(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記歪み補正手段は、前記画像信号の横縦比を維持した状態で、前記被投影体上に投影される前記画像信号の外郭が矩形になるように歪み補正することを特徴とする請求項12に記載の投影装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
第1実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態に係る投影装置は、出力表示素子としてマイクロミラー表示素子を用いたDigital Light Processing(DLP)(登録商標)方式を用いている。本実施形態に係る投影装置としてのプロジェクタ1は、
図1(A)に示すように、机やテーブル等の水平台2上に設置される。このプロジェクタ1は、同じく水平台2上に設置された或いは別の位置に設置された画像出力装置としてのパーソナルコンピュータ(PC)3に接続される。そして、このPC3から出力された画像信号を受けて、該画像信号をスクリーン4に投影表示する。
【0017】
このプロジェクタ1の構成の概略を
図1(B)に示す。プロジェクタ1は、入出力コネクタ部11と、入出力インターフェース(I/F)12と、画像変換部13と、投影処理部14と、マイクロミラー素子15と、光源部16と、ミラー17と、投影レンズ18と、CPU19と、メインメモリ20と、プログラムメモリ21と、操作部22と、姿勢センサ23と、音声処理部24と、スピーカ25と、レンズ調整部26と、位置調整部27と、電動脚部28と、システムバスSBと、を有する。
【0018】
入出力コネクタ部11には、例えばピンジャック(RCA)タイプのビデオ入力端子や、D−sub15タイプのRGB入力端子といった端子が設けられており、アナログ画像信号が入力される。入力された画像信号は、入出力I/F12及びシステムバスSBを介して画像変換部13に入力される。入力された各種規格のアナログ画像信号は、デジタル画像信号に変換される。なお、入出力コネクタ部11には、例えばHDMI(登録商標)端子等も設けられ、アナログ画像信号のみならずデジタル画像信号も入力され得るようにしてもよい。さらに、Extended Display Identification Data(EDID)として規格化されているデータ形式で、様々な情報を出力することも可能となっている。また、入出力コネクタ部11には、アナログ又はデジタル信号による音声信号が入力される。入力された音声信号は、入出力I/F12及びシステムバスSBを介して音声処理部24に入力される。また、入出力コネクタ部11には、例えばRS232C端子やUSB端子も設けられており、それらを介してもPC3とのデータのやり取りが行えるようになっている。
【0019】
画像変換部13は、スケーラとも称される。画像変換部13は、入力された画像信号について、解像度数、階調数等を調整する変換やピラーボックス化/レターボックス化等の処理を行って、投影に適した所定のフォーマットの画像データを生成する。画像変換部13は、変換した画像データを投影処理部14へ送信する。必要に応じて画像変換部13は、On Screen Display(OSD)用の各種動作状態を示すシンボルを重畳した画像データを、加工画像データとして投影処理部14に送信する。また、画像変換部13は、必要に応じて投影画像の幾何学変換を行い、投影状態に応じてスクリーン等の被投影体に適切な形状で画像が投影されるようにする歪み補正処理を実施する。
【0020】
光源部16は、赤(R)、緑(G)、青(B)の原色光を含む複数色の光を射出する。ここで、光源部16は、複数色の色を時分割で順次射出するように構成されている。光源部16から射出された光は、ミラー17で全反射し、マイクロミラー素子15に入射する。
【0021】
マイクロミラー素子15は、アレイ状に配列された複数の微小ミラーを有する。各微小ミラーは、高速でオン/オフ動作して、光源部16から照射された光を投影レンズ18の方向に反射させたり、投影レンズ18の方向からそらしたりする。マイクロミラー素子15には、微小ミラーが例えばHD+やWXGA++と称される横1600画素×縦900画素分だけ並べられている。すなわち、本実施形態のプロジェクタ1は、出力横縦比1.778(16:9)のプロジェクタである。各微小ミラーにおける反射によって、マイクロミラー素子15は、例えばHD+解像度の画像を形成する。このように、マイクロミラー素子15は空間的光変調素子として機能する。
【0022】
投影処理部14は、画像変換部13から送信された画像データに応じて、その画像データが表す画像を表示させるため、マイクロミラー素子15を駆動する。すなわち、投影処理部14は、マイクロミラー素子15の各微小ミラーをオン/オフ動作させる。ここで投影処理部14は、マイクロミラー素子15を高速に時分割駆動する。単位時間の分割数は、所定のフォーマットに従ったフレームレート、例えば60[フレーム/秒]と、色成分の分割数と、表示階調数とを乗算して得られる数である。また、投影処理部14は、マイクロミラー素子15の動作と同期させて光源部16の動作も制御する。すなわち、投影処理部14は、各フレームを時分割して、フレーム毎に全色成分の光を順次射出するように光源部16の動作を制御する。
【0023】
投影レンズ18は、マイクロミラー素子15から導かれた光を、例えばスクリーン4等の被投影体に投影する光に調整する。したがって、マイクロミラー素子15による反射光で形成された光像は、投影レンズ18を介して、スクリーン4等の被投影体に投影され表示される。投影レンズ18は、ズーム機構を有しており、投影される画像の大きさを変更する機能を有する。また、投影レンズ18は、投影画像の合焦状態を調整するためのピント(フォーカス)調整機構を有する。このように、投影処理部14、マイクロミラー素子15、光源部16及び投影レンズ18等は、画像を投影する投影部として機能する。
【0024】
音声処理部24は、PCM音源等の音源回路を備える。入出力コネクタ部11から入力されたアナログ音声信号に基づいて、又は投影動作時に与えられたデジタル音声データをアナログ化した信号に基づいて、音声処理部24は、スピーカ25を駆動して拡声放音させる。また、音声処理部24は、必要に応じてビープ音等を発生させる。スピーカ25は、音声処理部24から入力された信号に基づいて音声を射出する一般的なスピーカである。
【0025】
CPU19は、画像変換部13、投影処理部14、音声処理部24、レンズ調整部26、及び位置調整部27の動作を制御する。このCPU19は、メインメモリ20及びプログラムメモリ21と接続されている。メインメモリ20は、例えばSRAMで構成される。メインメモリ20は、CPU19のワークメモリとして機能する。プログラムメモリ21は、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリで構成される。プログラムメモリ21は、CPU19が実行する動作プログラムや各種定型データ等を記憶する。また、CPU19は、操作部22と接続されている。操作部22は、プロジェクタ1の本体に設けられるキー操作部と、プロジェクタ1専用の図示しないリモートコントローラからの赤外光を受光する赤外線受光部と、を含む。操作部22は、ユーザが本体のキー操作部又はリモートコントローラで操作したキーに基づくキー操作信号をCPU19に出力する。CPU19は、メインメモリ20及びプログラムメモリ21に記憶されたプログラムやデータを用いて、操作部22からのユーザの指示に応じてプロジェクタ1の各部の動作を制御する。
【0026】
姿勢センサ23は、例えば3軸の加速度センサ、方位を検出する方位センサを有する。加速度センサは、重力方向に対するプロジェクタ1の姿勢角すなわち、ピッチ角を検出する。ヨー角については、方位センサで検出される基準方位に対する相対方位として、検出される。姿勢センサ23は、検出結果をCPU19に出力する。
【0027】
レンズ調整部26は、操作部22のユーザ操作によるズーム変更指示に応じて、CPU19の制御の下、投影レンズ18のズーム機構を駆動させる。レンズ調整部26によって、ズーム機構が駆動される結果、投影画像の大きさが変化する。また、レンズ調整部26は、CPU19の指示の下、投影レンズ18の合焦レンズを駆動させる。
【0028】
電動脚部28は、姿勢調整機構として、プロジェクタ1の姿勢を変更する。すなわち、電動脚部28は、投影レンズ18側(前方)のプロジェクタ1の下面に配された、伸縮自在な複数本の脚28A(
図1(A)参照)を含み、これら脚28Aの各々の長さを独立して変更させることで、プロジェクタ1の水平度を調整することができる。また、電動脚部28は、複数本の脚28Aの各々の長さを同じように変更させることで、プロジェクタ1のスクリーン4に対する仰角を調整することができる。位置調整部27は、CPU19の指示の下、電動脚部28を駆動させる。
【0029】
以下、本実施形態に係るプロジェクタ1の動作を説明する。
まず、プロジェクタ1の投影動作を説明する。この投影動作は、CPU19の制御の下、投影処理部14が実行するものである。光源部16の動作は、投影処理部14により制御される。投影処理部14は、光源部16内の各色を発する半導体レーザやLEDのオン又はオフや、それら光源と蛍光体との組み合わせなどを変化させることで、例えば赤色光(R)、緑色光(G)、青色光(B)の3色の光を、光源部16から順次射出させる。投影処理部14は、光源部16からマイクロミラー素子15に順次、赤色光、緑色光、及び青色光を入射させる。
【0030】
マイクロミラー素子15は、各色の光について微小ミラー毎(画素毎)に、画像データに基づく階調が高い程入射した光を投影レンズ18に導く時間を長くし、階調が低い程入射した光を投影レンズ18に導く時間を短くする。すなわち、投影処理部14は、階調が高い画素に対応する微小ミラーが長時間オン状態となるように、階調が低い画素に対応する微小ミラーが長時間オフ状態となるように、マイクロミラー素子15を制御する。このようにすることで、投影レンズ18から射出される光について、微小ミラー毎(画素毎)に各色の階調を表現できる。
【0031】
フレーム毎に、微小ミラーがオンになっている時間で表現された階調を各色について組み合わせることでカラー画像が表現される。以上のようにして、投影レンズ18からは、画像が表現された投影光が射出される。この投影光が、例えばスクリーン4に投影されることで、スクリーン4等にはカラー画像が表示される。
【0032】
なお、前記説明では、赤色光、緑色光、青色光の3色を用いるプロジェクタの例を示したが、マゼンタやイエロー等の補色や、白色光等を組み合わせて画像を形成するように、これら色の光を射出できるようにプロジェクタが構成されてもよい。
【0033】
なお、画像変換部13は、通常、当該プロジェクタ1と例えばスクリーン4といった被投影体とが正対せず、その結果として台形に歪んでしまう投影画像が、歪みのない長方形状で投影されるように、当該プロジェクタ1とスクリーン4との相対角度に応じて入力画像情報を射影変換する歪み補正処理を行うようになっている。
【0034】
本実施形態のプロジェクタ1は、この歪み補正処理を積極的に利用することで、例えば、画素利用率を向上させる動作を行うものである。すなわち、入力画像信号の横縦比とプロジェクタ1の出力表示素子と横縦比とが異なるとき、画素利用率Eの向上のために、プロジェクタ1とスクリーン4の相対角度を故意につけ、同時に歪み補正するものである。以下、本実施形態のこの特徴的な動作について、詳細に説明する。
【0035】
図2は、出力横縦比1.778(16:9)である本実施形態のプロジェクタ1に、横縦比1.333(4:3)の画像信号が入力された場合の歪み補正の補正前歪み四角形と補正後矩形との関係を、投影面で見た場合を示しており、
図3は、同様の関係を出力表示素子面で見た場合を示している。
【0036】
歪み補正は、水平方向の補正角度hと垂直方向の補正角度vで決定される。これら二つの補正角度はそれぞれ、プロジェクタ1と被投影体(スクリーン4)の投影面との二つの相対角度に相当する。
図2及び
図3は、補正角度h及びvがそれぞれ−30度〜+30度の場合を15度刻みで表しており、それぞれの中央部分は、h=v=0、つまり歪み補正無しの場合を表わしている。これに対して、中央部分以外は、歪み補正有りの場合を表している。
【0037】
ここで、
図2において、白四角形は、補正後矩形であり、画像有効部分である。斜線部分は、歪み補正により切り取られた画像無効部分を表している。ただし、図中央部分の歪み補正無しの場合の斜線部分は、ピラーボックスにより切り取られた部分と同じになる。小黒点kは、プロジェクタ光学系の光軸が投影面を貫く位置(光軸点)であり、図では、縦破線と横破線の交点が光軸点となるように示している。
【0038】
また、
図3の斜線部分と白四角形は、
図2の斜線部分と白四角形にそれぞれ対応する。白四角内のパーセント表示は、出力表示素子の画素利用率Eを表している。h=v=0である中央の四角形は、歪み補正無しの場合を表しており、このとき画素利用率Eは75%である。
【0039】
なお、歪み補正方法は複数存在するが、
図2及び
図3は、画像信号の横縦比を維持したまま画素利用率が向上するような切り抜き方法を採用している場合の例である。
【0040】
また、プロジェクタの仕様としては、出力表示素子の横縦比1.778(16:9)、スローレシオ約0.46、出力表示素子の光軸位置は下辺中央から出力表示素子高さの約20%上方(上シフト)である。ただし、スローレシオ=投影像横幅÷投影距離であり、スローレシオの条件は歪み補正無し時である。
【0041】
図3において、歪み補正無しの場合の画素利用率Eが75%であるのに対して、h=0且つv≠0の場合の画素利用率Eがいずれも75%以上になっているのが判別できる。そこで、プロジェクタの設置でよく採られる形態であるh=0且つv≧0の場合(
図2及び
図3中の一点鎖線楕円で囲った部分)について、
図4及び
図5により詳細に示す。なお、v<0の場合の画素利用率Eも75%以上となっているが、ここでは省略する。
【0042】
図4及び
図5中の一点破線楕円で囲った部分がそれぞれ
図2及び
図3中の一点鎖線楕円で囲った部分に対応する。ただし、
図4及び
図5ではvを0度〜35度を5度刻みで表してある。また、
図4及び
図5では、ズーム機能を使用した場合も併記してある。一点鎖線楕円で囲った部分はズーム値z=1の場合であり、その右側にズーム値z=1.5の場合とズーム値z=2の場合が示してある。ズーム値zとは、ズーム倍率のことであり、ズーム値z=2では、投影の幅及び高さが、ズーム値z=1の場合のそれぞれ2倍になることを表している。ただし、これは、投影距離を変化させない場合である。なお、
図2及び
図3は、ズーム値z=1の場合を表している。
【0043】
図5において、画素利用率Eは、垂直方向の補正角度v=0のとき75%であり、そこから補正角度vを増加させると画素利用率Eも増加する。しかし、補正角度vがある値のとき画素利用率Eは最大値となり、さらに補正角度vを増加させると、画素利用率Eは減少する。その最大値の画素利用率Eの値やそのときの補正角度vの値は、ズーム値zにより異なる。
【0044】
図6はこれらの関係を表すグラフである。垂直方向の補正角度v=0のとき、画素利用率E=75%である(点P0)。ズーム値z=1では、補正角度vが約30.9°のとき、画素利用率Eが約92.4%で最大になる(点P1)。ズーム値z=1.5では、補正角度vが約26.9°のとき、画素利用率Eが約90.4%で最大になる(点P1.5)。ズーム値z=2では、補正角度vが約23.5°のとき、画素利用率Eが約89.1%で最大になる(点P2)。
【0045】
なお、本実施形態のプロジェクタ1の光学仕様は以下の通りとする。
出力素子の横縦比 1.778(16:9)、
ズーム 2倍(ズーム値z=1〜2)、
スローレシオ テレ端(ズーム値z=1)のとき0.46、
ワイド端(ズーム値z=2)のとき0.92、
出力表示素子の光軸位置 下辺中央から出力素子高さの約20%上方。
ただし、
スローレシオ=投影像横幅÷投影距離、
スローレシオの条件:歪み補正無し時。
【0046】
上記のような本実施形態のプロジェクタ1において画素利用率Eを向上させるために、本実施形態では、点P1、点P1.5、点P2等で投影するように補正角度vを調整する。
【0047】
まず、ユーザが補正角度vの調整を行う場合を、
図7(A)を参照して説明する。プロジェクタ1は、CPU19で実行される投影プログラムの一部として、このフローチャートに対応するプログラムをプログラムメモリ21に記憶している。
【0048】
まず、ステップS101において、CPU19は、入出力コネクタ部11から入力され、入出力I/F12及びシステムバスSBを介して画像変換部13に入力された画像信号の横縦比を、システムバスSBを介して画像変換部13から取得する。
【0049】
次に、処理はステップS102に進む。このステップS102において、CPU19は、現在のズーム値zを、システムバスSBを介してレンズ調整部26から取得する。なお、レンズ調整部26は、操作部22のユーザ操作によるズーム変更指示に応じて、CPU19の制御の下、投影レンズ18のズーム機構を駆動させるものであるので、CPU19は、現在のズーム値zをメインメモリ20等に記憶しておく構成とした場合には、レンズ調整部26からではなく、メインメモリ20等から取得することもできる。
【0050】
次に、処理はステップS103に進む。このステップS103において、CPU19は、上記取得した入力画像信号の横縦比と、ズーム値zと、出力表示素子の光軸位置(光軸のシフト量)とにより、推奨相対角度として、画素利用率Eが最大になる最適な補正角度vsを算出する。これは例えば、横縦比が1.333(4:3)でズーム値z=1では、最適な補正角度vs=30.9°、横縦比が1.333(4:3)でズーム値z=2では、最適な補正角度vs=23.5°、等々である。なお、いずれの場合も、水平方向の推奨相対角度は、h=0である。
【0051】
なお、この推奨相対角度は、算出するのではなく、画像信号の横縦比と、プロジェクタ1の出力表示素子の横縦比(及び光軸位置)と、ズーム値と、の関係毎に推奨相対角度をプログラムメモリ21等にルックアップテーブルとして記憶しておき、それを参照して決定するようにしても良い。なお、通常、プロジェクタ1の出力表示素子の横縦比(及び光軸位置)は一定であるため、実際には、画像信号の横縦比とズーム値との関係毎の推奨相対角度を示すルックアップテーブルとなる。
【0052】
なお、v<0の範囲でも、画素利用率Eを向上させる極大値が存在するが、プロジェクタ1のシフト方向(レンズシフト方向)も考慮して、どちらの極大値がより大きいか予め計算しておくことができるので、その大きくなるような値で補正するようにすることが望ましい。詳細は後述する。
【0053】
次に、処理はステップS104に進む。このステップS104において、CPU19は、補正角度vのずれ、つまり現在の補正角度(相対角度)vと最適な補正角度vsとのずれを検出し、これがゼロであるかどうかを判別する。なお、現在の補正角度vは、以下のようにして得られる。すなわち、プロジェクタ1が水平台2等の上に設置される際、通常は、スクリーン4に平行にプロジェクタ1を載置して電源を投入し、投影レンズ18から出射された光がスクリーン4に投射されるように、ユーザはプロジェクタ1の姿勢を変更修正する。このプロジェクタ1の姿勢の変更操作時のプロジェクタ1の動きを姿勢センサ23により検出することで、CPU19は、プロジェクタ1とスクリーン4との相対角度を知ることができる。つまり、ここで言う現在の補正角度vとは、推奨相対角度として最適な補正角度vsを算出した時点でのプロジェクタ1とスクリーン4との垂直方向の相対角度のことである。
【0054】
そして、このステップS104で補正角度vと最適な補正角度vsとのずれがゼロでないと判定された場合には、CPU19は、処理をステップS105に進める。このステップS105において、CPU19は、ユーザに対して、最適な補正角度vsとのずれをゼロにするための指示を出す。これは、例えば操作部22が液晶表示部等を備えていれば、そこに指示を表示する。また、そのような表示部等を備えていない場合には、CPU19が投影処理部14を制御して、例えば
図8に示すような指示画面100をスクリーン4に投影表示することで行うことができる。なお、ここでは、「**度だけ上に傾けてください」のように、補正角度vと最適な補正角度vsとのずれを提示するものとしているが、「XX度に傾けてください」のように、最適な補正角度vsそのものを提示するようにしてもかまわない。
【0055】
次に、処理はステップS106に進む。このステップS106において、ユーザは、この指示に従って補正角度vを調整する。なお、このステップS106は、CPU19が能動的に行う動作ではなく、ユーザによる操作部22の操作を受けて受動的に行う動作であるため、
図7(A)では実線では無く点線で示してある。具体的には、ユーザによる操作部22の操作に応じて、CPU19は、位置調整部27により電動脚部28を駆動させて、プロジェクタ1の垂直方向の傾きを変更する。
【0056】
その後、処理は上記ステップS104に戻って、上記の処理を繰り返す。そして、上記ステップS104において補正角度vと最適な補正角度vsとのずれがゼロになったと判別されたとき、CPU19は、補正角度vの調整は完了したとして、次のステップS107に処理を進める。このステップS107では、CPU19は、画像変換部13による歪み補正処理のためのパラメータとして、上記推奨相対角度である最適な補正角度vsを与え、その角度に対応する歪み補正処理を行わせて、入力画像信号の投影を行わせる。(なお、画像信号の横縦比と出力表示素子の横縦比が等しい場合については、後述する。)
これにより、例えば、画素利用率Eを高めた(明るく、高解像度の)投影を行うことが可能となる。
【0057】
なお、ここでは、ステップS104で補正角度vと最適な補正角度vsとのずれがゼロになったことを確認した上で、ステップS107の最適な補正角度vsに対応する歪み補正処理を行うものとしたが、何ら確認することなく、最適な補正角度vsに調整されたものとして、ステップS106に続けてステップS107の歪み補正処理を行うものとしてもかまわない。すなわち、ステップS104を省略しても良い。
【0058】
また、ステップS107の歪み補正処理がステップS104よりも先に行われるようにしても良い。
【0059】
なお、上記説明では、ステップS104で最適な補正角度vsとの比較に用いる現在の補正角度vを、推奨相対角度として最適な補正角度vsを算出した時点でのプロジェクタ1とスクリーン4との相対角度としたが、現時点の補正角度vを逐次検出して、それを最適な補正角度vsとの比較に用いても良い。これにより、より正確に、最適な補正角度vsに調整することが可能となる。この場合、上記ステップS105でのユーザへの指示は、
図8に示すような「**度だけ上に傾けてください」というのではなく、「あと**度だけ上に傾けてください」というものになる。
【0060】
次に、補正角度vを自動調整する場合を、
図7(B)を参照して説明する。プロジェクタ1は、CPU19で実行される投影プログラムの一部として、このフローチャートに対応するプログラムをプログラムメモリ21に記憶している。
【0061】
ここで、
図7(A)に示した処理と同様の処理には、同じ参照符号を付すことで、その説明を省略する。
【0062】
すなわち、補正角度vを自動調整する場合は、上記ステップS101乃至ステップS103と同様の処理を実施した後、処理はステップS108に進む。このステップS108において、CPU19は、補正角度v=最適な補正になるような補正角度vの自動調整を実施する。具体的には、CPU19は、補正角度vが最適な補正角度vsとなるように、位置調整部27により電動脚部28を駆動させて、プロジェクタ1の垂直方向の傾きを変更する。その後、上記ステップS107に処理を進めて、最適な補正角度vsに対応する歪み補正処理を行って入力画像信号の投影を行う。
【0063】
なお、ステップS108の自動調整処理においては、ユーザによる調整の場合と同様に、補正角度vと最適な補正角度vsとのずれを判別するようにしても良く、その際、現在の補正角度vとして、推奨相対角度として最適な補正角度vsを算出した時点でのプロジェクタ1とスクリーン4との相対角度を用いても良いし、逐次検出した現時点の補正角度vを用いても良い。
【0064】
これにより、例えば、画素利用率Eを高めた(明るく、高解像度の)投影を行うことが可能となる。
【0065】
なお、補正角度vを調整する際、スクリーン4上での投影画像の投影位置の変化が少なくなるように調整することが望ましい。そのためには、例えば
図9(A)に示すように、脚28Aに加えて、プロジェクタ1の投影レンズ18と反対側(後方)のプロジェクタ1の下面にも、伸縮自在な複数本の脚28Bを配設し、脚28Aの調整方向と逆方向に脚28Bの長さを調整可能とすれば良い。
【0066】
また、例えば、脚28Aの調整が終了してから、脚28Aの長さと脚28Bの長さを同方向に同じ量だけ調整するようにすれば、相対角度(補正角度)を変化させることなく、投影位置だけを適切に上下方向に調整することができる。
【0067】
また、
図9(A)のような脚28A、脚28Bの長さの調整では、ストロークが短く、十分な高さ調整範囲を確保できないという欠点もある。高さの調整もある程度の範囲で行われることが好ましいので、
図9(B)に示すように、ピッチング(煽り)角度調整とともに、高さの調整に十分なストロークがとれるように、直立する支柱29に対してプロジェクタ(本体)1が上下できるような構成が望ましい。
【0068】
図9(B)において、例えば、v=0からv=30度に変更させるような場合、プロジェクタ1の位置を下方に移動させることとなる。
【0069】
なお、その高さの変化量は投影距離の影響を受ける。(投影距離と高さ変化量は比例する)
なお、フロー等を簡略にするために、上記説明で後述するとした、画像信号の横縦比と出力表示素子の横縦比が等しい場合について説明を加える。
【0070】
画像信号の横縦比と出力表示素子の横縦比が等しい場合は、
図2、
図3に対応するものを省略したが、補正角度v=0(かつh=0)が最適な補正角度vsになることは明らかである。
【0071】
つまり、画像信号の横縦比と出力表示素子の横縦比が等しい場合、一般的な歪み補正により、画素利用率は100%を下回り、v=0(かつh=0)の時、つまり、歪み補正を行わない状態が画素利用率100%として最も適した状態となる。
【0072】
したがって、
図7のフローにおけるステップS103では、画像信号の横縦比と出力表示素子の横縦比が等しい場合には、最適な補正角度vsとして0が算出される。
【0073】
また、
図7のフローにおけるステップS107では、「最適な補正角度vsでの歪み補正処理による画像投影」としたが、その場合は、最適な補正角度vs=0での歪み補正処理とは、歪み補正処理を行わないという解釈となる。
【0074】
また、上記説明では特に触れなかったが、画像変換部13において、画像信号の横縦比と出力表示素子の横縦比が等しい場合を含め、画素利用率を最大とするようなスケーリング処理(ただしスケーリング前後の横縦比が不変)が行われ、歪み補正処理が行われる場合は、歪み補正処理とスケーリング処理が同時に行われることとなる。
【0075】
画像信号の画素数と出力表示素子の画素数が横縦それぞれ等しい場合は、スケーリング処理も不要となる。
【0076】
以上のように、本第1実施形態では、画像信号の横縦比とプロジェクタ1の出力表示素子の横縦比とに基づいて、プロジェクタ1と被投影体(スクリーン4)との推奨する推奨相対角度(最適な補正角度vs)を決定(算出、テーブル参照等)し、プロジェクタ1と被投影体との相対角度(補正角度v)が、その決定された推奨相対角度に調整されたものとして、画像信号に対し歪み補正(台形補正)を行うようにしているので、歪み補正時の、例えば、画素利用率Eを向上することができる。
【0077】
また、上記決定された推奨相対角度になるように(当該プロジェクタ1を動かして)、当該プロジェクタ1とスクリーン4との相対角度を変更させる伸縮可能な電動脚部28を備えることで、決定された推奨相対角度に調整することができる。
【0078】
そして、上記推奨相対角度を決定した時点におけるプロジェクタ1とスクリーン4との相対角度、及び/または、プロジェクタ1とスクリーン4との現時点の相対角度を取得し、その取得された相対角度に基づいて、上記推奨相対角度になるように(両角度の差分だけ)、プロジェクタ1とスクリーン4との相対角度を変更させるようにしているので、ユーザの手間なく、自動で相対角度の変更を行える。なお、このとき、投影画像の投影位置の変化が少なくなるようにプロジェクタ1とスクリーン4との相対角度を変更するようにすることで、投影位置の変化への影響を少なくできる。
【0079】
また、決定された上記推奨相対角度を、例えば「XX度に傾けてください」というようにユーザに通知するように構成することで、ユーザに相対角度の変更を促して変更させられるので、自動調整機構が無くても、ユーザ操作により決定された推奨相対角度に調整することができる。また、電動脚部28の代わりに、脚28Aの長さを手動で調整できるような機構、例えば、脚28Aをねじ式とし、ユーザが脚28Aを回転させることで脚28Aの長さが変更できるようにしても良い。そのような手動の調整機構とすれば、電動モータ等が不要となるので、より安価な製品とすることができる。
【0080】
あるいは、上記推奨相対角度を決定した時点におけるプロジェクタ1とスクリーン4との相対角度、及び/または、当該投影装置と前記被投影体との現時点の相対角度を取得し、その取得された相対角度に基づいて、上記決定された推奨相対角度に変更させるための情報(「**度だけ上に傾けてください」、「あと**度だけ上に傾けてください」、等)を、ユーザに通知するようにするようにしても、ユーザに相対角度の変更を促して変更させられるので、自動調整機構が無くても、決定された推奨相対角度に調整することができる。この場合も、手動調整機構とすれば、より安価な製品とすることができる。
【0081】
なお、上記推奨相対角度としては、当該プロジェクタ1の出力表示素子の画素利用率を向上させるような角度を決定するようにしているので、画素利用率をより高めた(明るく、高解像度の)投影を行える。
【0082】
この場合、当該プロジェクタ1のズーム値に関する設定(ズーム値z、スローレシオ)を考慮した上で、画素利用率を向上させるような推奨相対角度を決定するので、ズーム値に関する設定を考慮した上で、推奨相対角度を決定して歪み補正を行える。なお、ズーム値が大きい(広角な)程、推奨相対角度として絶対値が小さい値が決定される。
【0083】
また、当該プロジェクタ1の出力表示素子の光軸位置(光軸のシフト量)を考慮した上で、画素利用率を向上させるような推奨相対角度を決定するようにしているので、光軸のシフト量を考慮した上で、適切な推奨相対角度を決定して歪み補正を行える。
【0084】
また、画像信号の横縦比と前記出力表示素子の横縦比とが等しい場合には、画像信号に対し歪み補正は行わず、必要な場合のみ0でない推奨相対角度を決定して歪み補正を行うようにしている。つまり、必要なない場合の制御負荷を下げらることができる。
【0085】
なお、画像信号の横縦比が出力表示素子の横縦比より小さい場合、推奨相対角度として、水平方向の角度が0の推奨相対角度を決定するようにしているので、推奨相対角度の情報量を少なくできる。
【0086】
また、画像信号の横縦比を維持した状態で、スクリーン4上に投影される画像信号の外郭が矩形(長方形)になるように歪み補正するので、画像信号の横縦比を維持した歪み補正を行える。
【0087】
さらにまた、画像信号の横縦比と出力表示素子の横縦比との関係毎に推奨相対角度をルックアップテーブルに記憶しておき、推奨相対角度を決定する際には、このルックアップテーブルに記憶された推奨相対角度を参照して決定するようにすることで、迅速に推奨相対角度を決定できる。
【0088】
また、姿勢センサ23で検出された検出結果に基づいて、プロジェクタ1とスクリーン4との相対角度を取得するようにしているので、測距等をしなくても、即座に現在の相対角度を取得することができる。
【0089】
[変形例1]
上記第1実施形態では、画素利用率Eが最大になる最適な補正角度vsを推奨相対角度としたが、必ずしも最適な補正角度vsでなくても良い。
【0090】
例えば、
図6において、ズーム値z=1のカーブとズーム値z=2のカーブの交点Pxを見ると、この点Pxでは、画素利用率Eは約86.4%であり、歪み補正無しの場合の画素利用率E=75%に対して十分に高い値である。そこで、このときの補正角度v(約25.2°)を、適度によい補正角度vxとして採用し、これを推奨相対角度として用いる。
【0091】
このような適度によい補正角度vxを用いることで、ズーム値zの取得を必要としない簡易な方法とすることができる。すなわち、入力画像信号の横縦比が1.333(4:3)の場合、補正角度vを、推奨相対角度である、ズーム値zによらない、適度によい補正角度vx=25.2°とすれば、ズームの全範囲において画素利用率E≧86.4%とすることができる(例えば、ズーム値z=1.5では、画素利用率Eは88.6%となる)。
【0092】
図10(A)及び(B)は、本変形例におけるフローチャートを示す図である。ここで、
図10(A)は
図7(A)に対応するもので、ユーザが補正角度vの調整を行う場合を示し、
図10(B)は
図7(B)に対応するもので、補正角度vの自動調整を行う場合を示している。なお、プロジェクタ1は、CPU19で実行される投影プログラムの一部として、これらの一方のフローチャートに対応するプログラムをプログラムメモリ21に記憶している。
【0093】
ユーザが補正角度vの調整を行う場合、
図10(A)に示すように、まず、ステップS101において、CPU19は、入力画像信号の横縦比を画像変換部13から取得する。
【0094】
次に、処理はステップS111に進む。このステップS111において、CPU19は、上記取得した入力画像信号の横縦比と出力表示素子の光軸位置(光軸のシフト量)とにより、推奨相対角度として、画素利用率Eが適度によい補正角度vxを算出する。すなわち、上記第1実施形態では現在のズーム値zの取得を行っていたが、本変形例では、そのような現在のズーム値の取得は行わない。したがって、ここでは、横縦比が1.333(4:3)のときに適度によい補正角度vx=25.2°を算出することとなる。なお、この推奨相対角度は、算出するのではなく、画像信号の横縦比とプロジェクタ1の出力表示素子の横縦比(及び光軸位置)との関係毎に推奨相対角度をプログラムメモリ21等にルックアップテーブルとして記憶しておき、それを参照して決定するようにしても良い。なお、通常、プロジェクタ1の出力表示素子の横縦比(及び光軸位置)は一定であるため、実際には、入力画像信号の横縦比毎の推奨相対角度を示すルックアップテーブルとなる。
【0095】
次に、処理はステップS112に進む。このステップS112において、CPU19は、補正角度vのずれ、つまり現在の補正角度vと適度によい補正角度vxとのずれを検出し、これがゼロであるかどうかを判別する。
【0096】
そして、このステップS112で補正角度vと適度によい補正角度vxとのずれがゼロでないと判定された場合には、CPU19は、上記第1実施形態と同様のステップS105、ステップS106に処理を進めることになる。その後、処理は上記ステップS112に戻って、上記の処理を繰り返す。
【0097】
そして、上記ステップS112において補正角度vと適度によい補正角度vxとのずれがゼロになったと判別されたとき、CPU19は、補正角度vの調整は完了したとして、次のステップS113に処理を進める。このステップS113では、CPU19は、画像変換部13による歪み補正処理のためのパラメータとして、上記推奨相対角度である適度によい補正角度vxを与え、その角度に対応する歪み補正処理を行わせて、入力画像信号の投影を行わせる。
【0098】
これにより、ズーム値に係わらず、例えば、画素利用率Eを高めた(明るく、高解像度の)投影を行うことが可能となる。
【0099】
以上のように、本変形例1では、画像信号の横縦比とプロジェクタ1の出力表示素子の横縦比とに基づいて、プロジェクタ1と被投影体(スクリーン4)との推奨する推奨相対角度(適度によい補正角度vx)を決定(算出、テーブル参照等)し、プロジェクタ1と被投影体との相対角度(補正角度v)が、その決定された推奨相対角度に調整されたものとして、画像信号に対し歪み補正(台形補正)を行うようにしているので、歪み補正時の、例えば、画素利用率Eを向上することができる。
【0100】
なお、上記第1実施形態と同様、ステップS112を省略すること、ステップS113の歪み補正処理がステップS112よりも先に行われるようにすること、また、現時点の補正角度vを逐次検出すること、などを行っても良いことはもちろんである。
【0101】
また、補正角度vを自動調整する場合は、
図10(B)に示すように、
図10(A)に示した処理と同様のステップS101及びステップS111を実施した後、処理はステップS114に進む。このステップS114において、CPU19は、補正角度v=適度によい補正角度vxになるような補正角度vの自動調整を実施する。その後、
図10(A)に示した処理と同様のステップS113に処理を進めて、適度によい補正角度vxに対応する歪み補正処理を行って入力画像信号の投影を行う。
【0102】
これにより、ズーム値に係わらず、例えば、画素利用率Eを高めた(明るく、高解像度の)投影を行うことが可能となる。
【0103】
なお、ステップS114の自動調整処理においては、ユーザによる調整の場合と同様に、ステップS114の自動調整処理において、補正角度vと適度によい補正角度vxとのずれを判別するようにしても良く、その際、現在の補正角度vとして、推奨相対角度として適度によい補正角度vxを算出した時点でのプロジェクタ1とスクリーン4との相対角度を用いても良いし、逐次検出した現時点の補正角度vを用いても良い。
【0104】
また、上記第1実施形態と同様、補正角度vを調整する際、スクリーン4上での投影画像の投影位置の変化が少なくなるように調整するようにしても良い。
【0105】
[変形例2]
上記第1実施形態では、プロジェクタ1の出力表示素子の光軸位置(光軸のシフト量)を考慮して推奨相対角度を決定するようにしていたが、出力表示素子の光軸位置としての光軸のシフト量(方向)に加えて、補正の方向(向き)も考慮するようにしても良い(考慮することが望ましい)。
【0106】
図11は、上方向(v>0)だけでなく下方向(v<0)についても垂直方向の補正角度vと画素利用率Eとの関係を表すグラフを示す図である。このグラフは、
入力横縦比=1.333(4:3)、
出力横縦比=1.778(16:9)、
h=0、
補正角度v=−45°〜+35°、
ズーム値z=1,z=1.5,z=2、
の場合であり、ただし、スローレシオ及びシフト量は上記第1実施形態と同様である。
【0107】
図11より、垂直方向の補正角度v<0では、補正角度vを0から徐々に負にずらしていくとき画素利用率Eが一時的に75%を僅かに割り込み、その後上昇してピークを持つこと、ズーム値zが小さいほど画素利用率Eが常に大きい(カーブが交わらない)ことが判別できる。
【0108】
この例のプロジェクタ1においては、垂直方向の補正角度v<0の場合、ズーム値z=1では、補正角度vが約−38.5°のとき、画素利用率Eが約91.1%で最大(極大)になり、ズーム値z=1.5では、補正角度vが約−37.1°のとき、画素利用率Eが約88.0%で最大(極大)になり、ズーム値z=2では、補正角度vが約−35.8°のとき、画素利用率Eが約85.5%で最大(極大)になる。
【0109】
従って、例えば、垂直方向の補正角度がv<0の範囲でしか補正できないような場合、画素利用率Eを向上させるためには、推奨相対角度として最適な補正角度vsとして、それらの補正角度v(約−38.5°、約−37.1°、約−35.8°)を採用すれば良い。推奨相対角度として適度によい補正角度vxを用いる場合には、ズーム値z=2の場合の約−35.8°とすれば良い。
【0110】
また、垂直方向の補正角度が正負方向とも自由に補正できる場合は、プロジェクタ1自身のシフト方向自体を考慮して、第1実施形態で説明したように、上シフトであるプロジェクタの場合、垂直方向の補正角度がv>0の範囲の極大値(最大値)として、ズーム値z=1では、約30.9°、ズーム値z=1.5では、26.9°、ズーム値z=2では、約23.5°が推奨相対角度として決定される。
【0111】
一方、プロジェクタ1が下シフトのプロジェクタの場合は、逆にv<0の範囲の極大値が最大値になるので、そちら側の値が推奨相対角度として決定されることとなる。
【0112】
このように、当該プロジェクタ1の出力表示素子の光軸位置(光軸のシフト量及びシフト方向)を考慮した上で、画素利用率を向上させるような推奨相対角度を決定するようにすることで、光軸のシフト量を考慮した上で、推奨相対角度を決定して歪み補正を行える。上述したように、推奨相対角度は、光軸のシフト方向と同じ方向の値が決定されるものである。
【0113】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。ここでは、前述の第1実施形態との相違点について説明し、同一の部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。本実施形態のプロジェクタ1は、出力表示素子であるマイクロミラー素子15として、微小ミラーが例えばUXGAと称される横1600画素×縦1200画素分だけ並べられている。すなわち、本実施形態のプロジェクタ1は、出力横縦比1.333(4:3)のプロジェクタである。また、本実施形態のプロジェクタ1は、
図12に示すように、第1実施形態の電動脚部28に代えて、プロジェクタ1の下面に、位置調整部27によって駆動される車輪40を、その回転軸が周方向となるように、複数配設している。
【0114】
図13は、このようなプロジェクタ1において入力横縦比1.778(16:9)の画像信号が与えられた場合の歪み補正の補正前歪み四角形と補正後矩形との関係を、投影面で見た場合を示す図であり、
図14は、同様の関係を出力表示素子面で見た場合を示す図である。
図13及び
図14は、補正角度h及びvがそれぞれ−30度〜+30度の場合を15度刻みで表しており、それぞれの中央部分は、h=v=0、つまり歪み補正無しの場合を表わしている。これに対して、中央部分以外は、歪み補正有りの場合を表している。
【0115】
ここで、
図13の中央部分の歪み補正無しの場合の斜線部分は、レターボックスにより切り取られた部分と同じになる。また、
図14のh=v=0である中央の四角形は、歪み補正無しの場合を表しており、このとき画素利用率Eは75%である。歪み補正方法は、
図2及び
図3と同様、画像信号の横縦比を維持したまま画素利用率が向上するような切り抜き方法を採用している場合の例である。また、プロジェクタの仕様としては、出力表示素子の横縦比1.333(4:3)、スローレシオ約0.36、出力表示素子の光軸位置は下辺中央(上シフト100%)である。ただし、スローレシオの条件は歪み補正無し時である。
【0116】
図14において、歪み補正無しの場合の画素利用率Eが75%であるのに対して、h≠0且つv=0の場合の画素利用率Eがいずれも75%以上になっているのが判別できる。そこで、プロジェクタの設置でよく採られる形態であるh≧0且つv=0の場合(
図13及び
図14中の一点鎖線楕円で囲った部分)について、
図15及び
図16により詳細に示す。なお、この例では、プロジェクタ1の光学系が左右対称(左右方向のシフトは0)の構造のため、h<0の場合の画素利用率Eなどはh>0の場合と同じとなる。
【0117】
図15及び
図16中の一点破線楕円で囲った部分がそれぞれ
図13及び
図14中の一点鎖線楕円で囲った部分に対応する。ただし、
図15及び
図16ではhを0度〜35度を5度刻みで表してある。また、
図15及び
図16では、ズーム機能を使用した場合も併記してある。一点鎖線楕円で囲った部分はズーム値z=1の場合であり、その上側にズーム値z=1.5の場合とズーム値z=2の場合が示してある。なお、
図13及び
図14は、ズーム値z=1の場合を表している。
【0118】
図16において、画素利用率Eは、水平方向の補正角度h=0のとき75%であり、そこから補正角度hを増加させると画素利用率Eも増加する。しかし、補正角度hがある値のとき画素利用率Eは最大値となり、さらに補正角度hを増加させると、画素利用率Eは減少する。その最大値の画素利用率Eの値やそのときの補正角度hの値は、ズーム値zにより異なる。
【0119】
図17はこれらの関係を表すグラフである。水平方向の補正角度h=0のとき、画素利用率E=75%である(点Q0)。ズーム値z=1では、補正角度hが約32.2°のとき、画素利用率Eが約89.8%で最大になる(点Q1)。ズーム値z=1.5では、補正角度hが約28.4°のとき、画素利用率Eが約87.2%で最大になる(点Q1.5)。ズーム値z=2では、補正角度hが約25.2°のとき、画素利用率Eが約85.4%で最大になる(点Q2)。
【0120】
なお、本実施形態のプロジェクタ1の光学仕様は以下の通りとする。
出力素子の横縦比 1.333(4:3)、
ズーム 2倍(ズーム値z=1〜2)、
スローレシオ テレ端(ズーム値z=1)のとき0.36、
ワイド端(ズーム値z=2)のとき0.72、
出力素子の光軸位置 下辺中央。
ただし、
スローレシオ=投影像横幅÷投影距離、
スローレシオの条件:歪み補正無し時。
【0121】
上記のような本実施形態のプロジェクタ1において画素利用率Eを向上させるために、本実施形態では、点Q1、点Q1.5、点Q2等で投影するように補正角度hを調整する。
【0122】
まず、ユーザが補正角度hの調整を行う場合を、
図18(A)を参照して説明する。プロジェクタ1は、CPU19で実行される投影プログラムの一部として、このフローチャートに対応するプログラムをプログラムメモリ21に記憶している。
【0123】
CPU19は、まず、ステップS201において、入力された画像信号の横縦比を画像変換部13から取得し、その後、ステップS202において、現在のズーム値zをレンズ調整部26から取得する。これらステップS201及びS202の処理は、上記第1実施形態のステップS101及びS102と同様の処理である。
【0124】
次に、処理はステップS203に進む。このステップS203において、CPU19は、上記取得した入力画像信号の横縦比と、ズーム値zと、出力表示素子の光軸位置(光軸のシフト量)とにより、推奨相対角度として、画素利用率Eが最大になる最適な補正角度hsを算出する。これは例えば、入力画像信号の横縦比が1.778(16:9)でズーム値z=1では、最適な補正角度hs=32.2°、横縦比が1.778(16:9)でズーム値z=2では、最適な補正角度hs=25.2°、等々である。なお、この推奨相対角度は、算出するのではなく、ルックアップテーブルを参照して決定するようにしても良いことは上記第1実施形態と同様である。
【0125】
次に、処理はステップS204に進む。このステップS204において、CPU19は、補正角度hのずれ、つまり現在の補正角度hと最適な補正角度hsとのずれを検出し、これがゼロであるかどうかを判別する。なお、現在の補正角度hは、上記第1実施形態と同様、推奨相対角度として最適な補正角度hsを算出した時点でのプロジェクタ1とスクリーン4との水平方向の相対角度である。
【0126】
そして、このステップS204で補正角度hと最適な補正角度hsとのずれがゼロでないと判定された場合には、CPU19は、処理をステップS205に進める。このステップS205において、CPU19は、ユーザに対して、最適な補正角度hsとのずれをゼロにするための指示を出す。これは、上記第1実施形態と同様、操作部22の液晶表示部等を用いても良いし、指示画面100をスクリーン4に投影表示することで行うことができる。
【0127】
次に、処理はステップS206に進む。このステップS206において、ユーザは、この指示に従って補正角度vを調整する。なお、このステップS206は、CPU19が能動的に行う動作ではなく、ユーザによる操作部22の操作を受けて受動的に行う動作であるため、
図18(A)では実線では無く点線で示してある。具体的には、ユーザによる操作部22の操作に応じて、CPU19は、位置調整部27により図示しない車輪を駆動させて、プロジェクタ1を回転させる。
【0128】
その後、処理は上記ステップS204に戻って、上記の処理を繰り返す。そして、上記ステップS204において補正角度hと最適な補正角度hsとのずれがゼロになったと判別されたとき、CPU19は、補正角度hの調整は完了したとして、次のステップS207に処理を進める。このステップS207では、CPU19は、画像変換部13による歪み補正処理のためのパラメータとして、上記推奨相対角度である最適な補正角度hsを与え、その角度に対応する歪み補正処理を行わせて、入力画像信号の投影を行わせる。
【0129】
これにより、例えば、画素利用率Eを高めた(明るく、高解像度の)投影を行うことが可能となる。
【0130】
なお、本第2実施形態においても、上記第1実施形態と同様、ステップS204を省略すること、ステップS207の歪み補正処理がステップS204よりも先に行われるようにすること、また、現時点の補正角度hを逐次検出すること、などを行っても良いことはもちろんである。
【0131】
次に、補正角度hを自動調整する場合を、
図18(B)を参照して説明する。プロジェクタ1は、CPU19で実行される投影プログラムの一部として、このフローチャートに対応するプログラムをプログラムメモリ21に記憶している。
【0132】
ここで、
図18(A)に示した処理と同様の処理には、同じ参照符号を付すことで、その説明を省略する。
【0133】
すなわち、補正角度hを自動調整する場合は、上記ステップS201乃至ステップS203と同様の処理を実施した後、処理はステップS208に進む。このステップS208において、CPU19は、補正角度h=最適な補正角度hsになるような補正角度hの自動調整を実施する。すなわち、CPU19は、補正角度hが最適な補正角度hsとなるように、位置調整部27により図示しない車輪を駆動させて、プロジェクタ1の水平方向の向きを変更する。その後、上記ステップS207に処理を進めて、最適な補正角度hsに対応する歪み補正処理を行って入力画像信号の投影を行う。
【0134】
なお、ステップS208の自動調整処理においては、ユーザによる調整の場合と同様に、補正角度hと最適な補正角度hsとのずれを判別するようにしても良く、その際、現在の補正角度hとして、推奨相対角度として最適な補正角度hsを算出した時点でのプロジェクタ1とスクリーン4との相対角度を用いても良いし、逐次検出した現時点の補正角度vを用いても良い。
【0135】
これにより、例えば、画素利用率Eを高めた(明るく、高解像度の)投影を行うことが可能となる。
【0136】
以上のように、本第2実施形態によれば、画像信号の横縦比とプロジェクタ1の出力表示素子の横縦比とに基づいて、プロジェクタ1と被投影体(スクリーン4)との推奨する推奨相対角度(最適な補正角度hs)を決定(算出、テーブル参照等)し、プロジェクタ1と被投影体との相対角度(補正角度h)が、その決定された推奨相対角度に調整されたものとして、画像信号に対し歪み補正(台形補正)を行うようにしているので、歪み補正時の、例えば、画素利用率Eを向上することができる。
【0137】
また、上記決定された推奨相対角度になるように(当該プロジェクタ1を動かして)、当該プロジェクタ1とスクリーン4との水平方向の相対角度を変更させる(プロジェクタ1を回転させる)車輪を備えることで、決定された推奨相対角度に調整することができる。
【0138】
そして、上記推奨相対角度を決定した時点におけるプロジェクタ1とスクリーン4との相対角度、及び/または、プロジェクタ1とスクリーン4との現時点の相対角度を取得し、その取得された相対角度に基づいて、上記推奨相対角度になるように(両角度の差分だけ)、プロジェクタ1とスクリーン4との相対角度を変更させるようにしているので、ユーザの手間なく、自動で相対角度の変更を行える。なお、このとき、投影画像の投影位置の変化が少なくなるようにプロジェクタ1とスクリーン4との相対角度を変更するようにする機構を更に持たせれば、投影位置の変化への影響を少なくできる。
【0139】
例えば、
図12(C)に示すように、車輪の方向が可変であり、上記推奨相対角度になるような車輪の調整が終了してから、プロジェクタ1をスクリーン4に対して平行移動させるように車輪を動かす調整をすれば、相対角度(補正角度)を変化させることなく、投影位置だけを適切に横方向に調整することができる。
【0140】
また、決定された上記推奨相対角度を、例えば「XX度に右(または左)に向け)ください」というようにユーザに通知するように構成することで、ユーザに相対角度の変更を促して変更させられるので、自動調整機構が無くても、ユーザ操作により決定された推奨相対角度に調整することができる。また、車輪は電動駆動式では無く、自在に回転する車輪として、ユーザが手動で調整できるようにしても良い。そのような手動の調整機構とすれば、電動モータ等が不要となるので、より安価な製品とすることができる。
【0141】
あるいは、上記推奨相対角度を決定した時点におけるプロジェクタ1とスクリーン4との相対角度、及び/または、当該投影装置と前記被投影体との現時点の相対角度を取得し、その取得された相対角度に基づいて、上記決定された推奨相対角度に変更させるための情報(「**度だけ右に向けてください」、「あと**度だけ右に向けてください」、等)を、ユーザに通知するようにするようにしても、ユーザに相対角度の変更を促して変更させられるので、自動調整機構が無くても、決定された推奨相対角度に調整することができる。この場合も、手動調整機構とすれば、より安価な製品とすることができる。
【0142】
なお、上記推奨相対角度としては、当該プロジェクタ1の出力表示素子の画素利用率を向上させるような角度を決定するようにしているので、画素利用率をより高めた(明るく、高解像度の)投影を行える。
【0143】
この場合、当該プロジェクタ1のズーム値に関する設定(ズーム値z、スローレシオ)を考慮した上で、画素利用率を向上させるような推奨相対角度を決定するので、ズーム値に関する設定を考慮した上で、推奨相対角度を決定して歪み補正を行える。なお、ズーム値が大きい(広角な)程、推奨相対角度として絶対値が小さい値が決定される。
【0144】
また、当該プロジェクタ1の出力表示素子の光軸位置(光軸のシフト量)を考慮した上で、画素利用率を向上させるような推奨相対角度を決定するようにしているので、光軸のシフト量を考慮した上で、適切な推奨相対角度を決定して歪み補正を行える。
【0145】
また、画像信号の横縦比と前記出力表示素子の横縦比とが等しい場合には、画像信号に対し歪み補正は行わず、必要な場合のみ0でない推奨相対角度を決定して歪み補正を行うようにしている。つまり、必要なない場合の制御負荷を下げらることができる。なお、画像信号の横縦比が出力表示素子の横縦比より大きい場合、推奨相対角度として、垂直方向の角度が0の推奨相対角度を決定するようにしているので、推奨相対角度の情報量を少なくできる。
【0146】
また、画像信号の横縦比を維持した状態で、スクリーン4上に投影される画像信号の外郭が矩形(長方形)になるように歪み補正するので、画像信号の横縦比を維持した歪み補正を行える。
【0147】
さらにまた、画像信号の横縦比と出力表示素子の横縦比との関係毎に推奨相対角度をルックアップテーブルに記憶しておき、推奨相対角度を決定する際には、このルックアップテーブルに記憶された推奨相対角度を参照して決定するようにすることで、迅速に推奨相対角度を決定できる。
【0148】
また、姿勢センサ23で検出された検出結果に基づいて、プロジェクタ1とスクリーン4との相対角度を取得するようにしているので、測距等をしなくても、即座に現在の相対角度を取得することができる。
【0149】
[変形例]
上記第2実施形態では、画素利用率Eが最大になる最適な補正角度hsを推奨相対角度としたが、必ずしも最適な補正角度hsでなくても良い。
【0150】
例えば、
図17において、ズーム値z=1のカーブとズーム値z=2のカーブの交点Qxを見ると、この点Qxでは、画素利用率Eは約84.2%であり、歪み補正無しの場合の画素利用率E=75%に対して十分に高い値である。そこで、このときの補正角度h(約26.1°)を、適度によい補正角度hxとして採用し、これを推奨相対角度として用いる。
【0151】
このような適度によい補正角度hxを用いることで、ズーム値zの取得を必要としない簡易な方法とすることができる。すなわち、入力画像信号の横縦比が1.778(16:9)の場合、補正角度hを、推奨相対角度である、ズーム値zによらない、適度によい補正角度hx=26.1°とすれば、ズームの全範囲において画素利用率E≧84.2%とすることができる(例えば、ズーム値z=1.5では、画素利用率Eは85.0%となる)。
【0152】
図19(A)及び(B)は、本変形例におけるフローチャートを示す図である。ここで、
図19(A)は
図18(A)に対応するもので、ユーザが補正角度hの調整を行う場合を示し、
図19(B)は
図18(B)に対応するもので、補正角度hの自動調整を行う場合を示している。なお、プロジェクタ1は、CPU19で実行される投影プログラムの一部として、これらの一方のフローチャートに対応するプログラムをプログラムメモリ21に記憶している。
【0153】
ユーザが補正角度hの調整を行う場合、
図19(A)に示すように、まず、ステップS201において、CPU19は、入力画像信号の横縦比を画像変換部13から取得する。
【0154】
次に、処理はステップS211に進む。このステップS211において、CPU19は、上記取得した入力画像信号の横縦比と出力表示素子の光軸位置(光軸のシフト量)とにより、推奨相対角度として、画素利用率Eが適度によい補正角度hxを算出する。すなわち、上記第2実施形態では現在のズーム値zの取得を行っていたが、本変形例では、そのような現在のズーム値の取得は行わない。したがって、ここでは、横縦比が1.778(16:9)のときに適度によい補正角度hx=26.1°を算出することとなる。なお、この推奨相対角度は、算出するのではなく、画像信号の横縦比とプロジェクタ1の出力表示素子の横縦比(及び光軸位置)との関係毎に推奨相対角度をプログラムメモリ21等にルックアップテーブルとして記憶しておき、それを参照して決定するようにしても良い。なお、通常、プロジェクタ1の出力表示素子の横縦比(及び光軸位置)は一定であるため、実際には、入力画像信号の横縦比毎の推奨相対角度を示すルックアップテーブルとなる。
【0155】
次に、処理はステップS212に進む。このステップS212において、CPU19は、補正角度hのずれ、つまり現在の補正角度hと適度によい補正角度hxとのずれを検出し、これがゼロであるかどうかを判別する。
【0156】
そして、このステップS212で補正角度hと適度によい補正角度hxとのずれがゼロでないと判定された場合には、CPU19は、上記第2実施形態と同様のステップS205、ステップS206に処理を進めることになる。その後、処理は上記ステップS212に戻って、上記の処理を繰り返す。
【0157】
そして、上記ステップS212において補正角度hと適度によい補正角度hxとのずれがゼロになったと判別されたとき、CPU19は、補正角度hの調整は完了したとして、次のステップS213に処理を進める。このステップS213では、CPU19は、画像変換部13による歪み補正処理のためのパラメータとして、上記推奨相対角度である適度によい補正角度hxを与え、その角度に対応する歪み補正処理を行わせて、入力画像信号の投影を行わせる。
【0158】
これにより、ズーム値に係わらず、例えば、画素利用率Eを高めた(明るく、高解像度の)投影を行うことが可能となる。
【0159】
以上のように、本変形例では、画像信号の横縦比とプロジェクタ1の出力表示素子の横縦比とに基づいて、プロジェクタ1と被投影体(スクリーン4)との推奨する推奨相対角度(適度によい補正角度hx)を決定(算出、テーブル参照等)し、プロジェクタ1と被投影体との相対角度(補正角度h)が、その決定された推奨相対角度に調整されたものとして、画像信号に対し歪み補正(台形補正)を行うようにしているので、歪み補正時の、例えば、画素利用率Eを向上することができる。
【0160】
なお、上記第2実施形態と同様、ステップS212を省略すること、ステップS213の歪み補正処理がステップS212よりも先に行われるようにすること、また、現時点の補正角度hを逐次検出すること、などを行っても良いことはもちろんである。
【0161】
また、補正角度hを自動調整する場合は、
図19(B)に示すように、
図19(A)に示した処理と同様のステップS201及びステップS211を実施した後、処理はステップS214に進む。このステップS214において、CPU19は、補正角度h=適度によい補正角度hxになるような補正角度hの自動調整を実施する。その後、
図19(A)に示した処理と同様のステップS213に処理を進めて、適度によい補正角度hxに対応する歪み補正処理を行って入力画像信号の投影を行う。
【0162】
これにより、ズーム値に係わらず、例えば、画素利用率Eを高めた(明るく、高解像度の)投影を行うことが可能となる。
【0163】
なお、ユーザによる調整の場合と同様、ステップS214の自動調整処理において、補正角度hと適度によい補正角度hxとのずれを判別するようにしても良く、その際、現在の補正角度hとして、推奨相対角度として適度によい補正角度hxを算出した時点でのプロジェクタ1とスクリーン4との相対角度を用いても良いし、逐次検出した現時点の補正角度vを用いても良い。
【0164】
また、上記第2実施形態と同様、補正角度hを調整する際、スクリーン4上での投影画像の投影位置の変化が少なくなるように調整するようにしても良い。
【0165】
[第3実施形態]
プロジェクタ1に補正角度vまたはhを調整するための機構が設けられていない場合、
図20に示すような補正角度調整用の載置台200上にプロジェクタ1を搭載して調整することができる。
図20は回転版の回転角度と傾斜版の傾斜角度が共に非ゼロの状態を表しているが、本実施形態では必ずどちらかがゼロであることに注意する。
【0166】
すなわち、この載置台200は、水平台2上に設置されるベース板201と、該ベース板201に対して傾斜する傾斜板202と、該傾斜板202に設けられた回転板203と、から構成され、回転板203上にプロジェクタ1が搭載される。また、載置台200は、プロジェクタ1の入出力コネクタ部11と接続するための接続手段を備え、プロジェクタ1のCPU19からの指示に従って傾斜板202を傾斜させたり、回転板203を回転させたりできるように構成されている。
【0167】
なお、第1実施形態のように垂直方向の補正角度vを調整するプロジェクタ1が搭載されるときには、回転板203の回転は回転ゼロでロックされ、傾斜板202の傾斜角度のみが変更可能にされる。また、第2実施形態のように水平方向の補正角度hを調整するプロジェクタ1が搭載されるときには、傾斜板202の傾斜は水平状態に(傾斜ゼロで)ロックされ、回転板203の回転のみが変更可能にされる。
【0168】
以上のように、本第3実施形態によれば、プロジェクタ1を載置する載置台200を用いて、プロジェクタ1とスクリーン4の相対角度を変更させるようにすることで、プロジェクタ1の設計を変えることなく相対角度の変更を行えるようになる。
【0169】
なお、傾斜板202及び回転板203は、CPU19の制御により駆動されるのではなく、該載置台200に設けた操作部のユーザ操作に応じてモータ等で傾斜角/回転角が設定できるようになっていても良い。これにより、プロジェクタ1との通信部が不要になり、安価な製品とすることができる。さらには、そのような操作部やモータ等も設けず、角度を示す目盛りを記しておくことで、ユーザが手動で角度を設定できるようにしてもかまわない。
【0170】
また、載置台200は、ベース板201と回転板203のいずれか一方のみを配したものであってもかまわない。すなわち、第1または第2実施形態のプロジェクタ1専用の載置台200とすれば、より安価な製品とすることができる。
【0171】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明は前記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0172】
例えば、上記第1実施形態は、入力横縦比1.333(4:3)、出力横縦比1.778(16:9)の場合に、水平方向の補正角度h=0、垂直方向の補正角度v≠0とする方法であるが、必ずしも水平方向の補正角度hがゼロでなくても、これが小さい値であるならば、すなわちゼロに近い値であるならば、上記第1実施形態と同様の効果を得ることは可能である。
【0173】
同様に、上記第2実施形態2は、入力横縦比1.778(16:9)、出力横縦比1.333(4:3)の場合に、水平方向の補正角度h≠0、垂直方向の補正角度v=0とする方法であるが、必ずしも垂直方向の補正角度vがゼロでなくても、これが小さい値であるならば、すなわちゼロに近い値であるならば、上記第2実施形態と同様の効果を得ることは可能である。
【0174】
つまり、上記第1実施形態は水平方向の補正角度h=0に限定するものではなく、また、上記第2実施形態は垂直方向の補正角度v=0に限定するものではない。
【0175】
また、上記第1乃至第3実施形態は、プロジェクタ1それ自体または載置台200によりプロジェクタ1を推奨相対角度に移動するものとしたが、プロジェクタ1を移動するのではなく、スクリーン4を動かすものとしても、同様の効果を奏することができる。
【0176】
なお、画像出力装置は、PCに限定されるものでは無いことはもちろんである。
【0177】
また、プロジェクタ1とスクリーン4との相対的角度の取得法に関しても、姿勢センサ23を用いずに、既知の多点測距手法、すなわち、スクリーン4までの複数の点(一直線上にない3点以上)までの距離を測定することにより、相対角度を取得することができる。この距離の測定法については、超音波、赤外線やレーザ光を用いるもの等、公知のどのような技術を用いても良い。このように測距手段で測定された測定結果に基づいてスクリーン4との相対角度を取得するようにすることで、適切に相対角度を取得することができる。さらに別の相対的角度の取得法として、テストチャートを投影し、それを撮像した画像データに基づいて取得したり、ユーザが測定して操作部22から入力したり、等々、様々な手法が採り得る。
【0178】
また、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても、発明が解決しようとする課題の欄で述べられた課題が解決でき、かつ、発明の効果が得られる場合には、この構成要素が削除された構成も発明として抽出され得る。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0179】
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
画像信号を、出力表示素子を用いて被投影体に投影する投影装置であって、
前記画像信号の横縦比と前記出力表示素子の横縦比とに基づいて、当該投影装置と前記被投影体との推奨する推奨相対角度を決定する決定手段と、
当該投影装置と前記被投影体との相対角度が、前記決定された前記推奨相対角度に調整されたものとして、前記画像信号に対し歪み補正を行う歪み補正手段と、
を備えることを特徴とする投影装置。
[2]
前記決定された前記推奨相対角度になるように、当該投影装置と前記被投影体との相対角度を変更させる相対角度変更手段を更に備えることを特徴とする[1]に記載の投影装置。
[3]
前記決定手段が前記推奨相対角度を決定した時点における当該投影装置と前記被投影体との相対角度、及び/または、当該投影装置と前記被投影体との現時点の相対角度を取得する相対角度取得手段を更に備え、
前記相対角度変更手段は、前記取得された前記相対角度に基づいて、前記決定された前記推奨相対角度になるように、当該投影装置と前記被投影体との相対角度を変更させることを特徴とする[2]に記載の投影装置。
[4]
前記取得された前記相対角度に基づいて、前記決定された前記推奨相対角度に変更させるための情報を、ユーザに通知する第1の通知手段を更に備えることを特徴とする[3]に記載の投影装置。
[5]
前記決定された前記推奨相対角度を、ユーザに通知する第2の通知手段を更に備えることを特徴とする[1]乃至[4]のいずれかに記載の投影装置。
[6]
前記相対角度変更手段は、投影画像の投影位置の変化が少なくなるように当該投影装置と前記被投影体との前記相対角度を変更する投影位置調整手段を備えることを特徴とする
[1]乃至[5]のいずれかに記載の投影装置。
[7]
前記決定手段は、前記推奨相対角度として、当該投影装置の前記出力表示素子の画素利用率を向上させるような角度を決定することを特徴とする[1]乃至[6]のいずれかに記載の投影装置。
[8]
前記決定手段は、当該投影装置のズーム値に関する設定を考慮した上で、前記画素利用率を向上させるような前記推奨相対角度を決定することを特徴とする[7]に記載の投影装置。
[9]
前記決定手段は、前記ズーム値が大きい程、前記推奨相対角度として絶対値が小さい値を決定することを特徴とする[8]に記載の投影装置。
[10]
前記決定手段は、当該投影装置の光軸のシフト量を考慮した上で、前記画素利用率を向上させるような前記推奨相対角度を決定することを特徴とする[7]乃至[9]のいずれかに記載の投影装置。
[11]
前記決定手段は、前記推奨相対角度として前記光軸のシフト方向と同じ方向の値を決定することを特徴とする[10]に記載の投影装置。
[12]
前記歪み補正手段は、前記画像信号の横縦比と前記出力表示素子の横縦比とが等しい場合に、前記画像信号に対し歪み補正を行わないことを特徴とする[1]乃至[11]のいずれかに記載の投影装置。
[13]
前記決定手段は、前記画像信号の前記横縦比が前記出力表示素子の前記横縦比より小さい場合には、前記推奨相対角度として、水平方向の角度が0の推奨相対角度を決定することを特徴とする[1]乃至[12]のいずれかに記載の投影装置。
[14]
前記決定手段は、前記画像信号の前記横縦比が前記出力表示素子の前記横縦比より大きい場合には、前記推奨相対角度として、垂直方向の角度が0の推奨相対角度を決定することを特徴とする[1]乃至[13]のいずれかに記載の投影装置。
[15]
前記歪み補正手段は、前記画像信号の横縦比を維持した状態で、前記被投影体上に投影される前記画像信号の外郭が矩形になるように歪み補正することを特徴とする[1]乃至[14]のいずれかに記載の投影装置。
[16]
前記画像信号の横縦比と前記出力表示素子の横縦比との関係毎に前記推奨相対角度を記憶する記憶手段を更に備え、
前記決定手段は、前記記憶手段に記憶された前記推奨相対角度を参照して、前記推奨相対角度を決定することを特徴とする[1]乃至[15]のいずれかに記載の投影装置。
[17]
画像信号を、出力表示素子を用いて被投影体に投影する投影装置における投影方法であって、
前記画像信号の横縦比と前記出力表示素子の横縦比とに基づいて、前記投影装置と前記被投影体との推奨する推奨相対角度を決定する推奨相対角度決定工程と、
前記投影装置と前記被投影体との相対角度が、前記決定された前記推奨相対角度に調整されたものとして、前記画像信号に対し歪み補正を行う歪み補正工程と、
を備えることを特徴とする投影方法。
[18]
前記決定された前記推奨相対角度になるように、前記投影装置と前記被投影体との相対角度を変更させる相対角度変更工程を更に備えることを特徴とする[17]に記載の投影方法。
[19]
前記相対角度変更工程は、前記投影装置を載置する載置台を用いて、前記投影装置と前記被投影体の相対角度を変更させることを特徴とする[18]に記載の投影方法。
[20]
画像信号を、出力表示素子を用いて被投影体に投影する投影装置におけるコンピュータに、
前記画像信号の横縦比と前記出力表示素子の横縦比とに基づいて、前記投影装置と前記被投影体との推奨する推奨相対角度を決定することと、
前記投影装置と前記被投影体との相対角度が、前記決定された前記推奨相対角度に調整されたものとして、前記画像信号に対し歪み補正を行うことと、
を実行させるための投影プログラム。