(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の災害センシング装置の中の少なくとも1つの災害センシング装置の前記無線通信回路は、他の災害センシング装置から無線送信された検知指標データ及び予知指標データを、前記中継装置又は更なる他の災害センシング装置に無線により中継する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の災害対応システム。
配置位置における複数種の測定データの各々を時系列に取得する複数のセンサより取得された少なくとも1種の測定データを処理して、災害発生検知の指標となる検知指標データを生成する検知処理手段と、
前記複数のセンサの中の少なくとも1つにより時系列に取得された前記複数種の測定データを処理して、災害発生予知の指標となる予知指標データを生成する予知処理手段と、
前記検知処理手段により生成された前記検知指標データ及び前記予知処理手段により生成された前記予知指標データの少なくとも一方と、前記災害センシング装置の識別情報を含む無線信号を送出する無線通信回路と、
前記無線通信回路により順次受信される複数の指示信号に基づいて、前記複数のセンサが停止状態となり、かつ、前記無線通信回路が周期的に動作可能状態と停止状態とに切り替えられる第1動作モード、前記複数のセンサが停止状態となり、かつ、前記無線通信回路が動作可能状態となる第2動作モード、及び、前記複数のセンサ及び前記無線通信回路が動作可能状態となる第3動作モードを含む複数の動作モード間を切り替える動作制御手段と、
を有し、
前記複数の指示信号は、前記複数の動作モードの中で前記第1動作モードでの稼働時間が最も長くなる指示を含む、災害センシング装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明する。以下の各実施形態では、災害の予知及び検知を行う災害対応システム及び災害対応方法が例示される。以下の各実施形態で扱われる対象の災害の種類は限定されない。
[第1実施形態]
〔システム構成及びハードウェア構成〕
図1は、第1実施形態における災害対応システム1の構成を概念的に示す図である。以降、災害対応システム1を略してシステム1と表記する場合もある。
図1に示されるように、システム1は、サーバ装置30、サーバ装置30と通信可能な中継装置20、複数の災害センシング装置10を有する。災害センシング装置10は、他の災害センシング装置10の少なくとも1つと無線通信可能な範囲で所定の位置に各々配置される。複数の災害センシング装置10のうち少なくとも1つは、中継装置20と無線通信可能な範囲に位置する。また、複数の災害センシング装置10は、各々の識別のために災害センシング装置10(#1)から(#n)と表記する場合もある。なお、災害センシング装置10を略してセンシング装置10と表記する場合もある。
【0016】
サーバ装置30は、いわゆるコンピュータであり、例えば、バスで相互に接続される、CPU(Central Processing Unit)31、メモリ32、入出力インタフェース(I/F)33、通信回路34を有する。メモリ32は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスクが適用可能であるが、これらに限られるものではない。通信回路34は、他のコンピュータや機器と通信する。通信回路34には、可搬型記録媒体も接続され得る。
【0017】
入出力I/F33は、表示装置35、入力装置36等のユーザインタフェース装置と接続可能である。表示装置35は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイのような、CPU31やGPU(Graphics Processing Unit)(図示せず)により処理された描画データを表示する装置である。入力装置36は、キーボード、及び、マウスのようなユーザ操作の入力を受け付ける装置である。表示装置35及び入力装置36は一体化され、タッチパネルとして実現されてもよい。
【0018】
中継装置20は、CPU21、メモリ22、通信回路24、無線通信回路25、アンテナ26を有する。無線通信回路25は、無線回路を含み、アンテナ26を介して、センシング装置10(#1)から(#n)の少なくとも1つと無線通信するハードウェア要素である。通信回路24は、通信網5を介して、サーバ装置30と通信するハードウェア要素である。通信網5は、有線又は無線の公衆通信網であってもよく、防災無線網のような専用通信網であってもよい。
【0019】
センシング装置10(#1)から(#n)の各々は、アンテナ11、複数のセンサ12、CPU13、メモリ14、無線通信回路15を有する。なお、センシング装置10(#n)の各要素の参照符号は省略している。
【0020】
複数のセンサ12は、配置位置における複数種の測定データの各々を時系列に取得する。取得される測定データは、光、音、振動、雨量、風量、土壌水分量、気温、湿度、太陽光の光量、傾き、圧力等、災害の発生時及び発生前に通常時と変わりうる情報であれば、特に制限されない。また、センサ12の数も同様に制限されない。
【0021】
無線通信回路15は、無線回路を含み、アンテナ11を介して、他のセンシング装置又は中継装置20と無線通信を行うハードウェア要素である。センシング装置10(#1)から(#n)の各々は、同様の構成を含んでいればよいため、以下の説明では特に必要になる場合を除いて、センシング装置10と総称される。
【0022】
サーバ装置30、中継装置20及びセンシング装置10の各ハードウェア構成はそれぞれ制限されない。また、システム1に含まれる、サーバ装置30、中継装置20及びセンシング装置10の数も制限されない。
【0023】
〔処理構成〕
図2は、第1実施形態における災害センシング装置10の処理構成例を概念的に示す図である。
図2に示されるように、センシング装置10は、検知処理部51、予知処理部52、無線通信部53を有する。検知処理部51、予知処理部52、無線通信部53は、例えば、CPU13によりメモリ14に格納されるプログラムが実行されることにより実現される。また、当該プログラムは、例えば、CD(Compact Disc)、メモリカード等のような可搬型記録媒体等に格納される。
【0024】
検知処理部51は、複数のセンサ12の中の少なくとも1つにより取得された少なくとも1種の測定データを処理して、災害発生検知の指標となる検知指標データを生成する。検知指標データは、センサ12から取得される測定データそのものではなく、その測定データが処理されたデータである。検知指標データは、災害発生検知の指標となればどのようなデータであってもよい。例えば、後述のように、災害発生の検知結果を示すデータであってもよい。
【0025】
予知処理部52は、複数のセンサ12により時系列に取得された複数種の測定データを処理して、災害発生予知の指標となる予知指標データを生成する。予知指標データは、センサ12から取得される測定データそのものではなく、その測定データに対する処理で得られるデータである。予知指標データは、災害発生予知の指標となればどのようなデータであってもよい。例えば、後述のように、災害発生の危険度を示すデータであってもよい。
【0026】
無線通信部53は、無線通信回路15に、検知処理部51により生成された検知指標データ及び予知処理部52により生成された予知指標データの少なくとも一方を示す無線信号をアンテナ11から送出させる。アンテナ11から送出される無線信号は、検知指標データ及び予知指標データの少なくとも一方に加えて、各センシング装置10の識別情報も含む。識別情報により、検知指標データ又は予知指標データの送信元となるセンシング装置10が認識される。
【0027】
但し、無線通信部53と無線通信回路15との役割分担は限定されない。例えば、無線通信部53は、所定の信号フォーマットに基づいて、当該検出結果及び当該予知指標データを示すビット列を生成し、そのビット列を無線通信回路15に渡すことで、上記処理を実現することもできる。また、上記ビット列の生成が不要な場合には、無線通信部53は、なくてもよい。
【0028】
無線通信部53は、生成された検知指標データ及び生成された予知指標データの両方を示す無線信号を無線通信回路15に送出させることができる。また、無線通信部53は、生成された検知指標データの中で所定条件を満たす代表データを無線信号にて無線通信回路15に送出させ、生成された予知指標データの中で所定条件を満たす代表データを無線信号にて無線通信回路15に送出させることができる。
【0029】
図3は、第1実施形態におけるサーバ装置30の処理構成例を概念的に示す図である。
図3に示されるように、サーバ装置30は、情報収集部61を有する。情報収集部61は、例えば、CPU31によりメモリ32に格納されるプログラムが実行されることにより実現される。また、当該プログラムは、例えば、CD、メモリカードのような可搬型記録媒体やネットワーク上の他のコンピュータから入出力I/F33を介してインストールされ、メモリ32に格納される。
【0030】
情報収集部61は、各センシング装置10から送信された、センシング装置10の配置位置毎の検知指標データ及び配置位置毎の予知指標データを、中継装置20から受信する。
【0031】
〔動作例(災害対応方法)〕
以下、第1実施形態における災害対応方法について
図4を用いて説明する。
図4は、第1実施形態におけるシステム1の動作例を示すシーケンスチャートである。以下では、各センシング装置10及びサーバ装置30を各工程の実行主体として説明するが、実行主体は、システム1を構成する少なくとも1つの機器であればよい。
【0032】
各センシング装置10が、配置位置における複数種の測定データの各々を時系列に取得し(S41)、取得された複数種の測定データの中の少なくとも1種の測定データを処理する。各センシング装置10は、災害発生検知の指標となる検知指標データを生成し(S42)、時系列に取得された複数種の測定データを処理して、災害発生予知の指標となる予知指標データを生成する(S43)。続いて各センシング装置10は、生成された検知指標データ、及び、生成された予知指標データの少なくとも一方を示す無線信号を送出する(S44)。
【0033】
サーバ装置30は、各センシング装置10から送信された、配置位置毎の検知指標データ及び配置位置毎の予知指標データを、中継装置20から受信する(S46)。
【0034】
〔第1実施形態における作用及び効果〕
上述のように、第1実施形態では、複数種の測定データを取得可能な複数のセンサをそれぞれ有する複数のセンシング装置10がそれぞれ所定の位置に配置され、各配置位置において、複数種の測定データがそれぞれ順次取得される。当該各センシング装置10では、取得された測定データが処理されることにより、災害発生検知の指標となる検知指標データがそれぞれ生成され、災害発生予知の指標となる予知指標データがそれぞれ生成される。そして検知指標データ及び予知指標データの少なくとも一方を示す無線信号が各センシング装置10からそれぞれ送出される。このように送出された配置位置毎の検知指標データ及び配置位置毎の予知指標データが、中継装置20を経由してサーバ装置30により受信される。
【0035】
つまり、第1実施形態では、センシング装置10の配置位置で取得された少なくとも1種の測定データに基づいて、災害発生の検知と予知とに関する指標データが生成される。したがって、位置毎の特性(位置条件)を反映した検知指標データ及び予知指標データを生成することができる。また、検知指標データ及び予知指標データを用いた災害発生の検知及び予知を行うことで、第1実施形態によれば、位置条件(土地条件等)を加味しない手法に比べ、検知及び予知の精度を上げることができる。更に、第1実施形態では、センシング装置10毎、即ち、異なる位置毎に、災害発生の予知と検知とに関する指標データが生成されるため、サーバ装置30に、複数の位置についての災害発生の予知指標データ及び検知指標データを集めることができる。
【0036】
更に、第1実施形態では、測定データに対する処理で得られる、測定データそのものではない検知指標データ及び予知指標データがサーバ装置30に収集されるため、サーバ装置30での災害発生の検知処理及び予知処理の負荷を低減させることができる。
【0037】
また、このような効果を得るために、複数のセンシング装置10は、所望の位置に配置されればよい。この場合、事前に位置条件モデル(土地条件等)を生成する手法に比べて、システムの設置(初期稼働)コストを低減することができ、ひいては、システム1を設置する範囲を広げ易くすることができる。
【0038】
また、第1実施形態では、センシング装置10が、他のセンシング装置10の少なくとも1つと無線通信を行う。各センシング装置10は、各々の配置位置に応じて直接又は他のセンスング装置10を介して中継装置20と無線通信する。また、各センシング装置10で得られた検知指標データ及び予知指標データが中継装置20を経由して、サーバ装置30まで送り届けられる。従って、第1実施形態によれば、センシング装置10間及びセンシング装置10と中継装置20との間を通信線等で接続する必要がないため、システムの設置コストを低減することができる。
【0039】
更に、第1実施形態では、各センシング装置10は、検知指標データ及び予知指標データを送信するため、複数種の測定データそのものを順次送信することは必ずしも必要ではない。従って、測定データそのものを順次送信しないようにすれば、センシング装置10から送出される通信量を低減できるため、各センシング装置10及び中継装置20の無線通信に関する消費電力を削減することができる。更に、中継装置20とサーバ装置30との間の通信量も低減できる。
【0040】
以下、上述の第1実施形態について更に詳細を説明する。以下、詳細実施形態として、第2実施形態及び第3実施形態を例示する。
[第2実施形態]
以下、第2実施形態における災害対応システム1について、第1実施形態と異なる内容を中心に説明する。以下の説明では、第1実施形態と同じ内容については適宜省略される。
【0041】
第2実施形態におけるシステム1のシステム構成及びハードウェア構成は第1実施形態と同様である。但し、第2実施形態における各センシング装置10は、後述する省電力制御により、一次電池又は二次電池を主電源としたとしても、長時間動作することができるため、商用電源との配線をなくすことができる。
【0042】
第2実施形態におけるシステム1に含まれる複数のセンシング装置10は、少なくとも1つのマルチホップ無線ネットワークを形成する。マルチホップ無線ネットワークで許される最大ホップ数等に基づいて、中継装置20の数及び配置が決定される。マルチホップ無線ネットワークにおいて、中継局となるセンシング装置10の無線通信回路15は、他の災害センシング装置10から無線送信された検知指標データ及び予知指標データを、中継装置20又は更なる他の災害センシング装置10(上位のセンシング装置10)に無線により中継する。但し、この中継処理は、無線通信回路15によって実現されてもよいし、無線通信回路15と無線通信部53との協働により実現されてもよい。また、無線通信回路15及び無線通信部53は、他の災害センシング装置10から受信された信号を復調及び変調して、新たな信号を生成してもよいし、復調及び変調することなく、当該信号を中継するようにしてもよい。
【0043】
〔処理構成〕
図5は、第2実施形態におけるセンシング装置10の処理構成例を概念的に示す図である。
図5に示されるように、第2実施形態におけるセンシング装置10は、第1実施形態の構成に加えて、モデル生成部55、動作制御部56及び時間修正部57を更に有する。
モデル生成部55、動作制御部56及び時間修正部57についても、CPU(図示せず)によりメモリ(図示せず)に格納されるプログラムが実行されることにより実現される。
【0044】
モデル生成部55は、複数のセンサ12により時系列に取得された複数種の測定データに基づき、複数種の測定データに関する関係モデルを生成する。例えば、モデル生成部55は、複数種の測定データの中の1つを目的変数とし、残りの測定データを説明変数とする回帰式を上記関係モデルとして生成することができる。関係モデルは複数生成されてもよい。この場合、モデル生成部55は、複数種の測定データの中の1つを目的変数とし、残りの測定データの各々を1つの説明変数とする複数の回帰式を生成することができる。関係モデルの生成には、周知のあらゆる手法を用いることができる。
【0045】
複数種の測定データの中に、光、音、振動等の時間波形データが含まれる場合には、モデル生成部55は、その時間波形データを周波数変換し、得られる周波数成分データの特徴量を時系列に並べた周波数時系列データを関係モデルの1変数に用いることもできる。
また、モデル生成部55は、当該時間波形データから所定の地域における土壌の固有振動数(卓越振動数とも呼ばれる)を算出し、その固有振動数を関係モデルの1変数に用いることもできる。
関係モデルは、複数種の測定データの中の相関の高いものの組み合わせで生成されることが望ましい。
【0046】
予知処理部52は、モデル生成部55により生成された関係モデルを用いて、複数のセンサ12により取得された複数種の測定データを処理することで、上記予知指標データを生成する。モデル生成部55により生成された関係モデルは、災害が発生していない平常時に取得された複数種の測定データ間の相関を表す。予知処理部52は、当該関係モデルが表す相関の変化に応じて、災害発生の予知指標データを生成する。例えば、予知処理部52は、当該関係モデルにセンサ12により取得された最新の測定データを代入することで、少なくとも1つの予測データを算出し、その予測データとセンサ12により取得された最新の測定データとの差を予知指標データに決定することができる。
【0047】
無線通信部53は、無線通信回路15により順次受信された、サーバ装置30からの複数の指示信号から、指示内容をそれぞれ抽出する。この指示内容は、後述の動作制御部56により利用される。
【0048】
無線通信部53は、共通時間情報を更に受信する。例えば、無線通信回路15がGPS(Global Positioning System)受信機を有しており、このGPS受信機により受信される時刻情報が当該共通時間情報として無線通信部53により受信される。GPSには、精度の高い共通時間情報を得るために、例えば、準天頂衛星システムが用いられる。但し、当該共通時間情報は、サーバ装置30から無線信号により受信されてもよい。受信された共通時間情報は、後述の時間修正部57により利用される。
【0049】
動作制御部56は、省電力制御を行う。各センシング装置10では、センサ12、CPU13、無線通信回路15等のハードウェア要素が動作することにより、電力が消費される。一方で、上述のような処理を実現するためには、各ハードウェア要素をそれぞれ動作させなければならない。そこで、本実施形態は、センシング装置10に複数の動作モードを設け、それらを適宜切り替えることで、省電力を実現する。
【0050】
具体的には、動作制御部56は、無線通信部53により受信された複数の指示信号に基づいて、第1動作モード、第2動作モード、第3動作モードを含む複数の動作モード間を切り替える。ここで、動作モードを切り替えるとは、センシング装置10が有するハードウェア要素及びソフトウェア要素が、切り替え後の動作モードの動作状態となるように、ハードウェア要素及びソフトウェア要素の動作を制御することを意味する。
【0051】
第1動作モードは、複数のセンサ12が停止状態となり、かつ、無線通信回路15が周期的に動作可能状態と停止状態とに切り替わる動作モードである。
【0052】
第2動作モードは、複数のセンサ12が停止状態となり、かつ、無線通信回路15が常時動作可能状態となる動作モードである。
【0053】
第3動作モードは、複数のセンサ12及び無線通信回路15が動作可能状態となる動作モードである。
【0054】
ここで、無線通信回路15が動作可能状態とは、無線通信回路15が無線信号を受信又は送信できる状態を意味し、無線通信回路15が停止状態とは、無線通信回路15が無線信号を受信又は送信できない状態を意味する。また、センサ12が動作可能状態とは、測定データを取得できる状態を意味し、センサ12が停止状態とは、測定データを取得できない状態を意味する。よって、センサ12及び無線通信回路15を停止状態とするために、それらへの電力供給が完全に止められてもよいし、動作可能状態時よりは小さい電力が供給されてもよい。また、切り替えられる複数の動作モードは、第1動作モード、第2動作モード及び第3動作モードの3つの動作モードであってもよいし、更なる動作モードを含む4つ以上の動作モードであってもよい。
【0055】
上記3つの動作モードの中で、最も消費電力が大きい動作モードは、第3動作モードであり、次に消費電力が大きい動作モードは、第2動作モードであり、最も消費電力が低い動作モードは、第1動作モードである。第1動作モードにおいて、無線通信回路15が動作可能状態となる時間を短くし、それが停止状態となる時間を長くすれば、消費電力を一層低減することができる。例えば、10分おきに30秒間、無線通信回路15が動作可能状態とされ、その他の時間には無線通信回路15が停止状態とされる。このような第1動作モードでの、無線通信回路15における停止状態及び動作可能状態の各時間は、対象の災害の特性等に応じて、予め決定される。また、第1動作モード及び第2動作モードでは、複数のセンサ12が停止状態とされているため、検知処理部51、予知処理部52及びモデル生成部55の各処理が実行されない。よって、第1動作モード及び第2動作モードでは、CPU13の消費電力も低減することができる。
【0056】
動作制御部56は、省電力又は関係モデルのいずれかを優先させる制御も可能である。例えば、当該複数の動作モードの中で第1動作モードでの稼働時間が最も長くなるように制御する。これにより、各センシング装置10では、最も消費電力の低い第1動作モードで稼働する時間が最も長くなるため、各センシング装置10の消費電力を低減することができる。但し、センシング装置10が設置されてから所定の期間(起動されてから所定の期間)は、モデル生成部55により生成される関係モデルの精度を高めるために、動作制御部56は、指示信号に関わらず、第3動作モードで強制的に動作するように制御してもよい。この場合、動作制御部56は、関係モデルの精度を判断して、第3動作モードから強制的に第1動作モードに移行することもできる。関係モデルの精度は、例えば、関係モデルにより算出される予測データと測定データとの差分により判断することができる。
【0057】
また、動作制御部56は、センサ12を停止状態としている第1動作モード及び第2動作モードでは、センサ12の死活監視を行うこともできる。このようにすれば、いざセンサ12を動作可能状態としたいときに、センサ12が異常で動作可能状態とならないといった事態を防ぐことができる。
【0058】
一方、第1動作モードは、常時、無線通信回路15が動作可能な状態ではない。即ち、各センシング装置10が、常に、サーバ装置30からの指示信号を受信できる状態にあるわけではない。サーバ装置30は、各センシング装置10に第1動作モードから他の動作モードへ切り替えさせたい場合に、そのための指示信号を、各センシング装置10が受信できるまで繰り返し送信することは可能である。しかし、この手法では、無駄な指示信号を送信することになるため、好ましくない。そこで、サーバ装置30が、第1動作モードで稼働する各センシング装置10において、無線通信回路15が動作可能状態となっている時間帯を把握し、その時間帯に当該指示信号を送信することが望ましい。
このためには、各センシング装置10とサーバ装置30との間で同じ時刻を共有していることが望ましい。
【0059】
よって、時間修正部57は、無線通信部53により受信される共通時間情報に基づいて、内部時計の時間を修正する。特に、第1動作モードで稼働中の場合、時間修正部57は、周期的に動作可能状態となった無線通信回路15(又は無線通信部53)により受信される共通時間情報に基づいて、内部時計の時間を修正する。
【0060】
図6は、第2実施形態におけるサーバ装置30の処理構成例を概念的に示す図である。
図6に示されるように、第2実施形態におけるサーバ装置30は、第1実施形態の構成に加えて、指示部63を更に有する。指示部63は、CPU(図示せず)によりメモリ(図示せず)に格納されるプログラムが実行されることにより実現される。
【0061】
指示部63は、各センシング装置10において複数の動作モードの中で第1動作モードでの稼働時間が最も長くなるように、複数の指示信号を中継装置20を介して複数のセンシング装置10へ向けて順次無線送信させる。複数の指示信号には、第1動作モードから第2動作モードへの切り替えのための指示信号、第2動作モードから第3動作モードへの切り替えのための指示信号、第3動作モードから第1動作モードへ切り替えるための指示信号が含まれる。指示部63は、指示データを中継装置20宛てに送信することで、その指示データに対応する指示信号を中継装置20に無線送信させることができる。
【0062】
特に、指示部63は、複数の指示信号の中の、第1動作モードを他の動作モードに切り替えさせる指示信号を送信する際には、第1動作モードで動作している各センシング装置10の無線通信回路15が周期的に動作可能状態となっているタイミングに合わせて、その指示信号を送信する。その送信タイミングは、サーバ装置30の内部時計の時刻に基づいて決定されてもよいし、別途起動された専用タイマを用いて決定されてもよい。
【0063】
センシング装置10が設置されてから所定の期間は、モデル生成部55により生成される関係モデルの精度を高めるために、指示部63は、各センシング装置10が第3動作モードでそれぞれ動作するように、指示信号の送信制御を行ってもよい。
【0064】
〔動作例(災害対応方法)〕
以下、第2実施形態における災害対応方法について
図7を用いて説明する。
図7は、第2実施形態におけるシステム1の動作例を示すシーケンスチャートである。以下では、各センシング装置10及びサーバ装置30を各工程の実行主体として説明するが、実行主体は、システム1を構成する少なくとも1つの機器であればよい。また、
図7において、第1実施形態と同じ内容の工程については、
図4と同じ符号が付されている。
【0065】
各センシング装置10は、第1動作モードでそれぞれ動作している(S71)。第1動作モードでは、複数のセンサ12が停止状態となり、かつ、無線通信回路15が周期的に動作可能状態と停止状態とに切り替わる。更に、複数のセンサ12が停止状態となり測定データが取得されないため、検知指標データの生成処理、予知指標データの生成処理及び関係モデルの更新処理が実行されず、CPU13の負荷も低い。このとき、各センシング装置10は、各センサ12の死活監視をそれぞれ行うことが望ましい。
【0066】
サーバ装置30は、災害の発生の可能性が平常時よりも少し高い状態となると、各センシング装置10に第2動作モードへ移行させるための指示信号を中継装置20に無線送信させる(S72)。この指示信号の送信タイミングは、各センシング装置10の無線通信回路15が周期的に動作可能状態となっているタイミングに合わされる。
【0067】
各センシング装置10は、無線通信回路15が動作可能状態となっているタイミングで、その指示信号を受信できた場合、第1動作モードから第2動作モードへ移行する(S73)。具体的には、各センシング装置10は、無線通信回路15を常時動作可能状態とする。このとき、各センサ12は停止状態のままとされる。これにより、各センシング装置10は、いつでも指示信号を受信できる状態となる。各センシング装置10は、第2動作モードにおいても、各センサ12の死活監視をそれぞれ行うことが望ましい。
【0068】
サーバ装置30は、災害の発生の可能性が更に高まると、各センシング装置10に第3動作モードへ移行させるための指示信号を中継装置20に無線送信させる(S74)。この指示信号の送信タイミングは任意である。
【0069】
各センシング装置10は、その指示信号を受信すると、第2動作モードから第3動作モードに移行する(S75)。具体的には、各センシング装置10は、各センサ12を動作可能状態とする。これにより、無線通信回路15及び各センサ12が動作可能状態となり、各センシング装置10は、第1実施形態で説明したように、ステップS41からステップS44を実行する。このとき、各センシング装置10は、ステップS41で時系列に取得される複数種の測定データに基づいて、関係モデルを更新することもできる(S78)。但し、関係モデルの更新(S78)の実行タイミングは、災害の発生が検出されていないときであり、かつ、ステップS41が実行されているときであれば、任意である。関係モデルの精度が高いと判断される場合には、関係モデルの更新は実行されなくてもよい。
【0070】
サーバ装置30は、第1実施形態で説明したように、ステップS46を実行する。
【0071】
その後、サーバ装置30は、平常時に戻ったと判断される場合に、第3動作モードから第1動作モードへ移行させるための指示信号を中継装置20に無線送信させる(図示せず)。また、各センシング装置10は、任意のタイミングで、動作可能状態となっている無線通信回路15により受信される共通時間情報により、内部時計の時間を修正する(図示せず)。
【0072】
〔第2実施形態における作用及び効果〕
上述のように、第2実施形態では、各センシング装置10において、第1動作モード、第2動作モード及び第3動作モードを含む複数の動作モードが設けられ、各センシング装置10が消費電力の最も低い第1動作モードで最も長く稼働するように、当該動作モードが切り替えられる。第1動作モードでは、各センサ12が動作停止状態とされ、無線通信回路15が周期的に停止され、かつ、検知指標データの生成処理及び予知指標データの生成処理が実行されないため、わずかな電力消費となる。
【0073】
従って、第2実施形態によれば、各センシング装置10の主電源を一次電池又は二次電池としたとしても、各センシング装置10の長時間動作が可能となり、商用電源との配線をなくすことができる。これにより、第2実施形態によれば、システム1の設置コスト及び運用コストを低減させることができる。
【0074】
上述のような、各センシング装置10に設けられた複数の動作モードは、一般的な機器などで省電力のために設けられている動作モードとは、その技術的意義が異なる。以下、当該複数の動作モード及びそれらの動作モードの切り替え処理の技術的意義について説明する。
【0075】
まず、本発明者らは、発生要因が、限定的な災害の存在に着眼した。例えば、自然災害は、ほとんど、或る特定の自然現象に起因して発生する。また、他の災害についても、特定の自然現象や特定の事象に起因して発生する災害もある。このような災害の発生を検知及び予知するセンシング装置10は、一日毎や数時間毎のような一定の周期で動作させる必要はなく、当該特定の自然現象や事象の発生時に、集中的に動作させればよい。そこで、本発明者らは、災害発生の検知及び予知の指標データの生成を行う第3動作モードが限定的に稼働されるようにし、それ以外の時期には、最低限の処理が可能となる動作モードが稼働されるようにすることで、各センシング装置10の消費電力を低減できるとの着想を得た。更に、本発明者らは、センシング装置10での消費電力を必要最小限に抑えるために、第3動作モード以外の動作モードとして、上述のような第1動作モードを見出した。しかしながら、第1動作モードでは、指示信号を受信できる時間が限られるため、第3動作モードへの移行が遅延し、結果として、災害発生の検知及び予知が遅延してしまう可能性がある。そこで、本発明者らは、第1動作モードと第3動作モードとの間に動作させる動作モードとして、第3動作モードへの迅速な移行を可能とする上述のような第2動作モードを見出した。そして、平常時には、第1動作モードを用いることで、最も消費電力の低い第1動作モードで稼働する時間が最も長くなり、結果として、各センシング装置10の消費電力を低減することができる。一方、災害の発生の可能性が高まるにつれ、動作モードを第1動作モードから第2動作モード、最終的に第3動作モードへ移行することで、災害発生の検知及び予知を確実かつ迅速に実行することができる。
【0076】
また、第2実施形態では、システム1に含まれる複数のセンシング装置10は、少なくとも1つのマルチホップ無線ネットワークを形成する。よって、センシング装置10から送信される検知指標データ及び予知指標データは、他のセンシング装置10を経由して、中継装置20まで送り届けられてもよい。従って、第2実施形態によれば、システム1内の中継装置20の数を少なくすることができる。
【0077】
また、第2実施形態では、各センシング装置10において、複数種の測定データに関する関係モデルが生成され、この関係モデルに応じて、予知指標データが生成される。当該関係モデルは、各センシング装置10の配置位置で得られる測定データに基づく、複数種の測定データ間の関係を表すものであるため、配置位置毎に、精度の高い予知指標データを生成することができる。
[第3実施形態]
各センシング装置10は、他のセンシング装置10又は中継装置20と無線通信可能な距離に散在的に配置される。また、各センシング装置10は、地中や物陰等、視認し難い位置に配置される可能性もある。例えば、センシング装置10の少なくとも一部が地中に埋設される場合がある。この場合、センシング装置10は、アンテナ11やセンサ12の一部のみが地上に表出し、他の部分が地中に存在するように、それぞれ埋設される。センシング装置10の全てが完全に地中に埋設される場合もあり得る。また、センシング装置10の少なくとも一部をボックス内に収納する場合もあり得る。このように、センシング装置10を地中に埋設する、又は、ボックス内に収容すれば、風、雪、雨、雷、熱等の外界からの影響からセンシング装置10を保護し易い。
【0078】
一方で、第2実施形態で説明したように、センシング装置10が一次電池又は二次電池を主電源とする場合、それら電池の交換又は充電が必要となる。しかしながら、そのようなメンテナンス作業を行う際に、センシング装置10の配置範囲が広い場合や視認し難い位置に設置されている場合、作業者がセンシング装置10の位置を把握することは困難である。
【0079】
以下、第3実施形態における災害対応システム1について、第1実施形態及び第2実施形態と異なる内容を中心に説明する。以下の説明では、第1実施形態及び第2実施形態と同じ内容については適宜省略される。
【0080】
図8は、第3実施形態におけるセンシング装置10の処理構成例を概念的に示す図である。
図8に示されるように、第3実施形態におけるセンシング装置10は、第2実施形態の構成に加えて、保持部58を更に有する。保持部58は、CPU(図示せず)によりメモリ(図示せず)に格納されるプログラムが実行されることにより実現される。
【0081】
保持部58は、センシング装置10自身の位置情報を保持する。例えば、無線通信回路15がGPS(Global Positioning System)受信機を有しており、このGPS受信機により受信される位置情報が当該位置情報として保持部58に保持される。なお、GPSには、精度の高い共通時間情報を得るために、例えば、準天頂衛星システムが用いられる。但し、この位置情報は、センシング装置10設置時に手動で設定されてもよい。
【0082】
無線通信部53は、無線通信回路15と協働して、保持部58に保持されるセンシング装置10自身の位置情報を示す無線信号を送信する。
【0083】
図9は、第3実施形態におけるサーバ装置30の処理構成例を概念的に示す図である。
図9に示されるように、第3実施形態におけるサーバ装置30は、第2実施形態の構成に加えて、生成部65を更に有する。生成部65は、CPU(図示せず)によりメモリ(図示せず)に格納されるプログラムが実行されることにより実現される。
【0084】
情報収集部61は、複数のセンシング装置10の各々から送信された、各センシング装置10の位置情報を更に、中継装置20から受信する。
【0085】
生成部65は、情報収集部61により受信された各センシング装置10の位置情報を用いて、各センシング装置10の位置をそれぞれ表す画面データを生成する。生成部65により生成された画面データに基づいて、表示装置35に各センシング装置10の位置をそれぞれ表す画面が表示される。この画面データは、印刷装置(図示せず)により各センシング装置10の位置をそれぞれ表す画像として印刷されることも可能である。また、その画面データは、サーバ装置30にアクセス可能なクライアント端末に提供されてもよい。
この場合、メンテナンス作業者が、携帯端末でサーバ装置30にアクセスすることで、携帯端末にその画面を表示させる。これによれば、メンテナンス作業者は、その携帯端末自身の位置と各センシング装置10の位置とを見比べながら、各センシング装置10の位置を容易に把握することができる。
【0086】
〔動作例(災害対応方法)〕
第3実施形態における災害対応方法は、上述のように、各センシング装置10が位置情報を無線送信する工程と、サーバ装置30が各センシング装置10の位置情報を受信し、各センシング装置10の位置をそれぞれ示す画面データを生成する工程を更に含む。これらの工程は、上述の第1実施形態及び第2実施形態の各工程とは非同期に、任意のタイミングで実行されうる。
【0087】
〔第3実施形態における作用及び効果〕
上述のように、第3実施形態では、各センシング装置10が各自の位置情報を保持しており、各センシング装置10の位置情報が無線送信される。サーバ装置30では、受信された位置情報に基づいて、各センシング装置10の位置をそれぞれ表す画面データが生成される。従って、第3実施形態によれば、各センシング装置10の設置範囲が広く、視認し難い位置に設置されていたとしても、メンテナンス作業者が、その画面データに基づく出力を参照することで、各センシング装置10の位置を容易に把握することができる。
[補足]
中継装置20は、サーバ装置30から送られる情報を各センシング装置10に中継し、各センシング装置10から送られる情報をサーバ装置30に中継する。これら中継処理の具体的内容は制限されない。例えば、中継装置20は、各センシング装置10からの無線信号を受信すると、得られる信号を復調することで、各センシング装置10から送られてきた個別情報(検知指標データ及び予知指標データ、位置情報など)をその送信元のセンシング装置10の識別情報とともに抽出する。中継装置20は、抽出された個別情報及び識別情報をサーバ装置30に送信する。このとき、中継装置20は、個別情報及び識別情報を関連づけた状態で保持しておき、サーバ装置30から要求に応じて、保持されている個別情報及び識別情報をサーバ装置30に送信する。また、中継装置20は、保持することなく、抽出された個別情報及び識別情報を自発的にサーバ装置30に送信することもできる。逆に、サーバ装置30から送られてきた情報(動作モードの指示など)を受信すると、中継装置20は、その情報に対応する無線信号を各センシング装置10が受信できるように送出する。例えば、全てのセンシング装置10が中継装置20と無線通信可能な場合、中継装置20は、マルチキャスト無線信号を送出することができる。また、中継装置20に繋がるマルチホップ無線ネットワークが形成されている場合には、中継装置20は、対象のセンシング装置10を宛先とする無線信号を送出し、その対象のセンシング装置10がその無線信号を下位ノードに中継する。中継装置20の中継処理は、このような処理のみに限定されない。
【0088】
また、サーバ装置30は、情報収集部61により各センシング装置10から収集された検知指標データ及び予知指標データを用いて、災害発生の予知及び検知の最終判断を行うようにしてもよい。
[変形例]
検知処理部51は、少なくとも1種の測定データに対する処理により得られるデータに基づいて、災害発生を検知するようにしてもよい。例えば、検知処理部51は、災害発生検知のための所定閾値を保持し、その所定閾値と当該データとを比較することで、災害発生を検知することができる。この場合、検知処理部51は、その検知結果を示す検知指標データを生成することができる。また、検知処理部51は、検知結果とその検知の根拠となったデータとを検知指標データとして生成してもよい。
【0089】
また、予知処理部52は、複数種の測定データに対する処理により得られるデータに基づいて、災害発生の危険度を決定するようにしてもよい。例えば、予知処理部52は、災害発生の予兆を図るための所定閾値を保持し、この所定閾値と当該データとを比較することで、災害発生の危険度を決定することができる。危険度は、危険か否かの2値で示されてもよいし、危険の程度を表す3値以上の値で示されてもよい。この場合、予知処理部52は、その危険度を示す予知指標データを生成することができる。また、予知処理部52は、危険度とその危険度の決定根拠となったデータとを予知指標データとして生成してもよい。
【0090】
検知処理部51が災害発生の検知をする場合、検知処理部51は、自センシング装置10のセンサ12により取得された測定データのみではなく、他のセンシング装置10から送られる測定データ又は検知指標データを用いて、災害発生を検知することもできる。
この場合、全センシング装置10には、災害発生の検知を行う装置とそうでない装置とが含まれてもよい。また、予知処理部52が災害発生の危険度を決定する場合、予知処理部52は、自センシング装置10のセンサ12により取得された測定データだけではない。予知処理部52は、他のセンシング装置10から送られる測定データ又は予知指標データを用いて、災害発生の危険度を決定することもできる。この場合、全センシング装置10には、災害発生の危険度を決定する装置とそうでない装置とが含まれてもよい。
【0091】
以下、上述の各実施形態を更に詳細に説明する。
【0092】
サーバ装置30の指示部63は、センシング装置10の動作モードを移行させるための複数の指示信号の送信を次のように実行することができる。
【0093】
図10は、サーバ装置30の処理構成例を概念的に示す図である。
図10に示されるように、サーバ装置30は、情報取得部67を更に有する。
情報取得部67もCPU(図示せず)によりメモリ(図示せず)に格納されるプログラムが実行されることにより実現される。
【0094】
情報取得部67は、公共機関から発信される気象警報発表情報及び災害警戒発表情報の中の所定の2種の発表情報、及び、公共機関から発信される気象警報解除情報及び災害警戒解除情報の中の所定の2種の解除情報を取得する。例えば、気象警報発表情報には、気象台や地方公共団体から発表される警報、注意報及び特別警報が例示される。警報には、大雨警報、洪水警報、大雪警報、暴風警報等があり、注意報には、大雨注意報、強風注意報、波浪注意報等がある。また、災害警戒発表情報には、土砂災害警戒情報がある。気象警報解除情報及び災害警戒解除情報には、上述の発表情報に対する解除情報がある。
【0095】
指示部63は、上述の各発表情報及び上述の各解除情報の取得に伴い、発表情報に対応する第1指示信号及び第2指示信号、並びに、解除情報に対応する第3指示信号を中継装置20に各センシング装置10へ向けて順次無線送信させる。第2指示信号の送信は、第1指示信号よりも危険度の高い発表情報の取得に伴い実施されることが望ましい。第3指示信号の送信は、第1指示信号及び第2指示信号の送信決定に利用されたすべての発表情報に対する解除情報の取得に伴い実施されることが望ましい。
【0096】
これにより、センシング装置10の動作制御部56は、第1指示信号の受信に伴い、第1動作モードから第2動作モードへ切り替え、第2指示信号の受信に伴い、第2動作モードから第3動作モードへ切り替え、第3指示信号の受信に伴い、第3動作モードから第1動作モードへ切り替える。
【0097】
このように、信頼できる公共機関から発信される気象情報及び災害情報を、センシング装置10が動作モードに移行するための指示信号を送信する決定条件に用いる。これにより、必要なときに確実に、検知指標データ及び予知指標データの生成を行うことができ、ひいては、災害発生の検知及び予知を行うことができる。
【0098】
また、上述のシステム1で対象とされる災害の具体例として、土砂災害が挙げられる。
この具体例では、センシング装置10の複数のセンサ12は、雨量及び土中水分量の少なくとも一方と、振動データとを上記複数種の測定データとして取得する。検知処理部51は、複数のセンサ12の1つにより取得された振動データを周波数解析し、この周波数解析により得られた所定周波数帯の成分データ(パワー)に基づいて、検知指標データを生成する。予知処理部52は、振動データを周波数解析し、この周波数解析により得られる周波数成分データと、雨量及び土中水分量の少なくとも一方とに基づいて、予知指標データを生成する。
【0099】
土砂災害が発生すると、振動データの特定周波数帯に所定レベルを超えるパワーが表れることが知られている。従って、検知処理部51は、得られた振動データを周波数変換し、得られる特定周波数帯の成分データを順次保持する。この順次保持される特定周波数帯の成分データが検知指標データとされてもよい。また、検知処理部51は、最大パワーを示す成分データのみを検知指標データとして保持することもできる。更に、検知処理部51は、算出された特定周波数帯のパワーが所定レベルを超えるか否かにより、土砂災害が発生したことを検知することができる。この場合には、検知処理部51は、この検知結果を検知指標データとすることもできる。
【0100】
また、土壌の固有振動数は、土壌水分量及び雨量と相関があることが知られている。よって、予知処理部52は、振動データから得られる土壌の固有振動数と土壌水分量との相関及び土壌の固有振動数と雨量との相関のくずれ度合を示すデータを予知指標データとして算出することができる。また、予知処理部52は、そのくずれ度合における所定閾値の超越度を算出し、この超越度を災害発生の危険度とすることもできる。この場合、予知処理部52は、この危険度を予知指標データとすることができる。
【0101】
この具体例では、例えば、気象台及び地方公共団体により発信される、大雨警報の発表、土砂災害警戒情報の発表、大雨警報の解除、あるいは、土砂災害警戒情報の解除を契機に、各センシング装置10の動作モードが切り替えられる。
【0102】
図11は、動作モードの移行の具体例を概念的に示す図である。
図11の例では、大雨警報も土砂災害警戒情報も発表されていない場合は、センシング装置10は第1動作モードで動作する。大雨警報が発表されると、センシング装置10は、第1動作モードから第2動作モードへ移行する。続けて、土砂災害警戒情報が発表されると、センシング装置10は、第2動作モードから第3動作モードへ移行する。土砂災害警戒情報及び大雨警報が概ね同時に解除されると、センシング装置10は、第3動作モードから第1動作モードへ移行する。また、大雨警報の発表後、土砂災害警戒情報の発表なく、大雨警報が解除されると、センシング装置10は、第2動作モードから第1動作モードに移行される。同様に、大雨警報及び土砂災害警戒情報が発表後、土砂災害警戒情報のみが解除されると、センシング装置10は、第3動作モードから第2動作モードへ移行する。
【0103】
なお、上述の説明で用いた複数のシーケンスチャートでは、複数の工程(処理)が順番に記載されているが、各実施形態で実行される工程の実行順序は、その記載の順番に制限されない。各実施形態では、図示される工程の順番を内容的に支障のない範囲で変更することができる。また、上述の各実施形態は、内容が相反しない範囲で、あらゆる形態で組み合わせることができる。
【0104】
上記の各実施形態及び各変形例の一部又は全部は、以下のようにも特定され得る。但し、各実施形態及び各変形例が以下の記載に限定されるものではない。
(付記1)
サーバ装置と、
前記サーバ装置と通信可能な中継装置と、
他の災害センシング装置及び前記中継装置の少なくとも一方と無線通信可能な範囲で所定の位置に各々配置される複数の災害センシング装置と、
を備え、
前記各災害センシング装置は、
配置位置における複数種の測定データの各々を時系列に取得する複数のセンサと、
前記複数のセンサの中の少なくとも1つにより取得された少なくとも1種の測定データを処理して、災害発生検知の指標となる検知指標データを生成する検知処理部と、
前記複数のセンサにより時系列に取得された前記複数種の測定データを処理して、災害発生予知の指標となる予知指標データを生成する予知処理部と、
前記検知処理部により生成された前記検知指標データ及び前記予知処理部により生成された前記予知指標データの少なくとも一方を示す無線信号を送出する無線通信回路と、 を有し、
前記サーバ装置は、
前記各災害センシング装置から送信された、配置位置毎の検知指標データ及び配置位置毎の予知指標データを、前記中継装置から受信する情報収集部、
を有する、
災害対応システム。
(付記2)
前記各災害センシング装置は、
前記無線通信回路により順次受信される複数の指示信号に基づいて、前記複数のセンサが停止状態となり、かつ、前記無線通信回路が周期的に動作可能状態と停止状態とに切り替わる第1動作モード、前記複数のセンサが停止状態となり、かつ、前記無線通信回路が動作可能状態となる第2動作モード、及び、前記複数のセンサ及び前記無線通信回路が動作可能状態となる第3動作モードを含む複数の動作モード間を切り替える動作制御部、 を更に有し、
前記サーバ装置は、
前記各災害センシング装置において前記複数の動作モードの中で前記第1動作モードでの稼働時間が最も長くなるように、前記複数の指示信号を前記中継装置を介して前記複数の災害センシング装置へ向けて順次無線送信させる指示部、
を更に有する、
付記1に記載の災害対応システム。
(付記3)
前記サーバ装置は、
公共機関から発信される気象警報発表情報及び災害警戒発表情報の中の所定の2種の発表情報、及び、公共機関から発信される気象警報解除情報及び災害警戒解除情報の中の所定の2種の解除情報を取得する情報取得部、
を更に有し、
前記サーバ装置の前記指示部は、前記各発表情報及び前記各解除情報の取得に伴い、前記発表情報に対応する第1指示信号及び第2指示信号、並びに、前記解除情報に対応する第3指示信号を前記中継装置を介して前記複数の災害センシング装置へ向けて順次無線送信させ、
前記各災害センシング装置の前記動作制御部は、前記第1指示信号の受信に伴い、前記第1動作モードから前記第2動作モードへ切り替え、前記第2指示信号の受信に伴い、前記第2動作モードから前記第3動作モードへ切り替え、前記第3指示信号の受信に伴い、前記第3動作モードから前記第1動作モードへ切り替える、
付記2に記載の災害対応システム。
(付記4)
前記各災害センシング装置は、
前記第1動作モードで動作時に周期的に動作可能状態となった前記無線通信回路により受信される共通時間情報に基づいて、内部時計の時間を修正する時間修正部、
を更に有し、
前記サーバ装置の前記指示部又は前記中継装置は、前記複数の指示信号の中の、前記第1動作モードを他の動作モードに切り替えさせる指示信号の送信タイミングを、前記第1動作モードで動作している前記各災害センシング装置が周期的に動作可能状態となっているタイミングに合わせる、
付記2又は付記3に記載の災害対応システム。
(付記5)
前記複数の災害センシング装置の中の少なくとも1つの災害センシング装置の前記無線通信回路は、他の災害センシング装置から無線送信された検知指標データ及び予知指標データを、前記中継装置又は更なる他の災害センシング装置に無線により中継する、
付記1から付記4のいずれか1つに記載の災害対応システム。
(付記6)
前記各災害センシング装置は、
災害センシング装置自身の位置情報を保持する保持部、
を有し、
前記サーバ装置の前記情報収集部は、前記複数の災害センシング装置の各々から送信された、各災害センシング装置の位置情報を更に、前記中継装置から受信し、
前記サーバ装置は、
前記情報収集部により受信された位置情報を用いて、前記複数の災害センシング装置の各々の位置を表す画面データを生成する生成部、
を更に有する、
付記1から付記5のいずれか1つに記載の災害対応システム。
(付記7)
前記各災害センシング装置は、
前記複数のセンサにより時系列に取得された前記複数種の測定データに基づき、前記複数種の測定データに関する関係モデルを生成するモデル生成部、
を更に有し、
前記各災害センシング装置の前記予知処理部は、前記関係モデルを用いて、前記複数のセンサにより取得された前記複数種の測定データを処理することで、前記予知指標データを生成する、
付記1から付記6のいずれか1つに記載の災害対応システム。
(付記8)
前記各災害センシング装置の前記複数のセンサは、雨量データ及び土中水分量データの少なくとも一方と、振動データとを前記複数種の測定データとして取得し、
前記各災害センシング装置の前記検知処理部は、前記複数のセンサの1つにより取得された振動データを周波数解析し、該周波数解析により得られる所定周波数帯の成分データに基づいて、前記検知指標データを生成し、
前記各災害センシング装置の前記予知処理部は、前記複数のセンサの1つにより取得された振動データを周波数解析し、該周波数解析により得られる周波数成分データと、他のセンサにより取得された土中水分量データ及び雨量データの少なくとも1つと、に基づいて、前記予知指標データを生成する、
付記1から付記7のいずれか1つに記載の災害対応システム。
(付記9)
前記検知処理部は、前記少なくとも1種の測定データに対する処理により得られるデータに基づいて、災害発生を検知し、該検知結果を示す前記検知指標データを生成する、
付記1から付記8のいずれか1つに記載の災害対応システム。
(付記10)
前記予知処理部は、前記複数種の測定データに対する処理により得られるデータに基づいて、災害発生の危険度を決定し、該危険度を示す前記予知指標データを生成する、
付記1から付記9のいずれか1つに記載の災害対応システム。
(付記11)
配置位置における複数種の測定データの各々を時系列に取得する複数のセンサと、
前記複数のセンサの中の少なくとも1つより取得された少なくとも1種の測定データを処理して、災害発生検知の指標となる検知指標データを生成する検知処理部と、
前記複数のセンサにより時系列に取得された前記複数種の測定データを処理して、災害発生予知の指標となる予知指標データを生成する予知処理部と、
前記検知処理部により生成された前記検知指標データ及び前記予知処理部により生成された前記予知指標データの少なくとも一方を示す無線信号を送出する無線通信回路と、
を有する、災害センシング装置。
(付記12)
サーバ装置と、
前記サーバ装置と通信可能な中継装置と、
他の災害センシング装置及び前記中継装置の少なくとも一方と無線通信可能な範囲で所定の位置に各々配置される複数の災害センシング装置と、
を有する災害対応システムで実行される災害対応方法において、
前記各災害センシング装置が、
配置位置における複数種の測定データの各々を時系列に取得し、
取得された前記複数種の測定データの中の少なくとも1種の測定データを処理して、災害発生検知の指標となる検知指標データを生成し、
時系列に取得された前記複数種の測定データを処理して、災害発生予知の指標となる予知指標データを生成し、
前記検知指標データ及び前記予知指標データの少なくとも一方を示す無線信号を送出し、
前記サーバ装置が、
前記各災害センシング装置から送信された、配置位置毎の検知指標データ及び配置位置毎の予知指標データを前記中継装置から受信する、
ことを含む災害対応方法。
(付記13)
前記各災害センシング装置は、複数のセンサと、無線通信回路とをそれぞれ有し、
前記災害対応方法は、
前記各災害センシング装置の動作モードを、前記複数のセンサが停止状態となり、かつ、前記無線通信回路が周期的に動作可能状態と停止状態とに切り替わる第1動作モード、前記複数のセンサが停止状態となり、かつ、前記無線通信回路が動作可能状態となる第2動作モード、及び、前記複数のセンサ及び前記無線通信回路が動作可能状態となる第3動作モードを含む複数の動作モード間で切り替える、
ことを更に含み、
前記動作モードの前記切り替えは、前記各災害センシング装置において前記複数の動作モードの中で前記第1動作モードでの稼働時間が最も長くなるように、実行される、
付記12に記載の災害対応方法。
(付記14)
前記サーバ装置が、公共機関から発信される気象警報発表情報及び災害警戒発表情報の中の所定の2種の発表情報、及び、公共機関から発信される気象警報解除情報及び災害警戒解除情報の中の所定の2種の解除情報を取得し、
前記中継装置が、前記各発表情報及び前記各解除情報の取得に伴い、前記発表情報に対応する第1指示信号及び第2指示信号、並びに、前記解除情報に対応する第3指示信号を順次無線送信する、
ことを更に含み、
前記動作モードの前記切り替えは、前記第1指示信号の受信に伴い、前記第1動作モードから前記第2動作モードへ切り替え、前記第2指示信号の受信に伴い、前記第2動作モードから前記第3動作モードへ切り替え、前記第3指示信号の受信に伴い、前記第3動作モードから前記第1動作モードへ切り替える、
付記13に記載の災害対応方法。
(付記15)
前記各災害センシング装置が、前記第1動作モードで動作時に周期的に動作可能状態となった前記無線通信回路により受信される共通時間情報に基づいて、内部時計の時間をそれぞれ修正し、
前記中継装置が、前記第1動作モードで動作している前記各災害センシング装置が周期的に動作可能状態となっているタイミングに応じて、前記第1動作モードを他の動作モードに切り替えさせるための指示信号を無線送信する、
ことを更に含む付記13又は付記14に記載の災害対応方法。
(付記16)
前記複数の災害センシング装置の中の少なくとも1つの災害センシング装置が、他の災害センシング装置から無線送信された検知指標データ及び予知指標データを、前記中継装置又は更なる他の災害センシング装置に無線により中継する、
ことを更に含む付記12から付記15のいずれか1つに記載の災害対応方法。
(付記17)
前記災害対応方法は、
前記各災害センシング装置が自身の位置情報をそれぞれ無線送信し、
前記サーバ装置が、前記各災害センシング装置の位置情報を受信し、
前記サーバ装置が、前記受信された位置情報を用いて、前記複数の災害センシング装置の各々の位置を表す画面データを生成する、
ことを更に含む付記12から付記16のいずれか1つに記載の災害対応方法。
(付記18)
前記各災害センシング装置が、時系列に取得された前記複数種の測定データに基づき、前記複数種の測定データに関する関係モデルを生成する、
ことを更に含み、
前記予知指標データの前記生成は、取得された前記複数種の測定データを前記関係モデルを用いて処理することで、前記予知指標データを生成する、
付記12から付記17のいずれか1つに記載の災害対応方法。
(付記19)
前記複数種の測定データは、雨量データ及び土中水分量データの少なくとも一方、及び、振動データであり、
前記検知指標データの前記生成は、前記振動データを周波数解析し、該周波数解析により得られる所定周波数帯の成分データに基づいて、前記検知指標データを生成し、
前記予知指標データの前記生成は、前記振動データを周波数解析し、該周波数解析により得られる周波数成分データと、前記土中水分量データ及び前記雨量データの少なくとも1つと、に基づいて、前記予知指標データを生成する、
付記12から付記18のいずれか1つに記載の災害対応方法。
(付記20)
前記検知指標データの前記生成は、前記少なくとも1種の測定データに対する処理により得られるデータに基づいて、災害発生を検知し、該検知結果を示す前記検知指標データを生成する、
付記12から付記19のいずれか1つに記載の災害対応方法。
(付記21)
前記予知指標データの前記生成は、前記複数種の測定データに対する処理により得られるデータに基づいて、災害発生の危険度を決定し、該危険度を示す前記予知指標データを生成する、
付記12から付記20のいずれか1つに記載の災害対応方法。
(付記22)
配置位置における複数種の測定データの各々を時系列に取得し、
取得された前記複数種の測定データの中の少なくとも1種の測定データを処理して、災害発生検知の指標となる検知指標データを生成し、
時系列に取得された前記複数種の測定データを処理して、災害発生予知の指標となる予知指標データを生成し、
前記検知指標データ及び前記予知指標データの少なくとも一方を示す無線信号を送出する、災害センシング装置の処理方法。
【0105】
以上、実施形態(及び実施例)を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態(及び実施例)に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0106】
この出願は、2014年3月5日に出願された日本出願特願2014−043115を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。