(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記出射面は、前記光軸を含む鉛直面上の前記出射面の鉛直方向の範囲として、中央側の第2中央出射領域と、鉛直方向外側の第2外側出射領域と、前記第2中央出射領域と前記第2外側出射領域の間の第2中間出射領域と、を有しており、
前記レンズは、前記光軸を含む鉛直面上に位置する前記出射面から前方側に照射される前記発光中心からの前記光について、前記光の鉛直方向での照射方向が所定の照射方向となる鉛直方向の配光制御を行うように形成されており、
前記第2中央出射領域、前記第2中間出射領域及び前記第2外側出射領域の前記光の鉛直方向での照射が、
前記第2中央出射領域では、前記光の照射方向が鉛直方向上方となる上方照射になっており、
前記第2中間出射領域では、前記第2中間出射領域の鉛直方向外側に向かって、前記光の照射方向が鉛直方向中央側となった後、鉛直方向上方側となるクロス配光照射になっており、
前記第2外側出射領域では、前記出射面の中央側から鉛直方向外側に向かって見たときに、前記第2外側出射領域の鉛直方向外側ほど、前記光の照射方向が鉛直方向外側となる拡散配光照射になっていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
前記第2中央出射領域は、前記発光中心から放射される前記光のうち、前記光軸を基準に前記光の放射角度が鉛直方向角度で約10度以内である前記光が前方側に照射される領域であり、
前記第2外側出射領域は、前記発光中心から放射される前記光のうち、前記光軸を基準に前記光の放射角度が鉛直方向角度で約30度以上である前記光が前方側に照射される領域であることを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具。
前記第2中央出射領域における前記上方照射は、前記第2中央出射領域の鉛直方向外側に向かって、車両用配光パターン上での鉛直方向の約4度上方側の位置から鉛直方向の約1度上方側の位置に向かう照射になっており、
前記第2中間出射領域における前記クロス配光照射は、前記第2中間出射領域の鉛直方向外側に向かって、車両用配光パターン上での鉛直方向の約1度上方側の位置から中心位置に向かう照射になった後に、前記中心位置から鉛直方向の約1度上方側の位置に向かう照射になっており、
前記第2外側出射領域における前記拡散配光照射は、前記第2外側出射領域の鉛直方向外側に向かって、前記光軸よりも鉛直方向上側に位置する前記第2外側出射領域では車両用配光パターン上での鉛直方向の約1度上方側の位置から鉛直方向の約3度上方側の位置に向かう照射になっているとともに、前記光軸よりも鉛直方向下側に位置する前記第2外側出射領域では車両用配光パターン上での鉛直方向の約1度上方側の位置から車両用配光パターン上での前記中心よりも鉛直方向の約1度下方側の位置に向かう照射になっていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の車両用灯具。
前記第1中央出射領域は、前記発光中心から放射される前記光のうち、前記光軸を基準に前記光の放射角度が水平方向角度で約10度以内である前記光が前方側に照射される領域であり、
前記第1外側出射領域は、前記発光中心から放射される前記光のうち、前記光軸を基準に前記光の放射角度が水平方向角度で約30度以上である前記光が前方側に照射される領域であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両用灯具。
前記第1中央出射領域における上記拡散配光照射は、前記第1中央出射領域の水平方向外側に向かって、車両用配光パターン上での中心位置から水平方向の約5度外側の位置に向かう照射になっており、
前記第1中間出射領域における上記クロス配光照射は、第1中間出射領域の水平方向外側に向かって、車両用配光パターン上での水平方向の約5度外側の位置から水平方向の約2度内側の位置に向かう照射になった後に、水平方向の約2度内側の位置から水平方向の約4度外側の位置に向かう照射になっており、
前記第1外側出射領域における前記拡散配光照射は、前記第1外側出射領域の外側に向かって、車両用配光パターン上での水平方向の約4度外側の位置から水平方向の約20度外側の位置に向かう照射になっていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車両用灯具。
前記出射面は、前記光軸を含む鉛直面上の前記出射面の形状が、前記光軸から鉛直方向上側の部分は前記光軸から鉛直方向下側の部分よりも曲率が小さく、かつ、前記光軸にほぼ平行な軸を長軸とするほぼ楕円形状の一部に沿った曲線形状であるとともに、前記光軸を含む水平面上の前記出射面の形状がほぼ双曲線に沿った曲線形状である複合2次曲面で形成されており、
前記入射面は、前記出射面から前方に照射される前記光が所定の車両用配光パターンを形成するように前記出射面の形状に応じた自由曲面で形成されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と称する)について詳細に説明する。実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。また、実施形態及び図中において、特に断りがない場合、「前」、「後」は、各々、車両の「前進方向」、「後進方向」を示し、「上」、「下」、「左」、「右」は、各々、車両に乗車する運転者から見た方向を示す。
【0025】
本発明の実施形態に係る車両用灯具は、
図1に示す車両102の前方の左右のそれぞれに設けられる車両用灯具(101R、101L)であり、以下では、単に車両用灯具と記載する。
【0026】
本実施形態の車両用灯具は、車両前方側に開口したハウジング(図示せず)と開口を覆うようにハウジングに取付けられるアウターレンズ(図示せず)を備え、ハウジングとアウターレンズとで形成される灯室内に車両用配光パターンとしてのハイビーム配光パターンを形成する灯具ユニット10(
図2参照)などが配置されている。
【0027】
(灯具ユニット)
図2は、灯具ユニット10の要部を示す斜視図である。
図2に示すように、灯具ユニット10は、発光部21の発光中心近傍にレンズ30の光軸Z(以下、レンズ30の光軸Zを単に光軸Zという場合がある)を有する半導体型の光源20と、光源20の前方側に配置され、光源20からの光が入射する入射面31と入射面31から入射した光を前方側に照射する出射面32とを有するレンズ30と、を備えている。
つまり、光源20は、発光部21の発光中心がほぼレンズ30の光軸Zに位置するように設けられている。
なお、以下の実施形態では、光源20の発光部21の発光中心とレンズ30の光軸Zとが一致している場合で説明を進めるが、実際には、取付け時の誤差等によって発光中心が光軸Zから上下左右方向に0.2mm程度ズレる場合があり、上述の発光中心近傍とは、このような誤差を意味する。
【0028】
図2では、図示していないが光源20はヒートシンク(図示省略)上に配置される。
また、
図2では、レンズ30は、配光制御を行うレンズ部分だけを示すようにしているが、実際には、レンズ30は、水平方向(光軸Z及び鉛直方向軸Yに直交する方向)の左右両端に設けられた図示しないフランジ部を有しており、そのフランジ部が図示しないレンズホルダに保持されて、レンズホルダを介して図示しないヒートシンクに取付けられるようになっている。
【0029】
(光源)
光源20には、半導体型の光源であるLEDを用いており、具体的には、基板22と、基板22上に設けられた複数の発光チップで構成される発光部21と、複数の発光チップで構成される発光部21上を覆うように設けられた蛍光体層23と、を有している。
なお、本実施形態の発光部21は、5つの発光チップを水平方向に配置した縦が約0.85mmで横が4.45mmの発光部21になっている。
【0030】
発光チップには、波長430nm近傍に発光スペクトルのピークを有する青色系に発光するものを用いており、蛍光体層23には、その発光チップの光の一部を吸収して発光チップが発光する光よりも波長が長い黄色系の光を発光するものを用いている。
【0031】
例えば、蛍光体層23は、発光チップの光の一部を吸収し、波長540nm前後に発光ピークを有し、波長500nmから730nm程度の緑から赤の成分を含むような黄色系の光を発光する。
【0032】
そのような蛍光体層23は、例えば、透明で耐熱性に優れる熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂など)にフォトルミネセンス蛍光体を含有させたもので構成することができ、フォトルミネセンス蛍光体としては、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を好適に用いることができる。
【0033】
そして、発光チップの青色系の光と蛍光体層23の黄色系の光とが混合されることで光源20から放出される光は、白色系の光となっている。
【0034】
(レンズ)
レンズ30は、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シリコーン(SLR)及びガラスなどの透明な材料で形成されればよい。
しかしながら、屈折率の波長依存性が大きいと、分光が起こりやすく、青色分光色が現れやすくなることや樹脂系の材料の方が成形性がよいことから、本実施形態では、レンズ30に屈折率の波長依存性が比較的小さいアクリル系樹脂を用いている。
【0035】
また、本実施形態のレンズ30は、光を出射する出射面32側から見た正面視及び光が入射する入射面31側から見た裏面視で外形がほぼ矩形状をしており、本実施形態では、出射面32を複合2次曲面とし、入射面31を出射面32から前方に照射される光の照射方向が所定の方向となるように制御する出射面32の形状に応じた自由曲面としている。
つまり、入射面31が主に所定の配光パターンを得るための配光制御を行うものになっている。
【0036】
より具体的には、出射面32は、光軸Zを含む鉛直面上の出射面32(つまり、光軸Zを含む鉛直断面)の形状が、光軸Zにほぼ平行な軸を長軸とするほぼ楕円形状の一部に沿った曲線形状になっており、この曲線形状は、光軸Zから鉛直方向上側の部分が光軸Zから鉛直方向下側の部分よりも曲率が小さくなっている。
言い換えれば、出射面32は光軸Zを含む鉛直断面で見ると、光軸Zから上側の部分が大きな楕円の一部に沿った形状であり、光軸Zから下側の部分が小さな楕円の一部に沿った形状となっている。
一方、出射面32は、光軸Zを含む水平面上の出射面32(つまり、光軸Zを含む水平断面)の形状がほぼ双曲線に沿った曲線形状になっている。
【0037】
なお、本実施形態の車両用灯具の形成する車両用配光パターンと同様の配光パターンは、入射面31を複合2次曲面とし、出射面32をその入射面31の形状に応じた自由曲面とすることでも可能である。
このため、入射面31を自由曲面とし、出射面32を複合2次曲面とすることに限定されるものではない。
【0038】
しかしながら、入射面31を複合2次曲面とし、出射面32を自由曲面とした場合、レンズ30の上下左右の縁部を直線に近い状態にする設計が困難であり、レンズ30の上下左右の縁部が曲線状になってしまう。
そうすると、例えば、左右の両端にフランジ部を設けるときに、水平方向左右で最も出っ張った縁部の位置を基準にフランジ部に必要な幅を確保するようにフランジ部を形成する必要があり、フランジ部を含めたレンズ30の水平方向の幅が大きくなってしまう。
【0039】
また、出射面32の正面視の外形は、視認出来る側であるので意匠的に見て見栄えが低下するものとなってしまう。
したがって、これらのことを考慮すると、本実施形態のように、出射面32を複合2次曲面で形成し、入射面31を自由曲面で形成するようにするのが好適である。
【0040】
次に、以上のような構成からなる本実施形態の車両用灯具の配光制御などについて説明する。
図3から
図5は、灯具ユニット10の光軸Zを含む水平断面を示したものであり、レンズ30と発光部21だけを示した図である。
【0041】
(水平方向の配光制御)
図3に示すように、出射面32は、光軸Zを含む水平断面(水平面)上の出射面32の水平方向の範囲として、中央側の第1中央出射領域32aと、水平方向外側の第1外側出射領域32bと、第1中央出射領域32aと第1外側出射領域32bの間の第1中間出射領域32cと、を有している。
【0042】
また、入射面31は、光軸Zを含む水平断面(水平面)上の入射面31の水平方向の範囲として、中央側の第1中央入射領域31aと、水平方向外側の第1外側入射領域31bと、第1中央入射領域31aと第1外側入射領域31bの間の第1中間入射領域31cと、を有している。
【0043】
(第1中央出射領域及び第1中央入射領域)
図3では、発光部21の発光中心から放射される光のうち、光軸Zを基準に光の放射角度が水平方向角度θ1以内である光線群を併せて図示しており、具体的にはθ1は約10度である。
【0044】
そして、
図3を見るとわかるとおり、光の放射角度が水平方向角度θ1以内の光が第1中央入射領域31aからレンズ30内に入射し、その光が第1中央出射領域32aから前方側に照射されている。
つまり、第1中央出射領域32aは、発光中心から放射される光のうち、光軸Zを基準に光の放射角度が水平方向角度θ1以内(約10度以内)である光が前方側に照射される領域になっている。
【0045】
そして、この第1中央入射領域31aの入射面31の部分が、光軸Zと交差する位置が凹み中心となるように、光源20(発光部21)側から離れる方向に緩やかに前方側に凹む形状とされている。
このような前方側に凹む形状とされることで、
図3に示すように、レンズ30は、第1中央出射領域32aを出射面32の中央側(光軸Z側)から水平方向外側に向かって見たときの水平方向の光の照射方向が、第1中央出射領域32aの水平方向外側ほど、水平方向外側となる拡散配光照射となる配光制御を行うものになっている。
【0046】
本実施形態では、この第1中央出射領域32aから前方側に拡散配光照射される光は、図示しないスクリーンにおいて、スクリーンの水平方向左右中央を基準に水平方向右側に約5度(R5°)から水平方向左側に約5度(L5°)の範囲に投影するようにしている。
【0047】
このため、
図3に示すように、最も水平方向右外側の第1中央出射領域32aから照射される光は、水平方向で右側に約5度(R5°)外側を向く方向に照射されており、最も水平方向左外側の第1中央出射領域32aから照射される光は、水平方向で左側に約5度(L5°)外側を向く方向に照射されている。
【0048】
なお、
図3では、発光部21の発光中心から放射される光線群だけを示しているが、実際には、発光部21は面として発光するので、第1中央出射領域32aから照射される光は、スクリーン上での水平方向左右10度前後の範囲に照射されることになる。
また、以降の説明における光の照射方向の具体的な角度の数値も、発光部21の発光中心から放射される光線群を基準にしたものであるので、以降では説明を省略するが、ここで説明したのと同様に、実際のスクリーン上での光照射範囲は、発光部21が面として発光することに伴う分だけ広くなる。
【0049】
ところで、後述する鉛直方向の配光制御のところで説明するが、上記のような発光部21から放射される光のうち、光の放射角度が小さい光に関しては、車両用配光パターンの鉛直方向上方側に照射するようにしており、このため、上述した第1中央出射領域32aから照射される光は、車両用配光パターンの鉛直方向上方側に照射されている。
【0050】
(第1中間出射領域及び第1中間入射領域)
図4では、発光部21の発光中心から放射される光のうち、光軸Zを基準に光の放射角度が水平方向角度θ2の範囲(光の放射角度が約10度から約30度の範囲)である光線群を併せて図示している。
図4は、第1中間出射領域32cから前方に照射される光の照射状態がわかりやすいように、
図4(a)及び
図4(b)の2つの図面で、この第1中間出射領域32cから前方に照射される光の照射状態を示すようにしている。
【0051】
具体的には、
図4(a)は、発光部21の発光中心から放射される光のうち、光の放射角度が水平方向角度θ2の範囲内のうち約10度から約20度の範囲となる光線群を示した図になっており、
図4(b)は光の放射角度が水平方向角度θ2の範囲内のうち約20度から約30度の範囲となる光線群を示した図になっている。
【0052】
図4に示すように、光の放射角度が水平方向角度θ2で約10度から約30度の範囲となる光が第1中間入射領域31cからレンズ30内に入射し、その光が第1中間出射領域32cから前方側に照射されている。
つまり、第1中間出射領域32cは、発光中心から放射される光のうち、光軸Zを基準に光の放射角度が水平方向角度θ2の範囲内(約10度から約30度の範囲内)の光が前方側に照射される領域になっている。
【0053】
そして、この第1中間入射領域31cの入射面31の部分は、発光部21側へ出っ張る湾曲形状の変曲点を含むように形成されている。
このような形状とすることで変曲点を基準に水平方向左側と右側とでは、レンズ30に入射する光の屈折状態がかわることになり、
図4に示すように、レンズ30は、第1中間出射領域32cを中央側(光軸Z側)から水平方向外側に向かって見たときの水平方向の光の照射方向が、水平方向内側となった後に水平方向外側となるクロス配光照射にするように配光制御するものとなる。
【0054】
より具体的に説明すると、
図4(a)に示すように、第1中間出射領域32cの最も中央側(光軸Z側)から照射される光の照射方向は、水平方向外側約5度(右側の第1中間出射領域32cは右外側約5度(R5°)、左側の第1中間出射領域32cは左外側約5度(L5°))になっている。
【0055】
そして、この状態から、
図4(a)に示すように、第1中間出射領域32cの水平方向外側に向かって、右側の第1中間出射領域32cは、光が右外側約5度(R5°)に照射されていた状態から水平方向内側(光軸Z側)に向かって照射されるように、光の照射方向が変化している。
【0056】
同様に、左側の第1中間出射領域32cは、光が左外側約5度(L5°)に照射されていた状態から水平方向内側(光軸Z側)に向かって照射されるように、光の照射方向が変化している。
【0057】
そして、発光中心からの光の放射角度が水平方向角度で約20度の光は、光軸Zを跨いだ反対側の約2度(右側の第1中間出射領域32cはL2°、左側の第1中間出射領域32cはR2°)の方向に照射されるようになっている。
【0058】
その後、
図4(b)に示すように、更に、右側の第1中間出射領域32cは、第1中間出射領域32cの水平方向外側(図右外側)に向かって、光軸Zよりも左側に約2度(L2°)の方向に照射していた状態から光軸Zを跨がない水平方向外側(図右外側)に光を照射するように光の照射方向が変化し、最も水平方向外側から照射される光、つまり、発光中心からの光の放射角度が水平方向角度で約30度である光は、水平方向外側(図右外側)の約4度(R4°)の方向に照射されるようになっている。
【0059】
同様に、左側の第1中間出射領域32cにおいても、第1中間出射領域32cの水平方向外側(図左外側)に向かって、光軸Zよりも右側に約2度(R2°)の方向に照射していた状態から光軸Zを跨がない水平方向外側(図左外側)に光を照射するように光の照射方向が変化し、最も水平方向外側から照射される光、つまり、発光中心からの光の放射角度が水平方向角度で約30度である光は、水平方向外側(図左外側)の約4度(L4°)の方向に照射されるようになっている。
【0060】
このように、第1中間出射領域32cは、第1中間出射領域32cから照射される光の照射方向が、光軸Zを挟んで水平方向左右のどちらに位置する第1中間出射領域32cにおいても、第1中間出射領域32cの中央側(光軸Z側)において、水平方向外側であった光の照射方向が、第1中間出射領域32cの水平方向外側に向かって、水平方向内側(光軸Z側)となった後に、再び、水平方向外側となるクロス配光照射される部分になっている。
【0061】
そして、右側の第1中間出射領域32cから照射される光は、スクリーン上での水平方向左右中央(光軸Z参照)よりも左側の約2度(L2°)から右側の約5度(R5°)の範囲に向けて照射されるものになっており、左側の第1中間出射領域32cから照射される光は、スクリーン上での水平方向左右中央(光軸Z参照)よりも右側の約2度(R2°)から左側の約5度(L5°)の範囲に向けて照射されるものになっている。
【0062】
このことは、右側の第1中間出射領域32cから照射される光が形成する配光パターンと左側の第1中間出射領域32cから照射される光が形成する配光パターンがスクリーンの水平方向の位置でオーバーラップし、多重される状態になっていることを意味しており、このように照射される光で車両用配光パターンの中央光度帯を形成するようにしている。
【0063】
このようにすると、このオーバーラップの状態を調整することで、中央光度帯の光度の調節が可能となるため、出射面32の中央側から照射される光で中央光度帯を形成する場合に比べ、中央光度帯の光度の設計自由度を大幅に高めることが可能である。
【0064】
なお、オーバーラップの状態を変える場合には、上述した光の照射方向を調節することになるので、上記で説明した第1中間出射領域32cの具体的な光の照射方向(角度)は、あくまでも一例である。
【0065】
そして、この第1中間出射領域32cは、レンズ30の水平方向で見て外側に位置する領域ではないため、レンズ30の水平方向外側から照射される光に比べて、中央光度帯に向けて光を照射するために大きな屈折を伴わなくてよいため、レンズ30の温度上昇などによる屈折率の変化の影響を受け難いだけでなく、また、大きな屈折を伴わないことは光の屈折に伴う分光の影響も受け難いことを意味している。
したがって、良好な車両用配光パターンの中央光度帯を形成することができる。
【0066】
ところで、本実施形態では、光源20に青色系に発光する発光チップの光の一部を蛍光体層23で黄色系の光に変換(蛍光発光)させ、それらの光が混合されることで白色系の光が放出されるものを用いていることは、上述したとおりである。
【0067】
このようなタイプの光源20の場合、蛍光体層23の厚みが薄い部分では、蛍光体層23の発光する光の光量が不足し、発光チップの発光する青色系の光の割合が多くなるため、青みがかった光となる。
【0068】
ここで、蛍光体層23の厚みが均一であったとしても、光源20から放出される光のうち、光軸Zに近いところから放出される光は、蛍光体層23を真直ぐに通過してきた光であるため、蛍光体層23を斜めに通過してきた光に比べて、実質的には、薄い蛍光体層23を通過してきた状態となる。
【0069】
したがって、光軸Zを基準に光源20からの光の放射角度が小さい第1中央出射領域32aから照射される光は、蛍光体層23をあまり斜めに通過せずして放出されるため、青みがかった白色系の光となる傾向がある。
【0070】
しかしながら、上述したように、本実施形態では、そのような青みがかった白色系の光となる傾向がある第1中央出射領域32aから照射される光は、車両用配光パターンの上方側に照射するようにし、このような青みがかった白色系の光となり難い、光の放射角度が大きい光が出射することになる第1中間出射領域32cからの光で中央光度帯を形成するようにしている。
このため、光源20に起因する青みがかった状態が中央光度帯に現れることも抑制されたものになっている。
したがって、更に好適な車両用配光パターンの中央光度帯を形成することが可能である。
【0071】
(第1外側出射領域及び第1外側入射領域)
図5では、発光部21の発光中心から放射される光のうち、光軸Zを基準に光の放射角度が水平方向角度θ3以上である光線群について併せて図示しており、具体的にはθ3は約30度である。
【0072】
図5に示すように、光の放射角度が水平方向角度θ3以上(約30度以上)となる光が第1外側入射領域31bからレンズ30内に入射し、その光が第1外側出射領域32bから前方側に照射されている。
つまり、第1外側出射領域32bは、発光中心から放射される光のうち、光軸Zを基準に光の放射角度が水平方向角度θ3以上(約30度以上)となる光が前方側に照射される領域になっている。
【0073】
そして、レンズ30は、第1外側出射領域32bを水平方向外側に向かって見たときに第1外側出射領域32bの水平方向外側ほど、光の照射方向が水平方向外側となる拡散配光照射の状態となるように配光制御している。
【0074】
具体的には、このレンズ30の配光制御は、第1外側入射領域31bの部分の入射面31の形状を第1外側出射領域32bの部分の面形状に応じて、第1外側出射領域32bから照射される光の照射方向が、第1外側出射領域32bの水平方向外側ほど、水平方向外側となる形状とすることで行われている。
【0075】
この第1外側出射領域32bから前方側に照射される光は、
図5に示すように、第1外側出射領域32bの中央側(光軸Z側)では、車両用配光パターン上での水平方向外側の約4度(右側の第1外側出射領域32bは水平方向右外側約4度(R4°)、左側の第1外側出射領域32bは水平方向左外側約4度(L4°))となる方向に照射されている。
【0076】
そして、第1外側出射領域32bの水平方向外側ほど、その光の照射方向がどんどん水平方向外側となり、最も外側となる第1外側出射領域32bから前方側に照射される光は、車両用配光パターン上での水平方向外側の約20度(右側の第1外側出射領域32bは水平方向右外側約20度(R20°)、左側の第1外側出射領域32bは水平方向左外側約20度(L20°))となる方向に照射されている。
【0077】
このように光を照射することで車両用配光パターンにおける最も水平方向幅が広くなる拡散配光部分が形成される。
ここで、
図5を見るとわかるように、この第1外側出射領域32bから照射される光は、水平方向外側(図左右外側)ほど外側に照射されるようになっているため、出射面32の湾曲に合せるように照射方向が変化している。
【0078】
そして、出射面32から前方に照射されるときに大きな屈折を伴うと、レンズ30の屈折率の変化の影響を受けやすいことは、上述したとおりであるが、本実施形態では、出射面32の変化に応じる方向に光を照射するようにしているため、第1外側出射領域32bから照射される光の屈折量を抑えるような設計になっており、その分だけレンズ30の屈折率の変化の影響を受け難いものとすることができる。
【0079】
また、第1外側出射領域32bから照射される光を車両用配光パターンの拡散配光部分に用いることで、仮に、第1外側出射領域32bから照射される光の照射方向にレンズ30の屈折率の変化の影響によるふらつきが出たとしても車両用配光パターンの中央光度帯に影響を及ぼすことがなく、良好な車両用配光パターンを維持することが可能である。
【0080】
(鉛直方向の配光制御)
図6から
図8は、灯具ユニット10の光軸Zを含む鉛直断面を示したものであり、レンズ30と発光部21だけを示した図である。
【0081】
図6に示すように、出射面32は、光軸Zを含む鉛直断面(鉛直面)上の出射面32の鉛直方向の範囲として、中央側の第2中央出射領域32Aと、鉛直方向外側の第2外側出射領域32Bと、第2中央出射領域32Aと第2外側出射領域32Bの間の第2中間出射領域32Cと、を有している。
【0082】
また、入射面31は、光軸Zを含む鉛直断面(鉛直面)上の入射面31の鉛直方向の範囲として、中央側の第2中央入射領域31Aと、鉛直方向外側の第2外側入射領域31Bと、第2中央入射領域31Aと第2外側入射領域31Bの間の第2中間入射領域31Cと、を有している。
【0083】
(第2中央出射領域及び第2中央入射領域)
図6では、発光部21の発光中心から放射される光のうち、光軸Zを基準に光の放射角度が鉛直方向角度θ4以内である光線群を併せて図示しており、具体的にはθ4は約10度である。
【0084】
そして、
図6を見るとわかるとおり、光の放射角度が鉛直方向角度θ4以内の光が第2中央入射領域31Aからレンズ30内に入射し、その光が第2中央出射領域32Aから前方側に照射されている。
つまり、第2中央出射領域32Aは、発光中心から放射される光のうち、光軸Zを基準に光の放射角度が鉛直方向角度θ4以内(約10度以内)である光が前方側に照射される領域になっている。
【0085】
そして、レンズ30は、第2中央出射領域32Aを鉛直方向外側に向かって見たときに第2中央出射領域32Aは、どの部分から照射される光も、光の照射方向が鉛直方向上方となる上方照射の状態となるように配光制御している。
【0086】
具体的には、このレンズ30の配光制御は、第2中央入射領域31Aの部分の入射面31の形状を第2中央出射領域32Aの部分の面形状に応じて、第2中央出射領域32Aから照射される光の照射方向が、第2中央出射領域32Aの鉛直方向のどの部分においても鉛直方向上方となる形状とすることで行われている。
【0087】
この第2中央出射領域32Aから前方側に照射される光は、
図6に示すように、第2中央出射領域32Aの中央側(光軸Z側)では、最も鉛直方向上方側に照射されるように、スクリーン上での車両用配光パターンの鉛直方向の約4度(U4°)上方となる方向に照射されている。
【0088】
そして、第2中央出射領域32Aの鉛直方向外側(上下方向外側)ほど、スクリーン上での車両用配光パターンの鉛直方向の約4度(U4°)上方側の位置から鉛直方向の約1度(U1°)上方側の位置に向かう照射になっている。
【0089】
このように第2中央出射領域32Aから鉛直方向上方に照射された光は、車両用配光パターンの中央光度帯の上方に多重されるようになる。
ここで、上述したように、発光部21からの光の放射角度が小さい光は、青みがかった白色系の光となる傾向があり、これは光が蛍光体層23を通過するときの距離に依存するものであるため、レンズ30から照射される光の照射方向が水平方向であるのか鉛直方向であるのかには無関係である。
【0090】
したがって、第2中央出射領域32Aから照射される光も青みがかった白色系の光となるおそれがあるが、第2中央出射領域32Aから照射される光は、中央光度帯の上方に多重されているため、中央光度帯が青みがかることを回避することが可能である。
【0091】
(第2中間出射領域及び第2中間入射領域)
図7では、発光部21の発光中心から放射される光のうち、光軸Zを基準に光の放射角度が鉛直方向角度θ5の範囲内(光の放射角度が約10度から約30度の範囲内)である光線群を併せて図示している。
図7は、第2中間出射領域32Cから前方に照射される光の照射状態がわかり易いように、
図7(a)及び
図7(b)の2つの図面で、この第2中間出射領域32Cから前方に照射される光の照射状態を示すようにしている。
【0092】
具体的には、
図7(a)は、発光部21の発光中心から放射される光のうち、光の放射角度が鉛直方向角度θ5の範囲内の約10度から約20度の範囲となる光線群を示した図になっており、
図7(b)は光の放射角度が鉛直方向角度θ5の範囲内の約20度から約30度の範囲となる光線群を示した図になっている。
【0093】
図7に示すように、光の放射角度が鉛直方向角度θ5で約10度から約30度の範囲となる光が第2中間入射領域31Cからレンズ30内に入射し、その光が第2中間出射領域32Cから前方側に照射されている。
つまり、第2中間出射領域32Cは、発光中心から放射される光のうち、光軸Zを基準に光の放射角度が鉛直方向角度θ5で約10度から約30度の範囲内の光が前方側に照射される領域になっている。
【0094】
そして、レンズ30は、第2中間出射領域32Cにおいて、光の鉛直方向での照射方向が、鉛直方向中央側となった後、鉛直方向上方側となるクロス配光照射の状態となるように配光制御している。
具体的には、このレンズ30の配光制御は、第2中間入射領域31Cの部分の入射面31の形状を第2中間出射領域32Cの部分の面形状に応じて、第2中間出射領域32Cから照射される光の照射方向が、鉛直方向中央側となった後、鉛直方向上方側となるクロス配光照射となる形状とすることで行われている。
【0095】
より具体的に見ていくと、
図7(a)に示すとおり、第2中間出射領域32Cの最も中央側(光軸Z側)から照射される光の照射方向は、光軸Zを挟んで上下に位置するどちらの第2中間出射領域32Cにおいても、車両用配光パターン上での鉛直方向上方の約1度(U1°)になっている。
【0096】
そして、この状態から、
図7(a)に示すように、光軸Zを挟んで上下に位置するどちらの第2中間出射領域32Cも、第2中間出射領域32Cの鉛直方向外側(図上下方向外側)に向かうにつれて、車両用配光パターン上での中心位置である鉛直方向約0度(約0°)、つまり、鉛直方向中央側に向かって光を照射するように、光の照射方向が変化している。
この光の鉛直方向での照射が、鉛直方向中央側となる照射方向の変化の過程において、光軸Zよりも上側に位置する第2中間出射領域32Cから照射される光はクロス配光照射の状態になっている。
【0097】
その後、
図7(b)に示すように、更に、光軸Zの上下に位置するどちらの第2中間出射領域32Cも、第2中間出射領域32Cの鉛直方向外側(図上下方向外側)に向かうにつれて、車両用配光パターン上での中心位置(鉛直方向約0度(約0°))から鉛直方向の約1度(U1°)上方側の位置に向かって光を照射するように、光の照射方向が変化している。
この光の鉛直方向での照射が、鉛直方向上方側となる照射方向の変化の過程において、光軸Zよりも下側に位置する第2中間出射領域32Cから照射される光はクロス配光照射の状態になっている。
【0098】
このように、第2中間出射領域32Cは、光軸Zを挟んで上下に位置するどちらの第2中間出射領域32Cにおいても、光の照射方向が鉛直方向中央側となった後、鉛直方向上方側となるようになっているとともに、その照射方向が変化する過程でクロス配光照射になっている。
【0099】
そして、光軸Zよりも上側に位置する第2中間出射領域32Cから照射される光は、スクリーン上での鉛直方向中央側(鉛直方向0度(0°))から鉛直方向上方に約1度(U1°)の範囲に向けて照射されるものになっており、光軸Zよりも下側に位置する第2中間出射領域32Cから照射される光も、スクリーン上での鉛直方向中央側(鉛直方向0度(0°))から鉛直方向上方に約1度(U1°)の範囲に向けて照射されるものになっている。
【0100】
このことは、光軸Zよりも上側に位置する第2中間出射領域32Cから照射される光が形成する配光パターンと光軸Zよりも下側に位置する第2中間出射領域32Cから照射される光が形成する配光パターンが、スクリーンの鉛直方向の位置でオーバーラップし、多重される状態になっていることを意味しており、このように照射される光で車両用配光パターンの中央光度帯を形成するようにしている。
【0101】
このようにすると、このオーバーラップの状態を調整することで、中央光度帯の光度の調節が可能となるため、出射面32の中央側から照射される光で中央光度帯を形成する場合に比べ、中央光度帯の光度の設計自由度を大幅に高めることが可能である。
【0102】
なお、オーバーラップの状態を変える場合には、上述した光の照射方向を調節することになるので、上記で説明した第1中間出射領域32cの具体的な光の照射方向(角度)は、あくまでも一例である。
【0103】
そして、この第2中間出射領域32Cは、レンズ30の鉛直方向で見て外側に位置する領域ではないため、レンズ30の鉛直方向外側から照射される光に比べて、中央光度帯に向けて光を照射するために大きな屈折を伴わなくてよいため、レンズ30の温度上昇などによる屈折率の変化の影響を受け難いだけでなく、また、大きな屈折を伴わないことは光の屈折に伴う分光の影響も受け難いことを意味している。
したがって、良好な車両用配光パターンの中央光度帯を形成することができる。
【0104】
さらに、第2中間出射領域32Cは、発光部21からの光の放射角度が鉛直方向角度で約10度以上である放射角度の大きい光が出射する部分であるため、第2中間出射領域32Cから照射される光は青みがかった白色系の光になり難く、この第2中間出射領域32Cから照射される光で中央光度帯を形成するようにしているので、青みが中央光度帯に現れることも抑制される。
したがって、更に好適な車両用配光パターンの中央光度帯を形成することが可能である。
【0105】
(第2外側出射領域及び第2外側入射領域)
図8では、発光部21の発光中心から放射される光のうち、光軸Zを基準に光の放射角度が鉛直方向角度θ6以上である光線群について併せて図示しており、具体的にはθ6は約30度である。
【0106】
図6に示すように、光の放射角度が鉛直方向角度θ6以上(約30度以上)となる光が第2外側入射領域31Bからレンズ30内に入射し、その光が第2外側出射領域32Bから前方側に照射されている。
つまり、第2外側出射領域32Bは、発光中心から放射される光のうち、光軸Zを基準に光の放射角度が鉛直方向角度θ6以上(約30度以上)となる光が前方側に照射される領域になっている。
【0107】
そして、レンズ30は、第2外側出射領域32Bを出射面32の中央側から鉛直方向外側に向かって見たときに第2外側出射領域32Bの鉛直方向外側ほど、光の照射方向が鉛直方向外側となる拡散配光照射の状態となるように配光制御している。
【0108】
具体的には、このレンズ30の配光制御は、第2外側入射領域31Bの部分の入射面31の形状を第2外側出射領域32Bの部分の面形状に応じて、第2外側出射領域32Bから照射される光の照射方向が、第2外側出射領域32Bの鉛直方向外側ほど、鉛直方向外側となる形状とすることで行われている。
【0109】
この第2外側出射領域32Bから前方側に照射される光は、
図8に示すように、光軸Zを挟んで上下に位置するどちらの第2外側出射領域32Bにおいても、第2外側出射領域32Bの中央側(光軸Z側)では、車両用配光パターン上での鉛直方向上方の約1度(U1°)となる方向に照射されている。
【0110】
そして、第2外側出射領域32Bの鉛直方向外側(図上下外側)ほど、その光の照射方向がどんどん鉛直方向外側となり、光軸Zより上側に位置する第2外側出射領域32Bの最も鉛直方向外側(図上外側)から前方側に照射される光は、鉛直方向外側(鉛直方向上方)の約3度(U3°)となる方向に照射され、光軸Zより下側に位置する第2外側出射領域32Bの最も鉛直方向外側(図下外側)から前方側に照射される光は、鉛直方向外側(鉛直方向下方側)の約1度(D1°)となる方向に照射されており、このように広い範囲に照射される光は拡散配光となる。
【0111】
ここで、
図8を見るとわかるように、この第2外側出射領域32Bから照射される光は、鉛直方向外側(図上下外側)ほど外側に照射されるようになっているため、出射面32の湾曲に合せるように照射方向が変化している。
【0112】
そして、出射面32から前方に照射されるときに大きな屈折を伴うと、レンズ30の屈折率の変化の影響を受けやすいことは、上述したとおりであるが、本実施形態では、出射面32の変化に応じる方向に光を照射するようにしているため、第2外側出射領域32Bから照射される光の屈折量を抑えるような設計になっているので、その分だけレンズ30の屈折率の変化の影響を受け難いものとすることができる。
【0113】
また、第2外側出射領域32Bから照射される光は、広い範囲に拡散された拡散配光であるため、高い光度を有する配光を形成するわけではないことから、仮に、第2外側出射領域32Bから照射される光の照射方向にレンズ30の屈折率の変化の影響によるふらつきが出たとしても、車両用配光パターンの中央光度帯に影響を及ぼすこともない。
【0114】
以上のようにして形成される本実施形態の車両用配光パターンであるハイビーム配光パターンHPを
図9に示す。
上述したように、本実施形態のハイビーム配光パターンHPは、大きく分けて3つの配光パターンHP1、HP2及びHP3の多重によって形成されている。
【0115】
図9に示す配光パターンHP1は、発光部21のからの光の放射角度が小さい光によって主に形成された配光パターンHP1であり、この部分は、青みがかった白色系の光となる恐れがある。
【0116】
このため、
図9に示すように、ハイビーム配光パターンHPの上方側に多重させることでハイビーム配光パターンHPの中央光度帯(配光パターンHP2参照)に青みが現れ難いようにしている。
【0117】
また、
図9に示す配光パターンHP2は、発光部21のからの光の放射角度が比較的大きい光であって、レンズ30の入射面31及び出射面32の中間部分を通過する大きな屈折を伴わない光によって主に形成された配光パターンである。
さらに、この配光パターンHP2は、上述したように、2つの配光パターンのオーバーラップ(多重)によって中央光度帯に求められる高光度が得られるように調整されている。
【0118】
したがって、レンズ30の温度上昇などによってレンズ30の屈折率の変化があっても、その変化の影響を受け難い大きな屈折を伴わない光によって形成されているため、温度変化の影響を受け難いものとなっているだけでなく、屈折に伴う分光色も現れにくいものとなっており、更に、中央光度帯として求められる高光度が適切に得られるものになっている。
【0119】
一方、
図9に示す配光パターンHP3は、レンズ30の入射面31及び出射面32の外側を通過する光によって主に形成された配光パターンである。
上述したように、本実施形態では、レンズ30の外側においても外側に向かって光が外側に照射される拡散配光照射としているため、レンズ30を通過する光の屈折を抑制するようにしているものの、レンズ30の入射面31及び出射面32の外側を通過する光は、より内側を通過する光に比べれば大きな屈折を伴うものとなる。
【0120】
このため、レンズ30の屈折率が大きく変化すると、その影響を受ける恐れがあるが、このような光をハイビーム配光パターンHPの拡散配光部分に利用することで中央光度帯に影響がでないものとすることが可能であり、レンズ30の屈折率が変化しても良好なハイビーム配光パターンHPの状態を維持することが可能となる。
【0121】
このように本実施形態の車両用配光パターンであるハイビーム配光パターンHPは、温度安定性、色の状態及び中央光度帯の光度のいずれの点においても良好なものとすることが可能である。
【0122】
ところで、
図9を見るとわかるように、点線丸囲みAの部分では、ハイビーム配光パターンHPの形状に局所的な変化が存在し、このような局所的な変化を抑制することがより好ましい。
また、ハイビーム配光パターンHPの境界に現れる明暗境界線がハッキリしているよりも暈されている方が視認性を高くすることができるので、ハイビーム配光パターンの輪郭は暈されている方がより好ましい。
さらに、上述のように、分光色が現れにくい設計としているが、更に、分光色が現れにくいことが望ましい。
【0123】
そこで、レンズ30の入射面31に光を拡散する微細拡散素子を設けるようにすることが好適である。
なお、これまで説明してきた入射面31もそうであるが、本件明細書における入射面31とは、車両用配光パターンを形成するための光が入射する光学入射面のことである。
【0124】
具体的には、入射面31(光学入射面)に波のような緩やかな変化の凹凸を形成するようにして、微細拡散素子を設けるようにすればよい。
このような微細拡散素子を設けた場合のハイビーム配光パターンHP’を
図10に示す。
なお、
図10は、スクリーン上でのハイビーム配光パターンHP’を等光度線で示したものである。
【0125】
この
図10に示すハイビーム配光パターンHP’は、基本的な凹凸の状態として、凹部の最も低い位置と凸部の最も高くなる位置との差が12.0μm、つまり、凹部及び凸部を形成する面(平均高さ面)を規定したときに±6.0μmの凹凸(以下、凹凸量と呼ぶ)を入射面31に設けるようにしている。
【0126】
ただし、発光中心から水平方向角度で30度より外側となる部分については、少し凹凸量を大きくし、±8.0μmから±10.0μm程度の範囲の凹凸量の微細拡散素子として光の拡散を大きくしている。
【0127】
図9での点線丸囲みAの部分と同様の範囲がわかるように
図10にも点線丸囲みAの部分を記載しているが、このように入射面31に微細拡散素子を設けるようにすると、
図10に示すように、ハイビーム配光パターンHP’は、急激な光度の変化がなく、良好に明暗境界線が暈されたものとなるとともに、全体的な形状が緩やかに変化し、局所的な形状変化のないものとなる。
また、微細拡散素子によって光が拡散されると、光が混合されることになり、分光色が現れにくくなる。
このように、入射面31に微細拡散素子を設けるようにすることで、更に、良好なハイビーム配光パターンHP’を実現することが可能である。
【0128】
以上、具体的な実施形態を基に本発明の説明を行ってきたが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、技術的思想を逸脱することのない変更や改良を行ったものも発明の技術的範囲に含まれるものであり、そのことは当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。