特許第6589715号(P6589715)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6589715
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】自動車外板パネル
(51)【国際特許分類】
   B62D 29/04 20060101AFI20191007BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20191007BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
   B62D29/04 A
   B32B3/30
   B32B15/08 E
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-63872(P2016-63872)
(22)【出願日】2016年3月28日
(65)【公開番号】特開2017-177855(P2017-177855A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年11月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】特許業務法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】吉田 亨
(72)【発明者】
【氏名】米村 繁
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 雅寛
【審査官】 梶本 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−122052(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/104646(WO,A1)
【文献】 特開2008−195298(JP,A)
【文献】 特表2003−508270(JP,A)
【文献】 特開2001−277271(JP,A)
【文献】 特開2013−027924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 29/04
B32B 3/30
B32B 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車体の内部側に配置された内側金属板と、該内側金属板の外面に設けられた樹脂材と、該樹脂材の外面に設けられた外側金属板とを備え、かつ、前記内側金属板および前記外側金属板に造形部を備えるラミネート金属板からなる自動車外板パネルであって、
前記内側金属板は、前記造形部以外の部位に、前記自動車の車体の内部側へ向けて凸となるように設けられた一又は複数のエンボスと、前記造形部に穿設された一又は複数の穴とを備え、
前記穴の面積に対する前記エンボスの前記内部側の底面の面積の比率が1.25を超える、自動車外板パネル。
【請求項2】
自動車の車体の内部側に配置された内側金属板と、該内側金属板の外面に設けられた樹脂材と、該樹脂材の外面に設けられた外側金属板とを備え、かつ、前記内側金属板および前記外側金属板に造形部を備えるラミネート金属板からなる自動車外板パネルであって、
前記内側金属板は、前記造形部以外の部位に、前記自動車の車体の内部側へ向けて凸となるように設けられた一又は複数のエンボスと、前記造形部に穿設された一又は複数の穴とを備え、
前記穴の面積に対する前記エンボスの前記内部側の底面の面積の比率が1.25以下であり、かつ、前記エンボスの前記内部側の底面の形状において、最も長い径の長さが4〜18mmである、自動車外板パネル。
【請求項3】
前記エンボスの形状は、円柱、楕円柱、角柱、円錐台、楕円錐台または角錐台である、請求項1または2に記載の自動車外板パネル。
【請求項4】
前記エンボスは、内部に前記樹脂材が存在する、請求項1〜3のいずれか一つに記載の自動車外板パネル。
【請求項5】
ドアアウターパネル、フードアウターパネル、トランクリッドアウターパネル、フェンダーパネル、バックドアアウターパネル、ルーフパネルまたはボディサイドパネルである、請求項1〜4のいずれか一つに記載の自動車外板パネル。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車外板パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ドアアウターパネル、フードアウターパネル、トランクリッドアウターパネル、フェンダーパネル、バックドアアウターパネル、ルーフパネル、ボディサイドパネル等の自動車外板パネルは、自動車の重心位置よりも高い位置に配置される。このため、自動車外板パネルを高強度化し、かつ、軽量化することができれば、車体軽量化に伴う燃費向上および衝突安全性の向上を図れるだけでなく、自動車の低重心化による走行性能の向上を図ることができる。
【0003】
また、自動車外板パネルには、張り剛性(外部の力に対してべこつきにくいという特性)が要求される。自動車外板パネルの張り剛性は、自動車外板パネルを構成する金属板の板厚およびヤング率によって決まる。そのため、従来、金属板の引張強度を高めることにより金属板の板厚を薄くすると、自動車外板パネルの張り剛性が低下するという問題があった。すなわち、自動車外板パネルの張り剛性を向上させるためには、金属板の板厚を厚くする必要があり、その結果、自動車外板パネルの軽量化を図ることが難しかった。
【0004】
近年、自動車外板パネルの張り剛性を向上させ、かつ、自動車外板パネルを軽量化する技術が開発されている。例えば、特許文献1に開示された自動車外板パネルは、発泡樹脂を芯材として、該発泡樹脂を2枚の金属板間に挟んで積層させた複合板を自動車外板パネルとして用いることにより、自動車外板パネルを軽量化し、かつ、自動車外板パネルの張り剛性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2009/104646号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、最近、より一層自動車本体を軽量化することが求められている。そこで、自動車外板パネルを軽量化しつつ、さらに、張り剛性を向上させることが可能な自動車外板パネルの開発が求められている。
【0007】
本発明は、このような現状に鑑み、従来の自動車外板パネルよりも軽量化し、かつ、張り剛性を向上させた自動車外板パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、樹脂材を2枚の金属板間に挟んで積層させた複合板からなる自動車外板パネルにおいて、前記2枚の金属板のうち、車体内部側に配置される金属板(以下、「内側金属板」という)に、車体の内部側へ向けて凸となるようにエンボスを設けることにより、自動車外板パネルの張り剛性をさらに向上させることができることを見出した。
【0009】
また、前記内側金属板に形成される造形部(例えば、キャラクターライン、ドアハンドルエンボス、ドアガードモールエンボス等)の張り剛性は、前記造形部以外の部位の張り剛性よりも高い。そのため、本発明者らは、前記造形部には穴を穿設することにより、自動車外板パネルの張り剛性を向上させ、さらに、自動車外板パネルをより軽量化することができることを見出した。
【0010】
本発明は、前記の知見に基づいてなされたものであり、その要旨は、下記に示す自動車外板パネルにある。
【0011】
(1)自動車の車体の内部側に配置された内側金属板と、該内側金属板の外面に設けられた樹脂材と、該樹脂材の外面に設けられた外側金属板とを備え、かつ、前記内側金属板および前記外側金属板に造形部を備えるラミネート金属板からなる自動車外板パネルであって、
前記内側金属板は、前記造形部以外の部位に、前記自動車の車体の内部側へ向けて凸となるように設けられた一又は複数のエンボスと、前記造形部に穿設された一又は複数の穴とを備え、
前記穴の面積に対する前記エンボスの前記内部側の底面の面積の比率が1.25を超える、自動車外板パネル。
【0012】
(2)自動車の車体の内部側に配置された内側金属板と、該内側金属板の外面に設けられた樹脂材と、該樹脂材の外面に設けられた外側金属板とを備え、かつ、前記内側金属板および前記外側金属板に造形部を備えるラミネート金属板からなる自動車外板パネルであって、
前記内側金属板は、前記造形部以外の部位に、前記自動車の車体の内部側へ向けて凸となるように設けられた一又は複数のエンボスと、前記造形部に穿設された一又は複数の穴とを備え、
前記穴の面積に対する前記エンボスの前記内部側の底面の面積の比率が1.25以下であり、かつ、前記エンボスの前記内部側の底面の形状において、最も長い径の長さが4〜18mmである、自動車外板パネル。
【0013】
(3)前記エンボスの形状は、円柱、楕円柱、角柱、円錐台、楕円錐台または角錐台である、前記(1)または(2)に記載の自動車外板パネル。
【0014】
(4)前記エンボスは、内部に前記樹脂材が存在する、前記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の自動車外板パネル。
【0015】
(5)ドアアウターパネル、フードアウターパネル、トランクリッドアウターパネル、フェンダーパネル、バックドアアウターパネル、ルーフパネルまたはボディサイドパネルである、前記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の自動車外板パネル。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、従来の自動車外板パネルよりも軽量化し、かつ、張り剛性を向上させた自動車外板パネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施形態に係る自動車外板パネル1を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す自動車外板パネル1において、エンボス6が設けられた部分の厚さ方向を模式的に示す断面図である。
図3図3は、本実施形態に係る自動車外板パネル1をドアアウターパネルとして用いたドア9の一例を示す概略図である。
図4図4は、実施例1および2の解析モデルの正面図である。
図5図5は、実施例3および5の解析モデルの正面図である。
図6図6は、実施例4および6の解析モデルの正面図である。
図7図7は、比較例1の解析モデルの正面図である。
図8図8は、比較例2および3の解析モデルの正面図である。
図9図9は、実施例1〜6および比較例1〜3の解析モデルにおける、単位重量当たりの張り剛性比率を表わすグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法および各構成部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0019】
1.自動車外板パネルの構成
まず、本発明の実施形態(以下、本実施形態ともいう)に係る自動車外板パネルの構成を説明する。
【0020】
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係る自動車外板パネル1を模式的に示す斜視図である。図1に示すように、自動車外板パネル1は、自動車の車体の内部側(すなわち、図1における紙面手前側)に配置され、かつ、造形部2が形成された内側金属板3と、該内側金属板3の外面(すなわち、図1における紙面奥側の面)に設けられた樹脂材4と、該樹脂材4の外面(すなわち、図1における紙面奥側の面)に設けられた外側金属板5とを備えるラミネート金属板である。
【0021】
内側金属板3および外側金属板5は、鋼板、アルミ板、マグネシウム板、または、チタン板であることが好ましい。これらの中でも、コストの観点から、鋼板であることがより好ましい。内側金属板3および外側金属板5が鋼板である場合、ヤング率は、200GPa以上であることが好ましい。
【0022】
内側金属板3および外側金属板5の板厚は、重量と剛性とのバランスの観点から、0.1〜0.5mmであることが好ましく、0.2〜0.3mmであることがより好ましい。
【0023】
樹脂材4は、ナイロン、または、ポリプロピレンであることが好ましい。これらの中でも、コストの観点から、ナイロンであることがより好ましい。
【0024】
樹脂材4の厚さは、重量と剛性とのバランスの観点から、0.3〜1.5mmであることが好ましく、0.5〜0.7mmであることがより好ましい。
【0025】
内側金属板3において、造形部2以外の部位には、自動車の車体の内部側(すなわち、図1における紙面手前側)へ向けて凸となるように、複数のエンボス6が設けられている。また、造形部2には、複数の穴7が穿設されている。
【0026】
なお、造形部2とは、エンボス形状または曲げ稜線部の加工により剛性が高くなっている部分をいい、例えば、キャラクターライン、ドアハンドルエンボス、ドアガードモールエンボス等のことである。図1では、造形部2として、キャラクターライン21およびドアハンドルエンボス22が示されている。複数の穴7は、これら造形部2のうち、キャラクターライン21に穿設されている。なお、本実施形態に係る自動車外板パネル1では、複数の穴7が、ドアハンドルエンボス22に穿設されていてもよい。
【0027】
(エンボス)
上述のように、内側金属板3において、造形部2以外の部位には、自動車の車体の内部側(すなわち、図1における紙面手前側)へ向けて凸となるように、複数のエンボス6が設けられている。
【0028】
エンボス6の形状は、円柱である。前記円柱は、前記内部側の底面の円の直径が4〜18mmであることが好ましい。前記直径が4mm未満であると、張り出し加工が困難となる場合がある。前記直径が18mmを超えると、剛性向上効果が著しく低下する場合がある。
【0029】
なお、本実施形態に係る自動車外板パネル1において、エンボス6の形状は、円柱に限定されない。エンボス6の形状は、例えば、楕円柱、角柱、円錐台、楕円錐台または角錐台であってもよい。エンボス6の形状が楕円柱、角柱、円錐台、楕円錐台または角錐台である場合、該エンボス6の前記内部側の底面の形状は、最も長い径の長さが4〜18mmであることが好ましい。
【0030】
本実施形態に係る自動車外板パネル1は、内側金属板3において、造形部2以外の部位にエンボス6が設けられていることにより、内側金属板3の面剛性が向上し、面外変形抵抗が大きくなる。その結果、自動車外板パネル1は、張り剛性が向上する。
【0031】
図2は、図1に示す自動車外板パネル1において、エンボス6が設けられた部分の厚さ方向を模式的に示す断面図である。エンボス6は、内部に樹脂材4が存在する。エンボス6の内部に樹脂材が存在すると、内側金属板3の面外変形抵抗がさらに増大する。その結果、自動車外板パネル1の張り剛性がより向上する。
【0032】
なお、本実施形態に係る自動車外板パネル1において、エンボス6は、内部に樹脂材4が存在する構成に限定されない。例えば、エンボス6は、内部が空洞であってもよい。
【0033】
(穴)
上述のように、内側金属板3において、造形部2には、複数の穴7が穿設されている。なお、複数の穴7は、一つの穴7の一部分が造形部2に穿設されていればよい。よって、該一つの穴7の他の部分が、造形部2以外の部位に穿設されていてもよい。
【0034】
穴7の形状は、円である。前記円の直径は、10〜50mmであることが好ましい。前記円の直径が10mm未満であると、自動車外板パネル1を充分に軽量化できない場合がある。前記円の直径が50mmを超えると、自動車外板パネル1自体の剛性が大きく低下する場合がある。
【0035】
なお、本実施形態に係る自動車外板パネル1において、穴7の形状は、円に限定されない。穴7の形状は、例えば、楕円または多角形であってもよい。
【0036】
本実施形態に係る自動車外板パネル1は、内側金属板3において、造形部2に穴7が穿設されていることにより、軽量化することができる。造形部2は、エンボス形状または曲げ稜線部の加工により剛性が高くなっている部分であるため、穴を穿設したとしても、張り剛性は劣らない。
【0037】
本実施形態に係る自動車外板パネル1において、穴7の面積に対するエンボス6の前記内部側の底面の面積の比率は1.25を超える。前記比率が1.25を超えると、エンボス6を設けることの効果が充分に発揮されるため、自動車外板パネル1の張り剛性を向上させることができる。さらに、自動車外板パネル1には穴7が穿設されているため、自動車外板パネル1を軽量化することができる。
【0038】
なお、本実施形態に係る自動車外板パネル1において、穴7の面積に対するエンボス6の前記内部側の底面の面積の比率は、1.25以下であってもよい。しかしながら、前記比率が1.25以下であると、エンボス6を設けることの効果が充分に発揮されない。したがって、前記比率が1.25以下の場合、エンボス6を設けることの効果を充分に発揮させるため、エンボス6の前記内部側の底面の形状において、最も長い径の長さを4〜18mmとする必要がある。前記径の長さが4mm未満であると、張り出し加工が困難になる場合がある。前記径の長さが18mmを超えると、剛性が著しく低下する場合がある。
【0039】
2.自動車外板パネルの用途
次に、本実施形態に係る自動車外板パネル1の用途の一例について説明する。図3は、本実施形態に係る自動車外板パネル1をドアアウターパネルとして用いたドア9の一例を示す概略図である。本実施形態に係る自動車外板パネル1は、ドアインナーパネル8と組み合わせることによって、ドア9として用いることができる。
【0040】
本実施形態に係る自動車外板パネル1は、ドアアウターパネル以外にも、フードアウターパネル、トランクリッドアウターパネル、フェンダーパネル、バックドアアウターパネル、ルーフパネルまたはボディサイドパネルとして用いることができる。
【0041】
3.自動車外板パネルの製造方法
続いて、本実施形態に係る自動車外板パネル1の製造方法について説明する。本実施形態に係る自動車外板パネル1の製造方法は特に限定されないが、例えば、下記の方法により製造することができる。
【0042】
まず、内側金属板3において、造形部2を形成しようとする部位以外の部位に複数のエンボス6を形成し、かつ、造形部2を形成しようとする部位に複数の穴7を穿設する。複数のエンボス6および複数の穴7が形成された内側金属板3を加熱後、複数のエンボス6が凹となる面に樹脂材4を塗る。その後、樹脂材4が塗られた面に、加熱された外側金属板5を圧着し、さらに、冷却する。最後に、内側金属板3、樹脂材4および外側金属板5からなるラミネート金属板に、造形部2を形成する。
【実施例】
【0043】
以下、本実施形態をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0044】
<張り剛性および軽量化の評価>
本実施形態に係る自動車外板パネル1の張り剛性および軽量化の評価は、解析モデルを用いて、弾性体モデルによる面剛性解析により、単位重量当たりの張り剛性比率を求めることで評価した。実施例1〜6および比較例1〜3の解析モデルは、表1に示す条件で作成した。なお、表1中、比較例1は、解析モデルにエンボスおよび穴を設けていないことを意味する。
【0045】
図4は実施例1および2の解析モデルの正面図、図5は実施例3および5の解析モデルの正面図、図6は実施例4および6の解析モデルの正面図、図7は比較例1の解析モデルの正面図、図8は比較例2および3の解析モデルの正面図である。
【0046】
なお、図4〜6および8中、エンボスは、自動車の車体の内部側(すなわち、紙面奥側)へ向けて凸となるように設けられており、形状が円柱である。また、穴の形状は円である。表1中、エンボスの直径とは、該エンボスの前記内部側の底面の円の直径をいう。また、エンボスの面積とは、該エンボスの前記内部側の底面の円の面積をいう。
【0047】
また、実施例2、5、6および比較例3の解析モデルは、それぞれ、図4〜6および8中に示していないが、エンボスの内部に樹脂が充填されている。一方、実施例1、3、4および比較例2の解析モデルは、それぞれ、図4〜6および8中に示していないが、エンボスの内部が空洞である。
【0048】
実施例1〜6および比較例1〜3の解析モデルに共通する条件は、以下の通りである。
・解析モデルサイズ:200mm×200mm
・解析モデルの板厚:0.9mm(金属板厚0.2mm、樹脂厚0.5mm)
・ヤング率:206GPa(金属板)
・荷重位置:解析モデル中央の一点(図4〜8中に示す×印の位置に、紙面手前側から荷重をかける)
・作用荷重:1N
【0049】
実施例1〜6および比較例1〜3の解析モデルにおける、単位重量当たりの張り剛性比率を表1および図9に示す。表1および図9から明らかなように、本発明の要件をすべて満たす実施例1〜6の解析モデルでは、エンボスおよび穴を設けていない比較例1の解析モデルよりも、単位重量当たりの張り剛性が向上した。すなわち、実施例1〜6の解析モデルでは、比較例1の解析モデルよりも軽量化し、かつ、張り剛性を向上させることができたことが分かる。
【0050】
実施例2、5および6の解析モデルは、エンボスの内部に樹脂が充填されているため、エンボスおよび穴の直径、ならびに、穴の面積に対するエンボスの前記内部側の底面の面積の比率の条件が等しい実施例の解析モデル、すなわち、それぞれ実施例1、3および4の解析モデルに比べて、単位重量当たりの張り剛性が向上した。
【0051】
実施例3〜6の解析モデルは、穴の面積に対するエンボスの前記内部側の底面の面積の比率が1.25を大きく超えるため、エンボスおよび穴の直径、ならびに、エンボス内への樹脂材充填の有無の条件が等しい実施例および比較例の解析モデル、すなわち、それぞれ実施例1、比較例2、実施例2および比較例3の解析モデルに比べて、単位重量当たりの張り剛性が向上した。
【0052】
比較例2および3は、穴の面積に対するエンボスの前記内部側の底面の面積の比率が1.25以下であり、かつ、エンボスの前記内部側の底面の形状において、最も長い径の長さが18mmを超えるため、エンボスおよび穴を設けていない比較例1よりも、単位重量当たりの張り剛性が劣った。
【0053】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の自動車外板パネルは、従来の自動車外板パネルよりも軽量化し、かつ、張り剛性を向上させることができる。そのため、ドアアウターパネル、フードアウターパネル、トランクリッドアウターパネル、フェンダーパネル、バックドアアウターパネル、ルーフパネル、ボディサイドパネル等に利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 自動車外板パネル
2 造形部
3 内側金属板
4 樹脂材
5 外側金属板
6 エンボス
7 穴

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9