特許第6589580号(P6589580)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6589580
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】内燃機関の吸気装置および吸気流制御弁
(51)【国際特許分類】
   F02B 31/06 20060101AFI20191007BHJP
【FI】
   F02B31/06 500C
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-221148(P2015-221148)
(22)【出願日】2015年11月11日
(65)【公開番号】特開2017-89511(P2017-89511A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 篤史
【審査官】 篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−075450(JP,A)
【文献】 特開2011−047312(JP,A)
【文献】 特開2011−001846(JP,A)
【文献】 特開2007−182831(JP,A)
【文献】 特開2004−044459(JP,A)
【文献】 特開2011−149331(JP,A)
【文献】 特開2008−115772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 31/06
F02B 31/08
F02D 9/10
F02M 35/104
F02M 35/112
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の燃焼室に連通され、前記燃焼室に吸気を供給する吸気通路と、
前記吸気通路に設けられ、弁体が回動することによって閉弁時に前記弁体の外周部と前記吸気通路の内面との間に形成されるメイン開口部により吸気の流れを制御する吸気流制御弁と、を備え、
前記吸気流制御弁は、前記弁体の内部を貫通するように設けられるとともに吸気流の一部が流通可能なサブ開口部を含み、
前記サブ開口部は、前記サブ開口部を通過する吸気流が、閉弁時において前記メイン開口部を通過して吸気流速が増加された吸気流流速増加領域に向けて放出されるように構成され
前記サブ開口部は、吸気流の流れ方向視において、前記弁体の回動中心線の延びる方向に沿ってスリット状に延びるように形成されている、内燃機関の吸気装置。
【請求項2】
内燃機関の燃焼室に連通され、前記燃焼室に吸気を供給する吸気通路と、
前記吸気通路に設けられ、弁体が回動することによって閉弁時に前記弁体の外周部と前記吸気通路の内面との間に形成されるメイン開口部により吸気の流れを制御する吸気流制御弁と、を備え、
前記吸気流制御弁は、前記弁体の内部を貫通するように設けられるとともに吸気流の一部が流通可能なサブ開口部を含み、
前記サブ開口部は、前記サブ開口部を通過する吸気流が、閉弁時において前記メイン開口部を通過して吸気流速が増加された吸気流流速増加領域に向けて放出されるように構成され、
前記サブ開口部は、前記サブ開口部を流れる吸気流の流れ方向に沿って流路断面形状が絞られており、
前記吸気流制御弁の閉弁時に、流路断面形状が絞られた前記サブ開口部を介して吸気流の一部が流速を増加させた状態で前記吸気流流速増加領域に向けて放出されるように構成されている、内燃機関の吸気装置。
【請求項3】
内燃機関の燃焼室に連通され、前記燃焼室に吸気を供給する吸気通路と、
前記吸気通路に設けられ、弁体が回動することによって閉弁時に前記弁体の外周部と前記吸気通路の内面との間に形成されるメイン開口部により吸気の流れを制御する吸気流制御弁と、を備え、
前記吸気流制御弁は、前記弁体の内部を貫通するように設けられるとともに吸気流の一部が流通可能なサブ開口部を含み、
前記サブ開口部は、前記サブ開口部を通過する吸気流が、閉弁時において前記メイン開口部を通過して吸気流速が増加された吸気流流速増加領域に向けて放出されるように構成され、
前記吸気流制御弁は、スリット状の前記サブ開口部を挟むように形成された複数の弁部分を有し、
前記複数の弁部分の少なくとも1つは、前記弁体の回動中心線の延びる方向に沿って見た場合に、翼断面形状の少なくとも一部を含む、内燃機関の吸気装置。
【請求項4】
前記複数の弁部分の少なくとも1つは、前記翼断面形状における反り線が、前記弁体における前記サブ開口部の吸気入口側から吸気出口側に向かって凸状に湾曲するように形成されている、請求項に記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項5】
前記吸気流制御弁の閉弁時において、前記弁体の上面と前記吸気通路の上側内面とによって前記メイン開口部が形成されるように構成されている、請求項1〜のいずれか1項に記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項6】
内燃機関の燃焼室に吸気を供給する吸気通路に設けられ、閉弁時に前記吸気通路の内面との間に形成されるメイン開口部により吸気の流れを制御する弁体と、
前記弁体に設けられ、前記弁体を回動させる回動軸と、を備え、
前記弁体は、前記弁体の内部を貫通するように設けられるとともに吸気流の一部が流通可能なサブ開口部を含み、
前記サブ開口部は、前記サブ開口部を通過する吸気流が、閉弁時において前記メイン開口部を通過して吸気流速が増加された吸気流流速増加領域に向けて放出されるように構成され
前記サブ開口部は、吸気流の流れ方向視において、前記弁体の回動中心線の延びる方向に沿ってスリット状に延びるように形成されている、吸気流制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の吸気装置および吸気流制御弁に関し、特に、吸気通路内で弁体が回動することにより吸気流を制御する吸気流制御弁を備えた内燃機関の吸気装置および吸気流制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸気通路内で弁体が回動することにより吸気流を制御する吸気流制御弁を備えた内燃機関の吸気装置などが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、吸気流制御弁が吸気通路内に回動可能に設けられたインテークマニホールド(内燃機関の吸気装置)が開示されている。この特許文献1に記載のインテークマニホールドでは、吸気流制御弁は、平板状を有するとともに中実構造を有する弁体の根元部(上流端部)に回動軸が設けられるとともに、開弁時には吸気通路の下側内面の凹部に収容されている。そして、弁体が凹部から斜めに起き上がるように閉じ側に回動された際、弁体の下流側の先端部が吸気通路断面を絞ることにより下流の吸気流に偏向を生じさせて、気筒内にタンブル流(縦渦)が生成されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4485541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のインテークマニホールドでは、平板状を有する弁体が閉じ側に回動されて下流側の先端部が吸気通路断面を絞ることにより、気筒内にある程度のタンブル流(偏向流)を発生させることが可能であると考えられる。しかしながら、閉弁時に、中実構造を有する弁体の背面下流領域(斜めに起き上がった弁体の裏面側の領域)が負圧になることに起因して、弁体により絞られて流速が増加された吸気流の一部が背面下流領域(負圧領域)に引き込まれてしまうため、吸気流制御弁通過直後の吸気流が失速する虞がある。このため、吸気流の失速(減速)に起因して、吸気流の偏向がヘッドポート(吸気ポート)の奥まで届きにくくなり、気筒内に形成される偏向流(タンブル流)の強度を十分に得ることができないという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、吸気流の絞りによる流速増加効果を持続させることによって気筒内に形成される偏向流の強度を十分に得ることが可能な内燃機関の吸気装置および吸気流制御弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における内燃機関の吸気装置は、内燃機関の燃焼室に連通され、燃焼室に吸気を供給する吸気通路と、吸気通路に設けられ、弁体が回動することによって閉弁時に弁体の外周部と吸気通路の内面との間に形成されるメイン開口部により吸気の流れを制御する吸気流制御弁と、を備え、吸気流制御弁は、弁体の内部を貫通するように設けられるとともに吸気流の一部が流通可能なサブ開口部を含み、サブ開口部は、サブ開口部を通過する吸気流が、閉弁時においてメイン開口部を通過して吸気流速が増加された吸気流流速増加領域に向けて放出されるように構成され、サブ開口部は、吸気流の流れ方向視において、弁体の回動中心線の延びる方向に沿ってスリット状に延びるように形成されている。
【0008】
この発明の第1の局面による内燃機関の吸気装置では、上記のように、吸気流制御弁は、弁体の内部を貫通するように設けられるとともに吸気流の一部が流通可能なサブ開口部を含み、サブ開口部を通過する吸気流が、閉弁時においてメイン開口部を通過して吸気流速が増加された吸気流流速増加領域に向けて放出されるようにサブ開口部を構成する。これにより、サブ開口部が設けられていない中実構造の弁体を用いて吸気流を絞る場合と比較して、閉弁時にサブ開口部にも吸気流の一部が通過する分、弁体裏側の負圧領域の形成範囲を小さくすることができる。そして、負圧領域の影響が弱められた状態で、メイン開口部の下流側の吸気流流速増加領域に向けてサブ開口部を通過した吸気流が付加されるので、メイン開口部で絞られた吸気流の流速増加状態をより下流側まで持続させることができる。すなわち、吸気流の偏向が内燃機関のヘッドポート(吸気ポート)の奥まで届きやすくなるので、気筒内に形成される偏向流の強度を十分に得ることができる。なお、この吸気流制御弁を用いて気筒内にタンブル流(縦渦)を形成する場合、タンブル比(タンブル強度)の増加により燃焼状態が改善されるので、内燃機関の燃費を向上させることができる。また、燃焼状態が改善される分、燃焼速度を高めることができるのでノッキングが発生する前に燃焼を完了させることができ、その結果、ノッキングの発生を抑制することができる。
また、サブ開口部が弁体の回動中心線の延びる方向となる弁体の幅方向に沿ってスリット状に形成されているので、吸気通路の中央部のみならず吸気通路の幅方向の一方側部から他方側部に亘ってサブ開口部を通過した吸気流を吸気流流速増加領域に一様に付加することができる。したがって、メイン開口部下流側の吸気流の流速増加状態を吸気通路の幅方向に沿っても一様に持続させることができるので、メイン開口部通過後の吸気流をより強力に偏向させることができる。
【0011】
この発明のの局面による内燃機関の吸気装置は、内燃機関の燃焼室に連通され、燃焼室に吸気を供給する吸気通路と、吸気通路に設けられ、弁体が回動することによって閉弁時に弁体の外周部と吸気通路の内面との間に形成されるメイン開口部により吸気の流れを制御する吸気流制御弁と、を備え、吸気流制御弁は、弁体の内部を貫通するように設けられるとともに吸気流の一部が流通可能なサブ開口部を含み、サブ開口部は、サブ開口部を通過する吸気流が、閉弁時においてメイン開口部を通過して吸気流速が増加された吸気流流速増加領域に向けて放出されるように構成され、サブ開口部は、サブ開口部を流れる吸気流の流れ方向に沿って流路断面形状が絞られており、吸気流制御弁の閉弁時に、流路断面形状が絞られたサブ開口部を介して吸気流の一部が流速を増加させた状態で吸気流流速増加領域に向けて放出されるように構成されている。
【0012】
この発明の第2の局面による内燃機関の吸気装置では、上記のように、サブ開口部を通過する際に流速が増加された吸気流を、メイン開口部を通過して吸気流速が増加された吸気流流速増加領域に付加することができるので、メイン開口部通過後の吸気流の流速増加状態を確実に維持(アシスト)することができる。
【0013】
この発明のの局面による内燃機関は、内燃機関の燃焼室に連通され、燃焼室に吸気を供給する吸気通路と、吸気通路に設けられ、弁体が回動することによって閉弁時に弁体の外周部と吸気通路の内面との間に形成されるメイン開口部により吸気の流れを制御する吸気流制御弁と、を備え、吸気流制御弁は、弁体の内部を貫通するように設けられるとともに吸気流の一部が流通可能なサブ開口部を含み、サブ開口部は、サブ開口部を通過する吸気流が、閉弁時においてメイン開口部を通過して吸気流速が増加された吸気流流速増加領域に向けて放出されるように構成され、吸気流制御弁は、スリット状のサブ開口部を挟むように形成された複数の弁部分を有し、複数の弁部分の少なくとも1つは、弁体の回動中心線の延びる方向に沿って見た場合に、翼断面形状の少なくとも一部を含む。
【0014】
この発明の第3の局面による内燃機関の吸気装置では、上記のように、翼断面形状の少なくとも一部を含む弁部分によって、スリット状のサブ開口部の流路抵抗を低減させることができる。したがって、サブ開口部を通過する吸気流の流速を低下させることなく吸気流流速増加領域に向けて、効率よく放出させることができる。
【0015】
この場合、好ましくは、複数の弁部分の少なくとも1つは、翼断面形状における反り線が、弁体におけるサブ開口部の吸気入口側から吸気出口側に向かって凸状に湾曲するように形成されている。
【0016】
このように構成すれば、翼断面形状を上下逆さまにした弁部分の下面を利用してサブ開口部の内面の一部を構成することができるので、翼断面形状を有する弁部分の反り線が凸状に湾曲する側の下面に沿って流れる吸気流の流速を、サブ開口部内で効果的に加速(増速)させることができる。したがって、弁体の閉弁時にサブ開口部から放出される吸気流を弁体の裏面(背面)側から吸気流流速増加領域に向けて確実に到達させることができる。
【0017】
上記第1の局面による内燃機関の吸気装置において、好ましくは、吸気流制御弁の閉弁時において、弁体の上面と吸気通路の上側内面とによってメイン開口部が形成されるように構成されている。
【0018】
このように構成すれば、弁体の閉弁時にサブ開口部を通過した吸気流の一部を弁体の裏面(背面)側から斜め上方に向けて放出して吸気流流速増加領域に到達させることができるので、メイン開口部よりも下流側の吸気通路の上側内面近傍を流れる吸気流の流速を効果的に増加させることができる。したがって、内燃機関のヘッドポート(吸気ポート)における上側内面近傍の吸気流速が増加される偏向流を容易に形成して、この偏向流を気筒内に届けることができる。
【0019】
この発明の第の局面における吸気流制御弁は、内燃機関の燃焼室に吸気を供給する吸気通路に設けられ、閉弁時に吸気通路の内面との間に形成されるメイン開口部により吸気の流れを制御する弁体と、弁体に設けられ、弁体を回動させる回動軸と、を備え、弁体は、弁体の内部を貫通するように設けられるとともに吸気流の一部が流通可能なサブ開口部を含み、サブ開口部は、サブ開口部を通過する吸気流が、閉弁時においてメイン開口部を通過して吸気流速が増加された吸気流流速増加領域に向けて放出されるように構成され、サブ開口部は、吸気流の流れ方向視において、弁体の回動中心線の延びる方向に沿ってスリット状に延びるように形成されている。
【0020】
この発明の第の局面による吸気流制御弁では、上記第1の局面と同様に、サブ開口部が設けられていない中実構造の弁体を用いて吸気流を絞る場合と比較して、閉弁時にサブ開口部にも吸気流の一部が通過する分、弁体裏側の負圧領域の形成範囲を小さくすることができる。そして、負圧領域の影響が弱められた状態で、メイン開口部の下流側の吸気流流速増加領域に向けてサブ開口部を通過した吸気流の一部が付加されるので、メイン開口部で絞られた吸気流の流速増加状態をより下流側まで持続させることができる。すなわち、吸気流の偏向が内燃機関のヘッドポート(吸気ポート)の奥まで届きやすくなるので、気筒内に形成される偏向流の強度を十分に得ることができる。
また、サブ開口部が弁体の回動中心線の延びる方向となる弁体の幅方向に沿ってスリット状に形成されているので、吸気通路の中央部のみならず吸気通路の幅方向の一方側部から他方側部に亘ってサブ開口部を通過した吸気流を吸気流流速増加領域に一様に付加することができる。したがって、メイン開口部下流側の吸気流の流速増加状態を吸気通路の幅方向に沿っても一様に持続させることができるので、メイン開口部通過後の吸気流をより強力に偏向させることができる。
【0021】
上記第1の局面による内燃機関の吸気装置において、以下のような構成も考えられる。
【0022】
(付記項1)
すなわち、上記第1の局面による内燃機関の吸気装置において、吸気流制御弁の閉弁時において、弁体の下面と吸気通路の下側内面とによってメイン開口部が形成されるように構成されている。
【0023】
(付記項2)
また、上記サブ開口部が弁体の回動軸の延びる軸方向に沿ってスリット状に延びる内燃機関の吸気装置において、スリット状に延びるサブ開口部は、弁体に上下方向に所定の間隔を隔てて複数設けられている。
【0024】
(付記項3)
また、上記吸気流制御弁がスリット状のサブ開口部を挟むように形成された複数の弁部分を有する内燃機関の吸気装置において、複数の弁部分は、それぞれ、翼断面形状の少なくとも一部を含んでいる。
【0025】
(付記項4)
また、上記第1の局面による内燃機関の吸気装置において、吸気流流速増加領域は、吸気流れ方向において、メイン開口部が設けられる領域の直後に位置する領域であり、吸気流制御弁の閉弁時において、サブ開口部は、サブ開口部を流れる吸気流が吸気流流速増加領域に向かうようにメイン開口部を通過する吸気流れ方向に対して所定の傾斜角度を有して弁体内部を延びるように形成されている。
【0026】
(付記項5)
また、上記第1の局面による内燃機関の吸気装置において、吸気流制御弁は、内燃機関の燃焼室内に供給される吸気流に縦渦を発生させるタンブルコントロールバルブである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1実施形態によるエンジンの概略的な構成を示した斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態によるエンジンおよび吸気装置の構造を示した断面図である。
図3】本発明の第1実施形態によるTCV(吸気流制御弁)周辺の構造を示した断面図である。
図4】本発明の第1実施形態によるTCV(閉弁時)を吸気流れ方向視で見た場合の図である。
図5】本発明の第1実施形態によるTCV閉弁時の吸気流れの様子を示した図である。
図6】本発明の第1実施形態によるTCVに対する比較例としてのTCV閉弁時の吸気流れの様子を示した図である。
図7】本発明の第2実施形態によるTCV(吸気流制御弁)周辺の構造を示した断面図である。
図8】本発明の第3実施形態によるエンジンおよび吸気装置の構造を示した断面図である。
図9】本発明の変形例によるTCV閉弁時の吸気流れ方向視での吸気通路を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0029】
[第1実施形態]
【0030】
まず、図1図6を参照して、本発明の第1実施形態によるエンジン100に搭載される吸気装置50の構成について説明する。
【0031】
(エンジンの概略的な構成)
本発明の第1実施形態による車両(自動車)用のエンジン100(内燃機関の一例)は、図1に示すように、エンジン本体10を備えている。エンジン本体10は、シリンダブロック11と、シリンダブロック11の上面(Z1側)に締結されるシリンダヘッド12と、シリンダブロック11の下面(Z2側)に締結されるクランクケース13と、シリンダヘッド12の上部に被せられて締結されたヘッドカバー14とを含む。また、直列4気筒型のエンジン100は、上下方向(Z軸方向)に延びる4つの気筒11a〜11d内でピストン1がそれぞれ往復動されることにより、吸入・圧縮・膨張(燃焼)・排気の1サイクルを連続的に繰り返してクランク軸2を回転させる。なお、気筒11a〜11dの配列方向(X軸方向)が、クランク軸2の延びる方向である。
【0032】
シリンダヘッド12には、図2に示すように、カムシャフト(図示せず)の回転により周期的に開閉される吸気弁3および排気弁4と、点火プラグ5とが組み込まれている。また、アルミニウム合金製のシリンダヘッド12は、燃焼室6と、燃焼室6に吸気(吸入空気)を送り込む吸気ポート7と、既燃ガスが排出される排気ポート8とを有する。なお、シリンダヘッド12には、シリンダブロック11の気筒11a〜11d(図1参照)の各々に対応するように、吸気ポート7、燃焼室6および排気ポート8が配置されている。吸気ポート7は、シリンダヘッド12の側面12aから燃焼室6に向かって下方斜め方向に曲がりながら延びている。また、シリンダブロック11およびシリンダヘッド12には、ラジエター(図示せず)からの冷却水が流通するウォータジャケット15が設けられている。
【0033】
また、エンジン100は、図1に示すように、シリンダヘッド12に接続される吸気装置50を備えている。また、吸気装置50は、サージタンク51とその下流側に接続される樹脂製の吸気管部52とを含み、内部に吸気通路80が形成されている。吸気管部52は、吸気管52a〜52dが気筒11a〜11dの配列方向(X軸方向)に沿って並んでおり、サージタンク51に蓄えられた吸気を吸気管52a〜52dを介して対応する吸気ポート7(図2参照)に分配する役割を有する。また、吸気管部52は、下流端部に一体的に形成されたフランジ部52eを介してシリンダヘッド12の側面12aに接続されている。フランジ部52eの内側には、樹脂製のフレーム部材53(図2参照)が同軸状に嵌め込まれており、フレーム部材53には、吸気の流れ(偏向度合)を制御するためのTCV(タンブルコントロールバルブ)60(吸気流制御弁の一例)が回動可能に設けられている。なお、フレーム部材53は下側内面81の一部が凹状に窪む弁体収容部53aを有しており、TCV60が弁体収容部53aに収容されることによりTCV60が全開状態になる(最大の流路断面積を得る)ように構成されている。なお、図4に示すように、吸気管52a〜52dの各々は、X軸方向に沿って横長の流路断面形状を有している。また、吸気通路80の四隅にはR形状(円弧形状部)が設けられている。
【0034】
ここで、図2に示すように、下側内面81は、吸気管52a〜52dの各々のZ2側の内面である。TCV60が弁体収容部53aに完全に収容された状態では、吸気通路80の下側内面81とTCV60の後述する翼面63aとが同一面(水平面)を構成する。そして、吸気装置50には、TCV60を駆動するためのアクチュエータ70が組み込まれている。なお、アクチュエータ70は、吸気管部52のX2側の外側面に取り付けられており、不図示の駆動機構を介してTCV60の回動軸61に接続されている。
【0035】
吸気装置50では、各々の気筒11a〜11dに吸気を行う際に、アクチュエータ70により4個のTCV60を動作させて各々の吸気管52a〜52d内の吸気通路80の開口面積(流路断面積)を制御するように構成されている。エンジン100では、不図示のECU(制御部)によってTCV60の開度が把握される。そして、TCV60の開度情報に基づいてアクチュエータ70が駆動されることにより、エンジン100の運転状態(負荷状態)に応じた最適な開度になるようにTCV60の姿勢制御が行われる。
【0036】
すなわち、吸気装置50では、TCV60が回動(開閉)されることにより吸気通路80の流路断面積が制御されて、燃焼室6に供給される吸気に所定の気流形状が付与される。具体的には、TCV60の閉弁時には、弁体63の後縁部64(弁体の外周部の一例)と吸気通路80の上側内面82(吸気通路の内面の一例)との間にメイン開口部85が形成される。また、吸気流がメイン開口部85によって絞られることによって、メイン開口部85が設けられる領域の下流に吸気流流速増加領域Vが形成される。これにより、上側内面82近傍に沿って吸気流速が増加された偏向流が吸気ポート7を通過して燃焼室6に運ばれる。エンジン100では、所定の回転数域(負荷状態)においてTCV60が閉じ側に回動されることにより、吸気ポート7に生じた偏向流が燃焼室6に導かれて気筒11a内にタンブル流(縦渦)が生成される。また、燃焼室6を含む気筒11a内でのタンブル流が制御されることにより、混合空気の燃焼効率が改善されて窒素酸化物を含む排気ガス成分が改善される。したがって、エンジン100の運転状態(回転数および負荷状態)に応じてTCV60の回動(開閉)動作が制御されるように構成されている。
【0037】
(TCV(吸気流制御弁)の詳細な構成)
TCV60は、耐熱性に優れた樹脂材料からなる。TCV60は、図3および図4に示すように、X1側およびX2側の各々に設けられX軸方向に延びる回動軸61と、各々の回動軸61から扇状に延びる一対の支持部62と、支持部62の回動軸61とは反対側(半径方向外側)の端部同士を横方向(X軸方向)に繋ぐ弁体63とを有する。また、回動軸61は、フレーム部材53に対して回動可能に組み付けられている。したがって、TCV60は、吸気流れ方向(矢印A方向)に沿って見た場合、U字状の断面形状を有している。
【0038】
そして、弁体63は、Z1側(上側)に位置する平坦な翼面63a(弁体の上面の一例)と、弁体63を吸気通路80内において回動軸61まわりに矢印P1方向または矢印P2方向に回動させるための円弧状の裏面63bとを有する。Z2側(下側)に位置する裏面63bは、概略矢印A方向に沿って円弧形状(Z2側に凸)を有して延びている。なお、図4に示すように、回動軸61の延びる方向は、気筒11a〜11d(図1参照)の配列方向となるX軸方向に一致している。また、アクチュエータ70(図1参照)が作動することによって、弁体63は、弁体収容部53aに完全に収容された全開状態と、図2および図3に示す全閉状態(姿勢制御状態)との間の任意の姿勢に無段階で制御される。そして、TCV60の閉弁時においては、弁体63の翼面63aと吸気通路80の上側内面82とによってメイン開口部85が形成されるように構成されている。
【0039】
ここで、第1実施形態では、図3および図4に示すように、弁体63には、内部を貫通するとともに吸気流の一部が流通可能なサブ開口部65および66が設けられている。すなわち、翼面63aには、サブ開口部65および66が開口している。サブ開口部65を代表して説明すると、サブ開口部65は、弁体63の回動中心線150の延びる方向(X軸方向)に沿ってスリット状(細い長穴状)に延びている。そして、サブ開口部65は、翼面63aに開口する吸気入口65aと、裏面63bに開口する吸気出口65bとを有しており、吸気入口65aから吸気出口65bに向かって吸気流の一部が弁体63内部を吹き抜けるように構成されている。スリット状に延びるサブ開口部65および66は、弁体63に上下方向(弁体63の厚み方向)に所定の間隔を隔てて設けられている。また、サブ開口部65および66が設けられることによって、弁体63には、スリット状のサブ開口部65および66を挟むように形成された3つの弁部分67〜69が形成されている。また、サブ開口部65および66は、サブ開口部65および66を流れる吸気流れ方向に沿って流路断面形状が絞られるような先細り形状を有している。
【0040】
これにより、第1実施形態では、サブ開口部65および66を通過する吸気流が、閉弁時においてメイン開口部85を通過して吸気流速が増加された吸気流流速増加領域Vに向けて放出されるように構成されている。また、サブ開口部65および66が弁体63の回動中心線150の延びる方向となる弁体63の幅方向に沿ってスリット状に形成されているので、図4に示すように、吸気通路80の中央部のみならず吸気通路80の幅方向の一方側部83から他方側部84に亘ってサブ開口部65および66を通過した吸気流が、弁体63の幅方向(X軸方向)にも広がる吸気流流速増加領域Vに対してこの幅方向に一様に付加される。また、サブ開口部65および66は、サブ開口部65を流れる吸気流れ方向に沿って流路断面形状が絞られているので、TCV60の閉弁時に、流路断面形状が絞られたサブ開口部65および66を介して、吸気流の一部が流速を増加させた状態で吸気流流速増加領域Vに向けて放出されるように構成されている。
【0041】
なお、図3に示すように、吸気流流速増加領域Vは、吸気流れ方向(矢印A方向)において、メイン開口部85が設けられる領域の直後に位置する領域である。そして、TCV60の閉弁時において、サブ開口部65および66を流れる吸気流が吸気流流速増加領域Vに向かうように矢印A方向に対して所定の傾斜角度を有して弁体63の内部を吸気入口65a(66a)側から吸気出口65b(66b)側に向かって延びている。これにより、弁体63が弁体収容部53aに収容された全開状態から閉弁側となる矢印P2方向に回動されて弁体63の後縁部64が吸気通路80の流路断面積を絞った状態(図2および図3参照)では、吸気流は、次のような流れとなって気筒11a(燃焼室6)内に導かれる。
【0042】
具体的には、図3においてTCV60の翼面63a側を矢印A方向に吸気が流通した場合、後縁部64において吸気通路80の流路断面がメイン開口部85を有して絞られる。これにより、メイン開口部85の直後には吸気流流速増加領域Vが形成される。また、斜めに起き上がった弁体63の裏面63bと下側内面81との空間部分には、負圧領域Qが形成される。そして、弁体63よりも上流側の吸気は、メイン開口部85のみならずサブ開口部65および66にも流通して吸気出口65b(66b)から斜め上方向に吹き出されて吸気流流速増加領域Vに放出される。なお、吸気出口66bが裏面63bに開口する分、吸気出口66bよりも下方の領域にしか負圧領域Qは形成されない。また、サブ開口部65および66は先細り形状であるので、吸気入口65a(66a)から流入した吸気流はサブ開口部65および66を通過する最中に流速が増加(加速)されて吸気出口65b(66b)から吹き出される。したがって、吸気出口65b(66b)からの吸気流がメイン開口部85を通過した吸気流に付加され、かつ、メイン開口部85を通過した吸気流の勢いをサポート(アシスト)するので、吸気流流速増加領域Vの形成範囲が吸気ポート7の内部にまで及ぶ。この場合の吸気流速分布を図5に示す。なお、図5には、吸気ポート7の160−160線の位置での吸気流速分布を示している。なお、上述の吸気の流れ方は、他の気筒11b〜11dに対応する吸気ポート7の内部でも同様である。
【0043】
ここで、第1実施形態のTCV60を有する吸気装置50に対する比較例として、図6に示すように、弁体173にサブ開口部65および66(図5参照)が設けられていないTCV170を用いて吸気通路80を絞ったとする。なお、TCV60の場合、メイン開口部85とサブ開口部65および66とによって所定の絞り量(合計開口面積)の状態が得られている。したがって、TCV170(比較例)においてもこの絞り量(合計開口面積)がTCV60の場合と同じになるように後縁部174の形成位置を調整して閉じ側に回動させている。図6においてTCV170の平坦な(凹凸のない)翼面173a側を矢印A方向に吸気が流通した場合、後縁部174には開口部185のみが形成される。また、開口部185の直後に吸気流流速増加領域Wが形成される。なお、サブ開口部65および66(図5参照)が裏面173bに設けられていないので、その分、後縁部174よりも下方の広い領域に負圧領域Qが形成される。このため、開口部185を通過した直後の吸気流の一部が広範囲に形成された負圧領域Qに引き込まれてしまい流速が低下(失速)する。この場合の吸気流速分布を図6に示す。なお、図6には、吸気ポート7の160−160線の位置での吸気流速分布を示している。
【0044】
TCV60を用いた場合の流速分布(図5参照)と、TCV170(比較例)を用いた場合の流速分布(図6参照)とを対比した場合、同じ絞り量(吸気流量)にもかかわらずTCV60を適用した方がTCV170を用いた場合よりも吸気流流速増加領域Vにおける吸気流速が全体的に増加される。これにより、サブ開口部65および66を通過して流速が増加された吸気流が吸気流流速増加領域Vに付加される分、メイン開口部85通過後の吸気流の流速増加状態を確実に維持することが可能であることが分かる。したがって、TCV60を有する吸気装置50(図1参照)では、TCV170(比較例)に対してより強力なタンブル流を気筒11a内に生成することが可能とされている。
【0045】
なお、上記したTCV60による気流制御を機能させるための制御マップ(図示せず)がECU内の記憶領域に記憶されている。制御マップにはエンジン100の運転状態に対応したTCV60の開度が設定されている。制御マップの開度設定情報に基づいてアクチュエータ70が駆動されることにより弁体63が姿勢制御される。また、ECU側で把握される弁体63の開度がフィードバックされることにより弁体63の詳細な姿勢制御が繰り返される。このようにして、エンジン100における吸気装置50は構成されている。
【0046】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0047】
第1実施形態では、弁体63の内部を貫通するとともに吸気流の一部が流通可能なサブ開口部65(66)をTCV60に設け、サブ開口部65(66)を通過する吸気流が、閉弁時においてメイン開口部85を通過して吸気流速が増加された吸気流流速増加領域Vに向けて放出されるように構成する。これにより、サブ開口部65(66)が設けられていない中実構造の弁体(TCV170)を用いて吸気流を絞る場合と比較して、閉弁時にサブ開口部65(66)にも吸気流が通過する分、弁体63の裏面63b側の負圧領域Qの形成範囲を小さくすることができる。そして、負圧領域Qの影響が弱められた状態で、メイン開口部85の下流側の吸気流流速増加領域Vに向けてサブ開口部65(66)を通過した吸気流が付加されるので、メイン開口部85で絞られた吸気流の流速増加状態をより下流側まで持続させることができる。すなわち、吸気流の偏向がエンジン100の吸気ポート7の奥まで届きやすくなるので、気筒11a〜11d内に形成されるタンブル流(縦渦)の強度を十分に得ることができる。また、タンブル比(タンブル強度の指標)の増加により燃焼状態が改善されてエンジン100の燃費を向上させることができる。また、燃焼状態が改善される分、燃焼速度を高めることができるので、ノッキングが発生する前に燃焼を完了させることができ、その結果、ノッキングの発生を抑制することができる。
【0048】
また、第1実施形態では、吸気流の流れ方向視(矢印A方向視)において、弁体63の回動中心線150の延びる方向に沿ってスリット状に延びるようにサブ開口部65(66)を形成する。これにより、サブ開口部65(66)が弁体63の回動中心線150の延びる方向となる弁体63の幅方向に沿ってスリット状に形成されているので、吸気通路80の中央部のみならず吸気通路80の幅方向の一方側部83から他方側部84に亘ってサブ開口部65(66)を通過した吸気流を吸気流流速増加領域Vに一様に付加することができる。したがって、メイン開口部85下流側の吸気流の流速増加状態を吸気通路80の幅方向(X軸方向)に沿っても一様に持続させることができるので、メイン開口部85通過後の吸気流をより強力に偏向させることができる。
【0049】
また、第1実施形態では、サブ開口部65(66)は、サブ開口部65を流れる吸気流の流れ方向に沿って流路断面形状が絞られており、TCV60の閉弁時に、流路断面形状が絞られたサブ開口部65(66)を介して吸気流の一部が流速を増加させた状態で吸気流流速増加領域Vに向けて放出されるように構成する。これにより、サブ開口部65(66)を通過して流速が増加された吸気流を、メイン開口部85を通過して吸気流速が増加(加速)された吸気流流速増加領域Vに付加することができるので、メイン開口部85通過後の吸気流の流速増加状態を確実に維持(アシスト)することができる。
【0050】
また、第1実施形態では、TCV60の閉弁時において、弁体63の翼面63aと吸気通路80の上側内面82とによってメイン開口部85が形成されるように構成する。これにより、弁体63の閉弁時にサブ開口部65(66)を通過した吸気流の一部を弁体63の裏面63b側から斜め上方に向けて放出して吸気流流速増加領域Vに到達させることができるので、メイン開口部85よりも下流側の吸気通路80の上側内面82を流れる吸気流の流速を効果的に増加させることができる。したがって、エンジン100の吸気ポート7(ヘッドポート)における上側内面82近傍の吸気流速が増加される偏向流を容易に形成して、この偏向流を気筒11a〜11d内に届けることができる。
【0051】
また、第1実施形態では、スリット状に延びるサブ開口部65および66を、弁体63に上下方向に所定の間隔を隔てて設けるように構成する。これにより、吸気流の一部を2つのサブ開口部65および66を流通させることができるので、弁体63の裏面63b側の負圧領域Qの形成範囲をより小さくするとともに、2つのサブ開口部65および66から層状に吹き出された吸気流を吸気流流速増加領域Vに付加して吸気流の流速増加状態をより効果的に下流側まで持続させることができる。
【0052】
また、第1実施形態では、TCV60の閉弁時において、サブ開口部65および66を流れる吸気流が吸気流流速増加領域Vに向かうようにメイン開口部85を通過する吸気流れ方向(矢印A方向)に対して所定の傾斜角度を有して弁体63の内部を延びるようにサブ開口部65および66を形成する。これにより、吸気流の一部を吸気流れ方向(矢印A方向)に対して傾斜するサブ開口部65および66を介して確実に吸気流流速増加領域Vに向けて放出させることができる。
【0053】
[第2実施形態]
図3および図7を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態は、TCV260における弁体263の内部構造を上記第1実施形態のTCV60と異ならせた例について説明する。なお、図中において、上記第1実施形態と同様の構成には、同じ符号を付して図示する。
【0054】
第2実施形態によるエンジン200は、吸気装置250を備える。また、図7に示すように、吸気装置250においては、吸気管部52内にTCV260(吸気流制御弁の一例)が組み込まれている。そして、TCV260の弁体263には、サブ開口部265および266が設けられている。すなわち、翼面263aには、サブ開口部265および266が開口している。また、サブ開口部265および266が設けられることによって、弁体263には、スリット状のサブ開口部265および266を挟むように形成された3つの弁部分267〜269が形成されている。弁部分267〜269は、各々が、弁体263の回動中心線150の延びる方向に見た場合に翼断面形状の少なくとも一部を含んでいる。
【0055】
この場合、弁部分267は、翼型の丸みをおびた前縁から中ほど部分までによって構成され、弁部分268は、翼型の前縁から後方に尖る後縁までの全ての部分によって構成されている。また、弁部分269は、サブ開口部266の面する側に翼型の曲面が部分的に露出するとともに残りの部分によって裏面263bが形成される。なお、翼型の全ての部分によって構成される弁部分268は、翼断面形状における反り線210(二点鎖線)が、弁体263におけるサブ開口部266の翼面263a(吸気入口266a)側から裏面263b(吸気出口266b)側に向かって凸状に湾曲している。また、弁部分267〜269は、いわゆる航空機の翼型を上下逆さまに配置した状態で翼列を形成している。
【0056】
また、サブ開口部265は、弁部分267の下面と弁部分268の上面とによって、吸気流れ方向に沿って流路断面形状が絞られる先細り形状を有している。これに対して、サブ開口部266は、弁部分268の下面と弁部分269の上面とによって、吸気入口266aから吸気流れ方向に沿って流路断面形状が一旦絞られた後、サブ開口部266の中ほどから吸気出口266bにかけて流路断面形状が徐々に拡大されるように形成されている。
【0057】
これにより、図7においてTCV260の翼面263a側を矢印A方向に吸気が流通した場合、後縁部264(弁体の外周部の一例)において吸気流がメイン開口部85により絞られてメイン開口部85の直後に吸気流流速増加領域Vが形成される。また、斜めに起き上がった弁体263の裏面263bと下側内面81との空間部分に負圧領域Qが形成される。そして、第2実施形態では、弁体263よりも上流側の吸気はメイン開口部85のみならずサブ開口部265および266にも流通して吸気出口265bおよび266bから斜め上方向に吹き出されて吸気流流速増加領域Vに放出される。この際、サブ開口部265は先細り形状を有しているので、吸気入口265aから流入した吸気はサブ開口部265を通過する際に増速されて吸気出口265bから吹き出される。また、サブ開口部266は絞られた後、徐々に拡管されているので、吸気入口266aから流入した吸気はサブ開口部266を通過する際に増速され、その後も失速することなく吸気出口266bから吹き出される。したがって、吸気出口265bおよび266bからの吸気流がメイン開口部85を通過した吸気流に効果的に付加されるので、吸気流流速増加領域Vの形成範囲が吸気ポート7の内部にまで確実に及ぶ。第1実施形態のTCV60(図3参照)では吸気出口65a(65b)の直後で吸気流路が急拡大されるのに対し、TCV260では、サブ開口部266は徐々に拡管されるので、サブ開口部266内の前半区間(絞り流路)で加速された吸気流が後半区間(緩やかな拡管流路)で失速(減速)することなく吸気出口266bからより遠くまで吹き出される。したがって、サブ開口部266からの吸気流を確実に吸気流流速増加領域Vに付加することが可能となる。なお、第2実施形態による吸気装置250のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0058】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、上記のように、弁体263の内部を貫通するとともに吸気流の一部が流通可能なサブ開口部265(266)をTCV260に設け、サブ開口部265(266)を通過する吸気流を、閉弁時においてメイン開口部85を通過して吸気流速が増加された吸気流流速増加領域Vに向けて放出するように構成する。これにより、閉弁時にサブ開口部265(266)にも吸気流の一部が通過する分、弁体263裏側の負圧領域Qの形成範囲を小さくすることができる。そして、負圧領域Qの影響が弱められた状態で、メイン開口部85の下流側の吸気流流速増加領域Vに向けてサブ開口部265(266)を通過した吸気流が付加されるので、メイン開口部85で絞られた吸気流の流速増加状態を下流側まで持続させることができる。すなわち、吸気流の偏向が吸気ポート7の奥まで届きやすくなるので、気筒11a〜11d内に形成されるタンブル流の強度を十分に得ることができる。また、燃焼状態の改善とともにノッキングの発生を抑制することができる。
【0059】
また、第2実施形態では、TCV260は、スリット状のサブ開口部265および266を挟むように形成された弁部分267〜269を有し、弁部分267〜269の各々は、弁体263の回動中心線150の延びる方向に沿って見た場合に、翼断面形状の少なくとも一部を含む。これにより、翼断面形状の少なくとも一部を含む弁部分267〜269によって、スリット状のサブ開口部265および266の流路抵抗を低減させることができる。したがって、サブ開口部265および266を通過する吸気流の流速を低下させることなく吸気流流速増加領域Vに向けて、より効率よく放出させることができる。
【0060】
また、第2実施形態では、弁部分268を翼断面形状における反り線210が弁体263におけるサブ開口部266の翼面263a(吸気入口266a)側から裏面263b(吸気出口266b)側に向かって凸状に湾曲するように形成する。これにより、翼断面形状を上下逆さまにした弁部分268の下面を利用してサブ開口部266の内面の一部を構成することができるので、翼断面形状を有するサブ開口部266の反り線210が凸状に湾曲する側の下面に沿って流れる吸気流の流速を、サブ開口部266内で効果的に加速(増速)させることができる。したがって、弁体263の閉弁時にサブ開口部266から放出される吸気流の一部を弁体263の裏面263b(背面)側から吸気流流速増加領域Vに向けて確実に到達させることができる。なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0061】
[第3実施形態]
図7および図8を参照して、第3実施形態について説明する。この第3実施形態は、上記第2実施形態に対してTCV260を上下逆さまに取り付けた例について説明する。なお、図中において、上記第2実施形態と同様の構成には、同じ符号を付して図示する。
【0062】
第3実施形態によるエンジン300(内燃機関の一例)は、吸気装置350を備えている。また、図8に示すように、吸気装置350においては、吸気管部352内に上記第2実施形態で用いたTCV260が組み込まれている。
【0063】
ここで、第3実施形態では、吸気管部352内においてTCV260が上記第2実施形態(図7参照)に対して上下逆さまに取り付けられている。すなわち、フレーム部材53の弁体収容部53aが吸気通路80の上側内面82の側に配置されることによって、弁体263は上側内面82から下側内面81に向かって矢印P2方向に閉弁されるように構成されている。したがって、TCV260の閉弁時において、弁体263の裏面263bと吸気通路80の下側内面81とによってメイン開口部385が形成される。
【0064】
これにより、図8においてTCV260の翼面263a側を矢印A方向に吸気が流通した場合、後縁部264において吸気流がメイン開口部385により絞られて直後に吸気流流速増加領域Vが形成される。そして、吸気はメイン開口部385のみならず、弁体263を貫通するサブ開口部265および266にも流通して吸気出口265b(266b)から斜め下方向に向けて吸気流流速増加領域Vに放出される。したがって、吸気出口265b(266b)からの吸気流がメイン開口部385を通過した吸気流に付加されるので、吸気流流速増加領域Vの形成範囲が吸気ポート7の内部にまで及ぶ。なお、第3実施形態による吸気装置350のその他の構成は、上記第2実施形態と同様である。
【0065】
(第3実施形態の効果)
第3実施形態では、上記のように、TCV260の閉弁時において、弁体263の翼面263aと吸気通路80の下側内面81とによってメイン開口部385が形成されるように構成する。これにより、弁体263の閉弁時にサブ開口部265(266)を通過した吸気流を弁体263の裏面263b側から斜め下方に向けて放出して吸気流流速増加領域Vに到達させることができるので、メイン開口部385よりも下流側の吸気通路80の下側内面81を流れる吸気流の流速を効果的に増加させることができる。したがって、エンジン300の吸気ポート7(ヘッドポート)における下側内面81近傍の吸気流速が増加される偏向流を容易に形成して、この偏向流を気筒11a〜11d内に届けることができる。なお、第3実施形態のその他の効果は上記第2実施形態と同様である。
【0066】
[変形例]
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0067】
たとえば、上記第1〜第3実施形態では、弁体63(263)に2つのサブ開口部65(265)および66(266)を設けたが、本発明はこれに限られない。たとえば、弁体63にサブ開口部65のみを設けてもよいし、3つ以上のサブ開口部を設けてもよい。
【0068】
また、上記第1〜第3実施形態では、サブ開口部65(265)および66(266)を弁体63の幅方向に沿って各々1本のスリット状に形成したが、本発明はこれに限られない。たとえば、図9に示す本発明の変形例のように、2つのサブ開口部65を弁体63の幅方向に沿って所定間隔を隔てて並べるとともに、2つのサブ開口部66を弁体63の幅方向に沿って所定間隔を隔てて並べてもよい。1つの気筒11aあたり2つの吸気弁3を有するエンジンにおいては、1本の吸気ポート7が途中から2本に分岐するので、上流に配置されたTCV60aの下流において弁体63の幅方向に沿って2つの吸気流流速増加領域Vを予め形成しておくことは有用である。また、スリット状のみならず、孔状のサブ開口部を弁体63の幅方向に沿って所定間隔を隔てて(破線状に)複数設けてもよい。
【0069】
また、上記第2および第3実施形態では、3つの弁部分267〜269にいわゆる翼断面形状を用いたが、本発明はこれに限られない。中心線に関し上面と下面の形状が対称な対称翼形状(水滴形状)によって1つまたは複数個の弁部分を形成してもよい。
【0070】
また、上記第1〜第3実施形態では、X軸方向に沿って横長の流路断面形状を有する吸気管52a〜52d(吸気通路80)にTCV60(260)を適用したが、本発明はこれに限られない。円形状の流路断面や長円状の流路断面を有する吸気通路に対して本発明の吸気流制御弁(TCV)を適用してもよい。
【0071】
また、上記第1〜第3実施形態では、樹脂製の弁体63(263)を用いてTCV60(260)を構成したが、本発明はこれに限られない。金属製の弁体63(263)を用いてTCV60(260)を構成してもよい。たとえば、金属板にプレス加工を施してスリット(ルーバー)を形成することによって、弁体の内部を貫通するとともに吸気流の一部が流通可能なサブ開口部を形成してもよい。
【0072】
また、上記第1〜第3実施形態では、吸気流れ方向に沿って見た場合にU字状の断面形状を有するTCV60(260)に本発明を適用したが、本発明はこれに限られない。平板状を有する弁体の根元部に回動軸を有して下流端部側が吸気流中に回動される吸気流制御弁や、バタフライ型の吸気流制御弁が回動可能に組み込まれた吸気装置に対して本発明を適用してもよい。
【0073】
また、上記第1〜第3実施形態では、吸気装置50(250、350)を、直列4気筒型のエンジン100に適用する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明の内燃機関の吸気装置を、直列4気筒以外の多気筒型エンジンやV型多気筒型エンジンに適用してもよい。また、単気筒エンジン用の吸気装置に対して本発明を適用してもよい。また、タンブル比の増加に伴い燃焼状態が改善される点において、自然吸気エンジンのみならず過給機付きエンジンへの適用にも優位性がある。なお、内燃機関としては、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンおよびガスエンジンなどのいずれにも適用可能である。
【符号の説明】
【0074】
6 燃焼室
7 吸気ポート
50、250、350 吸気装置(内燃機関の吸気装置)
60、60a、260 TCV(吸気流制御弁)
63、263 弁体
63a、263a 翼面(弁体の上面)
64、264 後縁部(弁体の外周部)
65、66、265、266 サブ開口部
67、68、69、267、268、269 弁部分
80 吸気通路
82 上側内面(吸気通路の内面)
85、385 メイン開口部
100、200、300 エンジン(内燃機関)
V 吸気流流速増加領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9