(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る半導体装置100の概要を示す斜視図である。半導体装置100は、ケース部10および蓋部12を備える。ケース部10は、内部に半導体チップ等の電子部品を収容する。ケース部10は樹脂等で形成された枠構造を有してよい。ケース部10が囲む空間内にはゲル等の封止材が充填される。蓋部12は、ケース部10が囲む空間の上部を覆って設けられる。蓋部12は、接着剤でケース部10に固定されてよい。
【0014】
ケース部10の上面には、ケース部10が収容した電子部品に接続される複数の主端子14および複数の副端子16が設けられる。電子部品は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のパワーデバイスを含む。主端子14は、例えばIGBTのエミッタ端子またはコレクタ端子のように、大電流が流れる端子に接続される。また、副端子16は、例えばIGBTのゲート端子のように、大電流が流れない制御端子に接続される。
【0015】
図2は、
図1に示したA−A断面の一例を示す図である。
図2においては各部材を模式的に示しており、
図2における各部材の縮尺は、
図1に示した各部材の縮尺とは一致していない。また、
図2においては、半導体装置100のうら面近傍の断面を示しており、蓋部12、主端子14および副端子16を省略している。
【0016】
半導体装置100は、ケース部10に接着される絶縁基板30を更に備える。絶縁基板30のおもて面側は、ケース部10のうら面に設けられた窪部20の内部に挿入される。なお、本明細書においては、蓋部12側の半導体装置100の面をおもて面、絶縁基板30側の面をうら面と称する。また、絶縁基板30等の各部材においても、蓋部12側の面をおもて面、逆側の面をうら面と称する。
【0017】
窪部20は、ケース部10の内部空間11と連続して形成される。窪部20は、挿入される絶縁基板30のおもて面の少なくとも一部を、内部空間11に露出させる。内部空間11に露出する絶縁基板30のおもて面には、半導体チップ22等の電子部品が載置される。ケース部10の内部空間11は、ゲル等の封止材18で封止される。
【0018】
絶縁基板30は、金属板32と、金属板32のおもて面を覆って設けられた絶縁層34とを有する。金属板32は、アルミニウムまたは銅等の金属で形成される。金属板32は、ケース部10の内部に収容された半導体チップ22等から発生した熱を放熱する。絶縁層34は、導電性フィラー入りの有機絶縁材やアルミナ等のセラミックで形成されており、金属板32のおもて面を絶縁する。
【0019】
絶縁層34のおもて面には、導電パターン36が形成される。導電パターン36は、銅等の金属で形成され、所定の配線パターンを有する。導電パターン36のおもて面には、半導体チップ22等の電子部品が載置される。導電パターン36および電子部品は、
図1に示した主端子14および副端子16に接続される端子を有してよい。
【0020】
窪部20に挿入された絶縁基板30は、接着剤24によりケース部10に接着される。本例の接着剤24は、絶縁基板30の挿入前に予め窪部20に設けられており、絶縁基板30が窪部20に挿入された後に、加熱等により硬化される。
【0021】
絶縁基板30は、厚み方向に沿った側面を有する。当該側面は、絶縁基板30においておもて面とうら面との間の面を指す。絶縁基板30の側面には、絶縁基板30のおもて面側に形成されたおもて側切欠部42と、絶縁基板30のうら面側に形成されたうら側切欠部40とが設けられる。
【0022】
おもて側切欠部42は、絶縁基板30の側面において、おもて面から所定の範囲を切り欠いた形状を有する。おもて側切欠部42における絶縁基板30の側面は、絶縁基板30の厚み方向に対して傾いて形成される。当該斜面は、絶縁基板30のおもて面に近いほど、絶縁基板30の内側に切り込むように設けられる。本例のおもて側切欠部42は、絶縁層34の全部と、金属板32のおもて面側の一部の領域に渡って形成されている。
【0023】
うら側切欠部40は、絶縁基板30の側面において、うら面から所定の範囲を切り欠いた形状を有する。うら側切欠部40における絶縁基板30の側面は、絶縁基板30の厚み方向に対して傾いて形成される。当該斜面は、絶縁基板30のうら面に近いほど、絶縁基板30の内側に切り込むように設けられる。
【0024】
絶縁基板30の側面には、おもて側切欠部42と、うら側切欠部40との間に頂点38が形成される。頂点38は、例えば側面において最も外側に突出している点を指す。また、頂点38は、おもて側切欠部42およびうら側切欠部40が交差する点を指してもよい。
【0025】
おもて側切欠部42は、絶縁基板30のおもて面における端部が、頂点38よりも絶縁基板30の内側に設けられる。同様に、うら側切欠部40は、絶縁基板30のうら面における端部が、頂点38よりも絶縁基板30の内側に設けられる。
【0026】
絶縁基板30がうら側切欠部40を有することで、頂点38よりも下側において、絶縁基板30とケース部10との間の空間を広げることができる。また、絶縁基板30がおもて側切欠部42を有することで、頂点38よりも上側において、絶縁基板30とケース部10との間の空間を広げることができる。
【0027】
このため、絶縁基板30とケース部10との間に接着剤24を多く設けることができ、絶縁基板30とケース部10の間の接着信頼性を向上させることができる。つまり、絶縁基板30とケース部10の接着面積が増大するので、熱ストレスが繰り返し印加された場合でも、接着剤24におけるクラック発生を抑制できる。特に、絶縁基板30の厚み方向における熱収縮応力に対する耐力を向上させることができる。また、頂点38の上下方向に接着剤24を形成して絶縁基板30を支持できるので、絶縁基板30が窪部20から脱落することを抑制できる。
【0028】
(第1の実施例)
図3は、第1の実施例に係る半導体装置100の断面のうち、絶縁基板30の側面近傍を拡大した図である。
図3においては、接着剤24および封止材18を省略している。本例では、絶縁基板30のおもて面およびうら面を最短距離で結ぶ方向を、厚み方向と称する。
【0029】
厚み方向において、頂点38と絶縁基板30のおもて面との間の長さをh1、頂点38と絶縁基板30のうら面との間の長さをh2、窪部20の長さをh3とする。窪部20は、絶縁基板30のおもて面と対向する対向面13を有する。窪部20の長さとは、ケース部10のうら面から、対向面13までの長さを指してよい。h1は、h3の30%以上、70%以下であることが好ましい。h1は、h3の40%以上、60%以下であってもよい。
【0030】
なお、絶縁基板30のおもて面と、ケース部10との間の接着剤24の厚みは、h1およびh3に比べて十分小さい。このため、h1がh3の30%以上、70%以下の場合、頂点38が厚み方向における窪部20の中央近傍に位置する。このような構成により、頂点38よりも上側および下側の両方に、充分な接着剤24を配置することができる。
【0031】
また、厚み方向において、おもて側切欠部42は、うら側切欠部40よりも短くてよい。
図3の例では、おもて側切欠部42の長さはh1と等しく、うら側切欠部40の長さはh2と等しい。これにより、絶縁基板30のうら面側をケース部10から突出させつつ、頂点38を窪部20の中央近傍に配置することができる。絶縁基板30のうら面側を突出させることで、絶縁基板30のうら面を、ヒートシンク等に容易に接触させることができる。
【0032】
また、うら側切欠部40は、半分以上が窪部20の内部に挿入されることが好ましい。つまり、h3−h1≧h2/2であることが好ましい。これにより、うら側切欠部40と窪部20との間の空間を確保することができる。
【0033】
また、厚み方向において、おもて側切欠部42がうら側切欠部40よりも短い場合、厚み方向に対するおもて側切欠部42の角度θ1が、厚み方向に対するうら側切欠部40の角度θ2と同一であってよい。これにより、絶縁基板30のおもて面における、おもて側切欠部42の幅w1を、絶縁基板30のうら面における、うら側切欠部40の幅w2よりも小さくできる。これにより、絶縁基板30の接着信頼性を向上させつつ、絶縁基板30のおもて面における、おもて側切欠部42の端部と導電パターン36の端部との沿面距離w3を大きくすることができる。従って、導電パターン36と金属板32との間の耐圧を大きくすることができる。
【0034】
また、厚み方向に対するおもて側切欠部42の角度θ1は、厚み方向に対するうら側切欠部40の角度θ2より小さくてもよい。この場合、おもて側切欠部42の幅w1を、うら側切欠部40の幅w2より更に小さくして、沿面距離w3を更に大きくすることができる。
【0035】
より具体的には、厚み方向に対するおもて側切欠部42の角度θ1は、15度以上、30度以下であってよい。また、厚み方向に対するうら側切欠部40の角度θ2は、20度以上、50度以下であってよい。ただし、上述したように、θ1は、θ2以下であることが好ましい。
【0036】
また、おもて側切欠部42のおもて面における端部31は、うら側切欠部40のうら面における端部33よりも、絶縁基板30において外側に設けられる。絶縁基板30における外側とは、絶縁基板30の厚み方向とは垂直な面内において、絶縁基板30の中心との距離がより増加する側を指す。
【0037】
なお、おもて側切欠部42の、絶縁基板30のおもて面における幅w1は、うら側切欠部40の、絶縁基板30のうら面における幅w2の半分以下であってよい。これにより、絶縁基板30とケース部10との接着信頼性を向上させつつ、沿面距離w3を大きくすることができる。
【0038】
おもて側切欠部42のおもて面における幅w1は、絶縁基板30のおもて面におけるおもて側切欠部42の端部31と、導電パターン36との沿面距離w3よりも十分に小さい。これにより、おもて側切欠部42を設けたことによる、沿面距離w3の減少を抑制できる。例えば、おもて側切欠部の幅w1は、上述した沿面距離w3の1/10以下であることが好ましい。
【0039】
図4は、絶縁基板30の側面近傍を拡大した図である。本例の絶縁基板30は、側面において、おもて側切欠部42とうら側切欠部40との間の中間部44を有する。中間部44は、絶縁基板30の厚み方向に対する角度が、おもて側切欠部42およびうら側切欠部40のいずれとも異なる。中間部44の少なくとも一部は、絶縁基板30の厚み方向と略平行である。
【0040】
この場合、絶縁基板30の側面における頂点38とは、おもて側切欠部42を延長した面と、うら側切欠部40を延長した面とが交差する点を指す。なお、それぞれの切欠部における絶縁基板30の側面は平面形状を有するが、切欠部の加工精度によっては、それぞれの切欠部の端部において、絶縁基板30の側面が平面形状にならない場合も考えられる。この場合、おもて側切欠部42を延長するときの傾きは、絶縁基板30のおもて面50からおもて側切欠部42を見た場合に、最初に検出される第1の直線部分の傾きを用いてよい。同様に、うら側切欠部40を延長するときの傾きは、絶縁基板30のうら面52からうら側切欠部40を見た場合に、最初に検出される第2の直線部分の傾きを用いてよい。頂点38は、第1の直線部分と、第2の直線部分の交点であってよい。
【0041】
本例において、絶縁基板30の厚み方向の、おもて側切欠部42の長さをha、中間部44の長さをhb、うら側切欠部40の長さをhcとする。hcは、haよりも大きくてよい。hcは、haとhbの和よりも大きくてよい。haは、hbと等しくてよい。
【0042】
一例として、絶縁基板30の厚みは1mm以上、2.2mm以下である。絶縁層34の厚みは、80μm以上、160μm以下である。hcは、0.6mm以上、1.4mm以下である。haおよびhbは、ともに0.2mm以上、0.4mm以下である。
【0043】
(第2の実施例)
図5は、第2の実施例に係る半導体装置100の断面のうち、絶縁基板30の側面近傍を拡大した図である。第1の実施例においては、ケース部10の窪部20において、絶縁基板30の側面と対向する側壁は、絶縁基板30の厚み方向と平行に設けられていた。第2の実施例においては、窪部20の側壁26は、絶縁基板30の厚み方向に対して、おもて側切欠部42と同じ側に傾いている。
【0044】
つまり、ケース部10のうら面側に向かうに従って窪部20の開口面積が大きくなるように、側壁26が傾いている。一例として、窪部20の側壁が、おもて側切欠部42と略平行に傾いている。ここで略平行とは、傾きの差が±10度以内の状態を指す。
【0045】
このような構成により、絶縁基板30を窪部20の所定の位置に容易に挿入することができる。また、うら側切欠部40と対向する領域には、接着剤24を多く配置できるので、接着信頼性も向上させることができる。
【0046】
図6は、絶縁基板30の加工方法の一例を示す図である。
図6の上段は絶縁基板30の断面を示し、下段は絶縁基板30のおもて面を示す。まず、絶縁基板30の複数個分の面積を有するベース基板を準備する。
図6では、2つの絶縁基板30のみを示しているが、一つのベース基板から、より多数の絶縁基板30を製造してよい。
【0047】
ベース基板は、金属板と絶縁層を有する。ベース基板の所定の位置に、導電パターン36を形成する。また、絶縁基板30と対応する領域を囲んで、ベース基板のおもて面におもて側切欠部42を形成し、うら面にうら側切欠部40を形成する。
【0048】
このとき、おもて側切欠部42およびうら側切欠部40がベース基板を貫通しないように、おもて側切欠部42とうら側切欠部40の間に残存部56を設ける。残存部56が、
図4に示した中間部44に対応する。そして、おもて側切欠部42およびうら側切欠部40に沿ってベース基板を分割することで、複数の絶縁基板30を製造する。
【0049】
図7は、絶縁基板30のおもて面の他の例を示す図である。本例の絶縁基板30は、矩形形状を有する。ただし、絶縁基板30は、矩形の縁部に複数の貫通部54を有する。それぞれの貫通部54は、絶縁基板30の縁部を、おもて面からうら面まで貫通して切り欠いている。
【0050】
貫通部54を設けることで、絶縁基板30をケース部10の窪部20に挿入する場合に、窪部20の内部に予め配置した接着剤24を、うら側切欠部40と対向する領域に容易に回り込ませることができる。これにより、絶縁基板30とケース部10との接着信頼性を更に向上させることができる。
【0051】
(第1の比較例)
図8は、第1の比較例を示す図である。第1の比較例は、ケース部110および絶縁基板130を有する。ケース部110のうら面には窪部120が設けられる。窪部120の内部には接着剤124が設けられる。
【0052】
絶縁基板130は、金属板132および絶縁層134を有する。絶縁層134上には導電パターン136が形成される。なお、本例の絶縁基板130の側面は、絶縁基板130の厚み方向と平行である。このため、接着剤124の量を増大させることが困難である。
【0053】
窪部120の開口面積を絶縁基板130の外形よりも大きくすることで、接着剤124の量を増大させることも考えられるが、この場合、窪部120における絶縁基板130の位置バラツキが増大してしまう。また、絶縁基板130の側面が頂点を有さないので、絶縁基板130が窪部120から脱落しやすくなる。
【0054】
(第2の比較例)
図9は、第2の比較例を示す図である。本例では、絶縁基板130の側面には、おもて側切欠部142、頂点138およびうら側切欠部140を有する。ただし、頂点138は、窪部120のほぼ下端に位置している。
【0055】
本例では、うら側切欠部140の大部分が、窪部120から突出してしまう。このため、うら側切欠部140と対向する領域には接着剤124を設けることが困難であり、絶縁基板130とケース部110との接着信頼性が劣化してしまう。
【0056】
また、おもて側切欠部142と、うら側切欠部140との大きさがほぼ同一である。このため、導電パターン136と、金属板132との沿面距離が小さくなってしまい、耐圧が劣化する。
【0057】
これらの比較例に対して、第1および第2の実施例に係る半導体装置100によれば、絶縁基板30とケース部10との接着信頼性を向上させることができる。また、導電パターン36と金属板32との沿面距離の減少を抑制できる。
【0058】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。