(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
移動体の表面に特徴点を設け、移動中の前記移動体を連続的に撮影した画像から前記特徴点を抽出し、前記特徴点の位置の時間変化に基づいて移動中の前記移動体の挙動を計測する移動体の挙動計測方法で用いられる計測用マーカーであって、
平面状の基材上に3点以上の前記特徴点が非直線上に配置されるとともに、前記基材の前記移動体への貼り付け面に粘着素材が配置されており、
それぞれの前記特徴点は、前記基材の非貼り付け面から上方に凸状に形成されており、
前記基材は可撓性を有する、
ことを特徴とする計測用マーカー。
前記移動体はゴルフクラブヘッドであり、前記第1の移動体の表面への前記計測用マーカーの貼り付け、および前記第2の移動体の表面への前記計測用マーカーの貼り付けは、前記ゴルフクラブヘッドのフェース面上端ライン、前記フェース面の中心位置、前記フェース面の幅方向中央位置、前記フェース面に設けられたスコアラインの少なくともいずれか1つを基準位置として、前記計測用マーカーの所定箇所が前記基準位置に一致する、または前記所定箇所が前記基準位置から所定距離となるように行う、
ことを特徴とする請求項8から10のいずれか1項記載の移動体の挙動計測方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる計測用マーカーおよび計測用マーカーを用いた移動体の挙動計測方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
本実施の形態では、移動体としてゴルフボール打撃時のゴルフクラブヘッド30の挙動を計測する場合について説明する。
【0009】
図1は、実施の形態にかかる計測用マーカー10の概略構成を示す説明図であり、
図1Aは計測用マーカー10の上面視図、
図1Bは計測用マーカー10のA−A断面図、
図1Cは計測用マーカー10をゴルフクラブヘッド30(クラウン部)に貼付した状態の斜視図である。なお、以下の説明では、ゴルフクラブヘッド30としてウッドタイプのヘッドを図示するが、本発明は
図19のようにアイアンタイプのヘッドにも適用可能である。
【0010】
計測用マーカー10は、面状の基材1002上に3点以上の特徴点が非直線上に配置されるとともに、基材1002のゴルフクラブヘッド30への貼り付け面に粘着素材が配置されている。
本実施の形態では、基材1002上に配置される特徴点は3点(特徴点12A,12B,12C)であり、3点の特徴点が概ね二等辺三角形(より詳細には正三角形)の頂点に対応する位置に配置されている。
特徴点を3点以上設けるのは、後述するゴルフクラブヘッド30の挙動計測時に、3点以上の特徴点で囲まれた面の動きを特定することによって、2次元情報である画像データからゴルフクラブヘッド30の3次元空間上の動きを特定可能とするためである。また、3点以上の特徴点を直線上に配置しても上記面が形成されないので、3点以上の特徴点は非直線上に配置する。
また、3点の特徴点が概ね二等辺三角形の頂点となるように配置するのは、後述するように、計測用マーカー10をゴルフクラブヘッド30に貼付する際の位置合わせを容易にするためである。
【0011】
計測用マーカー10全体の形状は、上記3つの特徴点のうち2つ(特徴点12Aおよび12B)を結ぶ直線A−Aに沿った第1直線部101と、残りの特徴点(特徴点12C)から直線A−Aへと下ろした垂線Bとに沿った第2直線部102とからなるT字型となっている。
これは、計測用マーカー10とゴルフクラブヘッド30との接触面積を小さくするとともに、計測用マーカー10をゴルフクラブヘッド30に貼付する際の位置合わせを容易にするためである。なお、計測用マーカー10をゴルフクラブヘッド30に貼付する際の位置合わせの詳細については後述する。
【0012】
例えば、
図18Aのように計測用マーカー10全体の形状を、3点の特徴点12A〜12Cが頂点を形成する二等辺三角形の形状に沿った形状にすることも考えられる。しかし、この場合、計測用マーカー10とゴルフクラブヘッド30との接触面積が比較的大きく、計測用マーカー10の貼付位置であるゴルフクラブヘッド30のクラウン部の曲率に沿わせるとしわ等が発生しやすくなり、その歪みによって特徴点の位置が貼付ごとにずれる可能性がある。
また、例えば、
図18Bのように二等辺三角形の中央部をくりぬいてゴルフクラブヘッド30との接触面積を減らすことも考えられるが、
図1に示すようなT字型と比べてなお接触面積が大きい。また、この形状では、等辺部分がゴルフクラブヘッド30のクラウン部とトゥ部やヒール部との境界部分の曲率が高い箇所に位置する可能性があり、ゴルフクラブヘッド30の形状によっては貼りにくい場合がある。
さらに、例えば、
図18Cのようなスター型とすることも考えられるが、
図1に示すようなT字型と比べて基準となる辺がなく、位置合わせがしづらい可能性がある。
【0013】
図1Bに示すように、計測用マーカー10は、ゴルフクラブヘッド30と接する側から順に、接着層1004、基材1002、凸状部1006、反射層1007、保護層1008が積層されている。なお、
図1Bでは図示の便宜上、各層の厚さおよび厚さの比率は実際とは異なっている。
接着層1004は、基材1002の一方の面に設けられ、粘着素材で形成されている。接着層1004を形成する粘着素材は、再剥離性能を有しているのが好ましい。すなわち、一度ゴルフクラブヘッド30に計測用マーカー10を貼った場合でも、ゴルフクラブヘッド30に粘着素材を残すことなく簡単にはがすことができれば、ゴルフクラブヘッド30の美観を維持する上で好ましい。また、一度使用した計測用マーカー10を他のゴルフクラブヘッド30に貼付して使用できるようにすれば経済的である。
【0014】
基材1002は、ゴルフクラブヘッド30への貼付部分、例えばクラウン部の形状に追従できるよう可撓性を有する素材で形成するのが好ましい。
なお、接着層1004と基材1002、または接着層1004と基材1002と後述する凸状部1006は同一の素材(例えば、アクリル樹脂で形成したジェルシールなど)であってもよい。
【0015】
凸状部1006は、特徴点12A〜12を形成する。凸状部1006は、基材1002の接着層1004が形成された面と反対側の面(非貼り付け面)から上方に凸状に形成されている。特徴点12A〜12Cを凸状に形成することによって、後述する挙動計測時に撮影画像に写りやすくすることができる。
【0016】
反射層1007は、凸状部1006の表面に形成される。反射層1007は、例えば再帰反射性を有する素材で形成されている。上記再帰反射性を有する素材とは、例えば露出型ガラスビーズである。
特徴点に再帰反射性を有する素材を用いることで、後述する挙動計測時にカメラと同方向から投光した光がカメラ側に反射しやすくなる。このため、カメラで撮影した際に特徴点の輝度が高くなり、画像内の特徴点の位置を識別しやすくすることができる。
また、再帰反射性を有する素材には、マイクロビーズの他マイクロプリズムなどがあるが、凸状部1006に適用するにはマイクロプリズムよりもマイクロビーズの方が適している。また、マイクロビーズの使用方法として、凸状部1006にマイクロビーズを封入する封入型と、本実施の形態のように凸状部1006の表面にマイクロビーズを配置する露出型とがあるが、露出型の方が光の反射効率がよいため本実施の形態では露出型ガラスビーズを用いている。
なお、
図1Bのような形態は一例であり、マイクロプリズムや封入型マイクロビーズ、または他の素材を用いて特徴点に再帰反射性を持たせるようにしてもよいことは無論である。
【0017】
保護層1008は、透光性を有する素材で形成され、反射層1007の表面を覆っている。保護層1008により、凸状部1006表面に露出するマイクロビーズを保護することができ、計測用マーカー10の耐久性が向上する。
図1Bでは保護層1008が計測用マーカー10の非貼り付け面全体を覆っているが、少なくとも反射層1007が形成される凸状部1006(特徴点12A〜12C)の表面に形成されていればよい。
【0018】
つぎに、計測用マーカー10を用いたゴルフクラブヘッド30の挙動計測方法について説明する。
図3は、ゴルフクラブヘッド30の挙動計測方法の手順を示すフローチャートである。
まず、キャリブレーション工程(ステップS300)を行って、第1のゴルフクラブヘッド30の表面に計測用マーカー10を貼り付けて、第1のゴルフクラブヘッド30表面におけるそれぞれの特徴点の位置を検出し、特徴点位置データとして記録する。
つぎに、配布工程(ステップS302)を行い、特徴点位置データを他の情報端末に配布する。
つづいて、特徴点位置データが配布された他の情報端末を有する店舗等で撮影工程(ステップS304)を行い、第2のゴルフクラブヘッド30の表面に計測用マーカー10を貼り付けて、スイング等を行い、移動中(スイング中)の第2のゴルフクラブヘッド30の画像を連続的に撮影する。
そして、特徴点位置データを配布された情報端末において挙動算出工程(ステップS306)を行い、撮影工程で撮影した画像から特徴点を抽出し、特徴点の位置の時間変化および特徴点位置データに基づいて移動中の第2のゴルフクラブヘッド30の挙動を示す挙動データを算出する。
その後、挙動データを出力する出力工程(ステップS308)を行って、本フローチャートによる処理が終了する。
【0019】
なお、第1のゴルフクラブヘッド30と第2のゴルフクラブヘッド30とは、異なるゴルフクラブヘッド30を想定している。すなわち、第1のゴルフクラブヘッド30はキャリブレーション工程の実施者であるゴルフクラブヘッド30の生産メーカーや、ゴルフクラブ販売店舗やゴルフ練習場を複数運営する運営会社が所有するゴルフクラブヘッド30である。また、第2のゴルフクラブヘッド30は、生産メーカーからゴルフクラブヘッド30を購入したユーザが所有するゴルフクラブヘッド30、ゴルフクラブ販売店舗やゴルフ練習場が所有するゴルフクラブヘッド30などである。
なお、キャリブレーション工程の実施者が引き続きステップS304以降の工程を実施する場合は、第1のゴルフクラブヘッド30と第2のゴルフクラブヘッド30とが同一の場合もあり得る。
【0020】
第1のゴルフクラブヘッド30と第2のゴルフクラブヘッド30とは、例えば同じモデルの製品、すなわちその形状が同一もしくはその形状の違いが量産ライン上の製造誤差範囲であることが好ましい。この場合、計測用マーカー10の貼付位置を合わせれば、それぞれのゴルフクラブヘッド30上の特徴点の位置はほぼ一致する。
また、第1のゴルフクラブヘッド30と第2のゴルフクラブヘッド30とは、番手が同一である、またはウッド/アイアンの種別が同一であるようにしてもよい。この場合、それぞれのゴルフクラブヘッド30上の特徴点の正確な位置は特定できないものの、計測する挙動パラメータの種類によっては十分実用に耐えられる。
【0021】
<キャリブレーション工程>
まず、ステップS300のキャリブレーション工程について説明する。
キャリブレーション工程は、例えばゴルフクラブヘッド30を生産するメーカーや、ゴルフクラブ販売店舗やゴルフ練習場を複数運営する運営会社などによって実施する。
キャリブレーション工程は、ステップ1:第1のゴルフクラブヘッド30への計測用マーカー10の貼り付け、ステップ2:特徴点位置データの作成、の2ステップを含んでいる。
<ステップ1:第1のゴルフクラブヘッド30への計測用マーカー10の貼り付け>
第1のゴルフクラブヘッド30への計測用マーカー10の貼り付けは、ゴルフクラブヘッド30の所定の位置を基準位置として行う。
図2は、ゴルフクラブヘッド30の構成を示す説明図である。
ゴルフクラブヘッド30は、フェース面(フェース部)3002と、クラウン部3004と、ソール部3006と、サイド部3008とを備え、ゴルフクラブヘッド30本体は、それらフェース面3002、クラウン部3004、ソール部3006、サイド部3008によって構成された中空部を有する中空構造を呈している。
フェース面3002は、フェース面を形成しており、上下の高さを有して左右に延在している。
ソール部3006は、フェース面3002の下部に接続され後方に延在している。
クラウン部3004は、フェース面3002の上部とソール部3006の後部とを接続している。
サイド部3008は、クラウン部3004およびソール部3006を接続している。
なお、図中符号3010はトウ、3012はヒール、Sはシャフトを示す。シャフトSは、クラウン部3004のヒール3012寄りの部分とサイド部3008のヒール3012寄りの部分とに接合部付近に、ホーゼル部3014を介して接続されている。
【0022】
基準位置とは、例えば、ゴルフクラブヘッド30のフェース面上端ライン3002A、フェース面3002の中心位置、フェース面3002の幅方向中央位置、フェース面3002に設けられたスコアラインLの少なくともいずれか1つとする。
そして、計測用マーカー10の所定箇所が基準位置に一致する、または所定箇所が基準位置から所定距離となるように計測用マーカー10をゴルフクラブヘッド30に貼付する。
例えば
図1Cは、計測用マーカー10の所定箇所を第2直線部102と接続してない側の第1直線部101の端部101Aとし、ゴルフクラブヘッド30側の基準位置をフェース面上端ライン3002Aとして、端部101Aがフェース面上端ライン3002Aから所定距離Dの位置となるように貼付している。なお、端部101Aがフェース面上端ライン3002Aと一致するように貼付してもよい。
また、
図2のように、フェース面3002)中心位置付近に逆正三角形等のセンターマークMが付されている場合には、フェース面3002の中心位置が特定しやすくなる。
また、センターマークMが付されていない場合でも、目視でフェース面3002の幅Wの中央位置を目標としてもよい。
このような位置合わせをし易くするように、計測用マーカー10の第1直線部101の中点を示す位置合わせマーク1012(
図1A参照)を設けてもよい。
【0023】
<ステップ2:特徴点位置データの作成>
第1のゴルフクラブヘッド30への計測用マーカー10の貼り付け後、
図4に示すようなゴルフクラブ保持装置40でゴルフクラブ31を保持する。
図4Aはゴルフクラブ保持装置40の全体図、
図4Bはゴルフクラブヘッド30と位置決め板4008周辺のA矢視図、
図4Cはゴルフクラブヘッド30と位置決め板4008周辺のB矢視図である。
ゴルフクラブ保持装置40は、ゴルフクラブ31に対して設定されたライ角およびロフト角通りとなるようにゴルフクラブ31を保持するものである。
ゴルフクラブ保持装置40は、
図4A等に示すように、ベース4002と、フレーム4004と、支持部4006と、位置決め板4008とを含んで構成されている。
ベース4002は、床面(水平面)Gに載置されるものである。
フレーム4004は、ベース4002から立設されている。
支持部4006は、フレーム4004に設けられゴルフクラブ31のシャフトSを着脱可能に、かつ、ゴルフクラブ31の位置と向きとを調整可能に支持するものである。このような支持部4006として従来公知のさまざまな構造が使用可能である。
【0024】
ベース4002からは、さらに2本の位置決め柱4012が立設されている。位置決め柱4012の頂部は例えば再帰反射性を有する塗装がなされており、画像を撮影した際に他の部分と識別可能となっている。この位置決め柱4012の頭頂部は、キャリブレーション用特徴点P1,P2として機能する。
位置決め板4008は、矩形板状を呈し、水平面上を延在するようにベース4002上に移動台4010を介して取着されている。移動台4010は、2本の位置決め柱4012の延在方向と直交方向に移動可能である。
位置決め板4008は、その1辺に断面が鋭角をなすエッジ部4008Aが水平面と平行をなすように直線状に延在形成されている。
位置決め板4008は、その上面にエッジ部4008Aの延在方向の中心を示す基準マーカー4008Bが付されている。また、位置決め板4008の上面のうち、エッジ部4008Aの対辺側の中央には、再帰反射性を有する塗装によってキャリブレーション用特徴点P3が付されている。
【0025】
ゴルフクラブ31は、フェース面3002の中心点をエッジ部4008Aが通るようにフェース面3002がエッジ部4008Aに当て付けられた状態で、設定されたライ角およびロフト角通りとなるように支持部4006によって支持される。
ゴルフクラブ31をゴルフクラブ保持装置40に設置する際は、まず位置決め板4008を位置決め柱4012から離れた方向に移動させておき、2本の位置決め柱4012にゴルフクラブヘッド30のサイド部3008のうちフェース面3002と反対側の面が接するように配置する。その後、位置決め板4008を位置決め柱4012方向に移動させて、フェース面3002の中心点をエッジ部4008Aが通るようにフェース面3002にエッジ部4008Aを当て付ける。
本実施の形態では、ゴルフクラブ31が設定されたライ角およびロフト角通りになっているとは、フェース面3002の法線と打ち出し方向とが平行をなしている状態であり、かつ、鉛直線に対してシャフト軸がなす角度が正しいライ角となっている状態をいう。
【0026】
ゴルフクラブヘッド30のフェース面3002にスコアラインLが形成されている場合、設定されたライ角通りにゴルフクラブ31が支持部4006によって支持されると、スコアラインLまたはその延長線とエッジ部4008Aとが平行をなす。
したがって、スコアラインLとエッジ部4008Aとが平行となるように支持部4006を調整することによってゴルフクラブ31を設定されたライ角通りに支持することができる。
また、一部のパタークラブのように、フェース面3002にスコアラインLが形成されていない場合は、フェース面3002の左右幅方向に延在する仮想線とエッジ部4008Aとが平行となるように支持部4006を調整することによってゴルフクラブ31を設定されたライ角通りに支持することができる。
【0027】
このように設置したゴルフクラブヘッド30を、例えば
図4Aの矢印A方向からカメラ42で撮影する。画像内には、計測用マーカー10の特徴点12A〜12Cおよびキャリブレーション用特徴点P1〜P3が入るようにする。
カメラ42で撮影した画像の画像データは、パーソナルコンピュータ44に入力される。
【0028】
図5は、パーソナルコンピュータ44の構成を示すブロック図である。
パーソナルコンピュータ44は、CPU4430と、不図示のインターフェース回路およびバスラインを介して接続されたROM4432、RAM4434、ハードディスク装置4436、ディスク装置4438、キーボード4440、マウス4442、ディスプレイ4444、プリンタ4446、入出力インターフェース4448などを有している。
ROM4432は制御プログラムなどを格納し、RAM4434はワーキングエリアを提供するものである。
ハードディスク装置4436は特徴点位置データの算出を行うための専用のプログラムや各種データを格納している。
ディスク装置4438はCDやDVDなどの記録媒体に対してデータの記録および/または再生を行うものである。
キーボード4440およびマウス4442は、操作者による操作入力を受け付けるものである。
ディスプレイ4444はデータを表示出力するものであり、プリンタ4446はデータを印刷出力するものであり、ディスプレイ4444およびプリンタ4446によってデータを出力する。
入出力インターフェース4448は、カメラ42や他の情報端末との間でデータの授受を行うものである。
【0029】
図6に示すように、パーソナルコンピュータ44は、CPUがプログラムを実行することにより位置データ算出部4400として機能する。また、パーソナルコンピュータ44は、3次元座標系においてゴルフクラブヘッド30を再現した3次元形状データ4402、およびゴルフクラブ保持装置40におけるキャリブレーション用特徴点P1〜P3の位置関係を示す保持装置形状データ4404を記憶している。
位置データ算出部4400は、カメラ42で撮影された画像データ4202からキャリブレーション用特徴点P1〜P3を抽出することにより、カメラ42の撮影方向や撮影倍率等を算出する。
ゴルフクラブ保持装置40に対するゴルフクラブ31の設置状態は既知であるため、位置データ算出部4400は、カメラ42の撮影方向や撮影倍率等から、画像データ4202に写るゴルフクラブヘッド30の領域を特定することができる。
この領域の3次元形状データ4402と、画像上の特徴点12A〜12Cの位置とから、ゴルフクラブヘッド30の3次元形状データ上の特徴点12A〜12Cの位置情報、すなわち特徴点位置データを特定することができる。
【0030】
なお、本実施の形態では、特徴点12A〜12Cは円形形状である。このため、特徴点12A〜12Cの位置(代表位置)とは、その円形形状の中心点とする。
特徴点12A〜12Cの形状は任意であり、例えば、正三角形、または正方形などの正多角形等とすることができる。この場合、特徴点12A〜12Cの代表位置は、例えば特徴点12A〜12Cの中心点(重心点)とする。
また、各特徴点の形状は同一にする必要は無く、前述の形状のものを自在に組み合せることもできる。
【0031】
<配布工程>
つぎに、ステップS302の配布工程について説明する。
配布工程では、前工程で算出した特徴点位置データを、ゴルフクラブ販売店舗やゴルフ練習場、ゴルフクラブヘッド30を購入したユーザ等(以下、「被配布者」という)に配布する。
配布の方法は、ネットワークを介して被配布者(被配布者の所有する情報端末)が特徴点位置データをダウンロードしたり、被配布者宛のメール等に特徴点位置データを添付して送付したり、特徴点位置データを記録した記録媒体を被配布者宛に郵送するなど、従来公知の様々な方法を適用することができる。
配布された特徴点位置データは、ステップS306の挙動算出工程を実施する情報端末(本実施の形態ではパーソナルコンピュータ56)に記録される。
なお、特徴点位置データとともに、ゴルフクラブヘッド30への計測用マーカー10の貼り付け方法、具体的には、ゴルフクラブヘッド30の基準位置をどこにするか、基準位置から貼付位置までの距離などの情報を被配布者に配布するのが好ましい。
【0032】
<撮影工程>
つぎに、ステップS304の撮影工程について説明する。
撮影工程以降の処理は、特徴点位置データの配布を受けた被配布者側の設備で実施する。
撮影工程は、ステップ1:第2のゴルフクラブヘッド30への計測用マーカー10の貼り付け、ステップ2:スイング中の第2のゴルフクラブヘッド30の撮影、の2ステップを含んでいる。
<ステップ1:第2のゴルフクラブヘッド30への計測用マーカー10の貼り付け>
第2のゴルフクラブヘッド30への計測用マーカー10の貼り付けは、特徴点位置データとともに配布された、ゴルフクラブヘッド30への計測用マーカー10の貼り付け方法の情報に沿って行う。
すなわち、計測用マーカー10の所定箇所が第2のゴルフクラブヘッド30の基準位置に一致する、または所定箇所が基準位置から所定距離となるように計測用マーカー10を第2のゴルフクラブヘッド30に貼付する。
第1のゴルフクラブヘッド30と第2のゴルフクラブヘッド30とが同じモデルの製品である場合、このような貼付方法を採れば、第2のゴルフクラブヘッド30上の特徴点P1〜P3の位置は、特徴点位置データで特定される位置にほぼ一致する。
また、第1のゴルフクラブヘッド30と第2のゴルフクラブヘッド30との番手が同一である場合、形状の微妙な違いはあるものの、例えば計測用マーカー10を貼付するクラウン部3004の面積が極端に異なることはなく、例えば計測用マーカー10がクラウン部3004からはみ出してしまうよう可能性は低い。第1のゴルフクラブヘッド30と第2のゴルフクラブヘッド30とがウッド/アイアンの種別が同一である場合も同様である。
【0033】
<ステップ2:スイング中の第2のゴルフクラブヘッド30の撮影>
図7は、挙動計測を実施する被配布者側の設備を示す説明図である。
被配布者側の設備50には、照射撮影部52と、制御部54と、パーソナルコンピュータ56とを含んで構成されている。
照射撮影部52は、異なる2方向からステレオ撮影によりゴルフクラブヘッド30を撮影するものである。
制御部54は、照射撮影部52を制御し、照射撮影部52で生成された画像データをパーソナルコンピュータ56に供給するものである。
ステップ2のスイング中の第2のゴルフクラブヘッド30の撮影は、主に照射撮影部52および制御部54が実施する。
パーソナルコンピュータ56は、照射撮影部52で撮影された画像のデータを取り込み信号処理、画像処理および動作解析を行うとともに、スウィング中のゴルフクラブヘッド30の挙動を示す挙動パラメータを算出するものである。
なお、
図7において符号Pは計測者(ゴルファ)を示す。
【0034】
図8は、照射撮影部52の構成を示す説明図であり、
図8Aは照射撮影部52の斜視図、
図8Bは照射撮影部52の平面図である。
照射撮影部52は、照射光源5222と、ハーフミラー5224と、カメラ5226と、反射ミラー5228と、ベース5230とを含んで構成され、これら照射光源5222、ハーフミラー5224、カメラ5226、反射ミラー5228は、ベース5230上に設けられている。
照射光源5222は、計測対象としてのゴルフクラブヘッド30を照射するものである。
本実施の形態では、照射光源5222はハロゲン光源で構成され、時間的に連続した連続光を照射する。
照射光源5222は、ハーフミラー5224を介してゴルフクラブヘッド30の特徴点12A〜12Cに光を照射するように配されている。
ハーフミラー5224は、光の透過率と反射率とがほぼ等しいミラーであり、ハーフミラー5224の反射面(境界面)に入射した光の半分を透過させ残り半分の光を反射させるものである。
ハーフミラー5224は、平面視した場合に、その反射面に対して照射光源5222から照射される光の光路が略45度の入射角を形成するように設けられている。
カメラ5226は、撮影レンズと、該撮影レンズで導かれた被写体像を撮像する撮像素子と、撮像素子で生成された撮像信号に基づいて画像信号を生成する信号処理部などを含んで構成されている。
カメラ5226は、平面視した場合に、前記撮影レンズの光軸が照射光源5222の光路とハーフミラー5224の反射面とが交差する箇所を通り、かつ、前記撮影レンズの光軸が、照射光源5222の光の光路と略90度の角度を形成するように設けられている。
反射ミラー5228は、光を全反射する全反射面を有し、全反射面の反射方向(角度)および位置等の調整機能を有している。
反射ミラー5228は、照射光源5222から照射されハーフミラー5224で反射された光を全反射面で反射してゴルフクラブヘッド30の特徴点12A〜12Cに照射し、かつ、特徴点12A〜12Cからの反射光を再び全反射面で反射しハーフミラー5224を介してカメラ5226に導くように全反射面の反射方向及び位置が調整されている。
【0035】
ここで、
図8Bに示すように、照射撮影部52は、照射光源5222がハーフミラー5224の反射面に向け、連続光を照射する。
ハーフミラー5224の反射面に照射された光の半分は、反射面上の位置Shmを透過する透過光として計測対象であるゴルフクラブヘッドに設けられた特徴点12A〜12Cに照射される照射光となる。
この特徴点12A〜12Cからの反射光(以降、マーカー反射光RL1とする)は、ハーフミラー5224の反射面に向かう。
ここで、マーカー反射光RL1は照射光源5222からの照射光と逆向きに進み、かつ、マーカー反射光RL1は照射光源5222からの照射光と光路が一致した反射光である。したがって、ハーフミラー5224の反射面を透過して特徴点12A〜12Cへ照射される光がハーフミラー5224の反射面と成す出射角度と、マーカー反射光RL1がハーフミラー5224の反射面へ入射する入射角度とは略一致する。
こうして、マーカー反射光RL1は、ハーフミラー5224の反射面で反射されてカメラ5226の撮影レンズに導かれる。
【0036】
一方、
図8Bに示すように、ハーフミラー5224の反射面に照射された光の残り半分は、ハーフミラー5224の反射面で反射され反射ミラー5228の全反射面に入射する。
ここで、全反射された光は、計測対象であるゴルフクラブヘッド30に設けられた特徴点12A〜12Cに照射光として照射される。
この照射光の特徴点12A〜12Cからの反射光(以降、マーカー反射光RL2とする)は、反射ミラー5228から全反射されて特徴点12A〜12Cに照射する照射光の光路と重なり、反射ミラー5228の全反射面に向かう。
そして、反射ミラー5228の全反射面において、マーカー反射光RL2はハーフミラー5224方向へ向けて反射される。
ここで、ハーフミラー5224の反射面で反射され反射ミラー5228に向かう光がハーフミラー5224の反射面となす反射角度(照射角)と、マーカー反射光RL2がハーフミラー5224の反射面へ入射する入射角度は略同一である。
さらに、ハーフミラー5224を透過したマーカー反射光RL2はハーフミラー5224で反射されたマーカー反射光RL1とともにカメラ5226の撮影レンズに入射する。
したがって、異なる2方向から照射した照射光の光路と略一致した特徴点12A〜12Cからの2つの反射光による特徴点12A〜12Cの像がカメラ5226で撮影される。
本発明では、2方向以上の方向からゴルフクラブヘッド30を撮影すればよく、例えば、周知のモションキャプチャーシステムを用い、3台以上のカメラでゴルフクラブヘッド30の像を、異なる方向からそれぞれ撮影することもできる。
【0037】
また、1台のカメラ5226で複数方向から見たゴルフクラブヘッド30の像を撮影するようにしてもよい。
この場合、カメラ5226によって撮影されるマーカー反射光RL2による像とマーカー反射光RL1による像とが重ならないように、反射ミラー5228の位置および向きを予め微調整しておく。
具体的に説明すると、予め、カメラ5226によって撮影される1枚の画像を上下方向に2分割して上領域と下領域との2つの領域として設定しておく。
そして、マーカー反射光RL1による像が前記の画像の上領域で撮影され、マーカー反射光RL2による像が前記の画像の下領域で撮影されるように、反射ミラー5228の位置および向きが予め微調整しておく。
このようにして、1つのカメラ5226でマーカー反射光RL1による特徴点12A〜12Cの像と、マーカー反射光RL2による特徴点12A〜12Cの像とを撮影することによって、ゴルフクラブヘッド30の特徴点12A〜12Cの像をステレオ画像として撮影する。
そして、ゴルフクラブヘッド30がスウィングにより移動している状態で、カメラ5226が多重露光により例えば1/2000秒間隔で特徴点12A〜12Cの像を撮影する。
これにより、多数の特徴点12A〜12Cのステレオ画像が1枚の画像としてカメラ5226によって生成される。
【0038】
なお、ハーフミラー5224の代わりに反射面において双方向に入射した光を反射および透過させる光学部材であれば、例えば、ハーフプリズムや各種ビームスプリッター等を用いることができる。ここで、反射面における反射率の比は特に限定されないが、略1対1とすることが好ましい。
【0039】
また、反射ミラーを以下の様に用いて構成することもできる。
図9は、照射撮影部52が構成する光路に反射ミラー5228の他に反射ミラー5228A、5228Bを配してマーカー反射光RL1およびRL2の光路長を揃えた例を示す図である。
反射ミラー5228A,5228Bをマーカー反射光RL1の光路に設けることにより、マーカー反射光RL1が特徴点12A〜12Cからハーフミラー5224に至る光路を長くして、マーカー反射光RL2の光路の長さに揃えることができる。
つまり、
図9に示す構成を備えることで、マーカー反射光RL1の光路長が
図8に示すものより長くなり、マーカー反射光RL1、RL2のカメラ5226までの光路長を略揃えることができる。
このように光路長を近づけることにより、カメラ5226は、マーカー反射光RL1、RL2による各特徴点の像のピントを合わせて撮影することができる。
【0040】
この場合においても、2つの異なる方向から照射する光がハーフミラー5224の反射面から出射するときのそれぞれの出射角度は、特徴点12A〜12Cから反射した2つの反射光(マーカー反射光RL1、RL2)がハーフミラー5224の反射面に入射するときの対応する反射光の入射角度と略一致する。したがって、ゴルフクラブヘッド30に設けられた特徴点12A〜12Cの2つの反射光の像をそれぞれ高いコントラストで撮影できる。
【0041】
なお、上述したハーフミラーを用いた方法の他、例えばカメラ5226(レンズ)と照明光源5222とを隣接して設置する方法で撮影するようにしてもよい。この場合、例えば複数の照明光源5222をカメラ5226の撮影レンズの周囲に設けたリング照明などを用いることができる。
この方法によれば、照射撮影部52の構成を単純化できるため、コスト的に有利となる。
【0042】
図7の説明に戻り、制御部54は、
図7に示すように、検出器5402と、バッファメモリ5404とを含んで構成されている。
検出器5402は、
図8Bに示すように、ゴルフクラブヘッド30の移動軌跡のうち、カメラ5226の撮影範囲よりも手前側の位置でゴルフクラブヘッド30が通過したか否かを検出する検出するものである。
検出器5402は、例えば、検出光が物体で反射された反射光を検出することにより物体の有無を検出する光反射型検出器など従来公知のさまざまな検出器を使用することができる。
バッファメモリ5404は、カメラ5226から供給される前記の画像データを一時的に格納する記憶装置である。
制御部54は、検出器5402によってゴルフクラブヘッド30の通過を検出すると、撮影動作を開始する制御指令をカメラ5226に与えると共に、ゴルフクラブヘッド30がカメラ5226の撮影範囲から外れた時点で撮影動作を終了する制御指令をカメラ5226に与える。
そして、制御部54は、カメラ5226から供給される画像データをバッファメモリ5404に一時的に格納したのち、該画像データをパーソナルコンピュータ56に供給する。
【0043】
<挙動算出工程>
つぎに、ステップS306の挙動算出工程について説明する。
挙動算出工程では、撮影工程で撮影した画像から特徴点を抽出し、特徴点の位置の時間変化および特徴点位置データに基づいて移動中の第2のゴルフクラブヘッド30の挙動を示す挙動データを算出する。
挙動算出工程は、パーソナルコンピュータ56(
図7参照)で実施する。パーソナルコンピュータ56のハードウェア構成は、
図5に示すパーソナルコンピュータ44のハードウェア構成と同一であるので、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0044】
図16は、パーソナルコンピュータ56の機能的構成を示すブロック図である。
パーソナルコンピュータ56は、機能的には、信号処理部5652、画像処理部5654、解析部5656、出力部5662、記憶部5664などを含んで構成されている。
これら信号処理部5652、画像処理部5654、解析部5656、出力部5662は、CPU4430が前記専用のプログラムを実行することで実現されるものであるが、これらの部分は、回路等のハードウェアで構成されたものであってもよい。
記憶部5664は、例えば、ハードディスク装置4438あるいはRAM4436によって構成され、ゴルフクラブヘッド30の3次元形状モデルのデータ(CADデータ)D1と、配布工程で配布された特徴点位置データD2とを含む情報が予め格納されている。
【0045】
信号処理部5652は、画像内の各特徴点12A〜12Cの像から、それぞれの特徴点12A〜12Cの代表位置がそれぞれ抽出できるように、例えば、各特徴点12A〜12Cの部分のデータ値のみがそれ以外の部分のデータ値と区別されるように、所定の処理条件で画像データの明度補正、コントラスト補正を行い、さらに、所定の階調数の階調処理を行う部分である。
【0046】
画像処理部5654は、ゴルフスイング中のゴルフクラブヘッド30の画像データから各特徴点12A〜12Cの代表位置の位置を特定し、この特定した位置を用いてゴルフクラブヘッド30の挙動を算出する部分である。
画像処理部5654は、各特徴点12A〜12Cの代表位置を特定して3次元座標系における位置を抽出する抽出部5654Aと、抽出された各特徴点12A〜12Cの代表位置の3次元座標位置を用いて、ゴルフクラブヘッド30の位置と向きの時系列データを算出する算出部5654Bとを有する。
【0047】
抽出部5654Aは、所定の階調数の階調処理がされた画像の中から各特徴点12A〜12Cの像の部分を識別してその位置を抽出する。
照射撮影部52で撮影された、同時刻における異なる方向から撮影された各特徴点12A〜12Cの像について、それぞれの代表位置の位置座標を求め、この求められた各位置座標を用いてゴルフクラブヘッド30が通過する空間を定めた3次元座標系における位置座標を求め、各代表位置の3次元座標系における位置を抽出するように構成される。
照射撮像部52の撮影方向が既知となっているので、これらの照射撮影部52によって撮影される画像における2次元位置座標の情報を求めることで、ゴルフクラブヘッド30が通過する空間を表した所定の3次元座標系における位置(3次元位置座標)を求めることができる。
【0048】
各特徴点12A〜12Cの像が、所定の時間間隔、例えば、2000分の1秒の時間間隔で撮影される場合、2000分の1秒毎の各特徴点12A〜12Cの像の各代表位置の3次元位置座標の時系列データを求めることができる。
本実施の形態においては、照射撮影部52を用いて、2方向から撮影しており、各方向から得られた各特徴点12A〜12Cの像について各代表位置の3次元位置座標が求められる。
【0049】
算出部5654Bは、抽出部5654Aで求められた3次元位置座標からゴルフクラブモデルの位置および向きを時系列データとして算出する部分である。
具体的には、記憶部5664には、3次元座標系において、ゴルフクラブヘッド30の3次元形状モデルのデータ(CADデータ)D1と、上記特徴点12A〜12Cの代表位置の配置位置に対応する、3次元形状モデル上の位置を示す特徴点位置データD2とが記憶されている。
言い換えると、3次元形状モデルのデータ(CADデータ)D1はゴルフクラブヘッド30を再現した3次元形状モデルを構成し、特徴点位置データD2は3つ以上の特徴点に対応する前記3次元形状モデル上の対応点の位置を示す。
算出部5654Bは、このデータD1およびD2を呼び出し、3次元形状モデル上の対応点の、上記3次元座標系における位置座標が、抽出部5654Aで抽出された特徴点の3次元位置座標と一致するように、3次元形状モデルの位置および向きを算出し、この位置と向きをゴルフクラブヘッド30の位置および向きとして、ゴルフクラブヘッド30の位置および向きの時系列データを算出するように構成される。
【0050】
図17Aは、特徴点12A〜12Cの3次元位置座標から定まる、2000分の1秒の時間間隔の移動時間履歴を示す模式図であり、
図17Bは、
図17Aに示す移動時間履歴に基づく、ゴルフクラブヘッド30の挙動を示す模式図である。
図中符号Bはゴルフボールを示し、矢印aはゴルフクラブヘッドの移動方向(ゴルフボールBの打ち出し方向)を示す。なお、
図17Bはゴルフクラブヘッド30を上方から見た状態を示す。
図17A中、所定の位置を原点として、ゴルフボールBの打ち出し方向と平行する軸をX軸、X軸に直交し水平面(地面)に平行な軸をY軸、水平面に鉛直な軸をZ軸としたXYZ座標系を予め設定しておく。
図17A中、3つの特徴点12A〜12Cを表す3つのプロット群M1、M2〜M10は、2000分の1秒の時間間隔で撮影された特徴点12A〜12Cから抽出される3つの代表位置13A〜13Cの位置を示す。
さらには、3つの特徴点12A〜12Cを表す3つの各プロット群M1、M2〜M10にゴルフクラブヘッド30を対応させて、
図17Bに示すように、ゴルフクラブヘッド30の移動を連続的に表示することにより、ゴルフクラブヘッド30の位置およびフェースの向きの変化を知ることができる。
なお、ゴルフクラブヘッド30の位置は、フェース面3002の中心位置の位置座標を、ゴルフクラブヘッド30の代表位置として表す。
また、ゴルフクラブヘッド30のフェースの向きは、フェース面3002の中心点を通る法線で表すものとする。
【0051】
解析部5656は、算出されたゴルフクラブヘッド30の位置と向きの時系列データ、すなわち、特徴点12A〜12Cの時系列データを用いて、ゴルフボールBを打撃する直前のゴルフクラブヘッド30の挙動データを求めるものである。
まず、解析部5656で算出する挙動データの内容について説明する。
本実施の形態では、以下のデータを含む挙動データを算出する。
【0052】
<1>ゴルフクラブヘッド30の移動軌跡を示す時系列データとしての移動軌跡データ:
移動軌跡データは、フェース面3002の中心点Cの移動軌跡によって示され(
図10A、
図10B)、あるいは、ゴルフクラブヘッド30の外形を示すアニメーションデータによって示される。
移動軌跡データは、算出部5654Bで算出したフェース面3002の中心位置の位置座標の時間変化をそのまま用いることができる。
【0053】
<2>左右進入角θ
LR:
左右進入角θ
LRは、
図11に示すように、フェース面3002の中心点Cの移動軌跡Tと目標線Jとを水平面に投影したときに、水平面上において移動軌跡Tと目標線Jとがなす角度をいう。
なお、目標線Jは、ゴルフボールBの中心と目標とを結ぶ線分である。また、図中、矢印Fはゴルフクラブヘッド30の移動方向を示す。
より詳細に左右進入角θ
LRの算出方法について説明する。
ゴルフボールBの打撃直後、ゴルフクラブヘッド30の移動速度は低下するので、一定時間間隔のフェース面3002の中心点Cの移動を表す位置座標の時系列データにおいて、打撃直前の位置座標と打撃直後の位置座標との移動距離はそれ以前の各時点での移動距離に比べて急激に短くなる。
このことを利用して、ゴルフクラブヘッド30の位置座標を示す時系列データから、ゴルフボールBの打撃直前のゴルフクラブヘッド30の位置座標(中心点C)と、時系列データにおいて1つ前の位置座標とを特定することができる。
そして、この2つの位置座標を結ぶ直線をゴルフクラブヘッド30の移動軌跡Tとし、目標線Jとがなす角度を左右進入角θ
LRとすることができる。
【0054】
ゴルフクラブヘッド30のヘッドスピードは通常30〜50m/秒であるため、カメラ5226による撮影間隔である2000分の1秒の時間間隔δで、ゴルフクラブヘッド30は、15mm〜25mm移動する。
したがって、ゴルフボールBの中心からX軸方向に沿ってゴルフボールBの打ち出し方向と反対方向で50mm手前の範囲において2つの時系列データ(位置座標データ)が特定される。
そのため、本実施の形態では、ゴルフボールBの中心から手前50mmの範囲における時系列データに基づいて左右進入角θ
LR等の各種挙動パラメータが求められることになる。
なお、カメラ5226による撮影間隔は1/2000秒に限定されるものではなく、得られた時系列データに基づいて挙動データを求めることができればよいのであり、例えば、撮影間隔を1/10000秒〜1/500秒の間で設定するなど任意である。
【0055】
<3>上下進入角θ
UD:
上下進入角θ
UDとは、
図12に示すように、フェース面3002の中心点Cの移動軌跡Tと目標線Jとを目標線Jと平行する鉛直面に投影したときに、鉛直面上において移動軌跡Tと目標線Jとがなす角度をいう。
上下進入角θ
UDの算出方法は、左右進入角θ
LRとほぼ同様である。すなわち、ゴルフボールBの打撃前後のゴルフクラブヘッド30の位置座標を結ぶ鉛直面上の直線をゴルフクラブヘッド30の移動軌跡Tとし、目標線Jとがなす角度を上下進入角θ
UDとすることができる。
【0056】
<4>フェース面3002がゴルフボールBを打撃する直前におけるゴルフクラブヘッド30の向きを示す向きデータDf:
本実施の形態では、向きデータDfは、打撃時フェース角φと、打撃時ロフト角αと、打撃時ライ角βを含む。
以下、
図13,
図14,
図15を参照して説明する。
<4−1>打撃時フェース角φは、
図13に示すように、フェース面3002がゴルフボールBを打撃する直前におけるフェース面3002の中心点Cを通る法線Hと目標線Jとを水平面に投影したときに、水平面上において法線Hと目標線Jとがなす角度によって示される。
すなわち、ゴルフクラブヘッド30の向きを示す法線を示す時系列データから、ゴルフボールBを打撃する直前におけるゴルフクラブヘッド30のフェース面3002の法線を特定し、打撃時フェース角φを算出することができる。
<4−2>打撃時ロフト角αは、
図14に示すように、フェース面3002がゴルフボールBを打撃する直前におけるフェース面3002の中心点Cを通る法線Hと該法線Hと交差する水平面(床面G)と平行な平面とがなす角度によって示される。
すなわち、ゴルフボールBの打撃直前のゴルフクラブヘッド30の位置データを特定し、この位置データに含まれるフェース面3002の向きから打撃時ロフト角αを算出することができる。
<4−3>打撃時ライ角βは、
図15に示すように、フェース面3002がゴルフボールBを打撃する直前におけるシャフトSの延長線と、この延長線が交差する水平面(本例では床面G)とがなす角度によって示される。
すなわち、ゴルフボールBの打撃直前のゴルフクラブヘッド30の位置データを特定し、この位置データとゴルフクラブヘッド30の3次元形状モデルのデータD1を用いて打撃時ライ角βを算出することができる。
<5>フェース面3002がゴルフボールBに当たる箇所を示す打点位置データ:
打点位置データは、打撃時のゴルフボールBの中心位置がフェース面3002のどの位置にあるかを示すデータである。
打点位置のデータは、ゴルフボールBの打撃直前のゴルフクラブヘッド30の位置データ、ゴルフクラブヘッド30の3次元形状モデルのデータD1、およびゴルフボールBの直径のデータを用いて算出することができる。
なお、打点位置のうち左右方向の位置に関しては、計測用マーカー10の幅方向の中心位置とフェース面3002のセンター(幅方向中心位置)を一致させて貼り付けることで、上述した位置データ等がない場合でも一定の精度で取得可能である。
【0057】
<出力工程>
つぎに、ステップS308の出力工程について説明する。
出力工程は、パーソナルコンピュータ56の出力部5662(
図16参照)で実施する。
パーソナルコンピュータ56は、挙動算出工程で算出した挙動データを計測者等が視認可能な形で出力する。具体的には、例えばディスプレイ4444への表示、プリンタ4446での印刷出力、入出力インターフェース4448を介した他の情報端末への送信等である。
【0058】
<アイアンタイプのゴルフクラブの場合>
上述した実施の形態では、ゴルフクラブヘッド30がウッドタイプの場合を示したが、本発明の適用は、アイアンタイプのゴルフクラブヘッド32にも適用可能である。
この場合、例えば
図19Aに示すように、そのフェース面(打撃面)3202と接するゴルフクラブヘッド32の上端面3204およびホーゼル部3206に特徴点12A〜12Cが位置するように計測用マーカー10Bを形成する。
また、例えば
図19BBに示すように、計測用マーカー10と同型の計測用マーカー10Cを、硬度の高い基材1002で形成し、特徴点12A、12Bを含む第1直線部101のみをゴルフクラブヘッド32の上端面3204に貼り付け、第2直線部102はフェース面3202と反対側に突出させるようにしてもよい。この場合、基材1002は、スイング時の空気抵抗によってたわまない程度の硬度にする。
また、例えば
図19Cに示すように、1つまたは2つの特徴点(
図19Cでは2つの特徴点12A、12B)をゴルフクラブヘッド32の上端面3204に、残りの特徴点(
図19Cでは特徴点12C)をフェース面3202のうち、ゴルフボールBが当たる可能性が低い領域(
図19Cでは上端面3204近傍のフェース面3202の箇所)となるように計測用マーカー10Dを形成するようにしてもよい。
【0059】
<第1のゴルフクラブヘッド30と第2のゴルフクラブヘッド30との関係について>
挙動算出工程では、ゴルフクラブヘッド30の3次元形状モデルデータD1と、特徴点位置データD2とを用いて各種の挙動データを算出する。よって、第1のゴルフクラブヘッド30と第2のゴルフクラブヘッド30とが同じモデルの製品である場合、すなわち形状が同一である場合には、全ての挙動データを算出することができる。
一方で、第1のゴルフクラブヘッド30と第2のゴルフクラブヘッド30の形状が異なる場合であっても、例えば第1のゴルフクラブヘッド30と第2のゴルフクラブヘッド30との番手が同一である場合や、ウッド/アイアンの種別が同一である場合などには、実際の特徴点12A〜12Cの位置と特徴点位置データD2との差分は大きくないため、一定の精度で挙動データを算出することができる。
例えば、ゴルフクラブヘッド30の移動軌跡データは、ゴルフクラブヘッド30の3次元形状モデルデータD1や特徴点位置データD2を用いずに、3つの特徴点12A〜12Cの中心位置の軌跡をプロットしてもほぼ同様の軌跡を描くことができる。
また、左右進入角θ
LRや上下進入角θ
UDは、打撃前後の移動軌跡データを特定できれば算出することができる。
また、打撃時フェース角φは、打撃時のフェース面3002の向きを特定する必要があるが、特徴点12Aと12Bとを結ぶ線分とフェース面3002の幅方向の向きはほぼ一致するため、ゴルフクラブヘッド30の移動軌跡データのみを用いて算出することができる。
なお、打撃時ロフト角α、打撃時ライ角β、打点位置データについては、ゴルフクラブヘッド30の3次元形状モデルデータD1と、正確な特徴点位置データD2が必要である。
【0060】
以上説明したように、実施の形態にかかる計測用マーカー10は、平面状の基材1002上に3点以上の特徴点12A〜12Cが非直線上に配置されるとともに、基材1002の移動体への貼り付け面に粘着素材(接着層1004)が配置されているので、1回の貼付作業で3点以上の特徴点12A〜12Cを同時に移動体に付加することができ、特徴点の付加作業を効率的に行う上で有利となる。
また、各特徴点12A〜12Cの位置関係は固定されているので、特徴点同士の位置合わせを精度よく行う上で有利となる。
特に、ゴルフクラブヘッド30の形状は他の打撃具と比較して複雑であるため、狙い通りに特徴点を付加するのが困難な場合があるが、本発明により、容易に複数の特徴点を付加することが可能となる。
また、計測用マーカー10は、特徴点12A〜12Cが凸状に形成されているので、特徴点12A〜12Cを平面状に形成した場合と比較して特徴点12A〜12Cを画像に写りやすくする上で有利となる。
また、計測用マーカー10は、特徴点12A〜12Cが再帰反射性を有する素材で形成されているので、撮影方向から投影した光を効率的に反射して、特徴点12A〜12Cを画像に写りやすくする上で有利となる。
また、計測用マーカー10は、再帰反射性を有する素材として露出型ガラスビーズを用いているので、より効率的に投影光を反射して特徴点の輝度を上げる上で有利となる。
また、計測用マーカー10は、露出型ガラスビーズの表面に透光性を有する保護層1008が設けられているので、露光型ガラスビーズが特徴点から剥離するのを防止して、計測用マーカー10の耐久性を向上させる上で有利となる。
また、計測用マーカー10は、粘着素材(接着層1004)が再剥離性能を有しているので、一度移動体に貼付した計測用マーカー10をはがすことができ、移動体の美観を維持する上で有利となる。また、一度移動体に貼付した計測用マーカー10を再度他の(または同じ)移動体に貼付することが可能となり、計測用マーカー10を使い捨てとする場合と比較して、コストを低減する上で有利となる。
また、計測用マーカー10は、3点の特徴点12A〜12Cが概ね二等辺三角形の頂点に対応する位置に配置されているので、計測用マーカー10を移動体に貼付する際に基準位置に合わせやすくする上で有利となる。
また、計測用マーカー10を用いた移動体の挙動計測方法は、第1の移動体(第1のゴルフクラブヘッド30)を用いて記録した特徴点位置データを用いて第2の移動体(第2のゴルフクラブヘッド30)の挙動を計測することができるので、挙動計測ごとに特徴点位置データをキャリブレーションする必要がなく、移動体の挙動計測時の工数を低減する上で有利となる。
また、計測用マーカー10を用いた移動体の挙動計測方法において、第1の移動体と第2の移動体とを同じモデルの製品とすれば、第1の移動体でキャリブレーションした特徴点の位置と、第2の移動体上の特徴点の位置とが略同一となり、移動体の挙動を精度よく算出する上で有利となる。
また、計測用マーカー10を用いた移動体の挙動計測方法において、第1の移動体と第2の移動体とが番手が同一のゴルフクラブヘッドとすれば、第1の移動体でキャリブレーションした特徴点の位置と、第2の移動体上の特徴点の位置との誤差が小さくなり、移動体の挙動を算出する際の精度を一定以上に保つ上で有利となる。
また、計測用マーカー10を用いた移動体の挙動計測方法において、ゴルフクラブヘッド30の所定位置を基準位置として計測用マーカー10を貼付するようにすれば、第1の移動体における貼付位置と第2の移動体における貼付位置とを精度よく一致させる上で有利となる。
【0061】
本実施の形態では、移動体としてゴルフクラブヘッドの挙動を計測する場合について説明したが、他の移動体についても同様の原理で打撃具の挙動を計測することが可能である。
このような移動体として、野球用のバット、あるいは、テニス用のラケットなどが例示される。