(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態に係る非常用照明装置について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0011】
実施の形態.
図1は、実施の形態に係る非常用照明装置の回路図である。蓄電池101の電圧はVbatであり、非常用照明装置の入力電圧である。蓄電池101には、入力電圧を検知する入力電圧検出回路102が接続されている。入力電圧検出回路102は、入力電圧を分圧する2つの第1抵抗素子R1、R2を備えている。入力電圧検出回路102は、2つの直列に接続された第1抵抗素子R1、R2の接続点にカソードが接続されたダイオードD1を備えている。ダイオードD1のアノードは抵抗素子R3に接続されている。
【0012】
蓄電池101には、入力電圧を変圧し複数のLEDが直列に接続されたLEDモジュールで構成された負荷401に印加するDCDCコンバータ回路201が接続されている。LEDは直列でなく直並列、並列に接続してもよい。DCDCコンバータ回路201は昇圧回路で構成されている。DCDCコンバータ回路201は、DCDCコンバータ回路201に接続されたコントロール回路202からの駆動信号によりスイッチング素子Q1がオンオフして制御される。コントロール回路202は、負荷401が定電力制御されるように、DCDCコンバータ回路201のスイッチング素子Q1を制御する。コントロール回路202は、専用のハードウェアであっても、メモリに格納されるプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit、中央演算装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、DSPともいう)であってもよい。
DCDCコンバータ回路201は、前述のスイッチング素子Q1、インダクタId、ダイオードDd及びコンデンサCdを備えている。スイッチング素子Q1のドレインは、インダクタIdとダイオードDdのアノードの間に接続されている。スイッチング素子Q1がオンになるとインダクタIdにエネルギが蓄えられる。そして、スイッチング素子Q1がオフになるとインダクタIdのエネルギによりコンデンサCdが充電される。
【0013】
DCDCコンバータ回路201で生成された電力が負荷401に印加される。負荷401の順方向電圧はVFであり、順方向電流はIFである。DCDCコンバータ回路201のコンデンサCdにはリミッタ回路301が接続されている。リミッタ回路301は、順方向電圧VFが予め定められた値(過電流リミッタ閾値)以下になると、順方向電流IFの増加を抑制する回路である。
【0014】
リミッタ回路301は、ベースバイアス抵抗R8、NPNトランジスタQ2、シャントレギュレータIC2、及び2つの直列に接続された第2抵抗素子R4、R5を備えている。リミッタ回路301のNPNトランジスタQ2のコレクタとベースバイアス抵抗R8との接続点が、DCDCコンバータ回路201のコンデンサCdの正極と接続されている。NPNトランジスタQ2のベースにシャントレギュレータIC2のカソードが接続されている。第2抵抗素子R4、R5の接続点とシャントレギュレータIC2のリファレンスとの接続点に、ダイオードD1のアノードが抵抗素子R3を介して接続されている。NPNトランジスタQ2のエミッタに第2抵抗素子R4が接続されている。ベースバイアス抵抗R8は、NPNトランジスタQ2のベースとシャントレギュレータIC2のカソードの接続点と、NPNトランジスタQ2のコレクタ間に接続されている。
【0015】
負荷401に並列に2つの直列に接続された第3抵抗素子R6、R7が接続されている。2つの第3抵抗素子R6、R7の接続点に、NPNトランジスタQ2のエミッタが接続されている。コントロール回路202は、FB(Feed Back)端子を備えている。このFB端子は、負荷401を構成するLEDのカソード側に接続されている。したがって、コントロール回路202は、FB端子を介して、負荷401の順方向電圧VFと順方向電流IFを検知することができる。負荷401の電流検出抵抗R9がLEDのカソードと接続され、このカソードと電流検出抵抗R9の接続点とFB端子の間には、電流入力抵抗R10と電流/電圧入力抵抗R11が直列に接続されている。
【0016】
次に、非常用照明装置の動作を説明する。DCDCコンバータ回路201(スイッチング回路)により、蓄電池101の電圧Vbatを、負荷401を点灯するために必要な順方向電圧VFに変圧する。そして、負荷401に印加されている順方向電圧VFと順方向電流IFを、コントロール回路202に加算帰還し定電力制御を実現している。なお、別の方法で負荷401の順方向電圧VFと順方向電流IFとを乗算帰還とした定電力制御を実現してもよい。このように、負荷401は定電力制御される。
【0017】
リミッタ回路301は、上記の加算または乗算前の順方向電圧VFの帰還ルートに接続されている。リミッタ回路301は、順方向電圧VFが低下した場合に、順方向電流IFが過度に上昇することを防止する回路である。
【0018】
リミッタ回路301は、順方向電圧VFが温度変化等により低下した場合に、順方向電流をある閾値以下に保つように動作する。例えば、リミッタ回路301のカソード電圧Vkが10V、NPNトランジスタQ2のベース−エミッタ間電圧Vbeが0.6Vと設定とする。
【0019】
リミッタ回路301の動作について説明する。
1.負荷401の順方向電圧VFが予め定められた値より大きい場合
Vk−Vbe=10−0.6=9.4Vを過電流リミッタ閾値1と呼ぶ。第3抵抗素子R6、R7の接続点電位が過電流リミッタ閾値1を超えている場合は、第2抵抗素子R4、R5の接続点電位がシャントレギュレータIC2のリファレンス電圧を超えてしまい、シャントレギュレータIC2は第3抵抗素子R6、R7の接続点電位を低下させようとする。しかし、トランジスタQ2がNPNトランジスタであるため、第3抵抗素子R6を介して電流を吸い込むことができないため、第3抵抗素子R6、R7の接続点電位を低下させることができない。従って、負荷401の順方向電圧VFが予め定められた値より大きい場合、すなわち第3抵抗素子R6、R7の接続点電位が過電流リミッタ閾値1を超えている場合、コントロール回路202のFB端子には順方向電圧VFと順方向電流IFとを加算した信号が帰還され、定電力制御が実行される。
【0020】
図2は、第3抵抗素子R6、R7の接続点電位と順方向電流IFの関係を示すグラフである。上記のとおり、第3抵抗素子R6、R7の接続点電位が過電流リミッタ閾値1を超えている場合、
図2の実線で示される定電力制御を実現する。
【0021】
2.負荷401の順方向電圧VFが予め定められた値以下の場合
一方、第3抵抗素子R6、R7の接続点電位が、Vk−Vbe=9.4V(過電流リミッタ閾値1)以下になると、第2抵抗素子R4、R5の接続点電位がシャントレギュレータIC2のリファレンス電圧に満たなくなる。そのため、シャントレギュレータIC2はリファレンス電圧を保持しようと、第3抵抗素子R6、R7の接続点電位を9.4Vの値を保つよう一定制御する。順方向電圧VFが下がり続けたとしても、第3抵抗素子R6、R7の接続点電位が一定のため順方向電流IFは増加しない。
【0022】
したがって、第3抵抗素子R6、R7の接続点電位が過電流リミッタ閾値1以下になると、
図2の一点鎖線で示される過電流抑制制御を実現する。このように、リミッタ回路301により、負荷401の順方向電圧VFが低下した場合における順方向電流IFの増加を抑制することができる。
【0023】
本発明の実施の形態に係る非常用照明装置は、上記のリミッタ回路301の動作を前提としつつ、蓄電池101の電圧Vbat(入力電圧)の低下時に順方向電流IFが過電流となることを抑制するものである。具体的には、リミッタ回路301は、入力電圧Vbat検出回路102により入力電圧Vbatが予め定められた値まで低下したことが検知されたときに、過電流リミッタ閾値を高くする。このことについて、詳しく説明する。
【0024】
図3は、入力電圧Vbatが低下したときに過電流リミッタ閾値を変更することを示す図である。丸1で示す時点では、第3抵抗素子R6、R7の接続点電位が過電流リミッタ閾値1より大きく、負荷401が定電力制御される。そして、蓄電池101の入力電圧Vbatが入力電圧検出回路102の閾値まで低下した場合、リミッタ回路301の過電流リミッタ閾値1を過電流リミッタ閾値2に変更する。即ち、丸1から丸2へ遷移する。これにより、順方向電圧VFが高い値で過電流となることを抑制する。
【0025】
例えば、放電基準電圧=6.6V、R1=22kΩ、R2=3.0kΩ、D1のVF=0.6V、シャントレギュレータIC2のリファレンス電圧Vref=1.25Vとする。
【0026】
A.蓄電池101の電圧Vbat(入力電圧)が高い時(Vbat>5.4V)
Vbat*R2/(R1+R2)>0.65Vの時、ダイオードD1は非導通であり第2抵抗素子R4、R5で設定した電圧で順方向電圧VFが制御され、順方向電圧VFと順方向電流IFの加算帰還により定電力制御される。この制御は、前述した第3抵抗素子R6、R7の接続点電位が過電流リミッタ閾値1を超えている場合の制御と同じである。
【0027】
B.蓄電池101の電圧Vbat(入力電圧)が低い時(Vbat≦5.4V)
Vbat*R2/(R1+R2)≦0.65の時、ダイオードD1は導通し第2抵抗素子R4、R5の接続点電圧が低下した分だけ、第3抵抗素子R6、R7の接続点電位が上昇する。第3抵抗素子R6、R7の接続点電位が上昇すると、コントロール回路202は順方向電圧VFが上昇したと認識し、定電力制御により順方向電流IFは減少する。
【0028】
蓄電池101からの入力電圧が低く、ダイオードD1が導通している限り、順方向電圧VFの擬似的な上昇が維持されるので、定電力制御により順方向電流IFが低い値に保たれる。このことは、
図3において、過電流リミッタ閾値1を、過電流リミッタ閾値1より高い値である過電流リミッタ閾値2に変更することと等価である。
【0029】
上記のように入力電圧検出回路102により過電流リミッタ閾値を変更した場合の順方向電流IFは、入力電圧検出回路102が無い場合の順方向電流IFより小さい。小さい電流値に制限することで、蓄電池101からの流入(入力)電流が減少し、回路部品の発熱の増大を抑制することができる。
【0030】
ところで、リミッタ回路301と入力電圧検出回路102が無い場合、蓄電池101の電圧Vbatの放電末期にはLED負荷の温度が自己発熱により上昇しているため、順方向電圧VFは低下している。出力定電力制御の場合、順方向電圧VFが低下すると順方向電流IFは上昇し、DCDCコンバータ回路201の温度は上昇する。併せて、蓄電池101の電圧Vbatの放電末期における定電力制御では、蓄電池101の電圧Vbatが低下した分だけ蓄電池101からDCDCコンバータ回路201への流入(入力) 電流が上昇するため、DCDCコンバータ回路201の温度が上昇してしまう。これらの2つの理由で、蓄電池101の放電末期には、DCDCコンバータ回路201の温度が上昇する。
【0031】
しかし、本発明の実施の形態に係る非常用照明装置によれば、入力電圧検出回路102と、過電流を防止するリミッタ回路301を上記のとおり組み合わせて用いることで、DCDCコンバータ回路201などの回路部品の温度上昇を抑制できる。具体的には、以下のメリットを得ることができる。
【0032】
a 蓄電池101の電圧Vbatと負荷401の順方向電圧VFが低下した場合に、過度な温度上昇を抑制できる。
b 蓄電池101から回路への流入(入力)電流を抑制できる。
c 入力電圧検出回路102は少ない部品点数で構成できる。リミッタ回路301と入力電圧検出回路102を組み合わせることで、第1抵抗素子R1、R2及び第2抵抗素子R4、R5の定数の設定によりリミッタ回路301の閾値と、リミッタ回路301で制御される順方向電流IFを容易に調整することができる。
d 蓄電池101の電圧Vbatが低下した時に出力を低減させるため、電源投入時などの電圧Vbatが上昇する際には、徐々に電流が増える動作となる。即ち、ソフトスタートとなる。
e 蓄電池101の電圧Vbatが低下し、リミッタ回路301により順方向電流IFが制限されても、負荷401を完全に消灯させていないため、避難誘導時間を延長することができる。
f リミッタ回路301の保護動作により、回路を停止させることが無いため、保護回路の誤動作によって負荷401が消灯する恐れがない。
【0033】
図4は、本発明の実施の形態に係る非常用照明装置の簡略図である。蓄電池101の電圧を検出する入力電圧検出回路102が設けられている。放電基準電圧以下のある電圧で蓄電池101の電圧Vbatを検出し、リミッタ回路301の過電流リミッタ閾値を変更することで、順方向電圧VFが低下しなくても順方向電流IFを制限し、流入(入力)電流を低下させてDCDCコンバータ回路201の回路部品への熱的ストレスを抑制する。
【0034】
図5は、比較例に係る非常用照明装置の簡略図である。比較例の非常用照明装置には、入力電圧検出回路がない。この場合、出力側の電力をある程度抑制することは出来るが、定電力制御のため、蓄電池101の電圧Vbatが減少すると、蓄電池101からの流入(入力)電流が上昇し、DCDCコンバータ回路201の回路部品の発熱が増大してしまう。非常用照明装置は非常時(停電時等)に蓄電池の電圧がある閾値(放電基準電圧)に減少するまで、一定の時間以上点灯しなければならないことが技術基準で定められている。放電基準電圧まで点灯を継続できていればその後は点灯している必要はない。放電基準電圧以下における過度なDCDCコンバータ回路の動作はDCDCコンバータ回路への熱的ストレスの原因となる。
【0035】
比較例では、蓄電池101の電圧が低下すると、出力定電力制御により蓄電池101からの流入(入力)電流が増加し、回路部品の発熱が増大してしまう。しかし、本発明の実施の形態に係る非常用照明装置によれば、蓄電池101の電圧低下を検出する入力電圧検出回路102を追加することで、リミッタ回路301の過電流リミッタ閾値を変更し蓄電池101からの流入(入力)電流を制限するので、発熱の増大を抑制することができる。
【0036】
本発明の実施の形態に係る非常用照明装置は、その特徴を失わない範囲で様々な変形が可能である。