(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上面にセンサ面が形成される半導体基板よりなるセンサ本体を備え、前記センサ面上における固体状の試料に接触する試験溶液中に分布するイオン濃度の二次元分布を測定する化学イメージングセンサであって、
前記センサ本体の下面側に配置され、該センサ本体にて中央に形成された開口が覆われる環状の基板と、
該基板の上面に前記センサ本体を囲うよう配置され、中空部に試料充填空間を有する試料支持筒と、
該試料支持筒に前記試料充填空間と連通するよう形成され、互いに対向して配置される前記試験溶液の流入路および流出路と、
を備え、
前記基板の開口に、複数の貫通孔を有するせん断補強材が設置されるとともに、前記試料支持筒の上端に、着脱自在な試料保護蓋が設置され、
前記試料充填空間を拘束するよう、前記試料保護蓋、前記試料支持筒および前記基板が、固定治具にて固定されることを特徴とする化学イメージングセンサ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の方法は、固体試料に対して溶液が静止している状態の経時変化を把握する場合には有効な分析方法である。しかし、例えば、汚染物質が存在する領域に近接する地盤を、汚染物質に接触して汚染された地下水が常時流下する環境をセンサ本体上で再現し、地盤への経時的な影響を化学イメージングセンサにて把握したい場合には、上記の方法を採用することができない。
【0006】
また、固体状の試料が水膨潤性を有する場合には、センサ本体の測定面上で経時的に固体試料の容積変化が生じて、正確なpH分布を測定することが困難となる。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、測定対象となる固体状の試料が一方向に連続して流下する試験溶液中に常時浸漬される状態を形成でき、かつ試料の間隙を通過する試験溶液に形成されるpH分布の経時変化を、高精度で測定することの可能な、化学イメージングセンサおよび化学イメージングセンサを用いたpH分布の経時変化測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するため本発明の化学イメージングセンサは、上面にセンサ面が形成される半導体基板よりなるセンサ本体を備え、前記センサ面上における固体状の試料に接触する試験溶液中に分布するイオン濃度の二次元分布を測定する化学イメージングセンサであって、前記センサ本体の下面側に配置され、該センサ本体にて中央に形成された開口が覆われる環状の基板と、該基板の上面に前記センサ本体を囲うよう配置され、中空部に試料充填空間を有する試料支持筒と、該試料支持筒に前記試料充填空間と連通するよう形成され、互いに対向して配置される前記試験溶液の流入路および流出路と、を備え
、前記基板の開口に、複数の貫通孔を有するせん断補強材が設置されるとともに、前記試料支持筒の上端に、着脱自在な試料保護蓋が設置され、前記試料充填空間を拘束するよう、前記試料保護蓋、前記試料支持筒および前記基板が、固定治具にて固定されることを特徴とする。
【0009】
上記の化学イメージングセンサによれば、試料支持筒に形成された流入路を介して試料支持筒に備える試料充填空間に試験溶液を供給し、供給後の試験溶液を流入路に対向して試料支持筒に形成された流出路を介して排水することができる。これにより、センサ面上で固体状の試料が一方向に連続して流下する試験溶液中に常時浸漬される環境を形成できるとともに、固体状の試料の間隙を通過する試験溶液に形成されるpH分布を測定することも可能となる。
【0010】
また、固体状の試料が膨潤性を有する材料であっても、センサ本体に作用する膨潤圧を複数の貫通孔を有するせん断補強材にて支持することができるため、センサ本体のせん断破壊現象を抑制することが可能となる。さらに、試料保護蓋、試料支持筒および基板を固定して試料充填空間を拘束することにより、試料充填空間内で経時的に膨潤する固体状の試料を定容に保持できるため、試料の間隙を通過する試験溶液中に形成されるpH分布の経時変化を高精度に把握することが可能となる。
【0011】
本発明の化学イメージングセンサは、前記流入路に連通して、前記試験溶液を前記試料充填空間に圧送供給するための圧送装置が備えられることを特徴とする。
【0012】
上記の化学イメージングセンサによれば、固体状の試料の間隙率が小さい場合にも、圧送装置を用いて強制的に試験溶液を固体状の試料中に流下させることが可能となる。また、圧送装置にて試験溶液の圧送速度を調整することにより、固体状の試料中を連続して流下する試験溶液の流速を適宜変更することができるため、試験溶液が固体状の試料中を連続して流下することにより生じる試料の経時的な変状状況を、所望の流速にて把握することが可能となる。
【0014】
本発明の化学イメージングセンサを用いたpH分布の経時変化測定方法は、前記固体状の試料を前記試料充填空間に充填した後、前記試験溶液を前記流入路から前記試料充填空間へ連続的に供給しつつ、固体状の試料内の間隙を通過する前記試験溶液に形成されるpH分布を経時的に測定することを特徴とする。
【0015】
本発明の化学イメージングセンサを用いたpH分布の経時変化測定方法によれば、一方向に連続して流下する試験溶液中に常時浸漬された状態の固体状の試料について、その表面が経時的に変状する様子を、試料の間隙を通過する試験溶液に形成されるpH分布の経時変化から高精度に把握することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、測定対象の試料に対して試験溶液を流下させて、固体状の試料が一方向に連続して流下する試験溶液中に常時浸漬される環境をセンサ本体のセンサ面上にて形成できるとともに、試料の表面が経時的に変状する様子を、試料の間隙を通過する試験溶液に形成されるpH分布の経時変化から高精度に把握することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、固体状の試料に土質試料1を用いる場合を例に挙げ、本発明の化学イメージングセンサ2を、
図1〜
図9を参照して詳述する。
なお、固体状の試料は必ずしも土質試料1に限定されるものではなく、粒状体の集合や空隙を有する固形物等、試験溶液が流下可能な間隙もしくは空隙を有する固体状の材料であれば、いずれを採用してもよい。
【0019】
<第1の実施の形態>
本実施の形態における化学イメージングセンサ2は、
図3で示すように、測定対象の土質試料1を一方向に連続して流下する試験溶液4中に常時浸漬させた状態において、土質試料1の土粒子3間の間隙中を通過する試験溶液4内に形成されるpH分布を測定するものである。
【0020】
化学イメージングセンサ2は、電解質中のpH分布を測定する際に使用される半導体化学センサであり、
図1及び
図2で示すように、半導体(Si)211上に絶縁体(SiO
2/Si
3N
4)212を積層した半導体基板よりなるセンサ本体21と、試験溶液4に浸される参照電極25と、センサ本体21の下面側に設置される対極26と、センサ本体21の近傍であって、センサ本体21の下面にレーザー光271を照射するための半導体レーザー27と、レーザー光271がセンサ本体21の下面全域を移動しながら照射するよう、レーザー光271を移動させるためのxyステージ28を備える。
【0021】
また、
図1で示すように、センサ本体21の下面側に基板5を備えるとともに、センサ本体21を囲うように配置される試料支持筒6を備えている。基板5は、
図2で示すように、中央部分に開口51を有する環状の板材よりなり、その上面に、
図1で示すように、開口51を覆うようにセンサ本体21が配置されるとともに、試料支持筒6が設置される。
【0022】
試料支持筒6は、土質試料1が充填される試料充填空間7となる中空部を有する筒状体よりなり、その上部に土質試料1を保護するための試料保護蓋61を備えている。また、試料支持筒6には、試料充填空間7と連通して試験溶液4を供給および排出するための流入路62および流出路63が備えられており、流入路62と流出路63は互いに対向するよう配置されている。これにより、試験溶液4は、
図3で示すように、流入路62から試料充填空間7に流入するとともに、試料充填空間7内より流出路63を介して排出されて、土質試料1を一方向に連続して流下する試験溶液4中に常時浸漬された状態とすることが可能となる。
【0023】
なお、試料支持筒6の上面と試料保護蓋61との接合部、および試料支持筒6の下面と基板5との接合部には、
図1で示すように、試料充填空間7に流入した試験溶液4が漏れ出ることのないよう、ゴムパッキン13を設置しておくとよい。
【0024】
上記の化学イメージングセンサ2に対して本実施の形態ではさらに、試料支持筒6の中空部に試料充填空間7を挟んで一対の多孔質部材81、82を備えている。多孔質部材81、82は、それぞれを流入路62及び流出路63に接続するとともに対向するように配置されており、
図4の平面図で示すように、試料充填空間7と接する面積を広く確保している、これにより、試料充填空間7に充填される土質試料1に対して、平面視で広い範囲に試験溶液4を均等に流下させることができる。なお、多孔質部材81、82は、少なくとも土質試料1を充填する際の側圧で変形しない程度の剛性を備える材料であれば、いずれの多孔質材料を採用してもよい。
【0025】
また、本実施の形態では、
図1で示すように、流入配管9を介して流入路62と接続する溶液タンク10、および流出配管11を介して流出路63と接続する排水タンク12を備えるとともに、流入配管9および流出配管11にそれぞれバルブ91、111を備えている。溶液タンク10は、試験溶液4を貯留する密閉構造のタンクであり、図示しない送気調整バルブを備えた窒素タンクよりなる圧送装置101が接続されている。
【0026】
これにより、圧送装置101から溶液タンク10へ送気調整バルブを介して送気量を調整した窒素ガスを供給することで、試験溶液4を流入配管9および流入路62を介して試料充填空間7に所望の送圧にて供給することができる。このため、例えば試料充填空間7に土質試料1が密に充填されて土粒子3間の間隙が小さい場合であっても、試験溶液4は滞留することなく土質試料1内を流下することが可能となる。また、試験溶液4が土質試料1中を流下することにより生じる土質試料1の変状状況を把握したい場合にも、溶液タンク10へ送気調整バルブを介して窒素ガスを送気する際の流速を調整することで、試験溶液4が土質試料1中を流下する流速を、適宜変更することが可能となる。
【0027】
なお、本実施の形態では、溶液タンク10に設置する圧送装置101に送気調整バルブを備えた窒素タンクを用いたが、必ずしも上記の構成に限定されるものではなく、例えば圧縮空気を利用するコンプレッサを採用する等、試験溶液4を試料充填空間7へ圧送供給できる構成を有していれば、いずれの構造を有するものであってもよい。そして、これら溶液タンク10には、先に述べた参照電極25が設置されるとともに、
図2および
図4で示すように、対極26がセンサ本体21の下面側に配置される前述した基板5の突出部52に設置される。
【0028】
上述する構成を備える化学イメージングセンサ2は、半導体(Si)211と試験溶液4間にバイアス電圧を印加しつつ、センサ本体21の下面全域を網羅するよう、レーザー光271を
図5で示すように移動させながら順に照射する。そして、センサ本体21の下面におけるレーザー光271が照射された局所領域22各々の交流光電流を測定する。局所領域22ごとで測定された交流光電流は、位置座標と共にパソコン等の端末装置23に記録されるとともにpHに変換され、土質試料1の間隙を通過する試験溶液4に形成されたpHの2次元的な空間分布としてグレースケールやカラースケールでモニタ24に画像表示される。
【0029】
なお、pHは、交流光電流のバイアス電圧特性が、土質試料1中のpHに依存してバイアス電圧方向にシフトすることを利用して測定されるものである。ここで用いるバイアス電圧とは、半導体(Si)211に対する参照電極25の電位をいう。また、センサ本体21は、基板5の上面に配置されているものの、先にも述べたように開口51の上方に配置されているため、基板5がセンサ本体21の下面に対するレーザー光271の照射を妨げることはない。
【0030】
<第2の実施の形態>
ところで、土質試料1が水膨潤性を有する場合において、土質試料1は試験溶液4に接することにより試料充填空間7内で経時的に膨潤し、
図6で示すように、試料支持筒6、試料保護蓋61、多孔質部材81、82、およびセンサ本体21に膨潤圧を作用させる。なかでも、センサ本体21に膨潤圧が作用すると、センサ本体21にせん断破壊が生じてpH分布の測定が不能となる事態が想定される。
【0031】
そこで、
図6で示すように、基板5の開口51に、複数の貫通孔を有するせん断補強材14を設置し、せん断補強材14にて膨潤圧を支持することでセンサ本体21のせん断破壊を防止している。本実施の形態では、
図7で示すように、基板5の開口51に相当する領域に、パンチングメタルよりなるせん断補強材14を装着する構成としているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、ラス網や複数の貫通孔を有する板材等、いずれのせん断補強材14を採用してもよい。また、複数の貫通孔を有するせん断補強材14の材質および部材厚は、土質試料1が膨潤することにより生じる膨潤圧に応じて、適宜決定すればよい。
【0032】
しかし、基板5の開口51にせん断補強材14を設置すると、せん断補強材14がセンサ本体21の下面に対するレーザー光271の照射を妨げることとなり、
図8で示すように、レーザー光271の照射面が必ずしもセンサ本体21の下面とならず、交流光電流が測定できない局所領域221が存在することとなる。このため、せん断補強材14における孔141の配置間隔を、
図8で示すように、レーザー光271の進行方向及び進行方向直交方向ともに、交流光電流を測定できない局所領域221が、隣り合う交流光電流を測定可能な局所領域22の間に多くても2個存在するまでにとどまるように設定している。
【0033】
こうすると、交流光電流を測定できない局所領域221は交流光電流を測定可能な局所領域22と、レーザー光271の進行方向もしくは進行方向直交方向のいずれかで必ず隣接することとなる。よって、例えば、交流光電流を測定できない局所領域221に、隣接する交流光電流を測定可能な局所領域22の測定値を代用させる等することで、pHの2次元的な空間分布を画像表示することができ、基板5の開口51にせん断補強材14を設置しない場合と、同程度の精度を確保することが可能となる。
【0034】
なお、センサ本体21とレーザー27との間にせん断補強材14を介在させた場合における交流光電流を測定できない局所領域221の処理方法は、必ずしも上記の方法に限定されるものではなく、いずれの画像処理方法を採用してもよい。また、せん断補強材14における孔141の配置形状や孔141の大きさは、土質試料1より作用される膨潤圧を支持可能な強度を有するとともに、上記の配置間隔を満足していれば、何ら限定されるものではない。しかし、せん断補強材14の開口率は、pHの2次元的な空間分布を画像表示する際の信頼性を考慮すると、発明者の知見から、少なくとも20%以上に設定することが好ましい。
【0035】
また、本実施の形態では、
図1で示すように、試料支持筒6を試料保護蓋61及び基板5にて挟持するようにして締め付けボルトよりなる固定手段15にて締付け固定し、試料充填空間7を拘束している。これにより、水膨潤性を有する土質試料1を試験溶液4中に浸漬させた状態においても、土質試料1を試料充填空間7内で定容に保持でき、pH分布の経時変化を高精度に把握することが可能となる。なお、固定手段15は、試料充填空間7を定容に保持できるものであればいずれを採用してもよく、また、多孔質部材81、82は、少なくとも土質試料1が継時的に膨潤することにより生じる膨潤圧にて変形しない程度の剛性を備える材料を採用するとよい。
【0036】
上記の化学イメージングセンサ2によれば、土質試料1が膨潤性を有する材料であっても、センサ本体21に作用する膨潤圧をせん断補強材14にて支持することができるため、センサ本体21のせん断破壊現象を抑制することが可能となる。また、試料保護蓋61、試料支持筒6および基板5を固定して試料充填空間7を拘束することにより、試料充填空間7内で経時的に膨潤する土質試料1を定容に保持できるため、土質試料1の間隙を通過する試験溶液4中に形成されるpH分布の経時変化を高精度に把握することが可能となる。
【0037】
<化学イメージングセンサを用いたpH分布の経時変化測定方法>
上述する構成の化学イメージングセンサ2を用いたpH分布の経時変化測定方法を、以下に説明する。
【0038】
本実施の形態では、産業廃棄物や放射性廃棄物等を格納したコンクリート造の地下構造物における地下水の下流側に、セメント系材料やベントナイト等からなる人工バリアを構築した場合において、地下構造物に接触して強アルカリ性を呈した地下水が、ベントナイトに及ぼす影響を経時的に把握するべく、土質材料1にベントナイトを、また試験溶液4にpH調整した水酸化ナトリウム溶液を採用した。また、ベントナイトは水膨潤性を有する材料であるため、化学イメージングセンサ2に用いる基板5の開口51には、せん断補強材14を装着した。
【0039】
まず、溶液タンク10に試験溶液4を貯留し、流入配管9のバルブ91および流出配管11のバルブ111を閉状態にするとともに、試料支持筒22の内方における試料充填空間7に土質試料1を充填し、固定手段15にて試料支持筒6、試料保護蓋61及び基板5締付け固定する。このとき、センサ本体21と土質試料1との間には、空隙ができないよう密着させる。
【0040】
次に、流入配管9のバルブ91および流出配管11のバルブ111を開状態にして、試験溶液4を試料充填空間7に供給する。土質試料1が試験溶液4に浸漬したことを排水タンク12にて確認した後、流出配管11のバルブ111を閉状態にする。なお、試験溶液4が試排水タンク12にて確認できない場合には、溶液タンク10に設置した圧送装置101を作動させて試験溶液4を試料充填空間7に圧送供給する。
【0041】
この後、
図1に示すように、バイアス電圧を印加するとともに、半導体(Si)211の下面にレーザー光271を照射して、半導体(Si)211の下面におけるレーザー光271が照射された局所領域22各々の交流光電流を測定する。これにより局所領域22各々でI−V曲線が得られるから、各々のI−V曲線から任意に固定したバイアス電圧の交流光電流値を検出し、これを土質試料1を試験溶液4に浸漬させた初期状態における局所領域22各々の基準電流値として設定する。
【0042】
上記の測定が終了した後、流出配管11のバルブ111を開状態として、試験溶液4を土質試料1中に一方向に連続して流下させて、バイアス電圧を印加するとともに、センサ本体21の下面にレーザー光271を照射して、所定時間後のレーザー光271が照射された局所領域22各々の交流光電流を測定する。
【0043】
先にも述べたが、I−V曲線は
図9で示すように、土質試料1内を流下する試験溶液4のpHに依存してバイアス電圧方向にシフトすることが知られている。そして、試験溶液4内は、土質試料1の表面状態に応じてプロトンが放出されるから、土質試料1を試験溶液4に浸漬させた初期状態とは異なるpH分布が形成される。したがって、所定時間後に局所領域22各々で得られるI−V曲線は、土質試料1を試験溶液4に浸漬させた初期状態で得たI−V曲線と比較して、pHの変化量に応じてバイアス電圧方向にシフトする。
【0044】
そこで、局所領域22各々において、所定時間後のI−V曲線から先に設定した基準電流値に対応するバイアス電圧値を検出し、このバイアス電圧値と先に固定したバイアス電圧値との差から、土質試料1を試験溶液4に浸漬させた初期状態のI−V曲線に対する、試験溶液4を連続的に流下させてから所定時間経過後のI−V曲線のバイアス電圧のシフト量を算定する。そして、このシフト量をpHあたりの起電力の理論値(59mv/pH)で除することにより、局所領域22各々のpHの変化量を算出する。
【0045】
上記の測定を適宜な時間間隔で繰り返し、経過時間ごとで土質試料1を試験溶液4に浸漬させた初期状態で得たpH分布に対するpHの変化量を測定し、グレースケールにて画像表示することにより、土質試料1の間隙を通過する試験溶液4内におけるpH分布の経時変化を可視化する。
【0046】
このように、本発明の化学イメージングセンサ2によるpH分布の経時変化測定方法によれば、一方向に連続して流下する強アルカリ性を呈する試験溶液4中に浸漬されたベントナイトよりなる土質試料1の表面が経時的に劣化もしくは変状する様子を、pH分布の経時変化から高精度に把握することが可能となる。
【0047】
なお、本実施の形態では、土質試料1にベントナイトを採用したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、いずれの自然土質試料もしくは人工土質試料を採用してもよい。また、試験溶液4についてもアルカリ溶液に限定されるものではなく、電解質であればいずれを採用してもよい。したがって、例えば試験溶液4に地下汚染物質を含む溶液を採用して、センサ本体21上で土質試料1の汚染状態や劣化状態等の経時的な変状を再現し、これをpH分布の経時変化から高精度に把握することも可能である。
【0048】
本発明の化学イメージングセンサ2および化学イメージングセンサ2を用いたpH分布の経時変化測定方法は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【0049】
例えば、本実施の形態では、半導体レーザー27を用いて半導体(Si)211の下面にレーザー光271を照射したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、LEDを用いて半導体(Si)211の下面にLED光を照射してもよい。