特許第6589893号(P6589893)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6589893ヘッドクリーニング機構およびそれを備えたインクジェット記録装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6589893
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】ヘッドクリーニング機構およびそれを備えたインクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20191007BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
   B41J2/165 401
   B41J2/165 303
   B41J2/14 501
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-6872(P2017-6872)
(22)【出願日】2017年1月18日
(65)【公開番号】特開2018-114666(P2018-114666A)
(43)【公開日】2018年7月26日
【審査請求日】2018年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒木 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】佐武 健一
(72)【発明者】
【氏名】乾 靖隆
【審査官】 高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−168912(JP,A)
【文献】 特開2007−083496(JP,A)
【文献】 特開2016−022721(JP,A)
【文献】 特開2004−268352(JP,A)
【文献】 特開2009−172981(JP,A)
【文献】 特開2006−218748(JP,A)
【文献】 特開2016−150552(JP,A)
【文献】 特開2003−001834(JP,A)
【文献】 特開2006−255924(JP,A)
【文献】 特開2007−076296(JP,A)
【文献】 特開2017−159568(JP,A)
【文献】 特開2018−103370(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0001710(US,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2005−0081861(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上にインクを吐出する複数のインク吐出口が開口するインク吐出領域が設けられたインク吐出面を含む記録ヘッドと、
前記インク吐出面を所定方向に拭くワイパーと、
を備え、
前記記録ヘッドは、前記インク吐出面に対して前記インク吐出面を前記ワイパーが拭く方向であるワイピング方向の上流側に配置され、前記ワイピング方向の下流側に向かって下方に傾斜する傾斜面を含み、
前記傾斜面のうちのワイピング動作時に前記ワイパーが当接する位置よりも前記ワイピング方向の上流側には、クリーニング液を供給する複数のクリーニング液供給口が設けられており、
前記傾斜面のうちの前記クリーニング液供給口よりも前記ワイピング方向の下流側には、前記ワイピング方向の下流側に向かうにしたがって前記ワイピング方向と直交するヘッド幅方向の外側に向かう溝が形成されていることを特徴とするヘッドクリーニング機構。
【請求項2】
前記傾斜面の前記インク吐出面に対する傾斜角は、前記インク吐出面を前記ワイパーが拭いている状態での前記ワイパーの先端部の前記インク吐出面に対する圧接角よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のヘッドクリーニング機構。
【請求項3】
前記傾斜角は、15°以上45°未満であることを特徴とする請求項2に記載のヘッドクリーニング機構。
【請求項4】
前記溝は、前記傾斜面の前記ヘッド幅方向の両端部近傍まで形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のヘッドクリーニング機構。
【請求項5】
前記溝は、前記ヘッド幅方向に連続して形成されていることを特徴とする請求項4に記載のヘッドクリーニング機構。
【請求項6】
前記溝は、前記ヘッド幅方向に所定の間隔を隔てて複数設けられていることを特徴とする請求項4に記載のヘッドクリーニング機構。
【請求項7】
前記溝は、前記ワイピング方向に独立して複数設けられており、
複数の前記溝は、前記ヘッド幅方向にオーバーラップするように配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のヘッドクリーニング機構。
【請求項8】
前記溝は、前記傾斜面のうちのワイピング動作時に前記ワイパーが当接する位置よりも前記ワイピング方向の上流側に設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のヘッドクリーニング機構。
【請求項9】
前記溝の深さは、0.1mm以上0.5mm以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のヘッドクリーニング機構。
【請求項10】
前記記録ヘッドは、
前記インク吐出面を有するインク吐出ヘッド部と、
前記傾斜面と、前記傾斜面の下流端から前記インク吐出面に向かって延びる下面と、を有するクリーニング液供給ヘッド部と、
によって構成されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のヘッドクリーニング機構。
【請求項11】
前記傾斜面には、撥水処理が施されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のヘッドクリーニング機構。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のヘッドクリーニング機構を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙のような記録媒体にインクを吐出するインク吐出口を有する記録ヘッドを含むヘッドクリーニング機構およびそれを備えたインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ファクシミリ、複写機、プリンターのような記録装置として、インクを吐出して画像を形成するインクジェット記録装置が、高精細な画像を形成できることから広く用いられている。
【0003】
このようなインクジェット記録装置では、画像記録のためのインク滴と共に吐出される微小なインク滴(以下、ミストと称する)や、インク滴が記録媒体に付着した際に発生する跳ね返りミストが、記録ヘッドのインク吐出面に付着して固化する。インク吐出面のミストが徐々に増加しインク吐出口に重なると、インクの直進性の悪化(飛翔曲がり)や不吐出等が発生して記録ヘッドの印字性能が低下する。
【0004】
そこで、記録ヘッドのインク吐出面を清浄化するために、インク吐出面のうちの複数のインク吐出口が開口するインク吐出領域の外側(ワイパーのワイピング方向上流側)の部分に、クリーニング液供給口を複数個設けたインクジェット記録装置が知られている。このインクジェット記録装置では、クリーニング液供給口からクリーニング液を供給した後、ワイパーをクリーニング液供給口よりも外側からインク吐出面に沿って移動させることによって、ワイパーでクリーニング液を保持しながらインク吐出面を拭くことができる。このようにして、記録ヘッドの回復処理を行うことができる。
【0005】
なお、記録ヘッドのインク吐出面にクリーニング液供給口を複数個設けたインクジェット記録装置は、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−83496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来のインクジェット記録装置では、記録ヘッドの回復処理を行う度にワイパーがクリーニング液供給口上を通過するため、クリーニング液供給口の縁部によってワイパーの先端に傷が生じるという問題点がある。なお、ワイパーの先端の傷が大きくなりワイパーの先端に欠けが生じると、ワイパーの拭き取り性能は著しく低下し、拭き残しが生じる。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、ワイパーが損傷するのを抑制しながら、インク吐出面を清浄化することが可能なヘッドクリーニング機構およびそれを備えたインクジェット記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の第1の局面のヘッドクリーニング機構は、記録媒体上にインクを吐出する複数のインク吐出口が開口するインク吐出領域が設けられたインク吐出面を含む記録ヘッドと、インク吐出面を所定方向に拭くワイパーと、を備える。記録ヘッドは、インク吐出面に対してインク吐出面をワイパーが拭く方向であるワイピング方向の上流側に配置され、ワイピング方向の下流側に向かって下方に傾斜する傾斜面を含み、傾斜面のうちのワイピング動作時にワイパーが当接する位置よりもワイピング方向の上流側には、クリーニング液を供給する複数のクリーニング液供給口が設けられている。傾斜面のうちのクリーニング液供給口よりもワイピング方向の下流側には、ワイピング方向の下流側に向かうにしたがってワイピング方向と直交するヘッド幅方向の外側に向かう溝が形成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の局面のヘッドクリーニング機構によれば、記録ヘッドは、インク吐出面に対してワイピング方向の上流側に配置され、ワイピング方向の下流側に向かって下方に傾斜する傾斜面を含み、傾斜面には、クリーニング液を供給する複数のクリーニング液供給口が設けられている。これにより、クリーニング液供給口からクリーニング液を供給すると、クリーニング液は、傾斜面を下流側に向かって流れる。クリーニング液が傾斜面の下流端に到達した後、ワイパーを傾斜面の下流端よりもワイピング方向上流側からインク吐出面に沿って移動させることによって、ワイパーでクリーニング液を保持しながらインク吐出面を拭くことができる。このため、インク吐出面を清浄化することができる。
【0011】
また、傾斜面のうちのワイピング動作時にワイパーが当接する位置よりもワイピング方向の上流側に、クリーニング液供給口が設けられている。これにより、記録ヘッドの回復動作を行う際に、ワイパーはクリーニング液供給口の縁部に接触しない。このため、ワイパーの先端がクリーニング液供給口の縁部と擦れることがないので、ワイパーの先端が損傷するのを抑制することができる。
【0012】
また、傾斜面のうちのクリーニング液供給口よりもワイピング方向の下流側には、ワイピング方向の下流側に向かうにしたがってワイピング方向と直交するヘッド幅方向の外側に向かう溝が形成されている。これにより、クリーニング液は、傾斜面を下流側に向かって流れる際に、溝を伝ってヘッド幅方向の外側に広がる。このため、ワイパーによりクリーニング液を拭き取り始めてからクリーニング液が記録ヘッドのヘッド幅方向全域に広がるまでの時間を短縮することができるので、インク吐出面のヘッド幅方向の両端部に拭き残しが生じるのを抑制することができる。なお、溝を設けない場合、クリーニング液同士が合一化し1つの大きな液滴になりやすい。このとき、クリーニング液は、ヘッド幅方向の中央部に集まる。このため、ワイパーによりクリーニング液を拭き取り始めてからクリーニング液がワイパーの幅方向全域に広がるまでに、時間がかかる。これにより、インク吐出面のヘッド幅方向の両端部に拭き残しが生じる場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態の記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置の構造を示す図
図2図1に示すインクジェット記録装置の第1搬送ユニット及び記録部を上方から見た図
図3】記録部のラインヘッドを構成する記録ヘッドの図
図4】記録ヘッドをインク吐出面側から見た図
図5】記録ヘッドのクリーニング液供給部材を斜め下方から見た図
図6】記録ヘッドのクリーニング液供給部材を下方から見た図
図7】クリーニング液供給部材の構造を示す図
図8】ワイパーがインク吐出面に圧接された状態で矢印A方向に移動している状態を示す図
図9】ワイパーがクリーニング液供給部材の傾斜面に圧接された状態で矢印A方向に移動している状態を示す図
図10】メンテナンスユニットを記録部の下方に配置した状態を示す図
図11】クリーニング液が傾斜面をワイピング方向の下流側に向かって流れる状態を示す図
図12】ワイパーを記録ヘッドの下方に配置した状態を示す図
図13図12の状態からワイパーを上昇させクリーニング液供給部材に圧接させた状態を示す図
図14図13の状態からワイパーをクリーニング液供給部材に圧接させた状態で矢印A方向に移動させた状態を示す図
図15図14の状態からワイパーをさらに矢印A方向に移動させた状態を示す図
図16図15の状態からワイパーをさらに矢印A方向に移動させた後、ワイパーを下降させインク吐出面から離間させた状態を示す図
図17】本発明の第2実施形態のクリーニング液供給部材を下方から見た図
図18】本発明の第2実施形態のクリーニング液供給部材の傾斜面をクリーニング液がワイピング方向の下流側に向かって流れる状態を示す図
図19】本発明の第3実施形態のクリーニング液供給部材を下方から見た図
図20】本発明の第3実施形態のクリーニング液供給部材の傾斜面をクリーニング液がワイピング方向の下流側に向かって流れる状態を示す図
図21】本発明の第4実施形態のクリーニング液供給部材を下方から見た図
図22】本発明の第4実施形態のクリーニング液供給部材の傾斜面をクリーニング液がワイピング方向の下流側に向かって流れる状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1に示すように、本発明の第1実施形態のインクジェット記録装置100の左側部には用紙S(記録媒体)を収容する給紙トレイ2が設けられており、この給紙トレイ2の一端部には収容された用紙Sを、最上位の用紙Sから順に一枚ずつ後述する第1搬送ユニット5へと搬送給紙するための給紙ローラー3と、給紙ローラー3に圧接され従動回転する従動ローラー4とが設けられている。
【0016】
用紙搬送方向(矢印X方向)に対し給紙ローラー3及び従動ローラー4の下流側(図1の右側)には、第1搬送ユニット5及び記録部9が配置されている。第1搬送ユニット5は、第1駆動ローラー6と、第1従動ローラー7と、第1駆動ローラー6及び第1従動ローラー7に掛け渡された第1搬送ベルト8とを含む構成であり、インクジェット記録装置100の制御部110からの制御信号により第1駆動ローラー6が時計回り方向に回転駆動されることにより、第1搬送ベルト8に保持された用紙Sが矢印X方向に搬送される。
【0017】
記録部9は、ヘッドハウジング10と、ヘッドハウジング10に保持されたラインヘッド11C、11M、11Y、及び11Kを備えている。これらのラインヘッド11C〜11Kは、第1搬送ベルト8の搬送面に対して所定の間隔(例えば1mm)が形成されるような高さに支持され、図2に示すように、用紙搬送方向と直交する用紙幅方向(図2の上下方向)に沿って延びる1個以上(ここでは1個)の記録ヘッド17によって構成されている。
【0018】
図3及び図4に示すように、記録ヘッド17のヘッド部(インク吐出ヘッド部)18のインク吐出面F1には、インク吐出口18a(図2参照)が多数配列されたインク吐出領域R1が設けられている。なお、ヘッド部18の少なくともインク吐出面F1は、例えばSUS(ステンレス鋼)によって形成されている。インク吐出面F1は、フッ素系またはシリコン系の撥水剤を塗布することにより撥水処理が施されており、ここでは水に対する接触角が113°となっている。
【0019】
各ラインヘッド11C〜11Kを構成する記録ヘッド17には、それぞれインクタンク(図示せず)に貯留されている4色(シアン、マゼンタ、イエロー及びブラック)のインクがラインヘッド11C〜11Kの色毎に供給される。
【0020】
各記録ヘッド17は、制御部110(図1参照)からの制御信号により外部コンピューターから受信した画像データに応じて、第1搬送ベルト8の搬送面に吸着保持されて搬送される用紙Sに向かってインク吐出口18aからインクを吐出する。これにより、第1搬送ベルト8上の用紙Sにはシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のインクが重ね合わされたカラー画像が形成される。
【0021】
また、記録ヘッド17には、クリーニング液を供給するクリーニング液供給部材(クリーニング液供給ヘッド部)60が設けられている。クリーニング液供給部材60は、ヘッド部18に対して後述するワイパー35のワイピング方向上流側(図3の右側)に隣接して配置されている。また、クリーニング液供給部材60は、ワイピング方向の下流側に向かって下方に傾斜する傾斜面62と、傾斜面62のワイピング方向の下流端62a(図3の下端)からインク吐出面F1に向かって延びる下面F2と、を有する。
【0022】
傾斜面62は、クリーニング液を供給するクリーニング液供給口60a(図5参照)が多数配列されたクリーニング液供給領域R2を含む。なお、クリーニング液供給部材60は、例えば樹脂やSUSによって形成されている。クリーニング液供給部材60の表面(例えば、傾斜面62および下面F2)には、フッ素系またはシリコン系の撥水剤を塗布することによりインク吐出面F1よりも弱い撥水処理が施されており、クリーニング液供給部材60の水に対する接触角は95°以下となっている。クリーニング液供給部材60の詳細構造については、後述する。
【0023】
図1に戻って、用紙搬送方向に対し第1搬送ユニット5の下流側(図1の右側)には第2搬送ユニット12が配置されている。第2搬送ユニット12は、第2駆動ローラー13と、第2従動ローラー14と、第2駆動ローラー13及び第2従動ローラー14に掛け渡された第2搬送ベルト15とを含む構成であり、第2駆動ローラー13が時計回り方向に回転駆動されることにより、第2搬送ベルト15に保持された用紙Sが矢印X方向に搬送される。
【0024】
記録部9にてインク画像が記録された用紙Sは第2搬送ユニット12へと送られ、第2搬送ユニット12を通過する間に用紙S表面に吐出されたインクが乾燥される。また、第2搬送ユニット12の下方にはメンテナンスユニット19及びキャップユニット90が配置されている。後述するワイパー35による拭き取り動作(ワイピング動作)を実行する際には、第1搬送ユニット5が下降し、メンテナンスユニット19は、記録部9の下方に移動し、記録ヘッド17のインク吐出口18aから強制排出されたインクおよびクリーニング液供給口60aから供給されたクリーニング液を拭き取り、拭き取られたインクおよびクリーニング液を回収する。記録ヘッド17のインク吐出面F1(図3参照)をキャッピングする際には、第1搬送ユニット5が下降し、キャップユニット90は、記録部9の下方に水平移動し、さらに上方に移動して記録ヘッド17の下面に装着される。
【0025】
また、用紙搬送方向に対し第2搬送ユニット12の下流側には、画像が記録された用紙Sを装置本体外へと排出する排出ローラー対16が設けられており、排出ローラー対16の下流側には、装置本体外へと排出された用紙Sが積載される排出トレイ(図示せず)が設けられている。
【0026】
メンテナンスユニット19は、インク吐出面F1に沿って移動可能な複数のワイパー35(図12参照)と、複数のワイパー35が固定された略矩形状のキャリッジ(図示せず)と、キャリッジを支持する支持フレーム(図示せず)とで構成されている。キャリッジ(図示せず)は支持フレーム(図示せず)に対し矢印AA′方向に摺動可能に支持される。
【0027】
ワイパー35は、各記録ヘッド17のクリーニング液供給口60a(図5参照)から供給されたクリーニング液を拭き取るための弾性部材(例えばEPDMからなるゴム製の部材)である。ワイパー35は、クリーニング液供給部材60の傾斜面62のうちのクリーニング液供給領域R2(図4参照)に対してワイピング方向下流側の部分に圧接され、キャリッジ(図示せず)の移動により下面F2およびインク吐出面F1を所定方向(矢印A方向)に拭く。なお、ワイパー35を含むメンテナンスユニット19および記録ヘッド17によって、ヘッドクリーニング機構が構成されている。
【0028】
次に、クリーニング液供給部材60の構造を詳細に説明する。
【0029】
図5および図6に示すように、クリーニング液供給口60aは、傾斜面62のうちのワイピング動作時にワイパー35が当接する位置P(例えば下流端62aの近傍)(図4および図13参照)よりも上側(ワイピング方向の上流側)に設けられている。また、クリーニング液供給口60aは、ワイピング方向(矢印A方向)と直交するヘッド幅方向(矢印BB´方向)に所定のピッチで複数個配置されている。なお、図では、図面簡略化のため、クリーニング液供給口60aを4個だけ描いているが、クリーニング液供給口60aは例えば10〜20個程度設けられている。また、図では、ヘッド幅方向に沿って配置される複数のクリーニング液供給口60aからなる列を1列のみ描いているが、この列はワイピング方向(矢印A方向)に隣接して複数列設けられていてもよい。
【0030】
また、傾斜面62は、傾斜面62に対して凹んだ1つ以上(ここでは2つ)の溝64が形成された溝形成領域R3(図4参照)を含む。溝64の深さは、例えば0.1mm以上0.5mm以下に設定されている。溝64は、傾斜面62のうちの、クリーニング液供給口60aよりもワイピング方向の下流側で、且つ、ワイピング動作時にワイパー35が当接する位置Pよりもワイピング方向の上流側に設けられている。
【0031】
溝64は、ワイピング方向の下流側に向かうにしたがってヘッド幅方向の外側に向かうように、ワイピング方向に対して傾斜して形成されている。溝64は、ヘッド幅方向に所定の間隔を隔てて複数(ここでは2つ)設けられている。溝64は、クリーニング液供給口60aよりもヘッド幅方向の外側まで形成されているとともに、傾斜面62のヘッド幅方向の両端部近傍まで形成されている。これにより、後述するように、クリーニング液供給口60aから傾斜面62にクリーニング液が供給されると、クリーニング液の一部は、溝64を伝って傾斜面62を下流側(図5および図6の左側)に流れ、傾斜面62の下流端62aではヘッド幅方向に広がった状態になる。
【0032】
また、図7および図8に示すように、クリーニング液供給部材60は、傾斜面62のインク吐出面F1および下面F2に対する傾斜角α1(図7参照)が、インク吐出面F1をワイパー35が拭いている状態でのワイパー35の先端部のインク吐出面F1に対する圧接角α2(図8参照)よりも小さくなるように形成されている。具体的には、ワイパー35の先端部のインク吐出面F1および下面F2に対する圧接角α2は、約45°に設定されている。傾斜面62のインク吐出面F1および下面F2に対する傾斜角α1は、15°以上45°未満に設定されていることが好ましく、30°以上40°未満に設定されていることがより好ましい。
【0033】
傾斜角α1を圧接角α2よりも小さく形成しているため、図9に示すように、ワイパー35をワイピング方向(図9の左方向)に移動させた際に、ワイパー35の先端のワイピング方向の下流側のコーナー部35aのみが傾斜面62に接触する。すなわち、ワイパー35のワイピング方向の下流側の側面35bは、傾斜面62に接触しない。
【0034】
クリーニング液供給部材60は、クリーニング液供給路(図示せず)を介してクリーニング液23を収容するタンク(図示せず)に接続されている。クリーニング液供給路には、タンクからクリーニング液23を汲み上げてクリーニング液供給部材60に送るクリーニング液供給ポンプ(図示せず)が設けられている。
【0035】
このインクジェット記録装置100では、記録ヘッド17のインク吐出面F1を清浄にするために、長期間停止後の印字開始時及び印字動作の合間には、全ての記録ヘッド17のインク吐出口18aからインクを強制的に排出し、並行して全ての記録ヘッド17のクリーニング液供給口60a(図5参照)からクリーニング液供給領域R2にクリーニング液23を供給し、ワイパー35によりインク吐出面F1を拭き取る記録ヘッド17の回復動作を実行し、次の印字動作に備える。
【0036】
次に、本実施形態のインクジェット記録装置100における、メンテナンスユニット19を用いた記録ヘッド17の回復動作について説明する。なお、以下で説明する記録ヘッド17の回復動作は、制御部110(図1参照)からの制御信号に基づいて記録ヘッド17、メンテナンスユニット19、クリーニング液供給ポンプ等の動作を制御することによって実行される。
【0037】
記録ヘッド17の回復動作を行う場合、先ず、図10に示すように、制御部110(図1参照)は記録部9の下方に位置する第1搬送ユニット5を下降させる。そして、制御部110は第2搬送ユニット12の下方に配置されたメンテナンスユニット19を水平移動させて記録部9と第1搬送ユニット5との間に配置する。この状態では、メンテナンスユニット19のワイパー35(図12参照)は記録ヘッド17のインク吐出面F1および下面F2(図12参照)よりも下方に配置されている。
【0038】
(クリーニング液供給動作)
ワイピング動作(後述の拭き取り動作)に先立って、制御部110(図1参照)からの制御信号によってクリーニング液供給ポンプ(図示せず)が駆動(オン)され、クリーニング液が記録ヘッド17に供給される。このとき、クリーニング液は、クリーニング液供給口60aから傾斜面62に所定量だけ供給される。図11に示すように、傾斜面62に供給されたクリーニング液23は、傾斜面62をワイピング方向の下流側(矢印A方向)に向かって流れる。そして、クリーニング液23の一部は、溝64に到達すると、溝64を伝ってヘッド幅方向の外側に流れる。また、溝64を伝って流れるクリーニング液23の一部は、溝64を乗り越えてワイピング方向の下流側に流れる。このように、例えば10〜20個設けられたクリーニング液供給口60aから供給されるクリーニング液23は、合流しては溝64を乗り越えることを繰り返しながら、傾斜面62を流れ落ちる。これにより、クリーニング液23は、下流端62aの近傍において、ヘッド幅方向の略全域に広がった状態で保持される。なお、図11では、理解を容易にするために、クリーニング液23の流れる状態を太線矢印で示している。
【0039】
(インク押出動作)
また、ワイピング動作(後述の拭き取り動作)に先立って、図12に示すように、制御部110(図1参照)によってインク22が記録ヘッド17に供給される。供給されたインク22はインク吐出口18aから強制的に押出(パージ)される。このパージ動作により、インク吐出口18a内の増粘インク、異物や気泡がインク吐出口18aから排出される。このとき、パージインク22はインク吐出口18aの存在するインク吐出領域R1の形状に沿ってインク吐出面F1に押出される。なお、図では、理解を容易にするために、インク(パージインク)22およびクリーニング液23にハッチングを施している。
【0040】
(拭き取り動作)
制御部110は図13に示すように、ワイパー35を上昇させて記録ヘッド17のクリーニング液供給部材60の傾斜面62に所定の圧力でワイパー35を接触させる。このとき、ワイパー35の上面がインク吐出面F1および下面F2よりも高く、且つ、溝64およびクリーニング液供給口60aよりも低くなるように、ワイパー35を上昇させる。これにより、ワイパー35は、溝64およびクリーニング液供給口60aに接触しない。なお、ワイパー35を上昇させた時点では、ワイパー35は傾斜面62に圧接されていなくてもよい。すなわち、ワイパー35を図13よりも右側の位置で上昇させてもよい。
【0041】
ワイパー35の先端がクリーニング液供給部材60の傾斜面62に圧接した状態から、制御部110はワイパー35を図14に示すように下面F2に沿ってインク吐出領域R1の方向(矢印A方向)に移動させる。これにより、ワイパー35は、クリーニング液23を保持した状態でインク吐出領域R1の方向に移動する。
【0042】
そして、図15に示すように、ワイパー35は、クリーニング液23を保持した状態を維持しながらインク吐出面F1を左方向(矢印A方向)に移動する。このとき、クリーニング液23およびインク(パージインク)22によって、インク吐出面F1に付着して固化したインク滴(廃インク)が溶解し、ワイパー35によって拭き取られる。そして、ワイパー35は、さらに左方向(矢印A方向)に移動し、インク吐出領域R1に対してクリーニング液供給部材60とは反対側の位置に到達すると、左方向への移動が停止される。なお、ワイパー35によって拭き取られたクリーニング液23および廃インクは、メンテナンスユニット19に設けられたクリーニング液回収トレイ(不図示)に回収される。
【0043】
(離間動作)
拭き取り動作の実行後、図16に示すように、制御部110はワイパー35を下降させてインク吐出面F1から離間させる。
【0044】
最後に、制御部110は、記録部9と第1搬送ユニット5との間に配置されたメンテナンスユニット19を水平移動させて第2搬送ユニット12の下方に配置し、第1搬送ユニット5を所定の位置まで上昇させる。このようにして、記録ヘッド17の回復動作を終了する。
【0045】
本実施形態では、上記のように、記録ヘッド17は、インク吐出面F1に対してワイピング方向の上流側に配置され、ワイピング方向の下流側に向かって下方に傾斜する傾斜面62を含み、傾斜面62には、クリーニング液23を供給する複数のクリーニング液供給口60aが設けられている。これにより、クリーニング液供給口60aからクリーニング液23を供給すると、クリーニング液23は、傾斜面62を下流側に向かって流れる。クリーニング液23が傾斜面62の下流端62aに到達した後、ワイパー35を傾斜面62の下流端62aよりもワイピング方向上流側からインク吐出面F1に沿って移動させることによって、ワイパー35でクリーニング液23を保持しながらインク吐出面F1を拭くことができる。このため、インク吐出面F1を清浄化することができる。
【0046】
また、傾斜面62のうちのワイピング動作時にワイパー35が当接する位置Pよりもワイピング方向の上流側に、クリーニング液供給口60aが設けられている。これにより、記録ヘッド17の回復動作を行う際に、ワイパー35はクリーニング液供給口60aの縁部に接触しない。このため、ワイパー35の先端がクリーニング液供給口60aの縁部と擦れることがないので、ワイパー35の先端が損傷するのを抑制することができる。
【0047】
また、傾斜面62のうちのクリーニング液供給口60aよりもワイピング方向の下流側には、ワイピング方向の下流側に向かうにしたがってヘッド幅方向の外側に向かう溝64が形成されている。これにより、クリーニング液23は、傾斜面62を下流側に向かって流れる際に、溝64を伝ってヘッド幅方向の外側に広がる。このため、ワイパー35によりクリーニング液23を拭き取り始めてからクリーニング液23が記録ヘッド17のヘッド幅方向全域に広がるまでの時間を短縮することができるので、インク吐出面F1のヘッド幅方向の両端部に拭き残しが生じるのを抑制することができる。なお、溝64を設けない場合、クリーニング液23同士が合一化し1つの大きな液滴になりやすい。このとき、クリーニング液23は、ヘッド幅方向の中央部に集まる。このため、ワイパー35によりクリーニング液23を拭き取り始めてからクリーニング液23がワイパー35の幅方向全域に広がるまでに、時間がかかる。これにより、インク吐出面F1のヘッド幅方向の両端部に拭き残しが生じる場合がある。
【0048】
また、上記のように、傾斜面62のインク吐出面F1に対する傾斜角α1は、インク吐出面F1をワイパー35が拭いている状態でのワイパー35の先端部のインク吐出面F1に対する圧接角α2よりも小さい。これにより、ワイパー35が記録ヘッド17の傾斜面62に圧接した状態でワイピング方向に移動する際にワイパー35はインク吐出面F1に対する圧接角α2以上に撓まないため、ワイパー35はコーナー部35aのみが傾斜面62に接触しながら移動する。すなわち、ワイパー35の側面35bは、記録ヘッド17の側面(傾斜面62)に接触しない。このため、クリーニング液23が傾斜面62に残るのを抑制することができる。その結果、傾斜面62に残ったクリーニング液23が振動や衝撃によってインク吐出面F1側に流れるのを抑制することができる。なお、記録ヘッド17の回復動作を行わないときにクリーニング液23がインク吐出面F1に流れると、インク吐出口18aからのインク22の飛翔性に悪影響を及ぼすおそれがある。また、用紙Sが記録ヘッド17に擦れたとしても、クリーニング液23が用紙Sに付着するのを抑制することができる。
【0049】
また、上記のように、傾斜角α1は、15°以上45°未満である。これにより、クリーニング液23を傾斜面62の下流端62aに向かって容易に流れさせることができるとともに、ワイパー35の先端のコーナー部35aのみを容易に傾斜面62に接触させることができる。
【0050】
また、上記のように、溝64は、傾斜面62のヘッド幅方向の両端部近傍まで形成されている。これにより、ワイパー35によりクリーニング液23を拭き取り始めてからクリーニング液23が記録ヘッド17のヘッド幅方向全域に広がるまでの時間をより短縮することができるので、インク吐出面F1のヘッド幅方向の両端部に拭き残しが生じるのをより抑制することができる。
【0051】
また、上記のように、溝64は、ヘッド幅方向に所定の間隔を隔てて複数設けられている。これにより、クリーニング液23は、傾斜面62のヘッド幅方向の中央部と両端部近傍とを流れるので、ヘッド幅方向におけるクリーニング液23の量を均一化することができる。
【0052】
また、上記のように、溝64は、傾斜面62のうちのワイピング動作時にワイパー35が当接する位置Pよりもワイピング方向の上流側に設けられている。これにより、記録ヘッド17の回復動作を行う際に、ワイパー35は溝64の縁部に接触しない。このため、ワイパー35の先端が溝64の縁部と擦れることがないので、ワイパー35の先端が損傷するのをより抑制することができる。
【0053】
また、上記のように、溝64の深さは、0.1mm以上0.5mm以下である。これにより、クリーニング液23を、容易に溝64を伝って流すことができるとともに、クリーニング液23が溝64の内部に残るのを抑制することができる。
【0054】
また、上記のように、記録ヘッド17は、インク吐出面F1を有するヘッド部18と、傾斜面62および下面F2を有するクリーニング液供給部材60と、によって構成されている。これにより、ヘッド部18に傾斜面62および溝64を形成する場合と比べて、傾斜面62および溝64を容易に形成することができる。
【0055】
また、上記のように、傾斜面62には、撥水処理が施されている。これにより、クリーニング液供給口60aから供給され傾斜面62を下流端62aに向かって流れるクリーニング液23が傾斜面62の途中に留まるのを抑制することができる。このため、傾斜面62の途中に残ったクリーニング液23が記録ヘッド17の回復動作を行わないときに振動や衝撃によって傾斜面62の下流端62aに流れるのを抑制することができる。これにより、用紙Sが記録ヘッド17に擦れたとしても、クリーニング液23が用紙Sに付着するのを抑制することができる。また、クリーニング液23がインク吐出面F1に流れ、インク吐出口18aからのインク22の飛翔性に悪影響を及ぼすのを抑制することができる。
【0056】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態のインクジェット記録装置100のクリーニング液供給部材60では図17に示すように、溝64は4つ設けられている。
【0057】
溝64は、ワイピング方向の下流側に向かうにしたがってヘッド幅方向の外側に向かうように、ワイピング方向に対して傾斜して形成されている。溝64は、ヘッド幅方向に所定の間隔を隔てて複数(ここでは2つずつ)設けられている。
【0058】
溝64は、ワイピング方向の上流側に配置される上流側溝64aと、ワイピング方向の下流側に配置される下流側溝64bと、を含んでいる。上流側溝64aと下流側溝64bとは、ワイピング方向に独立して設けられているとともに、ヘッド幅方向(矢印BB´方向)にオーバーラップするように配置されている。下流側溝64bは、上流側溝64aに対してヘッド幅方向の外側にずらして配置されており、傾斜面62のヘッド幅方向の両端部近傍まで形成されている。
【0059】
これにより、図18に示すように、クリーニング液供給口60aから傾斜面62にクリーニング液23が供給されると、クリーニング液23の一部は、上流側溝64aを伝って傾斜面62を下流側(図18の下側)に流れ、上流側溝64aを乗り越えたクリーニング液23の少なくとも一部(図18では全て)も下流側溝64bを伝って傾斜面62の下流側に流れる。このため、傾斜面62の下流端62aでは、上記第1実施形態と比べて、クリーニング液23がヘッド幅方向の外側に集まりやすくなる。
【0060】
なお、溝64を乗り越えるクリーニング液23の量や比率は、溝64の深さ、溝64の幅、傾斜面62の傾斜角α1、傾斜面62に供給されるクリーニング液23の量、及び溝64のワイピング方向に対する傾斜角等によって、調整可能である。このことは、他の実施形態でも同様である。
【0061】
第2実施形態のその他の構造および動作は、上記第1実施形態と同様である。
【0062】
本実施形態では、上記のように、溝64は、ワイピング方向に独立して設けられた上流側溝64aおよび下流側溝64bを含み、上流側溝64aおよび下流側溝64bは、ヘッド幅方向にオーバーラップするように配置されている。これにより、上流側溝64aを乗り越えたクリーニング液23を下流側溝64bによってさらにヘッド幅方向の外側に向かわせる(導く)ことができる。
【0063】
第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0064】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態のインクジェット記録装置100のクリーニング液供給部材60では図19に示すように、溝64は1つだけ設けられている。
【0065】
溝64は、ワイピング方向の下流側に向かうにしたがってヘッド幅方向の外側に向かうように、ワイピング方向に対して傾斜して形成されている。溝64は、ヘッド幅方向に連続して形成されており、ここでは逆U字形状に形成されている。なお、溝64は、逆V字形状に形成されていてもよい。
【0066】
これにより、図20に示すように、クリーニング液供給口60aから傾斜面62にクリーニング液23が供給されると、クリーニング液23は、傾斜面62を下流側(図20の下側)に流れ、全てのクリーニング液23が溝64に到達する。そして、クリーニング液23の一部は、溝64を伝って傾斜面62を下流側に流れ、残りのクリーニング液23は、溝64を乗り越えて傾斜面62の下流側に流れる。このため、傾斜面62の下流端62aでは、上記第1実施形態と比べて、クリーニング液23がヘッド幅方向の外側に集まりやすくなる。
【0067】
第3実施形態のその他の構造および動作は、上記第1実施形態と同様である。
【0068】
本実施形態では、上記のように、溝64は、ヘッド幅方向に連続して形成されている。これにより、例えばヘッド幅方向の中央部に流れてきたクリーニング液23の一部を容易にヘッド幅方向の両端部に導くことができる。
【0069】
第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0070】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態のインクジェット記録装置100のクリーニング液供給部材60では図21に示すように、上記第3実施形態と同様の構造を有する溝64が2つ設けられている。
【0071】
溝64は、ワイピング方向の上流側に配置される上流側溝64aと、ワイピング方向の下流側に配置される下流側溝64bと、を含んでいる。上流側溝64aと下流側溝64bとは、ワイピング方向に独立して設けられているとともに、ヘッド幅方向(矢印BB´方向)にオーバーラップするように配置されている。
【0072】
これにより、図22に示すように、クリーニング液供給口60aから傾斜面62にクリーニング液23が供給されると、クリーニング液23は、傾斜面62を下流側(図20の下側)に流れ、全てのクリーニング液23が上流側溝64aに到達する。そして、クリーニング液23の一部は、上流側溝64aを伝って傾斜面62を下流側に流れ、残りのクリーニング液23は上流側溝64aを乗り越えて下流側溝64bに到達する。下流側溝64bに到達したクリーニング液23の一部は、下流側溝64bを伝って傾斜面62を下流側に流れ、下流側溝64bに到達したクリーニング液23の残りは、下流側溝64bを乗り越えて傾斜面62を下流側に流れる。このため、傾斜面62の下流端62aでは、上記第1〜第3実施形態と比べて、クリーニング液23がヘッド幅方向の外側に集まりやすくなる。
【0073】
第4実施形態のその他の構造および動作は、上記第3実施形態と同様である。
【0074】
第4実施形態の効果は、上記第2および第3実施形態と同様である。
【0075】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0076】
例えば、上記実施形態では、傾斜面62およびクリーニング液供給口60aが形成されたクリーニング液供給部材60をヘッド部18とは別体で設けた例について示したが、本発明はこれに限らない。クリーニング液供給部材60を設けず、傾斜面62およびクリーニング液供給口60aをヘッド部18に形成してもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、溝64を、傾斜面62のうちのワイピング動作時にワイパー35が当接する位置Pよりもワイピング方向の上流側に設けた例について示したが、本発明はこれに限らず、溝64を、傾斜面62のうちのワイピング動作時にワイパー35が当接する位置Pに重なるように設けてもよい。ただし、ワイパー35の先端が損傷するのを抑制するために、ワイパー35が溝64に可能な限り接触しないようにしたり、溝64の縁部を曲面状にしたりすることが好ましい。
【0078】
また、上記実施形態では、クリーニング液23およびインク(パージインク)22を用いて記録ヘッド17の回復動作を行う例について示したが、クリーニング液23だけを用いて記録ヘッド17の回復動作を行ってもよい。すなわち、インク押出動作を行わなくてもよい。
【0079】
また、上述した実施形態および変形例の構成を適宜組み合わせて得られる構成についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0080】
17 記録ヘッド
18 ヘッド部(インク吐出ヘッド部)
18a インク吐出口
22 インク
23 クリーニング液
35 ワイパー
60 クリーニング液供給部材(クリーニング液供給ヘッド部)
60a クリーニング液供給口
62 傾斜面
62a 下流端
64 溝
100 インクジェット記録装置
F1 インク吐出面
F2 下面
P 位置
R1 インク吐出領域
S 用紙(記録媒体)
α1 傾斜角
α2 圧接角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22