特許第6589283号(P6589283)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6589283-モータ及びモータを備えるファン 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6589283
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】モータ及びモータを備えるファン
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/33 20160101AFI20191007BHJP
【FI】
   H02K11/33
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-18065(P2015-18065)
(22)【出願日】2015年2月2日
(65)【公開番号】特開2015-192596(P2015-192596A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2018年2月1日
(31)【優先権主張番号】201410123875.0
(32)【優先日】2014年3月28日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(72)【発明者】
【氏名】顧兆武
【審査官】 若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−021903(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/139129(WO,A1)
【文献】 特開2006−246557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータであって、
静止部と、
中心軸を有する回転部と、
を有し、
前記回転部は中心軸を中心として前記静止部に対して回転可能に支持され、
前記静止部は、
電機子と、
前記電機子の下方に配置された回路基板と、
前記電機子及び前記回路基板を支持するベース部と、
を有し、
前記ベース部は軸受ホルダと、
前記軸受ホルダを支持する中央タワー部と、
径方向外側から前記回路基板を囲み、且つ、前記回路基板との間に径方向隙間を有する壁部と、を有し、
前記回路基板の中央には貫通孔を有し、
前記貫通孔の内周面は前記中央タワー部によって支持され、
前記回路基板の上下側に充填材が充填され、
前記回路基板は少なくとも一つの排気孔を有し、
前記回路基板の下面と前記ベース部の上面との間の軸方向空間を介して、前記径方向隙間と前記排気孔とが連通し、
前記径方向隙間において、前記回路基板は、前記壁部と径方向に対向する外周切欠がさらに設けられることを特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のモータであって、
前記中央タワー部はテーパ部を有し、
前記貫通孔の内周面が前記テーパ部によって、支持されることにより前記テーパ部に固定される。
【請求項3】
請求項1に記載のモータであって、
前記ベース部の前記壁部の内周側から径方向内側へ延びる段差部が設けられ、
前記回路基板が前記段差部に固定される。
【請求項4】
請求項2に記載のモータであって、
前記排気孔と前記貫通孔が連通することを特徴とする。
【請求項5】
請求項に記載のモータであって、
前記排気孔は外周切欠と同じ半径方向に設置される。
【請求項6】
請求項に記載のモータであって、
前記外周切欠の少なくとも一つが前記回路基板と接続するリード線の引出口である。
【請求項7】
請求項1に記載のモータであって、
前記回路基板は多角形である。
【請求項8】
請求項1に記載のモータであって、
前記充填材はエポキシ樹脂、シリコンゴム、ポリウレタン樹脂の一種類或いは多種類であることを特徴とする。
【請求項9】
ファンであって、
請求項1に記載の前記モータを有し、
インペラをさらに有し、
前記インペラは前記モータの回転部とともに回転する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ及びモータを備えるファンに関する。
【背景技術】
【0002】
モータは多様な環境での使用が求められる。過酷な使用環境においても、駆動を確保するため、モータのコイル或いは回路基板を保護することにより防塵防水を実現できることは従来から知られている。例えば、特許第3432380号公報(特許文献1)には、シリコン樹脂の注入によってステータを保護することにより防水を実現するファンモータを開示している。図1はこの特許文献1のファンモータの一部を示したものであり、シリコン樹脂の注入口30からモールド空間にシリコン樹脂25を注入し、回路基板4を覆うことにより防水効果を発揮するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3432380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のファンモータにあっては、シリコン樹脂等の充填材を注入する場合に、空気の排気を行う排気口が設置されていないため、充填材の流動性が悪く、充填に時間を要する。また、回路基板の上下側において排気されなかった空気が気泡として発生する可能性も高い。充填時に気泡が発生すると、モータの防水性が低下することが懸念される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記問題点に留意してなされたものであり、その目的とするところは、より良い防水性能のモータを提供することにある。
【0006】
本発明のモータは、静止部とシャフトを有する回転部とを有し、回転部はシャフトが静止部に対して、回転可能に支持される。静止部は、電機子と、電機子の下方に配置された回路基板と、電機子及び回路基板を支持するベース部とを有する。ベース部は軸受ホルダと、軸受ホルダを支持する中央タワー部と、径方向外側から回路基板を囲み、且つ、回路基板との間に径方向隙間を有する壁部とを有する。回路基板の中央に位置する貫通孔の内周面が、中央タワー部に支持される。回路基板の上下側に充填材料が充填される。回路基板は貫通孔近傍に少なくとも1つの排気孔を有し、回路基板の下面とベース部の上面との間の軸方向空間を介して、径方向隙間と排気孔とが連通し、径方向隙間において、回路基板は、壁部と径方向に対向する外周切欠がさらに設けられる。
【発明の効果】
【0007】
本発明のモータにあっては、回路基板に少なくとも1つの排気孔を設けることで、充填材充填過程において空気が排出される為、気泡が発生する可能性が低くなり、回路基板の電子部品をさらに保護することできる。これにより、モータの防水性能を向上できる。
【0008】
また、上記のモータを有するファンは、インペラも含み、インペラはモータの回転部とともに回転できる。そして、防水性を高めたモータを有するため、ファンの防水性改善も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】公知技術のファンモータの断面図である。
図2】本発明の実施形態によるファンの要部の断面図である。
図3】本発明の実施形態によるファンにおけるモータの回路基板の上面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図面を参照しながら、本発明のファンの実施形態を具体的に説明する。下記の実施形態と図面は一例であり、本発明の範囲を制限するものではない。必要に応じて実施形態の特徴を適宜他の構成と組合せられる。
【0011】
本願では、モータにおける回転部の中心軸O-O’の方向を「軸方向」と呼び、回転部の中心軸O-O’と直交する方向を「径方向」と呼ぶ。軸方向におけるロータホルダ側を「上」と呼び、回路基板側を「下」と呼ぶ。径方向において中心軸O-O’を離れる方向を「外」と呼び、中心軸O-O’に近づく方向を「内」と呼ぶ。ただし、これは、説明のために上下、内外方向を定義したものであって、本発明に係るモータ及びファンの、使用時の方向を限定するものではない。
【0012】
図2は、本発明のファンの一実施形態の断面図である。ファン1はモータ2とインペラ3を有する。モータ2は静止部とシャフトを有する回転部とを有し、回転部は中心軸O−O’を中心に静止部に対して回転可能に支持される。静止部は電機子5と、電機子5の下方に配置された回路基板6と、電機子5及び回路基板6を支持するベース部7とを有する。電機子5は鉄芯8と、鉄芯8にインシュレータ9を介して巻回されるコイル10とを備える。回路基板6には電子部品が配置され、コイル10と電気を供給するリード線が接続され、モータ2を制御することができる。ベース部7は軸受ホルダ11、中央タワー部12および壁部13を有する。中央タワー部12は軸受ホルダ11を支持し、壁部13が径方向外側から回路基板6を囲む。
【0013】
回転部はシャフト14と、ロータホルダ15と、ロータホルダ15の内側面に繋がるロータマグネット16とを備える。シャフト14は中心軸O−O’と同軸に軸受ホルダ11内の軸受17により回転可能に支持される。ロータホルダ15はシャフト14に直接的または間接的に固定されている為、シャフト14とともに回転できる。ロータマグネット16は電機子5と径方向に対向している。なお、インペラ3はロータホルダ15に繋がり、インペラ3はモータ2の回転部とともに回転する。モータ2は充填材18をさらに有し、回路基板6の上下に充填する。好ましくは、充填材18はエポキシ樹脂、シリコンゴム、ポリウレタン樹脂の一種類或いは多種類である。これらの材料は良好な絶縁性と防水性を有する。
【0014】
図3は、本発明のファンのモータの回路基板6の上面図である。実線で回路基板6を表し、点線でベース部7の壁部13の内周面を表す。同図に示すように、回路基板6と壁部13の間に径方向隙間19が存在し、充填材18の充填を行いやすくする。回路基板6の中央に位置する貫通孔20の内周面が、ベース部7の中央タワー部12に支持される。好ましくは、ベース部7の中央タワー部12はテーパ部を有する。回路基板6は、貫通孔20の内周面をテーパ部に載置することによりテーパ部に固定される。これにより、回路基板6の固定を実現する。回路基板6は貫通孔20の近傍に少なくとも1つの排気孔21を有し、回路基板6の下面とベース部7の上面との間の軸方向空間を介して、径方向隙間19と排気孔21とが連通する。回路基板6に少なくとも排気孔21である排気口を設けるので、充填材18を充填する過程において、回路基板6とベース部7の間の空気が排気されることになり、充填材18に気泡が発生する可能が低くなり、防水性を高めることが出来る。従って回路基板6の電子部品をさらに保護することができる。これにより、モータ2の防水性能を向上できる。図3で示すよう、排気孔21と貫通孔20とが連通するようにしたが、排気孔21は貫通孔20と連通しなくてもよく、貫通孔20の周囲に排気孔が設けられても良い。
【0015】
回路基板6の外周縁には、外周切欠22が形成される。これにより、充填材18の注入空間を広くして、充填材18の流動性を向上する。図3に示すように、外周切欠22は周方向等間隔の位置に4カ所あり、回路基板6の形状は四角形となる。また、外周切欠22の数は当業者の常識の範囲にて自由に変更できるため、回路基板6の形状は多角形でもよい。これにより、充填材18の注入口の寸法を拡大して、排気口も確保することで、充填材の流動性を向上する。本実施形態の変形例として、各排気孔21は外周切欠22と同じ径方向の位置に設置してもよい。これにより、充填過程にて、充填材18の流動性を向上させることができる。また、外周切欠22の少なくとも一つを回路基板6に接続されたリード線の引出口とすることができる。本構造によってリード線を引出すことが容易になる。
【0016】
図2に示すように、ベース部7の壁部13には、その内周側から径方向内側へ延びる段差部23が設けられている。段差部23は回路基板6を支持し、回路基板6が段差部23にてネジ24等を用いて固定される。回路基板6を載置する段差部23によってより確実な回路基板6の固定を実現できる。なお、径方向隙間19と排気孔21との間の連通を妨げない為に、段差部23は全周に亘って存在するのではなく、3ヶ所以上の複数箇所に配置されるのが好ましい。
【0017】
以上、本発明を、ファンモータに適用した場合を事例として述べたが、本構造は他のモータ構造に応用しても良い。
【0018】
本発明は、以下のメリットをさらに有する。
【0019】
中央タワー部はテーパ部を有する。テーパ部が回路基板の貫通孔の内周面を受けることで、回路基板が径方向にずれることなく固定される。
【0020】
ベース部の壁部の内周面から径方向内側へ延び、回路基板を保持する段差部が設けられる。段差部によって、径方向外方でも回路基板が固定され、回路基板の固定が安定する。また、段差部と回路基板をネジ等にて固定することが可能となる。
【0021】
排気孔と貫通孔が連通することにより、充填過程にて気体が排気孔から排出され、気泡の発生を防止する効果を有する。
【0022】
回路基板が外周切欠を有することで、外周切欠が回路基板の外周縁に設置される。充填材の注入空間を広げることで、気体の排出も促進させることができ、充填材の流動性を向上させることができる。また、気体の排出を促進させることで、気泡の発生を防止する効果を有する。
【0023】
排気孔は外周切欠と同じ径方向位置に設置する。これにより、充填過程における充填材の流動性を向上できる。
【0024】
一つの好ましい実施形態の中で、外周切欠の少なくとも一つがその一端と回路基板と接続するリード線の引出口である。これにより、リード線の引出しが容易になる。
【0025】
一つの好ましい実施形態の中で、回路基板は多角形である。充填材の充填注入口の寸法を拡大し、充填材の流動性を向上する。
【0026】
一つの好ましい実施形態の中で、望ましくは、充填材18はエポキシ樹脂、シリコンゴム、ポリウレタン樹脂の一種類或いは多種類である。これらの材料は良い絶縁性と防水性を有する。
【0027】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した範囲において種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明によるモータは、防塵・防水が必要とされる過酷な使用環境における使用に好適である。
【符号の説明】
【0029】
1 ファン
2 モータ
3 インペラ
5 電機子
6 回路基板
7 ベース部
11 軸受ホルダ
12 中央タワー部
13 壁部
14 シャフト
18 充填材
19 径方向隙間
20 貫通孔
21 排気孔
22 外周切欠
23 段差部
図1
図2
図3