特許第6589856号(P6589856)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6589856
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/587 20100101AFI20191007BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20191007BHJP
   H01M 10/0525 20100101ALI20191007BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20191007BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20191007BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20191007BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20191007BHJP
   H01M 4/62 20060101ALN20191007BHJP
【FI】
   H01M4/587
   H01M4/36 A
   H01M10/0525
   H01M10/0567
   H01M4/36 E
   H01M4/48
   H01M4/525
   H01M4/505
   !H01M4/62 Z
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-505033(P2016-505033)
(86)(22)【出願日】2015年2月13日
(86)【国際出願番号】JP2015000657
(87)【国際公開番号】WO2015129188
(87)【国際公開日】20150903
【審査請求日】2017年10月4日
(31)【優先権主張番号】特願2014-37871(P2014-37871)
(32)【優先日】2014年2月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104732
【弁理士】
【氏名又は名称】徳田 佳昭
(74)【代理人】
【識別番号】100116078
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 浩希
(72)【発明者】
【氏名】浦田 翔
(72)【発明者】
【氏名】長田 かおる
(72)【発明者】
【氏名】滝尻 学
(72)【発明者】
【氏名】松岡 理恵
【審査官】 青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−192723(JP,A)
【文献】 特開平05−258773(JP,A)
【文献】 特開平06−349524(JP,A)
【文献】 特開平11−224699(JP,A)
【文献】 特表2005−519426(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/036127(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/099278(WO,A1)
【文献】 特開2013−171785(JP,A)
【文献】 特開2011−060605(JP,A)
【文献】 特表2012−508444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00− 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム含有遷移金属酸化物を含む正極と、リチウムイオンを挿入・脱離可能な負極活物質を含む負極と、非水電解と、を備えた非水電解質二次電池において、
前記負極活物質は、炭素材料を主材として含み、
前記負極は、タングステンリチウム複合酸化物及び/又はモリブデンリチウム複合酸化物を含有し
前記タングステンリチウム複合酸化物及び/又はモリブデンリチウム複合酸化物が、前記炭素材料の表面に付着している、非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記タングステンリチウム複合酸化物及び/又はモリブデンリチウム複合酸化物の含有量が、前記負極活物質の総モル量に対して0.001モル%以上1モル%以下である、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記負極は、負極活物質としてさらにケイ素化合物を含んでいる、請求項1または2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記タングステンリチウム複合酸化物及び/又はモリブデンリチウム複合酸化物が、前記ケイ素化合物の表面に付着している、請求項に記載の非水電解質二次電池。
【請求項5】
前記ケイ素化合物が、SiOx(0.5≦x≦1.5)で表されるケイ素酸化物である、請求項又はに記載の非水電解質二次電池。
【請求項6】
前記リチウム含有遷移金属酸化物が、一般式LiaNixM1−xO2(0.95≦a≦1.2、0.8≦x<1、MはCo、Mn及びAlから選択される少なくとも1種類以上の元素)で表される酸化物である、請求項1〜のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
【請求項7】
前記リチウム含有遷移金属酸化物が、一般式LiaNixCoyAlzO2(0.95≦a≦1.2、0.8≦x<1、0<y<0.2、0<z≦0.05、x+y+z=1)で表される酸化物である、請求項に記載の非水電解質二次電池。
【請求項8】
前記リチウム含有遷移金属酸化物は、一次粒子が凝集して形成された二次粒子からなり、 前記一次粒子又は前記二次粒子の少なくとも一方の表面に、タングステンリチウム複合酸化物及び/又はモリブデンリチウム複合酸化物が存在している、請求項1〜のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
【請求項9】
前記タングステンリチウム複合酸化物及び/又はモリブデンリチウム複合酸化物の量が、前記リチウム含有遷移金属酸化物に対して0.1モル%以上1.5モル%以下である、請求項に記載の非水電解質二次電池。
【請求項10】
前記非水電解が、フルオロエチレンカーボネートを含有している、請求項1〜のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
【請求項11】
前記フルオロエチレンカーボネートの含有量が、前記非水電解に対して0.5質量%以上5質量%以下である、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項12】
前記タングステンリチウム複合酸化物がLiWOであり、前記モリブデンリチウム複合酸化物がLiMoOである請求項1〜11のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、ノートパソコン、スマートフォン等の移動情報端末の小型・軽量化が急速に進展しており、その駆動電源としての電池にはさらなる高容量化が要求されている。充放電に伴い、リチウムイオンが正負極間を移動することにより充放電を行う非水電解質二次電池は、高いエネルギー密度を有し、高容量であるので、上記のような移動情報端末の駆動電源として広く利用されている。
【0003】
更に最近では、非水電解質二次電池は、電動工具や電気自動車等の動力用電源としても注目されており、さらなる用途拡大が見込まれている。こうした動力用電源では、長時間使用可能な高容量化と高い出力特性の両立が求められる。
【0004】
出力特性を向上させる方法として、下記特許文献1には、天然黒鉛にピッチとカーボンブラックの混合物を含浸・被覆し、焼成して得た黒鉛粒子と、ピッチとカーボンブラックの混合物を焼成して得た炭素質粒子との混合物を負極活物質として用いることが示唆されている。
【0005】
一方、下記特許文献2には、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素材と周期律表第13族元素を含有する化合物を含む負極材を用いることにより、低温での出力特性が向上することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−04304号公報
【特許文献2】特開2012−94498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1及び2に開示された技術を用いても、出力特性の向上は不十分であり、更なる特性改善が必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、本発明の一局面によれば、非水電解質二次電池は、リチウム含有遷移金属酸化物を含む正極と、リチウムイオンを挿入・脱離可能な負極活物質を含む負極と、非水電解質とを備え、上記負極活物質は炭素材料を主材として含み、上記負極はタングステン化合物及び/又はモリブデンの化合物を含有している。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一局面によれば、負極活物質の表面においてリチウムイオン拡散性が向上することにより、大電流充放電での出力特性が向上した非水電解質二次電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態の一例である非水電解質二次電池の略図的平面図である。
図2図1のII−II線に沿った略図的断面図である。
図3】本発明の実施形態の一例である負極を示す略図的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について以下に説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。実施形態の説明で参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された構成要素の寸法などは、現物と異なる場合がある。具体的な寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0012】
<非水電解質二次電池>
本実施形態の一例である非水電解質二次電池は、リチウム含有遷移金属酸化物を含む正極と、リチウムイオンを挿入・脱離可能な負極活物質を含む負極と、非水電解質とを備え、上記負極活物質は炭素材料を主材として含み、上記負極はタングステン化合物及び/又はモリブデン化合物を含有しているものである。本実施形態に係る非水電解質二次電池では、負極にタングステン化合物及び/又はモリブデン化合物を含有させることにより、負極活物質の表面にリチウムイオン拡散性に優れた良質な被膜を形成し、これにより大電流充放電時に優れた出力特性が得られる非水電解質二次電池を提供するものである。
【0013】
一般に、非水電解質二次電池では、初回充電時に負極活物質上で非水電解液などの還元分解反応が起こり、負極活物質の表面に固体電解質膜と呼ばれる保護被膜が形成される。そして、この保護被膜を介して負極活物質と電解液との間でリチウムイオンのやり取りが行われる。しかし、発明者が検討したところ、このようにして形成された保護被膜は、リチウムイオン拡散性が悪いことに加え、初回充電時に、リチウムイオン拡散性に劣る保護被膜で負極活物質の表面が過剰に被覆されてしまうため、抵抗が上昇し、大きな電流値で充放電させた際の出力特性が低下することがわかった。
【0014】
これに対し、上記構成のように、負極にタングステン化合物及び/又はモリブデン化合物が含有されていると、初回充電時には、まず、負極活物質の表面近傍に存在するタングステン化合物上やモリブデン化合物上で非水電解液などの還元分解反応が起こり、この反応により生成した分解化合物により、負極活物質の表面にリチウムイオン拡散性に優れた良質な被膜が形成される。これにより、被膜内のリチウムイオン拡散性(リチウムイオンの移動)が向上し、大電流充放電時に負極活物質と非水電解液との間でリチウムイオンのやり取りが円滑になる。また、良質な被膜が負極活物質の表面に先に形成されることで、負極活物質上で非水電解液などの還元分解反応により生成するリチウムイオン拡散性に劣る保護被膜により負極活物質の表面が過剰に被覆されるのが抑制される。これらの結果、抵抗上昇を抑制することができ、優れた出力特性が得られると考えられる。
【0015】
正極と負極との間には、セパレータを設けることが好適である。非水電解質二次電池の一例としては、正極及び負極がセパレータを介して巻回されてなる電極体と、非水電解質とが外装体に収納された構造が挙げられる。上記非水電解質二次電池の具体的な構成について、図1及び図2を用いて詳細に説明する。
【0016】
非水電解質二次電池10は、外周囲を覆うラミネート外装体11と、偏平状の巻回電極体12と、非水電解質としての非水電解液とを備えている。巻回電極体12は、正極13と負極14とがセパレータ15を介して互いに絶縁された状態で偏平状に巻回された構造を有している。巻回電極体12の正極13には正極集電タブ16が接続され、同じく負極14には負極集電タブ17が接続されている。巻回電極体12は、外周囲を覆うラミネート外装体11の内部に非水電解液とともに封入されており、ラミネート外装体11の外周縁端部はヒートシール部18により密封されている。図中、延在部19は、電池の予備充電時に電解液等の分解により発生したガスが充放電に及ぼす影響を最小限に抑制するための予備室である。予備充電後に、ラミネート外装体11をA−A線でヒートシールすることにより密閉した後、延在部19を切断する。また、電極体の構造や外装体はこれに限定されない。電極体の構造は、例えば正極及び負極がセパレータを介して交互に積層してなる積層型であってもよい。また、外装体は、例えば金属製の角型電池缶等であってもよい。
【0017】
[負極]
図3に示すように、負極14は、負極集電体14aと、負極集電体14a上に形成された負極合剤層14bとを備える。負極集電体14aには、例えば、導電性を有する薄膜体、特に銅などの負極の電位範囲で安定な金属箔や合金箔、銅などの金属表層を有するフィルムが用いられる。負極合剤層は、負極活物質の他に、増粘剤及び結着剤を含むことが好適である。増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース又はアルコキシセルロース等を用いることが好ましい。結着剤としてはスチレン−ブタジエンゴム(SBR)やポリイミド等を用いることが好ましい。
【0018】
負極活物質としては、炭素材料である負極活物質14cを主材として用いる。炭素材料は、黒鉛を含む粒子である。負極活物質は、炭素材料である負極活物質14cと、ケイ素化合物である負極活物質14dとを備えることが好ましい。ケイ素化合物は、SiO(好ましくは0.5≦x≦1.5)で表されるケイ素酸化物の粒子であることが好ましい。負極活物質14dは、表面が炭素を含む材料で被覆され、負極活物質14dの表面に炭素被膜が形成されていることが好ましい。
【0019】
炭素被膜は、主に非晶質炭素から構成されることが好ましい。非晶質炭素を用いることで、ケイ素化合物表面に良好かつ均一な被膜を形成することが可能となり、ケイ素化合物へのリチウムイオンの拡散をより促進させることが可能となる。
【0020】
負極活物質14cと負極活物質14dとの質量比は、99:1〜70:30であることが好ましく、97:3〜90:10であることがより好ましい。質量比が当該範囲内であれば、出力特性の向上効果が大きくなるためである。これは、負極活物質14dの質量比が大きくなり過ぎると、電池の放電電圧が低下し、出力特性も低下するからである。
【0021】
図3には図示していないが、負極14は、タングステン化合物及び/又はモリブデン化合物を含有している。タングステン化合物及び/又はモリブデン化合物は、負極合剤層14b内に含有されていることが好ましい。
【0022】
タングステン化合物及び/又はモリブデン化合物は、負極活物質14cや負極活物質14dの表面近傍に存在していればよい。タングステン化合物及び/又はモリブデン化合物が負極活物質14cや負極活物質14dの表面近傍に存在すれば、タングステン化合物上やモリブデン化合物上で非水電解液などの還元分解反応が起こることにより生成した分解生成物により、負極活物質14cや負極活物質14dの表面に良質な被膜が形成されるからである。これにより、上述した負極活物質の表面を過剰に被覆するのが抑制される効果と、リチウムイオン拡散性の向上効果が発揮される。
【0023】
ただし、上記効果が一層発揮されるという観点からは、タングステン化合物及び/又はモリブデン化合物は、負極活物質14cや負極活物質14dの表面に付着していることが好ましい。タングステン化合物及び/又はモリブデン化合物は、負極活物質14cや負極活物質14dの表面の一部に付着していることが好適である。即ち、タングステン化合物及び/又はモリブデン化合物は、負極活物質14cや負極活物質14dの表面全体を覆わず、表面の一部が露出していることが好適である。これは、タングステン化合物及び/又はモリブデン化合物もリチウムイオンを透過できるが、タングステン化合物上及び/又はモリブデン化合物上での非水電解液などの還元分解反応により生成した分解生成物による被膜に比べてリチウムイオン拡散性が低いため、結果として性能が低下するからである。
【0024】
負極活物質の表面に付着しているタングステン化合物及び/又はモリブデン化合物は、負極活物質に一部固溶していてもよいし、負極活物質には固溶せず負極活物質の表面に物理的に付着していてもよい。ただし、上記効果は、タングステン化合物上やモリブデン化合物上での非水電解液の還元分解反応生成物により形成された良質な被膜により発揮されるものであるから、タングステン化合物やモリブデン化合物は、負極活物質の表面に物理的に付着していることが特に好ましい。
【0025】
タングステン化合物としては、タングステンを含有する化合物であればよいが、タングステンの酸化物及びタングステンのリチウム複合酸化物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。具体的には、WO、LiWO、WO等が挙げられる。
【0026】
モリブデン化合物としては、モリブデンを含有する化合物であればよいが、モリブデンの酸化物及びモリブデンのリチウム複合酸化物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。具体的には、LiMoO、MoO等が挙げられる。
【0027】
負極活物質の表面には、タングステン化合物のみが存在していてもよいし、モリブデン化合物のみが存在していてもよいし、その両方の化合物が存在していてもよい。また、タングステンとモリブデンの両方が含有された化合物、即ち、タングステンモリブデン含有化合物が負極活物質の表面に存在していてもよい。
【0028】
タングステン化合物及び/又はモリブデン化合物の含有量は、負極活物質に含有されているタングステン及びモリブデンの元素換算で、負極活物質の総モル量に対して0.001モル%以上1.0モル%以下であることが好ましく、0.1モル%以上1.0モル%以下であることがより好ましい。含有量が0.001モル%未満であると、タングステン化合物上やモリブデン化合物上での非水電解質の還元分解による生成物量が少なくなり、本発明の効果を充分に得られないためである。一方、上限に関しては、含有量が1.0モル%を超えると、負極活物質の粒子表面をイオン拡散性の低いタングステン化合物やモリブデン化合物で被覆される面が大きくなり、本発明の効果が得られにくくなるためである。
【0029】
負極にタングステン化合物及び/又はモリブデン化合物を含有させる方法としては、例えば、負極合剤スラリー作製時に、負極活物質とともにタングステン化合物やモリブデン化合物を添加して混合する方法や、負極活物質にタングステン化合物やモリブデン化合物を分散させた溶液を含浸させた後に乾燥させる方法等を挙げることができる。
【0030】
[正極]
正極は、正極集電体と、正極集電体上に形成された正極活物質層とで構成される。正極集電体には、例えば、導電性を有する薄膜体、特にアルミニウムなどの正極の電位範囲で安定な金属箔や合金箔、アルミニウムなどの金属表層を有するフィルムが用いられる。正極活物質層は、正極活物質の他に、導電材及び結着剤を含むことが好ましい。
【0031】
正極活物質は、リチウムと、金属元素Mとを含む酸化物を含み、前記金属元素Mは、コバルト、ニッケル、マンガン等を含む群より選択される少なくとも一種を含む。好ましくは、リチウム含有遷移金属酸化物である。リチウム含有遷移金属酸化物は、Mg、Al等の非遷移金属元素を含有するものであってもよい。具体例としては、コバルト酸リチウム、Ni−Co−Mn、Ni−Mn−Al、Ni−Co−Al等のリチウム含有遷移金属酸化物が挙げられる。特に、高容量化の観点からは、Ni−Co−Alのリチウム含有遷移金属酸化物が好ましい。正極活物質は、これらを1種単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
【0032】
リチウム含有遷移金属酸化物は、金属元素の主成分がNiであることが好ましい。ここで、主成分がNiであるとは、リチウム含有遷移金属酸化物に含まれる金属元素のうち、Niの割合(モル数)が最も多いことを意味する。
【0033】
リチウム含有遷移金属酸化物は、一般式LiNi1−x(0.95≦a≦1.2、0.8≦x<1、MはCo、Mn及びAlから選択される少なくとも1種類以上の元素)で表される酸化物であることが好ましい。
【0034】
Liの組成比aが0.95≦a≦1.2の条件を満たすものを用いるのは、0.95≦a≦1.2の条件を満たすと、NiイオンがLiサイトに入るカチオンミキシングが生じにくくなり、出力特性が向上するからである。また、Niの組成比xが0.8≦x<1の条件を満たすものを用いるのは、0.8≦xの条件を満たし、リチウム含有遷移金属酸化物に含まれる金属元素のうちNiの割合が80%以上になると、充放電反応に寄与できるNiが増え、高容量になるためである。
【0035】
リチウム含有遷移金属酸化物は、特に、一般式LiNiCoAl(0.95≦a≦1.2、0.8≦x<1、0<y<0.2、0<z≦0.05、x+y+z=1)で表される酸化物であることが好ましい。
【0036】
Coの組成比yが0<y<0.2の条件を満たすものを用いるのは、y<0.2の条件を満たすと、高容量を維持しながら、かつ充放電に伴うリチウム酸ニッケル化合物の相転移を抑制できるからである。また、Alの組成比zが0<z≦0.05の条件を満たすものを用いるのは、0<z≦0.05の条件を満たすと、正極の熱安定性が向上するからである。一方、0.05<zとなると、出力特性が低下する。
【0037】
リチウム含有遷移金属酸化物は、一次粒子が凝集して形成された二次粒子からなることが好ましい。リチウム含有遷移金属酸化物の一次粒子、又は、リチウム含有遷移金属酸化物の二次粒子の表面の少なくとも一方の表面には、タングステン化合物及び/又はモリブデン化合物が存在していることが好ましく、一次粒子と二次粒子の両方の表面に存在していることが好ましい。リチウム含有遷移金属酸化物の表面にタングステン化合物及び/又はモリブデン化合物が存在していると、非水電解液と接触する正極界面での反応抵抗が抑制される結果、出力特性が向上すると考えられる。
【0038】
リチウム含有遷移金属酸化物の表面に存在させるタングステン化合物及び/又はモリブデン化合物としては、上述の負極で記載したタングステン化合物やモリブデン化合物が挙げられる。
【0039】
リチウム含有遷移金属酸化物の表面に存在させるタングステン化合物及び/又はモリブデン化合物の量は、リチウム含有遷移金属酸化物中のLiを除く金属元素の総モル量に対して、0.1モル%以上1.5モル%以下であることが好ましい。
【0040】
タングステン化合物及び/又はモリブデン化合物は、リチウム含有遷移金属酸化物に一部固溶していてもよいし、リチウム含有遷移金属酸化物には固溶せずリチウム含有遷移金属酸化物の表面に物理的に付着していてもよい。上記出力特性の効果が一層発揮されるという観点からは、タングステン化合物及び/又はモリブデン化合物は、リチウム含有遷移金属酸化物には固溶せずリチウム含有遷移金属酸化物の表面に物理的に付着していることが好ましい。
【0041】
リチウム含有遷移金属酸化物の表面に、タングステン化合物及び/又はモリブデン化合物を存在させる方法としては、例えば、正極合剤スラリー作製時に、リチウム含有遷移金属酸化物とタングステン化合物やモリブデン化合物とを混合する方法や、焼成後のリチウム含有遷移金属酸化物にタングステン化合物やモリブデン化合物を混合した後、熱処理する方法等を挙げることができる。後述の方法で製造した場合は、リチウム含有遷移金属酸化物の一次粒子及び二次粒子の両方の表面にタングステン化合物及び/又はモリブデン化合物を存在させることができるので、より好ましい。
【0042】
[非水電解質]
非水電解質は、非水系溶媒と、非水系溶媒に溶解した電解質塩とを含む。非水電解質は、液体電解質(非水電解液)に限定されず、ゲル状ポリマー等を用いた固体電解質であってもよい。
【0043】
非水系溶媒としては、例えば、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、環状カルボン酸エステルなどが用いられる。環状炭酸エステルとしては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ビニレンカーボネート(VC)などが挙げられる。鎖状炭酸エステルとしては、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジメチルカーボネート(DMC)などが挙げられる。環状カルボン酸エステルとしては、γ−ブチロラクトン(GBL)、γ−バレロラクトン(GVL)などが挙げられる。鎖状カルボン酸エステルとしては、メチルプロピオネート(MP)フルオロメチルプロピオネート(FMP)が挙げられる。非水溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
非水系溶媒は、環状炭酸エステルであるフルオロエチレンカーボネート(FEC)を含有していることが好ましい。非水電解質にFECが含有されていると、FECが初回充電時にタングステン化合物上やモリブデン化合物上で分解し、負極活物質の表面にリチウムイオン拡散性の高い被膜を形成できるためである。
【0045】
電解質塩としては、例えばリチウム塩を用いることができ、リチウム塩としては、P、B、F、O、S、N、Clからなる群から選択される1種以上の元素を含むリチウム塩を用いることができる。具体例としては、LiClO、LiBF、LiPF、LiAlCl、LiSbF、LiSCN、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiCl、LiBr、Lii、クロロボランリチウム、ホウ酸塩類、イミド塩類などを用いることができる。この中でも、イオン伝導性と電気化学的安定性の観点から、LiPFを用いることが好ましい。電解質塩は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これら電解質塩は、非水電解質1Lに対し0.8〜1.5molの割合で含まれていることが好ましい。
【0046】
[セパレータ]
セパレータには、例えば、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シートが用いられる。多孔性シートの具体例としては、微多孔薄膜、織布、不織布等が挙げられる。セパレータの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが好適である。
【実施例】
【0047】
以下、実験例を挙げ、本発明の実施例をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
【0048】
〔第1実験例〕
(実験例1)
[負極の作製]
負極活物質としての黒鉛粉末100質量部と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)1質量部と、結着剤としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)1質量部と、負極添加物としての酸化タングステン(WO)とを、酸化タングステン中のタングステン原子が上記黒鉛粉末の炭素原子に対して0.05モル%となるように混合し、さらに水を適宜加えた後、負極合剤スラリーを調製した。
【0049】
次に、負極合剤スラリーを、厚みが10μmの銅箔からなる負極集電体の両面に塗布し、乾燥した。これを所定の電極サイズに切り取り、ローラーを用いて圧延した。その後、負極集電体に負極集電タブを取り付け、負極集電体上に負極合剤層が形成された負極を作製した。
【0050】
[正極の作製]
リチウム含有遷移金属酸化物としてのLiNi0.82Co0.15Al0.03で表されるリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物100質量部に、炭素導電剤としてのカーボンブラック1質量部と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン0.9質量部とを混合し、さらに、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)を適量加えることにより正極合剤スラリーを調製した。次に、該正極合剤スラリーを、厚みが15μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に塗布し、乾燥した。これを所定の電極サイズに切り取り、ローラーを用いて圧延した。その後、正極集電体に正極集電タブを取り付け、正極集電体上に正極合剤層が形成された正極を作製した。
【0051】
[電極体の作製]
偏平状の巻回電極体の作製には、上記正極を1枚、上記負極を1枚、ポリエチレン製微多孔膜からなるセパレータを1枚用いた。まず、正極と負極とをセパレータを介して互いに絶縁した状態で対向させた。次に、円柱型の巻き芯を用いて、渦巻き状に巻回した。この際、正極集電タブ及び負極集電タブは、共に電極内においてそれぞれ最外周側に位置するように配置した。その後、巻き芯を引き抜いて巻回電極体を作製した後、押し潰して、偏平状の巻回電極体を得た。この偏平状の巻回電極体は、正極と負極とがセパレータを介して積層された構造を有している。
【0052】
[非水電解液の調製]
エチレンカーボネート(EC)と、ジメチルカーボネート(DMC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)とを、20:60:20の体積比で混合した混合溶媒に対して、ビニレンカーボネート(VC)を2質量%溶解させた。さらに、電解質としての六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を、上記混合溶媒に対して1.3モル/リットルの濃度になるように溶解させて、非水電解液を調製した。
【0053】
[電池の作製]
このようにして調製した非水電解液と上記偏平状の巻回電極体とを、アルゴン雰囲気下のグローブボックス中にて、アルミニウム製のラミネート外装体内に挿入し、図1及び図2に示される構造を有する、ラミネート形非水電解質二次電池10を作製した。また、当該非水電解質二次電池を、電池電圧が4.2Vとなるまで充電したときの電池の設計容量は、950mAhであった。
このようにして作製した電池を、以下、電池A1と称する。
【0054】
(実験例2)
負極合剤スラリーを調製する際に、実験例1において酸化タングステンを添加しなかったこと以外は、上記実験例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、電池Z1と称する。
【0055】
(実験例3)
負極合剤スラリーを調製する際に、酸化タングステンの添加量を、実験例1の0.05モル%に代えて、0.1モル%としたこと以外は、上記実験例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、電池A2と称する。
【0056】
(実験例4)
負極合剤スラリーを調製する際に、酸化タングステンの添加量を、実験例1の0.05モル%に代えて、0.5モル%としたこと以外は、上記実験例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、電池A3と称する。
【0057】
(実験例5)
負極合剤スラリーを調製する際に、酸化タングステンの添加量を、実験例1の0.05モル%に代えて、1.0モル%としたこと以外は、上記実験例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、電池A4と称する。
【0058】
(実験例6)
負極合剤スラリーを調製する際に、実験例1の酸化タングステン(WO)に代えて、タングステン酸リチウム(LiWO)を用い、このタングステン酸リチウムを、タングステン酸リチウム中のタングステン原子が上記黒鉛粉末の炭素原子に対して0.01モル%となるように混合したこと以外は、上記実験例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、電池A5と称する。
【0059】
(実験例7)
負極合剤スラリーを調製する際に、タングステン酸リチウムの添加量を、実験例6の0.01モル%に代えて、0.05モル%としたこと以外は、上記実験例6と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、電池A6と称する。
【0060】
(実験例8)
負極合剤スラリーを調製する際に、負極活物質としての黒鉛粉末96質量部と、負極活物質としての炭素の被覆層を有するSiOを4質量部と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)1質量部と、結着剤としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)1質量部と、負極添加物としての酸化タングステン(WO)とを、酸化タングステン中のタングステン原子が上記黒鉛粉末の炭素原子に対して0.1モル%となるように混合したこと以外は、上記実験例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、電池A7と称する。
【0061】
(実験)
<出力特性試験>
[容量の算出]
上記のようにして作製された電池A1〜A7及び電池Z1の各電池について、25℃の温度条件下で、以下の条件で充放電し、下記式(1)により1It/0.2It容量比を求めた。その結果を表1に示す。
【0062】
(充放電条件)
・初期の充放電条件
充電条件一定で、放電条件を変えて充放電を繰り返した。
・1サイクル目の充放電条件
0.5It(475mA)の電流で電池電圧が4.2Vとなるまで、定電流充電を行った。さらに、4.2Vの電圧で電流値が0.02It(19mA)となるまで定電圧充電を行った。そして、0.2It(190mA)の電流で電池電圧が2.5Vとなるまで定電流放電を行った。
・2サイクル目の充放電条件
1サイクル目と同様の条件で充電した後、1It(950mA)の電流で電池電圧が2.5Vとなるまで定電流放電を行った。
(出力特性の算出式)
1It/0.2It容量比(%)=(2サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100・・・(1)
【0063】
【表1】

【0064】
上記表1から明らかなように、負極にタングステン化合物を含有しており、負極活物質の表面近傍にWO又はLiWOのタングステン化合物が存在する電池A1〜電池A7は、負極にタングステン化合物を含有していない電池Z1に比べて1It/0.2It容量比が増加しており、出力特性が向上していることがわかる。このような結果が得られた理由について定かではないが、以下の説明によるものと推察される。
【0065】
電池A1〜電池A7では、初回充電時に、まず、負極活物質粒子(炭素材料粒子)の表面近傍に存在するタングステン化合物上で非水電解液の還元分解反応が生じ、この反応により生成した分解化合物が、炭素材料粒子の表面にリチウムイオン拡散性に優れた良質な被膜を形成したと考えられる。この良質な被膜により、被膜内におけるリチウムイオン拡散性が向上し、大電流充放電時に負極活物質と非水電解液との間でリチウムイオンの享受が円滑になることで、抵抗増加が抑制されたと考えられる。加えて、負極活物質の表面に良質な被膜が先に形成されたことで、その後に負極活物質上で還元分解反応が起こることにより生成したリチウムイオン拡散性に劣る保護被膜が負極活物質の表面に過剰に形成されるのが抑制され、これによっても抵抗上昇が抑制されたと考えられる。これらの結果、出力特性が向上したと考えられる。
【0066】
また、負極添加物(タングステン化合物)としてWOを添加した電池A1〜電池A4を比較した場合、電池A1〜電池A3にかけてタングステン化合物の添加量を多くするほど、1It/0.2It容量比が向上していることがわかる。これは、タングステン化合物の添加量が多くなるほど、負極に含有されるタングステン化合物の量も多くなり、負極活物質の表面近傍に存在するタングステン上での電解液の分解による負極活物質表面への良質な被膜形成が効果的に行われたためと考えられる。
【0067】
ただし、電池A4では、電池A3に比べてタングステン化合物の添加量が多くなっているが、1It/0.2It容量比は逆に低下している。これは、負極に含有されるタングステン化合物の量が多くなりすぎると、負極活物質表面を被覆するタングステン化合物の割合も増えるため、これが抵抗となり、負極活物質表面に良質な被膜が形成されたことによる抵抗増加の抑制効果よりも大きくなってしまったためと考えられる。
【0068】
上記より、タングステン化合物上での非水電解液の分解反応により負極活物質表面に形成された良質な被膜のリチウムイオン拡散性は、負極活物質上での非水電解液の分解反応により負極活物質表面に形成された保護被膜のリチウムイオン拡散性よりも優れているが、負極活物質上に存在するタングステン化合物自体のリチウムイオン拡散性は悪いため、最適なタングステン化合物の添加量が存在すると考えられる。
【0069】
また、負極活物質のみが異なる電池A2及び電池A7を比較した場合、負極活物質として炭素材料及びケイ素化合物を用いている電池A7は、負極活物質として炭素材料のみを用いている電池A2に比べて、1It/0.2It容量比が増加していることがわかる。このことから、負極活物質としては、炭素材料のみを用いるより、炭素材料とケイ素化合物の両方を用いることが好ましく、両方を用いた場合には上述の出力特性の向上効果が一層発揮されると考えられる。
【0070】
これは、電池A7では、炭素材料粒子の表面にリチウムイオン拡散性に優れた良質が形成されたことに加えて、ケイ素化合物粒子の表面にもリチウムイオン拡散性に優れた良質な被膜が形成されるが、タングステン化合物上での還元分解生成物による被膜形成が、ケイ素化合物粒子表面では炭素材料粒子表面よりも効果的に行われたためと考えられる。このため、電池A7は電池A2に比べて容量比が向上したと考えられる。
【0071】
尚、上記したタングステンと周期律表において同属元素であるモリブデンについても、上述のメカニズムと同様に、モリブデン化合物上でまず非水電解液の還元分解反応が生じ、この反応により生成した分解化合物が負極活物質表面にリチウムイオン拡散性に優れた良質な被膜が形成されると考えられる。その結果、抵抗増加が抑制され、大電流充放電での出力特性が向上する。
【0072】
〔第2実験例〕
(実験例9)
正極合剤スラリーを調製する際に、リチウム含有遷移金属酸化物として、実験例1のLiNi0.82Co0.15Al0.03で表されるリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物に代えて、LiNi0.91Co0.06Al0.03で表されるリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物を用いたこと以外は、上記実験例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、電池A8と称する。
【0073】
(実験例10)
負極合剤スラリーを調製する際に、実験例9において酸化タングステンを添加しなかったこと以外は、上記実験例9と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、電池Z2と称する。
【0074】
上記のようにして作製された電池A8及び電池Z2の各電池について、上述した方法と同様にして、1It/0.2It容量比を求めた。その結果を、電池Z1及び電池A2の結果と纏めて表2に示す。
【0075】
【表2】

【0076】
上記表2から明らかなように、Niの割合が91%であるリチウム含有遷移金属酸化物を用いた電池A8及び電池Z2を比較した場合、負極にタングステン化合物を含有しており、負極活物質の表面近傍にWOのタングステン化合物が存在する電池A8は、負極にタングステン化合物を含有していない電池Z2に比べて1It/0.2It容量比が増加しており、出力特性が向上していることがわかる。
【0077】
〔第3実験例〕
(実験例11)
[正極合剤スラリーの調製]
リチウム含有遷移金属酸化物としてのLiNi0.82Co0.15Al0.03で表されるリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物に、酸化タングステン(WO)を混合した後、200℃で熱処理することにより、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の表面にタングステン化合物が存在する正極活物質を得た。
【0078】
次に、得られた正極活物質100質量部に、炭素導電剤としてのカーボンブラック1質量部と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン0.9質量部とを混合し、さらに、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)を適量加えることにより正極合剤スラリーを調製した。
【0079】
上記で調製した正極合剤スラリーを用いたこと以外は、上記実験例2と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、電池A9と称する。
【0080】
尚、正極をSEMで観察したところ、リチウム含有遷移金属酸化物であるリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の粒子は、平均粒径が181nmの一次粒子が凝集してなる平均粒径11.8μmの二次粒子であることを確認した。また、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の一次粒子及び二次粒子の両方の表面に、酸化タングステン酸リチウムの粒子が付着していることが確認された。
【0081】
上記のようにして作製された電池A9について、上述した方法と同様にして、1It/0.2It容量比を求めた。その結果を、電池Z1及び電池A2の結果と纏めて表3に示す。
【0082】
【表3】

【0083】
上記表3から明らかなように、リチウム含有遷移金属酸化物の表面にタングステン化合物が存在する電池A9は、リチウム含有遷移金属酸化物の表面にタングステン化合物を存在させていない電池A2に比べて、1It/0.2It容量比が向上しており、出力特性に優れていることがわかる。
【0084】
〔第4実験例〕
(実験例12)
非水電解液を調製する際、実験例1の非水電解液に、さらにフルオロエチレンカーボネート(FEC)を、上記混合溶媒に対して0.5質量%溶解させたこと以外は、上記実験例4と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下電池A10称する。
【0085】
上記のようにして作製された電池A10について、上述した方法と同様にして、1It/0.2It容量比を求めた。その結果を、電池Z1及び電池A3の結果と纏めて表4に示す。
【0086】
【表4】

【0087】
上記表4から明らかなように、非水電解液にFECを含有している電池A10は、非水電解液にFECを含有していない電池A3に比べて、1It/0.2It容量比が向上しており、出力特性に優れていることがわかる。
【0088】
このような結果が得られた理由は、FECがその他の非水電解液成分よりもタングステン化合物上で還元分解しやすく、その還元分解生成物が負極活物質上の被膜形成物となることで、負極活物質上での非水電解液の還元分解によるリチウムイオン透過性に劣る保護被膜の形成を一層抑制できたためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の一局面の非水電解質二次電池用正極は、例えば、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV、PHEV)や電動工具のような駆動電源で、特に長寿命が必要とされる用途に適用することができる。さらに、携帯電話、ノートパソコン、スマートフォン、タブレット端末等の移動情報端末への展開も期待できる。
【符号の説明】
【0090】
10 非水電解質二次電池
11 ラミネート外装体
12 巻回電極体
13 正極
14 負極
14a 負極集電体
14b 負極合剤層
14c 負極活物質
14d 負極活物質
15 セパレータ
16 正極集電タブ
17 負極集電タブ
18 ヒートシール部
19 延在部
図1
図2
図3