(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
外周面に巻芯が被せられる筒状の支持軸体に、前記支持軸体の中心軸に対して外周面方向に所定角度を隔てて複数配列されると共に軸方向に複数配列された軸体孔が形成され、前記軸体孔から突出するラグによって前記巻芯が支持される巻芯固定機構において、
前記支持軸体に軸方向に複数収容され、かつ、前記軸体孔と対面すると共に軸方向にスライド可能であるラグ押上体が備えられ、
このラグ押上体に、
前記ラグを押し上げるために前記軸体孔に対応する箇所に形成された傾斜面と、
前記ラグ押上体を軸方向に付勢するラグ押上体付勢手段と、
前記ラグ押上体の中心軸に対して外周面方向に所定角度を隔てて少なくとも3個所に形成された収納溝と、が備えられ、
この収納溝に収容された調整部材と、
前記調整部材に形成された調整ネジ孔と、
前記ラグ押上体の外周面に対する前記調整部材の突出量を一定に保持するために前記調整ネジ孔に螺着された調整ネジと、
前記調整部材に形成された固定ネジ孔と、
前記収納溝底面に形成された固定メネジ穴と、
前記固定ネジ孔および前記固定メネジ穴を介して前記調整部材を前記収納溝に係止する固定ネジと、が備えられ、
前記支持軸体に、前記調整ネジに対応する位置に外周面から内周面にかけて穿設した操作孔が備えられた、
ことを特徴とする巻芯固定機構。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された巻芯支持軸の巻芯固定機構は、ラグの突出量の調整に手間がかかり、さらに改善の余地があった。詳説すれば、支持軸体を用いて、巻芯の中心で巻芯を支持するためには、巻芯の内径面に対してすべてのラグが同時に一様に突出するのが理想である。しかし、一般的に、支持軸体のような長い中空の軸体は、長手方向において内径の加工精度にバラツキがあり、さらには、支持軸体ほどでは無いにしろ、ラグ押上体にもラグにも加工精度にバラツキがある。各部品に加工精度のバラツキがある場合、ラグが突出するタイミングがラグ毎に異なり、突出する時間に差が生じてすべてのラグを同時に突出させることが出来ない。
【0005】
支持軸体の内径面とラグ押上体の外径面との隙間が僅かであった場合、重量物を支えた時に支持軸体が僅かに撓んだ場合にでも、ラグ押上体が支持軸体の内周面に擦れてスムーズに動かなくなり、ラグが正常に引き込まれず、突出したままの場合がある。そして製品巻き上がり時、巻芯を引き抜く際に、ラグが突出したまま支持軸体を引き抜くと、ラグによって巻芯の内径面が毟られ、このことによって発生した削り粉が製品に付着して不良品となる。
【0006】
また、支持軸体の内径面とラグ押上体の外径面との隙間が過度に数多であった場合、隙間の分だけ支持軸体が押し下げられて支持軸体の撓みが大きくなるため、偏心して巻き取ることとなる。その結果、巻取ロールの端面が不揃いとなったり、巻取ったシ−トが塑性変形したりして不良品となる。
【0007】
つまり、正常にラグを突出させるためには、支持軸体の内周面とラグ押上体の外周面との隙間が適切でなければならない。このことを解消する為に、一旦、巻芯固定機構を組み込んだ後で、両端をバランサー等で支持して振れ回りを測定し、均等に突出するようにラグの下端または上端を少量削り、測定を繰り返し、バラツキを解消する調整方法がある。もしくは、支持軸体の内径加工精度とラグ押上体の加工精度及びラグの加工精度を向上させ、巻芯に対してラグを均一に突出させる方法もある。
【0008】
しかし、いずれの方法にしても時間と費用がかかり、現実的ではない。そこで、本発明は、巻芯固定機構においてラグの突出量の調整を外部から簡単に操作できるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために、本発明に係る巻芯固定機構は、外周面に巻芯が被せられる筒状の支持軸体に、前記支持軸体の中心軸に対して外周面方向に所定角度を隔てて複数配列されると共に軸方向に複数配列された軸体孔が形成され、前記軸体孔から突出するラグによって前記巻芯が支持される巻芯固定機構において、前記支持軸体に軸方向に複数収容され、かつ、前記軸体孔と対面すると共に軸方向にスライド可能であるラグ押上体が備えられ、このラグ押上体に、前記ラグを押し上げるために前記軸体孔に対応する箇所に形成された傾斜面と、前記ラグ押上体を軸方向に付勢するラグ押上体付勢手段と、前記ラグ押上体の中心軸に対して外周面方向に所定角度を隔てて少なくとも3個所に形成された収納溝と、が備えられ、この収納溝に収容された調整部材と、前記調整部材に形成された調整ネジ孔と、前記ラグ押上体の外周面に対する前記調整部材の突出量を一定に保持するために前記調整ネジ孔に螺着された調整ネジと、前記調整部材に形成された固定ネジ孔と、前記収納溝底面に形成された固定メネジ穴と、前記固定ネジ孔および前記固定メネジ穴を介して前記調整部材を前記収納溝に係止する固定ネジと、が備えられ、前記支持軸体に、前記調整ネジに対応する位置に外周面から内周面にかけて穿設した操作孔が備えられた、ことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る巻芯固定機構の前記ラグ押上体付勢手段は、前記ラグ押上体の軸方向の中心に開けられた貫通孔と、複数の前記ラグ押上体の前記貫通孔を夫々スライド可能に貫通した可動棒と、前記可動棒の前進方向の推力を弾力的に前記ラグ押上体に伝えるために前記ラグ押上体毎に前記可動棒上に設けた弾力装置と、前記可動棒の後退方向の推力を前記ラグ押上体に伝えるために前記ラグ押上体毎に前記可動棒上に設けた係合部と、前記巻芯を保持するとき前記可動棒を待機位置から前進させ、前記巻芯を解放するとき前記可動棒を前記待機位置へ復帰させるための可動棒移動機構と、が備えられた、ことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る巻芯固定機構の前記可動棒移動機構は流体圧シリンダである、ことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る巻芯固定機構の前記可動棒移動機構は、巻取り巻戻し装置に備えた一対の押しコップにより支持され、前記支持軸体の両端に前記一対の押しコップと嵌め合わす穴又は突起を形成した軸端部と、前記可動棒の後退側の一端に設けて該可動棒を前進側へ弾力的に押すための前進用弾力体と、前記可動棒の前進側の一端に設けて該可動棒を後退側へ弾力的に押すための後退用弾力体と、前記後退用弾力体を前記可動棒に向けて押す、前記支持軸体の可動棒前進側の端部に螺着した押しネジと、から構成され、前記一対の押しコップの片方により前記前進用弾力体を前記可動棒に向けて押すことができるように構成した、ことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る巻芯固定機構は、前記軸体孔の大きさが、前記ラグの底部よりも大きく形成され、前記傾斜面が形成されたラグ受け溝の大きさが、前記ラグの底部よりも小さく形成されると共に、前記ラグ受け溝の底部が前記ラグの底部と嵌合する形状である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、支持軸体内周面の長手方向の加工精度にバラツキがあった場合や、使用によってラグが磨耗し、ラグの突出量を調整する必要があった場合に、部品を組み込んだまま分解すること無く、ラグの突出量を、支持軸体に開けた操作孔から、調整部材に付けた調整ネジによって容易に調整することが出来る。このことにより、支持軸体のバランスが取れた状態でラグが正常に突出し、帯状シ−トの巻取装置又は巻戻装置の高速運転により支持軸体が高速で回転しても巻取ロールの振れ回りが防止され、巻取ロールの歩留が向上する。また、比較的構造が簡単で故障が少なく、保守の容易な巻芯固定機構を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る巻芯固定機構における巻芯支持軸の概略正面図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係る巻芯固定機構の部分断面が示され、
図1における線分X−Xより左側の正面縦断面図である。
【
図3】本発明の第一実施形態に係る巻芯固定機構の断面が示され、
図1におけるA−A矢視断面図である。
【
図4】本発明の第一実施形態に係る巻芯固定機構の部分断面が示され、
図1における線分A−AとB−Bとに挟まれた部分において、
図3におけるD−D断面を矢印方向から見た正面縦断面図である。
【
図5】本発明の第一実施形態に係る巻芯固定機構におけるラグの側面図およびG−G矢視断面図である。
【
図6】本発明の第一実施形態に係る巻芯固定機構におけるラグ押上体およびラグが支持軸体に取り付けられる過程が示された斜視図である。
【
図7】本発明の第一実施形態に係る巻芯固定機構におけるラグ押上体の要部が示され、
図3におけるE方向から見た正面図である。
【
図8】本発明の第一実施形態に係る巻芯固定機構におけるラグ押上体および調整部材の斜視図である。
【
図9】本発明の第一実施形態に係る巻芯固定機構における巻芯支持軸の測定方法を示した正面図である。
【
図10】本発明の第二実施形態に係る巻芯固定機構の部分正面縦断面図である。
【
図11】本発明の第二実施形態に係る巻芯固定機構の部分断面が示され、
図10に示す巻芯支持軸に巻芯を装着した後、その巻芯支持軸を一対の押しコップに装着した状態を示す部分正面縦断面図である。
【
図12】本発明の第三実施形態に係る巻芯固定機構における巻芯支持軸に巻芯を装着した後、その巻芯支持軸を一対の押しコップに装着した状態を示す部分正面縦断面図である。
【
図13】本発明の第四実施形態に係る巻芯固定機構における巻芯支持軸に巻芯を装着した後、その巻芯支持軸を一対の押しコップに装着した状態を示す部分正面縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本実施形態に係る巻芯固定機構を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1において、巻芯支持軸1は中空の支持軸体2と、この支持軸体2の一端に固設した破線で示す支持軸端部3と、他の一端に固設した支持軸端部4とからなり、巻芯Cを支持軸体2の外周面に被せ嵌めた状態で支持しており、この実施形態を第一実施形態とする。
【0018】
この第一実施形態の場合、巻芯支持軸1はフレーム5を貫通しており、フレーム5とフレーム6との間の巻取位置において、軸受装置7と回転センタ装置8とにより両端が支持され、支持軸体2を回転させるための動力を、フレーム5沿いに設けた
図2に示す歯車9から、中空軸10に形成した歯車11に伝え、更に噛合いクラッチ12を経て支持軸端部3に伝えることができる。
【0019】
図2において、中空軸10は、支持軸体2の外周面との間に僅かな隙間を設けて支持軸体2と同心にベアリング13で支持してあり、軸受装置7の先端部に形成したコーン部7aを、フレーム5に固設したホルダー14の円錐面状の穴に嵌めて保持し、噛合いクラッチ12のクラッチ歯の一方を中空軸10の端部に形成し、これに噛合うもう一方を、支持軸端部3に固着したクラッチ部材15の端部に形成している。したがって、
図1に示す巻芯支持軸1は、巻芯Cの装着時や巻取ロールの取外し時に、巻取位置から軸受装置7側へ引き抜くことができ、支持軸端部4側から巻芯Cを装着したり、巻取ロールを取外したりすることができる。
【0020】
この巻芯支持軸1は、巻芯Cを支持軸体2上に固く保持するため、支持軸体2の外周面から突出して巻芯Cの内周面を押圧することができる複数のラグ16を備える。ラグ16は、支持軸体2の長手軸線を中心に所定の角度を隔てて複数列に配置してある。
【0021】
図1は、支持軸体2の軸方向である長手方向に並んだ5個のラグ16で一つの列を示し、周方向に45度の角度を隔てた列にも5個のラグ16を配置して千鳥配列としている。このラグ16の列を、
図3に示すように支持軸体2の長手軸線を中心に、軸に対して外周面方向に互いに90度の角度を隔てて4箇所に配置している。そして各ラグ16は支持軸体2に設けた軸体孔17に個々に挿入してある。この第一実施形態では、支持軸体2の長手軸線を中心に4箇所に配置しているが、配置位置は限定されるものでなく、所定の角度を隔てており3箇所以上なら幾らでもよい。
【0022】
ラグ16を支持軸体2の外周面から突出させるために、
図4に示すように支持軸体2の中空部には、支持軸体2の長手方向の列をなした軸体孔17の各々に対応するように並ぶ複数のラグ押上体18と、ラグ押上体18を夫々スライド可能に貫通した可動棒19と、各ラグ押上体18に、矢印Fで指示した可動棒19の前進方向に向けて次第に低くなるように傾けて形成した、ラグ16を押し上げるための傾斜面20と、可動棒19の前進方向の推力をラグ押上体18に弾力的に伝えるための、ラグ押上体18毎に可動棒19上に設けた弾力装置21と、可動棒19の後退方向の推力をラグ押上体18に伝えるための、ラグ押上体18毎に可動棒19上に設けた係合部22とを備え、更に、巻芯Cを保持するとき可動棒19を待機位置から前進させ、巻芯を解放するとき可動棒19を待機位置へ復帰させるための、
図2に示す可動棒移動機構23とを備える。
【0023】
図2において、この第一実施形態の可動棒移動機構23は流体圧シリンダであり、支持軸端部3に固着したシリンダ24、ピストン25、ピストンロッド26及びヘッドカバー27からなる。ピストンロッド26は、その一端を可動棒19の先端のネジ部に螺合させてロックナット28で固定することにより可動棒19に連結してあり、他の一端は、ヘッドカバー27を貫通しロータリジョイント29を有している。ピストン25の両側の気密性のある圧縮空気室30、31は、ピストンロッド26に設けた空気孔32、33とロータリジョイント29とを通して、図示しない圧縮空気の供給装置に接続されている。
【0024】
図4において、弾力装置21は、可動棒19の外周に装着し、係合部22とラグ押上体18との間に配置した複数の皿バネ34からなる。
図4において右側である最も後側のラグ押上体18の弾力装置21は、可動棒19に固設した係合部22aを備える。必要に応じて複数の皿バネ34を圧縮コイルバネやゴム等の他の弾性体に変えてもよい。係合部22は、可動棒19に固着した環体からなる。ラグ押上体18は、支持軸体2の内周面に夫々スライド可能に嵌合しているため、ラグ16に大きい荷重が加わっても可動棒19がラグ押上体18に支えられ、可動棒19が撓んで巻芯Cが支持軸体2に対し偏心することを防止できる。
【0025】
傾斜面20は、
図3に示すようにラグ押上体18の、軸体孔17に対応するラグ受け溝35の底面に夫々形成し、
図4に示すようにラグ押上体18が矢印Fで指示した方向にスライドする事により各ラグ16を一斉に同じ量だけ放射方向に押上げることができるようにするために、それぞれラグ押上体18の中心から同じ高さに同じ傾斜角で形成する。また傾斜面20の傾き角を摩擦角より小さくし、ラグ16の上端に作用する荷重によりラグ押上体18が後退しないようにする。
【0026】
図5において、ラグ16は、棒状のラグ上部103とラグ下部104とから構成され、ラグ上部103とラグ下部104とが、ラグ上部ネジ孔106およびラグ下部ネジ穴105を介してネジ107で固定され、合体している。ラグ上部104は、下端が可動棒19の前進方向に向けて次第に高くなるように、ラグ押上体18の傾斜面20と同じ角度で傾斜したラグ傾斜面108が形成されている。ラグ16の長手方向と直交する側面は、長手方向に連続した凹部109が形成され、ラグ下部104の底部は、ラグ16の長手方向と直交する側方に向けて張り出すと共に長手方向に連続した凸部16aが形成されている。
【0027】
図3に示すラグ16を脱落しないようラグ押上体18に確実に保持し、突出したラグ16がラグ押上体18の後退に伴い強制的に引っ込むようにするために、ラグ押上体18のラグ受け溝35の側面に、ラグ16のラグ下部104を受け入れ可能に傾斜面20に沿って伸びた細溝35bを形成する。必要に応じて細溝35bの下側側面を、ラグ16を押上げるための傾斜面としてもよい。
【0028】
図3において、軸体孔17の大きさは、ラグ16におけるラグ下部104の底部の凸部16aの幅よりも大きく形成され、また、ラグ受け溝35の大きさは、凸部16aの幅よりも小さく形成されると共に、ラグ受け溝35の底部の細溝35bが凸部16aと嵌合する形状である。ラグ16が取り付けられる際、
図6において、ラグ16は、支持軸体2の外側から、ラグ下部104側が軸体孔17に挿入され、この状態で、ラグ押上体18が支持軸体2の中空部に挿入され、中空部において、ラグ受け溝35にラグ下部104が嵌合される。凸部16aが細溝35bと嵌合し、ラグ受け溝35の一部がラグ下部104の凹部109と嵌合する。したがって、支持軸体2の外側からラグ16を取り付けることができる。
【0029】
巻芯Cを固定するには、
図2に示す可動棒移動機構23の圧縮空気室30に圧縮空気を供給し、ピストン25を作動させて可動棒19を矢印Fの方向に前進させる。そうすると、
図4に示すように各ラグ押上体18も弾力装置21により弾力的に押されて前進し、ラグ16は傾斜面20に沿って持上げられ、その上端で巻芯Cの内周面を押圧して巻芯Cを固く保持する。そして巻芯Cの内径が小さい部分C1に対応する左側のラグ16が巻芯Cの内周面に当たり、左側のラグ押上体18の移動が停止しても、左側の弾力装置21が圧縮されるので可動棒19が更に前進する。可動棒19は、停止せず右側の弾力装置21により右側のラグ押上体18を押すので、巻芯Cの内径の大きい部分C2に対応するラグ16が傾斜面20により押上げられる。それゆえ巻芯Cの内径が全幅一様でなくても、その巻芯Cを確実に保持できる。
【0030】
巻芯Cをラグ16から解放するには、可動棒移動機構23の圧縮空気室31に圧縮空気を供給し、ピストン25を作動させて可動棒19を後退させる。そうすると、係合部22がラグ押上体18を待機位置へ復帰させ、ラグ16が引っ込む。
【0031】
図3に示すラグ調整機構60は、ラグ押上体18の外周面に、その長手軸線を中心に、中心軸に対して外周面方向に所定角度を隔てて少なくとも3個所に形成した収納溝61と、収納溝61に収容した調整部材としてのキー62と、キー62に形成された調整ネジ孔63と、キー62と収納溝61の収納溝底面64との距離を一定に保持することで、ラグ押上体18の外周面に対するキー62の突出量を一定に保持することが出来る調整ネジ65と、キー62に形成された固定ネジ孔66aと、キー62を収納溝61に係止する固定ネジ67と、固定メネジ穴66bとからなり、ラグ調整機構60を分かり易くする為にラグ押上体18を取り出した側面図を
図7に示し、斜視図を
図8に示している。
【0032】
図7および
図8において、収納溝61は、ラグ押上体18の長手方向に沿って形成された溝であり、長手方向の両端部近傍における収納溝底面64にそれぞれ固定メネジ穴66bが形成されている。キー62は、収納溝61と同一の形状であり、長手方向の両端部近傍にそれぞれ調整ネジ孔63および固定ネジ孔66aが形成されている。キー62は収納溝61に取り付けられ、調整ネジ孔63に調整ネジ65が螺着され、固定ネジ67が固定ネジ孔66aを通って固定メネジ穴66bに螺着される。
【0033】
支持軸体2には、外周面から内周面にかけて調整ネジ65に対応する位置に穿設した操作孔68と、支持軸体2の内部にゴミが入らないように蓋をする栓ネジ69とを備える。この第一実施形態では、ラグ調整機構60を、ラグ押上体18の長手軸線を中心に互いに90度の角度を隔てて4箇所に配置している。キー62は、高さを収容溝61の深さより低いものとし、収容溝61の内部に半径方向にスライド可能に収納される。
【0034】
キー62は、耐摩耗性の高い金属で作られており、支持軸体2の内周面と接触する面には給油の為に油溝が掘られていてもよい。また、MCナイロン等の樹脂で作られていてもよい。調整ネジ孔63に使用する調整ネジ65は調整に有利なもの、たとえばメートル細目ネジなどネジピッチが細かい物が好ましい。
【0035】
ラグ調整機構60を使ってラグ16の突出量を調整するには、巻取り巻戻し装置を停止し巻芯Cを取り外している状態で、作業を効率よくする為に巻芯支持軸1を軸受装置7側へ引き抜き、フレーム5、6から取り外す。
【0036】
引き抜かれた巻芯支持軸1を、
図9に示す様に作業台に設置されたバランス台70に乗せる。バランス台70は、巻芯支持軸1を水平な2点で支持することが出来るようになっており、ベアリング73によって軽い力でも回転できるようになっている。次に、巻芯Cと同じ内径と外径で作られた加工精度の良いゲージ環71を支持軸体2の外周上を移動させ、測定したいラグ16の位置で停止する。そして、図示しない流体供給装置からロータリジョイント29を経て空気孔33にエアを供給し、ラグ16を押し上げてゲージ環71を保持する。作業台に固定されたダイヤルゲージ72を当て、手回しで振れを測定する。
【0037】
そして、支持軸体2の外周面に開けた操作孔68から工具(この第一実施形態の場合は六角レンチ)を差し入れ、支持軸体2の軸芯から半径方向に距離がある場所では調整ネジ65を締め、支持軸体2の軸芯から半径方向に距離が無い場所では調整ネジ65を緩める。ダイヤルゲージ72の目盛り読みで0から0.05mm以内、好ましくは0.01以内に振れを調整する。このようにして、支持軸体2の内周面とラグ押上体18の外周面との間隔を調整してラグ16の突出量を調整する。
【0038】
周方向に全ての調整ネジ65を調整した後に、六角レンチを所定角度だけ締め、キー62を支持軸体2の内面から微量離反してラグ押上体18をスライド可能にする。所定角度とは調整ネジ65のピッチにより決定するが、調整ネジ65が0.05mm程度進む角度である。調整後には、ラグ押上体18に備えた固定ネジ67を、操作孔68から操作出来る位置まで移動し、キー62をラグ押上体18に固着する。
【0039】
その結果、ラグ押上体18に備えたキー62の上端と支持軸体2の内径面との隙間は0.1mm程度となり、スムーズな動きをすると同時に巻芯Cに対してラグ16が同時に一様に突出することとなる。全てのキー62の調整を終えたラグ調整機構60を再び巻取り巻戻し可能な位置に戻し、巻芯支持軸1を巻取り巻戻し装置に組み込み調整終了となる。
【0040】
図10は本発明の第二実施形態を示す。この巻芯支持軸1aでは、シ−ト巻取又は巻出時には、
図11で示すように、支持軸体2aの両端の支持軸端部83、84に形成したテーパ穴80a、80bを、巻取又は巻出装置に設けた一対の押しコップ82a、82bで保持し、この押しコップ82a、82bからの回転を支持軸端部83、84を介して支持軸体2aに伝える。
【0041】
巻芯Cをラグ16により保持するには、支持軸体2aの一方の支持軸端部84に形成しているテーパ穴80bを図示しない駆動装置に取り付けた押しコップ82b先端のコーン部81bに嵌め合わせ、もう一方の支持軸端部83に形成したテーパ穴80aの底面、孔95から出ている保持体85の右端に、図示しない駆動装置に取り付けた押しコップ82a先端のコーン部81aを駆動装置に取り付けた押圧装置(図示しない)によって前進させ、テーパ穴80aに嵌めこむことによって保持体85の右端を押圧する。押しコップ82aにはコーン部81aの先端寄りの場所にキー93を備え、テーパ穴80aにはキー93を受け入れる切り欠き94を形成してある。押しコップ82a、82bとテーパ穴80a、80bの傾斜角は同じに作られており嵌め合わされて両端から押圧することによって駆動を伝達する事が可能ではあるが、キー93を切り欠き94を嵌め合わすように装着することによって、より確実に駆動力及び制動力を付与することができるようになっている。
【0042】
右端を押圧された保持体85は、保持体85に備えた前進用弾力体86を前進させ、前進用係止体87と一体となっている可動棒88を矢印Fの方向に前進させた状態となる。すると各ラグ押上体18も弾力装置21により弾力的に押されて前進し、ラグ16は傾斜面20に沿って持上げられ、その上端で巻芯Cの内周面を押圧して巻芯Cを固く保持する。そして巻芯Cの内径が小さい部分に対応するラグ16が巻芯Cの内周面に当たりラグ押上体18の移動が停止しても、弾力装置21が圧縮されるので可動棒88が更に前進し、巻芯Cの内径が大きい部分に対応するラグ押上体18が弾力装置21により押されるので、巻芯Cの内径の大きい部分に対応するラグ16が傾斜面20により押上げられる。それゆえ巻芯Cの内径が全幅一様でなくても、その巻芯Cを確実に保持できる。そして、ラグ16の巻芯Cへの押付け力が強過ぎたり弱過ぎたりした場合には、支持軸体2aの可動棒88前進側の端部に後退用弾力体89を可動棒88に向けて押す、押しネジ90が、装着されており、ラグ16の巻芯C内周面への押付け力を調節することができる様になっている。
【0043】
この第二実施形態では、可動棒88を移動する手段に圧縮空気を使用する機構を内部に持たず、両端から押圧するだけで弾力装置21を作動するので圧縮空気の供給装置が不要となっている。
【0044】
巻芯Cをラグ16から解放するには、一対の押しコップ82a、82bを支持軸体2aの両端の支持軸端部83、84から後退させる。一対の押しコップ82a、82bが後退すると、可動棒88が後退用弾力体89により押されて矢印Fで示す方向と反対方向に移動し、
図10に示すように可動棒88及び前進用弾力体86並びにその保持体85が待機位置に復帰する。保持体85には鍔部85aを形成してあり孔95から脱落しないようにしている。それと共に、各ラグ押上体18が可動棒88上の係合部22に押されて元の位置に復帰し、このラグ押上体18の復帰に伴い、ラグ16の傾斜した細溝35b内の凸部16aが押下げ力を受けてラグ16が押下げられ、巻芯Cはラグ16から解放され、巻芯支持軸1aから抜取り可能になるので、その後、巻芯支持軸1aから巻芯Cを抜取る。
【0045】
巻芯支持軸1aによる巻芯Cの保持力を小さくしたい場合は、押しネジ90を後退用弾力体89へ向けて前進させて、ラグ16の押付け力を小さくする。逆に、巻芯支持軸1aによる巻芯Cの保持力を大きくしたい場合は、押しネジ90を後退させ、ラグ16の押付け力を大きくする。この第二実施形態にもラグ調整機構60が備えられており、ラグ押上体18の外周面にその長手軸線を中心に所定角度を隔てて少なくとも3個所に形成されているので、上述したラグ16の突出量を調整する方法を実施することができる。ラグ調整機構60と、その調整方法については上述の第一実施形態と同じであるので、ここでは詳しい説明は省くこととする。
【0046】
また、
図12に示す第三実施形態は、第二実施形態の押しコップとテーパ穴の位置関係が反対となり、保持体85の右端を棒状に延長した押し棒96を持つものである。さらに
図13に示す第四実施形態は、棒状に延長した押し棒96の先端にネジ切り加工を施し、オネジ体97としたものである。オネジ体97は、キー溝101、キー102によって可動棒88の長手方向に移動可能、回転不能となっている。そしてオネジ体97は、ベアリング100に支持され回転可能、かつ可動棒88の長手方向に移動不能に保持したメネジ体98と螺合しており、メネジ体98の右端に形成したボルト99を回転することによって可動棒88が前進、後退する様になっている。この第三実施形態および第四実施形態においては、第一実施形態および、第二実施形態と同様に弾力装置21とラグ調整機構60が備わっているが、その役割と作用は略同じであるので詳しい説明は省略することとする。
【0047】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。