(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
支持体層(A)にEVOHを含む薄層(B)(以下、EVOH薄層(B)と称する)、粘着剤層(C)、及び保護層(D)を順次積層した多層フィルムを含み、以下a)、b)をともに満足することを特徴とする多層積層フィルム。
a)EVOH薄層(B)が、支持体層(A)を形成するフィルム上にEVOHを含む溶液(以下、EVOH溶液と称す)を塗布して形成される薄膜層であること、
b)EVOH薄層(B)に粘着剤層(C)を積層した後でのヘイズ度(曇度、<Hz-C>)と、EVOH薄層(B)のみのヘイズ度(曇度、<Hz-B>)との差(Hz-△=<Hz-B>−<Hz-C>)が5以上であること。
支持体層(A)とEVOH薄層(B)との剥離強度が10〜200g/15mm巾であり、かつ支持体層(A)とEVOH薄層(B)との剥離強度が、粘着剤層(C)と保護層(D)との剥離強度より高いことを特徴とする請求項1記載の多層積層フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の多層積層フィルムを構成する支持体層(A)は、その片面に塗布して形成されるEVOH薄層(B)の形態を保持する役割を担い、生産時の工程通過性、安定生産性、及び易取扱い性に大きく寄与するものである。支持体層(A)に用いる素材としてはフィルムであることが好適であり、具体的には、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンー酢酸ビニル共重合体、EVOHなどのポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリウレタン(以下、PUと略記する)系樹脂フィルムなどの各種プラスチックフィルムが挙げられる。なかでも、溶媒を含む下塗り剤を塗布することが可能であり、耐溶剤性、ガスバリアー性、EVOH薄層(B)との接着性、柔軟性、及び被貼付体追従性に優れる点で、EVOHフィルムがより好ましい。また、より柔軟性を付与する為、EVOHにポリウレタンを積層したフィルムであることが好ましく、あるいは多層積層フィルムを被貼付体に貼付後、除去する際に剥離性を容易とする観点から、PETなどのポリエステル系フィルム、高密度ポリエチレン(以降、HDPEと略す)系フィルム、PET/PU、PET/EVOH、PET/PU/EVOHなどの積層フィルム、あるいはPETをHDPEに置き換えたフィルム構成などがより好適である。
支持体層(A)を形成するフィルムは周知の溶融押出製膜法にて製造する。樹脂の溶融押出法としては、単層製膜法、単層押出ラミネート法、多層共押出法、多層共押出ラミネート法などがある。
【0019】
さらに、より柔軟な多層積層フィルムを得るには、支持体層(A)、EVOH薄層(B)、粘着剤層(C)と保護層(D)とを順次積層した多層フィルムを作製した後、支持体層(A)を除去する方法がある。その際には、支持体層(A)と、該支持体層(A)上に本発明の特徴である後述する特定のEVOH溶液を塗布して形成されたEVOH薄層(B)との剥離強度を制御することが好ましい。具体的には支持体層(A)とEVOH薄層(B)との剥離強度は10〜200g/15mm巾であることが好ましく、より好ましくは、20〜150g/15mm巾、さらに好ましくは、30〜100g/15mm巾である。
上記剥離強度が10g/15mm巾未満の場合、多層積層フィルム製造工程中に、工程通過に伴う屈曲や、EVOH薄層(B)側に粘着剤用溶液を塗布・乾燥する工程がある場合などで両層間に剥離が発生し、生産収率が大幅に悪化したり、あるいは多層積層フィルムの保護層(D)を剥離しようとして支持体層(A)が先に剥離してしまう問題が発生する可能性が大きい。一方、剥離強度が200g/15mm巾より大きいと、製造安定性、収率の改善に繋がるが、保護層(D)を剥離した後、多層積層フィルムを被貼付体に粘着させ、最後に支持体層(A)を取り除く段階で、被貼付体/粘着剤層(C)、或いは、粘着剤層(C)/EVOH薄層(B)の間で層間剥離が発生する問題が生じることがある。
【0020】
各層間の剥離強度は、<EVOH薄膜(B)/粘着剤層(C)間の剥離強度>を(a)、<粘着剤層(C)/被貼付体間の剥離強度>を(b)、<支持体層(A)/EVOH薄膜(B)間の剥離強度>を(c)、<粘着剤層(C)/保護層(D)間の剥離強度>を(d)とした場合、(a)>(b)>(c)>(d) であることが好ましい。
【0021】
支持体層(A)とEVOH薄層(B)との剥離強度を制御する方法としては、EVOH薄層(B)に接する側の支持体層(A)を形成するフィルムの表面を加工することが好ましい。加工方法としては、フィルム表面をコロナ処理、或いはプラズマ処理を行う方法、フィルムの投錨性を付与する為、微粒子を練り込む方法、或いは 微粒子を含有するバインダー液を塗布・乾燥する方法、フィルム表面に機械的、均一に凹凸を付与することを目的としたエンボス処理、ブラスト処理を行う方法、或いはプライマー処理、アンカー処理、場合によっては離型処理など化学的コート方法、及びこれらの組合せが用いられるが、これらの中でもコロナ処理、アンカー処理、及び エンボス処理がより望ましい。
【0022】
本発明に用いられるEVOH薄層(B)は厚みが5μm以下とすることが好ましい。5μmよりも厚い場合は、(B)層自体が硬くなり過ぎ、貼付後の対象物への伸縮追随性に問題が生じる。より好ましくは4μm以下であり、さらに好ましくは2μm以下である。構成するEVOH樹脂としては、耐水性,強度などの点からエチレン含有量20〜55モル%、特に25〜50モル%、酢酸ビニル成分のケン化度90モル%以上、特に95モル%以上のEVOHで,極限粘度が0.7〜1.5dl/gの範囲にあるものが好ましい。エチレン含有量が20モル%未満ではフィルム自体が硬くなって、被貼付体を貼付時にゴワゴワ感が生じたり、被貼付体への追従性が低下するようになって、貼付感に劣る傾向となる、一方、エチレン含有量が55モル%を超えると、疎水性が高まるので、粘着剤層中の油性添加剤を吸着する傾向を示しいずれも好ましくない。また、酢酸ビニル成分のケン化度が90モル%未満では化学薬品、及び添加剤の吸着や移行が顕著となり好ましくない。さらに極限粘度が0.7dl/g未満では機械的強度が不足し、極限粘度が1.5dl/gを超えるものは製造上困難となる場合が多い。なおここで、極限粘度とは、水/フェノールの15/85の重量比の混合溶媒中、温度30℃で測定したものをいう。
【0023】
EVOH樹脂は、エチレンー酢酸ビニル共重合体のケン化によって得られるが、該EVOH樹脂は、公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合などにより製造することが可能であって、エチレンー酢酸ビニル共重合体のケン化も公知の方法で行うことができる。
【0024】
また、EVOH薄層(B)には、構成するEVOH樹脂のうち50質量%未満であればα−オレフィン、不飽和カルボン酸系化合物、不飽和スルホン酸系化合物、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルシラン化合物、塩化ビニル、スチレンなどの他のコモノマーで共重合変性されたEVOH樹脂であっても差し支えなく、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化など後変性されたEVOH樹脂であっても差し支えない。
また、本発明の趣旨を損なわない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、無機物微粒子、有機物系微粒子、増粘剤、可塑剤など各種添加剤を少量添加しても差し支えない。
【0025】
本発明においては、支持体層(A)を形成するフィルム表面にEVOH樹脂を含有する溶液(以下、EVOH溶液と称す)を塗布し乾燥することにより、支持体層(A)上にEVOH薄層(B)を形成・積層させることが重要である。EVOH溶液は、EVOH樹脂を溶剤に溶解して調製する。用いられる溶剤としては、水/アルコールが好ましく、その中でも水/イソプロパノール、水/n−プロバノール,水/n−ブタノール、水/sea−ブタノール、水/イソブタノールが、溶液の安定性や取り扱い性やさらには経済的な面からより好ましい。水/アルコールの溶剤の場合、溶剤における水/アルコールの質量比は、5/95〜80/20であることが溶液の安定性、透明性の点から好ましい。
さらに、上記溶剤中にギ酸、フェノール、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどを1〜30質量%の割合で混合することで溶液安定性、透明性が改善することから、更に好ましい。
【0026】
本発明において、EVOH薄層(B)と粘着剤層(C)との接着性を向上させるためには、好ましくはゲル化したEVOHを含む溶液を用いて形成したEVOH薄層(B)上に粘着剤層(C)を積層することで得られる。具体的には該EVOH溶液を用いて形成したEVOH薄層(B)のみのヘイズ度<Haze-B>と、該EVOH薄層(B)に粘着剤層(C)を積層した後のヘイズ度<Haze -C>との差(Hz-△=<Hz-B>−<Hz-C>)を5以上、好ましくは20以上90以下、より好ましくは40以上80以下とすることにより、EVOH薄層(B)と粘着剤層(C)との接着性が優れたものとなる。理由は定かではないが、ヘイズ度<Haze-B>が高いEVOH薄層(B)は、層内に多数のボイドが存在するので、ボイド中に粘着剤が浸透する、あるいは粘着剤中に含まれる添加剤(可塑剤など)がボイド中に浸透することで、EVOH薄層(B)と粘着層(C)との密着性、接着性が増大すると共に、ボイド中に粘着剤あるいは添加剤(可塑剤など)が充填されることによりEVOH薄層に粘着剤層(C)を積層した後のヘイズ度<Haze-C>が低下したと推定される。
【0027】
前記したように、EVOH薄層(B)を形成させるために用いるEVOH溶液は、ゲル化したEVOH樹脂を含有していることが好ましい。本発明でいうゲル化とは、樹脂が溶解した均一透明なEVOH溶液の温度、溶剤組成などを変更することで、EVOH溶液のEVOH樹脂が完全に溶解している状態からEVOH樹脂が一部析出した不均一不透明な状態になることをいう。本発明においては、EVOH薄層(B)を形成させるために用いるEVOH溶液は均一透明溶液と不均一透明溶液との混合であることが、EVOH薄層(B)と粘着剤層(C)との接着性を向上させるうえで、より好ましい。このような性質を有するEVOH溶液を支持体層(A)を形成するフィルム上に塗布し、乾燥することでEVOH薄層(B)が形成される。なお本発明の均一透明なEVOH溶液および不均一不透明なEVOH溶液の状態を示す写真を
図1に示す。
【0028】
均一透明なEVOH溶液は、水/アルコール比(質量比)で5/95〜80/20の溶媒を70℃〜85℃となるよう調整し、EVOHを加えてEVOHを完全溶解(透明均一化)し、さらに30℃〜85℃の溶液温度にて静置しながら保持した均一透明な状態の溶液を用いる。
一方、不均一不透明なEVOH溶液は、ゲル化したEVOH溶液であり、該均一透明EVOH溶液のエチレン含有率が同一あるいは異なるEVOHに水/アルコール比(質量比)で5/95〜80/20の範囲にある溶媒を70℃〜85℃に調整したのち、EVOHを完全溶解(透明均一化)し、その後高速撹拌させながら溶液温度を40℃以下となるようEVOH溶液を冷却してEVOH樹脂が微粒子状にゲル化した不均一不透明EVOH溶液を調整し、さらに5℃〜50℃の溶液温度で保持することでゲルの品位が保持された不均一不透明EVOH溶液を調製することができる。ゲルの品位を保持する際の不均一不透明EVOH溶液のより好ましい溶液温度は5℃〜25℃である。
【0029】
そして上記の方法により得られた均一透明EVOH溶液と不均一不透明EVOH溶液とを混合した後の混合溶液の温度が25℃以上、好ましくは30℃以上となるように混合させることにより、得られるEVOH溶液は、EVOH樹脂が透明である部位と不透明である部位を併せ持つ樹脂が混合した状態となる。混合の際には均一透明EVOH溶液と不均一不透明EVOH溶液とが均一に混合するようにホモジナイザー等で強撹拌することが好ましい。
このとき、均一透明EVOH溶液と不均一不透明EVOH溶液との混合溶液における均一透明EVOH溶液の質量比率で0より大きく90未満の範囲内であることが好ましく、均一透明EVOH溶液と不均一不透明EVOH溶液との混合比率は10/90〜80/20であることがさらに好ましい。均一透明EVOH溶液の質量比率が0の場合には、フィルムの白濁、不透明が顕著で外観上好まれない場合がある。一方、均一透明EVOH溶液の質量比率が90より高い場合、EVOH薄層(B)と粘着層(C)との接着性が不十分となり、多層積層フィルムを被貼付体から取り外し時などで被貼付体への接着剤残留などの問題が発生する場合があり好ましくない。
【0030】
そして、均一透明EVOH溶液と不均一不透明EVOH溶液とが混合されたEVOH溶液を支持体層(A)に塗布し乾燥して形成されるEVOH薄層(B)には、本発明の趣旨を損なわない範囲で、80℃〜170℃の温度範囲での熱処理を行なっても差し支えない。
【0031】
なお、均一透明EVOH溶液を構成するEVOH樹脂と、不均一不透明EVOH溶液を構成するEVOH樹脂とはエチレン含有量が同一であってもよいが、製造時の条件設定や条件精度をより容易化することを考慮すると、EVOH樹脂のエチレン含有量が異なっていることが好ましい。具体的には均一透明EVOH溶液を構成するEVOH樹脂と、不均一不透明EVOH溶液を構成するEVOH樹脂のエチレン含有量の差が0.5モル%〜30モル%の範囲が好ましく、1モル%〜20モル%の範囲がより好ましい。
【0032】
また、均一透明EVOH溶液と不均一不透明EVOH溶液との溶剤組成(水/アルコール溶剤比率)は、同一でも異なっていても良く、両者のエチレン含有量が異なっている場合は、溶剤組成が異なっている方が良好な接着性が得られる場合がある。
【0033】
該EVOH溶液は、本発明の趣旨を損なわない範囲で可塑剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、などの添加剤を添加してもよく、或いは接着性をより向上するために、無機微粉末、有機微粉末を添加してもよい。中でも、EVOH系樹脂を用いた微粉末をEVOH溶液に添加したり、あるいはEVOH溶液を塗布した直後に前記微粉末を表面に付着させることでより接着力が向上する場合がある。
【0034】
EVOH溶液中のEVOH樹脂の濃度は1質量%〜20質量%の範囲であることが好ましい。EVOH樹脂の濃度が1質量%未満では乾燥後の塗布層が薄くなりすぎ、表面が白濁し外観が損なわれる場合がある。一方、20質量%を超えるとEVOH樹脂の濃度が高すぎるため塗布時の作業性が劣り、また塗布層の乾燥ムラによる光沢ムラが発生しやすくなる。
【0035】
本発明の多層積層フィルムにおいて、EVOH薄層(B)の片面に形成する粘着剤層(C)は、化学薬品、及び添加剤とを含有するものであり、良好な被貼付体への接着性の観点からは通常10〜300μm、好ましくは15〜250μmの厚みで形成される。
【0036】
化学薬品は、粘着剤層(C)に添加するが、機能の異なる化学薬品を更に添加する場合、EVOH薄層(B)側に化学薬品を添加することで、機能をより効率良く発揮できる場合がある。例えば、EVOH薄層(B)側に、酸素吸収剤、あるいは 紫外線防止剤を添加することで、粘着層(C)に添加の化学薬品の酸化や紫外線劣化を防止し、該化学薬品の薬効の低下を抑えるなどの効果が発現する場合がある。
【0037】
粘着剤層(C)を形成する樹脂としては、例えば常温で感圧性を有するアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ビニルエーテル系粘着剤等が用いられ、一種もしくは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
アクリル系粘着剤として、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステル(ここで、(メタ)アクリル酸は、メタアクリル酸又はアクリル酸を意味する)を主成分とした単独重合物及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合性モノマーとの共重合体又は炭素数4〜18の脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸アルキルエステルの(共)重合体等が好ましい。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸イソブチルエステル、(メタ)アクリル酸ヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸オクチルエステル、(メタ)アクリル酸イソオクチルエステル、(メタ)アクリル酸デシルエステル、(メタ)アクリル酸イソデシルエステル、(メタ)アクリル酸ラウリルエステル、(メタ)アクリル酸ステアリルエステル等が挙げられる。
上記共重合性モノマーとしては、例えばアクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、マレイン酸ブチル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノアクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、エトキシメチルアクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、スチレン、α−メチルスチレン、塩化ビニル、アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、ブタジエン等が挙げられる。
【0039】
ゴム系粘着剤としては特に限定されず、例えば、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレンーブタジエンースチレン共重合体、スチレンーイソプレン共重合体、スチレンーイソプレンースチレン共重合体、スチレンーイソプレンースチレンブロック共重合体、合成イソプレンゴム、ポリビニルエーテル、ポリウレタン、ウレタンゴム等のゴムを主体とする従来公知のゴム系粘着剤が使用できる。
【0040】
シリコーン系粘着剤としては特に限定されず、例えばポリオルガノシロキサン等のシリコーンゴム等が挙げられる。
【0041】
ビニルエーテル系粘着剤としては、例えばビニルエーテル、イソブチルエーテル、メチルイソブチルエーテル、エチルイソブチルエーテル等が挙げられる。
【0042】
また、粘着剤層(C)において、粘着剤の凝集力が低いと、粘着剤層間(あるいは粘着剤内部)で粘着剤が凝集破壊し、被貼付体に糊などの残存物が残るなどの問題が生じることがある。このような粘着剤の凝集力を高めたり、あるいは添加剤の保持量を増加させるためには、粘着剤層(C)を架橋処理することが好ましい。具体的には、紫外線照射や電子線照射などの放射線照射による物理的架橋や、イソシアネート化合物や有機過酸化物、有機金属塩、金属アルコラート、金属キレート、多官能化合物などの外部架橋剤による化学的架橋等が挙げられ、また重合反応によって粘着剤層を形成するためのポリマーを調製する場合は、多官能性単量体を共重合することによって内部架橋されたポリマーを得ることもできる。
【0043】
上記した各種粘着剤のうち、所望の粘着物性を得るための調整しやすさや、化学薬品、及び添加剤の溶解性(相溶性)向上、多量に含有保持できること、架橋処理が比較的容易であること、などの点からは、アクリル系粘着剤が好ましい。
【0044】
上記粘着剤層(C)中に含有する添加剤としては、浸透促進剤、溶解助剤、充填材、軟化可塑剤、粘着付与剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、化学薬品分解抑制剤などが挙げられるが、特に限定するものではなく、一種もしくは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
上記粘着剤層(C)中に含有する添加剤として浸透促進剤を用いる場合、浸透促進剤としては被貼付体への吸収促進作用が認められている化合物のいずれでも良く、例えば、C2−C4アルコール、例えばエタノール及びイソプロパノール、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコール−3−ラウラミド、ジメチルラウラミド、ソルビタントリオレアート、脂肪酸、約10〜約20個の炭素原子を有する脂肪酸のエステル、モノグリセリド又はモノエステルが10〜20個の炭素原子を備えたモノエステルである場合、少なくとも51%の総モノエステル含有率を有する脂肪酸のモノグリセリドの混合物、ならびに脂肪酸のモノ−、ジ−及びトリ−グリセリドの混合物等が挙げられる。脂肪酸は、これに限定されないがラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリル酸、オレイン酸、リノール酸、及びパルミチン酸を含む。モノグリセリド浸透促進剤は、例えばグリセロールモノオレアート、グリセロールモノラウレート、及びグリセロールモノリノレアート等が好ましい。
【0046】
上記粘着剤層(C)中に含有する添加剤として溶解助剤を用いる場合、溶解助剤としては、粘着剤との相溶性に優れており、化学薬品を充分に溶解し、化学薬品の粘着剤層からの滲み出し(ブリード)が少なく、粘着特性や化学薬品放出性に悪影響を及ぼさないものであればよい。具体的には、オレイン酸、ミリスチン酸、カプリン酸等の脂肪酸、アジピン酸、セバシン酸等のジカルボン酸等の有機酸と、エタノールや2−プロパノール等のアルコール類とのエステル類;グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコールやそれらのジ、トリエステル類;多価アルコールと、トリアセチン等の有機酸とのエステル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリエーテル類、メチルエチルケトン、N-メチル-2-ピロリドン;その他クロタミトン等が挙げられる。
【0047】
上記粘着剤層(C)中に含有する添加剤として充填材を用いる場合、充填材としては、粘着剤層における粘着剤の凝集力を向上させるものであれば特に限定されないが、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化鉄、水酸化アルミニウム、タルク、カオリン、ベントナイト、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の無機微粒子、乳糖、カーボンブラック、ポリビニルピロリドン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリアミド、セルロース類、アクリル樹脂等の有機微粒子、更にはポリエステル、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリアミド、セルロース類、アクリル樹脂、ガラス等の繊維が挙げられる。
【0048】
上記粘着剤層(C)中に含有する添加剤として軟化可塑剤を用いる場合、軟化可塑剤としては、石油系オイル、スクワラン、スクワレン、植物系オイル、シリコーンオイル、二塩基酸エステル、液状ゴム、液状脂肪酸エステル類、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、サリチル酸グリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリアセチン、クエン酸トリエチル、クロタミトン等が挙げられる。
【0049】
上記粘着剤層(C)中に含有する添加剤として粘着付与剤を用いる場合、粘着付与剤としては、ゴム系粘着剤用タッキファイヤー類を適宜選択して用いればよく、例えば、石油系樹脂(例えば、芳香族系石油樹脂、脂肪族系石油樹脂)、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、マレイン酸レジン、クマロンインデン樹脂、スチレン系樹脂(例えば、スチレン樹脂、α−メチルスチレン樹脂)、水添石油樹脂(例えば、脂環族飽和炭化水素樹脂)等が挙げられる。中でも、脂環族飽和炭化水素樹脂が化学薬品の保存安定性が良好になるため好適である。タッキファイヤーは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、2種以上を組み合わせて使用する場合には、例えば、樹脂の種類や軟化点の異なる樹脂を組み合わせてもよい。
【0050】
上記粘着剤層(C)中に含有する添加剤として架橋剤を用いる場合、架橋剤としては、特に限定させるものではないが、アミノ樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、有機系架橋剤、金属又は金属化合物等の無機系架橋剤等が挙げられる。
【0051】
上記粘着剤層(C)中に含有する添加剤として酸化防止剤を用いる場合、酸化防止剤としては、特に限定させるものではないが、トコフェロール及びこれらのエステル誘導体、アスコルビン酸、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、ノルジヒトログアヤレチン酸、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール等が挙げられる。
【0052】
上記粘着剤層(C)中に含有する添加剤として紫外線吸収剤を用いる場合、紫外線吸収剤としては、特に限定させるものではないが、p−アミノ安息香酸誘導体、アントラニル酸誘導体、サリチル酸誘導体、クマリン誘導体、アミノ酸系化合物、イミダゾリン誘導体、ピリミジン誘導体、ジオキサン誘導体等が挙げられる。
【0053】
上記粘着剤層(C)中に含有するこれらの添加剤は、粘着剤層(C)中に0.1〜60重量%、特に1〜50重量%の範囲で含有させることが好ましい。含有量が0.1重量%に満たない場合は、前記したような添加剤を含有することによる効果を充分に発揮できない場合があり、60重量%を超えて含有させた場合は、粘着剤層中に化学薬品、添加剤を安定的に保持できずに、保存中や貼付中に粘着剤層から化学薬品、添加剤が滲出して安定的な効果を発揮できない場合がある。なお、粘着剤層を架橋処理して化学薬品、添加剤を保持しやすくすることもできるが、添加剤の含有量が多すぎると架橋処理によっても保持できる限界を超えることがある。
【0054】
本発明の多層積層フィルムにおける粘着剤層(C)には、化学薬品を含有させる。このような化学薬品としては特に限定されるものではなく、例えば、酸素吸収剤、抗菌剤、防ダニ剤、脱臭剤、生物忌避剤、防カビ剤、揮発性防カビ剤、防虫剤、動物忌避剤、防錆剤、防食剤、防腐剤、アルデヒド類吸着剤、消臭剤、酸化防止剤、防藻剤、脱酸素剤、鮮度保持成分、界面活性剤、難燃剤、剥離剤、静電防止剤、絶縁剤、着色防止剤、UV吸収剤、IR吸収剤、撥水剤、 吸水剤、及びこれらの揮発性化学薬品、医薬品などの化学薬品を一種もしくは二種以上併用することができる。
【0055】
粘着剤層(C)に含有させる化学薬品に防カビ剤を用いる場合、防カビ剤としては、特に限定されるものではないが、揮発性防カビ剤、親水性有機系防カビ剤などが挙げられる。また、好気性の菌の繁殖防止に脱酸素剤も使用可能である。
粘着剤層(C)に含有させる化学薬品に揮発性防カビ剤を用いる場合、揮発性防カビ剤としては、特に限定されるものではないが、有機スズ化合物、有機硫黄化合物、塩素系化合物、フェノール系化合物、チモール等が挙げられる。
粘着剤層(C)に含有させる化学薬品に親水性有機系防カビ剤を用いる場合、親水性有機系防カビ剤としては、特に限定されるものではないが、ベンズチアゾール系、フェノール系、イソチアゾリン系、第4アンモニウム塩系、ホスホニウム塩系、ベンズイミダゾール系、フェノール系、イソチアゾリン系、ピリジン系などの合成系防カビ剤や、キトサン、リゾチーム、プロタミン、ポリリジンなどの天然系防カビ剤が例示される。これらの内、ベンズチアゾール系、フェノール系、イソチアゾリン系が少量での添加で効果があり、好適である。これらの防カビ剤の例としては、2−(4−チアゾリル)ベンズチアゾール2−(4−チオシアノメチル−チオ)ベンズチアゾール、p−クロロ−m−メチルフェノール、O−フェニル−フェノール、5―クロロ2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、などが挙げられる。中でも、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンは、効果のある菌・カビのスペクトルが広く、毒性等も低いので、特に好適である。
【0056】
粘着剤層(C)に含有させる化学薬品に抗菌剤を用いる場合、特に限定されるものではないが、無機系抗菌剤、有機系抗菌剤、揮発性抗菌剤などが挙げられる。無機系抗菌剤としては、特に限定されるものではないが、塩素、臭素、ヨウ素を含有するハロゲン化合物;亜ヒ酸銅、酸化第一銅、硝酸銀、銀や銅を含有するガラス;結晶性ケイ酸アルミニウム(ゼオライト)、非晶質の合成ケイ酸アルミニウムなどのケイ酸アルミニウム;Ag、Cu、Zn等のイオンを担持したリン酸ジルコニウム;酸化亜鉛系化合物;酸化マグネシウム系化合物;水酸化カルシウム系化合物等が含まれる。
有機系抗菌剤としては、特に限定されるものではないが、アミン、トリアジン等の窒素化合物;ヒ素、銅、水銀、錫、亜鉛の有機金属化合物;イソチアゾロン、ピリチオンチオシアン酸塩等の有機硫黄化合物;アルキルジメチルベンジルアンモニウム化合物等の第四級アンモニウム化合物;塩素化フェノール、ビスフェノール、O−フェニルフェノール等のフェノール化合物等が含まれる。また、ヒノキチオール、ワサオーロ、キチンキトサン等の天然物由来の抗菌剤を用いることもできる。揮発性抗菌剤としては、特に限定されるものではないが、イソチアン酸化合物、ヒノキチオール、タケ抽出オイル、シソ抽出オイル、チアゾリルスルファミド化合物等が挙げられる。
【0057】
粘着剤層(C)に含有させる化学薬品に防ダニ剤を用いる場合、特に限定されるものではないが、揮発性防ダニ剤が好適である。揮発性防ダニ剤としては、特に限定されるものではないが、アレスリン、テトラメスリン、レスメトリン、フェノトフラメトリン、ペルメトリン、シフェノトリン、トラロメスリン、エンペントリン、DDVP、フェニチオン、テメホス、ジフルベンズロン、ブプロフェジン、ピリプロキシフェン、ハッカ油等が挙げられる。
【0058】
粘着剤層(C)に含有させる化学薬品に防虫剤を用いる場合、特に限定されるものではないが、揮発性防虫剤が好適である。揮発性防虫剤としては、特に限定されるものではないが、クレゾール、o−フェニルフェノール、パラチオン、イミダゾール等が挙げられる。
【0059】
粘着剤層(C)に含有させる化学薬品に動物忌避剤を用いる場合、特に限定されるものではないが、揮発性動物忌避剤が好適である。揮発性動物忌避剤としては、特に限定されるものではないが、ピレトリン、ロテノン、フタルスリン、アレスリン、ペルメトリン、サイバーメトリン、アルファサイバーメトリン、フェノトリン、シフェノトリン、メントール、ヒノキオイル、スギオイル、ヒバオイル、ジチオカルバモリルスルファイド系化合物、シンナミックアルデヒド、リナロール等が挙げられる。
【0060】
粘着剤層(C)に含有させる化学薬品に防腐剤を用いる場合、特に限定されるものではないが、例えば、有機沃素系化合物、有機窒素硫黄系化合物、有機臭素系化合物、イソチアゾロン系組成物、ブロモニトロアルコール系組成物等がある。
【0061】
粘着剤層(C)に含有させる化学薬品に脱臭剤を用いる場合、特に限定されるものではないが、シリカゲル、活性アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、ゼオライト、活性炭、アモルファスシリカ、シクロデキストリン、セピオライト、セラミックス等があり、活性炭にアミン類等の物質を化学処理したもの、例えば、日本エンバイロケミカルズ社製の粒状白鷺GAAxは好ましい例である。
【0062】
粘着剤層(C)に含有させる化学薬品にアルデヒド類吸着剤を用いる場合、特に限定されるものではないが、アミン基をもつ有機化合物としては、例えば、尿素、エチレン尿素、プロピレン尿素、5−ヒドロキシプロピレン尿素、5−メトキシプロピレン尿素、5−メチルプロピレン尿素、パラバン酸(グリオキザールモノウレイン)、4,5−ジメトキシプロピレン尿素、ヒドラジン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、ジシアンジアミド、2−ヒドラゾベンゾチアゾール、もしくはその誘導体、等のアミン類、アミド類、イミド類、など挙げられ、中でも、尿素系及びヒドラジン系の有機化合物が、アルデヒド類吸着性能上、好ましい。
【0063】
粘着剤層(C)に含有させる化学薬品に消臭剤を用いる場合、特に限定されるものではないが、ポリエチレンイミン等のポリアルキレンイミン、ビタミンE、トコフェノール、酸化チタン、ヒドラジン誘導体、アミン化合物(ペンタエチレンヘキサミン、トリエチレンテトラミン、ポリビニルオキサゾリン、等)、無機塩基化合物(酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、等)、フラボノイド防臭剤、ポリフェノール、テレピン油、活性酸化アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、等が挙げられる。
【0064】
粘着剤層(C)に含有させる化学薬品に防錆剤を用いる場合、特に限定されるものではないが、気化性防錆剤、ジンクホスフェート、タンニン酸誘導体、リン酸エステル、塩基性スルホン酸塩、各種防錆顔料等が挙げられる。気化性防錆剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、亜硝酸塩、アンモニウム化合物、尿素系化合物及びこれらの混合物等が挙げられ、加水分解や中和反応を起こし、亜硝酸アンモニウム、アンモニア及び亜硝酸等の気化性の高い防錆剤を生成して、優れた防錆効果を発揮する。
亜硝酸塩としては、特に限定されるものではないが、例えば、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸マグネシウム;アンモニウム化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、安息香酸アンモニウム、フタル酸アンモニウム、ステアリン酸アンモニウム、パルミチン酸アンモニウム、オレイン酸アンモニウム;尿素系化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、尿素、ウロトロピン、カルバミン酸フェニル等が挙げられる。また、安息香酸ナトリウム、亜硝酸塩類のジイソプロピルアンモニウム・ナイトライト(DIPAN)、ジシクロヘキシルアンモニウム・ナイトライト(DICHAN)、ニトロナフタリンアンモニウム・ナイトライト(NITAN)、二環のベンゾアゾール化合物、単環のイミダゾール、トリアゾール、ロジン、亜硝酸ジイソプロピルアンモニウム、安息香酸、カブリル酸、亜硝酸ジシクロヘキシルアンモニウム、炭酸ジシクロアンモニウム、ニトリット等が挙げられる。これらの気化性防錆剤は人体に有害なものが多く、その取り扱いには注意が必要である。
鉄用の気化性の防錆剤としては、アミン類の亜硝酸塩類、アミン類のカルボン酸塩類、アミン類のクロム酸塩類、カルボン酸のエステル類が挙げられる。
銅及び銅合金用としては、複素環状化合物であるトリアゾール環、ピロール環、ピラゾール環、チアゾール環、イミダゾール環やチオ尿素類、メルカプト基を有するもの等がある 。
【0065】
粘着剤層(C)に含有させる化学薬品に脱酸素剤を用いる場合、特に限定されるものではないが、鉄系脱酸素剤、非鉄系脱酸素剤、酸素と炭酸ガスを同時に吸収するものなどが挙げられ、鉄、亜鉛等の金属粉、FeO、FeTiO
2、Fe
2O
3等の鉄の還元性低位酸化物、有機金属錯体、遷移金属化合物、アスコルビン酸、フェノール系物質亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ硫酸塩、シュウ酸塩、ピロガロール、カテコール、ロンガリット、ビタミンC、ナノコンポジットナイロンレジン、ブタンジオールが分子内に分岐されたポリエステル、グルコース等が挙げられる。
【0066】
粘着剤層(C)に含有させる化学薬品に鮮度保持成分を用いる場合、特に限定されるものではないが、イソチオシアネート化合物、香辛料抽出物、シンナミックアルデヒド、ゲラニオール、オイゲノール、カルバクロール、チモール、ボルネオール、ピネン等が挙げられ、特にイソチオシアネート化合物が有用である。
【0067】
上記粘着剤層(C)と被貼付体との粘着性および剥離性をより最適化する為、保護層(D)に接する粘着剤層(C)側に、粘着性と剥離性を両立させた、再剥離性粘着層(C´)を積層することができる。
たとえば、被貼付体と接する側の再剥離性粘着剤層(C´)を凹凸状・吸盤状にし、被貼付体との接着面積を低減すると共に、吸盤吸着作用による、接着性と剥離性とを両立させる樹脂組成が選ばれる。例えば、重合度の異なる樹脂をブレンド、架橋剤の添加、発泡剤の添加などによる、凹凸処理を行う方法などが有効である。
【0068】
本発明の多層積層フィルムは、上記のような構成からなるものであるが、一般的に粘着剤層(C)表面を被覆保護するために公知の保護層(D)を積層したシート状形態として提供される。また、該多層積層フィルムは包装材料(E)にて密封包装することによって、使用するまでの保存安定性を確保できるものである。
【0069】
保護層(D)に用いられるフィルムとしては、貼付剤を使用する時まで前記粘着剤層(C)の表面を被覆して保護するためのフィルムであり、材質としては、特に制限されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンー酢酸ビニル共重合体、EVOH、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン等のポリアミド;ポリアクリロニトリル;セルロース又はその誘導体;アルミニウム等の金属箔等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。このようなフィルム及びシートとしては、その離型性を増すために、前記粘着剤層に接する面にあらかじめシリコーン処理やフッ素樹脂処理等が施されたものであってもよい。
【0070】
包装材料(E)としては、該多層積層フィルムを、使用前まで密封して保存又は運搬する為のものであり、気密性の観点からヒートシール可能なものが望ましい。具体的には、ポリエチレン、アイオノマー樹脂、エチレンー酢酸ビニル共重合体、EVOH、ポリアクリロニトリル系共重合体、ポリビニルアルコール系共重合体等のヒートシール性を有するプラスチックシートを用いた包装材料が適している。特に該多層積層フィルムに含有される化学薬品の外気による汚染や酸化分解を防止するためには、ポリエステルフィルム、EVOHフィルム、及び これらの表面を無機物で蒸着コートしたフィルムや金属箔等のガス不透過性フィルムを積層したものを用いることが好ましい。
【0071】
本発明の該多層積層フィルムの製造方法としては、例えば、粘着剤、化学薬品、各種添加剤を含む粘着剤組成物をトルエン等の適当な溶媒に溶解し、得られた溶液を保護層(D)を形成するフィルム表面に塗布、乾燥して粘着剤層(C)を形成する第一工程と、支持体層(A)を形成するフィルムの表面に、EVOH溶液を塗布、乾燥し、EVOH薄層(B)を形成する第二工程があり、両工程から得られた多層フィルムを粘着剤層(C)と柔軟バリアー薄層中のEVOH系樹脂で少なくとも構成される薄層(B−1)とが対面する方向で圧着することにより製造される。圧着する場合、必要な場合、加熱圧着して該多層積層フィルムを製造してもよい。
【0072】
しかし、上記第一工程において、保護層(D)を形成するフィルム表面の離型剤が粘着剤層(C)に移行し、粘着剤層と被貼付体との接着性が悪化する場合があったり、粘着剤層(C)と前記(B−1)層とが対面する方向で圧着する最後の工程で、エアー噛みなど密着が悪化する場合がある。その対策として、前記第二工程の後、前記(B−1)層側に直接、粘着剤溶液を塗布・乾燥し、その後、保護層(D)を圧着する方法も有効である。
特に、EVOH薄層(B)側に粘着剤を均一に粘着させるには、該方法がより接着性の面で有効である。
【0073】
保護層(D)を剥離し、被貼付体に該多層積層フィルムを貼り付けた後、支持体層(A)を剥離する際、被貼付体と粘着剤層(C)との界面が先に剥離するなどの問題がある。その対策として、1)該多層積層フィルム周辺部を、支持体層(A)側に僅かに折り曲げる方法、2)多層積層フィルム周辺部の支持体層(A)とEVOH薄層(B)との間を部分的に剥離しておく方法、3)多層積層フィルム周辺部の支持体層(A)を形成するフィルムに予め離型剤を部分的に塗布しておく方法、4)支持体層(A)を局部的にカットしておく方法等が挙げられ、さらには、これら方法を2種類以上組み合わせた方法等があげられる。これらの中でも、2)の方法、または1)の方法と2)の方法の組合せ、或いは1)の方法と3)の方法との組合せがより好ましい。
【0074】
本発明の多層積層フィルムは、安全衛生性、及び化学薬品、添加剤の飛散による効力低下を軽減する為、化学薬品、添加剤バリアー性を有する包装材料(E)で包装し、安全衛生性、及び長期保存性を確保する。包装方法としては、例えば、1枚あるいは数枚重ねた該多層積層フィルムを包装材料(E)に包装し、その周辺をヒートシールして密封する方法が挙げられる。
本発明の多層積層フィルムは、使用直前に上記包装体(E)を取り外し、保護層(D)を剥がして露出した粘着面を被貼付体に貼付した後、支持体層(A)を剥がして使用することができる。
なお、包装材料(E)の材質としては、PET、アルミニウム(アルミニウム箔、アルミニウム蒸着)、ポリアクリロニトリル、EVOH等が挙げられる。
【実施例】
【0075】
以下、本発明について、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。なお、本発明は実施例によって何等限定されるものではない。
【0076】
<実施例1〜6および比較例1〜4>
表1に示すように、支持体(A)上にEVOH薄層(B)を積層し、一方、保護層(D)上に化学薬品及び添加剤を含む粘着剤層(C)を積層し、層(B)と層(C)とが対面するよう積層し、TOLAMI製DX−700型 テーブルラミネーターにて常温下、ラミネート速度1m/minで圧着することで多層積層フィルムを作製した。
なお、表1に記載の支持体層(A)、EVOH薄層(B)、粘着剤層(C)、保護層(D)の詳細は、以下の通りである。
【0077】
<支持体層(A)に用いるフィルム>
(1)EVOHフィルム
(株)クラレ製、エバールフィルム EF−E #15(厚み=15μm、エチレン含有量44%、鹸化度99%)
(2)ポリエステルフィルム
以下の4種類を用いた。
PET−0:東レ社製ルミラーS−10#50表面未処理品(厚み=50μm)
PET−1:ユニチカ製エンブレットSM−50マット処理品(厚み=50μm)
PET−2:東レ社製ルミラーS−10#50、片面コロナ処理品(厚み=50μm)
PET−3:東レ社製ルミラーS−10#50、片面コロナ処理品(厚み=50μm)
のコロナ処理面に、ワイアーバーにてアンカーコート剤(三井化学製 タケラックW605を13重量部、タケネートWD725を6重量部、IPMを9重量部、及び 水72重量部)を乾燥時の重量基準で0.2g/m
2を塗布し、80℃で5分間乾燥した。
【0078】
<EVOH薄層(B)を形成させるためのEVOH溶液の調製>
EVOH樹脂として、(株)クラレ製エバール樹脂 EP−E106(エチレン含有量44%、鹸化度99%)を用い、該EVOH樹脂を10質量%、及び20%含水ノルマルプロパノール溶液を90質量%の比率で混合し、75℃に加熱しながら、回転速度200rpmの攪拌条件下で溶解することで均一透明EVOH溶液を得た。また、この高温加熱した溶液を10℃で2日間冷却した後、回転速度800rpmで強攪拌し、不均一不透明EVOH溶液を得た。次に、25℃、回転速度200rpm攪拌条件下にした後、均一透明EVOH溶液を60質量%、不均一不透明EVOH溶液を40質量%の割合で混合し、回転速度800rpmで強攪拌してEVOH溶液を得た。
【0079】
<粘着剤層(C)>
下記の3種類の組成を有する溶液を調製し、後述する条件にて保護層(D)上に塗布し、粘着剤層(C)を形成した。
C−1:
シリコーン系樹脂(東レ・ダウコーニング社製、BIO-PSA 7-4202)の樹脂重量換算で79重量%、シリコーン系オイル(東レ・ダウコーニング社製、Q7-9120 SILICONE FLUID)5重量%、 化学薬品として、気化性防錆剤である亜硝酸ジイソプロピルアンモニウムサリチル酸メチル5重量%、及び 希釈溶剤として、酢酸メチル11重量%を混合し均一化した。
C−2:
高重合度ポリイソブチレン(BASF社製オパノールB−100)9重量%、低重合度ポリイソブチレン(BASF社製オパノールB−12)4重量%、流動パラフィン(カネダ社製ハイコールM−72)11重量%、化学薬品として、気化性抗菌剤であるヒノキチオールサリチル酸メチル1重量%及び希釈溶剤としてトルエン75重量%を煮沸攪拌下で混合し均一化した。
C−3:
アクリル系樹脂(ヘンケル社製DURO−TAK 87−2196)の樹脂重量換算で53重量%、ミリスチン酸イソプロピル(以降IPMと略す)11重量%、化学薬品として、気化性防虫剤であるo−フェニルフェノール5重量%、及び希釈溶剤として、酢酸メチル31重量%を混合し均一化した。
【0080】
<保護層(D)に用いるフィルム>
以下の2種類を用いた。
D−1:藤森工業社製SF3(厚み=50μm)
D−2:東洋紡製 K5104(厚み=50μm)
【0081】
<支持体層(A)とEVOH薄層(B)との積層>
上記準備した支持体層(A)に上記調製したEVOH溶液を用い、乾燥後所定の厚みになる様、ワイアーバーを用いて塗布し、80℃、5分乾燥し、支持体層(A)/EVOH薄層(B)の積層フィルムを作製した。
【0082】
<粘着剤層(C)と保護層(D)との積層>
保護層(D)の片面に、上記調製した粘着剤溶液を用い、乾燥後 所定の厚みになる様、アプリケーターを用いて塗布し、80℃、5分乾燥後、粘着剤層の厚みが60μmである粘着剤層(C)/保護層(D)の積層フィルムを作製した。
【0083】
前記作製した支持体層(A)/EVOH薄層(B)の積層フィルムと、粘着剤層(C)/保護層(D)の積層フィルムとを、TOLAMI製 DX−700型 テーブルラミネーターにて常温下、ラミネート速度1m/minでラミネートし、多層積層フィルムを得た。得られた多層積層フィルムを4cm×5cmにカットし、PET/アルミ/PAN(ポリアクリロニトリル)の構成からなる包装袋(E)に投入し、熱シールを行った。
【0084】
得られた多層積層フィルムについて、以下の性能評価を行った。
<剥離強度、支持体剥離性、糊残り性>
15mm幅×100mm長さの多層積層フィルムの保護層(D)を剥離し、ベークライト板に1kg加重のローラーで貼付け、23℃、50%RH湿度下、1時間放置後、強伸度測定装置(島津製作所社製オートグラフ、AG−1、500N)を用いて、100mm/minの速度で180度剥離を行い、剥離強度、剥離層位置及び 粘着層(C)由来の糊残りの有無を目視で観察した。
糊残り性は、目視で、無しを「○」、僅かにありを「△」、及び 多いを「×」と判定した。また、支持体剥離性は、目視で、保護層(D)を形成するフィルムを剥離する際、支持体層(A)が先に剥離する場合を「×」と判定し、保護層(D)が先行して、容易に剥離する場合を「○」と判定した。
【0085】
<引張強度(引張伸度10%時)>
得られた多層積層フィルムを23℃、50%RH湿度下で1日放置後、包装袋(E)を取り除いた後、支持体層(A)、及び保護層(D)を剥離し、15mm巾の試料を23℃、50%RH湿度下で、フィルム強伸度測定装置(島津製作所社製オートグラフ、AG−1、500N)を用い、引張り速度5mm/minで強伸度を測定し、引張伸度10%時の引張強度を求め、柔軟性の目安とした。
【0086】
<ヘイズ度(曇度)>
本発明の多層積層フィルムの支持体層(A)、及び保護層(D)を剥離した後のEVOH薄層(B)/粘着層(C)の積層体を、東洋精機製作所製「直読ヘイズメーター」を用いて、<Haze-C>を測定した。その後、該積層体をMEK、酢酸エチル、トルエンなどの有機溶剤に浸漬し、粘着層(C)を除去して、EVOH薄層(B)のみからなる薄膜を得、乾燥後に<Haze-B>を測定した。さらに、<Haze-B>から<Haze-C>を差し引いた値をHaze-△とした。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
表1、表2の結果から明らかなように、均一透明EVOH溶液のみを塗布して得られたEVOH薄層(B)を含む多層積層フィルム(比較例3、4)と比較して、均一透明EVOH溶液と不均一不透明EVOH溶液を混合したEVOH溶液を塗布して得られたEVOH薄層を含む多層積層フィルム(実施例1〜6)は、EVOH層(B)と粘着剤層(C)との接着性が大幅に改善しており、被貼付体(ベークライト板)に粘着剤層(C)に含まれる糊などの残存物がほとんど認められず、被貼付体への刺激性が大幅に改善している。
従って、本発明の多層積層フィルムでは、保管中、粘着層の化学薬品、添加剤の吸着、移行がなく、貼り付け後の被貼付体伸縮追随性が優れており、かつ多層積層フィルムの被貼付体からの粘着剤(C)剥離残りが大幅に改善することが判る。
【0090】
本発明は、家具、壁紙、衣装ケース、板紙、ダンボール紙、木材、建材、野菜、果物、医療用品などの機能性保護フィルムなどに適用できる。