(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記入力値を表わす前記入力データは、構造体および構造体を構成する材料の設計変数を表すものであり、前記出力値を表わす前記出力データは、構造体および構造体を構成する材料の特性値を表すものである請求項1〜6のいずれか1項に記載のデータの分析方法。
前記入力値を表わす前記入力データは、構造体および構造体を構成する材料の設計変数を表すものであり、前記出力値を表わす前記出力データは、構造体および構造体を構成する材料の特性値を表すものである請求項8〜10のいずれか1項に記載のデータの表示方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明のデータの分析方法およびデータの表示方法を詳細に説明する。
図1(a)は、2つの特性値の関係を示すグラフであり、(b)は、2つの設計変数の関係を示すグラフである。
【0017】
設計変数x
1、x
2の関数である2つの特性値f
1、f
2において、
図1(a)に示すように、例えば、特性値f
1、f
2がいずれも値が小さくなることが好ましい場合、2つの特性値f
1、f
2は、
図1(a)に示す符号H
1、H
2で示す設計値が望ましい。なお、設計変数x
1、x
2は、
図1(b)に示す関係を有する。
図1(b)に示すように、望ましい設計値H
1は、設計変数x
1および設計変数x
2が大きい値である。望ましい設計値H
2は、設計変数x
1が小さい値であり、設計変数x
2が大きい値である。このように、特性値f
1、f
2が良好な特性となる設計値H
1、設計値H
2は設計変数x
1、x
2の値が異なる。しかし、設計変数x
2の値が大きいと特性値f
1、f
2は良好な特性となる。設計変数x
2の値が特性値f
1、f
2の良好な特性を得るに重要な設計変数である。例えば、特性値f
1、f
2は、タイヤの横ばね定数、タイヤの転がり抵抗であり、設計変数x
1、x
2は、タイヤの形状のパラメータである。
なお、特性値f
1、f
2は目的関数空間における目的関数の値ともいう。特性値f
1、f
2は、上述のように設計値H
1、H
2で表わされ、設計値H
1、H
2は設計変数x
1、x
2のゼロを含むある値の組合せで表わされる。
【0018】
上述のように、多目的最適化問題において複数の特性値を向上させる設計値を探索することが重要である。同時に設計変数空間において、複数の特性値を向上させる設計変数が何かを判別することも重要である。しかしながら、通常の製品設計では設計変数、特性値の数はきわめて多く、どの設計変数の寄与が大きいか判別しづらい。また、経験の浅い解析者では結果を図示しても、
図1(a)、(b)から設計変数x
2の値が特性値f
1、f
2の良好な特性を得るに重要な設計変数であるという、因果関係が理解できないことがある。本発明は、このような因果関係の理解の困難さを解消するためになされたものである。
【0019】
図2は、本発明の実施形態のデータの分析方法およびデータの表示方法に利用されるデータ処理装置の一例を示す模式図である。
本実施形態のデータの分析方法およびデータの表示方法には、
図2に示すデータ処理装置10が用いられるが、データの分析方法およびデータの表示方法をコンピュータ等のハードウェアおよびソフトウェアを用いて実行することができればデータ処理装置10に限定されるものではない。
入力値を表わす入力データXi(i=1,l)と、出力値を表わす出力データYj(j=1,m)の2種類のデータを組としたデータセットを対象としており、出力値空間において分析し、その結果を表示する。なお、lは入力データの数、mは出力データの数を表わす。入力値および特性値は、それぞれ複数ある。入力値と出力値とは所定の関係を有する。この所定の関係とは、因果関係であり、例えば、入力値と出力値とが関数により表わされることをいう。
【0020】
データセットにおいて、例えば、入力値を表わす入力データは構造体および構造体を構成する材料のうち、複数の設計変数を表す第1のデータであり、出力値を表わす出力データは構造体および構造体を構成する材料のうち、複数の特性値を表す第2のデータである。この場合、第1のデータが入力データXi(i=1,l)に相当し、第2のデータが出力データYj(j=1,m)に相当し、lは設計変数の数、mは特性値の数を表す。特性値空間が出力値空間に対応する。
データセットでは、例えば、l=6、m=2のとき、入力データX1〜X6と出力データY1〜Y4の合計10のデータを1組として扱い、この10のデータの組(入力データX1〜X6、出力データY1〜Y4)が複数組存在する。データセットにおいて、上記組の数をデータ数という。例えば、データ数が100であれば、10のデータで構成される組が100存在する。なお、入力データと出力データの数は、複数であればよく、特に10に限定されるものではない。
【0021】
例えば、タイヤの設計に利用する場合、出力データ(特性値)は、タイヤの特性値、横ばね定数、ころがり抵抗であり、入力データ(設計変数)は、タイヤの形状、タイヤを構成する部材の弾性率等の物性値である。例えば、翼の設計に利用する場合、出力データ(特性値)は、翼の特性値、揚力、質量であり、入力データ(設計変数)は、翼の形状、翼を構成する部材の弾性率等の物性値である。
なお、データセットにおいては、入力値を表わす入力データ(設計変数)と出力値を表わす出力データ(特性値)のデータは、特に限定されるものではなく、シミュレーションまたは最適化のようなコンピュータ演算されたものでもよいし、各種試験の計測データでもよく、また、パレート解を含んでもよい。
【0022】
データ処理装置10は、処理部12と、入力部14と、表示部16とを有する。処理部12は、解析部20、表示制御部22、メモリ24および制御部26を有する。この他に図示はしないがROM等を有する。
処理部12は、制御部26により制御される。また、処理部12において解析部20はメモリ24に接続されており、解析部20のデータがメモリ24に記憶される。また、メモリ24には、外部から入力される上述のデータセットが記憶される。
【0023】
入力部14は、マウスおよびキーボード等の各種情報をオペレータの指示により入力するための各種の入力デバイスである。表示部16は、例えば、データセットを用いたグラフ、解析部20で得られた結果等を表示するものであり、公知の各種のディスプレイが用いられる。また、表示部16には各種情報を出力媒体に表示するためのプリンタ等のデバイスも含まれる。
【0024】
データ処理装置10は、ROM等に記憶されたプログラム(コンピュータソフトウェア)を、制御部26で実行することにより、解析部20の各部を機能的に形成する。データ処理装置10は、上述のように、プログラムが実行されることで各部位が機能するコンピュータによって構成されてもよいし、各部位が専用回路で構成された専用装置であってもよい。
【0025】
解析部20は、上述のデータセットについて、複数の出力値(特性値)を目的関数として、目的関数空間における第1の指標および第2の指標のうち、少なくとも一方を算出するものである。第1の指標および第2の指標については、算出方法等も含めて後に詳細に説明する。なお、以下の第1の指標および第2の指標の算出の説明では、特に解析部20を用いたことは断らないが、解析部20にて第1の指標および第2の指標が算出される。また、解析部20は、後述するように複数のパレート解を関数近似し、近似関数を算出する。以下の説明で特に断らないが、関数近似についても解析部20にてなされる。
また、解析部20は、入力データおよび出力データの2種類のデータを用いて、自己組織化マップを作成する。第1の指標および第2の指標のうち、少なくとも一方に対して閾値を設定し、自己組織化マップ上での閾値に対応する領域を求め、その自己組織化マップ上での位置情報を得る。さらには、解析部20は、閾値に対応する領域に印をつけるように画像データを作成する。
解析部20は、自己組織化マップ上で閾値に対応する領域を用いて回帰分析をする。自己組織化マップ上で閾値に対応する領域を用いてクラスタリング処理をする。このクラスタリング処理により、領域がクラスタに分けられるかを判定する。判定の結果、クラスタに分けられる場合、領域の数が多いクラスタについて回帰分析を用いて線を作成する。
【0026】
解析部20で得られた結果は、例えば、メモリ24に記憶される。
表示制御部22は、解析部20で解析して得られた結果、例えば、自己組織化マップ等を表示部16に表示させるものである。それ以外にも、パレート解をメモリ24から読み出し、表示部16に表示させる。この場合、例えば、特性値を軸にとって、パレート解を散布図の形態で表示することもできる。すなわち、特性値空間に設計変数を表示する。散布図以外にも、レーダチャートの形態で表示することができる。
また、表示制御部22は、例えば、得られたパレート解について、設計変数の値に応じて、設計変数の値を表すシンボルの色、種類および大きさのうち、少なくとも1つを変える。表示形態を変更したパレート解の情報はメモリ24に記憶される。得られたパレート解は、表示制御部22で表示形態が変えられて表示部16で表示される。さらには、表示制御部22では、設計変数の値毎に、そのパレート解を結んだ線を表示させる機能も有する。自己組織化マップについても、特性値の値毎に、設計変数の値毎に表示させる機能も有する。
【0027】
次に、データ分析方法で計算する第1の指標および第2の指標について説明する。
図3は第1の指標および第2の指標を説明するためのグラフである。
図3に示すように特性値f
1、f
2の複数のパレート解Eおよび設計値H、H
3があるものを例にして説明する。複数のパレート解Eのうち、両端にあるパレート解のことを限界パレート解Ea、Ebという。
特性値f
1、f
2は要求される仕様等に応じて好ましい方向があり、好ましい方向としては、値が大きくなる、値が小さくなる、または所定の値に近づく等がある。例えば、
図3に示す特性値f
1、f
2は、いずれも値が小さくなることが好ましい。
【0028】
第1の指標Aは、複数のパレート解Eを関数で近似した近似関数faと複数の目的関数の値のうち、少なくとも1つの目的関数の値、すなわち、複数の設計値のうち、少なくとも1つの設計値Hとの最短の距離Raのことである。第1の指標Aは、目的関数空間において複数の目的関数値(特性値)を向上させること、例えば、好ましい方向に変化させることを考慮した指標である。
【0029】
第2の指標Bは、複数のパレート解中の限界パレート解を通り、かつ近似関数faに垂直な直線Lvと複数の目的関数の値のうち、少なくとも1つの目的関数の値、すなわち、複数の設計値のうち、少なくとも1つの設計値Hとの最短の距離Rbのことである。第2の指標Bにおいては、2つの限界パレート解Ea、Ebのうち、一方が用いられるが、限界パレート解Ea、Ebのうち、いずれを用いるかは適宜選択される。
図3では、限界パレート解Ebを用いて、距離Rbを求めて第2の指標Bを得ている。
第2の指標Bは、複数の目的関数値(特性値)の比率を考慮した指標である。
【0030】
パレート解を関数で近似して、その後、第1の指標Aおよび第2の指標Bを求めることで、パレート解の形状に即した指標を得ることができる。例えば、パレート解の分布が半円状または双曲線状であってもパレート解の分布に即した指標を算出することができる。
近似関数faにおいて、近似する関数の形態は特に限定されるものではなく、曲線および直線を用いることができる。曲線については、特に限定されるものではなく、多項式で表されるものでも、スプライン関数で表されるものでもよい。
【0031】
次に、第1の指標Aを求める方法について、
図3に示す設計値Hの第1の指標Aを求めることを例にして説明する。
まず、限界パレート解Ea、Ebを含む複数のパレート解Eを関数で近似して、近似関数faを得る。関数の近似については、上述のように曲線または直線で近似する。しかし、近似する関数の形態は特に限定されない。
図3で近似関数faは曲線である。
次に、近似関数faと設計値Hとの最短の距離Raを求める。距離Raは、近似関数faと、この近似関数faから離れた点との距離である。このことから、距離Raについては、関数と点との距離を求める公知の方法を利用して求めることができるため、距離Raを求める方法について、その詳細な説明は省略する。
【0032】
次に、第2の指標Bを求める方法について、
図3に示す設計値Hの第2の指標Bを求めることを例にして説明する。
まず、第2の指標Bにおいても、第1の指標Aと同じく、近似関数faを得る。複数のパレート解Eの中から、2つの限界パレート解Ea、Ebを設定する。2つの限界パレート解Ea、Ebから、1つの限界パレート解を設定する。
図3では、例えば、限界パレート解Ebを設定する。なお、限界パレート解Eaを選択してもよいことはもちろんである。
次に、限界パレート解Ebを通り、かつ近似関数faに垂直な直線Lvを求める。直線Lvは、限界パレート解Ebと近似関数faの距離が最短となる、近似関数fa上の点と限界パレート解Ebとを通る直線である。
次に、直線Lvと設計値Hとの最短の距離Rbを求める。距離Rbについては、離れた2点間の距離を求める公知の方法を利用して求めることができるため、その詳細な説明は省略する。
【0033】
図3では、近似関数faを曲線とし、1つだけとしたが、例えば、複数の1次関数(直線)を近似関数としてもよい。ここで、
図4(a)は、第1の指標の算出方法の一例を示す模式図であり、(b)は、第2の指標の算出方法の一例を示す模式図である。なお、
図4(a)、(b)において、
図3と同一のものに同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0034】
図4(a)、(b)では、理解を容易にするために、3つのパレート解E
1〜E
3を例にして説明する。この場合でも、設計値Hに対して第1の指標Aと第2の指標Bを求める。
図4(a)に示す例では、3つのパレート解E
1〜E
3のうち、パレート解E
1とパレート解E
2とについて近似式L
1を求め、パレート解E
2とパレート解E
3とについて近似式L
2を求めている。近似式L
1と近似式L
2は、いずれも2点を通る直線であり、1次関数で表されるものである。近似式L
1と近似式L
2は、例えば、2点を通る直線の方程式の求め方等の公知の方法を用いて求めることができる。
【0035】
まず、第1の指標Aについて説明する。
図4(a)では、近似式L
1と設計値Hとの距離Ra
1を求める。近似式L
2と設計値Hとの距離Ra
2を求める。距離Ra
1と距離Ra
2とを比較して、最も短い距離の値、この場合、Ra
2を第1の指標Aとする。複数の近似式を用いた場合、第1の指標Aは、複数の近似式の上述の距離の値のうち、最少の距離の値である。複数の近似式を用いた場合、第1の指標Aは正規化してもよい。この場合、複数の距離のうち、最も大きいまたは最も小さい距離を基準として正規化することができる。
なお、距離Ra
1と距離Ra
2については、上述の距離Raと同様の方法で求めることができる。このため、距離Ra
1と距離Ra
2を求める方法について、その詳細な説明は省略する。
【0036】
次に、第2の指標Bについて説明する。
近似式L
1において、パレート解E
1、E
2のうち、いずれかを限界パレート解に設定する。この場合、パレート解E
1を限界パレート解Ecとする。そして、限界パレート解Ecを通り、かつ近似式L
1に垂直な直線Lv1を求める。そして、直線Lv1と設計値Hとの最短の距離Rb
1を求める。
近似式L
2において、パレート解E
2、E
3のうち、いずれかを限界パレート解に設定する。この場合、パレート解E
2を限界パレート解Ecとする。そして、限界パレート解Ecを通り、かつ近似式L
2に垂直な直線Lv2を求める。そして、直線Lv2と設計値Hとの最短の距離Rb
2を求める。距離Rb
1の値と距離Rb
2の値を足し合わせ、距離の値の合計の値を第2の指標Bとする。複数の近似式を用いた場合、第2の指標Bは、複数の近似式の上述の距離の値の合計である。複数の近似式を用いた場合、第2の指標Bは正規化してもよい。この場合、複数の距離のうち、最も大きいまたは最も小さい距離を基準として正規化することができる。
なお、直線Lv1と直線Lv2は、上述の直線Lvと同様の方法を用いることができるため、その詳細な説明は省略する。距離Rb
1と距離Rb
2については、上述の距離Rbと同様の方法で求めることができるため、距離Rb
1と距離Rb
2を求める方法について、その詳細な説明は省略する。
上述のように、複数のパレート解を複数の近似式を用いて近似することにより、パレート解の形状に即した指標をより容易に得ることができる。例えば、パレート解の分布が半円状または双曲線状であってもパレート解の分布に即した指標をより容易に算出することができる。また、複数のパレート解を複数の近似式を用いて近似する場合、全てのパレート解を直線でつないだ形態としてもよい。
また、複数のパレート解を複数の近似式を用いて近似した場合、近似式毎に設計変数の組合せで表される設計値を調べることで、パレート解において設計変数の組合せが異なるケースを知ることができる。例えば、パレート解毎の設計変数の組合せの違いは設計に反映させることができる。
【0037】
ここで、
図5(a)は、複数のパレート解を1次近似した例を示す模式図であり、(b)は、複数のパレート解を1近似した他の例を示す模式図である。なお、
図5(a)、(b)において、
図3と同一のものに同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図5(a)に示すように、複数のパレート解Eと複数の設計値Hがある場合、複数のパレート解Eを、1つの1次式を用いて近似した場合、直線L
3により近似される。
図5(b)は
図5(a)よりもパレート解Eが多く、1つの1次式を用いて近似した場合、直線L
4により近似される。直線L
3と直線L
4を比較すると傾きが異なり、パレート解Eの数により近似式が異なる。
【0038】
図5(a)に示す例では、第1の指標Aは距離Ra
3であり、第2の指標Bは距離Rb
3である。
距離Ra
3は、直線L
3と設計値Hとの距離である。距離Ra
3の求め方は、上述の距離Raと同じであるため、その詳細な説明は省略する。
距離Rb
3については、直線L
3において、パレート解Eのうち、端のパレート解Eを限界パレート解Edとする。この限界パレート解Edを通り、かつ直線L
3に垂直な直線Lv3を求める。この直線Lv3と設計値Hとの距離が距離Rb
3である。直線L
3の求め方は、上述の直線Lvと同じであるため、その詳細な説明は省略する。また、距離Rb
3の求め方も距離Rbと同じであるため、その詳細な説明は省略する。
【0039】
図5(b)に示す例では、第1の指標Aは距離Ra
4であり、第2の指標Bは距離Rb
4である。
距離Ra
4は、直線L
4と設計値Hとの距離である。距離Ra
4の求め方は、上述の距離Raと同じであるため、その詳細な説明は省略する。
距離Rb
4については、直線L
4において、パレート解Eのうち、端のパレート解Eを限界パレート解Eeとする。この限界パレート解Eeを通り、かつ直線L
4に垂直な直線Lv4を求める。この直線Lv4と設計値Hとの距離が距離Rb
4である。直線L
4の求め方は、上述の直線Lvと同じであるため、その詳細な説明は省略する。また、距離Rb
4の求め方も距離Rbと同じであるため、その詳細な説明は省略する。
【0040】
パレート解Eと設計値Hの数が同じ条件で、近似式が1つの場合と、近似式が複数の場合で、それぞれ第1の指標Aと、第2の指標Bを求めた。その結果を
図6(a)〜(d)に示す。
ここで、
図6(a)は、1つの近似式で第1の指標を求めて得られるパレート解の例を示す散布図であり、(b)は、1つの近似式で第2の指標を求めて得られるパレート解の例を示す散布図であり、(c)は、複数の近似式で第1の指標を求めて得られるパレート解の例を示す散布図であり、(d)は、複数の近似式で第2の指標を求めて得られるパレート解の例を示す散布図である。
図6(a)〜(d)において、縦軸は特性値f
2であり、横軸は特性値f
1である。なお、特性値f
1、f
2は、例えば、横ばね定数、ころがり抵抗である。
図6(a)と
図6(c)はいずれも第1の指標を用いたものであり、対応している。また、
図6(b)と
図6(d)はいずれも第2の指標を用いたものであり、対応している。
【0041】
第1の指標Aに関する近似式が1つの
図6(a)と近似式が複数の
図6(c)を比較すると、
図6(a)に示す領域D
11と、
図6(c)の領域D
21とでは値が異なる。また、領域D
12と領域D
22でも値が異なり、領域D
13と領域D
23でも値が異なる。近似式を複数とすることで、よりパレート解の分布に近いことを確認している。このように、近似式を複数とすることで、より適切にパレート解を評価することができる。
また、第2の指標Bに関する近似式が1つの
図6(b)と近似式が複数の
図6(d)を比較すると、大きな違いがなかった。このように、指標毎に近似式が1つでもよいのか、複数とするのかを判定することもできる。
【0042】
次に、パレート解を複数の近似式で近似する方法について、
図7(a)〜(d)および
図8を用いて説明する。なお、以下に説明するパレート解を複数の近似式による近似は、解析部20でなされる。
図7(a)〜(d)は、複数のパレート解を複数の近似式で近似する方法を工程順に示す模式図であり、
図8は複数のパレート解を複数の近似式で近似する方法を工程順に示すフローチャートである。
【0043】
図7(a)〜(d)に示す例では、複数のパレート解Eはパレート解が7つある。
まず、複数のパレート解Eについて、各パレート解Eの位置情報と各パレート解Eの相対的な位置関係を取得する(ステップS10)。これにより、近似式を求める際に、近いパレート解Eを容易に選択することができる。そして、複数のパレート解Eについて、限界パレート解Ea、Ebを2つ設定する(ステップS10)。
図7(a)に示す例では、両端のパレート解Eを限界パレート解Ea、Ebに設定し、限界パレート解Eaを第1の限界パレート解とし、限界パレート解Ebを第2の限界パレート解とする。
【0044】
限界パレート解Ea(第1の限界パレート解)を始点として定め、複数のパレート解Eのうち、限界パレート解Eaに最も近いパレート解Enを、各パレート解Eの位置情報と各パレート解Eの相対的な位置関係から選択する。次に、限界パレート解Eaと最も近いパレート解Enとを用いて第1の近似式L
10を算出する(ステップS12)。
第1の近似式L
10の求め方は、2点を通る直線の求め方と同じであるため、その詳細な説明は省略する。
次に、
図7(b)に示すように、限界パレート解Eaとパレート解Enに最も近いパレート解En1を選択する。そして、限界パレート解Ea、パレート解Enおよびパレート解En1を用いて第2の近似式L
11を算出する(ステップS14)。
第2の近似式L
11の求め方は、第1の近似式L
10と同じく2点を通る直線の求め方と同じであるため、その詳細な説明は省略する。
【0045】
次に、第1の近似式L
10の第1の残差の最大値、および第2の近似式L
11の第2の残差の最大値を求める(ステップS16)。
第1の残差と第2の残差は、例えば、最小二乗法の残差を求める方法を用いて求めることができるため、その詳細な説明は省略する。
第1の残差の最大値と第2の残差の最大値を比較する(ステップS18)。ステップS18において、第2の残差の最大値が第1の残差の最大値よりも予め定められた値よりも大きい場合、第1の近似式L
10を複数の近似関数の1つに設定する(ステップS22)。すなわち、1つ前に作成した近似式が、複数の近似関数の1つに設定される。
一方、ステップS18において、予め定められた値よりも小さい場合、複数の近似式を求める際の終点である限界パレート解Eb(第2の限界パレート解)を用いたかを判定し(ステップS20)、限界パレート解Ebを用いた場合には、近似式の算出を終了する。
【0046】
なお、ステップS18での残差の最大値の判定基準である予め定められた値は、例えば、残差の最大値の差を絶対値で規定してもよい。残差の最大値の差の絶対値は、近似関数の精度により適宜設定されるものであり、特に限定されるものではない。これ以外にも、残差の最大値の判定基準として、例えば、(近似式の残差の最大値)/(1つ前に作成した近似式の残差の最大値)(以下、単に残差の比率という)に対して閾値を設定してもよい。上述の閾値は、近似関数の精度により適宜設定されるものであり、特に限定されるものではない。例えば、残差の比率の閾値は、10未満に設定される。
このように、残差の比率=((近似式の残差の最大値)/(1つ前に作成した近似式の残差の最大値))>閾値の場合、例えば、残差の比率>閾値が10の場合、新たな近似式を作成する。
【0047】
また、ステップS22において、近似式を設定した後、限界パレート解Ebを用いたかを判定し(ステップS20)、限界パレート解Ebを用いた場合には、近似式の算出を終了する。
ステップS20において、限界パレート解Ebを用いていない場合、
図7(c)に示すように限界パレート解Eb、パレート解En、En1に最も近いパレート解En2を選択する。そして、限界パレート解Eb、パレート解En、En1、および最も近いパレート解En2を用いて第3の近似式L
12を求める(ステップS24)。そして、残差の最大値δを算出し(ステップS16)、1つ前の近似式である第2の近似式L
11の残差の最大値と第3の近似式L
12の残差の最大値を比較する(ステップS18)。この場合、
図7(c)に示す第3の近似式L
12の残差の最大値δが、第2の近似式L
11の残差の最大値よりも予め定められた値よりも大きいと判定される。このため、第2の近似式L
11を複数の近似関数の1つに設定する(ステップS22)。このようにして近似式が算出される。
【0048】
次に、ステップS20において、限界パレート解Ebを用いたかを判定する。この場合、限界パレート解Ebを用いていない。そこで、次に、
図7(d)に示すようにパレート解En2を始点として、このパレート解En2に最も近いパレート解En3を複数のパレート解Eから選択する。そして、パレート解En2とパレート解En3を用いて第4の近似式L
13を算出する(ステップS24)。
【0049】
以下、上述のステップS14〜ステップS24の工程を限界パレート解Ebに達するまで繰り返し実行し、複数の近似式を求める。このようにして、複数のパレート解Eに対して、複数の近似式を求めることができる。複数のパレート解Eに対して、隣接する2つのパレート解について近似式を求める場合に比して、近似式を求める計算時間を短縮することができる。例えば、解が4000個あり、そのうち、パレート解が123個ある解集団において、第1の指標および第2の指標を求める場合、全てのパレート解に対して、隣接する2つのパレート解について近似式を作成したケース(以下、試行1という)と、上述の複数の近似式を作成したケース(以下、試行2という)の計算時間の比較結果を下記表1に示す。なお、試行1では隣接する2つのパレート解を用いるので122個の近似式が作成された。一方、試行2では2つの近似式が作成された。下記表1に示すように、試行2の方が試行1よりも計算時間が短縮されている。下記表1では試行1の計算時間を100としている。
【0051】
解析部20で、例えば、
図9(a)〜(h)に示す自己組織化マップを作成することができる。これにより、特性値と設計変数の因果関係を示すことができる。なお、自己組織化マップは、例えば、特許第4339808号公報に記載された方法を用いて作成することができる。このため、自己組織化マップの作成について、その詳細な説明は省略する。
例えば、
図9(a)〜(h)に示す自己組織化マップは、特性値F1〜F4、設計変数x1〜x6のデータセットのうち、特性値F1、F2について自己組織化マップを作成したものである。
図9(a)は、特性値F1の自己組織化マップであり、
図9(b)は、特性値F2の自己組織化マップである。
図9(c)は、設計変数x1の自己組織化マップであり、
図9(d)は、設計変数x2の自己組織化マップであり、
図9(e)は、設計変数x3の自己組織化マップであり、
図9(f)は、設計変数x4の自己組織化マップであり、
図9(g)は、設計変数x5の自己組織化マップであり、
図9(h)は、設計変数x6の自己組織化マップである。なお、特性値F1、F2は、例えば、横ばね定数、ころがり抵抗であり、設計変数x1〜x6は、例えば、タイヤの形状に関するパラメータである。
【0052】
図9(a)および(b)に示す特性値F1、F2の自己組織化マップ、
図9(c)〜(h)に示す設計変数x1〜x6の自己組織化マップを単に見ただけでは、設計変数x1〜x6のうち、いずれの設計変数が重要な因子であるかは、経験の浅い解析者では理解しにくい。
本実施形態では、先に説明した第1の指標Aまたは第2の指標Bを用いて、自己組織化マップ上に印をつけることで、経験の浅い解析者であっても、設計変数のうち、どの設計変数が重要な因子であるかを理解しやすくしている。また、第1の指標Aまたは第2の指標Bを用いて、設計変数のうち、重要な因子をメモリ24に記憶し、重要な因子の情報を外部に出力するようにしてもよい。これにより、重要な設計変数の情報を得ることができる。次に、本実施形態のデータ分析方法および表示方法について説明する。
【0053】
図10は、自己組織化マップへの描画方法を工程順に示すフローチャートである。
例えば、上述のデータセットを用意し、予め用意しておいたデータセットを、入力部14を介して解析部20に直接入力するか、入力部14を介してメモリ24記憶させる。
次に、解析部20において、データセットから、先に説明したように第1の指標Aまたは第2の指標Bを計算する(ステップS30)。
次に、解析部20で、データセットを用いて自己組織化マップを作成する(ステップS32)。これにより、例えば、上述のように
図9(a)〜(h)に示す自己組織化マップが得られる。
次に、解析部20で、第1の指標Aおよび第2の指標Bのうち、少なくとも一方を用いて、閾値を設定する(ステップS34)。閾値は、第1の指標Aの場合、第1の指標Aの最大値の1/5〜1/7とすることが好ましい。第2の指標Bの場合、閾値は、中間値とすることが好ましい。
【0054】
次に、解析部20で、自己組織化マップ上での閾値に対応する領域を求める。そして、自己組織化マップ上での閾値に対応する領域の位置情報を、例えば、メモリ24に記憶させる。解析部20で、領域の位置情報に基づいて、閾値に対応する領域の位置に印をつけるように画像データを作成する。
次に、表示制御部22により、自己組織化マップと共に、閾値に対応する領域を表示部16に表示させる(ステップS36)。なお、自己組織化マップ上に付ける印は、特に限定されるものではなく、例えば、自己組織化マップのセルの色を変えたもの、セルの大きさを変えたもの、セルの形状を変えたもの等が挙げられる。
【0055】
次に、自己組織化マップ上での閾値に対応する領域を求める方法について説明する。
図11(a)は、自己組織化マップへの描画方法の一例を示す模式図であり、(b)は、自己組織化マップへの描画方法の他の例を示す模式図である。
図11(a)は自己組織化マップの一部を示しており、自己組織化マップを構成するセル50が複数並んでいる。セル50内に記載されている数値は、セル50の値を示している。
閾値を9.5としたとき、解析部20で、横方向Vに走査し、セル50の数値を調べていき、セル50の数値が10から9に変わっていた場合、この数値が変わる前のセル52を閾値に対応する領域とする。そして、セル52の位置情報を、例えば、メモリ24に記憶する。このようにして、
図11(a)に示す例では、3つのセル52が閾値に対応する領域として得られる。
【0056】
これ以外にも、例えば、
図11(b)に示すように、複数のセル50が並んでいる自己組織化マップにおいて、閾値を9.5としたとき、解析部20で、横方向Vに走査し、セル50の数値を調べていき、セル50の数値が10から9に変わっていた場合、数値が10のセル50と、数値が9のセル50との間を閾値に対応する領域54とする。そして、領域54の位置情報を、例えば、メモリ24に記憶する。このようにして、
図11(b)に示す例では、3つの領域54が閾値に対応する領域として得られる。
図11(a)、(b)のいずれも横方向Vに走査したが、これに限定されるものではなく、例えば、横方向Vと直交する方向であってもよく、走査方向は、特に限定されるものではない。
【0057】
本実施形態のデータ分析方法および表示方法により得られた結果の一例を、
図12(a)〜(d)、
図13(a)〜(f)に示す。
図12(a)は、特性値F1の自己組織化マップに第1の指標が描画されたものであり、(b)は、特性値F2の自己組織化マップに第1の指標が描画されたものである。
図12(c)は第1の指標の自己組織化マップに第1の指標が描画されたものであり、
図12(d)は第2の指標の自己組織化マップに第1の指標が描画されたものである。
図13(a)は、設計変数x1の自己組織化マップに第1の指標が描画されたものであり、
図13(b)は、設計変数x2の自己組織化マップに第1の指標が描画されたものであり、
図13(c)は、設計変数x3の自己組織化マップに第1の指標が描画されたものであり、
図13(d)は、設計変数x4の自己組織化マップに第1の指標が描画されたものであり、
図13(e)は、設計変数x5の自己組織化マップに第1の指標が描画されたものであり、
図13(f)は、設計変数x6の自己組織化マップに第1の指標が描画されたものである。
【0058】
図13(e)の設計変数x5の自己組織化マップでは、第1の指標に沿って、自己組織化マップの値が変わっていることがわかる。設計変数x5の値を変えることで、特性値F1と特性値F2との比率を変えることができることがわかる。
また、
図13(f)の設計変数x6の自己組織化マップでは、設計変数x6の値を変えることで、特性値F1と特性値F2を同時に変えることができる。このことから、設計変数x6は、特性値F1、F2を両立させるに重要なパラメータであることが理解できる。
一方、
図13(a)の設計変数x1では、第1の指標に対して値が略変わらない。設計変数x1は、値を変えても特性値F1、F2は変わらず影響が小さく、特性値F1、F2に対して重要なパラメータではないことがわかる。
このように、第1の指標を設計変数x1〜x6の自己組織化マップ上に表示することにより、特性値と設計変数との因果関係を容易に理解でき、設計変数のうち、重要な因子を、経験の浅い解析者であっても容易に理解することができる。
【0059】
なお、第2の指標Bについても、図示はしないが、第1の指標Aと同様にして自己組織化マップ上に表示することができる(
図15(a)〜(j)参照)。
また、本実施形態においては、自己組織化マップ上に表示させているが、これに限定されるものではなく、解析部20で分析されて得られた結果、例えば、閾値に対応する領域の位置情報を外部に出力するような構成でもよい。これにより、例えば、データ処理装置10以外の装置を用いて、第1の指標または第2の指標が表示された自己組織化マップを見ることができる。
【0060】
第1の指標を特性値F1,F2および設計変数x1、x5、x6の自己組織化マップ(
図14(a)〜(e)参照)上に表示しているが、その表示方法は、特に限定されるものではない。例えば、
図14(f)〜(j)に示すように、第1の指標を表す印の端部に矢印をつけた線60としてもよい。この場合、例えば、解析部20において、閾値に対応する領域を連結して線とする。なお、線60を得る方法は、特に限定されるものではなく、回帰分析を用いて、閾値に対応する領域から回帰線を算出し、回帰線の両端に矢印を設けるようにしてもよい。線60の矢印は、特性値F1、F2が両立する方向を示す。
閾値に対応する領域を点ではなく、線60で表示することにより、特性値と設計変数の因果関係を、さらに容易に理解しやすくなる。
【0061】
第2の指標についても、第1の指標と同様に、閾値に対応する領域を線を用いて表示することもできる。
ここで、
図15(a)、(b)は、第2の指標が描画された特性値の自己組織化マップであり、(c)〜(e)は、第2の指標が描画された設計変数の自己組織化マップであり、(f)、(g)は、第2の指標が矢線状に描画された特性値の自己組織化マップであり、(h)〜(j)は、第2の指標が矢線状に描画された設計変数の自己組織化マップである。
【0062】
第2の指標Bを特性値F1、F2および設計変数x1、x5、x6の自己組織化マップ(
図15(a)〜(e)参照)上に表示しているが、例えば、
図15(f)〜(j)に示すように、第2の指標を表す印の端部に矢印をつけた線62としてもよい。この場合、例えば、解析部20において、閾値に対応する領域を連結して線とし、線62の一方の端に矢印を設けるようにしてもよい。なお、線62を得る方法は、特に限定されるものではなく、上述の線60と同様にして、回帰分析を用いて得ることができる。
線62への矢印は、線62の両端のうち、第1の指標Aが小さくなる方の端に付ける。第1の指標Aが小さくなると、パレート解との距離が縮まるため、線62の矢印は、特性値F1、F2が両立する方向を示す。
第2の指標においても、閾値に対応する領域を点ではなく、線62で表示することにより、特性値と設計変数の因果関係を、さらに容易に理解しやすくなる。
【0063】
次に、線62に矢印を設ける方法について説明する。まず、第2の指標Bに対応する第1の指標Aの自己組織化マップにおいて値の小さい方向を決める。具体的には、
図12(c)に示す第1の指標Aの自己組織化マップにおいて、端点N
1と端点N
2を求め、端点N
1のセルの値と端点N
2のセルの値を比較する。端点N
1と端点N
2のうち、セルの値の小さい方を定める。そして、設計変数の自己組織化マップの線62において、第1の指標Aの端点の値の小さい方の端点に対応する側に矢印をつける。このようにして、線62に矢印を付けることができる。なお、第2の指標Bに対応する第1の指標Aの端点を求め、端点のセルの値の大小から、線62において、セルの値の小さい方の端点に対応する側に矢印を付けるため、解析部20において上述のことを計算することで自動的にできる。
【0064】
第2の指標Bでは、
図15(e)に示すように、設計変数x6の値が、印に沿って変わっていることがわかる。設計変数x6の値を変えることで、特性値F1、F2の値を変えることができる。このことから、設計変数x6が重要なパラメータであることを理解することができる。
さらに、上述のように、矢印のついた線62を表示することで、
図15(j)に示すように、より一層容易に理解しやすくなる。
また、
図15(c)、(h)に示すように設計変数x1の値は、印に沿って略変わらない。このことから、設計変数x1は特性値F1、F2の値を変えることに寄与しないパラメータであることが理解できる。
また、
図15(d)、(i)に示すように設計変数x5の値も、印に沿って略変わらない。このことから、第1の指標Aと第2の指標Bとでは、設計変数x5の特性値F1、F2に対する寄与が異なることも理解できる。
【0065】
解析部20において、第1の指標または第2の指標の閾値に対応する領域を線60、62で表示する場合、高い精度で線60、62を得るためにクラスタリング処理することが好ましい。
ここで、
図16(a)は、クラスタリング処理される前の自己組織化マップの一例を示す模式図であり、(b)は、クラスタリング処理された自己組織化マップの一例を示す模式図であり、(c)は、クラスタリング処理しない自己組織化マップの一例を示す模式図である。
図16(a)に示す自己組織化マップ70において、第1の指標の閾値に対応する領域が第1の領域72と第2の領域74が2つある場合、解析部20で、クラスタリング処理し、回帰分析を行うことにより、
図16(b)に示す線76が得られる。一方、クラスタリング処理をしない場合には、
図16(c)に示す線78が得られる。
クラスタリング処理には、例えば、単連結法、完全連結法、k−means法、またはその他のクラスタリング手法を用いることができる。
【0066】
図17(a)は、自己組織化マップのクラスタリング処理の一例を示し、(b)は、自己組織化マップのクラスタリング処理の他の例を示す。
図16(a)に示す自己組織化マップ70では、第1の領域72と、第2の領域74とがあるが、クラスタリング処理によっては
図16(b)に示すような結果となる。解析部20によるクラスタリング処理において、例えば、自己組織化マップ70の幅Kに対して、例えば、K/5を閾値として、距離がK/5以上離れている場合、別のクラスタとする。この場合、
図16(a)に示す自己組織化マップ70では、
図17(a)に示すように、第1の領域72と、第2の領域74とを別々のクラスタと判別される。領域が多い第1の領域72について回帰分析を行い線を作成する。これにより、例えば、
図16(b)に示す線76を得ることができる。
一方、クラスタリング処理において、クラスタの判別の閾値が大きい場合、第1の領域72と、第2の領域74とが同じクラスタであると判定されて、
図17(b)に示すクラスタリング処理結果となる。これにより、回帰分析した結果、例えば、
図16(c)に示す線78が得られることになる。
このように、クラスタリング処理の際のクラスタの判別の閾値を適切に設定することで、解析部20において、適正なクラスタ分類ができ、自己組織化マップ上に、解析者等の理解を助けるための適正な線を描画することができる。
【0067】
本実施形態においては、予め用意されたデータセットを用いたが、これに限定されるものではない。例えば、パレート解を算出し、このパレート解を用いて、自己組織化マップ等を作成するようにしてもよい。
図18は、本発明の実施形態のデータの分析方法およびデータの表示方法に利用されるデータ処理装置の他の例を示す模式図である。
図18に示すデータ処理装置10aは、
図1に示すデータ処理装置10に比して、データ処理部30を有し、上述のデータセットを作成する点が異なり、それ以外の構成は、
図1に示すデータ処理装置10と同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。
図18に示すデータ処理装置10aでは、データ処理部30が解析部20に接続されている。また、データ処理部30にはメモリ24と制御部26が接続されており、データ処理部30は制御部26で制御される。
データ処理部30は、条件設定部32、モデル生成部34、演算部36、パレート解探索部38およびデータ作成部40を有する。
【0068】
データ処理部30は、入力値を表わす入力データと、出力値を表わす出力データの2種類のデータを組とし、この組を複数有するデータセットを作成するものである。
なお、データセットについては、データ処理部30で作成することなく、上述のように、入力部14を介して解析部20に直接入力されるようにしてもよい。また、データセットについては、入力部14を介してメモリ24記憶させるようにしてもよい。いずれの場合も、データ処理部30でデータセットを作成することなく処理がなされる。このため、データ処理部30でデータセットを作成する必要は必ずしもない。
【0069】
次に、データ処理部30の各部について説明する。
条件設定部32は、パレート解を特性値空間(目的関数空間)で散布図または自己組織化マップとして表示する際に必要な各種の条件、情報が入力され、設定される。各種の条件、情報は、入力部14を介して入力される。条件設定部32で設定する各種の条件、情報はメモリ24に記憶される。
【0070】
条件設定部32には、データセットのデータが設定されるものであり、例えば、構造体および構造体を構成する材料を規定するパラメータのうち設計変数として定めた複数のパラメータが設定される。なお、設計変数には、荷重および境界条件等のばらつき因子を設定してもよい。
また、データセットのデータとして、例えば、構造体および構造体を構成する材料を規定するパラメータのうち特性値(目的関数)として定めた複数のパラメータが設定される。特性値には、コスト等の物理的および化学的な特性値以外の、構造体および構造体を構成する材料を評価する指標を用いてもよい。
構造体および構造体を構成する材料は、構造体単体ではなく、構造体を構成するパーツ、構造体のアッセンブリ形態等の構造体を含むシステム全体、またはその一部を対象としてもよい。
【0071】
条件設定部32に設定される特性値は、評価しようとする物理量である。目的関数は、評価しようとする物理量を求めるための関数である。
構造体がタイヤである場合、特性値はタイヤの特性値である。この場合、特性値としては、タイヤ性能として評価しようとする物理量であり、例えば、操縦安定性の指標となるスリップ角1度における横力であるCP(コーナーリングパワー)、操縦安定性の指標となるコーナーリング特性、乗心地性の指標となるタイヤの1次固有振動数、転動抵抗の指標となる転がり抵抗、操縦安定性の指標となる横ばね定数、耐摩耗性の指標となるタイヤトレッド部材の摩耗エネルギ等が挙げられる。目的関数は、それらを求めるための関数である。目的関数は、性能として好ましい方向があり、値が大きくなる、小さくなる、または所定の値に近づく等がある。
【0072】
設計変数は、構造体の形状、構造体の内部構造および材料特性等を規定するものである。タイヤの場合、設計変数は、タイヤの材料挙動、タイヤの形状、タイヤの断面形状およびタイヤの構造のうち、複数のパラメータである。設計変数としては、例えば、タイヤのトレッド部におけるクラウン形状を規定する曲率半径、タイヤ内部構造を規定するタイヤのベルト幅寸法等が挙げられる。これ以外にも、例えば、トレッド部における材料特性を規定するフィラー分散形状、フィラー体積率等が挙げられる。
制約条件は、目的関数の値を所定の範囲に制約したり、設計変数の値を所定の範囲に制約するための条件である。
また、構造体がタイヤである場合、タイヤの負荷荷重、タイヤの転動速度を初めとする走行条件、タイヤが走行する路面条件、例えば、凹凸形状、摩擦係数等、車両の走行シミュレーションに用いるための車両諸元の情報等が設定される。
【0073】
また、条件設定部32に、設計変数と特性値のパラメータとの間の非線形応答関係を定めるための情報が設定される。この非線形応答関係には、例えば、FEM等の数値シミュレーション、理論式および近似式等が含まれる。
条件設定部32では、非線形応答関係により生成するモデル、そのモデルの境界条件、FEM等の数値シミュレーションする場合には、そのシミュレーション条件、シミュレーションにおける制約条件を設定する。さらには、パレート解を得るための最適化条件、例えば、パレート解探索のための条件等を設定する。
【0074】
パレート解探索のための条件は、パレート解を探索するための手法、パレート解探索における各種条件である。例えば、パレート解を探索するための手法として、遺伝的アルゴリズムを用いることができる。一般に、目的関数の増大と共に、遺伝的アルゴリズムの探査能力が低下することが知られている。それを解決する方法の一つが、個体数を増加させる方法である。一方、個体数を増加させ、パレート解を探査すると、多くのパレート解が算出される。したがって、多くの特性値データと設計パラメータとの因果関係を視認性良く表示する方法が設計探査の一つの課題となっているが、本発明ではこれを解決することができる。
これ以外に、条件設定部32で、設計変数の定義域を設定する。また、条件設定部32では後述するようにパレート解を縮約する際に用いられる離散値を設定する。
【0075】
モデル生成部34は、設定された非線形応答関係に基づいて、各種の計算モデルを作成するものである。非線形応答関係は、上述のようにFEM等の数値シミュレーションが含まれており、この場合、モデル生成部34で、設計変数を表わす設計パラメータ、特性値を表わす特性値パラメータに応じたメッシュモデルが生成される。また、理論式および近似式等の場合にも、設計パラメータ、特性値パラメータに応じた理論式および近似式等が作成される。なお、構造体がタイヤの場合には、タイヤモデルが作成される。演算部36でタイヤモデルを用いてシミュレーション演算がなされる。
【0076】
なお、モデル生成部34で作成されるタイヤモデルは、条件設定部32で設定された各種類の設計パラメータを用いて作成されるが、タイヤモデルの作成には公知の作成方法を用いることができる。なお、タイヤモデルは、少なくとも、このタイヤモデルを転動させる対象である路面モデルも併せて生成する。また、タイヤが装着されるリム、ホイール、およびタイヤ回転軸を再現するものをタイヤモデルとしてもよい。また、必要に応じて、タイヤが装着される車両を再現するモデルをタイヤモデルに組み込んでもよい。この際、タイヤモデル、リムモデル、ホイールモデル、およびタイヤ回転軸モデルを、予め設定された境界条件に基づいて一体化したモデルを作成することもできる。
【0077】
これら各モデルは数値計算可能な離散化モデルであればよく、例えば、公知の有限要素法(FEM)に用いるための有限要素モデル等であればよい。なお、タイヤモデルを用いて、例えば、タイヤウエット性能を初めとするタイヤ性能を最適化するタイヤ設計案を求める場合等、路面モデルとタイヤモデルの他に、路面上に存在する介在物を再現するモデルを生成しておけばよい。例えば、介在物モデルとして、路面上の水、雪、泥、砂、砂利または氷等を再現する各種モデルを、数値計算可能な離散化モデルで生成しておけばよい。なお、路面モデルも、表面が平坦な路面を再現するモデルに限らず、必要に応じて、表面に凹凸を有する路面形状を再現するモデルであってもよい。
【0078】
演算部36は、モデル生成部34で作成された各種のモデルを用いて特性値を算出するものである。これにより、設定変数に対する特性値が得られる。この特性値の中に、パレート解が存在する。得られた特性値は、メモリ24に記憶される。
演算部36では、例えば、路面上を転動するタイヤの転動を再現するシミュレーション条件を、モデル生成部34で生成したタイヤモデル、または路面モデル等に与えたときの、タイヤモデルの挙動、またはタイヤモデルに作用する力等の物理量を時系列に求める。演算部36は、例えば、公知の有限要素ソルバーによるサブルーチンを実行することで機能するものである。
また、演算部36では、モデル生成部34で理論式および近似式等を作成した場合には、理論式および近似式等を解き、特性値を算出する。
【0079】
パレート解探索部38は、条件設定部32で設定されたパレート解探索の条件に応じて、演算部36で得られた特性値の中から、パレート解を探索し、パレート解を算出するものである。得られたパレート解は、メモリ24に記憶される。
【0080】
ここで、パレート解は、トレードオフの関係にある複数の目的関数において、他の任意の解よりも優位にあるとはいえないが、より優れた解が他に存在しない解をいう。一般にパレート解は集合として複数個存在する。
パレート解探索部38は、例えば、遺伝的アルゴリズムを用いてパレート解を探索する。遺伝的アルゴリズムとしては、例えば、解集合を目的関数に沿って複数の領域に分割し、この分割した解集合毎に多目的GAを行うDRMOGA(Divided Range Multi-Objective GA)、NCGA(Neighborhood Cultivation GA),DCMOGA(Distributed Cooperation model of MOGA and SOGA)、NSGA(Non-dominated Sorting GA)、NSGA2(Non-dominated Sorting GA-II)、SPEAII(Strength Pareto Evolutionary Algorithm-II)法等の公知の方法を用いることができる。その際、解集合が解空間に幅広く分布し、精度の高いパレート解の集合を求める必要がある。このため、パレート解探索部38では、例えば、ベクトル評価遺伝的アルゴリズム(Vector Evaluated Generic Algorithms:VEGA)、パレートランキング法、またはトーナメント法を用いた選択が行われる。遺伝的アルゴリズム以外に、例えば、焼きなまし法(SA)または粒子群最適化(PSO)を用いてもよい。
【0081】
設計変数(入力値)と特性値(出力値)との間で定める非線形応答関係、すなわち、設計変数を用いて特性値を求める場合に利用されるものは、FEM等のシミュレーションに限定されるものではなく、上述のように理論式および近似式等を用いることもできる。例えば、シミュレーションモデルを用いた演算ではなく、シミュレーション近似式を用いて目的関数の値を算出してもよい。この場合、実験計画法に基づいて得られる実験結果から設計変数と目的関数との間の近似式、例えば、シミュレーション近似式を用いてパレート解を得ることができる。このシミュレーション近似式としては、多項式またはニューラルネットワーク等により得られる公知の非線形関数を用いることができる。
【0082】
データ作成部40は、パレート解探索部38で得られメモリ24に記憶されたパレート解と、この目的関数データとをメモリ24から読み出し、設計変数を表わすデータと特性値を表わすデータとの2種類のデータを組としたデータセットを作成するものである。
データ作成部40で作成されたデータセットは、メモリ24に記憶される。
【0083】
次に、パレート解の算出方法の一例について説明する。
図19は、本発明の実施形態のデータの分析方法の一例を工程順に示すフローチャートである。
まず、対象となる構造体について設計変数および特性値を設定する。本実施形態では、構造体を、例えば、タイヤとした。タイヤに対して、設計変数として、タイヤの形状パラメータを設定する。そして、特性値として、ころがり抵抗、横ばね定数の2つを設定する。本実施形態では、入力がタイヤの形状パラメータであり、出力がころがり抵抗と横ばね定数となる。タイヤの形状パラメータの値により、ころがり抵抗と横ばね定数がどのように変化するかを表示する。タイヤの形状パラメータ、ころがり抵抗と横ばね定数が条件設定部32に設定される。
【0084】
条件設定した後、まず、
図19に示すように、設計変数から特性値を求める際に用いる非線形応答を定める(ステップS40)。すなわち、設計変数と特性値との関係を定める。この非線形応答の種類は、例えば、メモリ24に記憶される。具体的には、タイヤの形状パラメータと、ころがり抵抗と横ばね定数との関係を設定する。タイヤの形状パラメータを入力とし、ころがり抵抗または横ばね定数を出力とした場合、設定する関係は、例えば、ころがり抵抗がタイヤの形状パラメータを変数とする二次多項式等の非線形関数を用いて表わされるものである。また、横ばね定数がタイヤの形状パラメータを変数とする二次多項式等の非線形関数を用いて表わされるものである。
【0085】
次に、設計変数の定義域を設定する(ステップS42)。この場合、設計変数のパラメータに対して、上限値と下限値を設定し、下限値〜上限値の間が連続であるとする。例えば、タイヤの形状パラメータであれば、サイズの上限と下限を、下限値〜上限値の間が連続であるとして、設計変数の定義域として設定する。また、タイヤのゴム組成であれば、弾性率の上限と下限を設計変数の定義域として設定する。この設計変数の定義域の設定は、条件設定部32でなされ、例えば、メモリ24に記憶される。本実施形態では、タイヤの形状パラメータについて上限値と下限値を設定する。
【0086】
次に、非線形応答関係に基づいてモデル生成部34でモデル作成を実施し、演算部36にてステップS40で設定した非線形応答関係に基づいて特性値を算出する(ステップS44)。このとき、設定した設計変数の定義域がメモリ24から読み出されて特性値が算出される。特性値の算出結果は、例えば、メモリ24に記憶される。FEM等のシミュレーションであれば、メッシュモデルがモデル生成部34で作成され、演算部36にて、FEM等により入力に対する応答をシミュレーションが実施される。具体的には、タイヤの形状パラメータに対するころがり抵抗と横ばね定数が算出される。
【0087】
次に、パレート解探索部38にて特性値の演算結果に対して、特性値を目的関数とする最適化を実施し、パレート解を得る(ステップS46)。このパレート解の算出には、例えば、遺伝的アルゴリズムが用いられる。得られたパレート解は、メモリ24に記憶される。
このように、データ処理装置10aでは、パレート解を算出し、その後、データ作成部40でデータセットを作成する。作成したデータセットを用いて解析部20にて各種のデータ処理を行う。その後、必要に応じて表示制御部22を介して表示部16に、上述のように、自己組織化マップを表示することができる。データ処理装置10aは、パレート解を作成する点以外は、上述のデータ処理装置10と同様にして、自己組織化マップに第1の指標または第2の指標に基づく領域を表示することができるため、その詳細な説明は省略する。この場合でも、経験の浅い解析者であっても、視覚的に入力値と出力値の因果関係、および重要な設計変数(入力値)等を理解しやすくすることができる。また、理解しやすくする情報を得ることができる。
【0088】
本実施形態のデータ分析方法および表示方法では、予め用意されたデータセットをそのまま用いたが、これに限定されるものではない。例えば、データセットに対して、出力値空間において入力値の移動平均処理をしてもよい。
図20は、本発明の実施形態のデータの分析方法およびデータの表示方法に利用されるデータ処理装置の他の例を示す模式図である。
図20に示すデータ処理装置10bは、
図1に示すデータ処理装置10に比して、移動平均処理部28を有し、上述のデータセットに移動平均処理をする点が異なり、それ以外の構成は、
図1に示すデータ処理装置10と同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。
図20に示すデータ処理装置10bでは、移動平均処理部28が解析部20に接続されている。また、移動平均処理部28にはメモリ24と制御部26が接続されており、移動平均処理部28は制御部26で制御される。
次に、移動平均処理部17での移動平均処理方法について
図21〜
図24に基づいて説明する。
図21は、本発明の実施形態のデータの分析方法の移動平均処理を工程順に示すフローチャートである。
【0089】
まず、出力値空間での平均区間の形状および大きさと重み関数を設定する(ステップS50)。
平均区間は、移動平均処理を行う際に、後述するマスター点の平均値を求めるための設定領域である。この平均領域は、データセットの入力データのデータ種、例えば、入力パラメータ数と、出力データのデータ種、例えば、出力パラメータ数に応じて、適宜設定されるものであり、形状等は特に限定されるものではない。例えば、出力値空間が、例えば、出力データのうち、2つのデータ種で表わされる場合、すなわち、出力値空間が2次元である場合、平均区間は、例えば、四角形等の多角形、および円等の2次元形状である。
また、出力値空間が出力データのうち、3つのデータ種で表わされる場合、すなわち、出力値空間が3次元である場合、平均区間は、例えば、四角柱等の多角柱、および球等の3次元形状である。さらには、出力値空間が出力データのうち、4つのデータ種で表わされる場合、すなわち、出力値空間が4次元である場合、平均区間は、例えば、超立方体、および超球等である。
また、平均区間の大きさについても特に限定されるものではない。さらには、平均区間を設定する際に、出力値空間を正規化してもよい。すなわち、後述する特性値空間を正規化してもよい。
【0090】
平均区間の重み関数には、例えば、以下に示す式(1)の関数w(r)を用いることができる。下記式(1)の関数w(r)は図示すれば
図22に示すとおりである。
下記式(1)の関数w(r)において、r
0は平均区間の大きさを表し、rはマスター点とスレーブ点との距離を表す。r
0は平均区間が円であれば円の半径、超球であれば超球の半径である。なお、下記式(1)の関数w(r)では、
図22に示すように、マスター点とスレーブ点との距離r=1.0が平均区間の大きさである。
【0092】
重み関数は、上記式(1)の関数に限定されるものではなく、例えば、
図22に符号Cで示すように平均区間内で一定値でもよい。一定値の値は、特に限定されるものではないが、
図22に示す例では1.0である。
さらに、出力値空間内のデータの粗密に応じて平均区間および重み関数のうち、少なくとも一方を変えてもよい。
【0093】
次に、例えば、設計変数で構成される入力データからマスター点を設定する(ステップS52)。そして、設計変数で構成される入力データからスレーブ点を設定する(ステップS54)。
具体的には、
図23に示すように、平均区間Pが設定された、特性値G1、特性値G2の特性値空間Qにおいて、平均区間P内で、既に存在する入力データの中からマスター点Mを設定する。これにより、特性値空間Qではマスター点M以外はスレーブ点sとなる。マスター点Mのデータがマスターデータであり、スレーブ点sのデータがスレーブデータである。
マスター点Mの設定方法は、例えば、
図24に示すように、特性値空間Qにグリッドgを設定し、グリッドgの交点nをマスター点Mとしてもよい。この場合、マスター点Mは必ずしも存在する入力データとは限らない。なお、グリッドgの大きさは特に限定されるものではなく、データ数等に応じて適宜設定される。
【0094】
次に、特性値空間Q上でのマスター点とスレーブ点との距離rを算出する(ステップS56)。距離rの算出には、公知の2つの座標間の距離計算方法を用いることができる。
ステップS56において、算出した距離が平均区間P内にある場合、すなわち、r≦r
0である場合、重み関数を用いて重みの値(w
v)を計算し、この重みの値(w
v)を、例えば、メモリ24に記憶する。また、入力値の各入力データの値、例えば、設計変数の値(x)に重みの値を乗じて、入力データの値と重みの値の積の値(w
vx)を算出する。そして、算出された入力データの値と重みの値の積の値(w
vx)を、例えば、メモリ24に記憶する(ステップS58)。この場合、入力データ毎に、入力データの値と重みの値の積の値(w
vx)が算出される。すなわち、設計変数毎に、設計変数の値(x)と重みの値の積の値(w
vx)が算出される。
【0095】
次に、ステップS58で記憶した重みの値(w
v)の和(w
vtot)と入力データの値と重みの値の積の値(w
vx)の和(w
vx
tot)とを、入力データ毎に計算する(ステップS60)。これにより、1つのマスター点Mでの重みの値(w
v)の和(w
vtot)と入力データの値と重みの値の積の値(w
vx)の和(w
vx
tot)とが設計変数毎に得られる。
【0096】
次に、マスター点としたデータセットのデータを除くデータセットの組、全てをスレーブ点として計算処理したか否かを判定する(ステップS62)。この場合、例えば、データセットのデータ数と、計算したスレーブデータの数とを比較することにより、ステップS62の計算処理を判定することができる。
ステップS62において、マスター点としたデータを除いたデータセットのデータをスレーブ点として計算処理した場合には、入力データ毎に、入力データの値と重みの値の積の値(w
vx)の和(w
vx
tot)を重みの値(w
v)の和(w
vtot)で除して得られた値、すなわち、w
vx
tot/w
vtotで得られた値を、入力データ毎のマスター点Mの入力データの平均値、例えば、設計変数毎のマスター点Mの設計変数の平均値とし、例えば、メモリ24に記憶させる(ステップS64)。
ステップS64では、
図23、
図24に示す平均区間Pにおいて、マスター点Mを中心とした設計変数の平均値を設計変数毎に得ることができる。
【0097】
一方、ステップS62において、マスター点としたデータを除いたデータセットのデータをスレーブ点として計算処理していない場合、マスター点Mを中心とした設計変数の平均値を設計変数毎に得るために、マスター点としたデータを除いたデータセットのデータをスレーブ点として計算処理するまで、上述のステップS54(スレーブ点の設定)からステップS60(重み・設計変数の積の計算)を繰り返し行う。そして、上述のように、設計変数毎のマスター点Mの入力データの平均値、例えば、マスター点Mの設計変数の平均値を、例えば、メモリ24に記憶させる。
【0098】
次に、データセットの組、全てを、マスター点Mとして計算処理したか否かを判定する(ステップS66)。ステップS66において、データセットの組、全てを、マスター点Mとして計算処理した場合に移動平均処理は終了する。この場合、例えば、データセットのデータ数と、計算したマスター点Mの数とを比較することにより、ステップS62の計算処理の判定をすることができる。
なお、マスター点Mをグリッドgの交点nとした場合には、交点nの数と、計算したマスター点Mの数とを比較することにより、ステップS62の計算処理の判定をすることができる。
【0099】
一方、ステップS66において、データセットの組、全てを、マスター点Mとして計算処理していない場合、データセットの組、全てをマスター点Mとするために、上述のステップS52(マスター点の設定)からステップS64(マスター点の平均値の算出)を繰り返し行う。ステップS66において、データセットの組、全てをマスター点Mとして計算処理した場合、移動平均処理は終了する。
以上のようにして、出力値空間での入力データの移動平均処理、例えば、特性値空間内での設計変数の移動平均処理が終了する。
【0100】
本実施形態において、出力値空間内で入力データの移動平均処理を行うことにより、入力データのばらつきおよびノイズを除去することができる。その後、解析部20にて各種のデータ処理を行う。その後、必要に応じて表示制御部22を介して表示部16に、上述のように、自己組織化マップを表示することができる。データ処理装置10bは、データセットに移動平均処理を施す点以外は、上述のデータ処理装置10と同様にして、自己組織化マップに第1の指標または第2の指標に基づく領域を表示することができるため、その詳細な説明は省略する。上述のように、移動平均処理することにより、自己組織化マップに閾値に対応する領域を表示した場合において、出力値と入力データとの間の因果関係をより一層容易に見出すことができる。この場合でも、経験の浅い解析者であっても、視覚的に入力値と出力値の因果関係、および重要な設計変数(入力値)等を理解しやすくすることができる。また、理解しやすくする情報を得ることができる。
【0101】
上述のデータ処理装置10bにおいては、予め用意されたデータセットに対して、移動平均処理部28で移動平均処理を施したが、これに限定されるものではない。例えば、
図25に示すように、データ処理部30を設けて、データ処理部30でパレート解を算出し、算出されたパレート解を含むデータセットに対して、移動平均処理部28で移動平均処理を施す構成でもよい。
なお、データ処理部30は、
図18にデータ処理装置10aと同じ構成であるため、その詳細な説明は省略する。
データ処理装置10cでも、パレート解を作成する点および移動平均処理を施す点以外、データ処理装置10と同様にして、自己組織化マップに第1の指標または第2の指標に基づく領域を表示することができるため、その詳細な説明は省略する。この場合でも、経験の浅い解析者であっても、視覚的に入力値と出力値の因果関係、および重要な設計変数(入力値)等を理解しやすくすることができる。また、理解しやすくする情報を得ることができる。
【0102】
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明のデータの分析方法およびデータの表示方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。