(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。なお、本発明において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸の一方又は両方を意味し、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリルアミド」等の表現についても同様である。
【0018】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は下記成分(A)及び成分(B)を含有するものである。
成分(A):ポリオレフィン系樹脂
成分(B):下記式(1)で表される構造単位を有し、重量平均分子量が800〜100,000である化合物
【0020】
(式(1)中、R
1、R
2は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数4〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、炭素数7〜15のアラルキル基、炭素数4〜12のヘテロアリール基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数6〜14のアリールオキシ基又はシリル基を示し、R
3〜R
10は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数4〜14のシクロアルキル基、炭素数1〜15のアリール基、炭素数7〜15のアラルキル基
、シアノ基又は炭素数1〜15のアシル基を示す。)
【0021】
本発明の樹脂組成物は、電気絶縁性、難燃性、耐ブリードアウト性等に優れるという効果を奏する。本発明の樹脂組成物がこれらの効果を奏する理由は定かではないが次の理由によるものと推定される。本発明の樹脂組成物において、成分(B)の化合物が共有結合によって安定した環構造を形成していることにより、一般のリン化合物に比べて電気抵抗率が高くなり、電気絶縁性が良好になるものと推定される。また、成分(B)がリン原子と芳香族構造を有するために樹脂組成物に難燃性を付与し、また、ある程度の分子量を有することにより樹脂組成物からのブリードアウトも抑制されるものと考えられる。
【0022】
<成分(A)>
本発明に用いる成分(A)のポリオレフィン系樹脂は、後述する式(2)で表される化合物以外のオレフィンモノマーを重合して得られたものであれば特に制限されない。成分(A)として用いるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の単独重合体、これらのモノマーの共重合体、又はこれらと3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等の炭素数5〜20程度のその他のα−オレフィンや、酢酸ビニル、ビニルアルコール、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等との共重合体等が挙げられる。
【0023】
ポリオレフィン系樹脂として具体的には、例えば、低・中・高密度ポリエチレン等(分岐状又は直鎖状)のエチレン単独重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体等のポリエチレン系樹脂;プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体等のポリプロピレン系樹脂;及び1−ブテン単独重合体、1−ブテン・エチレン共重合体、1−ブテン・プロピレン共重合体等のポリ−1−ブテン系樹脂;ノルボルネンの開環メタセシス重合体やノルボルネン誘導体・エチレン共重合体等の環状ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。これらの中でも成分(A)のポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂及びエチレン・酢酸ビニル共重合体(ポリエチレン系樹脂に該当するものを除く。)から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。なお、これらのポリオレフィン系樹脂は、無水マレイン酸、マレイン酸、アクリル酸等の不飽和カルボン酸又はその誘導体や不飽和シラン化合物等で変性したものであってもよく、更には、部分的に架橋構造を有していてもよい。
【0024】
なお、本発明において、「ポリエチレン系樹脂」とは、原料モノマーとしてエチレンを50重量%以上含有する重合体を意味する。「ポリプロピレン系樹脂」及び「ポリ−1−ブテン系樹脂」等についても同様である。
【0025】
ポリオレフィン系樹脂として共重合体を用いる場合の重合形式は限定されず、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体等のいずれであってもよい。また、重合方法及び重合に用いる触媒も公知のものを適宜採用することができる。これらのポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
成分(A)として用いることのできるポリプロピレン系樹脂としては、成形性の観点から、JIS K7210(1999)に従って230℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレート(MFR)が、1.0〜60g/10分であることが好ましく、2.0〜40g/10分であることがより好ましい。
【0027】
成分(A)として用いることのできるポリエチレン系樹脂としては、成形性の観点から、JIS K7210(1990)に従って190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレート(MFR)が、1〜60g/10分であることが好ましく、2.0〜40g/10分であることがより好ましい。また、ポリエチレン系樹脂は耐熱性の観点から密度(JIS K7112)が0.850〜0.980g/cm
3であることが好ましく、0.855〜0.950g/cm
3であることがより好ましく、0.860〜0.930g/cm
3であることが更に好ましい。
【0028】
成分(A)として用いることのできるエチレン・酢酸ビニル共重合体(ポリエチレン系樹脂に該当するものを除く。)としては、成形性の観点から、JIS K7210(1990)に従って190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレート(MFR)が好ましくは1.0〜60g/10分であることが好ましく、2.0〜40g/10分であることがより好ましい。
【0029】
成分(A)のポリオレフィン系樹脂は市販品として入手することができる。ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、日本ポリプロ社製ノバテック(登録商標)PPシリーズ、ウィンテック(登録商標)シリーズ等が挙げられ、これらの中から該当品を適宜選択して使用することができる。また、ポリエチレンとしては、例えば、日本ポリエチレン社製ノバテック(登録商標)シリーズ、旭化成ケミカルズ社製クレオレックス(登録商標)シリ
ーズ等が挙げられ、これらの中から該当品を適宜選択して使用することができる。更に、エチレン・酢酸ビニル共重合体としては、例えば、三井・デュポン ポリケミカル社製 エバフレックスシリーズ等が挙げられる。
【0030】
<成分(B)>
本発明に用いる成分(B)は、前記式(1)で表される構造単位を有し、重量平均分子量が800〜30,000である化合物である。この成分(B)を含むことにより本発明の樹脂組成物に難燃性が付与される。
【0032】
(式(1)中、R
1、R
2は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数4〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、炭素数7〜15のアラルキル基、炭素数4〜12のヘテロアリール基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数6〜14のアリールオキシ基又はシリル基を示し、R
3〜R
10は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数4〜14のシクロアルキル基、炭素数1〜15のアリール基、炭素数7〜15のアラルキル基
、シアノ基又は炭素数1〜15のアシル基を示す。)
【0033】
R
1、R
2におけるアルキル基の炭素数は好ましくは1〜4である。このようなアルキル基の好ましいものとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。
【0034】
R
1、R
2におけるシクロアルキル基の炭素数は好ましくは6〜12である。このようなシクロアルキル基の好ましいものとしては、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基等が挙げられる。
【0035】
R
1、R
2におけるアリール基の炭素数は好ましくは6〜12である。このようなアリール基の好ましいものとしては、フェニル基、ナフチル基、トリル基、ベンジルフェニル基等が挙げられる。
【0036】
R
1、R
2におけるアラルキル基の炭素数は好ましくは7〜13である。アラルキル基の好ましいものとしては、ベンジル基、フェネチル基、フェニルベンジル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0037】
R
1、R
2におけるヘテロアリール基は、ヘテロ原子(酸素、窒素、硫黄等)を含む環式化合物であり、それに含まれる炭素数としては好ましくは4〜8が適当である。ヘテロアリール基としては、チエニル基、フリル基、ピリジル基、ピロリル基等が挙げられる。
【0038】
R
1、R
2におけるアルケニル基の炭素数は好ましくは2〜6である。このようなアルケニル基としては、ビニル基、2−ブテニル基等が挙げられる。
【0039】
R
1、R
2におけるアルコキシ基の炭素数は好ましくは1〜4である。このようなアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0040】
R
1、R
2におけるアリールオキシ基の炭素数は好ましくは6〜12である。アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられる。
【0041】
R
1、R
2におけるシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジメチルシリル基、トリメトキシシリル基等が挙げられる。
【0042】
R
1、R
2としては、以上に挙げたものの中でも水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子が最も好ましい。
【0043】
R
3〜R
10におけるアルキル基の炭素数は好ましくは1〜10である。このようなアルキル基の好ましいものとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−デシル基等が挙げられる。
【0044】
R
3〜R
10におけるシクロアルキル基の炭素数は好ましくは6〜12である。このようなシクロアルキル基の好ましいものとしては、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基等が挙げられる。
【0045】
R
3〜R
10におけるアリール基の炭素数は好ましくは6〜12である。このようなアリール基の好ましいものとしては、フェニル基、ナフチル基、トリル基、ベンジルフェニル基等が挙げられる。
【0046】
R
3〜R
10におけるアラルキル基の炭素数としては好ましくは7〜13である。アラルキル基の好ましいものとしては、ベンジル基、フェネチル基、フェニルベンジル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0048】
R
3〜R
10におけるアシル基の炭素数は好ましくは1〜4である。このようなアシル基の好ましいものとしては、アルデヒド基(ホルミル基)、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等が挙げられる。
【0049】
R
3〜R
10としては、好ましくは水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であり、より好ましくは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、特に好ましいのは水素原子又はメチル基である。
【0050】
成分(B)の化合物は前記式(1)で表される構造単位以外のその他の構造単位を有していてもよい。式(1)以外のその他の構造単位としては特に制限されないが、例えば、後述する式(2)で表される化合物と共重合することのできる化合物に由来する構造単位が挙げられる。成分(B)の化合物は、全構造単位に対して前記式(1)で表される構造単位を50モル%以上含むことが好ましく、60モル%以上含むことがより好ましく、7
0モル%以上含むことが更に好ましく、一方、その上限は特に制限されず、通常、100モル%である。
【0051】
成分(B)の重量平均分子量(Mw)は800〜100,000である。成分(B)の重量平均分子量が、800以上であることにより樹脂組成物の耐ブリードアウト性が良好となり、一方、100,000以下であることにより、成分(A)と配合したときの相溶性が良好となり、電気絶縁性、難燃性等を向上させることができる。これらの観点から、成分(B)の重量平均分子量は、1,000以上であることが好ましく、2,000以上であることがより好ましく、3,000以上であることが更に好ましく、一方、75,000以下であることが好ましく、50,000以下であることがより好ましく、25,000以下であることが更に好ましい。
【0052】
成分(B)の数平均分子量(Mn)は、耐ブリードアウト性の観点から、800以上であることが好ましく、1,200以上であることがより好ましく、1,600以上であることが更に好ましく、2,000以上であることが特に好ましい。また、成分(B)の数平均分子量は、難燃性、電気絶縁性等の観点から、50,000以下であることが好ましく、30,000以下であることがより好ましく、15,000以下であることが更に好ましく、10,000以下であることが特に好ましい。
【0053】
なお、本発明において、成分(B)の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法(GPC法)による測定で求められるポリスチレン換算値であり、このGPC測定は以下の条件で実施することができる。
機器 :東ソー株式会社製HLC−8220
カラム :アジレント社製PLgel 5μm Mixed−C
(7.5mmI.D×30cmL×2)
検出器 :紫外可視吸収検出器UV−8022(UV波長:280nm)
溶媒 :10mM LiBr添加DMF(ジメチルホルムアミド)
温度 :60℃
流速 :0.6mL/分
注入量 :20μL
濃度 :0.1重量%
較正試料:単分散ポリスチレン
較正法 :ポリスチレン換算
【0054】
成分(B)の化合物の製造方法は特に制限されないが、例えば、特開2010−202718号公報に記載されているように、下記式(2)で表される化合物を原料として用い、通常、重合開始剤の存在下、有機溶媒中で重合することにより得ることができる。
【0056】
式(2)中、R
1’〜R
10’の定義及びその好ましいものは、それぞれ式(1)中のR
1〜R
10と同様である。
【0057】
この重合反応において用いることのできる重合開始剤としては、例えば、ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤等が挙げられる。ラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酢酸、過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド等の過酸化物触媒;アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等のアゾ系触媒等が挙げられる。アニオン重合開始剤としては、メチルマグネシウムハライド、n−ブチルマグネシウムハライド、t−ブチルマグネシウムハライド、ビニルマグネシウムハライド、アリルマグネシウムハライド、ベンジルマグネシウムハライド、フェニルマグネシウムハライド等のグリニャール化合物;メチルリチウム、n−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、フェニルリチウム等の有機リチウム化合物が挙げられる。以上に挙げた重合開始剤は1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
重合反応に用いることのできる有機溶媒としては、例えば、芳香族炭化水素系溶媒、環状エーテル系溶媒等が挙げられる。芳香族炭化水素系溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。環状エーテル系溶媒としては、THF(テトラヒドロフラン)、テトラヒドロピラン、ジオキサン等が挙げられる。有機溶媒は1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
重合反応において、式(2)で表される化合物にその他の炭素間二重結合を有する化合物を共重合させてもよい。共重合に用いることのできる炭素間二重結合を有する化合物としては特に制限されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類:(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;アクリロニトリル類等が挙げられる。
【0060】
重合反応の反応時間は通常、0.5〜24時間であり、好ましくは1〜20時間である。また、反応温度は通常、0〜200℃であり、好ましくは20〜150℃であり、より好ましくは40〜120℃である。重合反応は空気雰囲気、不活性ガス雰囲気(窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等)等において行うことができる。
【0061】
重合反応の終了後、必要に応じて生成物から有機溶媒を留去し、水及び希酸水溶液で洗浄してから真空乾燥等により乾燥させることにより、成分(B)の化合物を得ることができる。
【0062】
<配合量>
本発明の樹脂組成物は、成分(A)100重量部に対し、成分(B)を0.1〜100重量部含有することが好ましい。成分(B)の含有量が上記下限値以上であると、得られる樹脂組成物の難燃性の観点から好ましい。一方、成分(B)の含有量が上記下上限値以下であると、得られる樹脂組成物の引張物性、耐ブリードアウト性等の観点から好ましい。成分(B)の含有量は、成分(A)100重量部に対し、難燃性を向上させる観点から、好ましくは0.5重量部以上であり、より好ましくは2重量部以上であり、更に好ましくは5重量部以上である。一方、引張物性、耐ブリードアウト性を良好なものとする観点から、好ましくは90重量部以下であり、より好ましくは80重量部以下であり、更に好ましくは70重量部以下であり、特に好ましくは60重量部以下である。
【0063】
<その他の成分>
本発明の樹脂組成物には本発明の効果を著しく妨げない範囲で、上述の成分(A)、成分(B)以外の添加剤やその他の樹脂等の成分を必要に応じて用いてもよい。その他の成分は、1種類のみを用いても2種類以上を任意の組合せと比率で用いてもよい。
【0064】
その他の樹脂としては、成分(A)及び成分(B)以外の樹脂であれば限定されないが、具体的には、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ナイロン6,6、ナイロン11等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリメチルメタクリレート系樹脂等の(メタ)アクリル系樹脂;ポリスチレン等のスチレン系樹脂等の熱可塑性樹脂やスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー等の各種熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0065】
添加剤としては、特に限定されないが、具体的には、各種の熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、造核剤、可塑剤、衝撃改良剤、相溶化剤、消泡剤、増粘剤、架橋剤、界面活性剤、滑剤、離型剤、ブロッキング防止剤、加工助剤、帯電防止剤、難燃剤及び/又は難燃助剤(ただし、成分(B)に該当するものを除く。)、着色剤等が挙げられる。熱安定剤及び酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール類、リン化合物(ただし、成分(B)に該当するものを除く。)、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物等が挙げられる。
【0066】
本発明の樹脂組成物には、成分(B)以外の難燃剤を用いてもよい。難燃剤はハロゲン系難燃剤と非ハロゲン系難燃剤に大別されるが、特に限定されない。成分(B)以外の非ハロゲン系難燃剤としては、成分(B)以外のリン系難燃剤、窒素含有化合物(メラミン系、グアニジン系)難燃剤及び無機系化合物(水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム、硼酸塩、モリブデン化合物)難燃剤等が挙げられる。
【0067】
本発明の樹脂組成物には充填材を用いてもよい。充填材は限定されないが、具体的には、クレイ、ウィスカ、ウォラストナイト、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、シリカ、アルミナ、ホウ酸亜鉛、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、金属繊維、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、炭素繊維、ガラス繊維等の無機充填材;澱粉、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、フスマ等の天然由来のポリマーやこれらの変性品等の有機充填剤が挙げられる。充填材としてはアスペクト比が2以上の無機化合物が好適であり、具体的には、クレイ、ウィスカ、ウォラストナイト、炭素繊維、ガラス繊維等が好適である。
【0068】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物は、上述の各成分を混合することにより得ることができる。混合の方法については、原料成分が均一に分散すれば特に制限はない。即ち、上述の各原料成分等を同時に又は任意の順序で混合することにより、各成分が均一に分布した樹脂組成物を得ることができる。また、より均一に混合、分散するために上記原料成分を溶融混練することが好ましく、例えば、本発明の樹脂組成物の各原料成分等を任意の順序で混合してから加熱してもよいし、全原料成分等を順次溶融させながら混合してもよいし、目的とする成形品を製造する際の成形時に各原料を予めドライブレンドした後に溶融混練してもよい。
【0069】
混合方法や混合条件は、各原料成分等が均一に混合されれば特に制限はないが、生産性の点からは、例えばタンブラーブレンダー、Vブレンダー、リボンブレンダー、ヘンシェ
ルミキサー等を用いて原料を混合し、単軸押出機や二軸押出機のような連続混練機及びミルロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダー等のバッチ式混練機で溶融混練する方法が好ましい。これらの方法で樹脂組成物を製造する際の製造条件は限定されず、周知の条件で適宜設定することができる。溶融混練時の温度は、各原料成分の少なくとも一つが溶融状態となる温度であればよいが、通常は用いる全成分が溶融する温度が選択され、一般には150〜250℃で行うことができる。
【0070】
<成形体及び用途>
本発明の樹脂組成物を成形して成形体を得ることができる。本発明の樹脂組成物を成形する方法としては、押出成形、圧縮成形、射出成形等の方法を何れも用いることができる。成形温度は樹脂組成物が溶融する温度より高温であれば特に限定されないが、通常80〜250℃、好ましくは100〜230℃である。
【0071】
本発明の樹脂組成物の用途は特に限定するものではないが、本発明の樹脂組成物が優れた難燃性、電気絶縁性、耐ブリードアウト性、機械的特性、加工性等を有することから、電線、ケーブル等に好適に用いることができ、特にこれらの絶縁体・シースとして好適である。更には、複数の樹脂被覆電線を束ねるチューブの他、各種絶縁フィルム、絶縁パイプ、電源ボックス等に好適に使用することができる。以上に挙げたものの中でも本発明の樹脂組成物は電線に用いることが特に好ましい。なお、本発明の樹脂組成物はマスターバッチとして用いることも可能であり、任意の樹脂を混合して樹脂組成物とすることができる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例を用いて本発明の内容を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0073】
[原料]
<成分(A)>
A−1:エチレン・酢酸ビニル共重合体(三井・デュポン ポリケミカル社製 商品名:エバフレックスEV360、酢酸ビニル含有量25重量%、エチレン含有量75重量%、MFR[190℃、21.2N(JIS K7210(1990))]:2.0g/10分)
A−2:ポリプロピレン系樹脂(日本ポリプロ社製 商品名:ノバテック(登録商標)PP EC9、密度:0.90g/cm
3、MFR[230℃、21.2N(JIS K7210(1990))]:0.5g/10分、プロピレン・エチレン共重合体)
A−3:低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製 商品名:ノバテック(登録商標)LD400、密度:0.92g/cm
3、MFR[190℃、21.2N(JIS K7210(1990))]:2.5g/10分)
【0074】
<成分(B)>
B−1:9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ビニル−10−フォスファフェナントレン−10−オキシド(片山化学工業社製 商品名V5)の単独重合体(前記式(1)において、R
1〜R
10が水素原子であるもの)、重量平均分子量(Mw):8,900、数平均分子量(Mn):4,700、分子量分布(Mw/Mn):1.9)
b−1(比較例用):トリクレジルホスフェート(大八化学工業社製 商品名:TCP)
【0075】
<その他の成分>
C−1:ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASFジャパン社製 商品名:IRGANOX(登録商標)1010)
【0076】
[実施例1〜4、比較例1〜3]
表−1に示す原料配合にて全ての原料をドライブレンドし、東洋精機製作所社製ラボプラストミルにて、120℃、60rpmにて10分間溶融混練することにより、樹脂組成物を製造した。得られた樹脂組成物を、180℃の電気プレスを用いてシートに成形した。成形したシートを用いて以下に記載する方法により、難燃性、耐ブリードアウト性及び電気絶縁性の各種評価を行った。これらの結果について表−1に示す。
【0077】
[評価方法]
<難燃性(UL−94V規格燃焼試験)>
電気プレスを用いて作成されたシートから金型で打ち抜いて試験片(長さ:127mm、幅:12.7mm、厚さ:2.0mm)を作成した。試験片を垂直に保ち、下端にバーナーの火を10秒間接炎させた後にバーナーを取り除き、試験片に着火した火が消える時間を測定した。次いで火が消えると同時に2回目の接炎を10秒間行い、1回目と同様にして着火した火が消える時間を測定した。更に、落下する火種によって試験片の下に設置した綿が着火するか否かについても評価した。1回目と2回目の燃焼時間、綿着火の有無の結果から、UL−94V規格に従って燃焼性を評価した。燃焼性能はV−0、V−1、V−2の順に良好であり、V−2よりも劣るものは「×」とした。
【0078】
<耐ブリードアウト性>
電気プレスを用いて作成されたシートを恒温恒湿(温度23℃、湿度50%)条件で1週間放置し、表面にブリードアウトが発生しているかを目視にて観察した。
○:ブリードアウトなし
×:ブリードアウトあり
【0079】
<電気絶縁性>
電気プレスを用いて作成されたシートを恒温恒湿(温度23℃、湿度50%)条件で24時間放置した後、30℃の温度条件下で体積抵抗率を測定した。体積抵抗率の値が大きいものほど、電気絶縁性に優れるものと評価される。体積抵抗率の値は1×10
13Ω・cm以上であることが好ましい。
【0080】
【表1】
【0081】
[評価結果]
表−1の結果から、本発明の樹脂組成物に該当する実施例1〜4は、耐ブリードアウト性、電気絶縁性に優れ、かつUL94V燃焼試験においてV−2の難燃性を有することが確認された。一方、成分(B)を配合していない比較例1では実施例1〜4よりも難燃性に劣ることがわかる。
【0082】
実施例1、2のそれぞれに対し、「B−1」の代わりに「b−1」を使用した比較例2、3では実施例1〜4と同程度の難燃性を有する一方で、比較例1と比較して体積抵抗率
の値が大きく低下した。また、「A−1」100重量部に対して「b−1」を20重量部配合した比較例3では難燃剤のブリードアウトが確認された。