(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の車輪を制動する第1のブレーキ機構と、第2の車輪を制動する第2のブレーキ機構と、第3の車輪を制動する第3のブレーキ機構と、第4の車輪を制動する第4のブレーキ機構と、少なくとも3つの制御部と、を備える車両の電動ブレーキ装置であって、
前記制御部は、それぞれ4つの前記ブレーキ機構のうち少なくともいずれか1つを制御し、
前記3つの制御部の少なくとも1つが故障した場合、前記故障していない他の制御部のうち1つは、制御対象のブレーキ機構の制動力を増加させ、前記故障していない他の制御部のうち他の1つは、制御対象のブレーキ機構の制動力を一時的に低減させた後、前記故障していない他の制御部うち1つによる前記制動力の増加と連動して前記制御対象のブレーキ機構の制動力を増加させる、
ことを特徴とする電動ブレーキ装置。
前記第1の車輪および前記第2の車輪は、前記車両の全幅方向に間隔を置いて配置され、前記第3の車輪および前記第4の車輪は、前記全幅方向に間隔を置いて配置されるとともに前記第1の車輪および前記第2の車輪から前記車両の全長方向に間隔を置いて配置され、
前記3つの制御部は、前記第1の制御部、前記第2の制御部および前記第3の制御部であり、
前記第1の制御部は、前記第1のブレーキ機構および前記第2のブレーキ機構を制御し、
前記第2の制御部は、前記第1のブレーキ機構および前記第2のブレーキ機構を制御し、
前記第3の制御部は、前記第3のブレーキ機構および前記第4のブレーキ機構を制御する、
ことを特徴とする請求項1記載の電動ブレーキ装置。
前記第1のブレーキ機構および前記第2のブレーキ機構からなる第1のブレーキ対と、前記第3のブレーキ機構および前記第4のブレーキ機構からなる第2のブレーキ対との間には、前記車両の前記全長方向における理想制動力配分値が設定されており、
前記故障していない他の制御部は、制御対象のブレーキ機構の制動力を一時的に前記理想制動力配分値よりも低い値とする、
ことを特徴とする請求項2記載の電動ブレーキ装置。
それぞれの前記ブレーキ機構は、前記ブレーキ機構を制御および作動させる電源となるメインバッテリおよびバックアップバッテリに接続され、メインバッテリが故障した場合は前記ブレーキ機構への電源の供給元がバックアップバッテリに切り替えられる、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の電動ブレーキ装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる電動ブレーキ装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
図1は、実施の形態にかかる電動ブレーキ装置10の構成を示す説明図である。
電動ブレーキ装置10は、前後左右の車輪12,14,16,18と、各車輪に設けられたブレーキ機構20,22,24,26,34,36と、制御部28,30,32,38,50と、操作部52,54とを含んで構成される。
なお、電動ブレーキ装置10には
図1に示した構成に加えて、メインバッテリ40およびバックアップバッテリ42(
図2参照)を有しているが、
図1では図示を省略している。
【0011】
より詳細には、車輪12,14,16,18は、左前輪12、右前輪14、左後輪16、右後輪18であり、左前輪12に左前輪用ブレーキ機構20が、右前輪14に右前輪用ブレーキ機構22が、左後輪16に左後輪用ブレーキ機構24が、右後輪18に右後輪用ブレーキ機構26が、それぞれ設けられており、それぞれの車輪の制動を行う。
各ブレーキ機構20,22,24,26は常用ブレーキを実現するものであり、それぞれ制御部28,30,32が設けられている。
各制御部28,30,32は、各ブレーキ機構20,22,24,26のうち少なくとも1つを制御する。
本実施の形態では、左前輪用ブレーキ機構20および右前輪用ブレーキ機構22は、第1の前輪用制御部28および第2の前輪用制御部30によって、左後輪用ブレーキ機構24および右後輪用ブレーキ機構26は後輪用制御部32によって、それぞれ制御されるものとする。
すなわち、第1の制御部である第1の前輪用制御部28は、左前輪用ブレーキ機構20および右前輪用ブレーキ機構22を制御し、第2の制御部である第2の前輪用制御部30は、左前輪用ブレーキ機構20および右前輪用ブレーキ機構22を制御し、第3の制御部である第3の前輪用制御部32は、左後輪用ブレーキ機構24および右後輪用ブレーキ機構26を制御する。
【0012】
それぞれの制御部28,30,32,38は、車両の主制御を司る車両制御部50に接続されている。
車両制御部50は、ブレーキペダル(常用ブレーキ操作部)52およびパーキングブレーキ操作部54と接続されており、ブレーキペダル52またはパーキングブレーキ操作部54が操作された場合に、それぞれの制御部28,30,32,38に対してブレーキを作動させるよう指示する制御信号を出力する。
また、車両制御部50は、各制御部28,30,32,38の稼働状態を監視し、いずれかの制御部28,30,32,38に故障が生じた場合には、他の制御部に対して故障を示す制御信号を出力する。
なお、車両制御部50を介して制御部28,30,32,38の故障を報知するのでなく、各制御部28,30,32,38間を直接接続して、相互に稼働状態を監視してもよい。
【0013】
各ブレーキ機構20,22,24,26は、車輪と共に回転する被摩擦部材と、電動アクチュエータによる動力により移動する摩擦部材とを備え、被摩擦部材に対して摩擦部材を押圧することにより制動力を得る電動ブレーキ機構(Electro−mechanical Brake:EMB)である。
より詳細には、各ブレーキ機構20,22,24,26は、車輪とともに回転するブレーキディスク(被摩擦部材)と、電動アクチュエータによってブレーキディスクへの押圧位置と非押圧位置との間を移動するブレーキパッド(摩擦部材)を有する電動キャリパと、をそれぞれ備える。
通常時(非ブレーキ時)には、ブレーキパッドはブレーキディスクから離れた非押圧位置に位置している。ブレーキ時には、制御部28,30,32が電動アクチュエータを動作させて、ブレーキパッドをブレーキディスクと当接する押圧位置に移動させ、車輪の運動エネルギーを熱エネルギーに変換することにより、車両を所望の車速まで減速させる。
【0014】
図3は、制御部の概略構成例を示す説明図である。
本実施の形態では、制御部28,30,32はいずれも2つのブレーキ機構を制御しており、その構成は同一である。
図3には第1の前輪用制御部28を図示する。
第1の前輪用制御部28は、デュアルマイクロコンピュータ(デュアルマイコン)2802、2つの集積回路2804,2806、2つのブリッジ回路2808,2810、電源レギュレータ2812を含んで構成される。電源レギュレータ2812とそれぞれのブリッジ回路2808,2810はバッテリ40に接続されている。
デュアルマイクロコンピュータ2802は、車両制御部50(
図3に図示なし)と接続されており、車両制御部50からブレーキの作動指示が出力された場合には、ブリッジ回路2808,2810を駆動してバッテリ40の電力を三相交流に変換し、ブレーキ機構(
図3では左前輪用ブレーキ機構20および右前輪用ブレーキ機構22)の電動アクチュエータ2002,2202に供給して電動アクチュエータ2002,2202を駆動させる。すなわち、第1の前輪用制御部28は、左前輪用ブレーキ機構20および右前輪用ブレーキ機構22の電源回路を含んでいる。
ブリッジ回路2808,2810の動作はそれぞれ独立して制御可能であるため、それぞれの電動アクチュエータ2002,2202(左前輪用ブレーキ機構20および右前輪用ブレーキ機構22)を独立して作動させることが可能となる。
上述のように、左前輪用ブレーキ機構20および右前輪用ブレーキ機構22は、第1の前輪用制御部28と第2の前輪用制御部30とによって制御されているが、通常時は左前輪用ブレーキ機構20および右前輪用ブレーキ機構22で必要とされる電力を、第1の前輪用制御部28と第2の前輪用制御部30とで半分ずつ供給する。
電動ブレーキ機構では電気信号によってブレーキ機構の動作を制御するので、状況に応じてブレーキ機構の動作を細かく制御できるとともに、油圧配管等が不要となり車両重量を大幅に軽量化することができる。
なお、
図2に示すように、本実施の形態ではそれぞれのブレーキ機構20,22,24,26はメインバッテリ40およびバックアップバッテリ42に接続され、メインバッテリ40が故障した場合は各ブレーキ機構20,22,24,26への電源の供給元がバックアップバッテリ42に切り替えられるように構成されている。これにより、ブレーキ機構20,22,24,26の可用性を向上させることができる。
また、メインバッテリ40およびバックアップバッテリ42は、左右の前輪用ブレーキ機構20,22に対して優先的に電力を供給するように構成されている。
【0015】
図1の説明に戻り、左後輪16および右後輪18には、さらにパーキングブレーキ機構34,36がそれぞれ設けられている。パーキングブレーキ機構34,36は、主に駐車中に車両が移動するのを防止するために使用される。
パーキングブレーキ機構34,36はパーキング用制御部38によって制御される。
本実施の形態では、パーキングブレーキ機構34,36は電動パーキングブレーキ(Electric Parking Brake:EPB)であり、その構成には複数の形態がある。
【0016】
図2は、電動ブレーキ装置10におけるパーキングブレーキの構成例を示す説明図である。
図2中、EMB20は左前輪用ブレーキ機構20に、EMB22は右前輪用ブレーキ機構22に、EMB24は左後輪用ブレーキ機構24に、EMB26は右後輪用ブレーキ機構26に、それぞれ対応する。
また、ECU28は第1の前輪用制御部28に、ECU30は第2の前輪用制御部30に、ECU32は後輪用制御部32に、それぞれ対応する。
また、EPB38はパーキング用制御部38に対応する。
【0017】
図2Aは、左後輪用ブレーキ機構24および右後輪用ブレーキ機構26が、パーキングブレーキ機構34,36を兼ねる構成となっている。
すなわち、パーキング用制御部38は、パーキングブレーキを作動時には左後輪用ブレーキ機構24および右後輪用ブレーキ機構26の電動アクチュエータを作動させ、ブレーキパッドをブレーキディスクへの押圧位置に移動させることによって左右の後輪16,18に制動力を付与する。
このような構成によれば、パーキング専用ブレーキ機構が不要になり、車両の軽量化を図ることができる。
【0018】
図2Bは、左後輪用ブレーキ機構24および右後輪用ブレーキ機構26のブレーキディスク内にブレーキドラムを配置したドラム・イン・ハット方式によりパーキングブレーキ機構34,36を構成した例である。
すなわち、パーキングブレーキ機構34,36は、左後輪用ブレーキ機構24および右後輪用ブレーキ機構26のブレーキパッドの中央部に位置するハット部内にそれぞれ設けられ車輪とともに回転するブレーキドラムと、それぞれのブレーキドラム内に設けられパーキング用電動アクチュエータによってブレーキドラムへの押圧位置と非押圧位置との間を移動するブレーキシューと、を備える。
通常時(非パーキングブレーキ時)には、ブレーキシューはスプリングによってブレーキドラム内周方向へ付勢され、ブレーキドラムから離れた非押圧位置にある。また、ブレーキシューには、その一端をブレーキシューに対して揺動可能に取り付けられ、他端にワイヤーが取着されたブレーキシューレバーが取着されている。
パーキング用電動アクチュエータによりワイヤーを引っ張る(巻き取る)と、ブレーキシューレバーが揺動し、ブレーキシューがスプリングの付勢力に対抗してブレーキドラム外周方向に移動し、ブレーキドラムへの押圧位置に位置する。
このように、パーキング用制御部38は、パーキングブレーキの作動時にはパーキング用電動アクチュエータを作動させ、パーキングブレーキ機構34,36のブレーキシューをブレーキドラムへの押圧位置に移動させることによって左右の後輪16,18に制動力を付与する。
【0019】
図2Cは、左後輪用ブレーキ機構24および右後輪用ブレーキ機構26のブレーキディスク内にブレーキドラム型電動パーキングブレーキ機構34,36を構成した例である。
すなわち、パーキングブレーキ機構34,36は、左後輪用ブレーキ機構24および右後輪用ブレーキ機構26のブレーキ
ディスクの中央部に位置するハット部内にそれぞれ設けられ車輪とともに回転するブレーキ
ドラムと、それぞれのブレーキ
ドラム内に設けられパーキング用電動アクチュエータによってブレーキ
ドラムへの押圧位置と非押圧位置との間を移動するブレーキシューと、を備える。
通常時(非パーキングブレーキ時)には、ブレーキシューはブレーキ
ドラム内周方向へ付勢され、ブレーキ
ドラムから離れた非押圧位置にある。また、ブレーキシューの一
端に直動機構を有したモータが取り付けられている。
ドラム型パーキングのモータが回転すると直動機構を介し、ブレーキシューの一端を押す。ブレーキシューが押されるとブレーキ
ドラム外周方向に移動し、ブレーキ
ドラムへの押圧位置に位置する。
このように、パーキング用制御部38は、パーキングブレーキの作動時にはパーキング用電動アクチュエータを作動させ、パーキングブレーキ機構34,36のブレーキシューをブレーキドラムへの押圧位置に移動させることによって左右の後輪16,18に制動力を付与する。
【0020】
つづいて、電動ブレーキ装置10に不具合が生じた場合の制御について説明する。
一般に、4つの車輪12,14,16,18のうち3つの車輪が制動できなくなった場合(1つの車輪のみが制動可能な場合)、ブレーキ時にスピンが生じて車両が意図しない方向を向いてしまう可能性が高くなる。
電動ブレーキ装置10は、4つの車輪12,14,16,18に設けられた4つのブレーキ機構20,22,24,26を、3つの制御部28,30,32で制御しており、このうち2つの制御部が故障すると3つの車輪が制動できなくなり、上記スピンが発生する可能性が生じる。
このため、電動ブレーキ装置10では、左前輪、右前輪、左後輪および右後輪のうちいずれかの制動に不具合が生じた場合、特に3つの制御部28,30,32のうち、いずれか1つまたは2つが故障した場合でも、少なくとも2つの車輪は制動可能とし、車両の操舵性を確保するとともに、車両が停止するのに必要な制動力を確保している。
【0021】
なお、本実施の形態において制御部28,30,32の故障とは、ブレーキ機構20,22,24,26を作動できない状態であり、例えば電源回路の故障や信号線の断線等が挙げられる。
またこれ以外に、ブレーキ機構20,22,24,26の故障、例えば電動アクチュエータの故障やブレーキパッドの摩耗などにより車輪の制動に不具合が生じる場合がある。そのような場合にも以下に示す制御を適用可能である。
【0022】
図4〜
図7は、制御部が故障した際の制動力の変化を示す説明図である。
なお、
図4〜
図7において、ECU1は第1の前輪用制御部28に、ECU2は第2の前輪用制御部30に、ECU3は後輪用制御部32に、EPBはパーキング用制御部38に、それぞれ対応する。
以下の説明において、「制御部がブレーキ機構の制動力を増加させる(または低減する)」とは、例えば当該制御部からの供給電力を増加(または低減)させるなど、当該制御部からブレーキ機構に対する制御値の大きさを示すものであり、必ずしもブレーキ機構全体としての制動力を指すものではない。
すなわち、ブレーキ機構が複数の制御部により制御される場合には、1つの制御部がブレーキ機構の制動力を増加させた場合においても、他の制御部の故障などの要因によりブレーキ機構全体としては制動力が増加しない場合もある。
【0023】
まず、
図4Aに示すように、前輪用制御部の一方(
図4では第1の前輪用制御部28)が故障した場合について説明する。
図4Bに示すように、故障が生じていない初期時刻T0の段階では、第1の前輪用制御部28および第2の前輪用制御部30(ECU1,2)は、共に所定の制動力P1を発生するよう左右の前輪用ブレーキ機構20,22を駆動する。すなわち、左右の前輪用ブレーキ機構20,22は、合わせてP1×2の制動力を発生している。
また、後輪用制御部32(ECU3)は、所定の制動力P2(<P1)を発生するよう左右の後輪用ブレーキ機構24,26を駆動している。
3つの制御部28,30,32による合計の制動力はP3である。
【0024】
時刻T1に第1の前輪用制御部28(ECU1)が故障すると、第1の前輪用制御部28から左右の前輪用ブレーキ機構20,22への電力供給がなくなり、第2の前輪用制御部30からの電力供給だけになる。よって、左右の前輪用ブレーキ機構20,22の合計の制動力はP1×1と半減する。
この場合、第2の前輪用制御部30(ECU2)は、左右の前輪用ブレーキ機構20,22への供給電力量を増加させて、左右の前輪用ブレーキ機構20,22がP1×1よりも大きい制動力P4を発生するようにする。
【0025】
また、後輪用制御部32(ECU3)は、第1の前輪用制御部28の故障直後に左右の後輪用ブレーキ機構24,26への供給電力量を低減させて、左右の後輪用ブレーキ機構24,26の制動力P5(<P2)まで低減させる。
すなわち、3つの制御部28,30,32のうち少なくとも1つが故障した場合、故障していない他の制御部のうち少なくとも1つ(この場合後輪用制御部32)は、制御対象のブレーキ機構の制動力を一時的に低減させる。
これは、前輪用ブレーキ機構20,22の制動力が下がったことによって左右の後輪16,18がロックする(リヤロック)のを防止するためである。
その後、後輪用制御部32は、左右の前輪用ブレーキ機構20,22の制動力の増加に追従して、車両の理想制動力配分特性に沿って左右の後輪用ブレーキ機構24,26の制動力を増加させる。
【0026】
図8は、前後輪の理想制動力配分特性を示す説明図である。
図8において、縦軸は後輪に対する制動力配分、横軸は前輪に対する制動力配分を示す。
理想制動力配分とは、摩擦係数毎の理想制動力配分の各点を結んでいったものである。通常、電動ブレーキ装置10は、
図8Aに示すような理想制動力配分特性に沿って前後輪に対する制動力、すなわち左右の前輪用ブレーキ機構20,22で発生する制動力と左右の後輪用ブレーキ機構24,26で発生する制動力とを分配している。
【0027】
ここで、
図4の例のように第1の前輪用制御部28が故障すると、
図8Bに示すように前輪用ブレーキ機構20,22の制動力が低下する。すなわち、P1×2であった制動力がP1×1となる。この結果、後輪用ブレーキ機構24,26の制動力が理想制動力配分値に対して大きくなり、リヤロックが生じる。
このようなリヤロックを防止するため、
図8Cに示すように、後輪用制御部32は、第1の前輪用制御部28の故障直後には左右の後輪用ブレーキ機構24,26の制動力を大きく低減させる。
図8および
図4の例では、理想制動力配分値よりも低いP5まで制動力を低減させている。
その後、第2の前輪用制御部30によって前輪用ブレーキ機構20,22の制動力がP4まで上昇した場合、後輪用制御部32は、後輪用ブレーキ機構24,26の理想制動力配分特性に沿った値であるP6に上昇させる。
また、ブレーキ操作が緩められた場合など、前輪用ブレーキ機構20,22の制動力が第1の前輪用制御部28の故障直後よりも低くなった場合(
図8Cの例ではP7)にも、後輪用制御部32は、後輪用ブレーキ機構24,26の理想制動力配分特性に沿った値であるP5とする。
【0028】
言い換えると、3つの制御部28,30,32の少なくとも1つが故障した場合、故障していない他の制御部のうち1つは、制御対象のブレーキ機構の制動力を増加させ、故障していない他の制御部のうち他の1つは、制御対象のブレーキ機構の制動力を一時的に低減させた後、故障していない他の制御部うち1つによる制動力の増加と連動して制御対象のブレーキ機構の制動力を増加させる。
このとき、制動力を低減させる制御部は、制御対象のブレーキ機構の制動力を一時的に車両の全長方向(前後方向)における理想制動力配分値よりも低い値とする。
【0029】
さらに、本実施の形態に沿って言い換えると、第1の前輪用制御部28または第2の前輪用制御部30の少なくとも一方が故障した場合、後輪用制御部32は、左後輪用ブレーキ機構24および右後輪用ブレーキ機構26の制動力を一時的に低減させる。このとき、後輪用制御部32は、左後輪用ブレーキ機構24および右後輪用ブレーキ機構26の制動力を、車両における前後輪の理想制動力配分値よりも低い値にする。
さらに詳細には、第1の前輪用制御部28または第2の前輪用制御部30のいずれか一方が故障した場合、第1の前輪用制御部28または第2の前輪用制御部30のうち他方は、左前輪用ブレーキ機構20および右前輪用ブレーキ機構22の制動力を増加させ、後輪用制御部32は、左後輪用ブレーキ機構24および右後輪用ブレーキ機構26の制動力を一時的に低減させた後、故障していない他方の制御部による左前輪用ブレーキ機構20および右前輪用ブレーキ機構22の制動力の増加と連動して左後輪用ブレーキ機構24および右後輪用ブレーキ機構26の制動力を増加させる。
なお、第2の前輪用制御部30が故障した場合については、上記の説明における第1の前輪用制御部28と第2の前輪用制御部30を、それぞれ読み替えればよい。
【0030】
つぎに、
図5Aに示すように、後輪用制御部32が故障した場合について説明する。
図5Bに示すように、故障が生じていない初期時刻T0の段階では、第1の前輪用制御部28および第2の前輪用制御部30(ECU1,2)は、共に所定の制動力P1を発生するよう左右の前輪用ブレーキ機構20,22を駆動する。すなわち、左右の前輪用ブレーキ機構20,22は、合わせてP1×2の制動力を発生している。
また、後輪用制御部32(ECU3)は、所定の制動力P2(<P1)を発生するよう左右の後輪用ブレーキ機構24,26を駆動している。
3つの制御部28,30,32による合計の制動力はP3である。
【0031】
時刻T1に後輪用制御部32(ECU3)が故障すると、後輪用制御部32から左右の後輪用ブレーキ機構24,26への電力供給がなくなり、左右の後輪用ブレーキ機構24,26の制動力はゼロとなる。
この場合、第1の前輪用制御部28および第2の前輪用制御部30は、それぞれ左前輪用ブレーキ機構20および右前輪用ブレーキ機構22への供給電力を増加させて、合わせてP3(>P1)×2の制動力を発生させる。
また、パーキング用制御部38はパーキングブレーキ機構34,36を作動させて後輪16,18を制動する制動力を発生させる。
パーキングブレーキ機構34,36の制動力は、常用ブレーキである左後輪用ブレーキ機構24および右後輪用ブレーキ機構26よりも低いが、後輪16,18に対して一定の制動力を与えることができ、より高い制動力を得ることができる。
【0032】
言い換えると、後輪用制御部32が故障した場合、第1の前輪用制御部28および第2の前輪用制御部30は、左前輪用ブレーキ機構20および右前輪用ブレーキ機構22の制動力をそれぞれ増加させる。また、パーキング用制御部38は、パーキングブレーキ機構34,36を作動させて左後輪16および右後輪18に対する制動力を発生させる。
なお、
図8に示すように理想制動力配分では前輪用ブレーキ機構の方が後輪用ブレーキ機構よりも強い制動力を出すように設定されている。このため、パーキングブレーキ機構34,36を作動させずに左前輪用ブレーキ機構20および右前輪用ブレーキ機構22のみで制動を行ってもよいが、パーキングブレーキ機構34,36を作動させて車両前後に制動力を与えることにより車両姿勢が安定するとともに、より高い制動力を得ることができるため効果的である。
【0033】
つぎに、
図6Aに示すように、前輪用制御部の一方(第1の前輪用制御部28または第2の前輪用制御部30)と、後輪用制御部32が順次故障した場合について説明する。
図6Bでは、まず第1の前輪用制御部28(ECU1)が故障し、つぎに後輪用制御部32(ECU3)が故障した場合を例にして説明する。
図6Bに示すように、故障が生じていない初期時刻T0の段階では、第1の前輪用制御部28および第2の前輪用制御部30(ECU1,2)は、共に所定の制動力P1を発生するよう左右の前輪用ブレーキ機構20,22を駆動する。すなわち、左右の前輪用ブレーキ機構20,22は、合わせてP1×2の制動力を発生させている。
また、後輪用制御部32(ECU3)は、所定の制動力P2(<P1)を発生するよう左右の後輪用ブレーキ機構24,26を駆動している。
3つの制御部28,30,32による合計の制動力はP3である。
時刻T1に第1の前輪用制御部28(ECU1)が故障すると、第1の前輪用制御部28から左右の前輪用ブレーキ機構20,22への電力供給がなくなり、第2の前輪用制御部30からの電力供給だけになる。よって、左右の前輪用ブレーキ機構20,22の合計の制動力はP1×1と半減する。
この場合、第2の前輪用制御部30(ECU2)は、左右の前輪用ブレーキ機構20,22への供給電力量を増加させて、左右の前輪用ブレーキ機構20,22がP1×1よりも大きい制動力P4を発生するようにする。
【0034】
また、後輪用制御部32(ECU3)は、第1の前輪用制御部28の故障直後に左右の後輪用ブレーキ機構24,26への供給電力量を低減させて、左右の後輪用ブレーキ機構24,26の制動力P5(<P2)まで一時的に低減させる。これは、上述のように前輪用ブレーキ機構20,22の制動力が下がったことによって左右の後輪16,18がロックする(リヤロック)のを防止するためである。
その後、後輪用制御部32は、左右の前輪用ブレーキ機構20,22の制動力の増加に追従して、車両の理想制動力配分特性に沿って左右の後輪用ブレーキ機構24,26の制動力をP6まで増加させる。
【0035】
その後、時刻T2に後輪用制御部32(ECU3)が故障すると、後輪用制御部32から左右の後輪用ブレーキ機構24,26への電力供給がなくなり、左右の後輪用ブレーキ機構24,26の制動力はゼロとなる。
この場合、第2の前輪用制御部30は、左前輪用ブレーキ機構20および右前輪用ブレーキ機構22への供給電力をさらに増加させて、左右の前輪用ブレーキ機構20,22がP4よりも大きい制動力P7を発生するようにする。
また、パーキング用制御部38はパーキングブレーキ機構34,36を作動させて後輪16,18を制動する制動力を発生させる。パーキングブレーキ機構34,36の制動力は、常用ブレーキである左後輪用ブレーキ機構24および右後輪用ブレーキ機構26よりも低いが、後輪16,18に対して一定の制動力を与えることができる。
【0036】
言い換えると、第1の前輪用制御部28または第2の前輪用制御部30のいずれか一方と、後輪用制御部32とが故障した場合、第1の前輪用制御部28または第2の前輪用制御部30のうち他方は左前輪用ブレーキ機構20および右前輪用ブレーキ機構22の制動力を増加させ、パーキング用制御部38は、パーキングブレーキ機構34,36を作動させて左後輪16および右後輪18に対する制動力を発生させる。
【0037】
ここで、後輪用制御部32が先に故障し、次いで前輪用制御部の一方(第1の前輪用制御部28または第2の前輪用制御部30)が故障した場合について説明する。
この場合、
図5Bに示すように後輪用制御部32が故障した時点で、第1の前輪用制御部28および第2の前輪用制御部30は、それぞれ左前輪用ブレーキ機構20および右前輪用ブレーキ機構22の制動力を増加させる。また、パーキング用制御部38はパーキングブレーキ機構34,36を作動させて後輪16,18を制動する。
その後、前輪用制御部の一方が故障した際には、故障していない側(他方)の前輪用制御部が、左右の前輪用ブレーキ機構20,22がさらに大きい制動力を発生するようにする。
すなわち、故障する順番が異なっても、最終的には
図6と同じ状態になる。
【0038】
つづいて、
図7Aに示すように、前輪用制御部の両方(第1の前輪用制御部28および第2の前輪用制御部30)が順次故障した場合について説明する。
図7Bでは、まず第1の前輪用制御部28が故障し、つぎに第2の前輪用制御部30が故障した場合を例にして説明する。
図7Bに示すように、故障が生じていない初期時刻T0の段階では、第1の前輪用制御部28および第2の前輪用制御部30(ECU1,2)は、共に所定の制動力P1を発生するよう左右の前輪用ブレーキ機構20,22を駆動する。すなわち、左右の前輪用ブレーキ機構20,22は、合わせてP1×2の制動力を発生している。
また、後輪用制御部32(ECU3)は、所定の制動力P2(<P1)を発生するよう左右の後輪用ブレーキ機構24,26を駆動している。
3つの制御部28,30,32による合計の制動力はP3である。
【0039】
時刻T1に第1の前輪用制御部28(ECU1)が故障すると、第1の前輪用制御部28から左右の前輪用ブレーキ機構20,22への電力供給がなくなり、第2の前輪用制御部30からの電力供給だけになる。よって、左右の前輪用ブレーキ機構20,22の合計の制動力はP1×1と半減する。
この場合、第2の前輪用制御部30(ECU2)は、左右の前輪用ブレーキ機構20,22への供給電力量を増加させて、左右の前輪用ブレーキ機構20,22がP1×1よりも大きい制動力P4を発生するようにする。
【0040】
また、後輪用制御部32(ECU3)は、第1の前輪用制御部28の故障直後に左右の後輪用ブレーキ機構24,26への供給電力量を一時的に低減させて、左右の後輪用ブレーキ機構24,26の制動力P5(<P2)まで低減させる。これは、上述のように前輪用ブレーキ機構20,22の制動力が下がったことによって左右の後輪16,18がロックする(リヤロック)のを防止するためである。
その後、後輪用制御部32は、左右の前輪用ブレーキ機構20,22の制動力の増加に追従して、車両の理想制動力配分特性に沿って左右の後輪用ブレーキ機構24,26の制動力をP6まで増加させる。
【0041】
また、時刻T2に第2の前輪用制御部30(ECU2)が故障すると、左右の前輪用ブレーキ機構20,22に電力が供給されなくなり、左右の前輪用ブレーキ機構22,24の制動力がゼロとなる。
後輪用制御部32(ECU3)は、第2の前輪用制御部30の故障直後にも左右の後輪用ブレーキ機構24,26への供給電力量を低減させて、左右の後輪用ブレーキ機構24,26の制動力P7(<P6)まで低減させる。これは、前輪用ブレーキ機構20,22の制動力が急激にゼロになったことによるリヤロックを防止するためである。
その後、後輪用制御部32は、左右の後輪用ブレーキ機構24,26への供給電力を徐々に増加させ、リヤロックが生じない程度の制動力(
図7ではP8)で車両を制動する。
【0042】
なお、第2の前輪用制御部30が先に故障し、次いで第1の前輪用制御部28が故障した場合については、上記の説明における第1の前輪用制御部28と第2の前輪用制御部30を、また、左前輪用ブレーキ機構20と右前輪用ブレーキ機構22を、それぞれ読み替えればよい。
【0043】
なお、この他の故障の形態として、後輪用制御部32とパーキング用制御部38とが故障する場合が挙げられるが、この場合には第1の前輪用制御部28および第2の前輪用制御部30によって左右の前輪用ブレーキ機構20,22の制動力を増加させればよい。
【0044】
以上説明したように、実施の形態にかかる電動ブレーキ装置10は、3つの制御部28,30,32のうち少なくとも1つが故障した場合に、故障していない制御部のうち少なくとも1つが制動力を一時的に低減させるので、故障した制御部の制御対象のブレーキ機構の制動力が急激に下がった際に、車輪対間の制動力配分が崩れて車両の挙動が不安定になるのを防止する上で有利となる。
また、電動ブレーキ装置10は、4つのブレーキ機構20,22,24,26を3つの制御部28,30,32で制御可能なので、電動ブレーキ装置10の部品点数を削減して車両コストを低減する上で有利となる。
また、電動ブレーキ装置10は、1つの制御部が故障した際に、故障していない他の制御部のうち1つは制動力を増加させ、故障していない他の制御部のうち更に他の1つは制動力を一時的に低減させた後、他の制御部のうち1つによる制動力の増加に連動して制動力を増加させるので、車輪のロックを防止しつつ車両全体の制動力を確保する上で有利となる。
また、電動ブレーキ装置10は、2つの制御部で第1のブレーキ機構および第2のブレーキ機構を制御するので、第1のブレーキ機構および第2のブレーキ機構の可用性を高める上で有利となる。
特に、電動ブレーキ装置10は、左右の前輪用ブレーキ機構20,22に対して2つの制御部28,30を割り当てるとともに、後輪用ブレーキ機構24,26には左右で1つの制御部32を割り当てるので、仮に1つの制御部が故障した場合でも残りの前輪用ブレーキ機構20,22は制御可能となり、制動時における重要度がより高い前輪ブレーキの冗長性を高める上で有利となる。
また、電動ブレーキ装置10は、故障していない制御部は、車両に設定されている理想制動力配分値に基づいて制動力を低下させるので車輪対間の制動力のバランスが崩れていずれかの車輪対がロックするのを防止する上で有利となる。
特に、電動ブレーキ装置10は、第1の前輪用制御部28または第2の前輪用制御部30の少なくとも一方が故障した場合に、後輪用ブレーキ機構24,26の制動力を一時的に低減させるので、前輪用制御部の故障により前輪用ブレーキ機構20,22の制動力が急激に下がった際に、前後輪の制動力配分が理想制動力配分から外れることによりリヤロックが生じるのを防止する上で有利となる。
また、電動ブレーキ装置10は、前輪用制御部28,30の一方の故障時に後輪用ブレーキ機構24,26の制動力を一時的に低減させた後、前輪用制御部28,30の他方による前輪用ブレーキ機構20,22の制動力の増加に連動して後輪用ブレーキ機構24,26の制動力を増加させるので、リヤロックを防止しつつ車両全体の制動力を確保する上で有利となる。
また、電動ブレーキ装置10は、後輪用制御部32が故障した場合に、左前輪用ブレーキ機構20および右前輪用ブレーキ機構22の制動力をそれぞれ増加させるので、車両左右方向の制動力を均衡させつつ故障前に近い制動力を確保する上で有利となる。
また、電動ブレーキ装置10は、後輪用制御部32が故障した場合にパーキングブレーキ機構34,36を作動させて左後輪16および右後輪18に対する制動力を発生させるので、前後輪の制動力配分が極端に変化するのを防止して、より高い制動力を得ることができる。
また、電動ブレーキ装置10は、前輪用制御部28,30の一方と後輪用制御部32とが故障した場合に、前輪用制御部28,30によって前輪用ブレーキ機構20,22の制動力を増加させつつ、パーキングブレーキ機構34,36を作動させて左後輪16および右後輪18に対する制動力を発生させるので、前後輪の制動力配分が極端に変化するのを防止して、車両の走行姿勢を安定させる上で有利となるとともに、故障前に近い制動力を確保する上で有利となる。
また、電動ブレーキ装置10は、各ブレーキ機構20,22,24,26は、車輪と共に回転する被摩擦部材に対して、電動アクチュエータで摩擦部材を押圧することにより制動力を得るので、従来の油圧式ブレーキと比較してブレーキ操作への応答性を向上させる上で有利であるとともに、車両の状態に応じた様々なブレーキ制御を行う上で有利となる。
また、電動ブレーキ装置10は、被摩擦部材としてブレーキディスクを、摩擦部材としてブレーキパッドを用い、放熱性が高いディスクブレーキシステムを採っているので、摩擦熱による影響を低減して安定した制動力を得る上で有利となる。
また、電動ブレーキ装置10において、左後輪用ブレーキ機構24および右後輪用ブレーキ機構26がパーキングブレーキ機構34,36を兼ねるようにすれば、専用のパーキングブレーキ機構を設ける場合と比較して車両の軽量化および車両構成の簡素化を図る上で有利となる。
また、電動ブレーキ装置10において、ブレーキディスクの中央部にドラムブレーキシステムを設けてパーキングブレーキ機構34,36を構成するようにすれば、左後輪用ブレーキ機構24または右後輪用ブレーキ機構26(常用ブレーキ)が故障した場合でも確実にパーキングブレーキ機構34,36を作動させる上で有利となる。
また、電動ブレーキ装置10は、ブレーキ機構20,22,24,26に電力を供給するバッテリを2つ設けているので、メインバッテリ40が故障した場合でもサブバッテリ42によりブレーキ機構20,22,24,26を作動させることができ、ブレーキ機構20,22,24,26を確実に作動させる上で有利となる。
【0045】
なお、本実施の形態では、車両の4輪が、車両の全幅方向に間隔を置いて配置される第1の車輪および第2の車輪からなる第1の車輪対と、全幅方向に間隔を置いて配置される第3の車輪および第4の車輪からなり第1の車輪対から前記車両の全長方向に間隔を置いて配置される第2の車輪対と、からなるとした場合に、第1の車輪は左前輪12であり、第2の車輪は右前輪14であり、第3の車輪は左後輪16であり、第4の車輪は右後輪18であるものとしたが、これに限らず、例えば第1の車輪を左後輪16とし、第2の車輪を右後輪18とし、第3の車輪を左前輪12とし、第4の車輪を右前輪14としてもよい。
この場合、左右の後輪16,18のブレーキ機構24,26が2つの制御部(第1の制御部、第2の制御部)により制御され、左右の前輪12,14のブレーキ機構20,22が単一の制御部(第3の制御部)により制御されることとなる。
【0046】
また、本実施の形態では、4つの車輪12,14,16,18のブレーキ機構20,22,24,26を3つの制御部28,30,32で制御する場合について説明したが、
図9に示すように4つ以上の制御部を設けてもよい。
図9の例では、左右の後輪用ブレーキ機構24,26を制御する制御部として、後輪用制御部(第1の後輪用制御部)32に加えて、第2の後輪用制御部33を設けている。
この場合、第1の前輪用制御部28が故障した場合には、第2の前輪用制御部30の制動力を上昇させる。その際、第1および第2の後輪用制御32,33はリヤロックしないように一時的に制動力を低下させ、その後理想制動力配分に沿って制動力を上昇させる。
第2の前輪用制御部30が故障した場合も、第1の前輪用制御部28が故障した場合と同様である。
第1の後輪用制御部32が故障した場合には、第2の後輪用制御部33の制動力を上昇させる。また、第1および第2の前輪用制御部28,30もそれぞれ制動力を上昇させる。
第2の後輪用制御部33が故障した場合も、第1の後輪用制御部32が故障した場合と同様である。
【0047】
また、第1および第2の前輪用制御部28,30が故障した場合には、第1および第2の後輪用制御部32,33によってリヤロックしない程度に制動を行う。
第1の前輪用制御部28と第1の後輪用制御部32が故障した場合には、第2の前輪用制御部30と第2の後輪用制御部33の制動力を上昇させる。
第1の前輪用制御部28と第2の後輪用制御部33が故障した場合や、第2の前輪用制御部30と第1の後輪用制御部32が故障した場合、第2の前輪用制御部30と第2の後輪用制御部33が故障した場合も、第1の前輪用制御部28と第1の後輪用制御部32が故障した場合と同様である。
第1のおよび第2の後輪用制御部32と33が故障した場合には、第1および第2の前輪用制御部28,30の制動力を上昇させる。
これにより、制御部が二重故障した場合でも安定した制動を実施することができる。