(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0012】
図1は、本実施形態に係る締付装置1および締付支援システム2により実施される各作業工程(締付工程、締付支援工程)を説明するための図である。
図2は、ワークWの例を示す図である。以下、
図1、2を参照して、本実施形態に係る締付装置1および締付支援システム2の全体構成について説明する。
【0013】
(1)全体構成
締付装置1および締付支援システム2は、
図1に示すように、製品(車両等)や部品(車載用バッテリー等)の組み立て作業等が実施される生産ラインに設置される。
【0014】
締付装置1は、上流側からベルトコンベアBにより搬送されてきたワークWに対して、「締付工程」を自動的に実施する自動締付装置である。締付支援システム2は、締付装置1を支援するシステムである。締付支援システム2は、締付工程が実施されたワークWに対して、さらに「締付支援工程」を実施する。
【0015】
ワークWは、
図2に示すように、複数の電池モジュールを連結した組電池であり、車載用バッテリーとして用いられる。
【0016】
「締付工程」では、締付装置1は、ワークWの複数箇所にネジ類の締付けを行う。たとえば、締付装置1は、
図2に示す白丸部分に、ネジ類の締付けを行う。これにより、複数の電池モジュールは複数の固定部材(
図2に示すグレーの部材)によって固定され、組電池が構成される。なお、ネジ類が締付けられるワークWの各箇所には、締付順序を示す締付順序番号が割り当てられており、締付装置1は、各箇所のネジ類の締付けをその番号順に実施する。
【0017】
ベルトコンベアBは、締付装置1による締付工程の完了後、
図1に示すように、ワークWを下流へ搬送する。
【0018】
「締付支援工程」では、
図1に示すような作業者Uが、締付支援システム2を用いて、締付工程で生じた締付けのエラーを修正する。たとえば、作業者Uは、エラー教示部10に備わるディスプレイ(画面)を見て作業内容を確認し、ナットランナー等からなる締付修正部20を操作して締付けのエラーを修正する。エラー教示部10および締付修正部20の詳細については後述する。なお、締付けのエラーには、ネジ類の緩み、変形、曲がり、抜け等が含まれる。
【0019】
ベルトコンベアBは、修正すべきエラー箇所がなくなり、締付支援システム2を用いた締付支援工程が完了すると、ワークWをさらに下流へ搬送する。
【0020】
以上のような締付工程および締付支援工程が実施されることにより、締付けエラーのないワークWを提供できる。
【0021】
次に、
図3〜5を参照して、締付装置1および締付支援システム2の詳細について説明する。
【0022】
図3は、締付装置1および締付支援システム2の概略構成例を示す図である。
図4(A)、(B)は、それぞれエラー教示画面を示す図である。
図5は、変換テーブルの概略データ構造例を示す図である。
【0023】
(2)締付装置1
図3に示す締付装置1は、電動モーターあるいはエアモーターによってネジ類を回転させる一般的なネジ締め機(不図示)と、ネジ締め機を制御するコントローラー(不図示)とを備えている。ネジ締め機は、ハンディ、ロボット、ドライバ等、いかなる態様のネジ締め機であってもよい。また、コントローラーは、締付けに必要なトルクでネジ類を回転させるための締付制御信号(電流等)をネジ締め機に対して供給する。
【0024】
締付装置1は、ワークWの複数箇所にネジ類を締付けた後、締付けのエラー箇所を検出する。エラー箇所の検出には、各種センサーを用いることができる。たとえば、ネジ類の締付けトルクを計測するトルクセンサーを用いることができる。トルクセンサーを用いれば、締付けトルクの値に異常があるとき、その箇所をエラー箇所として検出できる。また、ネジ類の締付け箇所をカメラ等により撮影し、画像認識等の手法により締付けエラーを検出することもできる。あるいは、特別なセンサー等を用いることなく、締付装置1の作業者が目視により締付けエラーを見つけ、エラー箇所を示す情報をコントローラー等に入力してもよい。
【0025】
エラー箇所の検出後、締付装置1は、ネジ類の締付け箇所(
図2に示す白丸部分の箇所)ごとに、「OK」または「NG」を示す締付結果情報を締付支援システム2のエラー教示部10へ送信する。ここで、「OK」は、エラー箇所として検出されなかったことを示し、「NG」は、エラー箇所として検出されたことを示す。また、締付装置1は、各締付け箇所に割り当てられている締付順序番号(
図2に示す「1」〜「24」)を、締付結果情報に対応付けて送信する。なお、締付装置1とエラー教示部10は、通信可能に接続されており、たとえば、有線LAN、無線LAN、USBケーブル等を介して互いに接続されている。
【0026】
また、締付装置1は、予定されていた全ての箇所にネジ類を締付けた後、締付工程が終了したことを、ベルトコンベアBの搬送制御装置(不図示)に通知する。搬送制御装置は、この通知に応じて、ベルトコンベアBの搬送を開始し、締付けが完了したワークWを締付支援工程の作業者Uの前まで搬送する。
【0027】
(3)締付支援システム2
締付支援システム2は、
図3に示すように、エラー教示部10と、締付修正部20と、修正制御部30とを備える。
【0028】
エラー教示部10は、キーボード、マウス等の入力装置11と、ディスプレイ等の出力装置12とを備えた一般的なコンピューター装置によって構成される。エラー教示部10は、締付装置1による締付けにエラーが生じた場合に、エラー箇所を作業者Uに対して教示する。
【0029】
具体的には、エラー教示部10は、締付装置1から締付順序番号および締付結果情報を受信すると、ワークWの各箇所に割り当てられている締付順序番号を、実際の締付け箇所のレイアウトに従って出力装置12に表示する。すなわち、
図4(A)、(B)に示すようなレイアウトで締付順序番号「1」〜「24」を表示する。なお、締付順序番号は、締付け箇所により予め定められており、エラー教示部10は、締付順序番号を参照すれば、その表示位置を特定できるように設計されている。
【0030】
そして、エラー教示部10は、
図4(A)、(B)に示すように、エラー箇所ではない箇所、すなわち「OK」を示す締付結果情報に対応付けられている締付順序番号の表示位置の背景を、緑色で表示する。また、エラー教示部10は、エラー箇所、すなわち「NG」を示す締付結果情報に対応付けられている締付順序番号の表示位置の背景を、赤色で表示するとともにカーソルCを重ねて表示する。このように、エラー教示部10は、エラー箇所のみを選択的に強調表示して、作業者Uに修正すべき締付け箇所を教示できる。
【0031】
なお、
図4(A)に示すエラー教示画面(第1面)から、
図4(B)に示すエラー教示画面(第2面)への画面遷移は、表示中の全てのエラー箇所について締付けの修正が完了したときに、自動的に行われるように設計されている。
【0032】
図3に戻り、エラー教示部10は、締付装置1から受信した締付順序番号のうち、エラー箇所の締付順序番号(すなわち、「NG」を示す締付結果情報に対応付けられている締付順序番号)を、後述する締付修正部20の位置特定部24へ通知する。なお、エラー教示部10が位置特定部24へ通知するエラー箇所の締付順序番号は1つである。そのため、エラー箇所が複数ある場合には、1つのエラー箇所について締付けの修正が完了した後に、残りのエラー箇所の締付順序番号を、順次、位置特定部24へ通知する。
【0033】
締付修正部20は、エラー教示部10により教示されたエラー箇所の締付けを修正するために用いられる。締付修正部20は、ナットランナー21と、アーム22と、エンコーダー23と、位置特定部24とを備える。
【0034】
ナットランナー21は、回転駆動源(電動モーターあるいはエアモーター)の駆動により回転する締付部Tを先端に有するネジ締め機である。締付部Tには、ビットを採用してもよいし、ソケットを採用してもよい。また、締付部Tは、締付け対象のネジ類の種類に応じて交換できるようにしてもよい。
【0035】
アーム22は、ナットランナー21を支持しつつ、ナットランナー21と一体的に可動する可動式アームである。
【0036】
エンコーダー23は、複数のロータリーエンコーダーから構成され、3次元空間におけるナットランナー21の締付部Tの位置に応じた情報(回転量等)を出力するように構成されている。
【0037】
位置特定部24は、エンコーダー23から出力された情報に基づいてナットランナー21の締付部Tの位置(X座標,Y座標,Z座標)を特定する。
【0038】
なお、作業者Uは、締付支援工程の実施に先立ち、予定されている全ての締付け箇所の位置情報を、位置特定部24にティーチングさせておく必要がある。そのためには、作業者Uは、ナットランナー21を操作して、サンプル用ワークの締付け箇所(ワークWの締付け箇所に対応している)に移動させ、そのときエンコーダー23から出力された情報から特定される締付部Tの位置を、位置特定部24に記録する。これにより、位置特定部24は、ナットランナー21により締付けの修正を行う際に締付部Tが位置すべき箇所の位置情報(X座標,Y座標,Z座標)を、事前に取得できる。また、位置特定部24は、締付けの修正を行う際に締付部Tが位置すべき箇所の位置情報と、当該箇所に割り当てられている締付順序番号とを、
図5に示す変換テーブルのように予め対応付けておく。
【0039】
その後、締付支援工程が開始され、
図3に示すように、エラー教示部10からエラー箇所の締付順序番号が位置特定部24に通知されると、位置特定部24は、通知された当該締付順序番号に対応付けられている位置情報を参照する。具体的には、エラー教示部10は、締付順序番号ごとに別個に用意されたプログラムを読み出して、通知されたエラー箇所の締付順序番号に対応付けられている位置情報(X座標,Y座標,Z座標)を
図5に示す変換テーブルから抽出する。
【0040】
続いて、位置特定部24は、作業者Uがナットランナー21をワークWのエラー箇所に移動させて締付けの修正作業を開始すると、そのときエンコーダー23から出力された情報を取得する。そして、位置特定部24は、取得した情報に基づいてナットランナー21の締付部Tの現在位置(X座標,Y座標,Z座標)を特定する。
【0041】
このとき、位置特定部24は、エンコーダー23から出力された情報により特定される締付部Tの位置が、修正すべきエラー箇所にあるか判別する。具体的には、位置特定部24は、変換テーブルから抽出したエラー箇所の位置情報と、エンコーダー23から出力された情報に基づいて特定された締付部Tの現在位置とを比較する。位置特定部24は、両者の位置が3次元空間において所定範囲内にあるときは、締付部Tの位置が修正すべきエラー箇所にあると判定する。一方、位置特定部24は、両者の位置が所定範囲内にないときは、締付部Tの位置は修正すべきエラー箇所にないと判定する。
【0042】
そして、位置特定部24は、締付部Tの位置が修正すべきエラー箇所にない場合には、締付部Tが回転しないように規制する指示(
図3に示す規制指示)を修正制御部30に通知する。具体的には、位置特定部24は、締付部Tの位置が修正すべきエラー箇所にない場合には、締付部Tの回転を許可しない信号(不許可信号)を修正制御部30に供給する。なお、締付部Tの位置が修正すべきエラー箇所にある場合には、締付部Tの回転を許可する信号(許可信号)を修正制御部30に供給する。
【0043】
修正制御部30は、エラー教示部10により教示されたエラー箇所以外の締付けについては修正できないように締付修正部20を制御する。具体的には、修正制御部30は、位置特定部24から通知された規制指示に応じて、ナットランナー21の締付部Tを回転させるか否か決定する。たとえば、修正制御部30は、位置特定部24から許可信号が供給されているときは、締付けの修正に必要なトルクで締付部Tを回転させるための締付制御信号(電流等)をナットランナー21に供給する。一方、修正制御部30は、位置特定部24から不許可信号が供給されているときは、締付制御信号をナットランナー21に供給せず、締付部Tを回転させない。
【0044】
また、修正制御部30は、ナットランナー21に設けられたトルクセンサー(不図示)から出力された締付けトルクの値(トルク情報)を取得する。修正制御部30は、取得したトルク情報を参照して、正常に締付けの修正が完了した場合には、完了通知をエラー教示部10へ通知する。このとき、エラー教示部10は、出力装置12に表示しているエラー教示画面について、締付けが修正された箇所の締付順序番号の表示位置の背景を赤色から緑色へと変更する。
【0045】
また、エラー教示部10は、まだ未修正のエラー箇所が残っていれば、上述したように、残りのエラー箇所の締付順序番号を位置特定部24へ通知する。この場合には、エラー教示部10は、出力装置12に表示しているエラー教示画面について、カーソルCの位置を、次に修正すべきエラー箇所の位置へ自動的に移動させる。
【0046】
全てのエラー箇所について締付けの修正が完了すると、エラー教示部10は、締付支援工程が終了したことを、ベルトコンベアBの搬送制御装置(不図示)に通知する。搬送制御装置は、この通知に応じて、ベルトコンベアBの搬送を再開し、締付けの修正が完了したワークWをさらに下流へ搬送する。
【0047】
(4)本実施形態の効果
次に、従来の締付装置1および締付支援システム2を示し、本実施形態と比較することによって本実施形態の効果について説明する。
【0048】
図6は、従来の締付装置1および締付支援システム2を示す図である。また、
図7(A)、(B)は、それぞれ、従来のエラー教示画面を示す図である。
【0049】
図6に示すように、従来の締付支援システム2は、締付修正部20の構成が本実施形態と異なる。具体的には、締付修正部20に位置特定部24がない点が、本実施形態と主に異なる点である。そのため、従来の締付支援システム2では、ナットランナー21の締付部Tの現在位置を把握できず、作業者Uがエラー教示部10に教示されたエラー箇所と異なる箇所の締付けを修正してしまう場合がある。そして、本来修正されるべきエラー箇所の締付けが修正されずに、締付修正工程が終了してしまう。
【0050】
これに対し、本実施形態の締付支援システム2は、
図3に示すように、位置特定部24を有し、エンコーダー23から出力された情報に基づいてナットランナー21の締付部Tの現在位置を把握している。そして、本実施形態の修正制御部30は、把握された締付部Tの現在位置を参照しつつ、エラー教示部10により教示されたエラー箇所以外の締付けについては修正できないように締付修正部20を制御する。そのため、作業者Uがエラー教示部10に教示されたエラー箇所と異なる箇所の締付けを修正してしまうことを防止できる。これにより、本来修正されるべきエラー箇所の締付けが修正されずに、締付修正工程が終了することは防止され、別の作業者によるチェック作業なしに、エラー箇所を確実に修正できる。その結果、完成品(車載用バッテリー、車両等)の安全性や性能を確保できる。
【0051】
また、本実施形態の締付支援システム2では、ワークWの各締付け箇所には締付順序番号が割り当てられており、エラー教示部10は、エラー箇所に割り当てられている締付順序番号を位置特定部24に通知している。そのため、締付け箇所やエラー箇所についての位置情報(3次元座標等)のやり取りが、締付装置1とエラー教示部10の間、およびエラー教示部10と位置特定部24の間では不要になる。その結果、データリンクおよび制御方法を単純にできる。また、位置特定部24は、エラー教示部10から通知されたエラー箇所の締付順序番号に対応付けられている位置情報のみを参照すればよく、締付部Tがエラー箇所にあるか判別する処理が高速化される。
【0052】
また、
図7(A)、(B)に示すように、従来の締付支援システム2では、本実施形態のエラー教示部10と同様に、ワークWの各箇所に割り当てられている締付順序番号を、実際の締付け箇所のレイアウトに従って出力装置12に表示する。すなわち、
図7(A)、(B)に示すようなレイアウトで締付順序番号「1」〜「24」を表示する。
【0053】
しかし、従来の締付支援システム2では、作業者Uがエラー箇所の締付けについて修正作業を開始する前に、エラー箇所に割り当てられている締付順序番号の表示位置までカーソルCを移動させる必要があった。これは、作業者Uがエラー箇所を正しく認識できているか確認するための仕様である。そのため、
図7(A)の例では、作業者Uは、スイッチ等を操作して、締付順序番号「1」の表示位置から「7」の表示位置まで、1つ1つカーソルCを移動させていた。同様に、
図7(B)の例では、作業者Uは、締付順序番号「17」の表示位置から「22」の表示位置まで、1つ1つカーソルCを移動させていた。
【0054】
このような仕様の締付支援システム2では、作業者Uは、カーソルCを適切な位置に移動させずに、修正作業を開始してしまう場合がある。この場合、実際にはエラー教示部10により教示されたエラー箇所の締付けを正しく修正していたとしても、エラー教示部10は、締付けの修正が適切に行われていないと判断する。そのため、作業者Uは、カーソルCの位置を正してから修正作業をやり直さなければならず、煩雑な作業となる。
【0055】
これに対し、本実施形態の締付支援システム2では、
図4(A)、(B)に示すように、1つのエラー箇所について修正作業が正常に終了すると、作業者Uによるスイッチ等の操作なしで、次に修正すべきエラー箇所の位置にカーソルCを自動的に移動させている。したがって、本実施形態の締付支援システム2では、作業者の操作ミス等によってカーソルCがエラー箇所以外の位置に表示されることはなく、エラー箇所のみに表示される。そのため、カーソルCを移動させるための操作が不要になるだけでなく、作業者の操作ミス等に基づく修正作業のやり直しも不要になり、作業者Uは効率的に締付支援工程を実施できる。
【0056】
(5)変形例
また、上記の実施形態は、本発明の要旨を例示することを意図し、本発明を限定するものではない。多くの代替物、修正、変形例は当業者にとって明らかである。
【0057】
たとえば、上記の実施形態では、位置特定部24は、締付順序番号ごとに用意されたプログラムを読み出して、修正すべきエラー箇所の位置情報を
図5に示す変換テーブルから抽出している。このとき、位置特定部24は、エラー教示部10から通知された締付順序番号に予め対応付けられているプログラムのみを読み出せばよいので、不要なプログラム等の読み出しがなく、締付部Tがエラー箇所にあるか判別する処理が高速化される。しかし、本発明は、必ずしも締付順序番号ごとにプログラムを用意しておく必要はなく、
図5に示す変換テーブルを用いる必要もない。同様の結果が得られるのであれば、他の方法を採用してもよい。
【0058】
また、上記の実施形態では、締付部Tの位置等を表す情報として、XYZ座標系の値を用いている。しかし、本発明は、これに限定されず、rθz座標系等の他の座標系の値を用いてもよい。
【0059】
また、上記の実施形態では、ワークWは、車載用バッテリーとして用いる組電池である。車載用バッテリーは、ネジ類の締付け箇所が多いため、締付支援システム2によって修正すべきエラー箇所が増加しやすい。上記の実施形態の締付支援システム2を利用すれば、修正すべきエラー箇所が増加しても全てのエラー箇所のネジ締めを確実に修正できる。したがって、上記の実施形態の締付支援システム2は、ネジ類の締付け箇所が多いときほど、効果的に、エラー箇所の締付けが修正されずに締付修正工程が終了することを防止でき、別の作業者によるチェック作業なしに、エラー箇所を確実に修正できる。ただし、本発明のワークWは、複数箇所にネジ類の締付けが可能なものであれば、車載用バッテリー等に限定されない。
【0060】
また、上記の実施形態では、ナットランナー21を用いて締付けを修正する例について説明している。このような既存のナットランナー21を使用することにより、締付修正部20にかかる開発費用を抑えられる。ただし、本発明は、これに限定されない。ネジ類の締付けが可能であれば、ナットランナー21の代わりにどのような形態の工具、機器を用いてもよい。
【0061】
また、上記の実施形態では、エラー教示部10は、出力装置12にエラー箇所を表示して、作業者Uに修正すべき締付け箇所を教示している。しかし、本発明は、エラー箇所を作業者Uに通知できれば、他の方法(音声、振動など)を採用してもよい。
【0062】
以上のとおり、説明した上記の実施形態および変形例は、以下の効果を奏する。
【0063】
(a)締付支援システム2は、
図3に示すように、位置特定部24を有し、エンコーダー23から出力された情報に基づいてナットランナー21の締付部Tの現在位置を把握している。そして、修正制御部30は、把握された締付部Tの現在位置を参照しつつ、エラー教示部10により教示されたエラー箇所以外の締付けについては修正できないように締付修正部20を制御する。そのため、作業者Uがエラー教示部10に教示されたエラー箇所と異なる箇所の締付けを修正してしまうことを防止できる。これにより、本来修正されるべきエラー箇所の締付けが修正されずに、締付修正工程が終了することは防止され、別の作業者によるチェック作業なしに、エラー箇所を確実に修正できる。その結果、完成品(車載用バッテリー、車両等)の安全性や性能を確保できる。
【0064】
(b)また、締付修正工程では、ナットランナー21を用いて締付けを修正している。このような既存のナットランナー21を使用することにより、締付修正部20にかかる開発費用を抑えられる。
【0065】
(c)また、締付支援システム2では、ワークWの各締付け箇所には締付順序番号が割り当てられており、エラー教示部10は、エラー箇所に割り当てられている締付順序番号を位置特定部24に通知している。そのため、締付け箇所やエラー箇所についての位置情報(3次元座標等)のやり取りが、締付装置1とエラー教示部10の間、およびエラー教示部10と位置特定部24の間では不要になる。その結果、データリンクおよび制御方法を単純にできる。また、位置特定部24は、エラー教示部10から通知されたエラー箇所の締付順序番号に対応付けられている位置情報のみを参照すればよく、締付部Tがエラー箇所にあるか判別する処理が高速化される。
【0066】
(d)また、締付支援システム2では、
図4(A)、(B)に示すように、1つのエラー箇所について修正作業が正常に終了すると、作業者Uによるスイッチ等の操作なしで、次に修正すべきエラー箇所の位置にカーソルCを自動的に移動させている。したがって、本実施形態の締付支援システム2では、作業者の操作ミス等によってカーソルCがエラー箇所以外の位置に表示されることはなく、エラー箇所のみに表示される。そのため、カーソルCを移動させるための操作が不要になるだけでなく、作業者の操作ミス等に基づく修正作業のやり直しも不要になり、作業者Uは効率的に締付支援工程を実施できる。
【0067】
(e)ワークWは、車載用バッテリーとして用いる組電池である。締付支援システム2を利用すれば、車載用バッテリーのような修正すべきエラー箇所が多いワークWに対しても、全てのエラー箇所のネジ締めを確実に修正できる。したがって、締付支援システム2は、ネジ類の締付け箇所が多いときほど、効果的に、エラー箇所の締付けが修正されずに締付修正工程が終了することを防止でき、別の作業者によるチェック作業なしに、エラー箇所を確実に修正できる。