2以下、より好ましくは50g/m2以下である。また、チップペーパーの坪量の下限は、好ましくは20g/m2以上であり、より好ましくは25g/m2以上であり、さらに好ましくは30g/m2以上である。上限は、好ましくは50g/m2以下、より好ましくは45g/m2以下、さらに好ましくは40g/m2以下である。坪量は、JIS P8124に規定される方法で測定することができる。
【0019】
2.製造方法
図2に本発明の概要を示す。図中、90はラップされる前の喫煙物品すなわち複合セグメント、Oはたばこロッド1と冷却セグメント3の当接部、Yは冷却セグメント3とフィルターセグメント5との当接部、7は複合セグメント90をラップするためのチップペーパー、bは単位面積当たりの固化後の接着剤重量が少ない部分(以下単に「接着部分」ともいう)、1bは、たばこロッド1をラップする領域に設けられた、単位面積当たりの固化後の接着剤重量が多い部分(以下単に「接着剤増量部分」ともいう)、1nはチップペーパー7の先端領域における非接着部分、3nは冷却セグメントをラップする領域における非接着部分、Pはチップペーパー7の円周方向長さである。図2(2)は、接着剤増量部分1b等が複数存在する態様を示す図であり、s1〜s2、t1〜t2、u、vは寸法を示す。チップペーパー7の先端領域とは、チップペーパーで巻装した場合にたばこロッドの最先端に位置するチップペーパーの領域をいう。図3は、複合セグメント90の2倍の長さを有する倍長複合セグメント90wをラップする態様を示す。図中、7wは倍長複合セグメント90wをラップするための倍長チップペーパー、Zは倍長フィルターセグメント5wの長手方向中央部であり、他の付番は図2と同様に定義される。図2、3において、チップペーパーにおける紙面鉛直方向を円周方向といい、紙面水平方向を便宜上、長手方向という。以下、図2を参照して本発明の製造方法を説明する。
【0020】
(1)工程A
本工程では、チップペーパー7の一方の面に接着剤を配する。接着剤を配する手段は限定されず、チップペーパー7に接着剤を塗布する、予め接着剤シートを調製して当該接着剤シートをチップペーパー7に積層する等の手段を用いることができる。例えば、ローラー表面に接着剤を塗布しこれをチップペーパー7に転写する方法や、ノズルから接着剤をチップペーパー7上に吐出する方法等が挙げられる。
【0021】
図4はローラー表面に接着剤を塗布しこれをチップペーパー7に転写する方法の一例を示す。88は表面に所望のパターンで接着剤を保持するための凹部が設けられたパターンローラー、89はパターンローラー88に保持された接着剤を転写するための転写ローラー、85はカウンターローラーである。パターンローラー88の凹部から接着剤が転写ローラー89に転写され、さらに転写ローラー89からチップペーパー7に接着剤が転写される。この際、カウンターローラー85を設けると接着剤の塗布量(転写量)が安定する。さらに図4(2)に示すように、折り返しローラー87を設けると塗布量がより安定する。また、接着剤の量が多いと、チップペーパー7が転写ローラー89から離れにくくなって両者が離れる位置が不安定になるが、第2のカウンターローラー86を設けるとチップぺーパー7に適度なテンションを付与できるため当該位置を安定化できる。図5は当該方法によって接着剤が配されたチップペーパー7の一例を示す。図5において接着剤増量部分1bと接着部分bの境界部分には明確な段差が見られるが、当該段差は存在せずに接着剤増量部分1bから接着部分bにかけてなだらかな斜面が形成されていてもよい。
【0022】
図6はノズルから接着剤をチップペーパー7上に吐出する方法によって得られた接着剤ドットを有するチップペーパー7の一例を示す。例えば図6(1)のように、接着剤ドットの密度を高めることで接着剤増量部分1bを形成できる。また、図6(2)のように、接着剤ドットの直径を大きくすることで接着剤増量部分1bを形成できる。接着剤ドットの直径とは、当該ドットがチップペーパー7面上に形成する円の直径である。あるいは、図6(3)のように接着剤ドットの高さを高くする(図6(3)下図参照)ことで接着剤増量部分1bを形成できる。これらを複数組み合わせて接着剤増量部分1bを形成してもよい。
【0023】
接着剤としては公知のものを使用できるが、中でも酢酸ビニル系接着剤が好ましい。「固化後」とは、溶媒を含む接着剤においては溶媒が除去されて固化した状態、溶媒を含まない架橋型の接着剤においては架橋後の状態をいう。また、単位面積当たりの固化後の接着剤重量を単に「接着剤重量」ともいう。
【0024】
接着部分bとは、接着剤を有する部分のうち接着剤増量部分1b以外の部分である。接着部分bの接着剤重量は適宜調整できるが、0.005〜0.015mg/mm2であることが好ましい。接着部分bの接着層厚みは未固化状態で0.01〜0.03mm程度とすることが好ましい。未固化状態とは接着剤が固化する前の状態をいう。本発明では接着剤増量部分1bにおける接着剤重量を、接着部分bの接着剤重量よりも多くする。一般に接着剤重量を増せば接着強度も向上するが、製品にしわが発生しやすくなる。本発明では接着剤増量部分1b部分の接着剤重量のみを増すので、たばこロッド1の首抜けを防止しかつ他の部分に皺が発生することを防止できる。この観点から、接着剤増量部分1bにおける接着剤重量(1b重量)/接着部分bの接着剤重量(b重量)の比は、1.5〜3.0が好ましく、1.7〜2.7がより好ましい。1b重量は接着剤増量部分1bにおける接着剤重量の平均値である。複数の異なる接着剤重量を有する部分が存在する場合、1b重量は最大の接着剤重量を有する部分の平均接着剤重量、b重量は接着剤増量部分1b以外の接着部分bにおける平均接着剤重量として定義される。
【0025】
接着剤増量部分1bの面積が増えるほど首抜け等の不具合は生じにくくなるが、コスト等を考慮すると接着剤増量部分1bは、たばこロッド1の全面である必要はない。接着剤増量部分1bは、たばこロッドの冷却セグメントとの接合面を始点として、たばこロッドの長手方向に20〜40%の位置を終点とする領域に存在することが好ましい。すなわち、接着剤増量部分1bは、図2における点Oを始点とし、0.2X〜0.4Xを終点とする領域に存在することが好ましい。図2に示すように接着剤増量部分1bは円周方向において2つ存在してもよいし、1つであってもよい。円周方向における強接着部分1bのトータルの長さ(図2(2)においてはs1+s1)は、チップペーパー7の円周方向長さPの70〜90%であることが好ましい。接着剤増量部分1bが円周方向において2つ存在する場合、円周方向端から接着剤増量部分1bまでの距離s2はPの2〜5%であることが好ましい。両者の離間距離s3は、s1およびs2によって適宜調整される。
【0026】
接着剤増量部分1bは冷却セグメント3をラップしない。冷却セグメント3は剛性が低いので、接着剤増部分1bでラップされてしまうと皺が発生しやすくなる。また、冷却セグメント3がカードボードで構成された紙管である場合、坪量が大きいためにたばこロッド1の巻紙に比べて接着剤が浸透しにくい。このため、紙管をラップする領域の接着剤量がたばこロッド1をラップする領域に比べて少ないと、接着剤はみ出し、皺の発生、接着不良等の不具合を抑制できる。
【0027】
チップペーパー7は先端に非接着部分1nを有することが好ましい。先端とは、チップペーパーで巻装した場合にたばこロッド側の最先端に位置するチップペーパーの領域をいう。ラップ時にチップペーパー7の先端部から接着剤がにじみ出ることを防止するためである。チップペーパー7の長手方向における、非接着部分1nの長さuは0.1〜1.0mmであることが好ましい。
【0028】
チップペーパー7は冷却セグメント3をラップする領域に非接着部分3nを有することが好ましい。非接着部分3nを設けると、喫煙物品100としたときに冷却セグメント3にベンチレーションを設けやすい。ベンチレーションは例えば喫煙物品100を製造した後にレーザー加工によって設けることができる。また非接着部分3nには印刷を施すこともできる。例えば非接着部分3nに製造機械を示すコードを印刷しておくと、巻装後にチップペーパー7をはがした際に、コードを判読できる。
【0029】
非接着部分3nは、たばこロッド1の冷却セグメント3との当接面(点O)を基準として冷却セグメント3の長手方向に40〜50%の位置を始点とし、70〜90%を終点とする領域に存在することが好ましい。すなわち、非接着部分3nは図2において0.4〜0.5Yを始点とし、0.7〜0.9Yを終点とする領域に存在することが好ましい。このように非接着部分3nを設けることで、チップペーパー全体の接着力の低下を抑制できる。
【0030】
非接着部分3nは、図2に示すように円周方向において2つ存在してもよいし、1つであってもよい。円周方向における非接着部分3nのトータルの長さ(図2(2)においてはt1+t1)は、チップペーパー7の円周方向長さPの50〜80%であることが好ましい。非接着部分3nが円周方向において2つ存在する場合、円周方向端から非接着部分3nまでの距離t2はPの5〜10%であることが好ましい。両者の離間距離t3は、t1およびt2によって適宜調整される。
【0031】
チップペーパー7は、フィルターセグメント5端近傍に非接着部分5nを有することが好ましい。図3に示すように、喫煙物品100は倍長喫煙物品100wを調製しこれを切断することで製造する場合があるが、この際に、切断が容易となりかつカッターに接着剤が付着することを防止できるからである。チップペーパー7の長手方向における非接着部分5nの長さvは0.5〜1.0mmであることが好ましい。チップペーパー7の長手方向長さは、フィルターセグメント5の吸口端からたばこセグメント1の長手方向0.42X〜0.6Xの範囲までの長さとしてよい。
【0032】
(2)工程B
本工程では、複合セグメント90をチップペーパーで7ラップする。図3に示すように倍長複合セグメント90wをチップペーパーで7ラップしてもよい。この場合、ラップ後に切断して喫煙物品100を得る。
【0033】
ラップは公知の方法に従って実施できる。例えば、本工程は図8に示すように、複数のドラムを備える装置を用いて実施でいる。図中、80fはチップペーパー7の供給装置、80tは移送ドラム、80rはローリングドラム、80hはローリングハンドである。ローリングドラムとは、円周面上に部材を保持する保持部であって、セグメント等の部材がその長手方向中心軸を中心として自転できるような保持部を備えるドラムである。ローリングハンドとは、ローリングドラムの円周面に対向して配置され、当該面との間に一定の距離を有する隙間を形成するための手段である。たばこロッド1と冷却セグメント3とフィルターセグメント5からなるセグメントを複合セグメント90とする。当該複合セグメント90は移送ドラム80tからローリングドラム80rに受け渡される。一方、ローリングドラム80r上のセグメントの円周面には供給装置80fから供給されたチップペーパー7の一部が接着され、前駆体92が形成される(図9参照)。前駆体92は、複合セグメント90に、旗のように接着されたチップペーパー7を備える。すなわち、チップペーパー7の一部は複合セグメント90の円周面に接着されているが、他部は自由である。前駆体92はローリングドラム80rの円周面の保持部にサクション等によって固定され、ローリングドラム80rとローリングハンド80hとの間に形成された隙間に移送される。この隙間を通過する際に前駆体92の円周面全面がチップペーパー7で巻装され、喫煙物品100が形成される(図9参照)。
【0034】
前述のとおり、本発明においてたばこロッド1の直径はこれに隣接する冷却セグメント3の直径より大きいことが好ましい。この場合、ローリングドラム80rおよびローリングハンド80hの面が平坦であると、当該面とたばこロッド1とが過度に接触することとなるため(図10(1))、たばこロッド1に衝撃が加わって充填物が落下するいわゆる先落ちの問題が生じる。さらに円周差による捻じれが発生し、製品に皺が発生する等の不良が生じる。そこで本発明においては、図10(2)および(3)に示すように、ローリングドラム80rまたはローリングハンド80hのたばこロッド1と対向する面に凹部を設けて、たばこロッド1との間に空隙を形成することが好ましい。図10(2)および(3)には、ローリングハンド80hに凹部を設ける態様を示したが、凹部はローリングドラム80rに設けてもよいし、双方に設けてもよい。凹部の深さ(図10(2)および(3)でのT)は適宜調整されるが、0.05〜0.15mmであることが好ましい。この凹部はたばこロッド1と対向する面の全面に設けられる必要はない。図10に示すように凹部はたばこロッド1と対向する面の一部に設けられていればよい。ただし、たばこロッドと他の部材をチップペーパーで確実に接着するためには、2つの部材の境界近傍に凹部は存在しないことが好ましい。
【実施例】
【0035】
[実施例1]
以下の部材を準備した。
直径7.0mm、長さ20.0mmのたばこロッド(日本たばこ産業株式会社製)
冷却セグメントとして直径6.9mm、長さ20.0mmの紙管
直径6.9mmの、センターホール(8.0mm)/倍長アセテートフィルター(14.0mm)/センターホール(8.0mm)からなる倍長フィルターセグメント
【0036】
図3に示すチップペーパーを準備した。各寸法は表1に示した。当該チップペーパーに、接着剤を塗布した。未固化状態での接着層厚みおよび固化後の接着剤重量は表1に示した。
【0037】
【表1】
【0038】
前記部材を配置して図3に示すような倍長喫煙物品を調製した。これを前記チップペーパーでラップして、喫煙物品を得た。得られた喫煙物品には皺がなく良好な外観を示した。さらに得られた喫煙物品の耐首抜け性は良好であった。
【符号の説明】
【0039】
1 たばこロッド
3 冷却セグメント
5 フィルターセグメント
51 アセテートフィルター
53 センターホール
7 チップペーパー
10 たばこセグメント
100 喫煙物品

b 接着部分
1b 高接着部分
1n チップペーパー7の先端における非接着部分
3n 冷却セグメントをラップする部分における非接着部分
P チップペーパー7の円周方向長さ

7w 倍長チップペーパー
100w 倍長喫煙物品

X たばこロッド1の先端部
O たばこロッド1と冷却セグメント3の当接部
Y 冷却セグメント3とフィルターセグメント5との当接部
Z 倍長フィルターセグメント5wの長手方向中央部

80f チップペーパー7の供給装置
80t 移送ドラム
80r ローリングドラム
80h ローリングハンド

85 カウンターローラー
86 第2のカウンターローラー
87 折り返しローラー
88 パターンローラー
89 転写ローラー

90 複合セグメント
92 前駆体
【要約】
たばこロッド、当該たばこロッドに当接する冷却セグメント、ならびにフィルターセグメントを備える喫煙物品の製造方法であって、(A)当該チップペーパーの一方の面に、単位面積当たりの固化後の接着剤重量が多い部分と少ない部分を形成するように接着剤を配する工程であって、前記たばこロッドをラップする領域に、前記接着剤重量が多い部分を設ける工程、ならびに
(B)前記たばこロッド、冷却セグメント、ならびにフィルターセグメントを備える複合セグメントを準備して当該チップペーパーで当該複合セグメントをラップする工程、
を備える製造方法、を提供する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11