(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
氷片または氷粒および水を密閉空間内に供給し、密閉空間内において、インペラによる回転力により、氷片または氷粒を破砕しつつ、水と混合することによりシャーベットを生成するとともに、インペラによる回転推進力により生成したシャーベットを密閉空間外へ噴射させることに利用可能な破砕ポンプであって、
前記密閉空間を構成するケーシングには、氷片または氷粒、および水の流入口、およびシャーベットの流出口が設けられ、
前記密閉空間内には、前記流入口から延びる回転シャフトと、いずれも該回転シャフトを中心に回転可能なように該回転シャフトのまわりに固定された、氷片または氷粒破砕用インペラとシャーベット噴射用インペラとが設けられ、該シャーベット噴射用インペラは、該氷片または氷粒破砕用インペラから前記流出口側寄りに設けられ、
前記破砕用インペラのまわりには、シュラウドリングが設けられるとともに、前記流入口側から前記密閉空間内に向かって、切刃が設けられ、
前記破砕用インペラに隣接して、カッタ格子が設置され、カッタ格子に隣接して、前記シャーベット噴射用インペラが設置されており、前記破砕用インペラ、前記シュラウドリング、前記カッタ格子および前記シャーベット噴射用インペラはいずれも、前記回転シャフトの同心状に設けられる、ことを特徴とする破砕ポンプ。
氷片または氷粒として人工雪を造雪しながら、造雪した人工雪を貯雪することなしに、そのまま請求項1に記載の破砕ポンプに供給することにより、連続的にシャーベットを生成する、シャーベットの生成方法。
密閉空間内において氷片または氷粒を水と混合しながら、回転力により氷片または氷粒を破砕することにより、シャーベットを生成しつつ、生成したシャーベットを密閉空間外へ噴射する、シャーベットの生成方法であって、
氷片または氷粒、および水を、請求項1に記載の破砕ポンプに供給し、破砕ポンプ内でインペラを回転させることにより、シャーベットを生成するとともに、生成したシャーベットを破砕ポンプから噴射する場合、
インペラの回転数を定めることにより、噴射対象物へのシャーベットの衝撃圧を調整する段階を、有する、シャーベットの生成方法。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両等の耐雪テストにおいて、人工雪をシャーベット化して、雪道走行時にホイールやシャシー付近にシャーベット雪が付着する状況を模擬することが行われてきた。
このような用途に用いられるシャーベットの製造装置は、たとえば、特許文献1に開示されている。
このシャーベットの製造装置は、雪ユニットと水ユニットとを有し、雪ユニットは、雪ホッパーを備え、雪ホッパーの下部には雪供給手段であるフィーダを設けて、フィーダには先端に噴射混合ノズルを有する可撓性の雪用ホースを接続してあり、雪用ホースには、インバータにより送風量が制御される空気圧送手段であるブロワからの風によりフィーダ内の雪が送り込まれるようにしており、一方、水ユニットは、水タンクを備え、水タンク内の水がポンプによって給水管から噴射混合ノズルに供給されるようになっており、給水管には流量計を設け、噴射混合ノズルへの水の供給量はポンプを制御して調節するようにしている。
【0003】
より詳細には、雪ユニットにおいて、製氷機により製造された氷片を砕氷機により砕氷して人工雪としたものを雪ホッパーに貯めるようにしてあるとともに、空気圧送手段による圧送空気を冷却するための圧送空気冷却用熱交換器が設けられる。
噴射混合ノズルは、雪用ホースを一端に接続した筒体の他端に、中心部に噴射孔を有するキャップが取り付けられ、筒体のキャップ側端部には水タンクからの水が供給される円環状の水ヘッダ部を内設するとともに、水ヘッダ部からキャップ側端面に抜ける水の吹出孔を円陣状に設け、キャップの内面は吹出孔から吹出された吹出水をキャップの軸線部方向へ反射させて水膜を生成するテーパー状に生成し、筒体からキャップ内に供給される雪が水膜を通過することによって水と混合してシャーベット雪となり、シャーベット雪がキャップの中心噴射孔から噴射される構造のものである。
【0004】
このようなシャーベットの製造装置によれば、シャーベット雪を人工的に製造して噴射する際、雪と水の供給量を制御することにより、シャーベット雪を製造・噴射して物体の冷却テスト用や冷却用に広く利用でき、特に、自動車の耐雪テストに使用する場合には、自然現象の制約を受けることなく、温度、湿度、風速等を所要に設定できる環境試験室内においてテスト用自動車の被テスト箇所等にシャーベット雪を吹き付けてテストを行なうことができる。
しかしながら、このような従来のシャーベットの製造装置、およびこのようなシャーベットの製造装置を用いたシャーベットの製造方法には、以下のような技術的問題点が存する。
【0005】
第1に、シャーベット製造装置の大型複雑化に伴い、高コストであるとともに、シャーベット製造装置を設置するのに広いスペースが要求される点である。
より詳細には、大型の製氷機、砕氷機および圧送空気冷却用熱交換器が必要であるとともに、複雑な形状をした噴射混合ノズルは高価であり、雪ユニット全体として占めるスペースも広くなる。
【0006】
第2に、単位時間当たりのシャーベット製造量が少なく、連続的にシャーベットを製造するのが困難な点である。
より詳細には、造雪工程と、造雪された雪を用いてのシャーベット製造工程とは、インラインでなくバッチ処理のために、一回でのシャーベット製造量は、貯雪する雪ホッパーの容積に制限されることから、連続的なシャーベットの製造は困難であるとともに、貯雪中に雪質が変質したり、雪ホッパーを別途冷却保持する必要がある一方、噴射混合ノズルにおいて、開放空間上で水と人工雪とを混合しながら噴射させることから、単位時間当たりのシャーベット製造量は、最大毎分数十キログラム程度と少ないものである。
【0007】
第3に、所望の含水量のシャーベットを噴射することにより、シャーベット衝撃圧を増大することが困難な点である。
より詳細には、シャーベットの噴射には、噴射混合ノズルまで雪を圧送する圧送空気を利用していることから、シャーベット噴射により対象物に与えるシャーベット衝撃圧は、最大数キロパスカル程度であり、シャーベット衝撃圧を増大するためには、圧送空気の流量を増大することにより雪粒子の加速が必要となるところ、噴射混合ノズルにおいて混合する水の噴射ベクトルが調整可能でないことから、圧送空気の噴流が雪と水との十分な混合を阻害し、混合ムラの発生や、圧送空気の噴流に起因して水が混合部以外に飛散することにより、所望の含水量のシャーベットを生成することが困難であった。
【特許文献1】特開2002−130882号
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明に係るシャーベットの生成装置および方法について、車両等の耐雪テスト専用に用いる場合を例として、添付図面に示す第1実施形態により説明する。
図1に示すように、本実施形態においては、シャーベットの生成装置10は、氷片を製造する製氷機12と、製氷機12により製造される氷片を搬送する氷温安定化コンベア14と、シャーベットの別の原料である水を供給する水ユニット16と、氷片と水とによりシャーベットを生成して、目的物である車両に向かって噴射する破砕ポンプ18とから概略構成されている。
【0022】
図2に示すように、氷片を製造する製氷機12は、いわゆる従来既知のタイプのリーマ式製氷機12であり、内周面を製氷面とする略円筒状の製氷シリンダ20と、製氷シリンダ20の内周面に向けて水を散水供給して、氷を形成する散水部と、製氷シリンダ20の下側に配設されて、製氷シリンダ20で凍結せずに流下した水を受止めて貯留する貯留部22と、製氷シリンダ20の内周面に沿って移動しつつ氷を割るリーマ24とを備える。
【0023】
製氷シリンダ20は、伝熱性に優れた内壁と外部に対し断熱状態とされた外壁とを有する二重構造の略円筒体とされ、内壁と外壁の間には製氷用の冷媒流路26が内蔵され、冷媒の働きにより冷却される内壁の内周面を製氷面とする。製氷シリンダ20では、冷却された内周面に散水された水が付着して凍結することで、たとえば、厚さ2mm前後の薄い氷を生じさせることができる。
【0024】
リーマ24は、鉛直方向に延びる略円柱状の回動軸の周囲に刃先を螺旋状配置とされる割氷用の複数の刃112を一体に取付けられてなり、中心軸111から突出するリーマ支持部に回動自在に支持される。リーマ24の刃112と製氷シリンダ20の内周面との最小間隔は、たとえば、氷の厚さより小さい0.4ないし0.5mm程度に設定可能にしている。このように、リーマ24は、製氷シリンダ20の中心線を中心に公転しつつ、中心軸111を中心に自転しながら、製氷面に形成される薄氷層を剥離するようにしてある。なお、リーマ24の、モーター103による公転軸115を中心とする公転による回転速度が、リーマによるフレーク状氷片の剥離サイクルを構成するが、従来既知の方法で、この回転速度を調整可能としている。
このリーマ24の各刃112における刃形は、螺旋状の曲線に沿う単純な直刃形状とされ、リーマ24における刃112の数を変えて刃112と氷との接触の間隔を調整することで、氷の大きさを粒状から塊状まで変化させることができる。
【0025】
このように、本実施形態に係るリーマ式製氷機12においては、冷却されると共に水の供給を受けて内周面に氷を生じさせる製氷シリンダ20に対し、その内周面の近傍を移動するリーマ24を配設し、リーマ24で内周面の氷を割り、内周面から剥がすことにより、氷を割り剥がすリーマ24と製氷シリンダ20の内周面とを接触させずに、フレーク状氷片として製氷することが可能である。
【0026】
次に、氷温安定化コンベア14は、コンベア14上で搬送するフレーク状氷片に対して気流を強制通風して、フレーク状氷片と空気との熱交換量を増大させることにより、フレーク状氷片の温度を強制通風の周囲空気温度に近くに維持するようにしている。
【0027】
図1に示すように、水ユニット16は、水タンク28を備えており、タンク内の水がポンプ30によって給水管32から破砕ポンプ18に供給されるようになっている。給水管には流量計34を設け、破砕ポンプ18への水の供給量はポンプ30を制御して調節し、それにより、破砕ポンプ18において生成されるシャーベットの水分含有率を制御するようにしている。
【0028】
変形例として、水の圧送をポンプではなく、圧縮空気で行い、密閉水タンク28の気相部へ圧縮機(図示せず)から圧力空気を供給して水をノズルに送り、水の供給量調節は圧送用空気の圧力を調節して行なうのでもよい。
なお、各ユニットは台車に搭載してあり、各台車は車輪を有する可搬式としてあり、両ユニットを共通の台車に搭載する場合もある。
【0029】
図3に示すように、破砕ポンプ18は、ポンプ本体40と、ポンプ本体40を駆動する電動機42とを着脱可能なカップリング44で連結したものであって、これらをベース46上に一体的に配置している。
ポンプ本体40は、一端に吸引口48が開口した略円筒形状のケーシング50と、ケーシング50内に配置されたインペラ52A,Bと、インペラ52Bの外周に設けられた密閉空間49と、密閉空間49の上部周面に開口した吐出口56と、インペラ52A,Bの駆動軸58を回転可能に支持する軸受部材60とを有している。また、ケーシング50の周壁には、開閉可能なスクリュー点検口(図示せず)が設けられ、カップリング44の周囲にはカバー44aが設けられている。
【0030】
軸受部材60は、2個のベアリング62を介して駆動軸58を回転可能に保持する軸受本体64と、軸受本体64のケーシング50側に取り付けられたオイルシールケース(図示せず)と、軸受本体64の電動機側に取り付けられたベアリング押さえ(図示せず)とを有している。
より詳細には、破砕ポンプ18は、密閉空間49を構成するケーシング50には、吸引口48に接続された氷片および水の流入口67、およびシャーベットの流出口である吐出口56が設けられ、密閉空間49内には、流入口67から吐出口56に向かって延びる駆動軸58と、いずれも駆動軸58を中心に回転可能なように駆動軸58のまわりに固定された、氷片破砕用インペラ52Aとシャーベット噴射用インペラ52Bとが設けられ、シャーベット噴射用インペラ52Bは、破砕用インペラ52Aから流出口側寄りに設けられる。
【0031】
破砕用インペラ52Aのまわりには、シュラウドリング53が設けられるとともに、吸引口48側から密閉空間49内に向かって、切刃51が設けられ、破砕用インペラ52Aに隣接して、カッタ格子69が設置され、カッタ格子69に隣接してシャーベット噴射用インペラ52Bが設置されており、破砕用インペラ52A、シュラウドリング53、カッタ格子69およびシャーベット噴射用インペラ52Bはいずれも、駆動軸58の同心状に設けられる。
氷片破砕用インペラ52Aとシャーベット噴射用インペラ52Bとは、従来既知の同様な構造であるが、
図3に示すように、シャーベット噴射用インペラ52Bは、駆動軸58に貫通固定するための開口63を有し、一方の表面に、周方向に所定の等角度間隔を隔てて、中心から螺旋状に延びる複数のスクリュー65が設けられている。
なお、インペラ52とケーシング50との連結には任意の構造を採用することができるが、インペラ52のメンテナンスや着脱交換を容易に行える構造とすることが好ましい。
【0032】
図1に示すように、流出口にはホース76が接続され、ホース76の先端には先細のノズル状である噴射ノズルが設けられ、先端から所要の含水率のシャーベット雪として噴射するように構成されている。この場合、ホース76の先端に設ける噴射ノズル内の下流側の噴出口面積を変えることにより、または、噴出口面積の異なる噴射ノズルを複数用意しておき、同じシャーベット流量で噴射速度を調整してもよい。
前者の場合、噴射ノズルとして、可撓性を具備する内管と外管とからなる二重管構造をなし、内外管の間の環状スペースには、気体材料または液体材料または固体材料が密閉式に充填され、充填量を調整することにより、噴射口に相当する内管の口径を調整可能としてもよい。より詳細には、噴射口を絞りたい場合には、充填量を増大し、それにより、内管の口径を縮径化し、逆に、噴射口を広げたい場合には、充填量を減少し、それにより、内管の口径を拡径化すればよい。二重管の材質、特に、内管の材質は、このような縮径化および拡径化が可能なように可撓性を具備するもの、たとえば、樹脂製でもよい。
また、ホース76自体をこのような2重管構造とすることにより、ホース76内でシャーベットが詰まらないようにしつつ、シャーベットの吐出圧を調整することによりシャーベット流量を調整してもよい。
【0033】
以上の構成を有する破砕ポンプ18によれば、水とともに密閉空間49内に吸引される氷片は、切刃51と回転するカッティングインペラ52Aとにより荒切り(1次破砕)される。荒切り(1次破砕)された氷片は、回転するカッティングインペラ52Aの遠心力によりシュラウドリング53に押し付けられ、シュラウドリング53の刃に接触して2次破砕される。カッティングインペラ52A、シュラウドリング53を通過した氷片は、カッタ格子69により3次破砕されるとともに、カッタ格子69を通過することにより、所望のサイズに破砕される。所望に破砕された氷片、すなわち生成されたシャーベットは、シャーベット噴射用インペラ52Bによって揚水され、目的物に向かって噴射されるように構成されている。
【0034】
なお、破砕ポンプ18において、投入される氷片の大きさと投入量に応じて、カッティングインペラ52により、投入された氷片を直接砕く場合もあれば、破砕ポンプ18の密閉空間内において水中に混入している氷片が、カッティングインペラ52の回転力により発生する遠心力により水流、場合により渦が発生し、それにより、氷片がケーシング50の内周面に向かって押付けられながら、氷片同士が衝突を繰り返すことにより、あるいは、氷片がケーシング50の内周面に押付けられることにより、投入される氷片が間接的に破砕される場合もある。
また、リーマ式製氷機12により製氷される氷片を、たとえば、従来既知の破砕ローラー等を利用して、いったん粗破砕して大粒の氷粒として、それを破砕ポンプ18に搬送して、微破砕する場合には、後者の間接的な破砕態様により微破砕されることが多いと予想され、カッタ格子69を省略してもよい。
【0035】
以上の構成を有するシャーベットの生成装置10について、その作用をシャーベットの生成方法とともに、図面を参照しながら以下に説明する。
この点、シャーベットの利用用途に応じて、要求されるシャーベットの諸元は異なるところ、車に対してシャーベットを吹き付けて試験を行う用途の場合には、時間当たりのシャーベットの製造量、目的物へのシャーベットの衝撃圧、シャーベットの含水率、および破砕された氷片の大きさに相当するシャーベットの粒径が重要なパラメータである。
これらのパラメータの目標値を設定して、どのようにシャーベットを製造するかについて、
図4を参照しながら以下に説明する。
まず、時間当たりのシャーベットの製造量を設定し、それに応じて、破砕ポンプ18への氷片あるいは氷粒の流入量を定める。
次いで、目的物へのシャーベットの衝撃圧、およびシャーベットの含水率を設定し、それらに応じて、破砕ポンプ18への水の流入量を定めるとともに、既に生成済のシャーベットが貯留されている場合には、生成済のシャーベットをどの程度利用するかに応じて、破砕ポンプ18への水の流入量を定める。
次いで、シャーベットの粒径を設定して、それに応じて、破砕ポンプ18の回転数を定めるとともに、定めた破砕ポンプ18の回転数に応じて、設定した目的物へのシャーベットの衝撃圧を調整する。
以上により、時間当たりのシャーベットの製造量、目的物へのシャーベットの衝撃圧、シャーベットの含水率およびシャーベットの粒径を所望に達成するように、破砕ポンプ18を用いて、シャーベットを製造し、目的物に吹き付けて試験を行うことが可能である。
要するに、既存の固形物破砕機構付ポンプをそのまま利用することにより、破砕対象である氷片を水とともに、このような破砕ポンプ18に供給することにより、破砕ポンプ18内でシャーベットが生成され、生成されたシャーベットを破砕ポンプ18外へ噴射することが可能であり、特に、破砕ポンプ18に供給する氷片、および水の流量、および破砕ポンプ18のインペラ回転数を調整することにより、生成されるシャーベットの諸元を所望に調整することが可能である。
【0036】
車両等の耐雪テストの場合、自然雪を模擬した状態で試験を行う一方、試験室内の限られたスペースにおいて、ホイール、シャシ、車輪付近等種々の箇所に所定の衝撃圧で吹き付ける必要があることから、
図5に示すように、時間当たりのシャーベット製造量、目的物へのシャーベット衝撃圧、シャーベット含水率、シャーベット粒径、シャーベット製造の連続性、およびシャーベット製造装置の簡略化、コンパクト化が要望されるところ、本願発明によれば、これらのすべての要求を満たすことが可能である。
消火装置用にシャーベットを用いる場合、特に降雪地での火災のときには、シャーベット製造装置を火災現場付近まで搬送して、付近の積雪をホッパー内へシャベルで投入するか、バキューム装置等の機械的手段で投入し、水は消防水を利用することによりノズルからシャーベット雪を吹き付けて消火用に利用する観点から、
図5に示すように、時間当たりのシャーベット製造量、目的物へのシャーベット衝撃圧、およびシャーベット製造装置の簡略化、コンパクト化が要望されるところ、本願発明によれば、これらのすべての要求を満たすことが可能である。
【0037】
食料品等の冷却用にシャーベットを用いる場合、たとえば、トロ箱内の鮮魚にノズルからシャーベット雪を吹き付けることにより、魚に吹き付けられたシャーベット雪に空隙が生じることなく魚と接触することで冷却効率を確保する一方、冷却後の保冷には含水率の少ないシャーベット雪が好ましいことから、
図5に示すように、時間当たりのシャーベット製造量、シャーベット含水率、シャーベット粒径が要望されるところ、本願発明によれば、これらのすべての要求を満たすことが可能である。
イベント用の雪像または寒冷地建造物制作用にシャーベットを用いる場合、たとえば、雪祭りの会場に、雪や氷を使用して著名な建造物や動物などを模したいわゆる雪像を作成するのに、木材で枠組みを作り、この枠内に雪を詰め込んで固めたあと、木枠を外し建造物や動物などの細部を忠実に表現するために削り出しや表面仕上げの大掛かりな作業を行なう観点から、(a) 含水率を種々に設定することによりシャーベット雪の付着性の確保、(b) シャーベット雪を高い場所にも容易に散布できること、(c)シャーベット雪の噴射により、複雑な建造物を形成すること、以上が必要であることから、
図5に示すように、時間当たりのシャーベット製造量、目的物へのシャーベット衝撃圧、およびシャーベット含水率が要望されるところ、本願発明によれば、これらのすべての要求を満たすことが可能である。
【0038】
氷菓用にシャーベットを用いる場合、たとえば、コンベアに載置されて順次送られてくるカップ等の容器に、シロップが混合されたシャーベット雪をノズルから供給することによって冷却時間の掛からない氷菓用シャーベットの製造する観点から、
図5に示すように、時間当たりのシャーベット製造量、シャーベット含水率、シャーベット粒径、およびシャーベット製造の連続性が要望されるところ、本願発明によれば、これらのすべての要求を満たすことが可能である。この場合、ノズルからのシャーベットの噴射速度を抑制しつつ、シャーベットを容器に供給可能であり、ノズルからのシャーベットの噴射速度を考慮して、容器とノズルとの間隔を離す必要がない。
【0039】
以上の構成を有するシャーベットの生成方法によれば、密閉空間内において、氷片の破砕と、破砕した氷片に対する含水と、含水させた氷片、すなわち、シャーベットの圧送を、同じ駆動源である回転力を利用して行うことから、従来においては、氷片の破砕と、破砕した氷片に対する含水と、シャーベットの圧送とを、別々の駆動源により、別個に行っていたところ、シャーベット製造装置の簡素化、コストダウンが可能で、シャーベット製造装置設置に対する必要スペースの低減が可能である。
以上の構成を有するシャーベットの生成方法によれば、水と、含水させた氷片、すなわち、シャーベットの圧送を、遠心力による発生する水流を利用して、氷片同士の衝突、氷片の密閉空間を構成する内面への衝突、あるいは、水流による渦への巻き込みによる氷片の自壊による間接的な破砕により行いつつ、その過程で、含水を行うとともにシャーベットの圧送を行うことから、従来においては、破砕した氷片の一定量を貯留する一方、貯留した氷片を圧送空気により圧送しつつ、圧送される氷片に対して水を噴射して含水させていたところ、単位時間当たりのシャーベット製造量を増大しつつ、連続的にシャーベットを製造可能である。
【0040】
以上の構成を有するシャーベットの生成方法によれば、密閉空間内において、氷片の破砕と、破砕した氷片に対する含水と、含水させた氷片、すなわち、シャーベットの圧送を、同じ駆動源である回転力を利用して行うことから、従来においては、貯留した氷片を圧送空気により圧送しつつ、圧送される氷片に対して水を噴射して含水させることにより、シャーベットを生成していたところ、圧送空気を用いず、回転力をシャーベットの生成とともにシャーベットの噴射にも利用しつつ、氷片および/または水を密閉空間内に送る流量を調整することにより、シャーベットの噴射速度および/またはシャーベット衝撃圧を増大可能である一方、密閉空間内での破砕した氷片に対する含水により所望の含水量のシャーベットを生成可能であり、以って所望の含水量のシャーベットを噴射しつつ、シャーベットの噴射速度および/またはシャーベット衝撃圧を増大可能である。
以上の構成を有するシャーベットの生成方法によれば、いったん生成したシャーベットを利用して、密閉空間内において氷片とを混合しながら、回転力により氷片を破砕して、シャーベットを生成しつつ、生成したシャーベットを密閉空間外へ噴射することにより、密閉空間内において氷片を水と混合しながら、シャーベットを生成する場合に比べて、シャーベット衝撃圧を確保しつつ、氷片に対する水分割合を抑えたシャーベットを生成可能である。
【0041】
変形例として、予め製造した所定含水量のシャーベットを水槽等のタンクに、溶解しないように温度管理して貯留しておき、必要に応じて破砕ポンプ18へ供給して、噴射してもよい。上述のように、水と氷片とを破砕ポンプ18へ供給しながら間欠運転を行うとすれば、水および氷片それぞれの供給に係わる同期制御が複雑化するところ、このことにより、シャーベットの噴射と、シャーベットの噴射停止とを繰り返す間欠運転が容易に行える。
【0042】
本件出願人は、特許文献1の出願人であり、特許文献1に開示のシャーベットの生成方法によれば、シャーベットの含水率を21%ないし100%、シャーベットの噴射初速度としては氷粒の搬送空気の流速として80メートル/秒としても、シャーベット衝撃圧を4キロパスカルしか達成できなかったのに対して、破砕ポンプ18として、ハスクバーナ・ゼノア株式会社の破砕ポンプであるディスインテグレータ(型 式 : KD125-MF、吐出量 : 毎分0.1〜0.6立方メートル、モーター出力: 11kW吐出量)を用いて試験したところ、破砕された氷片または氷粒の大きさを1ミリないし3ミリ、シャーベットの含水率を60%ないし100%、シャーベットの噴射初速度を14メートル/秒以下としつつ、シャーベット衝撃圧を100キロパスカルまで達成可能であり、シャーベット状の自然雪を模擬可能である点を確認している。
【0043】
以下に、本発明の第2実施形態について、
図6ないし
図8を参照しながら説明する。以下の説明において、第1実施形態と同様な構成要素については、同様な参照番号を付することによりその説明は省略し、以下では、本実施形態の特徴部分について詳細に説明する。
本発明の第2実施形態の特徴は、生成するシャーベットの用途に伴い、シャーベットの生成装置10を可搬式とし、そのために、第1実施形態においては、リーマ式製氷機12により製氷された氷片を搬送コンベア14を介して、直接破砕ポンプ18へ搬送していたが、本実施形態においては、このようなオンライン方式でなく、リーマ式製氷機12により製氷された氷片をいったん氷ホッパー70に貯氷し、氷ホッパー70より破砕ポンプ18へ搬送するバッチ方式とした点にある。
より詳細には、
図6に示すように、氷ホッパー70より搬送コンベア14を介して貯氷した氷片を破砕ポンプ18へ供給するようにしており、シャーベットの生成量は、氷ホッパー70の貯氷量により制約を受けるが、氷ホッパー70、搬送コンベア14、水ユニット16および破砕ポンプ18を同じ台車に搭載して、台車を車輪(図示せず)を有する可搬式とすることにより、シャーベット生成装置を火災現場まで容易に搬送することが可能である。場合により、搬送コンベア14を省略して、氷ホッパー70から破砕ポンプ18へ直接氷片を供給してもよい。
【0044】
氷ホッパー70は、貯氷した氷片を円滑に供給するフィーダ機能が必要であり、フィーダには各種のものがあるが、その一例として
図7にロータリフィーダを挙げる。
ロータリフィーダの場合、ブリッジ現象によって羽根車72上方のハウジング内に空隙が生じ、雪の円滑な供給が阻害されことがある。
これを阻止するためには、例えば
図7のようにホッパーに重い落とし蓋74を設けて中の雪を常に上から押圧するとか、
図8のようにホッパー1それ自体を下部が大径となるものに構成し、自重による雪の降下が阻害されないようにする。
【0045】
なお、従来は、砕氷機により破砕した氷粒を搬送空気により圧送していたことから、搬送空気を流すブロアと、内部に搬送空気を流し、氷ホッパーの排出口に連通する搬送管とが必要であり、このことに起因して、ロータリフィーダの場合、ブロワからの空気の圧力によってフィーダ内から氷ホッパー70内に空気が逆流するいわゆる吹上げ現象を起こし、この吹上げ現象によって羽根車による雪の供給効率が低下することがあったが、本実施形態においては、氷ホッパー70内に貯氷した氷片を破砕ポンプ18まで搬送空気により圧送しないことから、このような吹上げ現象が起こる恐れがない。
【0046】
以上のように、本実施形態において、シャーベットの生成装置10を火災発生現場に直接搬送可能とすることで、シャーベットを消火用途に利用しやすくなるとともに、シャーベットは消火に利用可能であればよいので、氷ホッパー70に貯氷することに伴い雪質の変質が生じるとしても問題は生じない。
【0047】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱しない範囲内において、当業者であれば、種々の修正あるいは変更が可能である。
たとえば、本実施形態において、リーマ式製氷機12により製氷したフレーク状の氷片を直接水とともに破砕ポンプ18に供給することにより、破砕して噴射させるものとして説明したが、それに限定されることなく、いわゆるブレード式製氷機により製氷した氷片でもよく、より具体的には、回転ドラムの円筒外周面に形成した氷薄層を固定ナイフにより剥離したり、固定ドラムの円筒内周面に形成した氷薄層を可動ブレードにより剥離させるのでもよい。
たとえば、本実施形態において、リーマ式製氷機12により製氷したフレーク状の氷片を直接水とともに破砕ポンプ18に供給することにより、破砕して噴射させるものとして説明したが、それに限定されることなく、リーマ式製氷機12により製氷したフレーク状の氷片を一対の破砕ローラーにより粗破砕して大粒の氷粒としたものを水とともに破砕ポンプ18に供給することにより、微破砕して噴射させるのでもよい。
【0048】
たとえば、本実施形態において、リーマ式製氷機12により製氷したフレーク状の氷片を直接水とともに破砕ポンプ18に供給することにより、破砕して噴射させるものとして説明したが、この場合、破砕ポンプ18に供給される氷片自体は、乾いた状態でもよいし、水割合の多い水と氷の混合状態で供給してもよい。
たとえば、本実施形態において、車両等の耐雪テスト専用に用いるシャーベットの生成として説明したが、それに限定されることなく、吹雪を模擬して車両に吹き付けたり、積雪した雪を圧雪してタイヤ試験を行ったりする車両に対する雪環境試験システムの付帯ユニットとして、シャーベットの生成を行ってもよく、この場合、雪環境試験システムにおける造雪ユニットおよび砕氷ユニットを流用することが可能である。
【0049】
たとえば、本実施形態において、氷片または氷粒を水とともに破砕ポンプ18に供給することにより、破砕して噴射させるものとして説明したが、それに限定されることなく、氷片または氷粒の粒径が十分に細粒化されている場合には、破砕より所定の衝撃圧で噴射させることを優先に、破砕ポンプ18の回転数を調整するのでもよい。
たとえば、本実施形態において、リーマ式製氷機12により製造されたフレーク状の氷片を破砕するものとして説明したが、それに限定されることなく、一対の破砕ローラーにより製造された氷粒を破砕するのでもよい。
たとえば、本実施形態において、リーマ式製氷機12により製造されたフレーク状の氷片を破砕するものとして説明したが、それに限定されることなく、一対の破砕ローラーにより製造された氷粒、またはフレーク状の氷片と氷粒とを併用して、破砕するのでもよい。
【0050】
たとえば、本実施形態において、破砕ポンプ18として、一次粉砕から三次粉砕まで段階的に粉砕するタイプのものとして説明したが、それに限定されることなく、所望のシャーベットを製造して、噴射可能である限り、一次粉砕のみのタイプでもよく、三次粉砕において、格子を用いなくてもよい。
たとえば、本実施形態において、人工雪を破砕するものとして説明したが、それに限定されることなく、所望のシャーベットを製造して、噴射可能である限り、乾き雪の自然雪を利用して、または、人工雪と自然雪とを併用して、破砕するのでもよい。
たとえば、本実施形態において、車両の耐雪テスト専用に用いるシャーベットの生成として説明したが、それに限定されることなく、自動車に限らず、ブルトーザ、フォークリフト車、あるいは鉄道車両等、車両一般のほかに船舶や建造物のテスト用に利用するものでよい。