(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1方向に配列された複数の電池セルと前記複数の電池セルのそれぞれに接続された複数の伝熱部材とを含む配列体と、前記配列体の前記第1方向の両端に設けられた一対のエンドプレートとを有する電池モジュールと、
前記電池モジュールが固定される被固定部材と、
前記配列体と前記被固定部材との間に設けられる伝熱層と、
前記伝熱層と前記被固定部材との間に設けられ、前記第1方向に沿って摺動可能な摺動面を被固定部材側に有する摺動シートと、を備え、
前記伝熱層は、前記複数の伝熱部材のそれぞれに設けられ、前記複数の伝熱部材のそれぞれと一緒に、且つ互いに独立して、前記第1方向に移動可能な複数の伝熱部を有し、
前記摺動シートは、前記複数の伝熱部の前記被固定部材側の端面がそれぞれ当接する複数の第1部分と、隣り合う前記第1部分の間に配置されて前記第1方向に伸縮自在な複数の第2部分と、を有する、電池パック。
前記摺動シートの前記第2部分は、隣り合う前記伝熱部の間隔が最小の場合には当該間隔内に入り込み、前記伝熱部の間隔の増大に伴い前記第1部分に引っ張られて前記第1方向に広がる、請求項1に記載の電池パック。
前記第2部分の収縮時と伸長時との差の総和である前記摺動シートの弛み量は、前記電池セルあたりの前記第1方向の膨張量と前記電池モジュールにおける前記電池セルの個数との積よりも大きい、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電池パック。
前記摺動シートと前記被固定部材の表面との間の摩擦抵抗は、前記摺動シートと前記複数の伝熱部の前記端面との間の摩擦抵抗よりも小さい、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電池パック。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記冷却構造では、たとえば電池セルの充放電によって電池セルの積層方向に電池セルが膨張または収縮することがある。そのような場合、電池セルの積層方向の力が伝熱シートに加わって、電池セルの積層方向に伝熱シートがずれることがある。伝熱シートがずれると、電池モジュールの冷却面と伝熱シートとの界面または伝熱シートと冷却プレートとの界面において剥離が生じる。剥離が生じると、電池モジュールの冷却面と伝熱シートとの接触面積または伝熱シートと冷却プレートとの接触面積が減少する。また、伝熱シートに加わる力が大きいと、伝熱シートがひび割れたり破断したりするおそれもある。その結果、電池モジュールから冷却プレートまでの放熱性が低下する。
【0005】
本発明は、電池セルの膨張に起因する電池モジュールの放熱性の低下を抑制できる電池パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る電池パックは、第1方向に配列された複数の電池セルと複数の電池セルのそれぞれに接続された複数の伝熱部材とを含む配列体と、配列体の第1方向の両端に設けられた一対のエンドプレートとを有する電池モジュールと、電池モジュールが固定される被固定部材と、配列体と被固定部材との間に設けられる伝熱層と、伝熱層と被固定部材との間に設けられ、第1方向に沿って摺動可能な摺動面を被固定部材側に有する摺動シートと、を備え、伝熱層は、複数の伝熱部材のそれぞれに設けられ、複数の伝熱部材のそれぞれと一緒に、且つ互いに独立して、第1方向に移動可能な複数の伝熱部を有し、摺動シートは、複数の伝熱部の被固定部材側の端面がそれぞれ当接する複数の第1部分と、隣り合う第1部分の間に配置されて第1方向に伸縮自在な複数の第2部分と、を有する。
【0007】
この電池パックでは、伝熱層の複数の伝熱部は、電池モジュールの複数の伝熱部材のそれぞれに対して個別に設けられており、互いに独立して、第1方向に移動可能である。ある1つの電池セルが第1方向に膨張した際、隣接する電池セルおよび伝熱部材が第1方向に押される。押された電池セルおよび伝熱部材は、その伝熱部材に対応する伝熱部と一緒に第1方向に移動する。この移動に伴い、その伝熱部が当接する第1部分は被固定部材に対して摺動し、第1方向に移動する。第2部分は伸縮自在であるので、このとき伝熱部は、伝熱部材側の面および被固定部材側の面の両面において接触状態を維持しつつ、被固定部材上を移動する。複数の電池セルが膨張した場合も、上記と同様の作用が複数の箇所で生じ得る。このように、電池セル毎に個別に設けられた伝熱部と、伸縮自在な摺動シートとの協働により、電池セルの膨張に追従できる伝熱構造が実現されている。よって、伝熱層を通じての放熱性は維持され得る。その結果として、電池セルの膨張に起因する電池モジュールの放熱性の低下を抑制できる。
【0008】
摺動シートの第2部分は、隣り合う伝熱部の間隔が最小の場合には当該間隔内に入り込み、伝熱部の間隔の増大に伴い第1部分に引っ張られて第1方向に広がる。このような形態の摺動シートによれば、第2部分が広がることによって伸縮性が実現される。よって、簡易な構成で、各伝熱部をスムーズに移動させることができる。伝熱部の間隔が最小の場合にも、第2部分は伝熱部の間隔内に入り込むため、第1方向における大型化は抑制されている。
【0009】
一対のエンドプレートは被固定部材に固定されており、電池モジュールは、一対のエンドプレートの少なくとも1つと配列体との間に配置された少なくとも1つの弾性体と、を有する。この構成によれば、電池セルが膨張する膨張量に応じて弾性体が圧縮変形することで、当該膨張量を吸収することができる。
【0010】
一対のエンドプレートの少なくとも1つは、第1方向にスライド可能である。この構成によれば、電池セルが膨張する膨張量に応じて少なくとも1つのエンドプレートがスライドすることで、当該膨張量を吸収することができる。
【0011】
第2部分の収縮時と伸長時との差の総和である摺動シートの弛み量は、電池セルあたりの第1方向の膨張量と電池モジュールにおける電池セルの個数との積よりも大きい。この構成によれば、仮にすべての電池セルが膨張した場合でも、摺動シートは、十分な弛み量を持っているので、膨張に追従して伸長することができる。
【0012】
摺動シートと被固定部材の表面との間の摩擦抵抗は、摺動シートと複数の伝熱部の端面との間の摩擦抵抗よりも小さい。この構成によれば、摺動シートの第1部分は、非固定部材に対して摺動する。摺動シートと伝熱部との間にずれは生じず、第1部分は伝熱部と一体的に移動する。よって、伝熱層を通じての放熱性は確実に維持される。
【0013】
電池パックは、摺動シートと被固定部材との間に設けられた別の摺動シートを更に備え、別の摺動シートは、被固定部材に固定されると共に、摺動シートの少なくとも第1部分に対面して接触する平坦な表面を有する。この構成によれば、摺動シートの第1部分は、別の摺動シートの表面に対して摺動する。摺動シートと伝熱部との間にずれは生じず、第1部分は伝熱部と一体的に移動する。よって、伝熱層を通じての放熱性は確実に維持される。
【発明の効果】
【0014】
本発明のいくつかの態様によれば、電池セルの膨張に起因する電池モジュールの放熱性の低下を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
図1および
図2に示されるように、電池パック100は、複数の電池セル4を有する電池モジュール1と、電池モジュール1を収容する筐体2と、電池モジュール1で発生する熱を筐体2側へ伝えて放熱するための伝熱層3と、を備えている。電池モジュール1は、筐体2に収容されている。電池モジュール1は、筐体2の側壁(被固定部材)2aに固定されている。伝熱層3は、電池モジュール1と筐体2の側壁2aとの間に配置されている。なお、電池パック100は、たとえば側壁2aに沿って配列された複数の電池モジュール1を備えることができるが、ここでは、1つの電池モジュール1のみを図示する。
【0018】
電池モジュール1は、複数の電池セル4および複数の伝熱プレート(伝熱部材)6を含む配列体10を有している。電池セル4の個数は、たとえば7個である。電池セル4は、それぞれ、個別にセルホルダ20に保持されている。伝熱プレート6は、電池セル4のそれぞれに対して設けられている。したがって、伝熱プレート6の個数も、一例として7個である。電池セル4および伝熱プレート6は、第1方向Dに沿って交互に配列されて、配列体10を構成している。
【0019】
図3を参照して、電池セル4について説明する。
図3に示されるように、電池セル4は、電極組立体11と、電極組立体11を収容するケース12と、電極組立体11の電極(正極および負極のそれぞれ)に電気的に接続され、ケース12から突出する一対の端子13と、を有している。電極組立体11は、複数の正極(不図示)および負極(不図示)と、正極と負極との間に配置されたセパレータ(不図示)と、を含む。正極および負極は、セパレータを介して交互に積層されている。正極および負極の積層方向は、電池セル4の配列方向(第1方向D)と実質的に一致している。
【0020】
ケース12は、直方体状を呈している。ケース12は、互いに対向する一対の側面12a,12bと、互いに対向する一対の側面12c,12dと、互いに対向する上面12eおよび底面12fと、を含む。側面12a,12bは、第1方向Dに沿った面である。側面12c,12dは、第1方向Dに交差する方向に沿った面であり、側面12aと側面12bとを互いに接続する。端子13は、上面12eから突出している。
【0021】
セルホルダ20は、互いに対向する一対の側壁部20a,20bと、背面部20eおよび底壁部20fと、を含む。側壁部20a,20bは、長方形板状を呈している。背面部20eは、長方形板状を呈しており、側壁部20a,20bの長手方向の一端部において側壁部20aと側壁部20bとを互いに接続している。底壁部20fは、長方形板状を呈しており、側壁部20a,20bの長手方向の他端部において側壁部20aと側壁部20bとを互いに接続している。
【0022】
セルホルダ20においては、側壁部20a,20bと背面部20eおよび底壁部20fとによって、電池セル4が嵌め合される直方体状の空間部が画成されている。側壁部20a,20bは、それぞれ、当該空間部に電池セル4が嵌め合されたときにケース12の側面12a,12b上に配置される。同様に、背面部20eは、ケース12の上面12e近傍において、側面12d上に配置される。さらに、底壁部20fは、ケース12の底面12f上に配置される。
【0023】
背面部20eには、一対の突設部21が設けられている。突設部21は、直方体状を呈している。突設部21は、第1方向Dに沿って延在している。突設部21は、セルホルダ20の上記空間部に電池セル4が嵌め合されたときに、ケース12の上面12e上であって、一対の端子13の間の位置に配置される。突設部21には、その延在方向に沿った貫通孔21hが形成されている。この貫通孔21hには、ボルト32(
図1参照)が挿通される。
【0024】
底壁部20fにおける側壁部20a,20bとの接続部分には、一対の突設部22が設けられている。突設部22は、直方体状を呈している。突設部22は、第1方向Dに沿って延在している。突設部22は、セルホルダ20の上記空間部に電池セル4が嵌め合されたときに、ケース12の底面12fにおける側面12a,12b側の端部に配置される。突設部22には、その延在方向に沿った貫通孔22hが形成されている。この貫通孔22hには、ボルト32(
図1参照)が挿通される。
【0025】
伝熱プレート6は、矩形板状の本体部6aと、矩形板状の延在部6bと、を含む。伝熱プレート6は、本体部6aと延在部6bとによってL字板状に形成されている。本体部6aは、電池セル4(ケース12)の側面12d上に配置される。延在部6bは、本体部6aから第1方向Dに沿って延び、電池セル4(ケース12)の側面12a上に配置される。特に、延在部6bは、セルホルダ20の側壁部20aを介して側面12a上に配置される。本体部6aが電池セル4の側面12dに当接することにより、伝熱プレート6は、電池セル4で発生した熱を受け取る。このようにして、伝熱プレート6は、電池セル4のそれぞれに接続されている。
【0026】
図2に示されるように、電池モジュール1の配列体10において、伝熱プレート6の本体部6aは、隣り合う2つの電池セル4によって挟まれている。本体部6aは、一方の電池セル4の側面12dに当接すると共に、他方の電池セル4の側面12cに当接している。第1方向Dにおける配列体10の一端部10aは、第1方向Dの一端部に位置する電池セル4に接続された伝熱プレート6の本体部6aである。第1方向Dにおける配列体10の他端部10bは、第1方向Dの他端部に位置する電池セル4の側面12cである。
【0027】
図1および
図2に示されるように、電池モジュール1は、第1方向Dにおける配列体10の一端部10aおよび他端部10bのそれぞれに設けられた一対のエンドプレート31を有している。一対のエンドプレート31は、側壁2aに固定されており、複数の電池セル4および複数の伝熱プレート6を拘束する。エンドプレート31は、一例として、矩形板状の本体部31aと、矩形板状の固定部31bと、によってL字板状に形成されている。本体部31aは、電池セル4の側面12c,12d上に配置される。固定部31bは、本体部31aから第1方向Dに沿って突設されている。
【0028】
ボルト32は、電池セル4を保持したセルホルダ20の貫通孔21h,22h、およびエンドプレート31に設けられた貫通孔に挿通される。ナット33は、エンドプレート31同士を互いに締め付けるようにボルト32の端部に螺合される。これにより、エンドプレート31を介して、電池セル4に拘束荷重が付加される。
【0029】
他端部10b側に設けられたエンドプレート31と、配列体10との間には、1つの弾性体36が介在されている。弾性体36は、第1方向Dの弾性を有しており、たとえばゴム等により構成されている。弾性体36は、そのエンドプレート31と、配列体10の他端部10bをなす電池セル4の側面12cとに当接している。弾性体36は、エンドプレート31と側面12cとの間に配置されて、これら双方に密着している。弾性体36は、電池セル4、セルホルダ20、および伝熱プレート6の第1方向Dの移動に応じて収縮する。
【0030】
電池モジュール1は、第1方向Dの両端において、筐体2の側壁2aに固定されている。より具体的には、電池モジュール1は、エンドプレート31の固定部31bを側壁2aの内面に接触させた状態において、固定部31bに挿通されたボルト31cを用いて筐体2の側壁2aに固定される。
【0031】
続いて、
図2を参照して、本実施形態の電池パック100が備える伝熱構造Xについて説明する。配列体10と筐体2の側壁2aとの間には、上記した伝熱層3と、1枚の摺動シート40とが設けられている。摺動シート40は、伝熱層3と側壁2aとの間に設けられている。伝熱構造Xは、伝熱プレート6と、伝熱層3と、摺動シート40とを有しており、電池セル4で発生した熱を側壁2aに伝達する。伝熱構造Xは、以下に示す構成を備えることにより、電池セル4の移動に基づく配列体10の変形(すなわち第1方向Dの伸長および収縮)に関わらず、放熱性を維持する。
【0032】
伝熱層3は、いわゆる熱界面材料(TIM;Thermal Interface Material)層である。言い換えれば、伝熱層3は放熱層である。伝熱層3は、複数の伝熱プレート6のそれぞれに対して設けられた複数の伝熱部37を有する。各伝熱部37は、直方体状を呈している。伝熱部37は、たとえば、シリコーンに熱伝導性のフィラーが練り込まれた、いわゆるシリコーンTIMとすることができる。各伝熱部37は、シート状のTIMであってもよいし、液状またはペースト状のTIMであってもよい。なお、伝熱部37が液状TIMである場合には、たとえば、ギアポンプ等を用いた液体定量吐出装置と、当該吐出装置の吐出部を駆動するロボットとを用いることで、伝熱部37を形成可能である。
【0033】
各伝熱部37は、配列体10側に配置された端面37aと側壁2a側に配置された端面37bとを含んでいる。伝熱部37の端面37aは、伝熱プレート6の延在部6bに面接触し、密着している。伝熱部37の大きさすなわち端面37aの大きさは、適宜設定可能である。端面37aは、たとえば、延在部6bと同じか、延在部6bよりも一回り小さい面積を有してもよい。端面37aは、延在部6bよりも大きな面積を有してもよい。伝熱部37の端面37bは、摺動シート40の表面40aに面接触し、密着している。
【0034】
各伝熱部37は、各伝熱プレート6と一緒になって、第1方向Dに移動可能である。このように、伝熱層3は、複数の伝熱部37に分割されている。伝熱プレート6に対応して(すなわち電池セル4に対応して)個別に設けられた伝熱部37は、他の伝熱部37とは独立して、第1方向Dに移動可能に構成されている。
【0035】
第1方向Dに配列された伝熱部37の間には、間隔S(すなわち空間または間隙)が形成されている。各伝熱部37は、電池セル4、セルホルダ20、および伝熱プレート6の第1方向Dの移動に応じて移動する。伝熱部37の移動に伴って、各間隔Sの第1方向Dの幅(大きさ)は変化する。
【0036】
摺動シート40は、側壁2a上に設けられて、側壁2aに投影した場合に、伝熱層3(複数の伝熱部37)よりも大きい面積を有している。摺動シート40は、配列体10側に配置された表面40aと、側壁2a側に配置された摺動面40bとを含んでいる。摺動シート40は、側壁2aに対して摺動可能である。すなわち、摺動シート40の摺動面40bは、第1方向Dに摺動可能である。摺動シート40は、たとえばスリップシートまたはスライドシート等である。摺動シート40は、熱伝導性を備えている。摺動シート40の厚みは、たとえば0.05mm〜1mmである。
【0037】
摺動シート40は、たとえば、基材の片面または両面上に設けられたシリコーン樹脂層を備えた剥離紙であってもよい。摺動シート40は、摺動面40bを有するシリコーン樹脂層と、摺動可能でない表面40aを有する基材とを備えてもよい。摺動シート40はスライディングペーパーであってもよい。
【0038】
摺動シート40はカーボンシートを含んでもよい。摺動シート40はカーボンシートを支持する基材を備えてもよい。たとえば、摺動シート40は、摺動面40bを有するカーボンシートと、摺動可能でない表面40aを有する基材とを備えてもよい。カーボンシートとしては、例えばグラファイトシート等が挙げられる。カーボンシートの熱伝導率は、例えば2〜1950W/(m・K)程度である。カーボンシートの厚みは、例えば0.025mm〜1mm程度である。
【0039】
摺動シート40と筐体2の表面2bとの摩擦抵抗は、摺動シート40と伝熱部37の端面37bとの摩擦抵抗よりも小さい。これにより、伝熱部37が第1方向Dに移動しようとする際、摺動面40bと側壁2aとの間において滑りが生じ得る。この際、端面37bと表面40aとの間では滑りは生じ得ない。このように、摺動シート40は、伝熱部37の端面37bに当接して端面37bに密着する複数の第1部分41を有する。各第1部分41は、各伝熱部37に対応しており、側壁2aに対して摺動可能である。
【0040】
一方、摺動シート40は、隣り合う第1部分41の間に配置された複数の第2部分42を有する。各第2部分42は、上記した間隔Sに対応しており、間隔S内に配置されている。第2部分42は、間隔S内において、V字状またはU字状に折れ曲がっている。すなわち、摺動シート40は、第1部分41と第2部分42とが交互に連続することで形成された1枚のシート状体であるが、全体として、蛇腹状を呈している。なお、V字状またはU字状の折曲部は、1つの間隔Sに対して1つである場合に限られず、1つの間隔Sに対して複数の折曲部が設けられてもよい。
【0041】
摺動シート40の第2部分42は、隣り合う伝熱部37の間隔Sが最小の場合(
図2に示される状態)にはそれらの間隔S内に入り込んでおり、伝熱部37の間隔Sの増大に伴い、第1部分41に引っ張られるようにして、第1方向Dに広がる(
図5参照)。すなわち、摺動シート40は、第1部分41において伝熱部37に追従すると共に、第2部分42において第1方向Dに伸縮する。
【0042】
摺動シート40の第1方向Dの長さについて説明する。摺動シート40は、複数の伝熱部37の移動量(変位量)に応じた弛み量(弛むことができる長さ)を有している。摺動シート40の第1方向Dの弛み量Cは、1つの電池セル4あたりの第1方向Dの膨張量A(想定され得る最大膨張量)と、電池モジュール1における電池セル4の個数B(本実施形態では7個)との積よりも大きくなっている。摺動シート40の弛み量Cと、電池セル4の膨張量Aおよび個数Bとの間には、下記の式(1)が成り立つ。
C>A×B・・・(1)
【0043】
上記の構成を有する電池パック100を形成するにあたり、蛇腹状の摺動シート40は、各種の方法によって搭載され得る。
図4(a)に示されるように、第2部分42として予めV字状またはU字状の折り込みが形成された摺動シート40を用意してもよい。その後、この摺動シート40を吸着装置60で保持し、第2部分42が間隔Sに挿入されるように摺動シート40を電池モジュール1に取り付けてもよい。若しくは、
図4(b)に示されるように、第1方向Dに張られた平坦な形状の摺動シート40を用意してもよい。電池パック100の作成工程において、平坦な摺動シート40を吸着装置60で保持し、吸着装置60の吸着位置を寄せるようにしてV字状またはU字状の折り込みを形成することにより、第2部分42を形成してもよい。その後、第2部分42が間隔Sに挿入されるように摺動シート40を電池モジュール1に取り付けてもよい。
【0044】
以上説明した本実施形態の電池パック100では、伝熱層3の複数の伝熱部37は、電池モジュール1の複数の伝熱プレート6のそれぞれに対して個別に設けられている。各電池セル4で発生した熱は、伝熱プレート6の本体部6aから延在部6bへと伝わり、伝熱部37および摺動シート40を介して側壁2aに伝達される。電池パック100においては、伝熱部37は、互いに独立して、第1方向Dに移動可能である。
図5に示されるように、充放電による膨張収縮または劣化による膨張等に起因して、1つまたは複数の電池セル4が第1方向Dに移動した際、隣接する電池セル4および伝熱プレート6は、第1方向Dの一方(他端部10b側)に押される。押された電池セル4および伝熱プレート6は、その伝熱プレート6に対応する伝熱部37と一緒に第1方向Dに移動する。この移動に伴い、その伝熱部37が当接する第1部分41は側壁2aに対して摺動し、第1方向Dに移動する。第2部分42は伸縮自在であるので、伝熱部37は、伝熱プレート6側の端面37aおよび側壁2a側の端面37bの両面において接触状態を維持しつつ、側壁2a上を移動する。このように、電池セル4毎に個別に設けられた伝熱部37と、伸縮自在な摺動シート40との協働により、電池セル4の膨張に追従できる伝熱構造Xが実現されている。よって、伝熱層3を通じての放熱性は確保される。その結果として、電池セル4の膨張に起因する電池モジュール1の放熱性の低下を抑制できる。
【0045】
図7に示されるような従来の電池パック200では、伝熱層203は一体のTIM層とされており、この伝熱層203と側壁2aとの間には摺動シートは設けられていない。そのため、充放電による膨張収縮または劣化による膨張等に起因して、1つまたは複数の電池セル4が第1方向Dに移動した際、伝熱層203にせん断力が作用し、伝熱層203と側壁2aの表面2bとの界面や、伝熱層203と伝熱プレート6との界面において剥離が生じる可能性があった。また、伝熱層203にせん断力が作用し、伝熱層203そのものが破損する可能性があった。本実施形態の電池パック100では、各伝熱部37が電池セル4および伝熱プレート6の移動に追従するため、そのような事態が回避されており、放熱性が好適に確保される。
【0046】
さらに、蛇腹状の摺動シート40によれば、
図5に示されるように、第2部分42が広がることによって伸縮性が確保される。よって、簡易な構成で、各伝熱部37をスムーズに移動させることができる。伝熱部37の間隔Sが最小の場合にも、第2部分42は伝熱部37の間隔S内に入り込むため(
図2参照)、第1方向Dにおける大型化は抑制されている。
【0047】
側壁2aに固定された一対のエンドプレート31と、弾性体36とを備える構成によれば、電池セル4が膨張する膨張量に応じて弾性体36が圧縮変形することで、当該膨張量が吸収される。エンドプレート31を含む電池モジュール1の構造を破損することがない。
【0048】
摺動シート40の弛み量Cと、電池セル4の膨張量Aおよび個数Bとの間には、上記の式(1)が成り立っているので、仮にすべての電池セル4が膨張した場合でも、摺動シート40は、十分な弛み量を持っている。これにより、摺動シート40は、膨張に追従して伸長することができる。
【0049】
摺動シート40と筐体2の表面2bとの摩擦抵抗は、摺動シート40と伝熱部37の端面37bとの摩擦抵抗よりも小さいため、摺動シート40の第1部分41は、側壁2aに対して摺動する。摺動シート40と伝熱部37との間にずれは生じず、第1部分41は伝熱部37と一体的に移動する。よって、伝熱層3を通じての放熱性が確実に維持される。
【0050】
続いて、
図6を参照して、第2実施形態に係る電池パック100Aについて説明する。電池パック100Aの伝熱構造XAが第1実施形態の伝熱構造Xと違う点は、摺動シート40と側壁2aとの間に設けられた別の摺動シート50を更に備えた点である。別の摺動シート50は、摺動シート40の第1部分41に対面して接触する平坦な表面50aを有する。別の摺動シート50は、裏面50bが側壁2aの表面2bに接着される等により、側壁2aに固定されている。摺動シート50としては、摺動シート40と同じ材質のものを用いてもよい。摺動シート50の厚みは、摺動シート40の厚みと同じであってもよいし、摺動シート40の厚みとは異なってもよい。摺動シート50に対しては、弛み量は設けられなくてよい。摺動シート50の第1方向Dの長さは、伸長時の摺動シート40の長さと同等であるか、または当該長さよりも長い。なお、摺動シート40と摺動シート50とを用いる場合には、摩擦抵抗に関する制約条件(伝熱構造Xにおける上記の制約条件)は無視し得る。
【0051】
この伝熱構造XAによれば、摺動シート40の第1部分41は、別の摺動シート50の表面50aに対して摺動する。第1実施形態の伝熱構造Xと同様、摺動シート40と伝熱部37との間にずれは生じず、第1部分41は伝熱部37と一体的に移動する。よって、伝熱層3を通じての放熱性は確実に維持される。電池パック100Aは、上記効果の他にも、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。たとえば、エンドプレート31は側壁2aに固定される形態に限られず、可動であってもよい。すなわち、一対のエンドプレート31の少なくとも1つが、第1方向Dにスライド可能であってもよい。具体的には、エンドプレート31の固定部31bに、第1方向Dに長い長孔を設け、この長孔にボルト31cを挿入し、エンドプレート31を固定することができる。この構成によれば、電池セル4が膨張する膨張量に応じて少なくとも1つのエンドプレート31がスライドすることで、当該膨張量を吸収することができる。その場合には、弾性体36は省略され得る。
【0053】
一対のエンドプレート31の両方と配列体10との間に、一対の弾性体36が配置されてもよい。摺動シート40は、上記した蛇腹形状に限られない。摺動シート40は、平坦な第2部分が第1方向Dに伸縮する構成であってもよい。摺動シート40の弛み量Cと、電池セル4の膨張量Aおよび個数Bとの間には、上記の式(1)が成り立っていなくてもよい。弛み量が設けられていれば、ある程度の膨張には追従可能である。
【0054】
摺動シート40は、1枚のシート状体からなる場合に限られず、複数枚の摺動シート40が第1方向D或いは第1方向Dと交差する方向に並設されてもよい。電池セル4に対するセルホルダ20および伝熱プレート6の配置は、適宜変更可能である。伝熱プレート6の構造は上記形態に限られず、各種変形形態を採用可能である。