特許第6589166号(P6589166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6589166
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】無指向性マイクロホン
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/02 20060101AFI20191007BHJP
   H04R 1/04 20060101ALI20191007BHJP
   H04R 1/28 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
   H04R1/02 106
   H04R1/04 Z
   H04R1/28 320Z
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-116266(P2015-116266)
(22)【出願日】2015年6月9日
(65)【公開番号】特開2017-5440(P2017-5440A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2018年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(72)【発明者】
【氏名】秋野 裕
【審査官】 須藤 竜也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−053807(JP,A)
【文献】 実開平04−069998(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/02
H04R 1/04
H04R 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体に取り付けられ、音波を受ける振動板が備えられたマイクロホンユニットと、
前記マイクロホンユニットからの音声信号を伝送するケーブルを含むケーブルコネクタが接続されるコネクタ部と、を有し、
前記筐体内における前記振動板の背面側の空間と外部空間とを連通させる圧力等価用開口が前記コネクタ部に設けられ、
前記コネクタ部に前記ケーブルコネクタが結合されると前記圧力等価用開口を介しての前記振動板の背面側の空間と前記外部空間との連通が遮断され、前記ケーブルコネクタが前記コネクタ部から離脱することで前記圧力等価用開口を介しての前記振動板の背面側の空間が前記外部空間と連通される
無指向性マイクロホン。
【請求項2】
前記圧力等価用開口は前記ケーブルコネクタと対向する位置に設けられ、
前記コネクタ部に前記ケーブルコネクタが結合されると前記圧力等価用開口が前記ケーブルコネクタによって閉鎖され、前記ケーブルコネクタが前記コネクタ部から離脱することで前記圧力等価用開口が解放される
請求項1記載の無指向性マイクロホン。
【請求項3】
前記コネクタ部に前記ケーブルコネクタが結合されると前記ケーブルコネクタが前記圧力等価用開口に当接される
請求項2記載の無指向性マイクロホン。
【請求項4】
前記振動板の背面の空間に連通するパイプを備え、前記パイプの一端が前記圧力等価用開口をなす
請求項1,2または3に記載の無指向性マイクロホン。
【請求項5】
前記コネクタ部は、前記ケーブルコネクタに接続されるコネクタピンと、前記コネクタピンを保持する保持部材とを有し、
前記パイプは前記保持部材を貫通して保持されている
請求項4記載の無指向性マイクロホン。
【請求項6】
前記マイクロホンユニットは、ダイナミック型マイクロホンである
請求項1乃至5のいずれかに記載の無指向性マイクロホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロホンに関し、より具体的には、圧力等価用の開口部を備えた無指向性のマイクロホンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、無指向性マイクロホンは、その振動板が外部空間(外気)と筐体の内部空間(空気室)との圧力差で駆動される。このため、無指向性マイクロホンでの筐体における振動板の背面の空間は、外部空間(外気)と連通しない閉鎖された空間である。
【0003】
他方、実際の設計及び製品化に際しては、気圧の変動等の要素が考慮される。大気圧が変動した場合、振動板は外部と空気室の圧力差によって変位する。この変位が大きいとき、振動板は故障する。このような外部と空気室の圧力差を無くすため、例えば筐体に微小な開口部が設けられ、かかる開口部を介して振動板の背面側の空間と外部空間とを連通させる構造のマイクロホンが知られている。この構造のマイクロホンは、振動板の背面側の空間と外部空間とを連通させることで、マイクロホンの内部/外部の圧力を等しくする。このように、マイクロホンの内部/外部の圧力を等しくする構造は圧力等価と称され(特許文献1参照)、圧力等価のための開口部は、圧力等価用開口と称される。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のマイクロホンが雨天時に使用された場合、上記の圧力等価用開口からマイクロホン内部に水滴(雨滴など)が侵入しやすい。この水滴は内部部品の腐食等を引き起こし、故障の原因となっていた。また、マイクロホン使用時において、圧力等価用の開口部に風等が加わると、圧力変動によって風雑音が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−060391
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、使用時において圧力等価用開口からの異物の侵入を防止できる無指向性マイクロホンを提供することを主要な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る無指向性マイクロホンは、筐体と、前記筐体に取付けられ、音波を受ける振動板が備えられたマイクロホンユニットと、前記マイクロホンユニットからの音声信号を伝送するケーブルを含むケーブルコネクタが接続されるコネクタ部と、を有し、前記筐体内における前記振動板の背面側の空間と外部空間とを連通させる圧力等価用開口が前記コネクタ部に設けられ、前記コネクタ部に前記ケーブルコネクタが結合されると前記圧力等価用開口を介しての前記振動板の背面側の空間と前記外部空間との連通が遮断され、前記ケーブルコネクタが前記コネクタ部から離脱することで前記圧力等価用開口を介しての前記振動板の背面側の空間が前記外部空間と連通されることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、使用時において圧力等価用開口からの異物の侵入を防止できる無指向性マイクロホンを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態による無指向性マイクロホンの縦断面図である。
図2】無指向性マイクロホンがコード側コネクタに接続される場合を説明する図である。
図3】本実施形態の無指向性マイクロホンがコード側コネクタに結合された状態を示す図である。
図4】実施形態と比較するための参考例としての無指向性ダイナミックマイクロホンの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態の無指向性マイクロホンは、筐体と、筐体に取付けられ、音波を受ける振動板が備えられたマイクロホンユニットと、マイクロホンユニットからの音声信号を伝送するケーブルを含むケーブルコネクタが接続されるコネクタ部と、を有する。コネクタ部には、筐体内における振動板の背面側の空間と外部空間とを連通させる圧力等価用開口が設けられる。かかる無指向性マイクロホンにおいて、コネクタ部にケーブルコネクタが結合されると圧力等価用開口を介しての振動板の背面側の空間と外部空間との連通が遮断され、ケーブルコネクタがコネクタ部から離脱することで圧力等価用開口を介しての振動板の背面側の空間が外部空間と連通される。
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1において、マイクロホン1は、筐体としてのケース12と、ケース12の前端部に装着されたショックマウント11と、このショックマウント11を介して装着されたマイクロホンユニット10を有している。また、マイクロホン1の他端側には、出力コネクタ40が接続されるためのマイクロホンコネクタ部30が設けられる。
【0013】
(マイクロホンユニット)
マイクロホンユニット10の指向性は、無指向性である。ダイナミックマイクロホンは、堅牢で電源を必要としないことから、屋外でのインタビュー等の用途で広く用いられている。特に、無指向性ダイナミックマイクロホンはマイクロホンユニット10の前側(図1において左側)のみに音波を加えることによって動作することから、マイクロホンに気流が加わっても風雑音が発生しにくいという利点がある。このため、無指向性ダイナミックマイクロホンは、災害時の中継放送など、風雨の激しい状況下でよく使用されている。
【0014】
無指向性マイクロホンの振動板は、振動板の前面側の空間すなわち外部空間(外気)と振動板の背面側の空間すなわちケース12の内部空間(空気室)との圧力差で振動する。したがって、振動板は振動板の前面側に加わった音圧を音声信号として検出する。このため理想的には、ケース12の内部空間121に音波が伝播しないように、内部空間121は外部空間と連通してはならない。
【0015】
他方、無指向性マイクロホンにおいて圧力等価が失われた場合には、振動板が内部/外部の圧力差で通常よりも大きく変位する。そのため、この変位は振動板の損傷等の故障の原因になり得る。したがって、マイクロホン1を山頂や上空で使う場合など、大気圧が変動してもマイクロホンユニット10内の振動板が圧力差で変位しないよう、圧力等価を保持する構造を備えたマイクロホンが好ましい。
【0016】
本実施形態におけるマイクロホンは、圧力等価を保持するため、パイプ33を介してマイクロホン1の内部空間を外部空間に接続し、ケース12の内部空間と外部空間とを連通させる構造を備えている。以下、マイクロホン1の内部/外部の圧力を等しくする機能を担う上記のパイプ33を「圧力等価パイプ」と称する。
【0017】
マイクロホンユニット10は、振動板、コイル、及び永久磁石を主な構成要素とするダイナミック型である。マイクロホンユニット10は、音声等の音波による振動板26の振動を電気信号に変換する。以下、マイクロホンユニット10の構成を説明する。
【0018】
マイクロホンユニット10はヨーク22を備えている。ヨーク22は扁平な円形の皿状である。その内底面中心に、円板ないし円柱型のマグネット(永久磁石)21が固着されている。マグネット21は、厚さ方向(図1において左右方向)に着磁される。マグネット21の厚さ(高さ)寸法はヨーク22の周壁22aの内周面の高さと同一であり、マグネット21の上端面とヨーク22の周壁22aの上端面が同一面上にある。
【0019】
ヨーク22の周壁22aの上端面にはリングヨーク23が固着されている。また、ヨーク22の内底面には、振動板26の内側(背面側)の空間に連通する細長い孔部221が形成される。孔部221の数は任意である。
【0020】
マグネット21の上端面には円板状のポールピース24が固着される。ポールピース24の上端面とリングヨーク23の上端面は同一面上にある。リングヨーク23の内周面とポールピース24の外周面との間には、同心円状のギャップ25が一定幅で形成されている。ポールピース24、リングヨーク23、及びヨーク22は、マグネット21から出る磁束を通す磁気回路を構成している。すなわち、マグネット21から出る磁束は、ポールピース24を通り、ギャップ25を経てリングヨーク23に至り、さらにヨーク22を通ってマグネット21に戻る。したがって、上記ギャップ25には磁界が形成されている。
【0021】
上記ギャップ25には、細い導電線が円筒形上に巻き回されてなるボイスコイル27がギャップ25に形成されている磁界を横切るように配置されている。ボイスコイル27はフィルム状の素材からなる振動板26に取り付けられている。
【0022】
振動板26とボイスコイル27の構成をより詳細に説明すると、振動板26は、センタードーム部261と、センタードーム部261の外周に沿ってリング状に形成されたサブドーム部262と、を有してなる。サブドーム部262はセンタードーム部261と一体に形成される。センタードーム部261を弾性的に支えるために、サブドーム部262の横断面形状はドーム状をなしている。センタードーム部261とサブドーム部262の境界付近にボイスコイル27の一端側が固着されている。ボイスコイル27の両端の導線は、マイクロホンコネクタ部30の電極、例えば2番ピン及び3番ピンに接続されている。ボイスコイル27の両端の導線は、トランスなどの不図示の出力回路に接続されてもよい。
【0023】
上述した構成のマイクロホンユニット10では、音声などの種々の音波を振動板26が受けることにより、振動板26及びボイスコイル27が振動する。マイクロホンユニット10では、上述の磁気回路中でボイスコイル27が振動することで、フレミングの右手の法則によりボイスコイル27が発電する。この発電によって、音波は電気音響変換され、音声信号がボイスコイル27の両端の導線からマイクロホンコネクタ部30の信号ピンを介して外部機器に出力される。
【0024】
前記ショックマウント11は、上記マイクロホンユニット10をケース12内に保持すると共に、ケース12からマイクロホンユニット10に振動が伝達されるのを防止するために、弾力性のある素材で構成されている。また、ケース12の前端部には、上記ショックマウント11をケース12との間に挟むようにヘッドカバー14が装着されている。ヘッドカバー14は、ケース12の前端部を覆うように装着されており、リング状のジョイント部材17によってマイクケース12の前端部に取り付けられている。このヘッドカバー14は、マイクロホンユニット10の振動板26に、直接外気が当たることを防止して風雑音の発生を防ぐ役割を有する。
【0025】
本実施形態では、マイクロホンユニット10の振動板26の前面(図1において左方向)に、ヘッドカバー14との間で収音空間15が形成されている。また、振動板26の背面(図1において右方向)には、ヨーク22及びリングヨーク23との間の空間に空気室が形成されている。この空気室は、上述したヨーク22の孔部221を通じてケース12の内部空間121に連通し、さらに圧力等価パイプ33を通じてケース12の外部空間(外気)に連通する。
【0026】
また、上記構造を有するマイクロホン1において、マイクロホン1を取り落とし、あるいは急速に振るなどして図1において左右方向の振動が加わると、ショックマウント11がケース12と相対的に変位して、この振動を相殺する。これにより、マイクロホンユニット10は不意な振動の伝搬を防止できる。
【0027】
(マイクロホンコネクタ部)
次に、マイクロホンコネクタ部30の構成を説明する。マイクロホンコネクタ部30は、後述する出力コネクタ40(ケーブルコネクタ)と接続される部分である。この例において、マイクロホンコネクタ部30にはマイクロホン用の出力コネクタとして丸形ラッチロックコネクタ(JEITA〔社団法人日本電子機械工業会〕RC−5236)が用いられる。
【0028】
マイクロホンコネクタ部30は、ケース12の端側の内部に設けられるコネクタ基台31と、コネクタ基台31に取り付けられているコネクタピンとしての3つの信号ピン及び圧力等価パイプ33と、を備える。また、上記の丸形ラッチロックコネクタと接続するために、ケース12の端部に孔32が形成されている。
【0029】
コネクタ基台31は、円柱状の電気絶縁体からなる基台本体の一面側にプリント基板が重ねられて配置されている。コネクタ基台31は、例えば、PBT(ポリブチレンテフラレート)などの合成樹脂を円柱状に形成して構成される。コネクタ基台31は、3つの信号ピン及び圧力等価パイプ33を保持する保持部材の役割を有する。コネクタ基台31には、4つの孔部が形成され、この内の3つの孔部には、接地用の1番ピン、信号のホット側の2番ピン、及び信号のコールド側の3番ピンの3本のピンが挿入され固定されている。さらに、コネクタ基台31の他の1つの孔部には、圧力等価パイプ33が挿入され固定されている。
【0030】
2番ピン及び3番ピンの基端部はケース12の内部空間121側に突出している。この基端部には、上述したボイスコイル27の導線が接続される。また、2番ピン及び3番ピンの先端部は、ケース12の外部の空間に向かって突出し、使用時に出力コネクタのコネクタ電極と接続される。
【0031】
圧力等価パイプ33は、主要帯域の音波を通さない細い径のパイプである。その基端側はケース12の内部空間121において開口している。また、圧力等価パイプ33の先端側の開口部33aがケース12の外部の空間に開口している。したがって、ケース12内部の空気と外気とは、圧力等価パイプ33の空気孔を介して連通する。
【0032】
本実施形態では、圧力等価パイプ33の外気に接する開口部33aが圧力等価用開口としての役割を有している。すなわち、圧力等価用開口は、ケース12の内側に対してマイクロホンコネクタ部30から外気を通気可能に設けられる。
【0033】
(出力コネクタとの接続等)
次に、図2及び図3を参照して、マイクロホン1に出力コネクタ40を着脱する場合について説明する。ここで、出力コネクタ40は、一般的な丸形ラッチロックコネクタ(RC−5236)であり、マイクロホンコネクタ部30と接続されるコネクタ部42が筐体41の一端側に設けられる。コネクタ部42は、マイクロホン1の上述した3本のピン(1番ピン、2番ピン、3番ピン)と対応する位置に、各ピンが挿入される溝部及び各ピンと接触する端子を備える。コネクタ部42の各端子には、筐体41の他端側から伸びる出力コード43の各導線が接続されている。コネクタ部42の側面側でマイクロホンコネクタ部30の孔32に対応する位置には、かかる孔32に係止されるラッチ部44が設けられる。ラッチ部44は、筐体41の側面側から突出する押圧部45と一体をなし、筐体41内の不図示のばねによりコネクタ部42の側面から外方に付勢されている。したがって、ラッチ部44は、押圧部45が押し込まれることでコネクタ部42の側面より内部の位置まで移動し、かかる押し込みが解除されると元の位置に戻る。
【0034】
かくして、収録等のためにマイクロホン1が使用される場合、図2に示すように、マイクロホンコネクタ部30と出力コネクタ40の各対応部位を対峙させた状態で、出力コネクタ40はマイクロホンコネクタ部30に挿入され、図3に示すように結合する。
【0035】
このコネクタの結合により、マイクロホン1の3本のピンが出力コネクタ40の対応する各溝部に挿入されて各端子と電気的に接続され、孔32とラッチ部44とは係合される。さらに、コネクタ部42の平面部42aがマイクロホン1の圧力等価用開口である圧力等価パイプ33の開口部33aに当接または圧接して開口部33aを閉鎖する。
【0036】
すなわち、マイクロホン1及び出力コネクタ40がこのような結合状態になることで、マイクロホン1の圧力等価用開口33aが閉鎖される。そのため、本実施の形態にかかるマイクロホン1は、使用時において、外部からの水滴や風などの侵入を防止できる。
【0037】
マイクロホン1の使用終了後において、押圧部45が押し込まれることで孔32とラッチ部44との係合が解除される。出力コネクタ40がマイクロホン1から引き抜かれることで、圧力等価パイプ33の開口部33aはコネクタ部42の平面部42aから離間される(図2参照)。こうして、マイクロホン1の不使用時には、マイクロホン1の圧力等価用開口33aが開放され、圧力等価パイプ33を通じてマイクロホン1の内部空間と外気とが連通する。
【0038】
したがって、本実施形態のマイクロホン1は、例えばマイクロホン1を山頂や上空などの高所に移動させて使用するような場合でも、移動時には出力コネクタ40を外しておくことにより、マイクロホン1の内部空間の圧力等価状態を維持できる。また、マイクロホン1の使用時には、圧力等価用開口33aはコネクタ40の結合によって閉鎖されるので、外部からの水滴や風などがマイクロホンユニット10に侵入しない。マイクロホン1の使用後において、出力コネクタ40の取り外しにより、マイクロホンユニット10内の圧力は外部と等価の状態を維持できる。
【0039】
また、本実施の形態におけるマイクロホン1では、使用時において圧力等価パイプ33の圧力等価用開口(開口部33a)が出力コネクタ40の平面部42aにより閉鎖される。そのため、圧力等価用開口に風等が当たることもなく、風雑音の発生も防止できる。さらには、このような構成は、上述したごく低い周波数成分の音波が圧力等価パイプ33を介してマイクロホンユニット10内に進入することを防止でき、低周波による雑音発生も防止する。
【0040】
以上のように、本実施形態は、マイクロホン1の使用時にコード側コネクタがマイクロホンに差し込まれると、圧力等価パイプ33の外気に接する部分が閉鎖されるため、マイクロホン内部への水滴と風の侵入を防止できる。
【0041】
上述した実施形態は一例であり、種々に変形することができる。
【0042】
上述の実施形態では、出力コネクタの平面部側が圧力等価パイプの開口部に当接または圧接して圧力等価用開口を閉鎖することで、マイクロホン(筐体)の内部空間と外部空間との連通を遮断する構成としたが、かかる当接または圧接は必ずしも必要でない。すなわち、マイクロホンユニットに出力コネクタが結合されることで、圧力等価用開口を介しての筐体の内部空間(振動板の背面側の空間)と外部空間との連通を出力コネクタによって遮断する構成であればよい。このような構成であれば、マイクロホンの使用時において、外部からの水滴や風などの侵入を防止できる。
【0043】
したがって、他の例として、出力コネクタが接続されるケース12の内周面または出力コネクタの外周面にシリコンゴム等からなるリング状のシーリング部材が設けられてもよい。この場合、マイクロホンユニットに出力コネクタが結合されると、出力コネクタの平面部側が圧力等価パイプの圧力等価用開口部に当接せずとも、上記出力コネクタとシーリング部材によってマイクロホンコネクタ部の内部空間が塞がれる。したがって、本実施の形態によれば、使用時において圧力等価パイプを介したマイクロホンユニットの内部空間と外部空間との連通を遮断し、外部からの水滴や風などの侵入を防止できる。
【0044】
他の例として、圧力等価パイプ33は必ずしも必要ではない。コネクタ基台31自体に圧力等価用開口となる孔部が設けられ、出力コネクタの平面部側によってコネクタ基台31の圧力等価用開口が閉鎖/開放される構造も採用できる。
【0045】
上述した実施形態では、マイクロホンユニット10として、ダイナミック型のマイクロホンを備えた構成を例示したが、これに限定されない。マイクロホンユニット10は、音声等の音波を振動板で受け、振動板の振動を電気信号に変換する機能を有するものであればよく、電気音響変換方式も特に限定されるものではない。
【0046】
(参考例)
実施形態の理解の助けのため、比較例ないし参考例として、圧力等価用開口を筐体に設けた構成の無指向性マイクロホンを図示及び説明する。
【0047】
図4において、マイクロホン100は、筐体としてのケース112、ケース112の前端部に装着されたショックマウント111、このショックマウント111を介して装着されたマイクロホンユニット110を有している。マイクロホンユニット110は、無指向性かつダイナミック型のマイクロホンである。マイクロホン100の他端側には、出力コネクタ140が接続されるためのマイクロホンコネクタ部130が設けられる。マイクロホン100では、ケース112の内部空間と外部空間とを連通させる圧力等価用開口133aが、圧力等価パイプ133を介してケース112の側面に設けられている。
【0048】
このマイクロホン100は、圧力等価パイプ133の外気に接する開口すなわち圧力等価用開口133aに雨滴等が入り込みやすい形状である。圧力等価用開口133aからマイクロホン内部に雨滴等が侵入すると、内部部品の腐食等が生じる。これは故障発生の原因となる。
【0049】
また、マイクロホン100では、圧力等価パイプ133の圧力等価用開口133aが外部と常時連通している。圧力等価用開口133aに風等が加わると、圧力変動によって風雑音が発生しやすい。特に低い周波数成分で雑音が発生しやすい。
【0050】
本願で説明した実施形態は、かかる実情に鑑みて案出されたものであり、無指向性マイクロホンにおいて、水滴の侵入と雑音の発生を防止するために、圧力等価パイプの外気に接する側を使用時に閉鎖する構造としたものである。
【0051】
本発明に係る無指向性マイクロホンは、特許請求の範囲に記載した技術思想を逸脱しない範囲で設計変更可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 マイクロホン
12 ケース(筐体)
10 マイクロホンユニット
26 振動板
30 マイクロホンコネクタ部
31 コネクタ基台
33 圧力等価パイプ
33a 開口部(圧力等価用開口)
40 出力コネクタ(ケーブルコネクタ)
図1
図2
図3
図4