(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)につき詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0013】
(第1実施形態)
(構成の説明)
図1は、本発明の第1実施形態である光通信システムの構成図である。
光通信システム200は、2つの光通信装置100a,100bから構成されており、互いに距離L(例えば、数m)だけ離間している。光通信システム200は、照明光を利用した可視光通信システムであり、特にIEEE802.11a/n/acに代表されるOFDM(Orthogonal Frequency-Division Multiplexing)信号と例えば10Mbps以上の広帯域変調帯域幅を用いて,大容量データ伝送を実現するための可視光通信向け光送受信システムでもある。
【0014】
光通信装置100aは、送受信モジュール10(10a)と、導光体としての内部反射型放物面レンズ13とを備え、光通信装置100bは、送受信モジュール10bと、導光体としての内部反射型放物面レンズ13とを備えている。光通信装置100aの内部反射型放物面レンズ13が光通信装置100bの内部反射型放物面レンズ13と距離Lだけ離間して対向している。
【0015】
送受信モジュール10aは、光電変換素子としての近赤外線LED11と、光電変換素子としての可視光帯フォトダイオード(PD)15と、ベースバンドIC3と、可視光通信用回路4と、実装基板6と、遮光板7とを備えている。一方、送受信モジュール10bは、ベースバンドIC3と、可視光通信用回路4と、実装基板6と、遮光板7とを備えている点で共通するが、光電変換素子としての可視光帯LED14と、光電変換素子としての近赤外線フォトダイオード12とを備えている点で相違する。
【0016】
近赤外線LED11は、波長750nm〜2000nmの発光ダイオードであり、砲弾型の形状であり、内部にLEDチップ11aを備え、一般的な指向性を有するインコヒーレント光(非干渉光)を発生する。近赤外線LED11は、例えばGaAlAsを用いて作成された波長850〜890nm程度のものが好ましい。可視光帯フォトダイオード15は、波長750nm未満の可視光の光強度を電流に変換するシリコンフォトダイオードであり、内部にPDチップ15aを備える。可視光帯フォトダイオード15は、特に、短波側の波長で仕様を規定したPDを使用するのが好ましい。近赤外線フォトダイオード12は、近赤外線LED11と同波長帯に感度特性合わせたシリコンフォトダイオードであり、内部にPDチップ12aを備える。可視光帯LED14は、例えばInGaNを用いて作製された波長460〜570nm程度の砲弾型発光ダイオードであり、内部にLEDチップ14aを備え、一般的な指向性を有するインコヒーレント光を発生する。
【0017】
ベースバンドIC3は、光を変調する高周波信号(伝送信号)を生成するICである。該高周波信号は、本実施形態では、特に規定しないが、周波数利用効率の高いOFDMを利用することができるものとする。可視光通信用回路4は、ベースバンドIC3が出力する高周波信号を、D/A変換、電力増幅して、近赤外線LED11や可視光帯LED14を駆動する機能を有する。また、可視光通信用回路4は、可視光帯フォトダイオード15や近赤外線フォトダイオード12が流す電流を電圧に変換するTIA(Trance Impedance Amplifier)、低雑音電力増幅器、A/D変換回路の機能も有し、アナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0018】
送受信モジュール10aの実装基板6は、近赤外線LED11と可視光帯フォトダイオード15とを搭載する。送受信モジュール10bの実装基板6は、近赤外線フォトダイオード12と可視光帯LED14とを搭載する。送受信モジュール10aの遮光板7は、近赤外線LED11と可視光帯フォトダイオード15との間に配設され、近赤外線LED11が発光した光が可視光帯フォトダイオード15に影響を及ぼさないように遮光している。送受信モジュール10bの遮光板7は、可視光帯LED14と近赤外線フォトダイオード12との間に配設され、発光部としての可視光帯LED14が出射した光が受光部としての近赤外線フォトダイオード12に影響を及ぼさないようにしている。
【0019】
図2Aは、内部反射型放物面レンズの斜視図であり、
図2Bは、内部反射型放物面レンズの外形図である。
内部反射型放物面レンズ13は、両端面13a,13bが平行、且つ面積が異なるガラス等の透光性媒体で形成された軸状の導光体であり、全表面が空気に露出している。内部反射型放物面レンズ13は、LEDの放射光の角度及びPDへの入射光の角度を満足するような大きさに形成されており、例えば、面積が大きい方の端面13a(広い方の端面13a)の外径は、φ14.24mmに形成されており、面積が小さい方の端面13b(狭い方の端面13b)の外径は、φ3.4mmに形成されており、長さlは、29.02mmに形成されている。
【0020】
光学ガラス(屈折率n
1=1.5229)の内部において、空気(屈折率n
0=1.0)との界面に入射する入射光Iは、入射角θiが臨界角θc=sin
−1(n
0/n
1)=45.6°よりも小さいときには、空気に透過する透過成分が存在するが、入射角θiが臨界角θcよりも大きいときには、全反射(内部反射)する。ここで、内部反射型放物面レンズ13は、外周壁面13cの少なくとも一部が略回転放物面に形成されていることにより、広い方の端面13aに入射した平行光が、回転放物面の焦点Pに集光するように内部反射し、狭い方の端面13bから収束光が出射するものである。つまり、内部反射型放物面レンズ13は、略回転放物面に形成された部分が実質的に反射鏡として機能する。なお、広い方の端面13aに入射した平行光であって、端面13bの径内の平行光は、平行光のまま、端面13bから出射する。
【0021】
また、広い方の端面13aに入射した略平行光(例えば、入射角25°以内)は、1回の内部反射で焦点Pの近傍に集光したり、内部反射を繰り返したりして、焦点Pの近傍に集光する。さらに、広い方の端面13aに入射した平行光以外の光(非平行光)は、内部反射を繰り返して、焦点Pに集光しつつ、端面13bから出射する。
【0022】
なお、内部反射型放物面レンズ13は、一般的な非球面の式でも表現される。つまり、光軸からの距離をxとして、サグ量Z(x)は、
Z(x)=1+Cx
2/[1+√{1−(1+k)C
2x
2}]+A
2x
2+A
4x
4+A
6x
6+A
8x
8+・・・
で表現される。例えば、曲率(曲率半径の逆数)C=−0.00661615であり、円錐定数k=21.98945555であり、係数A
2=6.634803136×10
−4であり、係数A
4=−3.044342167×10
−6であり、係数A
6=6.004115152×10
−9であり、係数A
8=−1.209582175×10
−11である。
【0023】
図1に戻り、近赤外線LED11、及び可視光帯フォトダイオード15は、内部反射型放物面レンズ13の端面13bの側であって、且つ、端面13bの面内に対向配置されている。つまり、近赤外線LED11、及び可視光帯フォトダイオード15は、内部反射型放物面レンズ13の端面13bの面内に収容されている。また、LEDチップ11a、及びPDチップ15aの中心は、内部反射型放物面レンズ13の焦点P(
図2B(a))の略一致するように配設されている。
【0024】
(動作の説明)
光通信システム200は、近赤外線LED11が発光した光を近赤外線フォトダイオード12が受光する往路と、可視光帯LED14が発光した光を可視光帯フォトダイオード15が受光する復路とで通信が行われる。近赤外線LED11と可視光帯LED14とは、波長帯が異なっており、互いの光伝送の邪魔(信号が漏洩しない)にならないようになっている。
【0025】
内部反射型放物面レンズ13は、近赤外線LED11や可視光帯LED14から放射された光が狭い方の端面13bに入射し、ある程度拡散されて、広い方の端面13aから放出される。逆に、内部反射型放物面レンズ13は、端面13aに入射した光がレンズ内で反射を繰り返し、端面13bからある程度集光されて、収束光が近赤外線フォトダイオード12や可視光帯フォトダイオード15で受光される。
【0026】
(効果の説明)
以上説明したように、第1実施形態の光通信システム200によれば、2つの内部反射型放物面レンズ13の広い方の端面13aが対向しているので、光軸の位置ズレ(偏心)が少なくなる。また、1つの内部反射型放物面レンズ13の狭い方の端面13bに発光素子(近赤外線LED11,可視光帯LED14)と、受光素子(近赤外線フォトダイオード12,可視光帯フォトダイオード15)とが並設されているので、インコヒーレント光を用いた送受一体型の空間伝送を可能とし、送受信モジュール10a,10bの小型化が可能となる。
【0027】
(第2実施形態)
(構成の説明)
図3は、本発明の第2実施形態である光通信システムの構成図である。
光通信システム201は、光通信装置101aと光通信装置101bとを備え、光通信装置101aは、送受信モジュール10cと内部反射型放物面レンズ13とを備え、光通信装置101bは、送受信モジュール10dと内部反射型放物面レンズ13とを備えている。
【0028】
送受信モジュール10cは、第1実施形態の送受信モジュール10aと同様に、光電変換素子としての近赤外線LED11と、光電変換素子としての可視光帯フォトダイオード(PD)15と、ベースバンドIC3と、可視光通信用回路4と、実装基板6と、遮光板7とを備えているが、近赤外線LED11に近赤外線ARコート21を施している点で相違する。
【0029】
送受信モジュール10dは、第1実施形態の送受信モジュール10bと同様に、ベースバンドIC3と、可視光通信用回路4と、実装基板6と、遮光板7とを備えている点で共通するが、光電変換素子としての可視光帯LED14と、光電変換素子としての近赤外線フォトダイオード12とを備えているが、近赤外線フォトダイオード12に近赤外線ARコート21を施している点で相違する。
【0030】
近赤外線ARコート21は、表面反射を少なくして、透過光を多くすると同時に反射による散乱光を除去するものであり、近赤外線LED11による可視光帯フォトダイオード15への影響を少なくすることができ、伝送チャネル間で高いアイソレーションを保つことができるようになる。また、近赤外線ARコート21は、例えば756nm以上の反射防止膜を用いた場合、650nm近傍の赤色LEDの反射率が高くなる性質を有するので、可視光帯LED14による近赤外線フォトダイオード12への影響を少なくすることができる。つまり、近赤外線ARコート21の使用は、650nm近傍の赤色LEDと波長帯が近い850〜950nm帯の近赤外線LEDの使用が可能となる。
【0031】
(効果の説明)
以上説明したように、第2実施形態の光通信システム201は、第1実施形態の光通信システム200に比べ、伝送チャネル間のアイソレーションが向上する効果と、例えば赤と近赤外と波長の近いLEDやPDを使用できるようなる効果が得られる。
【0032】
(第3実施形態)
第1,2実施形態のLED、及びフォトダイオードは、砲弾型の素子を用いたが、LEDチップや、フォトダイオードチップを使用することもできる。
(構成の説明)
図4は、本発明の第2実施形態である光通信システムの構成図である。
光通信システム202は、光通信装置102aと光通信装置102bとから構成され、光通信装置102aは、送受信モジュール10eと内部反射型放物面レンズ13とを備え、光通信装置102bは、送受信モジュール10fと内部反射型放物面レンズ13とを備えている。
【0033】
送受信モジュール10eは、ベースバンドIC3と、可視光通信用回路4と、実装基板6と、近赤外線チップLED41と、可視光チップフォトダイオード42と、保護ガラス43と、パッケージ44とを備える。また、送受信モジュール10fは、ベースバンドIC3と、可視光通信用回路4と、実装基板6と、近赤外線チップフォトダイオード46と、可視光帯チップLED47と、保護ガラス43と、パッケージ44とを備える。
【0034】
近赤外線チップLED41は、波長750nm以上のLEDチップであり、発光面でインコヒーレント光を発生する。可視光チップフォトダイオード42は、波長750nm未満の可視光の光強度を電流に変換するシリコンフォトダイオードである。近赤外線チップフォトダイオード46は、近赤外線チップLED41と同波長帯に感度特性を合わせたシリコンフォトダイオードである。可視光帯チップLED47は、波長460〜570nm程度のLEDチップであり、発光面でインコヒーレント光を発生する。
【0035】
送受信モジュール10eの遮光板45は、近赤外線チップLED41が照射する光が可視光チップフォトダイオード42に入射することを防止するためのものである。送受信モジュール10fの遮光板45は、可視光帯チップLED47が照射する光が可視光チップフォトダイオード46に入射することを防止するためのものである。なお、遮光板45は、仕様に応じてあってもよく、無くてもよい。パッケージ44は、例えば、汎用のCANパッケージである。保護ガラス43は、板ガラスであるが、目的に応じてレンズ形状に形成することもできる。
【0036】
(効果の説明)
以上説明したように、第3実施形態の光通信装置102a,102bは、第1,2実施形態の光通信装置に比較して、単一のパッケージ44の内部にLEDとPDとの双方を搭載している。これにより、光通信装置102a,102bは、発光部/受光部を小型化することができる、と同時にパッケージ44の出射面/入射面が小さくなるので、これに対向する内部反射型放物面レンズ13の端面13bも小さくすることが可能となる。つまり、光通信装置102a,102bは、モジュール全体で小型化する効果が得られる。
【0037】
(第4実施形態)
(構成の説明)
図5は、本発明の第4実施形態である光通信システムの構成図である。
光通信システム203は、光通信装置103aと光通信装置103bとから構成されており、光通信装置103aは、送受信モジュール10gと内部反射型放物面レンズ13とを備え、光通信装置103bは、送受信モジュール10hと内部反射型放物面レンズ13とを備える。
【0038】
送受信モジュール10gは、第3実施形態の送受信モジュール10eと同様に、ベースバンドIC3と、可視光通信用回路4と、実装基板6と、近赤外線チップLED41と、可視光チップフォトダイオード42と、保護ガラス43と、パッケージ44とを備えているが、近赤外線チップLED41に近赤外線ARコート51が施されている点で相違する。送受信モジュール10hは、第3実施形態の送受信モジュール10fと同様に、ベースバンドIC3と、可視光通信用回路4と、実装基板6と、近赤外線チップフォトダイオード46と、可視光帯チップLED47と、保護ガラス43と、パッケージ44とを備えているが、近赤外線チップフォトダイオード46に近赤外線ARコート51が施されている点で相違する。
【0039】
(効果の説明)
第4実施形態の光通信システム203は、第3実施形態の光通信システム202に比較して、伝送チャネル間のアイソレーションが向上する効果と、例えば、赤と近赤外と波長の近いLEDやフォトダイオードを使用することができる。
【0040】
(第5実施形態)
前記各実施形態の光通信システム200,201,202,203,204は、内部反射型放物面レンズ13の狭い方の端面13bに発光素子(近赤外線LED11,可視光帯LED14,近赤外線チップLED41,可視光帯チップLED47)、及び受光素子(近赤外線フォトダイオード12,可視光帯フォトダイオード15,可視光チップフォトダイオード42,近赤外線チップフォトダイオード46)を並設していたが、発光素子、及び受光素子のそれぞれに、内部反射型放物面レンズ13の狭い方の端面13bを対向させることができる。
【0041】
(構成の説明)
図6は、本発明の第5実施形態である光通信システムの構成図である。
光通信システム205は、光通信装置105aと光通信装置105bから構成されており、光通信装置105aは、送受信モジュール10iと、2つの内部反射型放物面レンズ13A,13Bを備え、光通信装置105bは、送受信モジュール10jと、2つの内部反射型放物面レンズ13C,13Dを備えている。なお、4つの内部反射型放物面レンズ13A,13B,13C,13Dは、区別のための符号を付したものであり、前記各実施形態の内部反射型放物面レンズ13と同一物である。
【0042】
送受信モジュール10i,10jは、光電変換素子としてのLED1と、光電変換素子としてのフォトダイオード(PD)2と、ベースバンドIC3と、可視光通信用回路4と、実装基板6と、遮光板7とを備えている。LED1は、RGB等の可視光を発光する発光素子である。LED1は、形状が砲弾型であり、所定の指向性を有したインコヒーレント光を発生する。フォトダイオード2は、LED1が発光したインコヒーレント光を受光し、電流に変換する受光素子である。なお、送受信モジュール10i,10jは、LED1の発光波長を同一とするが、異ならせた方が好ましい。
【0043】
内部反射型放物面レンズ13A,Dは、その狭い方の端面13bがLED1に対向しており、内部反射型放物面レンズ13B,Cは、その狭い方の端面13bがフォトダイオード2に対向している。
【0044】
(動作の説明)
送受信モジュール10iのLED1の照射光は、所定の照射角内の光が内部反射型放物面レンズ13Aの狭い方の端面13bに入射し、広い方の端面13aから略平行(25°以内)に照射する。そして、端面13aから照射された光が距離Lだけ空間伝播し、空間伝播した光が内部反射型放物面レンズ13Cの広い方の端面13aに入射する。内部反射型放物面レンズ13Cの広い方の端面13aに入射した光(略平行光)は、狭い方の端面13bから所定の出射角で出射し、送受信モジュール10jのフォトダイオード2が受光する。
【0045】
同様に、送受信モジュール10jのLED1の照射光は、所定の照射角内の光が内部反射型放物面レンズ13Aの狭い方の端面13bに入射し、広い方の端面13aから略平行(25°以内)に照射する。そして、端面13aから照射された光が距離Lだけ空間伝播し、空間伝播した光が内部反射型放物面レンズ13Cの広い方の端面13aに入射する。内部反射型放物面レンズ13Cの広い方の端面13aに入射した光(略平行光)は、狭い方の端面13bから所定の出射角で出射し、送受信モジュール10iのフォトダイオード2が受光する。
【0046】
本実施形態の光通信システム205によれば、内部反射型放物面レンズ13の狭い方の端面13bにLED1及びフォトダイオード2を並設する必要がないので、内部反射型放物面レンズ13の回転放物面の軸と、LED1や、フォトダイオード2の光軸とが一致する。
【0047】
(第1比較例)
前記第5実施形態の光通信システム205は、内部反射型放物面レンズ13を用いて空間伝播させていたが、汎用の光学レンズを用いた構成も可能である。
【0048】
図7は、本発明の第1比較例である光通信システムの構成図である。
光通信システム206は、光通信装置106aと光通信装置106bとから構成され、光通信装置106aは、送受信モジュール10iと2つの光学レンズ5A,5Bとを備えて構成され、光通信装置106bは、送受信モジュール10jと2つの光学レンズ5C,5Dとを備えて構成されている。ここで、送受信モジュール10i,10jは、第5実施形態の送受信モジュール10i,10jと同一構成である。
【0049】
光学レンズ5A,5Dは、LED1のLEDチップ1aが照射する、所定の照射角の光を略平行光にコリメートするためのものであり、光学レンズ5B,5Cは、コリメートされた光を、フォトダイオード2(PDチップ2a)の受光面に集光するためのものである。つまり、LEDチップ1aや、PDチップ2aは、光学レンズ5A,5B,5C,5Dの焦点位置近傍に配設されている。ここで、光学レンズとは、光の屈折作用を示す透明体のことをいい、球面と球面、又は球面と平面とを両側面とする。あるいは、それを数個組み合わせたものをいう。
【0050】
第1比較例の光通信システム206は、光伝送路設計上、LED1の光軸とレンズ5A,5Dの光軸が一致している必要がある。つまり、LED1とレンズ5A,5Dと他方のPDとの光軸を全て合わせ、偏心及び軸傾斜を無くす必要がある。このため、単一の光学レンズ5を用いて、LED1、及びフォトダイオード2を並設し、併設されたLED1及びフォトダイオード2の中間位置を光学レンズの光軸に一致させると、光学レンズ5の光軸からLED1及びフォトダイオード2の双方の中心位置が外れ、位置ズレ(偏心)を起こすという問題がある。このときに、LED1をレンズ5A,5Dの光軸中心に配置し、フォトダイオード2を光軸から少しずらしておくことも可能であるが、受光感度が低下してしまう。しかしながら、本実施形態の光通信システム200は、内部反射型放物面レンズ13を用いており、所定範囲内(例えば、25°)の略平行光であれば、内部反射により、フォトダイオード2まで集光する。また、光軸からずれた光であっても、略平行光が出射する。
【0051】
内部反射型放物面レンズ13は、導光体として機能し、端面13aの方が端面13bよりも面積が大きい。このため、端面13bを通過する光は、端面13aを通過する光よりも光束密度(光強度)が大きい。したがって、前記第1実施形態の光通信システム200は、LED1や、フォトダイオード2の光電変換素子が端面13bに納まるように配設されているので、フォトダイオード2は内部反射型放物面レンズ13に入射する入射光よりも大きな光束密度で受光する。
【0052】
(第2比較例)
前記第1実施形態は、集光機能を奏する導光体として内部反射型放物面レンズ13を用いたが、集光機能を奏しない通常の導光体を用いることもできる。
【0053】
図8は、本発明の第1比較例である光通信システムの構成図である。
光通信システム207は、光通信装置107aと光通信装置107bとから構成され、光通信装置107aは、送受信モジュール10aと導光体55とを備え、光通信装置107bは、送受信モジュール10bと導光体55とを備えている。なお、本比較例の送受信モジュール10a,10bは、第1実施形態の送受信モジュール10a,10bと同一構成である。
【0054】
導光体55は、円筒形状のガラス体であり、その外径は、内部反射型放物面レンズ13の狭い方の端面の径に等しい。導光体55の光学ガラス(屈折率n
1=1.5229)と空気(屈折率n
0=1.0)との界面に入射する光は、入射角θiが臨界角θc=sin
−1(n
0/n
1)=45.6°よりも小さいときには透過成分が存在するが、臨界角θcよりも大きいときには、全反射する。
【0055】
光通信システム207は、光通信装置107aの近赤外線LED11が照射した臨界角θcよりも小さい光は、導光体55の内面を全反射して、出射面から臨界角θc以内の出射角で出射する。そして、出射光の一部が光通信装置107bの導光体55に入射し、入射光が導光されつつ、端面から出射し、出射光が近赤外線フォトダイオード12に照射される。同様に、光通信装置107bの可視光帯LED14が照射した光は、光通信装置107aの可視光帯フォトダイオード15に入射する。
【0056】
このとき、導光体55は、内部反射型放物面レンズ13のように集光機能を持たないので、本比較例1の光通信システム207は、近赤外線LED11や可視光帯LED14が照射した光の内、臨界角θc以内の光が導光体55に入射する。そして、光通信システム207は、入射角を維持して、導光体55から出射する。一方、第1実施形態の光通信システム200は、内部反射型放物面レンズ13が集光機能を持つので、近赤外線LED11や可視光帯LED14が照射した光の内、所定の集光角以内の光が、内部反射型放物面レンズ13に入射し、略平行に出射する。
【0057】
(変形例)
本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような種々の変形が可能である。
(1)前記各実施形態の送受信モジュールは、発光部として、近赤外線LED11、や可視光帯LED14を用いたが、レーザダイオードLDを用いることができる。
(2)前記各実施形態の光通信システム200は、近赤外線LED11、及び可視光帯LED14を用いて、往復の2チャンネル線路について説明したが、可視光LED14を複数個使用することができる。例えば、可視光LED14として、RGBの3色のLEDを使用すれば、波長多重により、可視光LED14と共に、4チャンネル線路とすることができる。
【0058】
(3)前記第1〜第4実施形態の光通信システム200〜203は、内部反射型放物面レンズ13単体で集光していたが、光学レンズ5を追加使用して、集光乃至平行光化することができる。
(4)前記第2実施形態の光通信システム201、及び第4実施形態の光通信システム203は、近赤外線ARコート21,51を用いていたが、テクスチャ構造などの反射防止方法や、他方式のフィルタを用いることもできる。ここで、テクスチャ構造は、表面反射を抑制する手段であり、ピラミッド、ピラー、モスアイや、逆モスアイ構造が例示される。
【0059】
(5)前記第2実施形態の光通信システム201、及び第4実施形態の光通信システム203は、近赤外線ARコート21,51を用いていたが、可視光ARコートなど複数のARコートを用いることができる。例えば、RGBの3色の可視光LED14を使用したときには、各色のARコートが使用される。
(6)前記第2実施形態の光通信システム201、及び第4実施形態の光通信システム203は、近赤外線ARコート21,51を用いていたが、波長透過フィルタや波長遮断フィルタ等を用いることもできる。
【0060】
(7)前記第3実施形態の光通信システム202、及び第4実施形態の光通信システム203は、パッケージ44、及び内部反射型放射面レンズ13を個別に設け、光軸合わせを行ったが、これらを一体成形することができる。つまり、パッケージ44、及び内部反射型放射面レンズ13は、近赤外線チップLED41や可視光チップフォトダイオード42を金型の中で位置決めし、金型に樹脂を流し込んで、一体成形することができる。
【0061】
(8)前記各実施形態の内部反射型放物面レンズ13は、空気に露出した透光性媒体にしたが、屈折率が小さな媒体を外周壁面13cにコーティングしたものを用いてもよい。また、前記各実施形態の内部反射型放物面レンズ13は、外周壁面13cの少なくとも一部が略回転放物面に形成されているとしたが、パラメータの異なる回転放物面が複数段に形成されていてもよい。