(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
モーター制御装置に用いられるヒューズとしては、電力供給ラインに定常電流として流れるモーターの駆動電流の値以上の定格電流を有したヒューズが選定される。そして、定常電流は、定格電流の5〜6割程度の大きさであるという条件を満たすことが好ましいため、ヒューズは、この条件を満たすことが必要になる。更に、モーターの起動時に発生する突入電流のような瞬間的な過電流によってヒューズが溶断することを避けるため、上記条件に加えて、突入電流に耐え得る定格電流を有するヒューズが採用される必要がある。
【0006】
また、電力供給ラインを流れる突入電流や定常電流は、負荷としてのモーターの環境変化や経時変化に応じて、大きくなったり、或いは小さくなったりする場合がある。例えば、モーターの軸や軸受けなどに埃やゴミが溜まりやすい場合には、時間の経過と共に、起動トルクや定常トルクが重くなり、それに伴って、突入電流や定常電流が大きくなる。逆に、モーターの軸や軸受けが長く使用していると溶けてくる場合があり、そのような場合には、時間の経過と共に、起動トルクや定常トルクが軽くなるため、このような場合には、時間経過と共に、突入電流や定常電流は小さくなる。
【0007】
従って、ヒューズの選定は、固定値での突入電流を基準にしただけでは十分ではない。突入電流の大きさが時間の経過と共に変化する点を考慮しない場合、使用初期には問題なくても、寿命近くになるとヒューズが突入電流に対して適切に対処できない事態も生じる。しかしながら、上記の特許文献1,2には、時間の経過と共に突入電流や定常電流が変化することに対応する技術は開示されていない。
【0008】
また、突入電流を基準にして、ヒューズを選定すると、定常電流よりもかなり大きな定格電流を有したヒューズが必要になるが、この場合、定常電流が流れているときに装置内に異常が発生して電力供給ラインに過電流が流れたとしても、その過電流が定格電流よりも小さいとヒューズが溶断しないので、異常な過電流が流れることによる不具合を防ぐことができないおそれがある。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであり、時間経過に伴う突入電流や定常電流の変化に対応しつつ、異常な過電流による不具合を確実に防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一局面に係るモーター制御装置は、電源からの電力をモーターに供給し、当該モーターの駆動を制御するモータードライバーと、前記モーターに前記電源からの電力を供給する電力供給ラインに挿入された、前記モーターの起動時に発生する予め定められた突入電流の最大値及び前記モーターの駆動電流よりも大きい定格電流を有するヒューズと、前記ヒューズと直列に接続され、前記電力供給ラインにコレクタ及びエミッタを介して挿入されたトランジスタと、前記トランジスタのベース電圧を制御することによって、前記トランジスタのコレクタ電流を調整する電流調整部と、を備え、前記電流調整部は、前記モーターを停止させる第1期間では、前記トランジスタの遮断領域となるように前記ベース電圧を制御し、前記突入電流が発生する第2期間では、前記トランジスタの飽和領域となるように前記ベース電圧を制御し、前記第1期間及び前記第2期間以外の第3期間は、前記ベース電圧を制御することによって、前記電力供給ラインに前記モーターの駆動電流を流すことができる範囲に、前記コレクタ電流を制御する。
【0011】
また、本発明の一局面に係る画像形成装置は、上記モーター制御装置と、前記モーターとしての、感光体ドラムを回転させるドラムモーターと、前記感光体ドラムの表面に形成される潜像を用いてトナー像を生成し、当該トナー像を記録媒体に形成させる画像形成部と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、モーターに電源を供給する電力供給ラインに、突入電流の最大値及びモーターの駆動電流よりも大きい定格電流を有するヒューズが挿入されるので、モーターの寿命までに突入電流が大きくなったとしても、突入電流によるヒューズ溶断を防ぐことができる。
【0013】
また、モーターを停止させる第1期間は、トランジスタの遮断領域(コレクタ電流が流れない状態)となるようにベース電圧が制御されるので、電力供給ラインに電流は流れない。そのため、第1期間において、電力供給ラインに過電流が流れることがないため、ヒューズが溶断しないことによる過電流による不具合は生じない。
【0014】
突入電流が発生する第2期間は、トランジスタの飽和領域(トランジスタが導通した状態)となるようにベース電圧が制御されるので、電力供給ラインに流れる電流の大きさは抑制されないが、定格電流以上の過電流が電力供給ラインに流れた場合は、ヒューズが溶断するので、過電流による不具合は生じない。一方、定格電流未満の過電流が電力供給ラインに流れた場合、ヒューズは溶断しないが、突入電流が流れる時間は短いため、第2期間は短い時間に設定可能であるため、過電流による不具合発生を低減することが可能である。
【0015】
第3期間は、電力供給ラインに定常電流を流すことができる範囲で、コレクタ電流が抑制されるので、電力供給ラインに定常電流は流れるが、それよりも遥かに大きい過電流は流れないので、過電流による不具合は生じない。
【0016】
従って、時間経過に伴う突入電流や定常電流の変化に拘わらず、異常な過電流による不具合を確実に防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係るモーター制御装置及び画像形成装置について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の構造を示した模式的な部分断面正面図である。画像形成装置1は、例えば、コピー機能、プリンター機能、スキャナー機能、及びファクシミリ機能のような複数の機能を兼ね備えた複合機であり、本発明の一実施形態に係るモーター制御装置(
図3)を備えると共に、装置本体11に、操作部47、表示部473、原稿給送部6、原稿読取部5、画像形成部12、定着部13、及び給紙部14を含んで構成されている。
【0019】
画像形成装置1で原稿読取動作が行われる場合について説明する。原稿給送部6により給送されてくる原稿、又は原稿載置ガラス161に載置された原稿の画像を、原稿読取部5が光学的に読み取り、そして画像データを生成する。原稿読取部5により生成された画像データは、内蔵HDD(Hard Disk Drive)、又はネットワーク接続されたコンピューター等に保存される。
【0020】
画像形成装置1で画像形成動作が行われる場合について説明する。原稿読取動作により生成された画像データや、内蔵HDDに記憶されている画像データ、ネットワーク接続されたコンピューターから受信した画像データ等に基づいて、画像形成部12が、給紙部14から給紙される記録媒体としての用紙Pにトナー像を形成する。
【0021】
画像形成部12は、ブラック、イエロー、シアン、及びマゼンタ用の感光体ドラム121を備え、感光体ドラム121は、図中の反時計回りに回転駆動するようになっている。
【0022】
転写ユニット120は、その外周面にトナー像が転写される中間転写ベルト125、駆動ローラー125a、従動ローラー125b、及び一次転写ローラー126を含んで構成されている。
【0023】
中間転写ベルト125は、駆動ローラー125aと従動ローラー125bとの間に張架され、感光体ドラム121の周面に当接した状態で駆動ローラー125aによって駆動され、感光体ドラム121と同期しながら、無端走行する。
【0024】
次に、カラー印刷が行われる場合について説明する。感光体ドラム121の周囲が一様に帯電され(帯電工程)、電荷を帯びた感光体ドラム121の表面に、画像データに基づいて、レーザー光が照射されて潜像が形成され(露光工程)、潜像がトナーで可視像化され(現像工程)、可視像化することによって形成されたトナー像が一次転写ローラー126によって中間転写ベルト125上に転写されるようになっている。
【0025】
中間転写ベルト125上に転写される各色(ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ)のトナー像は、転写タイミングを調整して中間転写ベルト125上で重ね合わされ、カラーのトナー像となる。
【0026】
二次転写ローラー210は、中間転写ベルト125の表面に形成されたカラーのトナー像を、中間転写ベルト125を挟んだ、駆動ローラー125aとのニップ部Nにおいて、給紙部14から搬送路190を搬送されてきた用紙Pに転写させるものである。
【0027】
定着部13は、定着ローラー対131を備え、熱圧着によりトナー像を用紙Pに定着させるものであり、定着処理が施されたカラー画像形成済みの用紙Pは、排出トレイ151に排出される。
【0028】
図2は、画像形成装置1の主要内部構成を概略的に示した機能ブロック図である。画像形成装置1は、制御ユニット10、原稿給送部6、原稿読取部5、画像形成部12、操作部47、定着部13、及び給紙部14を含んで構成されている。なお、
図1に示した画像形成装置1と同様の構成部分については同符号を付し、ここではその詳しい説明を省略する。
【0029】
モーター駆動回路72は、制御ユニット10の制御部100からの指示に従って、モーター73の駆動を制御する。モーター73は、感光体ドラム121、駆動ローラー125a、一次転写ローラー126、二次転写ローラー210、定着ローラー対131、ピックアップローラー145、搬送ローラー対19、及び排出ローラー対159等に回転駆動力を供給する駆動源である。なお、当該各ローラーがそれぞれに駆動源としてモーターを有し、各モーターついてモーター駆動回路72を設ける構成としてもよい。
【0030】
制御ユニット10は、プロセッサー、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及び専用のハードウェア回路を含んで構成される。プロセッサーは、例えばCPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、MPU(Micro Processing Unit)等である。制御ユニット10は、制御部100及び電流調整部101を備えている。
【0031】
制御ユニット10は、画像形成装置1に内蔵される図略のHDDに記憶されている制御プログラムに従った上記プロセッサーによる動作により、制御部100及び電流調整部101として機能するものである。但し、制御部100及び電流調整部101は、制御ユニット10による制御プログラムに従った動作によらず、ハードウェア回路により構成することも可能である。以下、特に触れない限り、各実施形態について同様である。
【0032】
制御部100は、画像形成装置1の全体的な動作制御を司る。制御部100は、原稿給送部6、原稿読取部5、画像形成部12、操作部47、及び定着部13、給紙部14と接続され、これら各部の駆動制御等を行う。
【0033】
電流調整部101は、モーター駆動回路72を構成するトランジスタ76(
図3)のベース電圧を制御することによって、トランジスタ76のコレクタ電流を調整する。
【0034】
図3は、本発明の一実施形態に係るモーター制御装置の構成を示すブロック図である。モーター制御装置71は、モーター駆動回路72と、制御部100と、電流調整部101とを備える。モーター駆動回路72は、モータードライバーIC74と、電流ヒューズ75と、トランジスタ76と、ディジタル−アナログ変換部(DAC)77とを含んで構成される。なお、モーター73は、例えば、ブラシレスモーターである。
【0035】
モータードライバーIC74は、モーター73に電源を供給し、モーター73の駆動を制御する。電源端子74aは電流ヒューズ75を介して電源VCCに接続されている。接地端子74bはグランド接続されて接地されている。入力端子74cは制御部100に接続されている。出力端子74e,74fは、電力供給線によりモーター73に接続されている。
【0036】
モータードライバーIC74は、制御部100から出力され、入力端子74cで取り込まれた、モーター73の起動や停止、回転速度を指令する指令信号に従って、モーター73の駆動を制御する。
【0037】
電力供給ラインL1は、モーター73に電源VCCからの電力を供給するラインである。モーター73に流れる電流は、モータードライバーIC74の電源端子74aから出力端子74e、モーター73、出力端子74fと流れ、そして接地端子74bに流れる。
【0038】
トランジスタ76は、コレクタ(C)が電源VCCに接続され、エミッタ(E)が電流ヒューズ75の一端に接続され、電力供給ラインL1にコレクタ及びエミッタを介して挿入されることによって、電流ヒューズ75に直列に接続されている。トランジスタ76のベース(B)は、ディジタル−アナログ変換部77を介して、電流調整部101に接続されている。
【0039】
モーター73の起動時に電力供給ラインL1を流れる突入電流や、電力供給ラインL1に定常的に流れる電流(定常電流)は、モーター73の性能や、周囲環境がモーター73に与える影響によって、時間の経過と共に、大きくなったり、或いは小さくなったりする。
【0040】
図4は、時間の経過と共に変化する突入電流及び定常電流とを模式的に示したグラフであり、(A)は時間の経過と共に、突入電流及び定常電流が大きくなっていく状態を示す。(B)は時間の経過と共に、突入電流及び定常電流が小さくなっていく状態を示している。時間TFは、モーター73の使用初期を示しており、時間TEは、モーター73の寿命時点を示している。
【0041】
図4(A)に示すように、時間の経過と共に、突入電流及び定常電流が大きくなっていく場合、当該負荷の寿命時点での突入電流Ibの方が、使用初期での突入電流Iaよりも大きい。一方、
図4(B)に示すように、時間の経過と共に、突入電流及び定常電流が小さくなっていく場合、当該負荷の使用初期での突入電流Icの方が、寿命時点での突入電流Idよりも大きい。
【0042】
図5は、時間の経過と共に突入電流及び定常電流が大きくなっていく場合のモーター73の起動時前後において電力供給ラインL1に流れる電流波形を模式的に示したグラフである。
図5(A)は使用初期の電流波形を示す。
図5(B)は寿命時点の電流波形を示している。凸形をした部分は、突入電流が流れている状態を示し、傾斜が緩やかな部分は、定常電流が流れている状態を示す。
【0043】
図5(A)に示すように、モーター73の使用初期での突入電流のピーク値がIaとなり、
図5(B)に示すように、当該モーター73の寿命時点での突入電流のピーク値がIbとなる。このように時間の経過と共にモーター73の突入電流が大きくなる場合には、電流ヒューズ75として、モーター73の寿命時点での突入電流のピーク値Ibよりも大きい定格電流を有するものが選定される。
【0044】
図6は、時間の経過と共に突入電流及び定常電流が小さくなっていく場合のモーター73の起動時前後において電力供給ラインL1に流れる電流波形を模式的に示したグラフである。
図6(A)は使用初期の電流波形を示す。
図6(B)は寿命時点の電流波形を示す。
【0045】
図6(A)に示すように、モーター73の使用初期での突入電流のピーク値がIcとなり、
図6(B)に示すように、モーター73の寿命時点での突入電流のピーク値がIdとなる。このように時間の経過と共にモーター73の突入電流が小さくなる場合には、電流ヒューズ75として、モーター73の使用初期での突入電流のピーク値Icよりも大きい定格電流を有するものが選定される。
【0046】
なお、これらピーク値Ib,Icは、具体的には、実験等によって予測されるピーク値である。更には、電流ヒューズ75は、予測されるピーク値Ib,Icの2倍程度の定格電流を有するものを選定するのが望ましい。
【0047】
トランジスタ76のコレクタ電流ICは、
図7に示すように、3つの期間P1〜P3に分けて電流調整部101によって調整される。第1期間P1は、モーター73を停止させている時間帯である。第2期間P2は、突入電流が発生する期間として予め定められた期間である。第3期間P3は、第1期間P1及び第2期間P2以外の期間である。
【0048】
例えば、第2期間P2は、モーター73の起動時から予め定められた設定時間が経過するまでの期間であって、突入電流が流れる可能性のある期間として予め定められた時間帯である。また、第3期間P3は、定常電流としてモーター73の駆動電流を流す期間である。
【0049】
電流調整部101は、第1期間P1において、トランジスタ76の遮断領域となるようにベース電圧VBを制御する。更に、電流調整部101は、第2期間P2において、トランジスタ76の飽和領域となるようにベース電圧VBを制御する。
【0050】
また、電流調整部101は、第3期間P3において、トランジスタ76のベース電圧VBを制御することによって、コレクタ電流ICを抑制する。例えば、電流調整部101は、定常電流の5割増し程度を上限にコレクタ電流ICを設定する。また、定常電流は、
図4(A)(B)に示すように、時間の経過と共に、大きくなったり、或いは小さくなったりするので、コレクタ電流ICの上限IC_MAX(
図7)については、モーター73の特性に応じて定常電流が時間経過と共に大きくなる場合には、予め定められた時間が経過する毎に、予め定められた値分だけ大きくし、モーター73の定常電流が時間経過と共に小さくなる場合には、予め定められた時間が経過する毎に、予め定められた値分だけ小さくする。このように、電流調整部101は、第3期間P3におけるベース電圧VB及びコレクタ電流ICの上限IC_MAXについては、モーター73の特性に応じて、時間の経過と共に変化させる。
【0051】
次に、制御ユニット10で行われる処理動作の一例について、
図8に示すフローチャートに基づいて説明する。なお、この処理動作が開始されるのは、制御部100が、モータードライバーIC74に対して、モーター73の起動指令信号を出力した時である。つまり、電流調整部101は、モーター73の起動指令信号が出力されるまでは、モーター73を停止させておく第1期間P1として、トランジスタ76の遮断領域となるようにベース電圧VBを制御する。
【0052】
電流調整部101は、モーター73の起動指令信号が出力されたとき、第2期間P2を開始し、トランジスタ76の飽和領域となるように、トランジスタ76のベース電圧VBを、予め定められた設定電圧VB1まで上昇させる(S1)。つまり、第2期間P2においては、トランジスタ76のコレクタとエミッタが短絡しているのと同じ状態となる。また、設定電圧VB1は、ベース電圧VBをこれ以上大きくしても、コレクタ電流ICが大きくならない値であり、実験等によって算出されて予め定められている。なお、上述したように、第2期間P2は、タイマーTが、突入電流が発生する期間として予め定められた期間である。
【0053】
電流調整部101は、上記S1を実行すると共に、タイマーTを0にリセットして起動させ(S2)、タイマーTによる計時時間が第2期間P2としての設定時間T1に達したか否かを判断する(S3)。
【0054】
電流調整部101は、タイマーTの計時時間が設定時間T1に達するまでは(S3でNO)、第2期間P2を続ける(S1の実行を続ける)。
【0055】
そして、電流調整部101が、タイマーTの計時時間が設定時間T1に達した(つまり、第2期間P2の終了タイミングとなり、第3期間P3の開始タイミングとなった)と判断した場合(S3でYES)、電流調整部101は、トランジスタ76のベース電圧VBを予め定められた設定電圧VB2まで下げて(S4)、コレクタ電流ICを抑制する。つまり、第3期間P3においては、電力供給ラインL1に流れる電流を抑制する。上述したように、設定電圧VB2は、コレクタ電流ICの上限IC_MAXが、定常電流ISの5割増し程度となる大きさとされる。
【0056】
続いて、電流調整部101が、制御部100によりモータードライバーIC74に対して、モーター73の停止指令信号が出力されたか否かを判断する(S5)。電流調整部101は、モーター73の停止指令信号が出力されるまでは(S5でNO)、S4の実行を続ける。
【0057】
そして、電流調整部101が、制御部100によりモータードライバーIC74に対して、モーター73の停止指令信号が出力された(つまり、第3期間P3の終了タイミングとなり、第1期間P1の開始タイミングとなった)と判断した場合(S5でYES)、電流調整部101は、トランジスタ76の遮断領域となるように、トランジスタ76のベース電圧VBを0Vにする(S6)。つまり、第1期間P1となり、電力供給ラインL1には電流が流れない。
【0058】
上記実施形態によれば、モーター73に電源を供給する電力供給ラインL1に、突入電流の最大値よりも大きい定格電流を有する電流ヒューズ75が挿入されるので、突入電流によって、電流ヒューズ75は溶断しない。
【0059】
また、突入電流の最大値は、負荷としてのモーター73の寿命までに発生する突入電流の最大値であるため、使用初期だけでなく、寿命近くになっても、突入電流によって、電流ヒューズ75が溶断しない。
【0060】
また、モーター73を停止させる第1期間P1は、トランジスタ76の遮断領域(コレクタ電流ICが流れない状態)となるようにベース電圧VBが制御されるので、電力供給ラインL1に電流は流れない。そのため、第1期間P1において、電力供給ラインL1に過電流が流れることはなく、過電流による不具合が発生しない。
【0061】
また、突入電流が発生する第2期間P2は、トランジスタ76の飽和領域(トランジスタ76が導通した状態)となるようにベース電圧VBが制御されるので、電力供給ラインL1に流れる電流の大きさは抑制されないが、定格電流以上の過電流が電力供給ラインL1に流れた場合は、電流ヒューズ75が溶断するので、過電流による不具合は発生しない。
【0062】
一方、定格電流未満の過電流が電力供給ラインL1に流れた場合、電流ヒューズ75は溶断しないが、突入電流が流れる時間は短いため、第2期間P2はごく限られた時間に設定可能であるため、過電流による不具合発生を低減することが可能である。
【0063】
第3期間P3は、電力供給ラインL1に定常電流を流すことができる範囲で、コレクタ電流ICが抑制されるので、電力供給ラインL1に定常電流は流れるが、それよりも遥かに大きい過電流は流れないので、過電流による不具合は発生しない。
【0064】
従って、本実施形態によれば、時間経過に伴う突入電流や定常電流の変化に拘わらず、異常な過電流による不具合を確実に防ぐことができる。
【0065】
次に、制御ユニット10で行われる処理動作の一例について、
図9に示したフローチャートに基づいて説明する。なお、この処理動作は、上記設定電圧VB2を時間の経過と共に大きくするための処理動作である。この処理動作は、モーター73の定常トルクが時間の経過と共に大きくなり、モーター73の駆動電流が経過と共に大きくなる場合に行われる動作である。
【0066】
まず、電流調整部101が、設定電圧VB2を実験等によって予め定めておいた初期値V1に設定すると共に(S11)、印刷処理枚数を計数するカウンターCの値を0に設定する(S12)。電流調整部101は、画像形成部12による画像形成処理の結果から、印刷処理が用紙Pの1枚分実施されたか否かを判断する(S13)。
【0067】
電流調整部101は、印刷処理が1枚分実施されたと判断した場合(S13でYES)、カウンターCに1を加算させる(S14)。
【0068】
続いて、電流調整部101は、カウンターCが予め定められた設定値C1(例えば、1000)に到達したか否かを判断し(S15)、カウンターCが設定値C1に到達した(印刷枚数が1000枚に達した)と判断した場合(S15でYES)、設定電圧VB2に予め定められた加算値αを加算し(S16)、設定電圧VB2を加算値α分だけ大きくする。すなわち、モーター73の駆動電流を加算値αに対応する分だけ大きくする。その後、S12へ戻る。このようにして、電流調整部101は、第3期間P3におけるベース電圧VBを、予め定められた枚数分の印刷が行われる度に大きくすることで、時間経過に応じてベース電圧VBを大きくする。
【0069】
なお、電流調整部101は、カウンターCが設定値C1に到達していないと判断している場合は(S15でNO)、S13から処理が繰り返される。
【0070】
次に、制御ユニット10で行われる処理動作の更に他の例について、
図10に示したフローチャートに基づいて説明する。なお、この処理動作は、上記設定電圧VB2を時間の経過と共に小さくするための処理動作である。この処理動作は、モーター73の定常トルクが時間の経過と共に小さくなる場合に行われる動作である。
【0071】
まず、電流調整部101が、設定電圧VB2を実験等によって予め定めておいた初期値V2に設定すると共に(S21)、印刷処理枚数を計数するカウンターCの値を0に設定する(S22)。電流調整部101は、画像形成部12による画像形成処理の結果から、印刷処理が用紙Pの1枚分実施されたか否かを判断する(S23)。
【0072】
電流調整部101は、印刷処理が1枚分実施されたと判断した場合(S23でYES)、カウンターCに1を加算させる(S24)。
【0073】
続いて、電流調整部101は、カウンターCが予め定められた設定値C1(例えば、1000)に到達したか否かを判断し(S25)、カウンターCが設定値C1に到達した(印刷枚数が1000枚に達した)と判断した場合(S25でYES)、設定電圧VB2に予め定められた減算値βを減算し(S26)、設定電圧VB2を減算値β分だけ小さくする。すなわち、モーター73の駆動電流を減算値βに対応する分だけ小さくする。その後、処理はS22へ戻る。このようにして、電流調整部101は、第3期間P3におけるベース電圧VBを、予め定められた枚数分の印刷が行われる度に小さくすることで、時間経過に応じてベース電圧VBを小さくする。
【0074】
なお、電流調整部101は、カウンターCが設定値C1に到達していないと判断している場合は(S25でNO)、S23から処理が繰り返される。
【0075】
なお、上記の
図9及び
図10に示した実施形態では、電流調整部101は、予め定められた枚数分(設定値C1)の印刷が行われる度に、ベース電圧VB(モーター73の駆動電流)が変更するが、カウンターCに代えてタイマーTを用いて、電流調整部101が、タイマーTが予め定められた一定時間を計時する度に、ベース電圧VB(モーター73の駆動電流)を変更するものとしてもよい。
【0076】
上記
図9及び
図10に示した実施形態によれば、時間的変化に伴って変化するモーター73の駆動電流(定常電流)に応じて、コレクタ電流ICの上限IC_MAXを変更するため、加算値α及び減算値βを、時間経過に伴って変化するモーター73の駆動電流の増減分に合わせて設定することにより、モーター73の電力供給ラインに流れる電流の値を、その時々において変化するモーター73の駆動電流から一定範囲内に抑えることが可能になる。これにより、(1)時間的変化に伴ってモーター73の駆動電流のレベルが変化しても、当該モーター73の駆動電流を安定して電力供給ラインに流しつつ、(2)電力供給ラインにモーター73の駆動電流よりも大きな電流が流れる場合でも、このように流れてしまう大きな電流を、常にモーター73の駆動電流から一定範囲内に抑制することが可能になる。このため、電力供給ラインに過電流が流れることによる不具合の発生を極力回避することが可能になる。
【0077】
また、本発明は上記実施の形態の構成に限られず種々の変形が可能である。また、上記実施形態では、本発明に係る画像形成装置の一実施形態として複合機を用いて説明しているが、これは一例に過ぎず、例えば、コピー機、スキャナー、プリンター等の他の画像形成装置や、その他の電気機器でもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、
図1乃至
図10を用いて上記実施形態により示した構成及び処理は、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明を当該構成及び処理に限定する趣旨ではない。