特許第6589408号(P6589408)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6589408
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】定着装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20191007BHJP
【FI】
   G03G15/20 515
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-124668(P2015-124668)
(22)【出願日】2015年6月22日
(65)【公開番号】特開2017-9786(P2017-9786A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2018年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山田 深雪
(72)【発明者】
【氏名】安川 裕之
(72)【発明者】
【氏名】寿藤 進
【審査官】 山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−019947(JP,A)
【文献】 特開2009−109952(JP,A)
【文献】 特開2009−175381(JP,A)
【文献】 特開2012−013864(JP,A)
【文献】 特開2012−027281(JP,A)
【文献】 特開2002−268424(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0199100(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真方式の画像形成装置に備えられ、互いに圧接されて定着ニップ部が形成されるよう配設された加熱部材と加圧ローラとを備えてなり、トナー像が担持された記録材を前記定着ニップ部に通過させながら加熱および加圧する定着処理により、前記トナー像を前記記録材上に定着する定着装置であって、
前記加圧ローラが、芯金と、前記芯金の上に形成される弾性体層とを有し、
前記加圧ローラの弾性体層が、少なくとも、軸方向の中央から端部に向かって形成された、中央部領域、中間領域および端部領域を有し、中央部領域の平均の熱伝導率をλ(c)、中間領域の平均の熱伝導率をλ(m)、端部領域の平均の熱伝導率をλ(e)としたときに、λ(c)<λ(m)<λ(e)を満たし、
前記加圧ローラにおける前記記録材が接触される通紙域と当該記録材が接触されない非通紙域との境界が、当該加圧ローラにおける前記中間領域に係る表面上に存在することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記中間領域が、任意の区域の平均の熱伝導率が略同等である領域からなることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記中間領域が、前記中央部領域の端部から前記端部領域の軸方向内側端に向かうに従って、周方向に区画した区域の平均の熱伝導率が連続的に高くなるものであることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項4】
前記弾性体層を形成する複数の領域における隣接する2つの領域の平均の熱伝導率の変化幅が、加圧ローラの端部に向かうに従って大きくなることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の定着装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置に備えられる定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置においては、像担持体(感光体)上に形成された静電潜像をトナーによって現像し、形成されたトナー像を、中間転写ベルトなどの中間転写体を介して、あるいは直接的に紙などの記録材に転写し、トナー像が転写された記録材を定着装置によって定着処理することによって可視画像を形成する工程が行われる。
定着処理は、定着装置を構成する加熱部材とこれに圧接される加圧ローラとの間に形成される定着ニップ部に、トナー像が担持された記録材を通過させて熱および圧力の作用により当該トナー像を記録材に定着させることによって行われる。
【0003】
このような画像形成装置において印字物を連続して出力する際には、加圧ローラにおいて記録材が接触される通紙域は記録材に不可避的に熱を奪われるので、定着に要する表面温度(以下、「定着温度」ともいう。)を維持するために加圧ローラの昇温がなされる。然るに、加圧ローラにおける記録材が接触されない非通紙域である端部領域においては記録材に熱を奪われないので過度に昇温されてしまい、その結果、加圧ローラの軸方向における温度分布の均一性が損なわれる傾向があり、これにより、形成される可視画像において光沢のバラつきが生じてしまう、という問題があった。このような問題は、印字物が多量であればあるほど顕著に生じる。
【0004】
このような問題を解決するために、例えば、加圧ローラの端部領域の熱伝導率が中央部領域よりも高くなる定着装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、このような定着装置は、定着処理において高熱伝導率の端部領域と低熱伝導率の中央部領域との境界付近において定着温度の変化が大きく生じ易く、形成される可視画像における光沢のバラつきを十分に解消することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−258651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、その目的は、加圧ローラの軸方向における温度分布の均一性が高く、形成される可視画像における光沢のバラつきが抑制される定着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の定着装置は、電子写真方式の画像形成装置に備えられ、互いに圧接されて定着ニップ部が形成されるよう配設された加熱部材と加圧ローラとを備えてなり、トナー像が担持された記録材を前記定着ニップ部に通過させながら加熱および加圧する定着処理により、前記トナー像を前記記録材上に定着する定着装置であって、
前記加圧ローラが、芯金と、前記芯金の上に形成される弾性体層とを有し、
前記加圧ローラの弾性体層が、少なくとも、軸方向の中央から端部に向かって形成された、中央部領域、中間領域および端部領域を有し、中央部領域の平均の熱伝導率をλ(c)、中間領域の平均の熱伝導率をλ(m)、端部領域の平均の熱伝導率をλ(e)としたときに、λ(c)<λ(m)<λ(e)を満たし、
前記加圧ローラにおける前記記録材が接触される通紙域と当該記録材が接触されない非通紙域との境界が、当該加圧ローラにおける前記中間領域に係る表面上に存在することを特徴とする。
【0009】
本発明の定着装置は、前記中間領域が、任意の区域の平均の熱伝導率が略同等である領域からなるものとして構成することができる。
【0010】
本発明の定着装置は、前記中間領域が、前記中央部領域の端部から前記端部領域の軸方向内側端に向かうに従って、周方向に区画した区域の平均の熱伝導率が連続的に高くなるものとして構成することができる。
【0011】
本発明の定着装置においては、前記弾性体層を形成する複数の領域における隣接する2つの領域の平均の熱伝導率の変化幅が、加圧ローラの端部に向かうに従って大きくなることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の定着装置によれば、加圧ローラにおける記録材が接触される通紙域と当該記録材が接触されない非通紙域との境界が、当該加圧ローラにおける中間領域に係る表面上に存在するので、加圧ローラの軸方向における温度分布の均一性が高く、従って、形成される可視画像における光沢のバラつきが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の定着装置を備える画像形成装置の構成の一例を示す説明用断面図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係る定着装置の加圧ローラの構成を示す説明用正面図である。
図3】本発明の定着装置の構成の一例を示す説明用断面図である。
図4】本発明の第1の実施の形態に係る定着装置の加圧ローラの変形例を示す説明用正面図である。
図5】本発明の第2の実施の形態に係る定着装置の加圧ローラの構成を示す説明用正面図である。
図6】本発明の第2の実施の形態に係る定着装置の加圧ローラの変形例を示す説明用正面図である。
図7】比較例に係る定着装置の加圧ローラの構成を示す説明用正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0015】
〔第1の実施の形態〕
図1は、本発明の定着装置を備える画像形成装置の構成の一例を示す説明用断面図であり、図2は、本発明の第1の実施の形態に係る定着装置を構成する加圧ローラの構成を示す説明用正面図であり、図3は、本発明の定着装置の構成の一例を示す説明用断面図である。
この画像形成装置は、それぞれイエロー、マゼンタ、シアンまたは黒色のトナー像を形成するトナー像形成部20Y,20M,20C,20Bkと、これらのトナー像形成部20Y,20M,20C,20Bkにおいて形成されたトナー像を記録材P上に転写する中間転写部10と、記録材Pに対して加熱しながら加圧してトナー像を定着させてトナー層を得る定着処理を行う定着装置30とを有する。
【0016】
定着装置30は、電子写真方式の画像形成装置に備えられ、互いに圧接されて定着ニップ部Nが形成されるよう配設された加熱ローラ31よりなる加熱部材と加圧ローラ32とを備えてなり、トナー像が担持された記録材Pを定着ニップ部Nに通過させながら加熱および加圧する定着処理により、トナー像を記録材P上に定着するものである。
【0017】
加熱ローラ31は、一般に、アルミニウムなどよりなる中空の金属ローラよりなる芯金の内部に、ハロゲンランプなどよりなる熱源が配設されてなり、当該熱源によって芯金が加熱され、加熱ローラ31の外周面が所定の定着温度に維持されるように当該熱源ヘの通電が制御されて温度調節されるものである。
フルカラー画像の形成を行う画像形成装置の定着装置として用いられる場合は、加熱ローラとして、芯金を高い熱容量を有し、また、その芯金の外周面上に、トナー像を均質に溶融させるためのゴム弾性層が形成されたものを用いることが好ましい。
【0018】
〔加圧ローラ〕
加圧ローラ32は、加熱ローラ31に従動して回転されるものであって、図3に示されるように、芯金32aと、当該芯金32aの上に形成される弾性体層32bとを有し、必要に応じて、当該弾性体層32bの表面にさらに離型層32cが設けられる。
【0019】
芯金32aは、例えば鉄、アルミニウムなどよりなる中空の金属ローラよりなるものである。
【0020】
加圧ローラ32は、芯金32aとして中空の金属ローラを用いて構成した場合に、その内部に、加熱ローラ31と同様にハロゲンランプなどよりなる熱源を配設して当該熱源によって芯金32aを加熱し、加圧ローラ32の外周面が所定の定着温度に維持されるように当該熱源ヘの通電が制御されて温度調節されるものとして構成してもよい。
【0021】
弾性体層32bは、例えばシリコーンゴム、フッ素ゴムなどの耐熱性の高い弾性材料からなり、熱伝導率の調整ために熱伝導物質が添加されている。
熱伝導物質としては、カーボンブラック、ジルコニア、酸化チタン、アルミナ、スチール、鉄、窒化アルミ、窒化ホウ素などが挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
弾性体層32bの厚みは、例えば1〜20mmとすることができる。
【0022】
離型層32cとしては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などのフッ素樹脂などよりなるチューブを用いることが好ましい。
離型層32cの厚みは、例えば20〜100μmとすることができる。
【0023】
本発明においては、加圧ローラ32の弾性体層32bが、少なくとも、軸方向の中央から端部に向かって形成された、中央部領域1、中間領域2および端部領域3を有し、中央部領域1の平均の熱伝導率をλ(c)、中間領域2の平均の熱伝導率をλ(m)、端部領域3の平均の熱伝導率をλ(e)としたときに、λ(c)<λ(m)<λ(e)を満足する。
【0024】
そして、この例の加圧ローラ32においては、当該加圧ローラ32における記録材Pが接触される通紙域7と記録材Pが接触されない非通紙域9との境界(以下、「通紙境界」ともいう。)Bが、当該加圧ローラ32における中間領域2に係る表面上に存在することを特徴とする。
【0025】
この例の加圧ローラ32の中間領域2は、当該中間領域2内の任意の区域の平均の熱伝導率が略同等のものとされている。
【0026】
加圧ローラ32の弾性体層32bの熱伝導率は、すべての領域の任意の区域の平均の熱伝導率が0.1〜5.0W/m-1・K-1の範囲であることが好ましく、定着ニップ部を形成するための柔軟性を確実に得る観点から、特に中央部領域1および中間領域2の平均の熱伝導率が0.1〜3.0W/m-1・K-1の範囲であることがより好ましい。
この例の加圧ローラ32の各領域の平均の熱伝導率の一例を示すと、中央部領域1の平均の熱伝導率λ(c)が0.2W/m-1・K-1、中間領域2の平均の熱伝導率λ(m)が0.5W/m-1・K-1、端部領域3の平均の熱伝導率λ(e)が0.9W/m-1・K-1である。
【0027】
加圧ローラ32の弾性体層32bにおける中央部領域1、中間領域2および端部領域3の熱伝導率は、当該各領域に含有させる熱伝導物質の含有量を調整することによって、制御することができる。
【0028】
このような加圧ローラ32においては、当該加圧ローラ32の弾性体層32bを形成する複数の領域における隣接する2つの領域の平均の熱伝導率の変化幅が、加圧ローラ32の端部に向かうに従って大きくなることが好ましい。具体的には、この例の加圧ローラ32においては、中央部領域1の平均の熱伝導率をλ(c)、中間領域2の平均の熱伝導率をλ(m)、端部領域3の平均の熱伝導率をλ(e)としたときに、(λ(m)−λ(c))<(λ(e)−λ(m))を満たす。
このように構成されることによって、定着処理時に端部領域3からの熱の発散が十分に得られ、加圧ローラ32の軸方向における温度分布の均一性を確実に高くすることができる。
【0029】
加圧ローラ32においては、定着処理時の通紙域7の中央の温度T1と端部の温度T2との差(T2−T1)が、5℃以内とされることが好ましい。
【0030】
また、加圧ローラ32においては、定着処理時の通紙域7における温度均一長率が、85%以上であることが好ましい。
ここに、温度均一長率とは、任意の2点の温度差が3℃以内となる最大の軸方向長さ(温度均一長)の通紙域7の全体の軸方向長さに対する割合をいう。
【0031】
この例の加圧ローラ32の中間領域2の軸方向の長さは、例えば5〜42.5mmとすることができる。
【0032】
加圧ローラ32は、公知の種々の方法によって製造することができる。
【0033】
以上のような定着装置によれば、加圧ローラ32における通紙境界Bが、当該加圧ローラ32における中間領域2に係る表面上に存在するので、加圧ローラ32の軸方向における温度分布の均一性が高く、従って、多量の印字物を連続して出力した場合にも、形成される可視画像における光沢のバラつきが抑制される。
これは、以下の理由によるものと考えられる。すなわち、加圧ローラ32の端部領域3においては記録材Pと接触しなくても良好に熱を発散することができ、従って、印字物を連続して出力した場合であっても端部領域3の著しい温度上昇が抑制され、かつ、通紙境界Bが中間領域2に存在するので、当該通紙境界B付近の定着温度の変化の度合いを小さく抑制することができ、その結果、加圧ローラ32の軸方向における温度分布の均一性を高いものとすることができる。
【0034】
以下、画像形成装置における定着装置30以外の構成要件を説明する。
【0035】
トナー像形成部20Yにおいてはイエローのトナー像形成が行われ、トナー像形成部20Mにおいてはマゼンタ色のトナー像形成が行われ、トナー像形成部20Cにおいてはシアン色のトナー像形成が行われ、トナー像形成部20Bkにおいては黒色のトナー像形成が行われる。
【0036】
トナー像形成部20Y,20M,20C,20Bkは、像担持体であるドラム状の感光体11Y,11M,11C,11Bkと、当該感光体11Y,11M,11C,11Bkの表面に一様な電位を与える帯電手段23Y,23M,23C,23Bkと、一様に帯電された感光体11Y,11M,11C,11Bk上に所望の形状の静電潜像を形成する露光手段22Y,22M,22C,22Bkと、有彩色トナーを感光体11Y,11M,11C,11Bk上に搬送して静電潜像を顕像化する現像手段21Y,21M,21C,21Bkと、一次転写後に感光体11Y,11M,11C,11Bk上に残留した残留トナーを回収するクリーニング手段25Y,25M,25C,25Bkとを備えるものである。
【0037】
中間転写部10は、中間転写ベルト16と、トナー像形成部20Y,20M,20C,20Bkによって形成されたトナー像を中間転写ベルト16に転写するための一次転写ローラ13Y,13M,13C,13Bkと、一次転写ローラ13Y,13M,13C,13Bkによって中間転写ベルト16上に転写されたトナー像を記録材P上に転写する二次転写ローラ13Aと、中間転写ベルト16上に残留した残留トナーを回収するクリーニング手段12とを有する。
【0038】
中間転写ベルト16は、複数の支持ローラ16a〜16dにより張架され、回動可能に支持された無端ベルト状のものである。
【0039】
以上のような画像形成装置においては、まず、トナー像形成部20Y,20M,20C,20Bkにおいて、感光体11Y,11M,11C,11Bk上に帯電手段23Y,23M,23C,23Bkにより帯電され、露光手段23Y,23M,23C,23Bkにより露光されることにより静電潜像が形成され、当該静電潜像が現像手段21Y,21M,21C,21Bkにおいてトナーによって現像されることにより各色のトナー像が形成され、一次転写ローラ13Y,13M,13C,13Bkにより中間転写ベルト16上に各色のトナー像が順次に転写され、中間転写ベルト16上において重ね合わされてカラートナー像が形成される。一方、給紙カセット41内に収容された記録材Pが、給紙搬送手段42により給紙され、複数の給紙ローラ44a,44b,44c,44dおよびレジストローラ46によって搬送され、二次転写ローラ13Aにおいて当該記録材P上に中間転写ベルト16上のカラートナー像が一括して転写される。
その後、記録材P上に転写されたカラートナー像が定着装置30の定着ニップ部Nにおいて加圧および加熱により定着されることにより、可視画像が出力される。
【0040】
各色のトナー像を中間転写ベルト16に転写させた後の感光体11Y,11M,11C,11Bkは、クリーニング手段25Y,25M,25C,25Bkにより当該感光体11Y,11M,11C,11Bkに残留したトナーを除去した後に、次の各色のトナー像の形成に供される。
一方、二次転写ローラ13Aにより記録材P上に各色のトナー像を転写した後の中間転写ベルト16は、クリーニング手段12により当該中間転写ベルト16上に残留したトナーを除去した後に、次の各色のトナー像の中間転写に供される。
【0041】
以上、第1の実施の形態に係る定着装置30について説明したが、この定着装置30は、種々の変更を加えることが可能である。
例えば、加圧ローラは、通紙境界Bが、当該加圧ローラにおける中間領域と中央部領域との境界に係る表面上以外であればどこに存在するよう構成されていてもよく、図4に示されるように、通紙境界Bが当該加圧ローラ32Aにおける中間領域2’と端部領域3’との境界に係る表面上に一致して存在するよう構成されていてもよい。なお、図4においては、図2の加圧ローラと同様の構成を有するものを同じ符号で示す。
この例の加圧ローラ32Aの中間領域2’の軸方向の長さ、すなわち通紙境界Bと中央部領域1’の端部との距離は、例えば1〜24mmとすることができる。
【0042】
また例えば、中間領域は単一の領域からなることに限定されず、加圧ローラ32の軸方向に分割された、互いに平均の熱伝導率の異なる複数の領域からなるものとして構成されていてもよい。この複数の領域は、中央部領域に隣接する領域から端部領域に隣接する領域に向かって、平均の熱伝導率が段階的に高くなるよう配置される。
【0043】
〔第2の実施の形態〕
本発明の第2の実施の形態に係る定着装置は、図5に示されるように、加圧ローラ32Bの弾性体層32bの中間領域5が、中央部領域4の端部から端部領域6の軸方向内側端に向かうに従って、周方向に区画した区域の平均の熱伝導率が連続的に高くなるよう形成されてなるものであること以外は、第1の実施の形態と同様の構成を有する。
具体的に説明すると、中間領域5は、中央部領域4と略同等の単一の熱伝導率を有し、当該中央部領域4に連続して当該中央部領域4の端部から端部領域6の軸方向内側端まで伸びる、加圧ローラ32Bの軸方向外方に向かうに従って周方向の長さが小さくなる三角形状の低熱伝導率部分5αが少なくとも1つ形成されてなるものである。中間領域5における低熱伝導率部分5α以外の部分は、端部領域6に連続して形成された当該端部領域6と略同等の単一の熱伝導率を有する高熱伝導率部分5βとされる。この例の加圧ローラ32Bにおいては、複数の低熱伝導率部分5αが加圧ローラ32Bの周方向に密接に並列されて形成されている。なお、図5においては、第1の実施の形態に係る加圧ローラと同様の構成を有するものを同じ符号で示す。
【0044】
この例の加圧ローラ32Bの中間領域5の軸方向の長さは、例えば5〜42.5mmとすることができる。
【0045】
このような第2の実施の形態に係る定着装置によれば、第1の実施の形態に係る定着装置と同様の効果が得られる。
【0046】
以上、第2の実施の形態に係る定着装置について説明したが、この定着装置は、種々の変更を加えることが可能である。
例えば、加圧ローラは、通紙境界Bが当該加圧ローラにおける中間領域と中央部領域との境界に係る表面上以外であればどこに存在するよう構成されていてもよく、図6に示されるように、通紙境界Bが加圧ローラ32Cにおける中間領域5’と端部領域6’との境界に係る表面上に一致して存在するよう構成されていてもよい。なお、図6においては、図5の加圧ローラと同様の構成を有するものを同じ符号で示す。
この例の加圧ローラ32Cの中間領域5’の軸方向の長さ、すなわち通紙境界Bと中央部領域4’の端部との距離は、例えば1〜24mmとすることができる。
【0047】
〔記録材〕
本発明に係る画像形成装置に使用される記録材Pとしては、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙あるいはコート紙などの塗工された印刷用紙、市販されている和紙やはがき用紙、OHP用のプラスチックフィルム、布などの各種を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
以上のような定着装置は、モノクロの複写機やカラーの複写機、プリンタ、ファクシミリ装置、およびこれらの機能を組み合わせた多機能周辺機器(MFP)などの電子写真方式の公知の種々の画像形成装置における定着装置として好適に用いることができる。
本発明の定着装置は、特に、加圧ローラの端部温度の上昇速度が大きい、像担持体(感光体)の線速が例えば100〜500mm/secとされる高速機に好適に用いることができる。
また、厚みが大きな記録材ほど通紙域の熱を大きく奪い、その結果、加圧ローラの端部温度の上昇速度が大きくなるので、記録材として厚みが大きいものを用いる場合にも好適に用いることができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明の実施形態は上記の例に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、本発明の定着装置は、上記のように熱ローラ方式のものであることに限定されず、例えば、発熱ベルト方式のものやベルト加熱方式のものであってもよい。
【実施例】
【0050】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
〔実施例1〕
加圧ローラとして、図2に従った配置の中央部領域、中間領域および端部領域がその表面に形成されており、下記の条件を有する加圧ローラを用いた定着装置〔1〕を作製した。
・芯金;全長:342mm、直径:φ26mm、材質:SUS
・弾性体層;材質:シリコーンゴム、熱導電物質:カーボンブラック、厚み:2.0mm、全長:340mm
・離型層;材質:PFA、厚み:30μm
・平均の熱伝導率;中央部領域:0.2W/m-1・K-1、中間領域:0.5W/m-1・K-1、端部領域:0.9W/m-1・K-1
・中間領域;軸方向の長さ:20mm、通紙境界から中央部領域までの軸方向の長さ:10mm
【0052】
〔実施例2〕
実施例1において、図4に従った配置で中央部領域、中間領域および端部領域が形成されたものを用いたこと以外は同様にして、定着装置〔2〕を作製した。
ただし、中間領域の軸方向の長さは10mmである。
【0053】
〔実施例3〕
実施例1において、図5に従った配置で中央部領域、中間領域の高熱伝導率部分および低熱伝導率部分、並びに端部領域が形成されたものを用いたこと以外は同様にして、定着装置〔3〕を作製した。
ただし、平均の熱伝導率は、中央部領域および中間領域の低熱伝導率部分が0.2W/m-1・K-1、中間領域の高熱伝導率部分および端部領域が0.9W/m-1・K-1であり、中間領域の軸方向の長さは39mm、通紙境界から中央部領域までの軸方向の長さ:24mmである。
【0054】
〔実施例4〕
実施例1において、図6に従った配置で中央部領域、中間領域の高熱伝導率部分および低熱伝導率部分、並びに端部領域が形成されたものを用いたこと以外は同様にして、定着装置〔4〕を作製した。
ただし、平均の熱伝導率は、中央部領域および中間領域の低熱伝導率部分が0.2W/m-1・K-1、中間領域の高熱伝導率部分および端部領域が0.8W/m-1・K-1であり、中間領域の軸方向の長さは24mmである。
【0055】
〔比較例1〕
実施例1において、任意の区域の平均の熱伝導率が全て略同等である加圧ローラを用いたこと以外は同様にして、定着装置〔5〕を作製した。
ただし、平均の熱伝導率は、0.2W/m-1・K-1である。
【0056】
〔比較例2〕
実施例1において、図7(a)に従った配置で中央部領域S1および端部領域S2が形成されたもの、すなわち、通紙境界と中央部領域S1と端部領域S2との境界が一致するものを用いたこと以外は同様にして、定着装置〔6〕を作製した。なお、図7において、第1の実施の形態と共通する部材には同一の符号を付した。以下において同じである。
ただし、平均の熱伝導率は、中央部領域S1が0.2W/m-1・K-1、端部領域S2が0.5W/m-1・K-1である。
【0057】
〔比較例3〕
実施例1において、図7(b)に従った配置で中央部領域S3および端部領域S4が形成されたものを用いたこと以外は同様にして、定着装置〔7〕を作製した。
ただし、平均の熱伝導率は、中央部領域S3が0.5W/m-1・K-1、端部領域S4が1.0W/m-1・K-1であり、中央部領域S3の軸方向の長さが317mmである。
【0058】
〔比較例4〕
実施例1において、図7(c)に従った配置で中央部領域S5および端部領域S6が形成されたものを用いたこと以外は同様にして、定着装置〔8〕を作製した。
ただし、平均の熱伝導率は、中央部領域S5が0.3W/m-1・K-1、端部領域S6が0.7W/m-1・K-1であり、中央部領域S5の軸方向の長さは139mmである。
【0059】
〔光沢の安定性の評価〕
上記の定着装置〔1〕〜〔8〕を、複写機「bizhub PRO C6550」(コニカミノルタ社製)に装着し、これを用いて、常温常湿(温度20℃、湿度50%RH)の環境下において、A4サイズの高光沢紙「PODグロスコート(坪量128g/m2 )」(王子製紙社製)および低光沢紙「PODマットコート(坪量128g/m2 )」(王子製紙社製)上に、トナー付着量4mg/cm2 のベタ画像を連続して100枚出力した。
定着処理時の通紙域の中央の温度T1と端部の温度T2を測定した。また、定着処理時の通紙域における温度均一長率を測定した。
そして、形成したベタ画像の10枚目および100枚目について、それぞれ、ベタ画像の中央部の光沢(G1)および端部の光沢(G2)を、「ガードナー・マイクロ−グロス75度光沢計」(ビックガードナー社製)で測定し、その光沢差ΔG=(G2−G1)を算出した。結果を表1に示す。
この光沢差ΔGが小さいほど、通紙域の中央と端部との温度差が小さく、本発明においては、10枚目および100枚目の光沢差ΔGがいずれも10以下である場合を合格と判断する。
【0060】
【表1】
【符号の説明】
【0061】
1、1’ 中央部領域
2、2’ 中間領域
3、3’ 端部領域
4、4’ 中央部領域
5、5’ 中間領域
5α 低熱伝導率部分
5β 高熱伝導率部分
6、6’ 端部領域
7 通紙域
9 非通紙域
10 中間転写部
11Y,11M,11C,11Bk 感光体
12 クリーニング手段
13Y,13M,13C,13Bk 一次転写ローラ
13A 二次転写ローラ
16 中間転写ベルト
16a〜16d 支持ローラ
20Y,20M,20C,20Bk トナー像形成部
21Y,21M,21C,21Bk 現像手段
22Y,22M,22C,22Bk 露光手段
23Y,23M,23C,23Bk 帯電手段
25Y,25M,25C,25Bk クリーニング手段
30 定着装置
31 加熱ローラ
32、32A、32B、32C 加圧ローラ
32a 芯金
32b 弾性体層
32c 離型層
41 給紙カセット
42 給紙搬送手段
44a,44b,44c,44d 給紙ローラ
46 レジストローラ
B 通紙境界
N 定着ニップ部
P 記録材
S1、S3、S5 中央部領域
S2、S4、S6 端部領域

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7