(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下記(a1)〜(a4)の要件を満たすプロピレン−エチレン系樹脂組成物(A)と高密度ポリエチレン(B)との含有割合(重量比)(A)/(B)が95/5〜75/25の範囲であり、プロピレン単独重合体又はプロピレン系ランダム共重合体を含有せず、架橋助剤及びラジカル発生剤を配合しないことを特徴とする無延伸艶消しフィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物。
・プロピレン−エチレン系樹脂組成物(A)
プロピレン−エチレン系樹脂組成物(A)は、プロピレン系重合体成分(A1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)とからなるプロピレン−エチレンブロック共重合体である組成物であること。
(a1)プロピレン系重合体成分(A1)は、エチレン含有量が0〜2重量%のプロピレン単独重合体またはプロピレン−エチレンランダム共重合体であること。
(a2)プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)は、エチレン含有量が35〜55重量%であること。
(a3)プロピレン−エチレン系樹脂組成物(A)のメルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重)(以下、MFR(A)と略称することがある。)が0.5〜20.0g/10minであること。
(a4)プロピレン系重合体成分(A1)のMFR(230℃、2.16kg荷重)(以下、MFR(A1)と略称することがある。)と、プロピレン−エチレン系樹脂組成物(A)のMFR(A)との比が、
MFR(A1)/MFR(A)=2.0〜4.5
の関係を満たすこと。
・高密度ポリエチレン(B)
高密度ポリエチレン(B)は、メルトフローレート(MFR)(190℃、2.16kg荷重)が0.05〜1.0g/10minであること。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、艶消しの意匠性を有する包装フィルムに使用される樹脂組成物であって、前記(a1)〜(a4)の要件を満たすプロピレン−エチレン系樹脂組成物(A)と特定の高密度ポリエチレン(B)とを含有することを特徴とする。
以下、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を構成する各成分について、詳細に説明する。
【0013】
1.プロピレン−エチレン系樹脂組成物(A)
本発明の無延伸艶消しフィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物に用いるプロピレン−エチレン系樹脂組成物(A)は、エチレン含有量[E(A1)]が0〜2重量%のプロピレン単独重合体またはプロピレン−エチレンランダム共重合体であるプロピレン系重合体成分(A1)と、エチレン含有量[E(A2)]が30〜60重量%であるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)からなる組成物である。
【0014】
(1)プロピレン系重合体成分(A1)のエチレン含有量
プロピレン系重合体成分(A1)のエチレン含有量[E(A1)]は、0〜2重量%であることが必要である。
プロピレン系重合体成分(A1)のエチレン含有量[E(A1)]が2重量%以下であれば、フィルムの剛性や耐熱性を損なうことなく十分な結晶性を確保できる。
【0015】
また、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)は、プロピレン−エチレン系樹脂組成物(A)の低光沢性と耐衝撃性に寄与する成分である。この成分は、例えば、後述する本発明の好ましい実施態様である多段重合法の第2段階以降で、主にプロピレン−エチレンランダム共重合体として重合される。
ここで、本発明の趣旨を外れない限り、更に少量の他のα−オレフィン、例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどと共重合させてもよい。
【0016】
(2)成分(A1)と成分(A2)の比率
プロピレン−エチレン系樹脂組成物(A)中のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)の比率は、5〜40重量%が好ましく、さらに10〜35重量%が好ましい。言い換えると、プロピレン系重合体成分(A1)の比率は、60〜95重量%が好ましく、さらに65〜90重量%が好ましい。
成分(A2)の比率が40重量%以下の場合には、耐熱性の向上や、食品衛生性に悪影響を及ぼすことが危惧される低結晶成分量を抑制し易くなり、また、成分(A2)の比率が5重量%以上の場合には、低光沢性と耐衝撃性に寄与する成分(A2)の量が十分となり、低光沢性や耐衝撃性が向上する。
【0017】
(3)プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)のエチレン含有量
プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)は、エチレン含有量[E(A2)]が30〜60重量%であることが必要であり、35〜55重量%であることがより好ましい。
プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)のエチレン含有量[E(A2)]が60重量%以下の場合には、共重合体成分(A2)のプロピレン系重合体成分(A1)に対する相溶性が確保され、フィルムに衝撃が加わった際のクラッキングの伝播を抑制できる。
また、[E(A2)]が30重量%以上の場合には、十分な低光沢性が得られる。
【0018】
(4)プロピレン−エチレン系樹脂組成物(A)のMFR
プロピレン−エチレン系樹脂組成物(A)の230℃、2.16kg荷重でのMFR[MFR(A)]は、0.5〜20.0g/10minであることが必要であり、さらには1.0〜10.0g/10minであることが好ましい。MFR(A)が0.5g/10min以上であれば、フィルム状に加工する場合において、十分な押出成形性が得られる。また、MFR(A)が20.0g/10min以下の場合には、シーラントフィルムとして用いた場合に十分なシール強度を有したフィルムとなる。
なお、メルトフローレート[MFR(A)]は、JIS K7210に準拠し、230℃、荷重2.16kgにて測定される。
【0019】
(5)プロピレン系重合体成分(A1)とプロピレン−エチレン系樹脂組成物(A)とのMFR比
プロピレン系重合体成分(A1)のMFR(MFR(A1))とプロピレン−エチレン系樹脂組成物(A)のMFR(MFR(A))の比は、
MFR(A1)/MFR(A)=2.0〜4.5
の関係を満たすことが必要である。
この比が2.0以上であれば、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)がフィルム中で塊形状を形成することにより、艶消し効果が期待できる。また、この比が4.5以下であれば、フィルムにした際にフィッシュアイと呼ばれる外観欠点の発生を抑制することができる。
【0020】
[プロピレン−エチレン系樹脂組成物の製造方法]
本発明に用いるプロピレン−エチレン系樹脂組成物(A)とそれを構成するプロピレン系重合体成分(A1)及びプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)は、上記の物性を有すれば、どのような製造方法によってもよいが、以下の原料、重合方法によって好ましく製造することが出来る。またプロピレン系重合体成分(A1)及びプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)の混合についても、上記の物性を有すればどのような方法で混合してもよい。本発明に用いるプロピレン−エチレン系樹脂組成物(A)の好ましい実施態様である多段重合法により得られるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)の製造方法について、以下に説明する。
・使用原料
本発明に用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)を製造するに際し使用される触媒としては、マグネシウム、ハロゲン、チタン、電子供与体を触媒成分とするマグネシウム担持型触媒、三塩化チタンを触媒とする固体触媒成分と有機アルミニウムからなる触媒、又はメタロセン触媒が使用できる。具体的な触媒の製造法は特に限定されるものではないが、一例として特開2007−254671号公報に開示されたチーグラー触媒を例示することが出来る。
また、重合される原料オレフィンは、プロピレン、エチレンであり、必要により、本発明の目的を損なわない程度の他のオレフィン、例えば、ブテン−1、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−ペンテン−1などを使用することもできる。
【0021】
・重合工程
前記触媒の存在下に行う重合工程は、プロピレン系重合体を製造する重合工程(i)、プロピレンにエチレンを、エチレン含有量が30〜60重量%の割合で重合させる重合工程(ii)の2段階からなる。
【0022】
重合工程(i);
重合工程(i)は、プロピレン単独かプロピレン/エチレンの混合物を、前記触媒を加えた重合系に供給してプロピレン単独重合体またはエチレン含有量が2重量%以下であるプロピレン−エチレンランダム共重合体を製造して、全重合体量の、好ましくは60〜95重量%に相当する量となるようにプロピレン系重合体(A1)を形成させる工程である。
プロピレン系重合体成分(A1)のMFR(A1)は水素を連鎖移動剤として用いる事により調整する事が出来る。具体的には、連鎖移動剤である水素の濃度を高くするとプロピレン系重合体成分(A1)のMFR(A1)が高くなる。逆も又同様である。重合槽における水素の濃度を高くするには、重合槽への水素の供給量を高くすればよく、当業者にとって調整は極めて容易である。また、プロピレン系重合体(A1)がプロピレン−エチレンランダム共重合体である場合には、エチレン含有量を制御する手段として、重合槽に供給するエチレンの量を制御する方法を用いるのが簡便である。具体的には、重合槽に供給するエチレンのプロピレンに対する量比(エチレン供給量÷プロピレン供給量)を高くすれば、得られるプロピレン系重合体成分(A1)のエチレン含有量は高くなる。逆も同様である。重合槽に供給するプロピレンとエチレンの量比と得られるプロピレン系重合体成分(A1)のエチレン含有量との関係は使用する触媒の種類によって異なるが、適宜供給量比を調整することによって目的のエチレン含有量を有するプロピレン系重合体成分(A1)を得る事は当業者にとって極めて容易なことである。
【0023】
重合工程(ii);
重合工程(ii)は、重合工程(i)に引き続いてプロピレン/エチレン混合物をさらに導入して、エチレン含有量を30〜60重量%のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)を得る工程である。この工程では、全重合体量の、好ましくは5〜40重量%に相当する重合体を形成させる。
プロピレン−エチレンランダム共重合体(A2)のMFR(A2)は水素を連鎖移動剤として用いる事により調整する事が出来る。具体的な制御方法は、プロピレン系重合体(A1)のMFRの制御方法と同じである。プロピレン−エチレンランダム共重合体(A2)のエチレン含有量を制御する手段として、重合槽に供給するエチレンの量を制御する方法を用いるのが簡便である。具体的な制御方法は、プロピレン系重合体(A1)がプロピレン−エチレンランダム共重合体である場合と同じである。
【0024】
次に、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)のインデックスの制御方法について説明する。本発明に用いるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)はプロピレン系重合体成分(A1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)とからなるものである。従って、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)のインデックスを制御する上で考慮すべき項目は、エチレン含有量E(A)、MFR(A)、プロピレン系重合体成分(A1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)の重量比の3つである。
まず、プロピレン系重合体成分(A1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)の重量比の制御方法から説明する。プロピレン系重合体成分(A1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)の重量比はプロピレン系重合体成分(A1)を製造する重合工程(i)における製造量とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)を製造する重合工程(ii)における製造量によって制御する。例えば、プロピレン系重合体成分(A1)の量を増やしてプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)の量を減らすためには、重合工程(i)の製造量を維持したまま重合工程(ii)の製造量を減らせばよく、それは、重合工程(ii)の滞留時間を短くしたり、重合温度を下げたりすればよい。また、エタノールや酸素などの重合抑制剤を添加したり、元々添加している場合にはその添加量を増やしたりする事でも制御することができる。その逆も又同様である。
通常、プロピレン系重合体成分(A1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)の重量比は、プロピレン系重合体成分(A1)を製造する重合工程(i)における製造量とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)を製造する重合工程(ii)における製造量で定義する。式を以下に示す。
成分(A1)の重量:成分(A1)の重量=W(A1):W(A2)
W(A1)=重合工程(i)の製造量÷(重合工程(i)の製造量+重合工程(ii)の製造量)
W(A2)=重合工程(ii)の製造量÷(重合工程(i)の製造量+重合工程(ii)の製造量)
W(A1)+W(A2)=1
(ここで、W(A1)、W(A2)はそれぞれプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)におけるプロピレン系重合体成分(A1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)の重量比率である。)
工業的な製造設備では、各重合槽のヒートバランスやマテリアルバランスから製造量を求めるのが通常である。また、プロピレン系重合体成分(A1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)の結晶性が充分異なる場合には、TREF(温度昇温溶離分別法)などの分析手法を用いて両者を分離同定し量比を求める事でもよい。ポリプロピレンの結晶性分布をTREF測定により評価する手法は当業者によく知られたものであり、G.Glokner,J.Appl.Polym.Sci:Appl.Poly.Symp.;45,1−24(1990)、L.Wild,Adv.Polym.Sci.;98,1−47(1990)、J.B.P.Soares,A.E.Hamielec,Polyer;36,8,1639−1654(1995)などの文献に詳細な測定法が示されている。
次に、エチレン含有量E(A)の制御方法について説明する。プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)はプロピレン系重合体成分(A1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)の混合物であるから、それぞれのエチレン含有量の間には以下の関係式が成立する。
E(A)=E(A1)×W(A1)+E(A2)×W(A2)
(ここで、E(A)、E(A1)、E(A2)はそれぞれ、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)、プロピレン系重合体成分(A1)、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)のエチレン含有量である。)
この式はエチレン含有量に関するマテリアルバランスを示すものである。
従って、プロピレン系重合体成分(A1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)の重量比が決まれば、すなわち、W(A1)とW(A2)が決まれば、E(A)はE(A1)とE(A2)によって一意的に定まる。つまり、プロピレン系重合体成分(A1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)の重量比、E(A1)、E(A2)の3つの因子を制御する事によりE(A)を制御する事が出来る。例えば、E(A)を高くする為にはE(A1)を高くしてもよいし、E(A2)を高くしてもよい。また、E(A2)がE(A1)よりも高い事に留意すれば、W(A1)を小さくしてW(A2)を大きくしてもよい事も容易に理解できよう。逆方向の制御方法も同様である。
なお、実際に測定値を直接得られるのはE(A)とE(A1)であり、両者の測定値を使ってE(A2)を計算する事になる。従って、仮にE(A)を高くする操作を行う際に、E(A2)を高くする操作、すなわち、重合工程(ii)に供給するエチレンの量を増やす操作を手段として選ぶ場合、測定値として直接確認できるのはE(A)であってE(A2)ではないが、E(A)が高くなる原因はE(A2)が高くなる事にあるのは自明である。
最後に、MFR(A)の制御方法について説明する。本願においては、MFR(A2)を以下の式で定義することにする(当然ながら、MFR(B2)についても同様に定義する。)
MFR(A2)=exp{(loge[MFR(A)]−W(A1)×loge[MFR(A1)])÷W(A2)}
(ここで、logeはeを底とする対数である。MFR(A)、MFR(A1)、MFR(A2)はそれぞれ、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)、プロピレン系重合体成分(A1)、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)のMFRである。)
この式は一般に粘度の対数加成則と呼ばれる経験式
loge[MFR(A)]=W(A1)×loge[MFR(A1)]+W(A2)×loge[MFR(A2)]
を変形したものであり、当業界で日常的に使われるものである。
この式で定義する為に、プロピレン系重合体成分(A1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)の重量比、MFR(A)、MFR(A1)、MFR(A2)は独立ではない。故に、MFR(A)を制御するには、プロピレン系重合体成分(A1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)の重量比、MFR(A1)、MFR(A2)の3つの因子を制御すればよい。例えば、MFR(A)を高くする為にはMFR(A1)を高くしてもよいし、MFR(A2)を高くしてもよい。また、MFR(A2)がMFR(A1)より低い場合には、W(A1)を大きくしてW(A2)を小さくしてもMFR(A)を高くする事ができる事も容易に理解できよう。逆方向の制御方法も同様である。
なお、実際に測定値を直接得られるのはMFR(A)とMFR(A1)であり、両者の測定値を使ってMFR(A2)を計算する事になる。従って、仮にMFR(A)を高くする操作を行う際に、MFR(A2)を高くする操作、すなわち、重合工程(ii)に供給する水素の量を増やす操作を手段として選ぶ場合、測定値として直接確認できるのはMFR(A)であってMFR(A2)ではないが、MFR(A)が高くなる原因はMFR(A2)が高くなる事にあるのは自明である。
【0025】
プロピレン−エチレンブロック共重合体の重合プロセスは、回分式、連続式のいずれの方法によっても実施可能である。この際に、ヘキサン、ヘプタンなどの不活性炭化水素溶媒中で重合を行う方法、不活性溶媒を実質的に用いずプロピレンを溶媒として使用する方法、実質的に液体溶媒を用いずにガス状の単量体中で重合を行う方法、さらに、これらを組み合わせた方法を採用することが出来る。また、重合工程(i)と重合工程(ii)は同一の重合槽を用いても、別個の重合槽を用いてもよい。
【0026】
2.高密度ポリエチレン(B)
本発明の無延伸艶消しフィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物に用いる高密度ポリエチレン(B)は、MFR(190℃、2.16kg荷重)が0.05〜1.0g/10minであることが必要であり、更には0.1〜0.8g/10minであることが好ましい。高密度ポリエチレン(B)のMFRが1.0g/min以下であれば、プロピレン−エチレン系樹脂組成物(A)と配合した際に、優れた艶消し効果を付与することができる。また、高密度ポリエチレン(B)のMFRが0.05g/10min以上であれば、プロピレン−エチレン系樹脂組成物(A)との溶融時の粘度差に起因する、フィルム状態でのフィッシュアイと呼ばれる外観欠点の発生を抑制することができる。高密度ポリエチレン(B)は、エチレンの単独重合体又はエチレンと少量のα−オレフィンの共重合体であり、これらの1種又は2種以上のブレンド物を用いることもできる。α−オレフィンとしては、炭素数3〜20のα−オレフィン、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等を挙げることができる。
【0027】
更に、前述の高密度ポリエチレン(B)の密度は、0.935〜0.970g/cm
3の範囲であることが好ましいが、得られる積層フィルムの艶消し効果や機械的な強度さらにはフィルムの均一性等の観点から、より好ましくは0.940〜0.965g/cm
3の範囲である。密度は、主としてエチレンと共重合する炭素数3〜20のα−オレフィンの量比等で調整できる。ここで、密度は、JIS K7112:1999によるD法(密度こうばい管)で測定する値である。
【0028】
3.プロピレン−エチレン系樹脂組成物(A)と高密度ポリエチレン(B)との配合割合
本発明の無延伸艶消しフィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン−エチレン系樹脂組成物(A)と高密度ポリエチレン(B)との重量比における配合割合(A)/(B)が、95/5〜75/25の範囲にあることが必要であり、更には90/10〜80/20の範囲にあることがより好ましい。
高密度ポリエチレン(B)の配合割合を5重量%以上とすることで、得られるフィルムにおいて優れた艶消し効果が発現する。また、高密度ポリエチレン(B)の配合割合を25重量%以下とすることで、成形不良を招くことなく安定した押出フィルムを得ることができる。
【0029】
[その他成分]
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物には、さらに耐寒衝撃性を向上させる目的でエチレン−α−オレフィン共重合体をプロピレン−エチレン系樹脂組成物(A)と高密度ポリエチレン(B)との合計100重量部に対して5〜30重量部添加することができる。
エチレン−α−オレフィン共重合体の密度は、0.880〜0.910g/cm
3であることが好ましく、より好ましくは0.885〜0.907g/cm
3の範囲である。密度が0.910g/cm
3以下であることで、耐衝撃性の向上効果が期待できる。
ここで、密度は、JIS K7112に準拠して測定する値である。
【0030】
また、エチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレートは、0.5〜10g/10minの範囲内にあることが好ましい。エチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレートが0.5g/10min以上であると、フィルム成形時の押出特性が良好となりやすく、フィルムの生産性に好影響を及ぼす可能性が高くなるため好ましい。
また、メルトフローレートが10g/10min以下であると、ベタツキやブリードアウトを招きにくくなり、また、耐衝撃性の向上につながるために好ましい。
ここでのMFRは、JIS K7210に準拠し、加熱温度190℃、荷重2.16kgで測定する値である。
【0031】
エチレン−α−オレフィン共重合体のポリプロピレン系樹脂組成物中の含有量は、プロピレン−エチレン系樹脂組成物(A)と高密度ポリエチレン(B)との合計100重量部に対して、3〜20重量部の範囲とすることが好ましい。含有量を20重量部以下に抑えることにより、本発明に用いるプロピレン−エチレン系樹脂組成物が元来有している剛性、ベタツキ防止性及び成形性を損なうことなく、低光沢艶消しフィルムを得ることが可能である。3重量部以上では、耐寒衝撃性の向上が見込め添加の効果が期待できるため、3〜20重量部の範囲で用いるのがより好ましい。
【0032】
エチレン−α−オレフィン共重合体におけるコモノマーとしては、好ましくは炭素数3〜10のα−オレフィン、炭素数4〜10のアルカジエンからなる群のうち少なくとも一種類であり、コモノマーの含有量は10重量%以上であることが望ましい。コモノマー含有量が10重量%以上であると、柔軟性が向上するため耐衝撃性が良好となり併用効果が増加する。
【0033】
コモノマーとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましい。
エチレン−α−オレフィン共重合体の好ましい代表例としては、エチレン−プロピレン共重合体エラストマー(EPR)、エチレン−ブテン共重合体エラストマー(EBR)、エチレン−ヘキセン共重合体エラストマー(EHR)、エチレン−オクテン共重合体エラストマー(EOR)、エチレン−プロピレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−イソプレン共重合体等が挙げられる。
【0034】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物においては、本発明の効果を損なわない範囲内で、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に用いる各種成分とは組成の異なるプロピレン−エチレンブロック共重合体やプロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体、またはスチレン系エラストマーなどを、適宜添加してもよい。
本発明の効果を損なわない範囲内で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、中和剤、造核剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、臭気吸着剤、抗菌剤、顔料、無機質及び有機質の充填剤並びに種々の合成樹脂などの公知の添加剤を必要に応じて随時添加することができる。
【0035】
[フィルム成形]
本発明の無延伸艶消しフィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物は、低光沢性、耐熱性、食品衛生性、耐衝撃性に優れ、主として未延伸フィルムとして用いると、その効果が充分に発揮される。
該フィルムは、溶融押出製膜して得ることができ、一般に工業的に行われているキャスト法、インフレーション法などで製造できる。
また、本発明のフィルムは、上記樹脂組成物を用いた単層フィルムとしても積層フィルムとしても用いることができる。積層フィルムの場合には、本発明の樹脂組成物よりなる層が全フィルム厚みの50%以上とすることが好ましい。フィルム厚みは5〜200μmが好ましく、10〜100μmが更に好ましい。
フィルムの表面には、表面の濡れ適性向上のためにコロナ放電処理、火炎処理、オゾン処理などを行うことも可能である。
【0036】
本発明の樹脂組成物からフィルムを製造するにあたって、プロピレン−エチレン系樹脂組成物(A)、高密度ポリエチレン(B)および必要に応じてその他成分の樹脂などを予め混合し、押出機などでペレット化したものをフィルム成形機に供給してフィルムとしてもよく、また、フィルム製造時にプロピレン−エチレン系樹脂組成物(A)、高密度ポリエチレン(B)および必要に応じてその他成分の樹脂ペレットをフィルム成形機に供給してフィルムとしてもよい。
【実施例】
【0037】
以下、実施例および比較例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により限定して解釈されるものではない。
なお、本発明の詳細な説明および実施例中の各項目の物性測定や分析値などは、下記の方法に従ったものである。
【0038】
(1)共重合体中のエチレン含有量の測定
プロピレン−エチレン系樹脂組成物(A)として多段重合法により得られるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)を用い、この共重合体中の各エチレン含有量を測定した。すなわち、第1重合工程終了時に得られたプロピレン系重合体(A1)および、第2重合工程を経て得られたプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)における各々のエチレン含有量は、プロトン完全デカップリング法により以下の条件に従って測定した
13C−NMRスペクトルを解析することにより求めた。
機種: 日本電子(株)製 GSX−400又は同等の装置(炭素核共鳴周波数100MHz以上)
溶媒: o−ジクロロベンゼン+重ベンゼン(4:1(体積比))
濃度: 100mg/mL
温度: 130℃
パルス角: 90°
パルス間隔: 15秒
積算回数: 5,000回以上
スペクトルの帰属は、例えば、Macromolecules 17,1950 (1984)などを参考に行えばよい。上記条件により測定されたスペクトルの帰属は下表の通りである。表中S
αα等の記号はCarmanら(Macromolecules 10, 536 (1977))の表記法に従い、Pはメチル炭素、Sはメチレン炭素、Tはメチン炭素をそれぞれ表わす。
【0039】
【表1】
【0040】
以下、「P」を共重合体連鎖中のプロピレン単位、「E」をエチレン単位とすると、連鎖中にはPPP、PPE、EPE、PEP、PEE、およびEEEの6種類のトリアッドが存在し得る。Macromolecules 15,1150 (1982)などに記されているように、これらトリアッドの濃度と、スペクトルのピーク強度とは、以下の(1)〜(6)の関係式で結び付けられる。
[PPP]=k×I(T
ββ) (1)
[PPE]=k×I(T
βδ) (2)
[EPE]=k×I(T
δδ) (3)
[PEP]=k×I(S
ββ) (4)
[PEE]=k×I(S
βδ) (5)
[EEE]=k×{I(S
δδ)/2+I(S
γδ)/4} (6)
ここで[ ]はトリアッドの分率を示し、例えば[PPP]は全トリアッド中のPPPトリアッドの分率である。したがって、
[PPP]+[PPE]+[EPE]+[PEP]+[PEE]+[EEE]=1 (7)
である。また、kは定数であり、Iはスペクトル強度を示し、例えば、I(T
ββ)はT
ββに帰属される28.7ppmのピークの強度を意味する。上記(1)〜(7)の関係式を用いることにより、各トリアッドの分率が求まり、さらに下式によりエチレン含有量が求まる。
エチレン含有量(モル%)=([PEP]+[PEE]+[EEE])×100
【0041】
なお、エチレン含有量のモル%から重量%への換算は以下の式を用いて行う。
エチレン含有量(重量%)=(28×X/100)/{28×X/100+42×(1−X/100)}×100 ここで、Xはモル%表示でのエチレン含有量である。
【0042】
(2)MFR
JIS K7210A法・条件Mに従い、以下の条件で測定した。単位はg/10minである。
試験温度:230℃ 公称荷重:2.16kg
ダイ形状:直径2.095mm、長さ8.000mm
【0043】
(3)フィルムのヘイズ
フィルムを23℃、50%RHの雰囲気下にて24時間以上調整した後、ASTM D−1003に準拠してヘイズ(HAZE)を測定した。
得られた値が大きいほど、不透明で白濁したフィルムとなる。
【0044】
(4)フィルムの光沢(グロス)
フィルムを23℃、50%RHの雰囲気下にて24時間以上調整した後、JIS Z8741に準拠して、フィルム成形時におけるダイ直後の冷却ロールとの接触面について、光源入射角60°でのグロス(GLOSS)を測定した。
得られた値が小さいほど、低光沢で艶の無いフィルムとなる。
【0045】
(5)フィルムの剛性
下記の条件にて、フィルムの引張弾性率を測定し、得られた値を剛性の尺度とした。引張弾性率の計算方法は、JIS K7127に準拠した。なお、サンプル長辺がMD(ポリプロピレン系樹脂組成物の押出成形時の流れ方向)となるようサンプリングを行った。
サンプル長さ:150mm サンプル幅:15mm
チャック間距離:100mm クロスヘッド速度:1mm/min
【0046】
(6)フィルムの耐熱性
得られたフィルムから、MD150mm、TD(MDの流れ方向に対して垂直方向)15mmとなるように試験片を採取し、長辺の両端15mmが互いに重なりあうよう金属製のゼムクリップで固定し、直径約38mmの輪状フィルムとした。この輪状フィルムを、140℃の恒温槽内に、ゼムクリップが下となる様に静置した。30分の後に輪状フィルムを恒温槽から取り出し、下記基準にて耐熱評価を行った。
○:高さ(楕円状態での単半径)が10mm以上
△:高さが10mm以下だが、輪状を保持している
×:フィルムが変形し、輪状が保持できずに潰れてしまっている
【0047】
(7)フィルムのフィッシュアイ
MD300mm、TD200mmの大きさのフィルムを用い、長辺0.2mm以上のポリマーゲルを核とする外観欠点をフィッシュアイとして目視にてカウントした。その総数を1平方メートル単位面積当たりに換算し、フィッシュアイ個数とした。
【0048】
(8)フィルムの耐衝撃性
雰囲気温度23℃において、JIS P8134に準拠した装置を用い、固定したフィルム試験片を25.4mmの半球型の金属製貫通部で打撃させ、貫通破壊に要した仕事量(J)を測定した。
【0049】
[プロピレン−エチレン系樹脂組成物(A)]
プロピレン−エチレン系樹脂組成物(A)としては、多段重合法により得られるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)、すなわち下記の製造例A−1〜A−8で得られた各プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)(それぞれ、A−1〜A−8と略称する。)を用いた。
[製造例A−1]
触媒組成の分析
Ti含有量:試料を精確に秤量し、加水分解した上で比色法を用いて測定した。予備重合後の試料については、予備重合ポリマーを除いた重量を用いて含有量を計算した。
ケイ素化合物含有量:試料を精確に秤量し、メタノールで分解した。ガスクロマトグラフィーを用いて標準サンプルと比較する事により、得られたメタノール溶液中のケイ素化合物濃度を求めた。メタノール中のケイ素化合物濃度と試料の重量から、試料に含まれるケイ素化合物の含有量を計算した。予備重合後の試料については、予備重合ポリマーを除いた重量を用いて含有量を計算した。
【0050】
予備重合触媒の調製
(1)固体触媒の調製
撹拌装置を備えた容量10Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、精製したトルエン2Lを導入した。ここに、室温で、Mg(OEt)
2を200g投入し、TiCl
4を1Lゆっくりと添加した。温度を90℃に上げて、フタル酸ジ−n−ブチルを50ml導入した。その後、温度を110℃に上げて3hr反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。次いで、精製したトルエンを導入して全体の液量を2Lに調整した。室温でTiCl
4を1L添加し、温度を110℃に上げて2hr反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。次いで、精製したトルエンを導入して全体の液量を2Lに調整した。室温でTiCl
4を1L添加し、温度を110℃に上げて2hr反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。更に、精製したn−ヘプタンを用いて、トルエンをn−ヘプタンで置換し、固体成分のスラリーを得た。このスラリーの一部をサンプリングして乾燥した。分析したところ、固体成分のTi含有量は2.7wt%であった。
次に、撹拌装置を備えた容量20Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、上記固体成分のスラリーを固体成分として100g導入した。精製したn−ヘプタンを導入して、固体成分の濃度が25g/Lとなる様に調整した。SiCl
4を50ml加え、90℃で1hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。
その後、精製したn−ヘプタンを導入して液レベルを4Lに調整した。ここに、ジメチルジビニルシランを30ml、i−Pr
2Si(OMe)
2を30ml、Et
3Alのn−ヘプタン希釈液をEt
3Alとして80g添加し、40℃で2hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄し、固体触媒を得た。得られた固体触媒のスラリーの一部をサンプリングして乾燥し、分析を行った。固体触媒にはTiが1.2wt%、i−Pr
2Si(OMe)
2が8.9wt%含まれていた。
【0051】
(2)予備重合
上記で得られた固体触媒を用いて、以下の手順により予備重合を行った。上記のスラリーに精製したn−ヘプタンを導入して、固体触媒の濃度が20g/Lとなる様に調整した。スラリーを10℃に冷却した後、Et
3Alのn−ヘプタン希釈液をEt
3Alとして10g添加し、280gのプロピレンを4hrかけて供給した。プロピレンの供給が終わった後、更に30min反応を継続した。次いで、気相部を窒素で充分に置換し、反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。得られたスラリーをオートクレーブから抜き出し、真空乾燥を行って予備重合触媒を得た。この予備重合触媒は、固体触媒1gあたり2.5gのポリプロピレンを含んでいた。分析したところ、この予備重合触媒のポリプロピレンを除いた部分には、Tiが1.0wt%、i−Pr
2Si(OMe)
2が8.3wt%含まれていた。
この予備重合触媒を用いて、以下の手順に従ってプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)の製造を行った。
【0052】
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)の製造
内容積2m
3の流動床型重合槽が2個直列に繋がった2槽連続重合設備を用いてプロピレン−エチレンブロック共重合体の製造を行った。使用するプロピレン、エチレン、水素、窒素は一般的な精製触媒を用いて精製したものを使用した。第1重合槽におけるプロピレン系重合体成分(A1)の製造量、及び、第2重合槽におけるプロピレン−エチレンランダム重合体成分(A2)の製造量は重合槽の温度制御に使用する熱交換器の冷却水温度の値から求めた。
重合工程(i):プロピレン系重合体成分(A1)の製造
第1重合槽を用いてプロピレンの単独重合を行った。重合温度は65℃、全圧は3.0MPaG(ゲージ圧、以下同様)、パウダーホールド量は40kgとした。重合槽に連続的にプロピレン、水素、及び、窒素を供給し、プロピレン及び水素の濃度がそれぞれ70.83mol%、0.64mol%となる様に調整した。助触媒として、Et
3Alを5.0g/hの速度で連続的に供給した。第1重合槽におけるプロピレン系重合体成分(A1)の製造量が20.0kg/hとなる様に、上記で得られた予備重合触媒を重合槽に連続的に供給した。生成したプロピレン系重合体成分(A1)は連続的に抜き出しを行い、パウダーホールド量が40kgで一定となる様に調整した。第1重合槽から抜き出したプロピレン系重合体成分(A1)は第2重合槽に連続的に供給し、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)の製造を引き続いて行った。
第1重合槽で生成したプロピレン系重合体成分(A1)の一部を抜き出して分析した所、MFR(A1)は6.0g/10minであった。
重合工程(ii):プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)の製造
第2重合槽を用いてプロピレンとエチレンのランダム共重合を行った。重合温度は65℃、全圧は2.0MPaG、パウダーホールド量は40kgとした。重合槽に連続的にプロピレン、エチレン、水素、及び、窒素を供給し、プロピレン、エチレン、及び、水素の濃度がそれぞれ45.72mol%、25.71mol%、0.43mol%となる様に調整した。重合抑制剤であるエタノールを連続的に供給する事によって、第2重合槽におけるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)の製造量が5.0kg/hとなる様に調整した。こうして生成したプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)は連続的に抜き出しを行い、パウダーホールド量が40kgで一定となる様に調整を行った。第2重合槽から抜き出したプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)は、更に乾燥機に移送し、充分に乾燥を行った。
生成したプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)の一部を分析した所、MFR(A)は2.50g/10min、エチレン含有量E(A)は10.4wt%であった。MFR(A1)とMFR(A)との比は、MFR(A1)/MFR(A)=2.40であった。重合工程(i)の製造量と重合工程(ii)の製造量から、プロピレン系重合体成分(A1)の重量比率W(A1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)の重量比率W(A2)を求めた所、それぞれ、0.80、0.20であった。
こうして得られたW(A1)、W(A2)、E(A)、MFR(A1)、MFR(A)から、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)のエチレン含有量E(A2)及びMFR(A2)を計算した。計算には以下の式を使用した。
E(A2)={E(A)−E(A1)×W(A1)}÷W(A2)
MFR(A2)=exp{(loge[MFR(A)]−W(A1)×loge[MFR(A1)])÷W(A2)}
(ここで、プロピレン系重合体成分(A1)はプロピレン単独重合体なのでE(A1)は0wt%である。また上記の2式は前述のE(A)、MFR(A)について記載したものをE(A2)、MFR(A2)についてそれぞれ整理しなおしたものである。)
エチレン含有量E(A2)は52.0wt%、MFR(A2)は0.075g/10minであった。
【0053】
[製造例A−2〜A−8]
表2に記載の条件を用いた他は製造例A−1と同様にして、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)の製造を行った。なお、A−2、およびA−7については、第1重合槽にエチレンも連続的に供給する事により、プロピレンとエチレンのランダム共重合を行っている。
【0054】
【表2】
【0055】
[実施例1〜6]、[比較例1〜8]
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)100重量部に対し、テトラキス[メチレン−3−(3´,5´−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン0.05重量部、トリス(2,4−ジ−t―ブチルフェニル)ホスファイト0.10重量部、ステアリン酸カルシウム0.05重量部をタンブラーにてそれぞれ混合し均一化し、得られた混合物を35mm径の二軸押出機により230℃で溶融混練し、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)をペレット化した。
得られたプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)ペレットに対して、高密度ポリエチレン(B)ペレットを表3に示した割合で、ハンドブレンドにてホッパーへ投入し、以下の条件に従ってTダイ成形機にて無延伸フィルムを得た。得られたフィルムについての物性を、前記測定法に準拠し測定した。表3にその評価結果を掲載する。
【0056】
なお、高密度ポリエチレン(B)としては、以下を用いた。MFR(B)はJIS K7210A法・条件Dに従い、以下の条件で測定した値である。単位はg/10minである。
試験温度:190℃ 公称荷重:2.16kg
ダイ形状:直径2.095mm、長さ8.000mm
[高密度ポリエチレン(B)]
B−1: 日本ポリエチレン社製 HY530
MFR(B) 0.55g/10min
密度 0.959g/cm
3
B−2: 日本ポリエチレン社製 HY430
MFR(B)=0.8g/10min
密度 0.956g/cm
3
B−3: 日本ポリエチレン社製 HF560
MFR(B)=7.0g/10min
密度 0.963g/cm
3
【0057】
(混練条件)
混練機:東芝機械社製35mm径同方向二軸混練機 混練温度:230℃
スクリュー回転数:250rpm フィーダー回転数:50rpm
(フィルム成形)
Tダイ成形機:プラコー社製35mm径単軸成形機 押出温度:240℃
ダイス幅:330mm リップ開度:0.8mm
冷却ロール温度:35℃ 引取速度:19.0〜21.0m/分
フィルム厚さ:30μm前後
【0058】
【表3】
【0059】
[実施例と比較例の結果の考察]
表3における実施例1〜6から明らかなように、本発明によるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)および高密度ポリエチレン(B)を含有する組成物からのフィルムは、耐熱性や耐衝撃性に優れると共に、外観欠点であるフィッシュアイが抑制されると共に、低光沢で白濁した艶消し効果の高いポリプロピレン系フィルムを得ることができる(実施例1〜6)。
一方で、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)のみからなるフィルムは、艶消し効果に劣る(比較例1)。ただし、プロピレン−エチレンブロック共重合体の割合が小さいすなわち高密度ポリエチレン(B)の割合が大きい場合には、耐熱性が低下する(比較例2)。
また、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)および高密度ポリエチレン(B)の少なくとも一方が、本発明の請求項1の各要件を満たさない組成物である場合、得られたフィルムは低光沢、耐熱性、低フィッシュアイ、耐衝撃性の各特性をバランスよく確保することが出来ない(比較例3〜8)。
以上の結果より、本発明の各実施例においては、各比較例に比して、無延伸艶消しフィルムの各性能が、バランス良くおしなべて顕著に優れており、本発明の構成の合理性と有意性及び従来技術に対する卓越性を明示しているといえる。