(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記気体吹付部は、前記搬送方向に直交する前記搬送面の幅方向に並ぶ複数のノズルを有し、前記複数のノズルは、前記電極の前記幅方向の中央部に前記気体を吹き付ける中央ノズルと、前記電極の前記幅方向の両端部に前記気体を吹き付ける2個の端部ノズルとを含み、
前記中央ノズルにおける前記気体の吹付けの強さは、前記端部ノズルにおける前記気体の吹付けの強さよりも弱く設定されている、請求項1に記載の電極積層装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電極を高速で搬送することを想定した場合、上記の方法では、高速で排出される電極を積層部にうまく案内することは難しい。また、搬送部と積層部との間に、電極を滑走させる滑走部が設けられた装置も考えられるが、電極が高速で排出されてきた場合には、搬送部から滑走部に電極が乗り移る過程で、電極が滑走部より浮いてしまう。
【0005】
本発明は、搬送部から排出された電極を次の受取部に支障なく受け渡すことができる電極積層装置および電極積層方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る電極積層装置は、搬送面上に載置されたシート状の電極を搬送方向に搬送する
搬送部であって、電極に形成されたタブが搬送方向の上流側に位置するように電極を搬送すると共に
、搬送面の出口部から電極を排出する搬送部と、出口部を含み搬送方向に延びる仮想平面の下方側に配置されて、出口部から排出された電極を受け取る受取部と、仮想平面の上方側から下方側に向けて気体を吹き付ける気体吹付部と、気体吹付部を制御し、出口部から排出された電極に対して気体を吹き付けることにより、電極を下方側に方向転換させる制御部と、を備え
、制御部は、気体吹付部の噴射の軸線上に、電極の搬送方向の下流側の部分があるときにのみ気体を吹き付けるように、気体吹付部における吹付タイミングを制御する。
【0007】
この電極積層装置によれば、制御部によって気体吹付部が制御され、出口部から排出された電極に気体が吹き付けられて、電極が下方側に方向転換させられる。仮想平面の下方側には受取部が配置されているので、この受取部に向けて、電極を案内することができる。よって、搬送部から排出された電極を次の受取部に支障なく受け渡すことができる。
電極の下流側の部分に強く気体が吹き付けられるので、電極を回転させやすく、方向転換が容易である。
【0009】
気体吹付部は、搬送方向に直交する搬送面の幅方向に並ぶ複数のノズルを有し、複数のノズルは、電極の幅方向の中央部に気体を吹き付ける中央ノズルと、電極の幅方向の両端部に気体を吹き付ける2個の端部ノズルとを含み、中央ノズルにおける気体の吹付けの強さは、端部ノズルにおける気体の吹付けの強さよりも弱く設定されている。この場合、電極の中央部が撓んで変形するようなことが防止される。
【0010】
受取部は、受け取った電極を滑走面上で滑走させる滑走部であると、搬送部から排出された電極を気体により方向転換させて、次の受取部である滑走部に支障なく受け渡すことができる。
【0011】
受取部は、受け取った電極を積層領域に積層する積層部であると、搬送部から排出された電極を気体により方向転換させて、次の受取部である積層部に支障なく受け渡すことができる。
【0012】
本発明の他の態様に係る電極積層方法は、搬送面上に載置されたシート状の電極を搬送方向に搬送する
搬送工程であって、電極に形成されたタブが搬送方向の上流側に位置するように電極を搬送すると共に
、搬送面の出口部から電極を排出する搬送工程と、出口部を含み搬送方向に延びる仮想平面の下方側に配置された受取部において、出口部から排出された電極を受け取る受取工程と、を含み、搬送工程と受取工程との間に実施され、出口部から排出された電極に対し、仮想平面の上方側から下方側に向けて気体を吹き付けて電極を下方側に方向転換させる方向転換工程を更に含
み、方向転換工程では、気体の噴射の軸線上に、電極の搬送方向の下流側の部分があるときにのみ気体を吹き付ける。
【0013】
この電極積層方法によれば、方向転換工程において、出口部から排出された電極に気体が吹き付けられて、電極が下方側に方向転換させられる。仮想平面の下方側には受取部が配置されているので、この受取部に向けて、電極を案内することができる。よって、搬送部から排出された電極を次の受取部に支障なく受け渡すことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、搬送部から排出された電極を次の受取部に支障なく受け渡すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
図1を参照して、一実施形態の電極積層装置1について説明する。電極積層装置1は、リチウムイオン二次電池などの蓄電装置の生産ラインにて用いられる装置である。蓄電装置の生産ラインは、概略として、正極製造ライン、負極製造ライン、及び、各電極製造ラインにて製造された電極(正極及び負極)を用いてケース等と共に蓄電装置を組立てる組立ライン、より構成される。電極積層装置1は、組立ライン上に配置され、正極及び負極を積層して、電極組立体の前駆体である積層体Xを得るための装置である。
【0018】
電極積層装置1は、蓄電装置の正極11、セパレータ13、および負極12を積層する。蓄電装置の電極組立体は、正極11と、負極12と、正極11と負極12との間に配置された袋状のセパレータ13とによって構成される。セパレータ13内には、正極11または負極12の内の一方の電極が収納され得る。本実施形態では、セパレータ13内には正極11が収納されている。セパレータ13内に正極11が収納された状態で、正極11と負極12とがセパレータ13を介して交互に積層される。すなわち、電極積層装置1は、シート状の電極(ワーク)である負極12及びセパレータ付き正極10を交互に積層する。
【0019】
正極11は、例えばアルミニウム箔からなる矩形の金属箔の両面に正極活物質層が形成されてなる。正極活物質層は、正極活物質とバインダとを含んで形成されている。正極活物質としては、例えば複合酸化物、金属リチウム、硫黄等が挙げられる。複合酸化物には、例えばマンガン、ニッケル、コバルト及びアルミニウムの少なくとも1つと、リチウムとが含まれる。本実施形態の正極11は、一対の長辺と一対の短辺とを備える。長辺の一方には、正極端子との接続に用いられるタブ(突出部)11aが形成されている。
【0020】
正極11のタブ11aを除いた部分は、袋状のセパレータ13内に収容されている。セパレータ13の形成材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。正極11のタブ11aは、略矩形のセパレータ(本体部)13の長辺から外方向に突出している。このように、袋状のセパレータ13に正極11が収納されることで、セパレータ付き正極10が構成されている。なお、本実施形態に係る電極積層装置1に用いられる袋状のセパレータ13の左右方向の幅は、負極12の幅と同寸とされている。また、セパレータ13の高さは、タブを除く負極12の高さよりも高い。セパレータ13は、袋状に限られず、シート状のものを用いてもよい。
【0021】
一方、負極12は、例えば銅箔からなる金属箔の両面に負極活物質層が形成されてなる。負極活物質層は、負極活物質とバインダとを含んで形成されている。負極活物質としては、例えば黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、金属化合物、SiOx(0.5≦x≦1.5)等の金属酸化物、ホウ素添加炭素等が挙げられる。本実施形態の負極12は、一対の長辺と一対の短辺とを備える。長辺の一方には、負極端子との接続に用いられるタブ(突出部)12aが形成されている。負極12のタブ12aは、負極活物質層が形成された矩形状の本体部12bの長辺から、外方向に突出している。タブ11a及びタブ12aは、正極11(すなわちセパレータ付き正極10)と負極12とを重ねた場合に互いに重ならない位置に形成されている。
【0022】
バインダは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)であるが、ポリテトラフルオロエチレン及びフッ素ゴムなどの含フッ素樹脂、ポリプロピレン及びポリエチレンなどの熱可塑性樹脂、ポリイミド及びポリアミドイミドなどのイミド系樹脂並びにアルコキシシリル基含有樹脂などでもよい。
【0023】
電極積層装置1は、異なる2種類の電極であるセパレータ付き正極10および負極12を交互に搬送する搬送部2と、搬送部2の出口部2bから排出されるセパレータ付き正極10および負極12を受け取り、交互に滑走させる滑走部(受取部)3と、滑走部3により案内されて落下したセパレータ付き正極10および負極12を受け取り、積層領域Aにおいて電極の積層体Xを形成する積層部4とを備えている。
【0024】
搬送部2は、たとえばベルト2dを有するベルトコンベアである。搬送部2は、ベルト2dの搬送面2a上に負極12およびセパレータ付き正極10を交互に載せ、これらを搬送方向D1に搬送する。搬送部2における搬送方向D1は、たとえば水平方向である。なお、搬送方向D1は水平方向に限られず、水平方向に対して傾斜していてもよい。搬送部2は、タブ12a,11aが搬送方向D1の上流側に位置するように、負極12およびセパレータ付き正極10を搬送する。言い換えれば、搬送部2は、タブ12a,11aが形成されていない他方の長辺が前側となるように、負極12およびセパレータ付き正極10を搬送する。なお、搬送部2の上流側には、図示しない正極供給部および負極供給部が配置される。正極供給部によって、搬送面2a上にセパレータ付き正極10が供給され、載置される。負極供給部によって、搬送面2a上に負極12が供給され、載置される。
【0025】
搬送部2には、駆動部2cが設けられている。駆動部2cは、ローラを回転させることによりベルト2dを走行させる。駆動部2cは、制御部としての機能も有しており、ベルト2dの走行速度を変更・調整可能である。搬送面2aの先端部は、搬送された負極12およびセパレータ付き正極10を交互に排出する出口部2bとされている。搬送部2では、搬送速度が高められており、負極12およびセパレータ付き正極10の高速搬送が可能になっている。
【0026】
滑走部3は、搬送部2の出口部2bの斜め下方に配置されている。言い換えれば、滑走部3は、出口部2bと積層部4との間に配置されている。滑走部3は、平面視した場合に、搬送部2の延長線上に配置されている。言い換えれば、滑走部3は、出口部2bから搬送方向D1に延びる延長線の下方に配置されている。より詳細には、滑走部3は、出口部2bを含み搬送方向D1に延びる仮想平面Pの下方側(一方の面側)に配置されている。搬送部2と滑走部3との間には空間Sが設けられている。滑走部3は、傾斜する底板部5を有しており、底板部5の表面である滑走面5a上で負極12およびセパレータ付き正極10を交互に滑走させる。滑走部3は滑走面5aの下端部から負極12およびセパレータ付き正極10を排出し、これらを積層部4へ受け渡す。
【0027】
積層部4は、滑走部3の斜め下方に配置されている。積層部4は、平面視した場合に、搬送部2および滑走部3の延長線上に配置されている。言い換えれば、積層部4は、出口部2bから搬送方向D1に延びる延長線の下方に配置されている。滑走部3と積層部4との間には空間が設けられている。
【0028】
積層部4は、支持部9上に取り付けられている。支持部9は、積層部4を保持する保持枠9aを有しており、この保持枠9a上に、積層部4が載置され、保持されている。支持部9は、出口部2bに対する積層部4の相対位置を変更し得るように、前後方向または上下方向にスライド移動可能な構造であってもよい。ここで言う前後方向とは、搬送方向D1を水平面に投影した方向と平行な方向である。支持部9は、たとえば、積層部4の積層領域Aに積層されている最上層の電極(負極12またはセパレータ付き正極10)と出口部2bとの相対位置を維持するように位置調整されてもよい。
【0029】
積層部4は、水平方向に対して傾斜して設けられた矩形状の底板部6と、底板部6の下端に立設された停止板部7と、底板部6の左右の側部に立設された互いに平行な一対の側板部8,8とを有する。底板部6の表面は、積層体Xが載置される載置面6aである。直方体状の外形をなす積層部4は、載置面6aに対向する面(すなわち積層体Xが取り出される面)と、停止板部7に対向する面(すなわち出口部2bに最も近い面)とが開放されている。これらの開放された部分から、負極12およびセパレータ付き正極10が進入可能になっている。
【0030】
滑走部3における滑走面5aの水平面に対する傾斜角度は、積層部4における載置面6aの水平面に対する傾斜角度よりも大きい。なお、搬送部2、滑走部3、および積層部4の配置関係は、上記した態様に限られない。これらは、重力および搬送速度を考慮して、負極12およびセパレータ付き正極10を受渡し可能であれば、どのような配置関係とされてもよい。
【0031】
搬送部2の出口部2bの近傍には、負極12およびセパレータ付き正極10の移動経路を挟むようにして、通過センサ16が設けられている。通過センサ16は、移動経路の一方側と他方側に配置された投光部および受光部によって、負極12またはセパレータ付き正極10の通過を検出する投受光センサである。なお、負極12およびセパレータ付き正極10の通過を検出するセンサは搬送部2より上流側に設けられてもよい。負極12およびセパレータ付き正極10の通過を検出するセンサは、出口部2bと積層領域Aとの間に設けられることが好ましい。また、負極12およびセパレータ付き正極10の通過を検出できる機構であれば、投受光センサに限られず、他のセンサが用いられてもよい。たとえば、底板部6に光学センサ等が埋設されてもよい。
【0032】
本実施形態の電極積層装置1は、搬送部2と滑走部3との間の空間Sにおいて負極12およびセパレータ付き正極10に対してエア(気体)を吹き付けるように構成されたエア吹付部(気体吹付部)20と、エア吹付部20を制御する制御部25とを備えている。
【0033】
図1および
図2に示されるように、エア吹付部20は、出口部2bに対向して配置され、空間Sにおける負極12およびセパレータ付き正極10の移動経路に向けてエアを吹き付けるように構成されている。エア吹付部20は、出口部2bから所定の距離離間している。
【0034】
図2に示されるように、エア吹付部20は、斜め下方に向けられたエア吹出部20aを有する。エア吹付部20は、図示しないブロワ、配管およびノズル等を有している。ノズルの先端が、エア吹出部20aに相当する。エア吹付部20からエアが吹き付けられる吹付エリア20bは、搬送部2と滑走部3との間の空間Sに位置している。吹付エリア20bは、エア吹出部20aを中心とする円錐状であってもよいが、エア吹付部20は、幅方向(
図2の紙面垂直方向)に並ぶ複数のエア吹出部20a(すなわち後述するノズル)を有する方が好ましい。
【0035】
エア吹付部20についてより詳細に説明すると、エア吹付部20のエア吹出部20aは、上述した仮想平面Pを基準として、滑走部3とは反対側である上方側(他方の面側)に位置している。エア吹付部20は、仮想平面Pの上方側から下方側に向けてエアを吹き付けるように構成されている。
図2(b)に示されるように、エア吹付部20は、負極12およびセパレータ付き正極10の搬送方向D1における下流側の部分に対してエアを吹き付けることができる位置に設置されている。吹付エリア20bの中心線は、たとえば空間Sを通っており、出口部2bおよび滑走部3のいずれにも交差していない。ここで、吹付エリア20bの中心線は、エア吹付部20における吹付けすなわち噴射の軸線(中心線)Lに相当する。このように設置されたエア吹付部20により、負極12およびセパレータ付き正極10に対する方向転換操作(滑走部3へ向ける操作)が可能とされている。
【0036】
制御部25は、たとえばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を含むコンピュータにより構成されている。制御部25は、通過センサ16から受信する電極通過信号に基づき、エア吹付部20を制御する。制御部25は、積層部4に積層された負極12およびセパレータ付き正極10の枚数をカウントしており、また、負極12およびセパレータ付き正極10が積層される順序(通過する順序)を記憶している。制御部25は、通過センサ16を負極12またはセパレータ付き正極10が通過したことを示す通過信号の受信タイミングと、その負極12またはセパレータ付き正極10がエア吹付部20の吹付エリア20bに進入するタイミングとの関係(時間差)を算出可能である。より詳細には、制御部25は、搬送部2における搬送方向D1の速度に基づいて、出口部2bから排出された負極12またはセパレータ付き正極10の速度を算出可能である。制御部25は、通過センサ16から吹付エリア20bまでの距離情報と、出口部2bから排出された負極12またはセパレータ付き正極10の速度情報とを用いて、通過信号の受信タイミングに基づき、負極12またはセパレータ付き正極10が吹付エリア20bに進入するタイミングを算出する。
【0037】
図2(b)に示されるように、制御部25は、セパレータ付き正極10(または負極12)の搬送方向D1の下流側の部分(移動方向の前部)に対してエア吹付部20がエアを吹き付けるように、エア吹付部20における吹付タイミングを制御する。具体的には、噴射されるエアの軸線L上にセパレータ付き正極10の下流側の部分があるときのみ、吹付けを行う。さらに好ましくは、当該下流側の部分が吹付エリア20bにあるときのみ吹付けを行う。
図2(a)および(c)に示されるように、制御部25は、セパレータ付き正極10(または負極12)の当該下流側の部分が吹付エリア20bに到達するまで、および、当該下流側の部分が吹付エリア20bを通過した後は、エア吹付部20によるエアの吹付けを停止させる。このように、エア吹付部20によるエアの吹付けは、間欠的に行われる。なお、エアの吹付けを連続的に行ってもよい。
【0038】
続いて、電極積層装置1における電極積層方法について説明する。搬送部2によって、負極12およびセパレータ付き正極10を順次搬送する(搬送工程)。以下、扱われる電極がセパレータ付き正極10である場合を例に挙げて説明するが、負極12の場合であっても同様のことが言える。出口部2bから排出されたセパレータ付き正極10(
図2(a)参照)は、空中に放出されて自重により落下し、出口部2bと滑走部3との間の空間を移動する。セパレータ付き正極10は、しばらくの間、仮想平面Pに沿って移動する。この際、通過センサ16がセパレータ付き正極10の通過を検出し、通過信号を制御部25に送信する。この通過信号が、間欠エア照射のトリガとなる。
【0039】
続いて、
図2(b)に示されるように、吹付エリア20bにセパレータ付き正極10がさしかかると、制御部25はエア吹付部20を制御し、セパレータ付き正極10にエアを吹き付ける。エアを受けたセパレータ付き正極10は、下方に回転することで方向転換させられる(方向転換工程)。方向転換工程では、セパレータ付き正極10の下流側の部分に瞬間的にエアが当てられ、セパレータ付き正極10が方向転換する。エアは、セパレータ付き正極10が方向転換するのに必要な所定時間の間、噴射された後、停止させられる(
図2(c)参照)。
【0040】
セパレータ付き正極10は、滑走部3への進入に適した姿勢・角度となり、滑走部3に受け渡される(受取工程)。セパレータ付き正極10は滑走部3の滑走面5a上を滑走した後、積層部4に受け渡される。積層部4では、セパレータ付き正極10は側板部8等に案内されて、積層領域Aに到達し、停止板部7に当接して停止する。このように負極12およびセパレータ付き正極10が交互に搬送されて、積層領域Aにおいて積層される。このように、搬送部2からの排出後、積層部4での受取りまでの間において、セパレータ付き正極10(または負極12)は空中を飛びながら何にも接触せず、重力を受けて移動する。この間に、セパレータ付き正極10(または負極12)はエア吹付けによる空気圧のみを(1回だけ)受け、方向転換する。
【0041】
この電極積層装置1によれば、制御部25によってエア吹付部20が制御され、出口部2bから排出された負極12およびセパレータ付き正極10にエアが吹き付けられて、負極12およびセパレータ付き正極10が下方側に方向転換させられる。仮想平面Pの下方側には受取部である滑走部3が配置されているので、この滑走部3に向けて、負極12およびセパレータ付き正極10を案内することができる。よって、搬送部2から排出された負極12およびセパレータ付き正極10は、高速に搬送された場合にも、浮き上がりを最小限に抑え、滑走部3に沿った移動を実現できる。また、高速積層を行う場合に、負極12およびセパレータ付き正極10の搬送速度を変更(増大させる等)しても、それに応じてエア吹付部20による吹付けを強くすればよい。したがって、滑走部3や積層部4のレイアウトを変更する必要がない。
【0042】
出口部2bの近傍に障害物を設ける等の手法により負極12およびセパレータ付き正極10の方向を変えることも考えられるが、その場合、負極12やセパレータ付き正極10に損傷を与えたり、装置が大型化したりといった欠点がある。本実施形態の電極積層装置1によれば、非接触で負極12およびセパレータ付き正極10の方向転換を行うので、これらに損傷を与えることがなく、またエアの強弱で方向転換の大小を調整し得る。よって、あらゆる観点において有利である。
【0043】
また、制御部25による吹付けタイミング制御によって、負極12およびセパレータ付き正極10の下流側の部分に強くエアが吹き付けられるので、負極12およびセパレータ付き正極10を回転させやすく、方向転換が容易である。
【0044】
特に、蓄電装置がリチウムイオン二次電池の場合、本実施形態は有効である。上述の特許文献に開示された技術は、鉛蓄電池を前提としている。その電極の厚みは1〜数mmであるため、その電極は相応に重く、空中に放出(排出)されても、姿勢や軌道のバラツキは比較的小さい。一方で、蓄電装置がリチウムイオン二次電池の場合、電極の厚みは、数10〜500μm程度であり、鉛蓄電池の電極の厚みの1/10程度である。この為、リチウムイオン二次電池の電極の質量は小さく(すなわち電極は軽く)、電極は、排出後の軌道や姿勢も空気抵抗などの影響を受けやすい。これに対し、本実施形態では、負極12およびセパレータ付き正極10を、空中で、エアにより方向制御することで、その軌道を適切に案内できる。
【0045】
他の実施形態として、
図3に示されるように、滑走部3が設けられない電極積層装置1Aとすることもできる。滑走部3が設けられない以外は電極積層装置1と同様であるが、出口部2bの斜め下方に積層部4が配置されており、出口部2bと積層部4との間の空間Sにエア吹付部20の吹付エリア20bが位置している。この場合、積層部4が受取部に相当し、積層部4は、搬送部2から受け取った負極12およびセパレータ付き正極10を積層領域Aに交互に積層する。
【0046】
このような電極積層装置1Aにおいても、搬送部2から排出された負極12およびセパレータ付き正極10をエアにより方向転換させて、次の受取部である積層部4に支障なく受け渡すことができる。滑走部3が設けられない分、滑走面5aに対する接触による減速がなくなり、負極12およびセパレータ付き正極10の速度が高く維持される。よって、高速積層に適している。
【0047】
また、更に他の実施形態として、
図4に示されるように、上向きの搬送方向D2とされた搬送部2Bを備えた電極積層装置1Bとすることもできる。電極積層装置1Bによれば、搬送部2Bを斜め上方に向けて負極12およびセパレータ付き正極10を上方に射出することで、重力を利用した減速を行うことができる。なお、
図4では、搬送部2B、エア吹付部20、および積層部4の配置関係のみを示しており、通過センサ16および制御部25の図示は省略されている。
【0048】
また、エア吹付部20に関しても、各種の変形態様を採り得る。以下の変形態様は、上記した電極積層装置1,1A,1Bを含むあらゆる電極積層装置の実施形態に適用可能である。
図5(a)に示されるように、セパレータ付き正極10(または負極12)の移動方向に幅広な吹付エリア20bを有するエア吹付部20Cであってもよい。たとえば、負極12のように薄い電極に適用した場合、電極を変形させる(折れ曲がらせる等する)ことなく、エアによる方向転換効果を発揮させることができる。なお、幅広であることは、照射面積が大きいことにつながるため、たとえば同じエア量で比べた場合に、単位面積当たりに加わる空気圧が低いことを意味する。
【0049】
また、
図5(b)に示されるように、セパレータ付き正極10(または負極12)の移動方向に並ぶ複数のエア吹付部20D,20Eを設けてもよい。この場合、方向転換に必要な圧力を2つに分割できるため、2段階の方向転換が可能である。
【0050】
また、
図5(c)に示されるように、搬送面の幅方向D3に並ぶ複数のノズルを有する態様としてもよい。この場合、複数のノズルは、電極10,12の幅方向D3の中央部に気体を吹き付ける中央ノズル20Fと、電極10,12の幅方向D3の両端部に気体を吹き付ける2個の端部ノズル20G,20Hとを含み、中央ノズル20Fにおけるエアの吹付けの強さは、端部ノズル20G,20Hにおけるエアの吹付けの強さよりも弱く設定されている。これによれば、電極10,12の中央部が撓んで変形するようなことが防止される。吹付けの強さを調整するには、
図5(a)に示した例と同様、中央ノズル20Fにおける吹付エリア20bを広くすることで吹付けを弱くしてもよいし、エアの供給量を低下させてもよい。一方、端部ノズル20G,20Hにおける吹付エリア20bを狭くすることで吹付けを(相対的に)強くしてもよいし、エアの供給量を増大させてもよい。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限られない。たとえば、負極12およびセパレータ付き正極10の一部分にのみエアを照射する場合に限られず、これらの方向が変わるように全面に照射してもよい。ノズルの配列とそれぞれのエアの吹付けの強さは、方向転換の対象となる負極12およびセパレータ付き正極10の重量や速度に応じて適宜変更可能である。気体の吹き付けに強弱をつける場合、気体吹付部は複数のノズルを用いる構成に限定されず、噴射方向により風圧の異なる1つのノズルを使用してもよい。また、エアの吹き付けは、1回に限らず、複数回に分けて行ってもよい。
【0052】
また、上記実施形態では負極12とセパレータ付き正極10とを交互に積層して電極組立体の前駆体である積層体Xを得る装置について説明したが、本発明は、セパレータ付き正極10のみ、または、負極12のみの積層装置に適用されてもよい。すなわち、正極製造ラインや負極製造ラインに用いられる、電極組立体ではない中間体の積層のための積層装置に本発明が適用されてもよい。
【0053】
搬送部はベルトコンベアに限られない。たとえば、タイミングベルトやチェーンにより循環路上を搬送されるパレット搬送方式の搬送部でもよい。また、搬送部は、重力による滑走を利用した搬送部であってもよい。
【0054】
気体吹付部は、エアを吹き付けるエア吹付部20である場合に限られず、窒素やその他の不活性ガス等を電極に吹き付けるものであってもよい。