(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1レグを構成する上アームの半導体スイッチ及び下アームの半導体スイッチの相互接続点である第1接続点と、前記単相3線式の第1線との間に設けられた第1の交流リアクトルと、
前記第2レグを構成する上アームの半導体スイッチ及び下アームの半導体スイッチの相互接続点である第2接続点と、前記単相3線式の第2線との間に設けられた第2の交流リアクトルと、
前記中性レグを構成する上アームの半導体スイッチ及び下アームの半導体スイッチの相互接続点である第3接続点と、前記単相3線式の中性線との間に設けられた第3の交流リアクトルと、
前記第1線と、前記中性線との間に設けられた第1のコンデンサと、
前記第2線と、前記中性線との間に設けられた第2のコンデンサと、
前記直流電源の電圧を検出する直流電圧センサと、
前記DC/DCコンバータに含まれる直流リアクトルに流れる電流を検出する直流電流センサと、
前記第1の交流リアクトルに流れる電流を検出する第1の電流センサと、
前記第2の交流リアクトルに流れる電流を検出する第2の電流センサと、
前記第1のコンデンサの両端の電圧を検出する第1の電圧センサと、
前記第2のコンデンサの両端の電圧を検出する第2の電圧センサと、を備えている請求項1に記載の電力変換装置。
前記単相3線式の交流電路に接続された負荷と商用電力系統との間で、前記第1線に流れる電流によって生じる第1の有効電力、及び、前記第2線に流れる電流によって生じる第2の有効電力について、それぞれの検出信号を受け取って、
前記制御部は、前記第1の有効電力と前記第2の有効電力の少なくとも一方の大きさが0であるか、双方の向きが一致している状態を維持するように前記第1線及び前記第2線にそれぞれ流れる電流を制御する機能を有する、請求項3に記載の電力変換装置。
交流電圧のピーク値より電圧が低い直流電源に接続されるDC/DCコンバータと、前記DC/DCコンバータの出力端に並列に接続された中間コンデンサと、前記中間コンデンサの両端に接続され、電圧出力型で、第1レグ、第2レグ及び中性レグを有するインバータと、を備え、直流電力を単相3線式の交流電力に変換する電力変換装置において、その制御部によって実行される電力変換装置の制御方法であって、
前記インバータの各レグの出力線から出力される電力を求めるとともに、前記DC/DCコンバータの電圧降下を考慮した直流電源電圧を求め、
前記インバータの各レグの出力線から出力される電力と前記中間コンデンサを流れる電流による無効電力とを合わせた電力が、前記直流電源電圧と電流指令値との積となるように、前記DC/DCコンバータの前記電流指令値を制御するとともに、前記中性レグから出力する電流を、0及び0以外の値を含む指令値に制御する、電力変換装置の制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施形態の要旨]
本発明の実施形態の要旨としては、少なくとも以下のものが含まれる。
【0016】
(1)これは、直流電力を単相3線式の交流電力に変換する電力変換装置であって、交流電圧のピーク値より電圧が低い直流電源に接続されるDC/DCコンバータと、前記DC/DCコンバータの出力端に並列に接続された中間コンデンサと、前記中間コンデンサの両端に接続され、電圧出力型で、第1レグ、第2レグ及び中性レグを有するインバータと、前記インバータの各レグの出力線から出力される電力と前記中間コンデンサを流れる電流による無効電力とを合わせた電力を、前記DC/DCコンバータが出力するように制御する制御部と、を備えている電力変換装置である。
【0017】
上記のように構成された電力変換装置では、DC/DCコンバータが出力する電力はインバータの各レグの出力線から出力される電力と中間コンデンサを流れる電流による無効電力とを合わせた電力であるため、無効電力も含めて、DC/DCコンバータは過不足なく、インバータに電力を出力することになる。従って、DC/DCコンバータ及びインバータは最小限のスイッチングを行い、単相3線式で、最小スイッチング変換を実現することができる。
こうして、変圧器を用いることなく、必要な交流電圧のピーク値よりも電圧が低い直流電源から単相3線式交流電力を出力し、かつ、その変換効率を改善することができる。
【0018】
(2)また、(1)の電力変換装置において、前記制御部は、前記中性レグから出力する電流を、0及び0以外の値を含む指令値に制御するようにしてもよい。
単相3線の負荷が、中性線から見て均衡がとれている場合には、中性レグから出力する電流は0を指令値として制御することができる。また、単相3線の負荷が、中性線から見て不均衡である場合には、中性レグから出力する電流は、0以外の値を指令値として制御することで第1線、第2線に絶対値の相異なる電流を流すことができ、不均衡な負荷にも電力変換装置から無駄なく電力を供給することができる。
【0019】
(3)また、(1)又は(2)の電力変換装置において、前記第1レグを構成する上アームの半導体スイッチ及び下アームの半導体スイッチの相互接続点である第1接続点と、前記単相3線式の第1線との間に設けられた第1の交流リアクトルと、前記第2レグを構成する上アームの半導体スイッチ及び下アームの半導体スイッチの相互接続点である第2接続点と、前記単相3線式の第2線との間に設けられた第2の交流リアクトルと、前記中性レグを構成する上アームの半導体スイッチ及び下アームの半導体スイッチの相互接続点である第3接続点と、前記単相3線式の中性線との間に設けられた第3の交流リアクトルと、前記第1線と、前記中性線との間に設けられた第1のコンデンサと、前記第2線と、前記中性線との間に設けられた第2のコンデンサと、前記直流電源の電圧を検出する直流電圧センサと、前記DC/DCコンバータに含まれる直流リアクトルに流れる電流を検出する直流電流センサと、前記第1の交流リアクトルに流れる電流を検出する第1の電流センサと、前記第2の交流リアクトルに流れる電流を検出する第2の電流センサと、前記第1の交流側コンデンサの両端の電圧を検出する第1の電圧センサと、前記第2の交流側コンデンサの両端の電圧を検出する第2の電圧センサと、を備えている構成であってもよい。
この場合、各センサの検出信号に基づいてインバータの出力及びDC/DCコンバータの出力を、各指令値に合わせる制御をすることができる。
【0020】
(4)また、(3)の電力変換装置において、前記単相3線式の交流電路に接続された負荷と商用電力系統との間で、前記第1線に流れる電流によって生じる第1の有効電力、及び、前記第2線に流れる電流によって生じる第2の有効電力について、それぞれの検出信号を受け取って、前記制御部は、前記第1の有効電力と前記第2の有効電力の少なくとも一方の大きさが0であるか、双方の向きが一致している状態を維持するように前記第1線及び前記第2線にそれぞれ流れる電流を制御する機能を有するものであってもよい。
この場合、単相3線式の第1線−中性線間で消費される電力と、第2線−中性線間で消費される電力とが互いに不均等となる負荷接続状態であっても、
(a)直流電源が供給可能な電力が負荷消費よりも大きく、直流電源の電力を売電できる場合には、第1の有効電力及び第2の有効電力は、一方の大きさが0で他方が逆潮流方向とするか、又は、双方が逆潮流方向とすることができる。
(b)直流電源が供給可能な電力は負荷消費以上であるが、直流電源の電力を売電できないことになっている場合には、第1の有効電力及び第2の有効電力は共に0とすることができる。
(c)直流電源が供給可能な電力が負荷消費より小さい場合には、第1の有効電力及び第2の有効電力は、一方の大きさが0で、他方が買電方向とするか、又は、双方が買電方向とすることができる。
従って、上記の何れの場合にも、単価の異なる買電と売電とが同時に行われる状態を回避し、直流電源のその時点での電力供給能力を最大限に有効活用しつつ、電力変換装置から負荷及び商用電力系統に電力を供給することができる。
【0021】
(5)一方、方法の観点からは、交流電圧のピーク値より電圧が低い直流電源に接続されるDC/DCコンバータと、前記DC/DCコンバータの出力端に並列に接続された中間コンデンサと、前記中間コンデンサの両端に接続され、電圧出力型で、第1レグ、第2レグ及び中性レグを有するインバータと、を備え、直流電力を単相3線式の交流電力に変換する電力変換装置において、その制御部によって実行される電力変換装置の制御方法であって、
前記インバータの各レグの出力線から出力される電力を求めるとともに、前記DC/DCコンバータの電圧降下を考慮した直流電源電圧を求め、前記インバータの各レグの出力線から出力される電力と前記中間コンデンサを流れる電流による無効電力とを合わせた電力が、前記直流電源電圧と電流指令値との積となるように、前記DC/DCコンバータの前記電流指令値を制御する、電力変換装置の制御方法である。
【0022】
上記のような電力変換装置の制御方法では、DC/DCコンバータが出力する電力はインバータの各レグの出力線から出力される電力と中間コンデンサを流れる電流による無効電力とを合わせた電力であるため、DC/DCコンバータは過不足なく、電力を出力することになる。従って、DC/DCコンバータ及びインバータは最小限のスイッチングを行い、単相3線式で、最小スイッチング変換を実現することができる。
こうして、変圧器を用いることなく、必要な交流電圧のピーク値よりも電圧が低い直流電源から単相3線式交流電力を出力し、かつ、その変換効率を改善することができる。
【0023】
[実施形態の詳細]
以下、実施形態の詳細について、図面を参照して説明する。
【0024】
《第1実施形態》
《電力変換システムの回路構成例》
図1は、単相3線式の商用電力系統4に連系する電力変換装置(パワーコンディショナ)2の詳細な回路図の一例である。電力変換装置2は、主回路の電力変換部2Aと、制御部2Cとを備えている。制御部2Cは例えば、コンピュータを含み、ソフトウェア(コンピュータプログラム)をコンピュータが実行することで、必要な制御機能を実現する。ソフトウェアは、制御部2Cの記憶装置(図示せず。)に格納される。但し、コンピュータを含まないハードウェアのみの回路で制御部を構成することも可能ではある。
【0025】
電力変換部2Aの直流側の電路には分散型の直流電源1が接続されている。また、交流側の電路には、負荷Ruv,Ruo,Rvoが接続されている。電力変換装置2の出力電圧は例えば200Vである。負荷Ruvは、u線−v線間に接続されている。負荷Ruoは、u線−o線の間に接続されている。負荷Rvoは、v線−o線の間に接続されている。商用電力系統4は、u相の相電源4u及びv相の相電源4vを有している。
【0026】
次に電力変換部2Aの内部構成について詳細に説明する。電力変換部2Aは、直流電源1に並列に接続されている平滑用の直流側コンデンサ21と、直流リアクトル22と、ローサイドの半導体スイッチQ
L、ハイサイドの半導体スイッチQ
Hとを備えている。半導体スイッチQ
L,Q
Hにはそれぞれ逆並列に、ダイオードd
L,d
Hが接続されている。半導体スイッチQ
L,Q
Hは、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。直流リアクトル22並びに半導体スイッチQ
L及びQ
Hは、DC/DCコンバータ(昇圧回路)20を構成している。
【0027】
2つの半導体スイッチQ
L,Q
Hの直列体の両端は、DCバス2Bに接続されている。DCバス2Bには、平滑用の中間コンデンサ23が接続されている。また、DCバス2Bには半導体スイッチQ1〜Q6によって構成されるフルブリッジ回路のインバータ29が接続されている。半導体スイッチQ1〜Q6は、例えばIGBTである。半導体スイッチQ1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6にはそれぞれ、逆並列にダイオードd1,d2,d3,d4,d5,d6が接続されている。
【0028】
インバータ29の構成を、DCバス2Bの2線間に接続された3本のレグで定義すると、第1レグL1は、上アームの半導体スイッチQ1及び下アームの半導体スイッチQ2を第1接続点P1で互いに直列接続して成り、第1接続点P1から第1線(u線)となる出力線が引き出される。第2レグL2は、上アームの半導体スイッチQ3及び下アームの半導体スイッチQ4を第2接続点P2で互いに直列接続して成り、第2接続点P2から第2線(v線)となる出力線が引き出される。そして、中性レグL3は、上アームの半導体スイッチQ5及び下アームの半導体スイッチQ6を第3接続点P3で互いに直列接続して成り、第3接続点P3から中性線(o線)となる出力線が引き出される。
【0029】
引き出された電路は、各線の交流リアクトル24,25,26を介して、単相3線式の商用電力系統4と連系可能なu、v、oの電路となる。u線、o線の間には平滑用の交流側コンデンサ27が接続されている。同様に、v線、o線の間には平滑用の交流側コンデンサ28が接続されている。
【0030】
計測用の回路要素としては、直流電源1からの入力電圧及びDC/DCコンバータ20に流れる電流をそれぞれ検出する電圧センサ(直流電圧センサ)201及び電流センサ(直流電流センサ)202と、DCバス2Bの電圧すなわち中間コンデンサ23の両端電圧を検出する電圧センサ203と、交流リアクトル24及び25をそれぞれ流れる電流を検出する電流センサ204及び205と、u線−o線間の電圧(u相電圧)を検出する電圧センサ206と、v線−o線間の電圧(v相電圧)を検出する電圧センサ207とが設けられている。これら各センサ(201〜207)の検出出力は、制御部2Cに送られる。後述のように、各センサの検出信号に基づいてインバータ29の出力及びDC/DCコンバータ20の出力を、各指令値に合わせる制御をすることができる。
また、制御部2Cは、各センサ(201〜207,31〜34)の検出出力に基づいて半導体スイッチQ
L,Q
H,Q1〜Q6を制御する。
【0031】
なお、直流電源1が蓄電池である場合は、直流リアクトル22と半導体スイッチQ
L,Q
Hによって構成されるDC/DCコンバータ20は、逆方向に、降圧回路として動作させることができる。また、インバータ29(第1レグL1、第2レグL2及び中性レグL3)は、交流から直流への変換回路として逆方向に変換動作を行うことができる。
【0032】
《系統連系制御》
次に、制御部2Cが主体となって実行する系統連系制御の演算手順について説明する。ここで、電流の符号は直流電源1から商用電力系統4に向かう方向を正とする。電圧の基準は、直流入力電圧V
g及びDCリンク電圧(DCバス2Bの2線間電圧)V
oについてはDCバス2Bの負極側、交流出力電圧は中性線(o線)とする。
【0033】
u線の交流出力電流指令値I
a_u*(t)とv線の交流出力電流指令値I
a_v*(t)とを互いに独立に決定する。このときo線(中性線)の交流出力電流指令値I
a_o*(t)は、式(1)によって与えられる。なお、「(t)」は、時間の関数であることを表す。
I
a_o*(t)=−I
a_u*(t)−I
a_v*(t) ・・・(1)
【0034】
次に、下記の式(2)、式(3)により、u線の交流リアクトル24の電流指令値I
inv_u*(t)、v線の交流リアクトル25の電流指令値I
inv_v*(t)をそれぞれ求める。ここで、K
u、K
vは、フィードフォワード制御のためのゲイン、C
a_u、C
a−vはそれぞれ、交流側コンデンサ27,28の各容量、V
a−u、V
a−vは、系統電圧の検出値であり、それぞれ、u相、v相について定義している。
I
inv_u*(t)=K
uI
a_u*(t)+
C
a_u(dV
a_u(t)/dt) ・・・(2)
I
inv_v*(t)=K
vI
a_v*(t)+
C
a_v(dV
a_v(t)/dt) ・・・(3)
【0035】
また、o線の交流リアクトル26の電流指令値は下記の式(4)で与えられる。
I
inv_o*(t)=−I
inv_u*(t)−I
inv_v*(t) ・・・(4)
式(2),(3),(4)により、交流側コンデンサ27,28に流れる無効電流を考慮して各交流リアクトル24〜26に流れるべき電流を指令値に設定した制御を行うことができ、また、これに基づいて、DC/DCコンバータ20の出力を制御することができる。式(4)は、中性レグL3から出力する電流が、0及び0以外の値を含む指令値に制御されることを示している。例えば、単相3線の負荷が、中性線(o線)から見て均衡がとれている場合には、I
inv_u*(t)とI
inv_v*(t)とは互いに絶対値が同じで符号が逆になるので、電流指令値I
inv_o*(t)=0として制御することができる。また、単相3線の負荷が、中性線から見て不均衡である場合には、中性レグL3から出力する電流は、0以外の値を指令値として制御することで第1線、第2線に絶対値の相異なる電流を流すことができ、不均衡な負荷にも電力変換装置から無駄なく電力を供給することができる。
【0036】
また、下記の式(5)に従って、式(2)で得た電流指令値I
inv_u*(t)を用いたu線電流のフィードバック制御を行い、参照値V
inv_uref(t)を得ることができる。ここで、K
inv_u(t)は補償関数、I
inv_u(t)はu線電流の検出値である。
V
inv_uref(t)=V
a_u(t)+
K
inv_u(t)(I
inv_u*(t)−I
inv_u(t)) ・・・(5)
同様にv線、o線についても、それぞれ以下の式(6)、式(7)に従ってフィードバック制御を行いV
inv_vref(t)、V
inv_oref(t)を得ることができる。
V
inv_vref(t)=V
a_v(t)+
K
inv_v(t)(I
inv_v*(t)−I
inv_v(t)) ・・・(6)
V
inv_oref(t)=K
inv_o(t)(I
inv_o*(t)−I
inv_o(t))
・・・(7)
【0037】
o線の電流検出値I
inv_o(t)に関し、電流センサを省略するときには、u線の電流検出値及びv線の電流検出値を用いた以下の式(8)により参照値V
inv_oref(t)を得ることができる。
V
inv_oref(t)=
K
inv_o(t)(I
inv_o*(t)+I
inv_u(t)+I
inv_v(t))
・・・(8)
また、o線は独立にフィードバック制御は行わず、u線及びv線のフィードバック制御の結果を用いるときには以下の式(9)により、参照値V
inv_oref(t)を得ることができる。
V
inv_oref(t)=−V
inv_uref(t)−V
inv_vref(t) ・・・(9)
【0038】
図2は、各レグL1,L2,L3について、ゲート駆動信号を得るコンパレータを示す制御ブロック図である。G1,G2,G3,G4,G5,G6はそれぞれ、半導体スイッチQ1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6のゲート駆動信号である。
【0039】
図2の(a)において、参照値V
inv_uref(t)を、DCリンク電圧指令値V
o*(t)で割って規格化し、第1レグL1(半導体スイッチQ1,Q2)のゲート駆動信号G1,G2を得るためのコンパレータに入力する。なお、V
o*(t)についてはDC/DCコンバータ20の制御のための演算手順で述べる。搬送波は両振幅が1、中点が0の三角波である。従って、参照値が0.5以上のときは、ゲート駆動信号が1に固定される。よって、V
inv_uref(t)の絶対値が、リンク電圧指令値V
o*(t)の1/2よりも大きいときには、第1レグL1の半導体スイッチQ1,Q2は、上下いずれか一方がオン、他方がオフに固定される。
【0040】
同様に、
図2の(b)において、参照値V
inv_vref(t)を、DCリンク電圧指令値V
o*(t)で割って規格化し、第2レグL2(半導体スイッチQ3,Q4)のゲート駆動信号G3,G4を得るためのコンパレータに入力する。搬送波は両振幅が1、中点が0の三角波である。従って、参照値が0.5以上のときは、ゲート駆動信号が1に固定される。よって、V
inv_vref(t)の絶対値が、リンク電圧指令値V
o*(t)の1/2よりも大きいときには、第2レグL2の半導体スイッチQ3,Q4は、上下いずれか一方がオン、他方がオフに固定される。
【0041】
同様に、
図2の(c)において、参照値V
inv_oref(t)を、DCリンク電圧指令値V
o*(t)で割って規格化し、中性レグL3(半導体スイッチQ5,Q6)のゲート駆動信号G5,G6を得るためのコンパレータに入力する。搬送波は両振幅が1、中点が0の三角波である。従って、参照値が0.5以上のときは、ゲート駆動信号が1に固定される。よって、V
inv_oref(t)の絶対値が、リンク電圧指令値V
o*(t)の1/2よりも大きいときには、中性レグL3の半導体スイッチQ5,Q6は、上下いずれか一方がオン、他方がオフに固定される。
【0042】
なお、第1レグL1と第2レグL2は、バイポーラ駆動の単相2線インバータと同じく、Q1とQ4、Q2とQ3、をペアにして相補スイッチングを行うこともできる。
V
invref(t)=V
inv_uref(t)−V
inv_vref(t) ・・・(10)
この場合には、式(10)によりV
inv_uref(t)、V
inv_vref(t)から参照値V
invref(t)を定義し、
図3のコンパレータでゲート駆動信号を生成することができる。
【0043】
すなわち、
図3は、コンパレータでゲート駆動信号を生成する他の例を示すブロック図である。図において、参照値V
invref(t)を、DCリンク電圧指令値V
o*(t)で割って規格化し、コンパレータに入力する。搬送波は両振幅が2、中点が0の三角波である。従って、V
invref(t)の絶対値が、リンク電圧指令値V
o*(t)よりも大きいときには、半導体スイッチQ1,Q4のペア及び半導体スイッチQ2,Q3のペアのいずれか一方がオン、他方がオフとなるゲート駆動信号(G1,G4)(G2,G3)が出力される。
【0044】
次に、単相3線出力のインバータ29と接続するDC/DCコンバータ20の制御について述べる。以下の式(11)、式(12)、及び式(13)にてそれぞれインバータ29のu相出力電圧指令値V
inv_u*(t)、v相出力電圧指令値V
inv_v*(t)、0Vに対するo線出力電圧指令値V
inv_o*(t)を定義する。R
inv_x、L
inv_xはそれぞれインバータ29の電流経路上の抵抗とインダクタンスである。
【0045】
V
inv_u*(t)=V
a_u(t)+
{(R
inv_uI
inv_u*(t)+L
inv_u(dI
inv_u*(t)/dt)}
・・・(11)
V
inv_v*(t)=V
a_v(t)+
{(R
inv_vI
inv_v*(t)+L
inv_v(dI
inv_v*(t)/dt)}
・・・(12)
V
inv_o*(t)=
{(R
inv_oI
inv_o*(t)+L
inv_o(dI
inv_o*(t)/dt)}
・・・(13)
【0046】
次に、以下の式(14)でV
inv*(t)を得る。これはu−v間の出力電圧指令値である。
V
inv*(t)=V
inv_u*(t)−V
inv_v*(t) ・・・(14)
また、次に、以下の式(15)から式(17a,17b)までを用いて、DC/DCコンバータ20の電流指令値I
in*(t)を求める。
【0047】
I
in*(t)={I
inv_u*(t)V
inv_u*(t)+I
inv_v*(t)V
inv_v*(t)+I
inv_o*(t)V
inv_o*(t)+C
o(dV
o*(t)/dt)V
o*(t)}/V
in*(t) ・・・(15)
ここで、I
in*(t)は、直流リアクトル22の電流指令値、C
oは、中間コンデンサ23の容量である。また、分母のV
in*(t)は、DC/DCコンバータ20の電圧降下を考慮した直流電源電圧であり、以下の式(16)によって表される。
V
in*(t)=V
g−{R
inI
in*(t)+L
in(dI
in*(t)/dt)}
・・・(16)
ここで、V
gは、直流電源1の電圧検出値である。R
inは、DC/DCコンバータ20の抵抗値、L
inは、直流リアクトル22のインダクタンスである。
【0048】
V
o*(t)は、|V
inv*(t)|と、V
in*(t)との大小関係によって以下の値をとる。
|V
inv*(t)|<V
in*(t)のとき、V
o*(t)=V
in*(t)
・・・(17a)
|V
inv*(t)|≧V
in*(t)のとき、V
o*(t)=|V
inv*(t)|
・・・(17b)
ここで、V
o*(t)は、DCリンク電圧の指令値である。
【0049】
そして、以下の式(18)に従ってDC/DCコンバータ20のフィードバック制御を行う。
V
inref(t)=V
g(t)−K
in(t)(I
in*(t)−I
in(t))
・・・(18)
なお、K
in(t)は、フィードバック制御の補償関数である。
【0050】
中間コンデンサ23の容量C
oは、47μFとした。交流電圧のピーク電圧以上の直流電圧を用意する従来方式では数mFとして、単相インバータの出力電力に含まれる無効電力は中間コンデンサ23から供給し、DC/DCコンバータ20は有効電力のみを供給するが、本実施形態の電力変換装置2はDC/DCコンバータ20が有効電力だけでなく、無効電力を合わせて供給するため、C
oはスイッチングによって発生するリプルを吸収する程度の容量とする。
【0051】
DC/DCコンバータ20のゲート駆動信号は、
図4に示したコンパレータで生成することができる。すなわち
図4は、DC/DCコンバータ20のゲート駆動信号をコンパレータで生成する一例を示す制御ブロック図である。
図4において、参照値V
inref(t)を、DCリンク電圧指令値V
o*(t)で割って規格化し、コンパレータに入力する。搬送波は振幅が1、最小値が0の三角波である。従って、V
inref(t)の絶対値が、リンク電圧指令値V
o*(t)よりも大きいときには、ハイサイドの半導体スイッチQ
Hがオン、ローサイドの半導体スイッチQ
Lがオフに固定されたゲート駆動信号GH,GLが出力される。
【0052】
《動作波形の例》
図5は、上記要領の演算手順によって制御した電力変換装置の動作波形を示す図である。直流電源1としては、電圧が200Vの蓄電池を接続しており、交流側は電圧実効値が202V/101Vの単相3線式商用電力系統に連系している。交流出力電流の指令値は、u線が実効値30A、v線はu線と逆位相で実効値10Aとした。従って、式(1)からo線の電流はu線と逆位相であり、実効値20Aである。
【0053】
(a)はゲート駆動信号であり、上から順に、G1,G2,G3,G4,G5,G6,GH,GLである。このゲート駆動信号より、第1レグL1及び第2レグL2のゲート駆動信号G1,G2,G3,G4は、交流出力電流のピーク値の時期の前後一定範囲でスイッチングを休止し、各レグの一対の半導体スイッチのうち、一方はオン、他方がオフに固定されている。また、DC/DCコンバータ20のゲート駆動信号GH,GLには交流出力電流のゼロクロスの時期の前後一定範囲に同様のスイッチング休止期間があり、GHがオン、GLがオフに固定されている。
【0054】
両スイッチング休止期間は互いに相補関係にあり、第1レグL1及び第2レグL2とDC/DCコンバータ20とは、概ね、相手方のスイッチング休止期間でのみスイッチングを行っていることが分かる。このため、全体のスイッチング回数は概ね半減されており、常時スイッチングを行う場合と比べるとスイッチング損失が大幅に低減される。一方、中性レグのG5,G6には休止期間はなく常時スイッチングを行っている。
【0055】
(b)は、DC/DCコンバータ20の出力電流検出値I
in(t)を示す。これは、式(15)に示すように、u,v,o各レグの電力と、中間コンデンサ23を流れる電流による無効電力を合わせた電力をV
in*(t)、すなわちDC/DCコンバータ20の電圧降下を考慮した直流電源電圧で割った値となっている。
【0056】
(c)は、中間コンデンサ23の電圧(DCバス2Bの電圧)V
o(t)を、V
in*(t)及びV
inv*(t)の絶対値と共に重ねて示している。少し波打っている直流電圧の方がV
in*(t)であり、脈流波形がV
inv*(t)の絶対値である。
V
o(t)はV
in*(t)、V
inv*(t)の絶対値のいずれか大きい方となっており、この実施形態の場合には約190Vから約290Vの範囲で変化する波形となっている。平均電圧は約230Vで、従来方式の場合の330Vと比べると約30%も低い電圧となっている。
【0057】
この電圧がDC/DCコンバータ20とインバータ29の半導体スイッチに加わるが、半導体スイッチのスイッチング損失は概ね印加する電圧に比例する。特にインバータ29のo線電流を制御する中性レグL3は常時スイッチングが行われるのでV
o(t)を低減することによって、この実施形態の場合であればスイッチング損失を約30%低減することができる。なお、直流電源1の電圧が200Vよりも低いときには本実施形態の電力変換装置2のV
o(t)の平均電圧はさらに低くなる。例えば、直流電源1の電圧が100Vのときには、V
o(t)の平均電圧は約200Vになる。よって、中性レグL3のスイッチング損失は約40%低減することができる。
【0058】
(d)は、各レグの交流出力電流I
a_u(t)、I
a_v(t)、I
a_o(t)を示す。この例では、振幅が最も大きいのがI
a_u(t)、次がI
a_o(t)、最も小さいのがI
a_v(t)である。
このように、u線とv線の電流が異なる場合にも、実効値は指令値どおりそれぞれ30A、10A、20Aとなっており、また、波形の歪みも実用上問題ない程度に抑えることができている。
【0059】
《まとめ》
上記の式(15)は、右辺の分母を両辺に乗じると、
I
in*(t)V
in*(t)=I
inv_u*(t)V
inv_u*(t)+I
inv_v*(t)V
inv_v*(t)+I
inv_o*(t)V
inv_o*(t)+C
o(dV
o*(t)/dt)V
o*(t) ・・・(15’)
となる。すなわち、上記のような制御は、制御部2Cが、インバータ29の各レグ(u,v,o)が出力する電力である{I
inv_u*(t)V
inv_u*(t)+I
inv_v*(t)V
inv_v*(t)+I
inv_o*(t)V
inv_o*(t)}と、中間コンデンサ23を流れる電流による無効電力{C
o(dV
o*(t)/dt)V
o*(t)}とを合わせた電力を、DC/DCコンバータ20が、I
in*(t)V
in*(t)として出力するように制御している、と言える。
【0060】
このような電力変換装置2又はその制御方法によれば、DC/DCコンバータ20が出力する電力はインバータ29が出力する単相3線式交流電力の各レグの出力線から出力される電力と中間コンデンサ23を流れる電流による無効電力とを合わせた電力であるため、無効電力も含めて、DC/DCコンバータ20は過不足なく、インバータ29に電力を出力することになる。従って、DC/DCコンバータ20及びインバータ29は両者で最小限のスイッチングを行い、単相3線式で、最小スイッチング変換を実現することができる。
こうして、変圧器を用いることなく、必要な交流電圧のピーク値よりも電圧が低い直流電源から単相3線式交流電力を出力し、かつ、その変換効率を改善することができる。
【0061】
《第2実施形態》
以上の説明では、電力変換装置2の交流出力側を単相3線式の配電系統に連系している場合を示したが、系統連系はされておらず負荷だけが接続されている自立運転の場合にも、この電力変換装置2を用いることができる。この場合は、式(2)、式(3)を、それぞれ、以下の式(19)及び式(20)に置き換えて、u相及びv相の電圧をそれぞれフィードバック制御することにより、交流リアクトル電流指令値I
inv_u*(t)、I
inv_v*(t)を決定し、それ以降は系統連系の場合と同様に式(4)から式(18)に示した演算手順を実施すれば、電力変換装置の自立運転を行うことができる。
【0062】
I
inv_u*(t)=I
a_u(t)+K
a_u(t)(V
a_u*(t)−V
a_u(t))
・・・(19)
I
inv_v*(t)=I
a_v(t)+K
a_v(t)(V
a_v*(t)−V
a_v(t))
・・・(20)
【0063】
なお、式(19)及び式(20)に含まれる出力電流I
a_u(t)、I
a_v(t)はセンサを設けてその検出値を用いるが、出力電流検出センサを省略する場合には、交流リアクトル24,25の電流検出値I
inv_u(t)、I
inv_v(t)に適当な演算を加えた数値で代用することもできる。例えば、I
inv_u(t)、I
inv_v(t)にローパスフィルタを通過させた数値とすることができる。自立出力では式(5)、式(6)、式(11)及び式(12)に含まれる交流出力電圧V
a_u(t)、V
a_v(t)は、検出値の代わりに指令値V
a_u*(t)、V
a_v*(t)を用いることができる。
【0064】
図6は、u相に6.8Ω、v相に68Ωの不平衡な抵抗負荷を接続して自立運転を行ったときの動作波形を示す図である。図の(a),(b),(c),(e)は、それぞれ、
図5における(a),(b),(c),(d)に対応する図である。
図6の(d)は、u相電圧V
a_u及びv相電圧V
a_vの波形図である。
【0065】
直流電源としては電圧が200Vの蓄電池を接続しており、交流側は電圧実効値が202V/101Vの単相3線式電力を出力する。このようにu相とv相の負荷の大きさが異なる場合でもu相、v相は実効値が101Vの歪みのない正弦波電圧を出力することができる。
図5の系統連系の場合と同様に、第1レグL1及び第2レグL2のゲート駆動信号と、DC/DCコンバータ20のゲート駆動信号とは、休止期間があり、DCリンク電圧V
o(t)の平均値は230Vとなっており、スイッチング損失を低減することができる。
【0066】
《第3実施形態》
図7は、単相3線式の商用電力系統4に連系する電力変換装置(パワーコンディショナ)2の詳細な回路図の一例である。
図1との違いは、負荷(Ruv,Ruo,Rvo)と商用電力系統4との間に電力計測部3を設けた点である。電力計測部3には、商用電力系統4と負荷Ruv,Ru,Rvとの間の、u線及びv線にそれぞれ流れる電流を検出する電流センサ31及び32と、これらの電流センサ31,32と同じ場所にあって、u線−o線間の電圧(u相電圧)を検出する電圧センサ33と、v線−o線間の電圧(v相電圧)を検出する電圧センサ34とが設けられている。電流センサ31,32及び電圧センサ33,34の検出出力は、電力変換装置2の制御部2Cに送られる。
【0067】
制御部2Cは、これらの検出出力に基づいて、u相の電力、v相の電力を求める。電流センサ31及び電圧センサ33は、u線の電路に流れる電流によって生じる第1の有効電力P1を検出する第1電力検出部を構成している。また、電流センサ32及び電圧センサ34は、v線の電路に流れる電流によって生じる第2の有効電力P2を検出する第2電力検出部を構成している。
【0068】
図7において、直流電源1は蓄電池であり、交流側は電圧実効値が202V/101Vの単相3線式の商用電力系統4に連系した。u相にRuo:10Ω、uv間にRuv:20Ωの抵抗負荷を接続した(Rvoは接続せず。)。このとき電力計測部3によって検出される有効電力検出値P1、P2がどちらも0になるように、電力変換装置2の出力電流指令値I
a_u*(t)、I
a_v*(t)を設定した。
【0069】
図8の(a)は、u相電圧V
a_uと、v相電圧V
a_vの波形図である。(b)は、交流リアクトル24に流れるu線電流、交流リアクトル25に流れるv線電流の波形図であり、実効値20Aの方がu線電流、実効値10Aの方がv線電流である。(c)は、電流センサ31及び32に流れる商用電力系統側のu線電流及びv線電流の波形図である。電流センサ31及び32に流れるu線の有効電流及びv線の有効電流は、共に、約0Aである。このように、需要家の負荷より商用電力系統側に電流を流さない制御を行えば、単相3線式電路に接続された自家消費負荷に対して直流電源から過不足なく電力を供給することができる。これにより、買電を抑制することができる。
【0070】
なお、前述のように、u線の有効電流及びv線の有効電流の少なくとも一方の大きさが0であるか、双方の向きが一致している状態を維持するようにu線及びv線にそれぞれ流れる電流を制御する機能を有するものであってもよい。この場合、単相3線式の負荷であっても、買電と売電とが同時に行われる状態を回避し、直流電源のその時点での電力供給能力を最大限に有効活用しつつ、電力変換装置2から負荷Ruo,Rvo,Ruv及び商用電力系統4に電力を供給することができる。
【0071】
《補記》
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。