(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一例である実施形態について詳細に説明する。
【0015】
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電装置と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成装置と、静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像装置と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着装置と、を備える。
【0016】
定着装置は、第1の部材と第1の部材に接触する第2の部材とを有し、第1の部材と第2の部材との接触部で、記録媒体を搬送すると共に、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着装置である。そして、画像形成装置は、第1の部材及び第2の部材の少なくとも一方を、記録媒体の搬送方向と交差する方向にずらす装置を備える。
【0017】
一方、トナーは、トナー粒子を含む。トナー粒子は、結着樹脂、着色剤、及び離型剤を含み、かつ結着樹脂を含む海部と離型剤を含む島部とを持つ海島構造を有する。そして、この海島構造において、式(1)で示される離型剤を含む島部の偏在度Bの分布の最頻値は0.75以上0.95以下であり、偏在度Bの分布の歪度は−1.10以上−0.50以下である。
式(1): 偏在度B=2d/D
(式(1)中、Dはトナー粒子の断面観察におけるトナー粒子の円相当径(μm)を示す。dは、トナー粒子の断面観察におけるトナー粒子の重心から離型剤を含む島部の重心までの距離(μm)を示す。)
【0018】
本実施形態に係る画像形成装置は、上記構成により、第1の部材と第1の部材に接触する第2の部材とを有する定着装置と、第1の部材及び第2の部材の少なくとも一方を記録媒体の搬送方向と交差する方向にずらす装置と、を備える画像形成装置で生じるオフセット(定着装置の部材に定着画像の一部が付着する現象)の発生を抑制する。その理由は、以下の通り推測される。
【0019】
まず、電子写真方式の画像形成装置において、記録媒体にトナー画像を繰り返し定着すると、定着装置における第1の部材及び第2の部材の接触部(以下「ニップ部」とも称する)の同じ位置に記録媒体が繰り返し通過するため、記録媒体の端部との接触によって第1の部材及び第2の部材の外周面に傷(以下「通紙傷」とも称する)が発生することがある。
そこで、この通紙傷の発生を抑制する目的で、定着装置における第1の部材及び第2の部材の少なくとも一方を記録媒体の搬送方向と交差する方向にずらす装置(以下、「移動装置」とも称する)を備える画像形成装置が知られている。移動装置により、定着装置の第1の部材及び第2の部材の少なくとも一方を記録媒体の搬送方向と交差する方向にずらすことで、第1の部材及び第2の部材のニップ部を通過する記録媒体の位置がずれる。つまり、定着時において、第1の部材及び第2の部材の外周面と記録媒体の端部との接触位置が変えられる。このため、第1の部材及び第2の部材の外周面の通紙傷の発生が抑制される。
【0020】
一方で、移動装置を備える画像形成装置では、定着装置における第1の部材及び第2の部材は、記録媒体の搬送方向と交差する方向にずらしても、定着を実現するため、記録媒体よりも幅広い部材(つまり、軸方向長さが記録媒体よりも長い部材)としている。このため、第1の部材及び第2の部材のニップ部の圧力(以下「ニップ圧」とも称する)が部材軸方向で変動して不均一化し易く、ニップ圧が低くなる箇所では、トナー粒子からの離型剤の染み出しが不十分となって、定着画像に対する定着装置の部材の剥離性が低くなり、オフセットが生じることがある。
そして、このオフセットを抑制するためには、離型剤をトナー粒子の表層部側に偏在させることが有効である。これは、トナー粒子の表層部に離型剤が存在すると、ニップ圧が低くなる箇所でも離型剤がトナー粒子から染み出し易くなるためである。
【0021】
しかし、トナー粒子の表層部のみに離型剤を存在させると、記録媒体の両面に画像を形成したとき(つまり両面印刷したとき)、記録媒体の表面(おもて面)にトナー画像を定着(一回目の定着)した後に行う、記録媒体の裏面へのトナー画像の定着(2回目の定着)において、記録媒体の表面(おもて面)に定着した定着画像のオフセットが発生することがある。トナー粒子の表層部のみに離型剤が存在すると、1回目の定着で、トナー粒子から離型剤が染み出し量が多く、記録媒体の表面(おもて面)の定着画像中に残存する離型剤量が過剰に少なくなる。このため、2回目の定着において、記録媒体の表面(おもて面)の定着画像からの離型剤の染み出し量が少なくなり、定着画像に対する定着装置の部材の剥離性が低くなることで、オフセットが発生すると考えられる。
【0022】
これに対して、トナー粒子として、結着樹脂を含む海部と離型剤を含む島部とを持つ海島構造を有し、この海島構造において、式(1)で示される離型剤を含む島部の偏在度Bの分布の最頻値、及び偏在度Bの分布の歪度を上記範囲としたトナー粒子を適用すると、定着装置における第1の部材及び第2の部材のニップ部のニップ圧が低い箇所でも、トナー粒子からの離型剤の染み出し易くなる一方で、両面印刷をしたときでも、2回目の定着において、記録媒体の表面(おもて面)の定着画像からの離型剤の染み出量が確保され易くなる。
【0023】
ここで、離型剤を含む島部(以下、「離型剤ドメイン」とも称する)の偏在度Bは、トナー粒子の重心から、離型剤ドメインの重心がどれだけ離れているかを示す指標である。この偏在度Bは、値が大きい程、離型剤ドメインがトナー粒子表面近くに存在することを示し、値が小さい程、離型剤ドメインがトナー粒子中心近くに存在することを示す。そして、偏在度Bの分布の最頻値は、トナー粒子の径方向において、離型剤ドメインの存在が最も多い部位を示している。一方、偏在度Bの分布の歪度は、分布の左右対称性を示している。具体的には、偏在度Bの分布の歪度は、最頻値からの分布の裾引きの程度を示している。つまり、偏在度Bの分布の歪度は、離型剤ドメインが、トナー粒子の径方向において、最も多い部位からどの程度の分布で存在しているかを示している。
【0024】
即ち、離型剤ドメインの偏在度Bの分布の最頻値が0.75以上0.95以下の範囲内であるとは、トナー粒子の表層部に離型剤ドメインが最も多く存在していることを示している。そして、離型剤ドメインの偏在度Bの分布の歪度が−1.10以上−0.50以下の範囲内にあるとは、離型剤ドメインが、トナー粒子表層部から内部に向かって、勾配を持って分布していることを示している(
図5参照)。
【0025】
このように、離型剤ドメインの偏在度Bの分布の最頻値及び歪度が上記範囲を満たすトナー粒子は、離型剤ドメインが表層部に最も多く存在しつつ、勾配をもってトナー粒子内部から表層部に向けて分布しているトナー粒子である。
つまり、この離型剤ドメインの分布に勾配を持つトナー粒子は、離型剤ドメインが表層部に最も多く存在しているため、定着装置における第1の部材及び第2の部材のニップ部のニップ圧が低い箇所でも、トナー粒子からの離型剤が染み出し易くなる。一方で、この離型剤ドメインの分布に勾配を持つトナー粒子は、離型剤が勾配をもってトナー粒子内部から表層部に向けて分布しているため(つまり、トナー粒子内部にもある程度、離型剤が存在するため)、両面印刷したとき、1回目の定着で、トナー粒子の表層部から離型剤が染み出しても、記録媒体の表面(おもて面)の定着画像中に残存する離型剤量が過剰に少なくなることが抑制される。このため、2回目の定着において、記録媒体の表面(おもて面)の定着画像からの離型剤の染み出し量が確保され易くなる。
【0026】
これらにより、定着装置における第1の部材及び第2の部材のニップ部のニップ圧が低い箇所でも、定着画像に対する定着装置の部材の剥離性が高まる一方で、両面印刷をしたときでも、2回目の定着において、記録媒体の表面(おもて面)の定着画像に対する定着装置の部材の剥離性も高まる。
【0027】
以上から、本実施形態に係る画像形成装置は、移動装置を備える画像形成装置で生じるオフセットの発生を抑制すると推測される。
【0028】
なお、移動装置を備える画像形成装置で生じるオフセットの発生を抑制すためには、定着温度を上げる方法があるが、セットアップに時間を要してしまい、生産性が低下する。また、トナーの結着樹脂のガラス転移温度を下げる方法、離型剤の含有量を増加させる方法等もあるが、トナーの保管性が低下する。
【0029】
一方、本実施形態に係る画像形成装置は、離型剤(ワックス)の染み出し量のバラつきも抑えられると考えられるため、画像の光沢ムラの発生も抑制され易くなる。
【0030】
ここで、本実施形態に係る画像形成装置では、像保持体の表面を帯電する帯電工程と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、本実施形態に係る静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、第1の部材と前記第1の部材に接触する第2の部材との接触部で、前記記録媒体を搬送すると共に、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、第1の部材及び第2の部材の少なくとも一方を、記録媒体の搬送方向と交差する方向にずらす工程と、を有する画像形成方法(本実施形態に係る画像形成方法)が実施される。
【0031】
また、本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体の表面に形成されたトナー画像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー画像の転写後、帯電前の像保持体の表面をクリーニングするクリーニング装置を備えた装置;トナー画像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電装置を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
中間転写方式の装置の場合、転写装置は、例えば、表面にトナー画像が転写される中間転写体と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写装置と、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写装置と、を有する構成が適用される。
【0032】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例について、図面を参照しつつ説明する。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0033】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
図1に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kを備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する場合がある)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定められた距離離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置に対して脱着するプロセスカートリッジであってもよい。
【0034】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写体20が設けられている。中間転写体20は、図における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ロール22及び中間転写体20内面に接する支持ロール24に巻きつけて設けられ、第1のユニット10Yから第4のユニット10Kに向う方向に走行されるようになっている。なお、支持ロール24は、図示しないバネ等により駆動ロール22から離れる方向に力が加えられており、両者に巻きつけられた中間転写体20に張力が与えられている。また、中間転写体20の像保持体側面には、駆動ロール22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収められたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーを含むトナーの供給がなされる。
【0035】
第1乃至第4のユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写体走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1のユニット10Yについて代表して説明する。なお、第1のユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0036】
第1のユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電装置2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づく光3Yによって露光して静電荷像を形成する静電荷像形成装置3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置4Y、現像したトナー画像を中間転写体20上に転写する一次転写装置5Y、及び一次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置6Yが順に配置されている。
なお、一次転写装置5Yは、中間転写体20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各一次転写装置5Y、5M、5C、5Kには、一次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、各一次転写装置に印加する転写バイアスを可変する。
【0037】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作の一例について説明する。
まず、動作に先立って、帯電装置2Yによって感光体1Yの表面が帯電される。
帯電した感光体1Yの表面に、イエロー用の画像データに従って、静電荷像形成装置3により光3Yを出力する。光3Yは、感光体1Yの表面に照射され、それにより、イエロー画像パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って予め定められた現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによってトナー画像として可視像(現像像)化される。具体的には、感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された静電潜像にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー画像が形成された感光体1Yは、引続き予め定められた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー画像が予め定められた一次転写位置へ搬送される。
【0038】
感光体1Y上のイエロートナー画像が一次転写へ搬送されると、一次転写装置5Yに一次転写バイアスが印加され、感光体1Yから一次転写装置5Yに向う静電気力がトナー画像に作用する。これにより、感光体1Y上のトナー画像が中間転写体20上に転写される。一方、感光体1Y上に残留したトナーは感光体クリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0039】
こうして、第1のユニット10Yにてイエロートナー画像の転写された中間転写体20は、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー画像が重ねられて多重転写される。
【0040】
次に、第1乃至第4のユニットを通して4色のトナー画像が多重転写された中間転写体20は、中間転写体20と中間転写体20内面に接する支持ロール24と中間転写体20の像保持面側に配置された二次転写装置26とから構成された二次転写部へと至る。一方、記録紙Pが供給機構を介して二次転写装置26と中間転写体20とが接触した隙間に予め定められたタイミングで給紙され、二次転写バイアスが支持ロール24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性と同極性の極性であり、中間転写体20から記録紙Pに向う静電気力がトナー画像に作用され、中間転写体20上のトナー画像が記録紙P上に転写される。
【0041】
ここで、記録紙Pは、記録紙収容容器に収容された状態から、取出ロール(ピックアップロール)31により取り出され、搬送ロール対32により搬送された後、位置合せロール対(レジストロール対)34により予め定められたタイミングで、二次転写部へ給紙される。
【0042】
この後、記録紙Pは定着装置28へと送り込まれトナー画像が記録紙P上へ定着され、定着画像が形成される。
【0043】
カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出ロール対36により排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
【0044】
一方、両面印刷する場合、記録紙Pは、排出ロール対36により反転搬送(スイッチバック)され、搬送ロール対40,41,42により構成された両面印刷用の搬送路38を経由して、再び位置合せロール対に搬送され、二次転写部へ給紙される。そして、記録紙Pは、裏面側にトナー画像が転写された後、定着装置28へと送り込まれトナー画像が記録紙P上へ定着され、定着画像が形成される。その後、カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出ロール対36により排出部へ向けて搬出される。
【0045】
なお、
図1に示す画像形成装置は、各装置(又は各装置の各部)の動作を制御する制御装置50を有している。そして、
図1に示す画像形成装置の各種動作は、制御装置50により制御される。つまり、
図1に示す画像形成装置の各種動作は、制御装置50において実行する制御プログラムにより行われる。
【0046】
以下、
図1に示す画像形成装置の代表的な構成の詳細について説明する。なお、「Y、M、C、K」の符号は省略して説明する。
【0047】
(感光体)
感光体1は、例えば、導電性基体と、この導電性基体上に形成された下引き層と、この下引き層の上に形成された感光層と、を有する。この感光層は、電荷発生層と電荷輸送層との2層構造であってもよい。感光層は、有機感光層であってもよいし、無機感光層であってもよい。感光体1は、感光層上に保護層を設けた構成であってもよい。
【0048】
(帯電装置)
帯電装置2は、例えば、感光体1表面に接触または非接触で設けられ、図示しないが、感光体1の表面を帯電する帯電部材、及び帯電部材に帯電電圧を印加する電源を備えている。電源は、帯電部材に電気的に接続されている。
【0049】
帯電装置2の帯電部材としては、例えば、導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触方式の帯電器が挙げられる。また、帯電部材としては、例えば、非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器又はコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も挙げられる。
【0050】
(静電荷像形成装置)
静電荷像形成装置3としては、例えば、感光体1表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、定められた像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は感光体1の分光感度領域内とする。半導体の波長としては、780nm付近に発振波長を有する近赤外が主流である。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザや青色レーザとして400nm以上450nm以下に発振波長を有するレーザも利用してもよい。また、カラー画像形成のためにはマルチビームを出力し得るタイプの面発光型のレーザ光源も有効である。
【0051】
(現像装置)
現像装置4は、例えば、静電荷像形成装置3による光3の照射位置より感光体1の回転方向下流側に設けられている。現像装置4内には、現像剤を収容する収容部(不図示)が設けられている。この収容部には、トナーを含む静電荷像現像剤が収容されている。
【0052】
現像装置4は、例えば、図示しないが、トナーを含む現像剤により、感光体1の表面に形成された静電潜像を現像する現像部材と、現像部材に現像電圧を印加する電源と、を備えている。この現像部材は、例えば、電源に電気的に接続されている。
【0053】
現像装置4の現像部材としては、現像剤の種類に応じて選択されるが、例えば、磁石が内蔵された現像スリーブを有する現像ロールが挙げられる。
【0054】
現像装置4では、例えば、現像部材に現像電圧が印加される、現像電圧を印加された現像部材は、現像電圧に応じた現像電位に帯電される。そして、現像電位に帯電された現像部材は、例えば、現像装置4内に収容された現像剤を表面に保持して、現像剤に含まれるトナーを現像装置4内から感光体1表面へと供給する。
感光体1上に供給されたトナーは、例えば、感光体1上の静電荷像に静電力により付着する。詳細には、例えば、感光体1と現像装置4の現像部材との向かい合う領域における電位差、すなわち、該領域における感光体1の表面の電位と現像装置4の現像部材の現像電位との電位差によって、現像剤に含まれるトナーが感光体の静電荷像の形成された領域に供給される。なお、現像剤にキャリアが含まれている場合には、該キャリアは現像部材に保持されたまま現像装置4内に戻る。
【0055】
(一次転写装置)
一次転写装置5は、例えば、現像装置4の配設位置より感光体1の回転方向下流側に設けられている。一次転写装置5は、図示しないが、例えば、感光体1の表面に形成されたトナー画像を中間転写体20へ転写する転写部材と、転写部材に転写電圧を印加する電源と、を備えている。転写部材は、例えば、円柱状とされており、感光体1との間で中間転写体20を挟んで設けられる。転写部材は、例えば、電源に電気的に接続されている。
【0056】
一次転写装置5の転写部材としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器又はコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の非接触型転写帯電器が挙げられる。
【0057】
(中間転写体)
中間転写体20としては、半導電性を付与したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等を含むベルト状の部材(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体20の形態としては、ベルト状の部材以外にドラム状の部材であってもよい。
【0058】
(二次転写装置)
二次転写装置26は、図示しないが、例えば、中間転写体20の表面に形成されたトナー画像を記録紙Pへ転写する転写部材と、転写部材に転写電圧を印加する電源と、を備えている。転写部材は、例えば、円柱状とされており、中間転写体20との間で記録紙Pを挟んで設けられる。転写部材は、例えば、電源に電気的に接続されている。
【0059】
二次転写装置26の転写部材としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器又はコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の非接触型転写帯電器が挙げられる。
【0060】
(感光体クリーニング装置)
感光体クリーニング装置6は、一次転写装置5より感光体1の回転方向下流側に設けられている。感光体クリーニング装置6は、トナー画像を記録紙Pに転写した後に、感光体1に付着した残留トナーをクリーニングする。感光体クリーニング装置6では、残留トナー以外にも、紙粉等の付着物をクリーニングする。
【0061】
感光体クリーニング装置6は、感光体1の表面に接触して、残留トナーをクリーニングするブレードを有するブレード方式の装置が挙げられる。その他、感光体クリーニング装置6は、ブラシ方式の装置等の周知のクリーニング装置も挙げられる。
【0062】
(定着装置)
定着装置28は、例えば、
図2に示すように、電磁誘導加熱方式の定着装置であり、筐体60の内部に、金属発熱層(不図示)を有する定着ベルト62(第1の部材の一例)と、加圧ロール64(第2の部材の一例)と、電磁誘導部66と、を備える。また、定着ベルトの内部には、押圧パッド68と、押圧パッド68を支持するパッド支持部材70とが配置されている。なお、
図2中、T1は、定着前のトナー画像を示す。T2は、定着画像を示す。
【0063】
加圧ロール64は、不図示の駆動源により矢印R方向に回転可能に筐体60により支持されている。定着ベルト62と加圧ロール64とは、記録紙Pが挿通可能に接触されており、加圧ロール64の矢印R方向への回転に伴い、定着ベルト62は従動回転可能である。定着ベルト62の内周面側には、押圧パッド68が該内周面と接触して配置され、更に押圧パッド68と接触している箇所の外周面(定着ベルト62の外周面)側には、加圧ロール64が該外周面と接触して配置され、記録紙Pが挿通可能な接触部が形成されている。
ここで、加圧ロール64は、弾性体72(例えばバネ等)により、定着ベルト62を介して押圧パッド68に押圧された状態で支持されている。そして、加圧ロール64は、弾性体72の押圧力に抗って定着ベルト62から離間させる駆動部材74(例えば、伸縮駆動するアクチュエータ等)が連結されている。
【0064】
一方、パッド支持部材70に対して、押圧パッド68と反対側の定着ベルト62外周面側に、該外周面に対して定められた間隔で離間して、電磁誘導部66が設けられている。
電磁誘導部66は、定着ベルト62の外周面に離間して配置される電磁誘導コイル66Aを有している。電磁誘導コイル66Aは、電磁誘導コイル66Aに対して定着ベルト62の外周面と反対側に設けられたコイル支持部材66Bにより固定されている。電磁誘導コイル66Aは不図示の電源に接続されており、電磁誘導コイル66Aに交流電流が流された際に、電磁誘導コイル66Aに定着ベルト62の外周面と交差(例えば直交)する磁界を発生し得る。なお、前記磁界は不図示の励磁回路により、定着ベルト62に有する金属発熱層中に渦電流を発生し得るよう、磁界の方向を変動するものである。
【0065】
また、筐体60は、記録紙Pの搬送方向に交差する方向(例えば、加圧ロール64の軸方向)に沿って移動可能となるように、案内部材(例えばスライドガイド)を介して支持されている。そして、筐体60は、記録紙Pの搬送方向に交差する方向に定着装置28(つまり定着ベルト62及び加圧ロール64)をずらす装置(以下「移動装置」と称する)80が連結されている。
【0066】
(移動装置)
移動装置80は、例えば、図示しないが、回転モータと、回転モータの回転トルクを記録紙Pの搬送方向に交差する方向の直進動作に変換する動作変換機構と、を備えている。この動産変換機構の動作により、定着装置28の筐体60に作用し、定着装置28(つまり定着ベルト62及び加圧ロール64)が記録紙Pの搬送方向に交差する方向にずれる。
この動作変換機構としては、例えば、ボールネジ機構、ピニオン−ラック機構等がある。回転モータには、例えば、目的とする動作量で動作させることが可能なモータ(サーボモータ、ステッピングモータ等)がある。
なお、移動装置80のモータとして、直進動作を行うモータ(リニアモータ等)を採用してもよい。この場合、動作変換機構は不要である。
【0067】
なお、定着装置28は、電磁誘導加熱方式の定着装置に限られず、ハロゲンランプ、セラミックヒータ等の加熱源を有する加熱部材と、加圧部材とを有する構成等の周知の定着装置であってもよい。なお、定着装置28は、ロール・ロール方式、ベルト・ベルト方式、ベルト・ロール方式のいずれの方式の定着装置であってもよい。
【0068】
(定着装置及び移動装置の動作)
定着装置及び移動装置の動作について説明する。なお、この動作は、制御装置50の制御により実施される。
【0069】
まず、定着装置28による定着動作について説明する。
まず、加圧ロール64を矢印R方向へ回転させ、加圧ロール64の回転に伴い、定着ベルト62を従動回転させる。次に、電磁誘導コイル66Aにより磁界を発生させ、回転する定着ベルト62に磁界を曝す。この際、電磁誘導コイル66Aにより定着ベルト62中の金属発熱層には渦電流が発生し発熱する。これにより、定着ベルト62の外周面が定着可能な温度(150℃以上200℃以下程度)にまで加熱される。
【0070】
上記方法で定着ベルト62外周面の定められた領域が加熱され、該加熱された領域は、定着ベルト62の回転に伴い、加圧ロール64との接触部まで移動する。一方、トナー画像が表面に形成された記録紙Pが搬送される。記録紙Pが前記接触部を通過する際に、トナー画像は定着ベルト62の加熱された領域と接触することにより加熱され記録紙P表面に定着される。また、前記接触部において定着処理を終え、外周面の表面温度が低下した定着ベルト62の領域は、定着ベルト62の回転に伴い電磁誘導コイル66Aによって加熱される箇所に移動し、次の定着処理に備えて再度加熱される。
【0071】
次に、移動装置80の動作について説明する。
まず、定着ベルト62に加圧ロール64を押圧している状態(具体的には、加圧ロール64が定着ベルト62を介して押圧パッド68に押圧された状態:
図3(A)参照)から、駆動部材74を駆動し、定着ベルト62から離間する方向に、加圧ロール64を弾性体72の押圧力に抗って退避させる(
図3(B)参照)。これにより、加圧ロール64による押圧を解除する。
【0072】
次に、移動装置80を駆動し、定着装置(つまり定着ベルト62及び加圧ロール64)を記録紙Pの搬送方向に交差する方向(具体的には、例えば加圧ロール64の軸方向に沿った方向)にずらす(
図3(C)参照)。この定着装置28のズレ方向(記録紙Pの搬送方向に交差する方向の一方又は他方の方向)及びズレ量は、記録紙Pの種類、ニップ部通過量、又はニップ部通過時間(定着時間)に基づいて、予め定められたズレ方向及びすれ量範囲で設定される。
【0073】
次に、移動装置80を駆動し、定着ベルト62からの加圧ロール64の退避を解除し、弾性体72の押圧力により、定着ベルト62に加圧ロール64を押圧している状態(具体的には、加圧ロール64が定着ベルト62を介して押圧パッド68に押圧された状態:
図3(D)参照)に戻す。
【0074】
なお、
図3(A)〜
図3(D)中、P1は、定着ベルト62と加圧ロール64とのニップ部における記録紙Pの通過位置を示す。
【0075】
これら一連の移動装置80の動作により、定着ベルト62と加圧ロールとのニップ部に通過する記録紙Pの通過位置が変更される。これにより、記録紙Pの端部との接触より生じる、定着ベルト62及び加圧ロールの外周面の傷の発生が抑制される。
【0076】
ここで、移動装置80の動作を実施する時期(定着装置28をずらす動作を実施する時期)は、例えば、下記(A)〜(D)のいずれか、又は組合せが挙げられる。
(A)定着ベルト62と加圧ロール64とのニップ部における記録紙Pの通過時間(定着が実施された時間)が、予め定められた通過時間に達するごとに、周期的に実施する。
(B)定着ベルト62と加圧ロール64とのニップ部を通過する記録紙Pの通過量が予め定められた通過量に達するごとに、周期的に実施する。
(C)画像形成停止中(例えば、画像濃度又は階調の補正データを取得する動作等の初期設定動作中)に実施する。
【0077】
なお、移動装置80による定着装置28全体をずらす形態に説明したが、これに限定されるわけではなく、定着ベルト62及び加圧ロール64を少なくとも有する部位をずらす形態であってもよいし、定着ベルト62及び加圧ロール64の一方をずらす形態であってもよい。
【0078】
(制御装置)
制御装置50は、装置全体の制御及び各種演算を行うコンピュータとして構成されている。具体的には、制御装置は、図示しないが、CPU(中央処理装置; Central Processing Unit)、各種プログラムを記憶したROM(Read Only Memory)、プログラムの実行時にワークエリアとして使用されるRAM(Random Access Memory)、各種情報を記憶する不揮発性メモリ、及び入出力インターフェース(I/O)を備えている。CPU、ROM、RAM、不揮発性メモリ、及びI/Oの各々は、バスを介して接続されている。
【0079】
図1に示す画像形成装置は、制御装置50の外に、図示しないが、例えば、画像形成部、操作表示部、画像処理部、画像メモリ、記憶部、及び通信部等を備えている。操作表示部、画像処理部、画像メモリ、画像形成部、記憶部、及び通信部の各部は、制御装置50のI/Oに接続されている。制御装置50は、画像形成部、操作表示部、画像処理部、画像メモリ、画像形成部、記憶部、及び通信部の各部との間で情報の授受を行って、各部を制御する。
なお、画像形成部は、画像形成装置10の主要構成として説明したものである。つまり、画像形成部は、感光体1、帯電装置2、静電荷像形成装置3、現像装置4、一次転写装置5、中間転写体20の駆動ロール22、二次転写装置26、定着装置28、移動装置80の各々は、制御装置50と接続されている。制御装置50は、これら各装置との間で情報の授受を行って各装置を制御する。
【0080】
(現像剤)
現像剤は、トナーのみからなる一成分現像剤であってもよいし、トナーとキャリアとを含む二成分現像剤であってもよい。以下、トナーについて説明し、その後、キャリアについて説明する。
【0081】
=トナー=
トナーは、トナー粒子を有する。トナーは、必要に応じて、外添剤を有してよい。
【0082】
トナー粒子は、結着樹脂を含む海部と離型剤を含む島部とを持つ海島構造を有する。つまり、トナー粒子は、結着樹脂の連続相中に離型剤が島状に存在する海島構造を有する。なお、離型剤ドメインは、オフセット抑制の点からトナー粒子の断面観察におけるトナー粒子の中央部(重心部)には存在しないことがよい。
【0083】
海島構造を有するトナー粒子において、離型剤ドメイン(離型剤を含む島部)の偏在度Bの分布の最頻値は、0.75以上0.95以下であり、オフセット抑制の点から、0.80以上0.95以下が好ましく、0.85以上0.90以下がより好ましい。
【0084】
離型剤ドメイン(離型剤を含む島部)の偏在度Bの分布の歪度は、−1.10以上−0.50以下であり、オフセット抑制の点から、−1.00以上−0.60以下が好ましく、−0.95以上−0.65以下がより好ましい。
【0085】
離型剤ドメイン(離型剤を含む島部)の偏在度Bの分布の尖度は、オフセット抑制の点から、−0.20以上+1.50以下が好ましく、−0.15以上+1.40以下がより好ましく、−0.10以上+1.30以下が更に好ましい。
なお、尖度とは偏在度Bの分布の頂点(つまり分布の最頻値)の尖りを示す指数である。そして、尖度が上記範囲とは、偏在度Bの分布において、頂部(最頻値)が過剰に尖っておらず、尖りつつも適度に湾曲した分布となって状態を示している。このため、トナー粒子に対する外添剤の適度な埋まり込みが維持され易くなり、経時的な画像濃度変化が更に抑制される。
【0086】
ここで、トナー粒子の海島構造の確認方法について説明する。
トナー粒子の海島構造は、例えば、トナー粒子の断面を透過型電子顕微鏡により観察する方法、トナー粒子の断面に四酸化ルテニウムによる染色を行い、走査型電子顕微鏡により観察する方法によって確認する。トナー粒子の断面における離型剤ドメインがより鮮明に観察できる点で、走査型電子顕微鏡により観察する方法が好ましい。走査型電子顕微鏡としては、当業者の間でよく知られた機種であればよく、例えば、日立ハイテク社製SU8020、日本電子社製JSM−7500F等が挙げられる。
具体的な、観察方法は、次の通りである。まず、測定対象となるトナー粒子をエポキシ樹脂に包埋した後、エポキシ樹脂を硬化する。ダイヤモンド刃を備えたミクロトームによって、この硬化物を薄片化し、トナー粒子の断面が露出した観察試料を得る。薄片の観察試料に対し、四酸化ルテニウムにより染色を施し、走査型電子顕微鏡によりトナー粒子の断面を観察する。この観察方法によって、トナー粒子の断面には、染色度の違いにより、結着樹脂の連続相中に対し、輝度差(コントラスト)がある離型剤が島状に存在する海島構造が観察される。
【0087】
次に、離型剤ドメインの偏在度Bの測定方法について説明する。
離型剤ドメインの偏在度Bの測定は、次の通り行う。まず、海島構造の確認方法を利用し、トナー粒子1個の断面が視野に入る倍率で画像を記録する。記録された画像について、画像解析ソフト(三谷商事社製WinROOF)を用いて、0.010000μm/pixel条件で画像解析を行う。この画像解析により、包埋に用いたエポキシ樹脂とトナー粒子の結着樹脂との輝度差(コントラスト)により、トナー粒子の断面の形状を抽出する。抽出されたトナー粒子の断面の形状に基づいて、投影面積を求める。そして、この投影面積から、円相当径を求める。円相当径は、式:2√(投影面積/π)により算出する。求めた円相当径を、トナー粒子の断面観察におけるトナー粒子の円相当径Dとする。
一方、抽出されたトナー粒子の断面の形状に基づいて、重心位置を求める。続けて、結着樹脂と離型剤の輝度差(コントラスト)により、離型剤ドメインの形状を抽出し、離型剤ドメインの重心位置を求める。この各重心位置は、具体的には、抽出されたトナー粒子、又は、離型剤ドメインの領域に対し、領域内の画素数をn、各画素のxy座標をx
i、y
i(i=1,2,…,n)とし、重心のx座標は各x
i座標値の合計をnで割った値、重心のy座標は各y
i座標値の合計をnで割った値として求める。そして、トナー粒子の断面の重心位置と離型剤ドメインの重心位置との距離を求める。求めた距離を、トナー粒子の断面観察におけるトナー粒子の重心から離型剤を含む島部の重心までの距離dとする。
最後に、各円相当径D及び距離dから、式(1):偏在度B=2d/Dにより、離型剤ドメインの偏在度Bを求める。そして、一個のトナー粒子の断面に存在する複数の離型剤ドメインについて、各々、上記同様の操作を行って、離型剤ドメインの偏在度Bを求める。
【0088】
次に、離型剤ドメインの偏在度Bの分布の最頻値の算出方法について説明する。
まず、既述の離型剤ドメインの偏在度Bの測定をトナー粒子200個について行う。得られた各離型剤ドメインの偏在度Bのデータを、0から0.01刻みのデータ区間で統計解析処理を行い、偏在度Bの分布を求める。得られた分布の最頻値、すなわち、離型剤ドメインの偏在度Bの分布で最も多く現れるデータ区間の値を求める。そして、このデータ区間の値を、離型剤ドメインの偏在度Bの分布の最頻値とする。
【0089】
次に、離型剤ドメインの偏在度Bの分布の歪度の算出方法について説明する。
まず、既述通り、離型剤ドメインの偏在度Bの分布を求める。求めた下記式に基づいて、偏在度Bの分布の歪度を求める。なお、下記式において、歪度をSk、離型剤ドメインの偏在度Bのデータ数をn、各離型剤ドメインの偏在度Bのデータの値をx
i(i=1,2,…,n)、離型剤ドメインの偏在度Bのデータ全体の平均値をx(上方にバーを付したx)、離型剤ドメインの偏在度Bのデータ全体の標準偏差をsとする。
【0091】
次に、離型剤ドメインの偏在度Bの分布の尖度の算出方法について説明する。
まず、既述通り、離型剤ドメインの偏在度Bの分布を求める。求めた下記式に基づいて、偏在度Bの分布の尖度を求める。なお、下記式において、尖度をKu、離型剤ドメインの偏在度Bのデータ数をn、各離型剤ドメインの偏在度Bのデータの値をx
i(i=1,2,…,n)、離型剤ドメインの偏在度Bのデータ全体の平均値をx(上方にバーを付したx)、離型剤ドメインの偏在度Bのデータ全体標準偏差をsとする
【0093】
なお、トナー粒子において、離型剤ドメインの偏在度Bの分布特性を満たす方法については、トナー粒子の製造方法で説明する。
【0094】
以下、トナー粒子の構成成分について説明する。
トナー粒子は、結着樹脂、着色剤、及び離型剤を含む。
【0095】
−結着樹脂−
結着樹脂としては、例えば、スチレン類(例えばスチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等)、(メタ)アクリル酸エステル類(例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等)、エチレン性不飽和ニトリル類(例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、ビニルエーテル類(例えばビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等)、ビニルケトン類(ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等)、オレフィン類(例えばエチレン、プロピレン、ブタジエン等)等の単量体の単独重合体、又はこれら単量体を2種以上組み合せた共重合体からなるビニル系樹脂が挙げられる。
結着樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂、これらと前記ビニル系樹脂との混合物、又は、これらの共存下でビニル系単量体を重合して得られるグラフト重合体等も挙げられる。
これらの結着樹脂は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0096】
結着樹脂としては、ポリエステル樹脂が好適である。
ポリエステル樹脂としては、例えば、公知のポリエステル樹脂が挙げられる。
【0097】
ポリエステル樹脂としては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合体が挙げられる。なお、ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
【0098】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、セバシン酸等)、脂環式ジカルボン酸(例えばシクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。これらの中でも、多価カルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸が好ましい。
多価カルボン酸は、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステル等が挙げられる。
多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0099】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等)、脂環式ジオール(例えばシクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等)、芳香族ジオール(例えばビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等)が挙げられる。これらの中でも、多価アルコールとしては、例えば、芳香族ジオール、脂環式ジオールが好ましく、より好ましくは芳香族ジオールである。
多価アルコールとしては、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上の多価アルコールを併用してもよい。3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが挙げられる。
多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0100】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃以上80℃以下が好ましく、50℃以上65℃以下がより好ましい。
なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線より求め、より具体的にはJIS K 7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」により求められる。
【0101】
ポリエステル樹脂は、周知の製造方法により得られる。具体的には、例えば、重合温度を180℃以上230℃以下とし、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合の際に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる方法により得られる。
なお、原料の単量体が、反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。この場合、重縮合反応は溶解補助剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪い単量体が存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪い単量体とその単量体と重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させるとよい。
【0102】
結着樹脂の含有量としては、例えば,トナー粒子全体に対して、40質量%以上95質量%以下が好ましく、50質量%以上90質量%以下がより好ましく、60質量%以上85質量%以下がさらに好ましい。
【0103】
−着色剤−
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、ピグメントイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン3B、ブリリアントカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ピグメントレッド、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレートなどの種々の顔料、又は、アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系などの各種染料等が挙げられる。
着色剤は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0104】
着色剤は、必要に応じて表面処理された着色剤を用いてもよく、分散剤と併用してもよい。また、着色剤は、複数種を併用してもよい。
【0105】
着色剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0106】
−離型剤−
離型剤としては、例えば、炭化水素系ワックス;カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成又は鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス;などが挙げられる。離型剤は、これに限定されるものではない。
【0107】
これらの中でも、離型剤としては、炭化水素系ワックス(炭化水素を骨格として有するワックス)が好ましい。炭化水素系ワックスは、離型剤ドメインを形成し易く、また、定着時に速やかにトナー粒子表面に染み出し易いため、好適である。
【0108】
離型剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0109】
−その他の添加剤−
その他の添加剤としては、例えば、磁性体、帯電制御剤、無機粉体等の周知の添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、内添剤としてトナー粒子に含まれる。
【0110】
−トナー粒子の特性等−
トナー粒子は、単層構造のトナー粒子であってもよいし、芯部(コア粒子)と芯部を被覆する被覆層(シェル層)とで構成された所謂コア・シェル構造のトナー粒子であってもよい。
ここで、コア・シェル構造のトナー粒子は、例えば、結着樹脂、着色剤及び離型剤を含んで構成された芯部と、結着樹脂を含んで構成された被覆層と、で構成されていることがよい。
【0111】
トナー粒子の体積平均粒径(D50v)としては、2μm以上10μm以下が好ましく、4μm以上8μm以下がより好ましい。
【0112】
なお、トナー粒子の各種平均粒径、及び各種粒度分布指標は、コールターマルチサイザーII(ベックマン−コールター社製)を用い、電解液はISOTON−II(ベックマン・コールター社製)を使用して測定される。
測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100ml以上150ml以下中に添加する。
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径として100μmのアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の範囲の粒径の粒子の粒度分布を測定する。なお、サンプリングする粒子数は50000個である。
測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャンネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を体積粒径D16v、数粒径D16p、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50v、累積数平均粒径D50p、累積84%となる粒径を体積粒径D84v、数粒径D84pと定義する。
これらを用いて、体積平均粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)
1/2、数平均粒度分布指標(GSDp)は(D84p/D16p)
1/2として算出される。
【0113】
(外添剤)
外添剤としては、例えば、無機粒子が挙げられる。該無機粒子として、SiO
2、TiO
2、Al
2O
3、CuO、ZnO、SnO
2、CeO
2、Fe
2O
3、MgO、BaO、CaO、K
2O、Na
2O、ZrO
2、CaO・SiO
2、K
2O・(TiO
2)n、Al
2O
3・2SiO
2、CaCO
3、MgCO
3、BaSO
4、MgSO
4等が挙げられる。
【0114】
外添剤としての無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
疎水化処理剤の量としては、通常、例えば、無機粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下である。
【0115】
外添剤としては、樹脂粒子(ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メラミン樹脂等の樹脂粒子)、クリーニング活剤(例えば、ステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体の粒子)等も挙げられる。
【0116】
外添剤の外添量としては、例えば、トナー粒子に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
【0117】
(トナーの製造方法)
次に、トナーの製造方法について説明する。
トナーは、トナー粒子を製造後、トナー粒子に対して、外添剤を外添することで得られる。
【0118】
トナー粒子は、乾式製法(例えば、混練粉砕法等)、湿式製法(例えば凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。トナー粒子の製法は、これらの製法に特に制限はなく、周知の製法が採用される。
これらの中でも、凝集合一法により、トナー粒子を得ることがよい。
【0119】
特に、上述した離型剤ドメインの偏在度Bの分布特性を満たすトナー(トナー粒子)を得る点から、トナー粒子は、次に示す凝集合一法により製造することがよい。
【0120】
具体的には、各分散液を準備する工程(分散液準備工程)と、
結着樹脂となる第1樹脂粒子が分散された第1樹脂粒子分散液、および着色剤の粒子(以下「着色剤粒子」とも称する)が分散された着色剤粒子分散液を混合し、得られた分散液中で、各粒子を凝集させ、第1凝集粒子を形成する工程(第1凝集粒子形成工程)と、
第1凝集粒子が分散された第1凝集粒子分散液を得た後、結着樹脂となる第2樹脂粒子および離型剤の粒子(以下「離型剤粒子」とも称する)が分散された混合分散液を、混合分散液中の離型剤粒子の濃度を次第に高めながら、第1凝集粒子分散液に順次添加して、第1凝集粒子の表面に更に第2樹脂粒子及び離型剤粒子を凝集して、第2凝集粒子を形成する工程(第2凝集粒子形成工程)と、
第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して加熱をし、第2凝集粒子を融合・合一して、トナー粒子を形成する工程(融合・合一工程)と、
を経て、トナー粒子を製造することが好ましい。
【0121】
なお、トナー粒子の製造方法は、上記に限られない。例えば、樹脂粒子分散液、および着色剤粒子分散液を混合し、得られた混合分散液中で、各粒子を凝集させる。次に、その凝集過程で、混合分散液に対して、添加速度を次第に速めつつ又は離型剤粒子の濃度を高めながら、離型剤粒子分散液を添加し、更に各粒子の凝集を進行させて、凝集粒子を形成する。そして、その凝集粒子を融合・合一して、トナー粒子を形成してもよい。
【0122】
以下、各工程の詳細について説明する。
【0123】
−各分散液準備工程−
まず、凝集合一法で使用する各分散液と準備する。具体的には、結着樹脂となる第1樹脂粒子が分散された第1樹脂粒子分散液、着色剤粒子が分散された着色剤粒子分散液、結着樹脂となる第2樹脂粒子が分散された第2樹脂粒子分散液、および離型剤粒子が分散された離型剤粒子分散液を準備する。
なお、各分散液準備工程において、第1樹脂粒子と第2樹脂粒子とを「樹脂粒子」と称して説明する。
【0124】
ここで、樹脂粒子分散液は、例えば、樹脂粒子を界面活性剤により分散媒中に分散させることにより調製する。
【0125】
樹脂粒子分散液に用いる分散媒としては、例えば水系媒体が挙げられる。
水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコール類等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0126】
界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも特に、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤が挙げられる。非イオン系界面活性剤は、アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤と併用してもよい。
界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0127】
樹脂粒子分散液において、樹脂粒子を分散媒に分散する方法としては、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル等の一般的な分散方法が挙げられる。また、樹脂粒子の種類によっては、例えば転相乳化法を用いて樹脂粒子分散液中に樹脂粒子を分散させてもよい。
なお、転相乳化法とは、分散すべき樹脂を、その樹脂が可溶な疎水性有機溶剤中に溶解せしめ、有機連続相(O相)に塩基を加えて、中和したのち、水媒体(W相)を投入することによって、W/OからO/Wへの、樹脂の変換(いわゆる転相)が行われて不連続相化し、樹脂を、水媒体中に粒子状に分散する方法である。
【0128】
樹脂粒子分散液中に分散する樹脂粒子の体積平均粒径としては、例えば0.01μm以上1μm以下が好ましく、0.08μm以上0.8μm以下がより好ましく、0.1μm以上0.6μm以下がさらに好ましい。
なお、樹脂粒子の体積平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所製、LA−700)の測定によって得られた粒度分布を用い、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小粒径側から累積分布を引き、全粒子に対して累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとして測定される。なお、他の分散液中の粒子の体積平均粒径も同様に測定される。
【0129】
樹脂粒子分散液に含まれる樹脂粒子の含有量としては、例えば、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。
【0130】
なお、樹脂粒子分散液と同様にして、例えば、着色剤粒子分散液、離型剤粒子分散液も調製される。つまり、樹脂粒子分散液における粒子の体積平均粒径、分散媒、分散方法、及び粒子の含有量に関しては、着色剤粒子分散液中に分散する着色剤粒子、及び離型剤粒子分散液中に分散する離型剤粒子についても同様である。
【0131】
−第1凝集粒子形成工程−
次に、第1樹脂粒子分散液と、着色剤粒子分散液と、を混合する。
そして、この混合分散液中で、第1樹脂粒子と着色剤粒子とをヘテロ凝集させて、第1樹脂粒子と着色剤粒子とを含む第1凝集粒子を形成する。
【0132】
具体的には、例えば、混合分散液に凝集剤を添加すると共に、混合分散液のpHを酸性(例えばpHが2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後、第1樹脂粒子のガラス転移温度(具体的には、例えば、第1樹脂粒子のガラス転移温度−30℃以上ガラス転移温度−10℃以下)の温度に加熱し、混合分散液に分散された粒子を凝集させて、第1凝集粒子を形成する。
第1凝集粒子形成工程においては、例えば、混合分散液を回転せん断型ホモジナイザーで攪拌下、室温(例えば25℃)で上記凝集剤を添加し、混合分散液のpHを酸性(例えばpHが2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後に、上記加熱を行ってもよい。
【0133】
凝集剤としては、例えば、混合分散液に添加される分散剤として用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩、2価以上の金属錯体が挙げられる。特に、凝集剤として金属錯体を用いた場合には、界面活性剤の使用量が低減され、帯電特性が向上する。
凝集剤の金属イオンと錯体もしくは類似の結合を形成する添加剤を必要に応じて用いてもよい。この添加剤としては、キレート剤が好適に用いられる。
【0134】
無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等の金属塩、及び、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体等が挙げられる。
キレート剤としては、水溶性のキレート剤を用いてもよい。キレート剤としては、例えば、酒石酸、クエン酸、グルコン酸等のオキシカルボン酸、イミノジ酸(IDA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)等が挙げられる。
キレート剤の添加量としては、例えば、第1樹脂粒子100質量部に対して0.01質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.1質量部以上3.0質量部未満がより好ましい。
【0135】
−第2凝集粒子形成工程−
次に、第1凝集粒子が分散された第1凝集粒子分散液を得た後、第2樹脂粒子および離型剤粒子が分散された混合分散液を、混合分散液中の離型剤粒子の濃度を次第に高めながら、第1凝集粒子分散液に順次添加する。
なお、第2樹脂粒子は第1樹脂粒子と同種であってもよいし、異種であってもよい。
【0136】
そして、第1凝集粒子、第2樹脂粒子、及び離型剤粒子が分散された分散液中で、第1凝集粒子の表面に第2樹脂粒子及び離型剤粒子を凝集する。具体的には、例えば、第1凝集粒子形成工程において、第1凝集粒子が目的とする粒径に達したときに、第1凝集粒子分散液に、離型剤粒子の濃度を次第に高めながら、第2樹脂粒子および離型剤粒子が分散された混合分散液を添加し、この分散液に対して、第2樹脂粒子のガラス転移温度以下で加熱を行う。
そして、分散液のpHを、例えば6.5以上8.5以下程度の範囲にすることにより、凝集の進行を停止させる。
【0137】
この工程を経て、第1凝集粒子の表面に第2樹脂粒子及び離型剤粒子が付着した凝集粒子を形成する。つまり、第1凝集粒子の表面に、第2樹脂粒子及び離型剤粒子の凝集物が付着した第2凝集粒子を形成する。このとき、第2樹脂粒子および離型剤粒子が分散された混合分散液を、混合分散液中の離型剤粒子の濃度を次第に高めながら、第1凝集粒子分散液に順次添加しているため、第1凝集粒子の表面には、粒子径方向外側に向かって、離型剤粒子の濃度(存在率)が次第に大きくなって、第2樹脂粒子及び離型剤粒子の凝集物が付着する。
【0138】
ここで、混合分散液の添加方法としては、パワーフィード添加法を利用することがよい。このパワーフィード添加法を利用することで、混合分散液中の離型剤粒子の濃度を次第に高めながら、混合分散液を第1凝集粒子分散液に添加することができる。
【0139】
以下、図を参照しつつ、パワーフィード添加法を利用した混合分散液の添加方法について説明する。
【0140】
図4には、パワーフィード添加法に用いる装置を示している。なお、
図4中、311は、第1凝集粒子分散液を示し、312は、第2樹脂粒子分散液を示し、313は、離型剤粒子分散液を示している。
【0141】
図4に示す装置は、第1凝集粒子が分散されて第1凝集粒子分散液を収容している第1収容槽321と、第2樹脂粒子が分散された第2樹脂粒子分散液を収容している第2収容槽322と、離型剤粒子が分散された離型剤粒子分散液を収容している第3収容槽323と、を有している。
【0142】
第1収容槽321と第2収容槽322とは、第1送液管331で連結されている。第1送液管331の経路途中には、第1送液ポンプ341が介在している。第1送液ポンプ341の駆動により、第2収容槽322に収容された分散液は、第1送液管331を通じて、第1収容槽321に収容された分散液へ送液される。
第1収容槽321には、第1撹拌装置351が配置されている。第1撹拌装置351の駆動により、第2収容槽322に収容された分散液を第1収容槽321に収容された分散液へ送液したとき、第1収容槽321において各分散液が撹拌及び混合される。
【0143】
第2収容槽322と第3収容槽323とは、第2送液管332で連結されている。第2送液管332の経路途中には、第2送液ポンプ342が介在している。第2送液ポンプ342の駆動により、第3収容槽323に収容された分散液は、第2送液管332を通じて、第2収容槽322に収容された分散液へ送液される。
第2収容槽322には、第2撹拌装置352が配置されている。第2撹拌装置352の駆動により、第3収容槽323に収容された分散液を第2収容槽322に収容された分散液へ送液したとき、第2収容槽322において各分散液が撹拌及び混合される。
【0144】
図4に示す装置では、まず、第1収容槽321において、第1凝集粒子形成工程を実施して、第1凝集粒子分散液を作製し、第1収容槽321に第1凝集粒子分散液を収容する。なお、別の槽で、第1凝集粒子形成工程を実施して、第1凝集粒子分散液を作製した後、第1凝集粒子分散液を第1収容槽321に収容してもよい。
【0145】
この状態で、第1送液ポンプ341及び第2送液ポンプ342を駆動する。この駆動により、第2収容槽322に収容された第2樹脂粒子分散液を、第1収容槽321に収容された第1凝集粒子分散液へ送液する。そして、第1撹拌装置351の駆動により、第1収容槽321において各分散液が撹拌及び混合される。
一方、第3収容槽323に収容された離型剤粒子分散液を第2収容槽322に収容された第2樹脂粒子分散液へ送液する。そして、第2撹拌装置352の駆動により、第2収容槽322において各分散液が撹拌及び混合される。
【0146】
このとき、第2収容槽322に収容された第2樹脂粒子分散液には、離型剤粒子分散液が順次送液され、次第に離型剤粒子の濃度が高まってゆく。このため、第2収容槽322には、第2樹脂粒子および離型剤粒子が分散された混合分散液が収容されることになり、この混合分散液が第1収容槽321に収容された第1凝集粒子分散液に送液される。そして、この混合分散液の送液は、混合分散液中の離型剤粒子分散液の濃度が高まりつつ、しかも連続的に行われる。
【0147】
このように、パワーフィード添加法を利用することにより、第1凝集粒子分散液に、離型剤粒子の濃度を次第に高めながら、第2樹脂粒子および離型剤粒子が分散された混合分散液を添加することができる。
そして、パワーフィード添加法において、第2収容槽322および第3収容槽323に収容された各分散液の送液開始時期及び送液速度を調整することにより、トナーの離型剤ドメインの分布特性が調整される。また、パワーフィード添加法において、第2収容槽322および第3収容槽323に収容された各分散液の送液中に、送液速度を調整することによっても、トナーの離型剤ドメインの分布特性が調整される。
【0148】
具体的には、例えば、離型剤ドメインの偏在度Bの分布の最頻値は、第3収容槽323から第2収容槽322に離型剤粒子分散液が送液し終わる時期によって調整される。より具体的には、例えば、第2収容槽322から第1収容槽321への送液が終わる前に、第3収容槽323から第2収容槽322への離型剤粒子分散液の送液が終わると、その時点以上には、第2収容槽322の混合分散液中の離型剤粒子の濃度が上昇しない。これにより、離型剤ドメインの偏在度Bの分布の最頻値は、小さくなる。
【0149】
また、例えば、離型剤ドメインの偏在度Bの分布の歪度は、第2収容槽322および第3収容槽323から各分散液を送液する時期および第2収容槽322から第1収容槽321に分散液を送液する送液速度によって調整される。より具体的には、例えば、第3収容槽323からの離型剤粒子分散液の送液開始時期および第2収容槽322からの分散液の送液開始時期を早め、第2収容槽322からの分散液の送液速度を低下すると、形成される凝集粒子において、粒子のより内側から外側まで離型剤粒子が配置された状態となる。これにより、離型剤ドメインの偏在度Bの分布の歪度は、大きくなる。
【0150】
また、例えば、離型剤ドメインの偏在度Bの分布の尖度は、第3収容槽323からの離型剤粒子分散液の送液速度を送液中に変化させることによって調整される。より具体的には、例えば、第3収容槽323から離型剤粒子分散液を送液中に、その送液速度のみを速くすると、その時点から第2収容槽322中の分散液の離型剤粒子の濃度が高まる。このため、形成される凝集粒子において、粒子の径方向において、ある領域(ある深さ部分)に離型剤粒子が多く配置された状態となる。これにより、離型剤ドメインの偏在度Bの分布の尖度は、大きくなる。
【0151】
なお、以上説明したパワーフィード添加法は、上記手法に限定されるわけではない。例えば、1)別途、第2樹脂粒子分散液を収容した収容槽と、第2樹脂粒子及び離型剤粒子分散液が分散された混合分散液を収容槽とを設け、送液速度を変えつつ各収容槽から各分散液を第1収容槽321へ送液する方法、別途、離型剤粒子分散液を収容した収容槽と、第2樹脂粒子及び離型剤粒子分散液が分散された混合分散液を収容した収容槽とを設け、送液速度を変えつつ各収容槽から各分散液を第1収容槽321へ送液する方法など、種々の方法を採用してもよい。
【0152】
以上により、第1凝集粒子の表面に第2樹脂粒子及び離型剤粒子が付着するようにして凝集した第2凝集粒子が得られる。
【0153】
−融合・合一工程−
次に、第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して、例えば、第1及び第2樹脂粒子のガラス転移温度以上(例えば第1及び第2樹脂粒子のガラス転移温度より10から30℃高い温度以上)に加熱して、第2凝集粒子を融合・合一し、トナー粒子を形成する。
【0154】
以上の工程を経て、トナー粒子が得られる。
なお、第2凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を得た後、当該第2凝集粒子分散液と、結着樹脂となる第3樹脂粒子が分散された第3樹脂粒子分散液と、をさらに混合し、第2凝集粒子の表面にさらに第3樹脂粒子を付着するように凝集して、第3凝集粒子を形成する工程と、第3凝集粒子が分散された第3凝集粒子分散液に対して加熱をし、第2凝集粒子を融合・合一して、コア/シェル構造のトナー粒子を形成する工程と、を経て、トナー粒子を製造してもよい。
この操作により、得られるトナー粒子(トナー)において、離型剤ドメインの偏在度Bの分布の最頻値は1.00未満となる。
【0155】
ここで、融合・合一工程終了後は、溶液中に形成されたトナー粒子を、公知の洗浄工程、固液分離工程、乾燥工程を経て乾燥した状態のトナー粒子を得る。
洗浄工程は、帯電性の点から充分にイオン交換水による置換洗浄を施すことがよい。また、固液分離工程は、特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等を施すことがよい。また、乾燥工程も特に方法に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、フラッシュジェット乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等を施すことがよい。
【0156】
そして、トナーは、例えば、得られた乾燥状態のトナー粒子に、外添剤を添加し、混合することにより製造される。混合は、例えばVブレンダー、ヘンシェルミキサー、レディーゲミキサー等によって行うことがよい。更に、必要に応じて、振動師分機、風力師分機等を使ってトナーの粗大粒子を取り除いてもよい。
【0157】
=キャリア=
キャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアが挙げられる。キャリアとしては、例えば、磁性粉からなる芯材の表面に被覆樹脂を被覆した被覆キャリア;マトリックス樹脂中に磁性粉が分散・配合された磁性粉分散型キャリア;多孔質の磁性粉に樹脂を含浸させた樹脂含浸型キャリア;等が挙げられる。
なお、磁性粉分散型キャリア、及び樹脂含浸型キャリアは、当該キャリアの構成粒子を芯材とし、これに被覆樹脂により被覆したキャリアであってもよい。
【0158】
磁性粉としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物等が挙げられる。
【0159】
被覆樹脂、及びマトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、オルガノシロキサン結合を含んで構成されるストレートシリコーン樹脂又はその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
なお、被覆樹脂、及びマトリックス樹脂には、導電性粒子等、その他添加剤を含ませてもよい。
導電性粒子としては、金、銀、銅等の金属、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等の粒子が挙げられる。
【0160】
ここで、芯材の表面に被覆樹脂を被覆するには、被覆樹脂、及び必要に応じて各種添加剤を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法等が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する被覆樹脂、塗布適性等を勘案して選択すればよい。
具体的な樹脂被覆方法としては、芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被覆層形成用溶液を芯材表面に噴霧するスプレー法、芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成用溶液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法等が挙げられる。
【0161】
=トナーとキャリアとの混合比=
現像剤における、トナーとキャリアとの混合比(質量比)は、トナー:キャリア=1:100乃至30:100が好ましく、3:100乃至20:100がより好ましい。
【実施例】
【0162】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本実施形態をより具体的に詳細に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、「部」とは、特に断りがない限り、「質量部」を意味する。
【0163】
<樹脂粒子分散液の調製>
〔樹脂粒子分散液(1)の調製〕
・テレフタル酸 :30モル部
・フマル酸 :70モル部
・ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物 :5モル部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物 :95モル部
攪拌装置、窒素導入管、温度センサ、及び精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに、上記の材料を仕込み、1時間を要して温度を210℃まで上げ、上記材料100部に対してチタンテトラエトキシド1部を投入した。生成する水を留去しながら0.5時間を要して230℃まで温度を上げ、該温度で1時間脱水縮合反応を継続した後、反応物を冷却した。こうして、重量平均分子量18,500、酸価14mgKOH/g、ガラス転移温度59℃のポリエステル樹脂(1)を合成した。
【0164】
温度調節手段及び窒素置換手段を備えた容器に、酢酸エチル40部及び2−ブタノール25部を投入し、混合溶剤とした後、ポリエステル樹脂(1)100部を徐々に投入し溶解させ、ここに、10質量%アンモニア水溶液(樹脂の酸価に対してモル比で3倍量相当量)を入れて30分間攪拌した。
次いで、容器内を乾燥窒素で置換し、温度を40℃に保持して、混合液を攪拌しながらイオン交換水400部を2部/分の速度で滴下し、乳化を行った。滴下終了後、乳化液を室温(20℃乃至25℃)に戻し、攪拌しつつ乾燥窒素により48時間バブリングを行うことにより、酢酸エチル及び2−ブタノールを1,000ppm以下まで低減させ、体積平均粒径200nmの樹脂粒子が分散した樹脂粒子分散液を得た。該樹脂粒子分散液にイオン交換水を加え、固形分量を20質量%に調整して、樹脂粒子分散液(1)とした。
【0165】
<着色剤粒子分散液の調製>
〔着色剤粒子分散液(1)の調製〕
・シアン顔料 C.I.Pigment Blue 15:3(銅フタロシアニン DIC社製、商品名:FASTOGEN BLUE LA5380) :70部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK) :5部
・イオン交換水 :200部
上記の材料を混合し、ホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックスT50)を用いて10分間分散した。分散液中の固形分量が20質量%となるようイオン交換水を加え、体積平均粒径190nmの着色剤粒子が分散された着色剤粒子分散液(1)を得た。
【0166】
<離型剤粒子分散液の調製>
〔離型剤粒子分散液(1)の調製〕
・パラフィンワックス(日本精蝋(株)製 HNP−9) 100部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK) 1部
・イオン交換水 350部
上記材料を混合して100℃に加熱し、ホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザー(ゴーリン社製)で分散処理し、体積平均粒径200nmの離型剤粒子が分散された離型剤粒子分散液(1)(固形分量20質量%)を得た。
【0167】
<実施例1>
〔トナー粒子の調製〕
丸型ステンレス製フラスコと容器AとをチューブポンプAで接続し、チューブポンプAの駆動により容器Aに収容した収容液をフラスコへ送液し、容器Aと容器BとをチューブポンプBで接続し、チューブポンプBの駆動により容器Bに収容した収容液を容器Aへ送液する装置(
図4参照)を準備した。そして、この装置を用いて、以下の操作を実施した。
【0168】
・樹脂粒子分散液(1) :500部
・着色剤粒子分散液(1) :40部
・アニオン性界面活性剤(TaycaPower) :2部
上記材料を丸型ステンレス製フラスコに入れ、0.1Nの硝酸を添加してpHを3.5に調整した後、ポリ塩化アルミニウム濃度が10質量%の硝酸水溶液30部を添加した。続いて、ホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックスT50)を用いて30℃において分散した後、加熱用オイルバス中で1℃/30分のペースで温度を上げながら、凝集粒子の粒径を成長させた。
一方、ポリエステル製ボトルの容器Aに樹脂粒子分散液(1)150部を入れ、同じく容器Bに離型剤粒子分散液(1)を25部入れた。次に、チューブポンプAの送液速度を0.70部/1分、チューブポンプBの送液速度を0.14部/1分に設定し、凝集粒子形成中の丸型ステンレス製フラスコ内の温度が37.0℃に到達した時点からチューブポンプA及びBを駆動させ、各分散液の送液を開始した。これにより、離型剤粒子の濃度を次第に高めながら、樹脂粒子および離型剤粒子が分散された混合分散液を容器Aから凝集粒子形成中の丸型ステンレス製フラスコへ送液した。
そして、フラスコへの各分散液の送液が完了し、フラスコ内の温度が48℃になった時点から30分保持し、第2凝集粒子を形成させた。
【0169】
その後、樹脂粒子分散液(1)50部を緩やかに追加して1時間保持し、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを8.5に調整した後、攪拌を継続しながら85℃まで加熱し、5時間保持した。その後、20℃/分の速度で20℃まで冷却し、濾過し、イオン交換水で充分に洗浄し、乾燥させることにより、体積平均粒径6.0μmのトナー粒子(1)を得た。
【0170】
〔トナーの調製〕
トナー粒子(1)100部と、ジメチルシリコーンオイル処理シリカ粒子(日本アエロジル社製RY200)0.7部とをヘンシェルミキサー(周速30m/秒、3分)を用いて混合し、トナー(1)を得た。
【0171】
〔現像剤の調製〕
・フェライト粒子(平均粒径50μm) 100部
・トルエン 14部
・スチレン/メチルメタクリレート共重合体(共重合比15/85) 3部
・カーボンブラック 0.2部
フェライト粒子を除く上記成分をサンドミルにて分散して分散液を調製し、この分散液をフェライト粒子とともに真空脱気型ニーダに入れ、攪拌しながら減圧し乾燥させることによりキャリアを得た。
そして、上記キャリア100部に対して、トナー(1)8部を混合し、現像剤(1)を得た。
【0172】
<実施例2>
トナー粒子(1)の作製において、チューブポンプAの送液速度を0.55部/1分、チューブポンプBの送液速度を0.11部/1分に設定し、フラスコ内の温度が33.0℃に到達した時点から、チューブポンプA及びBを駆動させた以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子(2)を得た。得られたトナー粒子(2)は体積平均粒径5.9μmであった。そして、トナー粒子(2)を用いて、実施例1と同様にトナー(2)及び現像剤(2)を得た。
【0173】
<実施例3>
トナー粒子(1)の作製において、チューブポンプAの送液速度を0.80部/1分、チューブポンプBの送液速度を0.16部/1分に設定し、フラスコ内の温度が35.0℃に到達した時点から、チューブポンプA及びBを駆動させた以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子(3)を得た。得られたトナー粒子(3))は体積平均粒径5.3μmであった。そして、トナー粒子(3)を用いて、実施例1と同様にトナー(3)及び現像剤(3)を得た。
【0174】
<比較例1>
トナー粒子(1)の作製において、チューブポンプAの送液速度を0.58部/1分、チューブポンプBの送液速度を0.11部/1分に設定し、フラスコ内の温度が39.0℃に到達した時点から、チューブポンプA及びBを駆動させた以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子(4)を得た。得られたトナー粒子(4)は体積平均粒径5.6μmであった。そして、トナー粒子(4)を用いて、実施例1と同様にトナー(4)及び現像剤(4)を得た。
【0175】
<実施例2>
トナー粒子(1)の作製において、チューブポンプAの送液速度を0.84部/1分、チューブポンプBの送液速度を0.17部/1分に設定し、フラスコ内の温度が41.0℃に到達した時点から、チューブポンプA及びBを駆動させた以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子(5)を得た。得られたトナー粒子(5)は体積平均粒径5.7μmであった。そして、トナー粒子(5)を用いて、実施例1と同様にトナー(5)及び現像剤(5)を得た。
【0176】
<比較例3>
トナー粒子(1)の作製において、チューブポンプAの送液速度を0.55部/1分、チューブポンプBの送液速度を0.11部/1分に設定し、フラスコ内の温度が30.0℃に到達した時点から、チューブポンプA及びBを駆動させた以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子(C1)を得た。得られたトナー粒子(C1)は体積平均粒径5.2μmであった。そして、トナー粒子(C1)を用いて、実施例1と同様にトナー(C1)及び現像剤(C1)を得た。
【0177】
<比較例4>
トナー粒子(1)の作製において、チューブポンプAの送液速度を0.84部/1分、チューブポンプBの送液速度を0.17部/1分に設定し、フラスコ内の温度が33.0℃に到達した時点から、チューブポンプA及びBを駆動させた以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子(C2)を得た。得られたトナー粒子(C2)は体積平均粒径6.0μmであった。そして、トナー粒子(C2)を用いて、実施例1と同様にトナー(C2)及び現像剤(C2)を得た。
【0178】
<比較例5>
トナー粒子(1)の作製において、チューブポンプAの送液速度を0.51部/1分、チューブポンプBの送液速度を0.10部/1分に設定し、フラスコ内の温度が31.0℃に到達した時点から、チューブポンプA及びBを駆動させた以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子(C3)を得た。得られたトナー粒子(C3)は体積平均粒径5.9μmであった。そして、トナー粒子(C3)を用いて、実施例1と同様にトナー(C3)及び現像剤(C3)を得た。
【0179】
<比較例6>
トナー粒子(1)の作製において、チューブポンプAの送液速度を0.90部/1分、チューブポンプBの送液速度を0.19部/1分に設定し、フラスコ内の温度が35.0℃に到達した時点から、チューブポンプA及びBを駆動させた以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子(C4)を得た。得られたトナー粒子(C4)は体積平均粒径6.1μmであった。そして、トナー粒子(C4)を用いて、実施例1と同様にトナー(C4)及び現像剤(C4)を得た。
【0180】
<比較例7>
トナー粒子(1)の作製において、チューブポンプAの送液速度を0.50部/1分、チューブポンプBの送液速度を0.10部/1分に設定し、フラスコ内の温度が38.0℃に到達した時点から、チューブポンプA及びBを駆動させた以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子(C5)を得た。得られたトナー粒子(C5)は体積平均粒径5.4μmであった。そして、トナー粒子(C5)を用いて、実施例1と同様にトナー(C5)及び現像剤(C5)を得た。
【0181】
<比較例8>
トナー粒子(1)の作製において、チューブポンプAの送液速度を0.89部/1分、チューブポンプBの送液速度を0.19部/1分に設定し、フラスコ内の温度が42.0℃に到達した時点から、チューブポンプA及びBを駆動させた以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子(C6)を得た。得られたトナー粒子(C6)は体積平均粒径5.5μmであった。そして、トナー粒子(C6)を用いて、実施例1と同様にトナー(C6)及び現像剤(C6)を得た。
【0182】
<実施例4>
トナー粒子(1)の作製において、チューブポンプAの送液速度を0.75部/1分、チューブポンプBの送液速度を0.11部/1分に設定し、フラスコ内の温度が37.0℃に到達した時点から、チューブポンプA及びBを駆動させ、フラスコ内の温度が40℃に到達した時点で、チューブポンプBの送液速度を0.19部/1分に変更した以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子(6)を得た。得られたトナー粒子(6)は体積平均粒径5.9μmであった。そして、トナー粒子(6)を用いて、実施例1と同様にトナー(6)及び現像剤(6)を得た。
【0183】
<実施例5>
トナー粒子(1)の作製において、チューブポンプAの送液速度を0.75部/1分、チューブポンプBの送液速度を0.14部/1分に設定し、フラスコ内の温度が35.0℃に到達した時点から、チューブポンプA及びBを駆動させ、フラスコ内の温度が39℃に到達した時点で、チューブポンプBの送液速度を0.10部/1分に変更した以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子(7)を得た。得られたトナー粒子(7)は体積平均粒径5.9μmであった。そして、トナー粒子(7)を用いて、実施例1と同様にトナー(7)及び現像剤(7)を得た。
【0184】
<実施例6>
トナー粒子(1)の作製において、チューブポンプAの送液速度を0.75部/1分、チューブポンプBの送液速度を0.11部/1分に設定し、フラスコ内の温度が35℃に到達した時点から、チューブポンプA及びBを駆動させ、フラスコ内の温度が40℃に到達した時点で、チューブポンプBの送液速度を0.22部/1分に変更した以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子(R1)を得た。得られたトナー粒子(R1)は体積平均粒径5.8μmであった。そして、トナー粒子(R1)を用いて、実施例1と同様にトナー(R1)及び現像剤(R1)を得た。
【0185】
<実施例7>
トナー粒子(1)の作製において、チューブポンプAの送液速度を0.75部/1分、チューブポンプBの送液速度を0.14部/1分に設定し、フラスコ内の温度が35℃に到達した時点から、チューブポンプA及びBを駆動させ、フラスコ内の温度が39℃に到達した時点で、チューブポンプBの送液速度を0.08部/1分に変更した以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子(R2)を得た。得られたトナー粒子(R2)は体積平均粒径5.6μmであった。そして、トナー粒子(R2)を用いて、実施例1と同様にトナー(R2)及び現像剤(R2)を得た。
【0186】
<各種測定>
各例で得られた現像剤のトナーについて、離型剤ドメインの偏在度Bの分布の最頻値、歪度、及び尖度を既述の方法に従って測定した。また、トナー粒子の形状係数についても既述の方法に従って測定した。その結果を表1に示す。
【0187】
<評価>
各例で得られた現像剤を、評価装置「DocuCentreIV C3370(富士ゼロックス社製)」の現像装置に充填した。この評価装置は、電磁誘導加熱方式の定着装置を搭載している。また、評価装置は、定着装置の定着ベルト幅を460mmとし、加圧ロールの幅(軸方向長さ)を480mmとして、電磁誘導加熱方式の定着装置を記録紙の搬送方向に交差する方向(加圧ロールの軸方向に沿った方向)にずらし、ニップ部における記録紙の通過位置を変更可能に改造した。また、この定着装置を、外付けの駆動用モータで駆動し、温度制御ができるように改造した。そして、この評価装置を用いて、次の評価を行った。結果を表1に示す。
【0188】
(画像の光沢ムラ評価)
画像の光沢ムラ評価について、次のように評価した。上記評価装置にて、A3記録紙(OKトップコート+紙、王子製紙(株)社製)上にベタの未定着画像を出力した。その後、定着装置を駆動し、温度を190度になるよう調節した後、未定着画像を定着した。そして、定着画像の端部から24点、一定の間隔で、グロスメーター(BYK マイクロトリグロス光沢計(20+60+85゜)、ガードナー社製)を用いて、60度グロスを測定した。その24点での光沢度の差(最大値−最小値)から光沢ムラの評価を行った。評価基準は、以下の通りである。
A(◎):光沢度の差が5%未満でかつ光沢測定24点の標準偏差が2.5以下
B(○):光沢度の差が5%未満
C(△):光沢度の差が5%以上10%未満
D(×):光沢度の差が10%以上
【0189】
(片面印刷時のオフセット評価)
片面印刷時のオフセット評価について、次のように評価した。PREMIER 80 A4 WHITE PAPEER(ゼロックスコーポレーション製坪量80g/m
2)の上端1cmの位置に画像濃度100%、大きさ10×10cmの未定着画像を出力した。その後の未定着画像の定着において、定着温度170度から5℃刻みで上げていき、220度まで上げた。その時のオフセットが発生した前の温度を記録した。。評価基準は、以下の通りである。
A(◎):オフセット未発生
B(○):205℃以上220℃以下
C(△):185℃以上205℃未満
D(×):185℃未満
【0190】
(両面印刷時のオフセット評価)
両面印刷時のオフセット評価について、次のように評価した。PREMIER 80 A4 WHITE PAPEER(ゼロックスコーポレーション製坪量80g/m
2)の上端1cmの位置に画像濃度100%、大きさ10×10cmの未定着画像を両面に形成し、さらに表面側の未定着画像は定着し、裏面側は未定着画像の状態のサンプルを作成した。その後の裏面側の未定着画像の定着において、温度170度から5℃刻みで上げていき、220度まで上げた。その時のオフセットが発生した前の温度を記録した。評価基準は、以下の通りである。
A(◎):オフセット未発生
B(○):205℃以上220℃以下
C(△):185℃以上205℃未満
D(×):185℃未満
【0191】
【表1】
【0192】
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、片面印刷時及び両面印刷時のオフセットの発生が共に抑制されていることがわかる。また、本実施例では、画像の光沢性も良好であることもわかる。
特に、離型剤ドメインの偏在度Bの分布の尖度が−0.20以上+1.50以下の範囲にある実施例4〜5は、実施例6〜7に比べ、片面印刷時及び両面印刷時のオフセットの発生が共に抑制されていることがわかる。