特許第6589958号(P6589958)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6589958
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】車両用ハーネス支持構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20191007BHJP
   B62D 25/08 20060101ALI20191007BHJP
   B60S 1/02 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
   B60R16/02 620Z
   B62D25/08 H
   B60S1/02 B
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-197702(P2017-197702)
(22)【出願日】2017年10月11日
(65)【公開番号】特開2019-69740(P2019-69740A)
(43)【公開日】2019年5月9日
【審査請求日】2018年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】中村 淳
(72)【発明者】
【氏名】岸本 潤二
(72)【発明者】
【氏名】毛留 良太
【審査官】 菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−087947(JP,A)
【文献】 特開2002−264737(JP,A)
【文献】 特開2010−047076(JP,A)
【文献】 実開平02−042807(JP,U)
【文献】 米国特許第06315347(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
B60S 1/02
B62D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイパーデアイサーを備える車両用ハーネス支持構造であって、
上記ワイパーデアイサーのハーネスを、カウルボックス内に配索させるとともに、上記カウルボックス内に配設されるカウルセンターに支持させ
上記ハーネスは、上記カウルセンターの前端に支持されるとともに、該前端の車幅方向に配索される構造であり、
上記前端は、上記カウルセンターの車幅方向において、空調用開口に対応する空調用開口対応領域の外側から該空調用開口対応領域に向けて上方に傾斜する上方傾斜部を有し、
上記ハーネスは、上記上方傾斜部における、少なくとも上記空調用開口対応領域の外側に位置する下部から該上方傾斜部に沿って配設される構成とした
車両用ハーネス支持構造。
【請求項2】
上記カウルセンターの底面前部は、該カウルセンターの前端に向けて、底面後部に対して上方に傾斜して形成され、
上記ハーネスは、上記カウルセンターの前端に支持され、上記底面前部の後方から上記前端に向けて配索される構造とした
請求項に記載の車両用ハーネス支持構造。
【請求項3】
上記カウルセンターの前端には、該カウルセンターの底面前端から上方に向けて立設される前壁部が設けられ、
上記ハーネスは、上記前壁部の前面側に支持され、該前壁部の前面側に沿って配索される構造とした
請求項1又は2に記載の車両用ハーネス支持構造。
【請求項4】
上記カウルセンターの前端には、その車幅方向に沿って上下各側に互い違いに配設されるとともに上記ハーネスを上下各側から係止する一対の係止片からなるハーネス支持部が設けられた
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両用ハーネス支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ワイパーデアイサーを備える車両用ハーネス支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に例示されるようにフロントウインドにおける、ワイパーのブレード停止位置近傍に、降雪や氷結で固着したワイパーのブレードを解氷するための発熱装置としてのワイパーデアイサーが装備されたものが知られている。
【0003】
ワイパーデアイサーに備えたハーネスは、通常、電源用ハーネスとしてフロントウインドの前端から前方へ延出され、カウルボックス内を経由してエンジンルーム内に備えたバッテリーまで配索される。
【0004】
そしてこのワイパーデアイサー用のハーネスは、カウルボックス内を配索途中において、カウルボックス内に流れ込んだ水による被水を抑制するため、カウルボックス内に立設された、例えば、キーレスブザー等の他目的の補機取付けブラケットに支持されることが多い。
【0005】
一方、カウルボックス内にはフロントウインドを伝った水が空調用開口部に侵入しないように庇(カウルセンター)が設けられている。
【0006】
しかしながら、ワイパーがフルコンシールドタイプになるとフロントウインドの前端がより前方まで延び、それに伴ってカウルセンターも上記補機取付けブラケットを覆うように、より前方位置まで延びるようになり、結果的に、ワイパーデアイサーに備えたハーネスの補機取付けブラケットへの支持が困難になる。
【0007】
そうすると、ハーネスが被水し続けるおそれがあるが、ハーネスが被水し続けると、電気的信頼性が低下するだけでなく、付着した水が該ハーネスを伝ってカウルセンターを越えて空調用開口部に侵入する等のおそれもあることから対策を講じる必要があった。
【0008】
上記の特許文献1は、フロントウインドの広範囲にわたる霜取りや曇り止め等を目的として広範囲に埋め込んだ全面デアイサーに接続される全面デアイサー用のハーネスを、ワイパーデアイサー用のハーネスと共にフロントウインドの前端から延出しているが、これらハーネスのカウルボックス内の配索途中における具体的な支持構造について見受けられない。そもそも、特許文献1は、ワイパーフルコンシールドタイプを採用するに伴って補機取付けブラケットへのハーネスの支持が困難になるという上記課題について何ら言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2014−125152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、例えば、ワイパーフルコンシールドタイプを採用する等により、他目的の補機取付けブラケットを利用してハーネスをカウルボックス内において支持不可能となった場合においても、ハーネスをその被水を抑制すべく支持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、ワイパーデアイサーを備える車両用ハーネス支持構造であって、上記ワイパーデアイサーのハーネスを、カウルボックス内に配索させるとともに、上記カウルボックス内に配設されるカウルセンターに支持させ、上記ハーネスは、上記カウルセンターの前端に支持されるとともに、該前端の車幅方向に配索される構造であり、上記前端は、上記カウルセンターの車幅方向において、空調用開口に対応する空調用開口対応領域の外側から該空調用開口対応領域に向けて上方に傾斜する上方傾斜部を有し、上記ハーネスは、上記上方傾斜部における、少なくとも上記空調用開口対応領域の外側に位置する下部から該上方傾斜部に沿って配設される構成としたものである。
【0012】
上記構成によれば、例えば、ワイパーフルコンシールドタイプを採用する等により、他目的の補機取付けブラケットを利用してハーネスをカウルボックス内において支持不可能となった場合においても、ハーネスをその被水を抑制すべく支持することができる。
【0013】
さらに上述したように、上記ハーネスは、上記カウルセンターの前端に支持されるとともに、該前端の車幅方向に配索される構造であり、上記前端は、上記カウルセンターの車幅方向において、空調用開口に対応する空調用開口対応領域の外側から該空調用開口対応領域に向けて上方に傾斜する上方傾斜部を有し、上記ハーネスは、上記上方傾斜部における、少なくとも上記空調用開口対応領域の外側に位置する下部から該上方傾斜部に沿って配設される構成としたものであるため、空調用開口前方において、ハーネスからカウルボックス内に水が落ちることを防ぐことができる。従って、空調用開口前方において、ハーネスから落ちた水が空調用開口に吸い込まれることを防ぐことができる。
【0014】
この発明の態様として、上記カウルセンターの底面前部は、該カウルセンターの前端に向けて、底面後部に対して上方に傾斜して形成され、上記ハーネスは、上記カウルセンターの前端に支持され、上記底面前部の後方から上記前端に向けて配索される構造としたものである。
【0015】
上記構成によれば、上記カウルセンターに有する庇部を伝う水によるハーネスの被水を抑制できる。
【0016】
これにより、ハーネスに付着した水がカウルセンターの前端までハーネスを伝ってカウルボックス内に落ちることを防ぐことができる。
【0017】
この発明の態様として、上記カウルセンターの前端には、該カウルセンターの底面前端から上方に向けて立設される前壁部が設けられ、上記ハーネスは、上記前壁部の前面側に支持され、該前壁部の前面側に沿って配索される構造としたものである。
【0018】
上記構成によれば、上記カウルセンターに有する庇部を伝う水によるハーネスの被水を抑制できる。
【0019】
この発明の態様として、上記カウルセンターの前端には、その車幅方向に沿って上下各側に互い違いに配設されるとともに上記ハーネスを上下各側から係止する一対の係止片からなるハーネス支持部が設けられたものである。
【0020】
上記構成によれば、カウルセンターに対してファスナや締結部材等の固定部材を用いずともハーネスをカウルセンターに取り付けて支持することができ、またハーネスを、一対の係止片によって上下各側から係止して該ハーネスがバラけることなく支持することができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、例えば、ワイパーフルコンシールドタイプを採用する等により、他目的の補機取付けブラケットを利用してハーネスをカウルボックス内において支持不可能となった場合においても、ハーネスをその被水を抑制すべく支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態のハーネス支持構造を備えた車両前部の要部を示す斜視図。
図2図1において車両右側のカウルグリルを取外して要部を示す正面図。
図3図1において車両右側のカウルグリルを取外して要部を示す平面図。
図4図2のA−A線矢視に対応する車両前部の要部拡大断面図。
図5】本実施形態のハーネス支持構造の要部を示す斜視図。
図6】本実施形態のハーネス支持構造の要部を示す正面図。
図7】(a)は図5の矢視B要部拡大図、(b)は(a)中のC−C線矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Lは車両左方を示し、矢印Rは車両右方を示し、矢印Uは車両上方を示すものとする。
【0024】
図1に示すように、車体前部におけるエンジンルームEの車幅方向外側には、車両の前後方向に延びる車体剛性部材としての左右一対のフロントサイドフレーム100(右側のみ図示)が設けられており、左右一対のフロントサイドフレーム100の車幅方向外側かつ上方には車両前後方向に延びる左右一対のエプロンレインフォースメント101,101が設けられている。
【0025】
車体前部の左右各側において、夫々に対応するフロントサイドフレーム100とエプロンレインフォースメント101との間には、フロントサスペンション装置の上部を支持するサスペンションタワー部102が取り付けられている。
【0026】
エンジンルームEの上部には、エンジンルームEの上部開口を閉蓋するボンネット103(図4参照)が設けられ、ボンネット103はエプロンレインフォースメント101,101の後端近傍において不図示のヒンジ部材により、後端部を支点として開閉自在に支持されている。
【0027】
エンジンルームEの後部には、エンジンルームEと車室とを区画するダッシュパネル104が車幅方向に設けられ、このダッシュパネル104の上部には、図4に示すように、カウルパネル1が配設されている。
【0028】
このカウルパネル1は、シール材106を介してフロントウインド105をその下方から車幅方向の略全長にわたって支持するものである(同図参照)。
【0029】
フロントウインド105におけるワイパー40の停止位置(図1図4参照)には、ワイパーブレード41がフロントウインド105に凍結した場合に、該フロントウインド105を暖めて凍結を融解するワイパーデアイサーとしてのデアイサー熱線(図示省略)が設けられている。
なお、図2図4はワイパーアーム42の図示を省略しており、図5図6はワイパー40自体の図示を省略している。
【0030】
デアイサー熱線は、その接続相手側としてのバッテリー(図示省略)とハーネス51を介して電気的に接続されている。すなわち図2図6に示すように、ハーネス51は、フロントウインド105の車幅方向左側の前端105fから前方へ延出され、カウルボックス4内を経由してエンジンルームE内に備えたバッテリーまで配設される。
【0031】
なお、このワイパーデアイサー用ハーネス51は当例では、2本の電線51a,51bからなり、これら2本の電線51a,51bはその配索経路において所定間隔ごとにテープ52により束ねられている(図2図7参照)。
【0032】
図4に示すように、カウルパネル1は、下面部1aと縦壁部1bと上面部1cとを有して形成されており、下面部1aをダッシュパネル104の上縁から前方へ延出する上縁フランジ104aに上方から接合固定されている。
【0033】
カウルパネル1の縦壁部1bであって、該カウルパネル1の車幅方向における助手席側(車両右側)には、空調用開口15が形成されている。この空調用開口15は、その車幅方向においては図2に示す範囲Za(後述する空調用開口対応領域Za)に渡って形成されている。
【0034】
図1図4に示すように、カウルパネル1の前方には、ダッシュパネル10よりも前方へ延びるカウルメンバ2が配設されている。カウルメンバ2は、カウルパネル1の下面部1aを介してダッシュパネル104の上縁フランジ104aに支持されている。
【0035】
具体的には図4に示すよう、カウルメンバ2は、側面視で、カウルパネル1の下面部1aの上面に接合される後側フランジ部2aと、この後側フランジ部2aの前端から前方程下方に傾斜して延びるスラント部2bと、該スラント部2bの前下端から前方程上方へ延びる底部2cと、該底部2cの前端から上方へ延びる縦壁部2dと、該縦壁部2dの上端から前方へ水平に延びる前側フランジ部2eとで一体に形成されている。カウルメンバ2は、スラント部2bと底部2cと縦壁部2dとで側面視で上方に向けて開口する略凹状のカウルメンバ庇部2Tが形成されており(同図参照)、このカウルメンバ庇部2Tは、後述するカウルグリル10の後述するグリル開口13(図1図3図4参照)等から侵入した雨水を車外へ案内し、排出するための車幅方向に延びる流路として構成されている。
【0036】
図2図4の特に図4に示すように、カウルメンバ2のスラント部2bには、補機取付ブラケット60としてのキーレスブザー取付ブラケット60(以下、「取付ブラケット60」と略記する。)が立設されている。
【0037】
取付ブラケット60は、ブラケット本体部61と、該ブラケット本体部61の下端から前方へ延びる下端フランジ部62とで曲げ加工等により一体形成されており、下端フランジ部62の下面をカウルメンバ2のスラント部2bの上面に接合している。
【0038】
このように、取付ブラケット60をカウルメンバ2の底面部2cではなく、その後方のスラント部2bに設けることで取付ブラケット60の前方(取付ブラケット60と縦壁部2dとの間)に、キーレスブザー(図示省略)の取付ブラケット60への取付け作業スペースを確保している。
【0039】
カウルメンバ2の前部には、カウルレインフォースメント3(以下、「カウルレイン3」と略記する。)が下方から接合されている。
【0040】
カウルレイン3は、側面視で前後方向に水平に延びる前側フランジ部3aと、前側フランジ部3aの後端から下方へ延びる縦壁部3bと、縦壁部3bの下端から後方へ略水平に延びる下壁部3cと、該下壁部3cの後端から後方程下方へ延びる後端フランジ部3dとで一体に形成されている。
【0041】
そして、カウルメンバ2の底部2cの下面にカウルレイン3の後端フランジ部3dの上面を接合するとともに、カウルメンバ2の前側フランジ部2eの下面にカウルレイン3の前側フランジ部3aの上面を接合してその内部に車幅方向に延びるカウル閉断面4Sを構成している。
【0042】
上述のカウルパネル1とカウルメンバ2とカウルレイン3とにより、車幅方向に延びる所謂オープンカウル構造のカウルボックス4を構成している。
【0043】
図1図4に示すように、上述したカウルボックス4の上方には、車幅方向に延びるカウルグリル10が設けられている。なお、図2図3においてはカウルグリル10の車両右片側サイドを取り外した状態で図示している。
【0044】
カウルグリル10は、図1図4の特に図4に示すように、フロントウインド105の前縁105fからボンネット103の後端103rの下方に渡って設けられており、カウルボックス4の上部は、このカウルグリル10によって覆われている。
【0045】
図2図4の特に図4に示すように、カウルグリル10は、前後方向において、主に上壁部11(カウルグリル上部)と前壁部12(カウルグリル前部)との2部材から成る分割構造で共に合成樹脂材により構成されている。図1図3図4中に示すように、上壁部11には、外気導入用のスリット状のグリル開口13が形成されている。
【0046】
図2図7に示すように、カウルボックス4内、詳しくはカウルパネル1の前方であってカウルグリル10とカウルメンバ2との間には、フロントウインド105の上面を伝ってその前端105fから垂れ落ちる水の空調用開口15への侵入を防ぐカウルセンター20が配設されている。
【0047】
カウルセンター20は、上下方向に延びる後端フランジ部20aと、後端フランジ部20aの下端から前下後上状に傾斜して延びるスラント部20bと、スラント部20bの前端からスラント部20bより緩やかに前下後上状に傾斜して延びる底面後部20cと、底面後部20cの前端から前上後下状に傾斜する底面前部20dと、底面前部20dの前端から上方へ延びる前壁部20eとで合成樹脂材により一体に形成している。
【0048】
このようなカウルセンター20は、図4図5に示すように、後端フランジ部20aがカウルメンバ2に接合され、フロントウインド105の前端105fよりも前方に延びて全体として庇形状に形成されている。
なお同図に示すように、カウルセンター20は、底面後部20cと底面前部20dとで、車幅方向の直交断面視で略V字溝状の底部21を構成しており、底部21の車幅方向両端には、底部21に溜まった水をカウルメンバ庇部2Tへ排出する排水口22a,22bが形成されている。
【0049】
カウルセンター20は、その車両右側(当例の助手席側)であって、車幅方向における、少なくともカウルメンバ2に設けた空調用開口15に対応する部位に設けられている(図2図3参照)。
【0050】
詳しくは図2図3図6に示すように、カウルセンター20は、その車幅方向において、カウルパネル1に形成した空調用開口15(図4参照)の形成部位に対応する空調用開口対応領域Zaと、空調用開口対応領域Zaよりも車幅方向内側に位置し、空調用開口15の形成部位に対応しない空調用開口非対応領域Zbとに区分けされるように車両右側において車幅方向に延びている。
【0051】
図4に示すように、カウルセンター20の空調用開口対応領域Zaにおいては、後端フランジ部20aの後面がカウルパネル1の縦壁部1bの空調用開口15の上端部15uにその前面から接合され、カウルセンター20は空調用開口15の前方かつ上方に配設されている。
【0052】
図2図3図6に示すように、カウルセンター20の前壁部20eは、その車幅方向において、空調用開口非対応領域Zbから空調用開口対応領域Zaに向けて上方に傾斜する上方傾斜部23を有して形成されている。
【0053】
本実施形態では、上方傾斜部23は、空調用開口非対応領域Zbと空調用開口対応領域Zaとの境界を跨ぐように前壁部20eの車幅方向に形成されている。すなわち、上方傾斜部23の上部23uは前壁部20eの車幅方向において空調用開口対応領域Zaに位置するが、上方傾斜部23の下部23dは、空調用開口非対応領域Zbに位置する。
【0054】
また図4に示すように、カウルセンター20とカウルメンバ2との間の空間は外気導入路16として形成され、車外と外気導入路16とはカウルグリル10のグリル開口13によって連通するとともに、外気導入路16と不図示の空調装置とは空調用開口15によって連通している。
【0055】
そして、空調装置は、空調作動時にブロアファンによってグリル開口13、外気導入路16および空調用開口15を通じて導入した外気に基づいて冷却用および加熱用熱交換器で空調風を生成して車室内へと吹き出す構成としている。
【0056】
すなわち、空調作動時には、外気導入路16にはブロアファンによってグリル開口13から空調用開口15へ向けて外気が流れることになる(図4中の矢印w参照)。このため、空調作動時に空調用開口15の前方において仮にカウルセンター20を配設していなければ、フロントウインド105の上面を伝う水がその前端105fから外気導入路16を横切るようにカウルメンバ庇部2Tへと垂れ落ちる際に、その水が外気導入路16において空調用開口15へと流れる外気と共に空調用開口15を通過して空調装置側へと吸い込まれるおそれがある。
【0057】
このため、上述のとおり、カウルパネル1の車幅方向における、少なくとも空調用開口15に対応する部位にカウルセンター20を設けることでフロントウインド105の前端105fから垂れ落ちる水を空調用開口15へ吸い込まれる前に受け止めることができる。
【0058】
ところで図4に示すように、本実施形態におけるワイパー40は、その停止位置においてフロントウインド105の下方に設置されているが、前方運転視界を遮らないように、ワイパーブレード41とワイパーアーム42がボンネット103の後端103rよりも下方に収まる位置に配設されたフルコンシールドワイパーを採用している。
【0059】
それに伴って、フロントウインド105は、その前端105fがワイパー非コンシールドタイプを採用した車両におけるものよりも前下に延設している。さらに、カウルセンター20についても、このような前下に延びたフロントウインド105の前端105fから垂れ落ちる雨水等の水を受け止めることができるようにワイパー非コンシールドタイプを採用した車両に備えたものよりも前方に延設している。具体的には図4に示すように、カウルセンター20は、カウルメンバ2に立設した取付ブラケット60を覆うように該取付ブラケット60よりも前方に延びている。
【0060】
ここで図2図3図5図6に示すように、ワイパーデアイサー用のハーネス51は、フロントウインド105の前端105fかつ車幅方向の空調用開口非対応領域Zbの位置から前方へ延出され、カウルボックス4内、すなわち、カウルグリル10とカウルメンバ2との間を通過するように配索されている。
【0061】
ところでワイパー非コンシールドタイプを採用した車両においては、一般にカウルメンバ庇部2Tに流れ込んだ水によるハーネス51の被水を抑制するため、カウルグリル10とカウルメンバ2との間において前方へ配索されたハーネス51は、取付ブラケット60に取り付け支持される(図示省略)。
【0062】
これに対して本実施形態のように、ワイパーフルコンシールドタイプを採用した車両においては、上述したようにフロントウインド105の前下への延出に伴ってカウルセンター20についても、取付ブラケット60を覆うように該取付ブラケット60よりも前方へ延出しているため、取付ブラケット60によるハーネス51の支持が困難になる。
【0063】
このため、ワイパーフルコンシールドタイプを採用した本実施形態の車両においては、図2図6に示すように、ハーネス51を取付ブラケット60ではなく、カウルセンター20に支持させている。
【0064】
具体的には、ハーネス51は、フロントウインド105の前端105fからカウルボックス4を通過する配索部位においては、図3図5に示すように、カウルセンター20とカウルグリル10の上壁部11との間の空間を横切るように底面前部20dの後方から前壁部20eに向けて前方へ配索され、図2図3図5図6に示すように、前壁部20eを乗り越えて前壁部20eの前方へ配索されるとともに平面視で車両前方から車幅方向外側へ方向転換するように略90度屈曲して、前壁部20eの前面20ef側に沿って車幅方向外側へ配索されている。
【0065】
ここで、上述したように、ハーネス51が前壁部20eを乗り越えて前壁部20eの前方へ配索されるが、前壁部20eの車幅方向において、ハーネス51が前壁部20eを乗り越えて前壁部20eの前方へ配索される部位は、前壁部20eの車幅方向における、空調用開口非対応領域Zb(図2図3図6参照)に含まれる部位であり、より詳しくは上方傾斜部23の下部23dとしている(同図参照)。
【0066】
なお図5に示すように、ハーネス51は、カウルボックス4の配索部分の車幅方向外端が、エンジンルームE側へ向けて折り返され、該車幅方向外端からバッテリーまでエンジンルームE内に配索される不図示のエンジンルーム配索部分の一端にコネクタ53を介して接続される。
【0067】
このようなハーネス51は、カウルセンター20の前壁部20eに設けられた複数のハーネス支持部30(30a,30b,30c)によって支持されている。図2図3図5図6に示すように、本実施形態においてハーネス支持部30a,30b,30cは、それぞれ前壁部20eの車幅方向における外側部、中間部、内側部に配設されており、これらハーネス支持部30は、前壁部20eの前面20ef側に沿って車幅方向外側へ配索されるハーネス51を支持している。
【0068】
特に、3つのハーネス支持部30a,30b,30cのうち車幅方向内側位置に設けたハーネス支持部30c(以下、「車幅内側ハーネス支持部30c」と称する。)は、図2図6に示すように、前壁部20eの車幅方向における上方傾斜部23の下部23dと略同じ高さで該下部23dよりも若干車幅方向外側位置に設けられている。一方、車幅方向中間位置に設けたハーネス支持部30b(以下、「車幅中間ハーネス支持部30b」と称する。)は、同図に示すように、前壁部20eの車幅方向における上方傾斜部23の上部23uと略同じ高さで該上部23uよりも若干車幅方向外側位置に設けられている。
【0069】
すなわち、車幅中間ハーネス支持部30bは、上方傾斜部23の上部23uと下部23dとの高低差に伴って車幅内側ハーネス支持部30cよりも高い位置に配設されている。
【0070】
これにより、前壁部20eをその後方から乗り越えて前面20ef側へ配索されたハーネス51は、車幅中間ハーネス支持部30bおよび車幅内側ハーネス支持部30cによって支持されることで、前壁部20eの上方傾斜部23に沿って車幅方向外側程上方に傾斜して配索される(同図参照)。
【0071】
ハーネス支持部30は、車幅方向の外側、中間部、内側共に同一形状で形成されているため、その具体的形状について車幅中間ハーネス支持部30bに基づいて図7(a)(b)を用いて説明する。
図7(a)は図5の矢視B要部拡大図を示し、図7(b)は図7(a)中のC−C線矢視断面図を示す。詳しくは、図7(b)は一対の係止片の突出方向中間部における突出方向の直交断面を示す。
【0072】
ハーネス支持部30は、ハーネス51を上下各側から係止する上側係止片31と下側係止片32との一対の係止片31,32から構成されている。一対の係止片31,32は、共に前壁部20eの前面20efから前方へ突出形成されており、当例では下側係止片32を車幅方向内側に配設するとともに、上側係止片31を車幅方向外側に配設している。
【0073】
一対の係止片31,32は、前壁部20eの車幅方向に沿って上下各側に互い違いに配設されるとともに、ハーネス51の上下方向の厚み(電線51a,51bの径)に相当する上下方向の間隔を空けて上下各側に配設された、所謂迷路構造を構成している。
【0074】
上側係止片31の前端(先端)は、下方に向けて突出する爪31aが形成されるとともに、下側係止片32の前端(先端)は、上方に向けて突出する爪31bが形成されている。
【0075】
ハーネス支持部30は、ハーネス51を一対の係止片31,32にて上下各側から挟み込むようにして係止することができ、その際、一対の係止片31,32の各爪31a,31bによってハーネス51が前方へ抜けないように係止する。
【0076】
また、ハーネス支持部30によるハーネス51の支持部位は、ハーネス51の配索方向における、ハーネス51を構成する2本の電線51a,51bを束ねるテープ52の取付け部位と一致させている(図2図7(a)(b)参照)。
【0077】
そして、一対の係止片31,32は、テープ52の長さ相当のピッチを空けて車幅方向に配設されており(図7(a)(b)参照)、該一対の係止片31,32の夫々によってテープ52の長さ方向の各端を係止することで該一対の係止片31,32に対するハーネス51の配索方向への位置ズレを防いでいる。
【0078】
上述した本実施形態の車両用ハーネス支持構造は、ワイパーデアイサーのハーネス51を、カウルボックス4内に配索させるとともに、カウルボックス4内に配設されるカウルセンター20に支持させたものである(図2図7(a)(b)参照)。
【0079】
上記構成によれば、ワイパーフルコンシールドタイプを採用した本実施形態の車両においては、フロントウインド105の前下部がより前下に延出し、それに伴ってカウルセンター20が他目的のキーレスブザー等の取付ブラケット60の上方を覆うように前方へ延出したため、ハーネス51を、該取付ブラケット60を利用して支持不可能となるが、そのような場合においても、カウルセンター20を利用してハーネス51を支持することでハーネス51の被水を抑制できる。
【0080】
この発明の一実施形態においては、ハーネス51は、カウルセンター20の前壁部20eに支持されるとともに、該前壁部20eの車幅方向に配索される構造であり、前壁部20eは、カウルセンター20の車幅方向において、空調用開口15に対応する空調用開口対応領域Zaの外側、つまり空調用開口非対応領域Zbから空調用開口対応領域Zaに向けて上方に傾斜する上方傾斜部23を有し、ハーネス51は、上方傾斜部23における、少なくとも空調用開口非対応領域Zbに位置する下部23dから該上方傾斜部23に沿って配設される構成としたものである(図2図3図5図6参照)。
【0081】
換言すると、ハーネス51は、カウルセンター20の前端に支持され、該前端に沿って車幅方向内側から外側へ配索される構造であり、前端、すなわち前壁部20eのハーネス51配索途中に、車幅方向内側から外側へ上方に傾斜する上方傾斜部23を有し、上方傾斜部23を、その下部23dが、カウルセンター20の車幅方向において、空調用開口15に対応する空調用開口対応領域Zaの外側(空調用開口非対応領域Zb)に設けたものである(図2図3図6参照)。
【0082】
上記構成によれば、ハーネス51に水が付着してもその水を空調用開口非対応領域Zbにおいてカウルメンバ庇部2Tに落とすことができる。よって、空調用開口15前方において、ハーネス51に付着した水が落ちて空調用開口15に吸い込まれることを防ぐことができる。
【0083】
この発明の一実施形態においては、カウルセンター20の底面前部20dは、該カウルセンター20の前端に向けて、底面後部20cに対して上方に傾斜して形成され(図4参照)、ハーネス51は、カウルセンター20の前端に支持され(図2図6参照)、底面前部20dの後方から該前端に向けて配索される構造としたものである(図2図3図5図6参照)。
【0084】
上記構成によれば、カウルセンター20の底部20c,20dを伝う水によるハーネス51の被水を抑制できる。
これにより、ハーネス51に付着した水がハーネス51に沿ってカウルセンター20の前壁部20eまで伝い、カウルボックス4内に落ちることを防ぐことができる。
【0085】
この発明の一実施形態においては、カウルセンター20の前端には、底面前部20dの前端から上方に向けて立設される前壁部20eが設けられ、ハーネス51は、前壁部20eの前面20ef側に支持され、該前壁部20eの前面20ef側に沿って配索される構造としたものである(図2図7(a)(b)参照)。
【0086】
上記構成によれば、カウルセンター20の底部21(20c,20d)を伝う水によるハーネス51の被水を抑制できる。
【0087】
この発明の一実施形態においては、カウルセンター20の前壁部20eには、その車幅方向に沿って上下各側に互い違いに配設され、ハーネス51を上下各側から係止する一対の係止片31,32からなるハーネス支持部30が設けられたものである(図2図7(a)(b)の特に図7(a)(b)参照)。
【0088】
上記構成によれば、カウルセンター20に対してファスナや締結部材等の固定部材を用いずともハーネス51をカウルセンター20に取り付けて支持することができ、またハーネス51を、一対の係止片31,32によって上下各側から係止して該ハーネス51がバラけることなく支持することができる。
【0089】
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく様々な実施形態で形成することができる。
例えば上述した実施形態では、ワイパーデアイサー用ハーネスの支持構造について説明したが、本発明はワイパーデアイサー用ハーネスの支持構造に限らず、例えば、フロントウインド105の前面にデアイサー熱線を配設した全面デアイサー用ハーネスの支持構造に適用してもよい。
【0090】
また、一般にワイパーフルコンシールドタイプの車両においては、ワイパー40がフルコンシールドタイプであるが故にハーネス51を取付ブラケット60に支持できなくなるおそれがあるが、本実施形態のハーネス支持構造を、ワイパーフルコンシールドタイプの車両に適用することで、取付ブラケット60に支持できなくなったハーネス51を、カウルセンター20によって支持できるため好適な実施形態といえる。但し、本発明は、これに限らず、ワイパーブレード42以外の主要部分をフロントウインド105の前下に収納したワイパーセミコンシールドタイプの車両に適用してもよく、またワイパー非コンシールドタイプの車両においてハーネス51を取付ブラケット60に支持させずにカウルセンター20によって支持する構成も排除しない。
【符号の説明】
【0091】
4…カウルボックス
15…空調用開口
20…カウルセンター
20c…底面後部
20d…底面前部
20e…前壁部(カウルセンターの前端)
20ef…前壁部の前面
23…上方傾斜部
23d…上方傾斜部の下部
30…ハーネス支持部
31,32…一対の係止片
51…ハーネス
Za…空調用開口対応領域
Zb…空調用開口非対応領域(空調用開口対応領域の外側)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7