(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図17は、
図16Aおよび
図16Bに示される無線ICデバイスの等価回路図である。結合電極135は、インダクタンス成分Laと、無線ICチップ105の内部容量Caと、対向端部136c、136d間の容量Cbと、結合電極135と放射板115間の容量Ccとを有する。
図15Aおよび
図15Bのアンテナは磁界アンテナと記載されているので、共振回路は無線ICチップ105の両端で、浮遊容量として内部容量Caを残した状態でインピーダンス測定すると、インピーダンスが無限大(実際の測定値はインダクタンス素子のQにより数KΩから数MΩ)となる共振器を構成している。
【0007】
このような回路構成の結合電極135は磁界アンテナとして機能し、磁界を放射することで、放射板115から電波を発生させることができる。このように、特許文献1に記載の無線ICデバイスは、容量結合および磁気結合により物品の金属面と結合している金属面から電界を発生させることで空中に電波を放射することで通信を行っている。しかしながら、無線ICデバイスそのものからは電界が発生しないので、無線ICデバイスそのものの通信距離は数mmから数cmと短い。このため、無線通信デバイスを金属につけた場合も通信距離が短くなる。
【0008】
したがって、本発明の目的は、前記課題を解決することにあって、物品の金属面に取り付けられるRFIDタグであって、通信距離を長くしたRFIDタグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、物品の金属面に取り付けられる
RFIDタグであって、
無線ICチップと、
前記無線ICチップと電気的に接続されるアンテナパターンと、
前記無線ICチップと前記アンテナパターンとの整合をとる整合回路と、
前記アンテナパターンと接続され、前記金属面と容量結合する容量結合部と、
前記アンテナパターンおよび前記容量結合部が形成された絶縁基材と、を備え、
前記アンテナパターンは、
前記整合回路を介して前記無線ICチップと接続される第1アンテナパターンと、
一端が前記整合回路を介して前記無線ICチップと接続され、他端が前記容量結合部に接続される第2アンテナパターンと、を有し、
前記RFIDタグは、前記第1アンテナパターンと前記容量結合部との間に容量を有する容量部を有し、
前記アンテナパターンと前記容量結合部と前記容量部とは、ループ状に接続されている、
RFIDタグである。
【0010】
また、本発明の別態様によれば、金属面と、前記金属面に取り付けられたRFIDタグと、を備える物品であって、
前記RFIDタグは、
無線ICチップと、
前記無線ICチップと電気的に接続されるアンテナパターンと、
前記無線ICチップと前記アンテナパターンとの整合をとる整合回路と、
前記アンテナパターンと接続され、前記金属面と容量結合する容量結合部と、
前記アンテナパターンおよび前記容量結合部が形成された絶縁基材と、を備え、
前記アンテナパターンは、
前記整合回路を介して前記無線ICチップと接続される第1アンテナパターンと、
一端が前記整合回路を介して前記無線ICチップと接続され、他端が前記容量結合部に接続される第2アンテナパターンと、を有し、
前記RFIDタグは、前記第1アンテナパターンと前記容量結合部との間に容量を有する容量部を有し、
前記アンテナパターンと前記容量結合部と前記容量部とは、ループ状に接続されている、物品である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るRFIDタグによれば、金属面に取り付けられたRFIDタグからの通信距離を長くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一態様のRFIDタグは、物品の金属面に取り付けられるRFIDタグであって、無線ICチップと、前記無線ICチップと電気的に接続されるアンテナパターンと、前記無線ICチップと前記アンテナパターンとの整合をとる整合回路と、前記アンテナパターンと接続され、前記金属面と容量結合する容量結合部と、前記アンテナパターンおよび前記容量結合部が形成された絶縁基材と、を備え、前記アンテナパターンは、前記整合回路を介して前記無線ICチップと接続される第1アンテナパターンと、一端が前記整合回路を介して前記無線ICチップと接続され、他端が前記容量結合部に接続される第2アンテナパターンと、を有し、前記RFIDタグは、前記第1アンテナパターンと前記容量結合部との間に容量を有する容量部を有し、前記アンテナパターンと前記容量結合部と前記容量部とは、ループ状に接続されている。
【0014】
この態様によれば、金属面からだけではなく、アンテナからも電波を発生するので、通信距離を長くした、物品の金属面に取り付け可能なRFIDタグを提供することができる。
【0015】
前記容量結合部は、前記絶縁基材の端辺に沿って配置され、前記無線ICチップおよび前記整合回路は、前記容量結合部と対向して配置されていてもよい。
【0016】
前記容量部は、前記容量部と対向して配置されていてもよい。
【0017】
前記第2アンテナパターンは、前記絶縁基材の一方の端辺に平行な長辺と前記絶縁基材の他方の端辺に平行な短辺とから構成されるミアンダパターン部を有してもよい。
【0018】
前記第2アンテナパターンにおける前記容量結合部との接続部分は、前記第2アンテナパターンにおける他の部分よりもパターン幅が大きくてもよい。
【0019】
前記容量結合部が形成された前記絶縁基材に、折り目が形成され、前記絶縁基材は、前記折り目を境に前記容量結合部の面積の半分以上が形成された第1領域と、前記無線ICチップが配置された第2領域と、を備えてもよい。
【0020】
前記絶縁基材は、前記第2領域と同じ面積で前記第2領域と連続する第3領域と、前記第3領域と連続する第4領域と、を備え、前記第2領域と前記第3領域との境、および、前記第3領域と前記第4領域との境の前記絶縁基材にそれぞれ別の折り目が形成されていてもよい。
【0021】
前記アンテナパターンと、前記アンテナパターンに装着された前記無線ICチップとが配置されている側の前記絶縁基材に貼られた両面テープを備え、前記第2領域と前記第3領域との境の前記折り目で曲げられた前記絶縁基材において前記第2領域と前記第3領域とが貼り合わされ、前記第1領域と前記第4領域との間に配置された台紙に前記第1領域および前記第4領域が貼り付けられていてもよい。
【0022】
前記第2領域は前記第1領域に対して垂直または傾斜関係となるように、前記絶縁基材が前記第1領域と前記第2領域との境の前記折り目で曲げられていてもよい。
【0023】
前記第3領域は前記第4領域に対して垂直または傾斜関係となるように、前記絶縁基材が前記第3領域と前記第4領域との境の前記折り目で曲げられていてもよい。
【0024】
本発明の一態様の物品は、金属面と、前記金属面に取り付けられたRFIDタグと、を備える物品であって、前記RFIDタグは、無線ICチップと、前記無線ICチップと電気的に接続されるアンテナパターンと、前記無線ICチップと前記アンテナパターンとの整合をとる整合回路と、前記アンテナパターンと接続され、前記金属面と容量結合する容量結合部と、前記アンテナパターンおよび前記容量結合部が形成された絶縁基材と、を備え、前記アンテナパターンは、前記整合回路を介して前記無線ICチップと接続される第1アンテナパターンと、一端が前記整合回路を介して前記無線ICチップと接続され、他端が前記容量結合部に接続される第2アンテナパターンと、を有し、前記RFIDタグは、前記第1アンテナパターンと前記容量結合部との間に容量を有する容量部を有し、前記アンテナパターンと前記容量結合部と前記容量部とは、ループ状に接続されている。
【0025】
この態様によれば、金属面からだけではなく、アンテナからも電波を発生するので、通信距離を長くしたRFIDタグが取り付けられた金属面を有する物品を提供することができる。
【0026】
以下、本発明に係るRFIDタグについて、図面を参照しながら説明する。なお、図面において、実質的に同じ機能、構成を有する部材については同一の符号を付して、明細書においてはその説明を省略する場合がある。また、図面は理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示している。
【0027】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものであり、本発明がこの構成に限定されるものではない。また、以下の実施の形態において具体的に示される数値、形状、構成、ステップ、ステップの順序などは、一例を示すものであり、本発明を限定するものではない。以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、全ての実施の形態において、各変形例における構成も同様であり、各変形例に記載した構成をそれぞれ組み合わせてもよい。
【0028】
(実施の形態1)
以下に、本発明の実施の形態1にかかるRFID(Radio-Frequency IDentification)タグおよびRFIDタグが取り付けられた物品について説明する。
図1は、実施の形態1のRFIDタグが取り付けられ物品の斜視図である。
図2は、実施の形態1のRFIDタグの正面図である。図中において、X−Y−Z座標系およびa−b−c座標系は、発明の理解を容易にするものであって、発明を限定するものではない。X軸方向は物品W1の長手方向を示し、Y軸方向は幅方向を示し、Z軸方向は厚さ方向を示している。X、Y、Z方向は互いに直交する。また、a軸方向はRFIDタグの長手方向を示し、b軸方向は高さ方向を示し、c軸方向は厚さ方向を示している。a、b、c方向は互いに直交する。
図1は、例えば、金属ケースなどの物品W1の金属面W1aに取り付けられた状態のRFIDタグ10を示している。
【0029】
RFIDタグ10は、タグ本体である絶縁シート12と、絶縁シート12の裏側(c方向奥側)に形成されたアンテナパターン20と、アンテナパターン20に接続されるRFIC(Radio-Frequency Integrated Circuit)モジュール30と、アンテナパターン20と物品W1の金属面W1aとを容量結合する容量結合部50と、アンテナパターン20とRFICモジュール30との接続部よりも先端側のアンテナパターン20と容量結合部50との間に容量を形成する容量パターン60とを備える。アンテナパターン20、容量結合部50、および、容量パターン60は導体パターンである。導体パターンは、例えば、金属配線であり、銅またはアルミ等により形成される。
【0030】
RFIDタグ10は、絶縁シート12の裏側に、アンテナパターン20、RFICモジュール30、容量結合部50、および、容量パターン60がそれぞれ配置される。さらに、これらの部材が配置された絶縁シート12の裏側に両面テープが貼り付けられる。RFIDタグ10は、両面テープを介して金属面W1aに貼り付けられる。この際、容量結合部50は両面テープを挟んで金属面W1aに対向する。また、RFIDタグ10の上半分は、金属面W1aから上方に突出するように貼り付けられており、RFICモジュール30は、金属面W1aから離れて位置している。このように、RFIDタグ10のRFICモジュール30が配置されている側が金属面W1aから突出していれば、RFIDタグ10を、金属面W1aの鉛直方向に沿って貼り付けてもよい。
【0031】
容量結合部50の面積は、金属面W1aとの容量C2(
図4参照)が充分にとれる大きさである。これにより、金属面W1aに高周波電流が流れるようになり、金属面W1aから電波が放射されるので、金属面W1aが放射素子として機能することで、RFIDタグ10の通信距離を伸ばしている。
【0032】
図2を参照して、絶縁シート12は、樹脂または紙製の絶縁シートであり、例えば、PET(Polyethylene terephthalate)シートである。PETの他にもPEN(Polyethylene naphthalate)シートやポリイミド(polyimide)製のシートでもよい。絶縁シート12は、矩形または略矩形の形状を有しているが、円弧状の辺を有していてもよい。長辺の一方の端辺に沿って容量結合部50が配置され、長辺の他方の端辺に沿って第1アンテナパターン22、第2アンテナパターン24の一部、および、RFICモジュール30が配置されている。
【0033】
アンテナパターン20は、電界放射型アンテナである。アンテナパターン20は、逆L字形状を有する、いわゆる逆L字アンテナである。アンテナパターン20は、一端が開放端で他端がRFICモジュール30と接続される第1アンテナパターン22と、一端がRFICモジュール30と接続され他端が容量結合部50と接続する第2アンテナパターン24を有する。
【0034】
第1アンテナパターン22は、RFICモジュール30と接続されるランド部22aと、ランド部22aから延びる帯状部22bとを有する。ランド部22aおよび帯状部22bは、絶縁シート12の端辺に沿って配置されている。
【0035】
第2アンテナパターン24は、RFICモジュール30と接続されるランド部24aと、ランド部24aから延びる帯状部24bと、帯状部24bの延長上に導体パターンが繰り返し折り曲げられたミアンダパターン部24cと、ミアンダパターン部24cから延びて容量結合部50と接続する接続部24dと、を有する。
【0036】
ランド部24aおよび帯状部24bは、絶縁シート12の端辺に沿って配置されている。帯状部24bと容量結合部50との距離Dは、例えば、3mm以上である。また
図2に示すようにRFIDタグ10は、
図1のX方向に横長のタグ形状をしており容量結合部50が金属面W1aに対し横長形状になっている。この容量結合部50には、帯状部24bと接続部60b間を高周波電流が流れるので、帯状部24bと接続部60b間の距離が離れることで高周波電流の位相差が発生し、金属面W1aに容量結合による高周波電流が励起しやすくなる。これにより金属面W1aとの結合が強くなり、金属面W1aとのエネルギー伝達しやすくなることで、RFIDタグ10の通信距離を伸ばしている。
【0037】
図3は、RFICモジュール30の分解斜視図である。
図4は、物品W1の金属面W1aに取り付けられた状態におけるRFIDタグ10の等価回路図である。
【0038】
図3に示すように、本実施の形態1の場合、RFICモジュール30は、3層からなる多層基板で構成されている。具体的には、RFICモジュール30は、ポリイミドや液晶ポリマなどの樹脂材料から作製されて可撓性を備える絶縁シート32A、32B、および32Cを積層して構成されている。なお、
図3は、
図2に示すRFICモジュール30を裏返して分解した状態を示している。
【0039】
RFICモジュール30は、RFICチップ34と、複数のインダクタンス素子36A、36B、36C、および36Dと、外部接続端子38、40とを有する。本実施の形態1の場合、インダクタンス素子36A〜36Dと外部接続端子38、40は、絶縁シート32A〜32C上に形成され、銅などの導電材料から作製された導体パターンから構成されている。
【0040】
RFICチップ34は、絶縁シート32C上の長手方向(a軸方向)の中央部に実装されている。RFICチップ34は、シリコン等の半導体を素材とする半導体基板に各種の素子を内蔵した構造を有する。また、RFICチップ34は、第1入出力端子34aと第2入出力端子34bとを備える。さらに、
図4に示すように、RFICチップ34は、RFICチップ34自身が持つ自己容量である内部容量(キャパシタンス)C1を有する。
【0041】
図3に示すように、インダクタンス素子(第1インダクタンス素子)36Aは、絶縁シート32Cの長手方向(a軸方向)の一方側で、絶縁シート32C上に渦巻きコイル状に設けられた導体パターンから構成されている。また、
図4に示すように、インダクタンス素子36Aは、インダクタンスL1を備える。インダクタンス素子36Aの一端(コイル外側の端)には、RFICチップ34の第1入出力端子34aに接続されるランド36Aaが設けられている。なお、他端(コイル中心側の端)にも、ランド36Abが設けられている。
【0042】
図3に示すように、インダクタンス素子(第2インダクタンス素子)36Bは、絶縁シート32Cの長手方向(a軸方向)の他方側で、絶縁シート32C上に渦巻きコイル状に設けられた導体パターンから構成されている。また、
図4に示すように、インダクタンス素子36Bは、インダクタンスL2を備える。インダクタンス素子36Aの一端(コイル外側の端)には、RFICチップ34の第2入出力端子34bに接続されるランド36Baが設けられている。なお、他端(コイル中心側の端)にも、ランド36Bbが設けられている。
【0043】
図3に示すように、インダクタンス素子(第3インダクタンス素子)36Cは、絶縁シート32Bの長手方向(a軸方向)の一方側で、絶縁シート32B上に渦巻きコイル状に設けられた導体パターンから構成されている。また、インダクタンス素子36Cは、積層方向(c軸方向)にインダクタンス素子36Aに対して対向している。さらに、
図4に示すように、インダクタンス素子36Cは、インダクタンスL3を備える。インダクタンス素子36Cの一端(コイル中心側の端)には、ランド36Caが設けられている。このランド36Caは、絶縁シート32Bを貫通するスルーホール導体などの層間接続導体42を介して、絶縁シート32C上のインダクタンス素子36Aのランド36Abに接続されている。
【0044】
図3に示すように、インダクタンス素子(第4インダクタンス素子)36Dは、絶縁シート32Bの長手方向(a軸方向)の他方側で、絶縁シート32B上に渦巻きコイル状に設けられた導体パターンから構成されている。また、インダクタンス素子36Dは、積層方向(c軸方向)にインダクタンス素子36Bに対して対向している。さらに、
図4に示すように、インダクタンス素子36Dは、インダクタンスL4を備える。インダクタンス素子36Dの一端(コイル中心側の端)には、ランド36Daが設けられている。このランド36Daは、絶縁シート32Bを貫通するスルーホール導体などの層間接続導体44を介して、絶縁シート32C上のインダクタンス素子36Bのランド36Bbに接続されている。
【0045】
なお、絶縁シート32B上のインダクタンス素子36C、36Dは、1つの導体パターンとして一体化されている。また、絶縁シート32Bには、絶縁シート32C上に実装されたRFICチップ34が収容されている貫通穴32Baが形成されている。
【0046】
図3に示すように、外部接続端子38、40は、絶縁シート32A上に設けられた導体パターンから構成されている。また、外部接続端子38、40は、絶縁シート32Aの長手方向(a軸方向)に対向している。
【0047】
一方の外部接続端子38は、絶縁シート32Aを貫通するスルーホール導体などの層間接続導体46を介して、絶縁シート32B上のインダクタンス素子36Cのランド36Caに接続されている。
【0048】
他方の外部接続端子40は、絶縁シート32Aを貫通するスルーホール導体などの層間接続導体48を介して、絶縁シート32B上のインダクタンス素子36Dのランド36Daに接続されている。
【0049】
一方の外部接続端子38は、アンテナパターン20の第1アンテナパターン22におけるランド部22aに、例えば、はんだなどを介して接続される。同様に、他方の外部接続端子40は、第2アンテナパターン24におけるランド部24aに、例えば、はんだなどを介して接続される。
【0050】
なお、RFICチップ34は、半導体基板で構成されている。また、RFICチップ34は、インダクタンス素子36A、36Bの間と、インダクタンス素子36C、36Dの間に存在する。このRFICチップ34がシールドとして機能することにより、絶縁シート32C上に設けられた渦巻きコイル状のインダクタンス素子36A、36Bの間での磁界結合および容量結合が抑制される。同様に、絶縁シート32B上に設けられた渦巻きコイル状のインダクタンス素子36C、36Dの間での磁界結合および容量結合が抑制される。その結果、通信信号の通過帯域が狭くなることが抑制される。
【0051】
図4に示すように、容量C1(RFICチップ34の内部容量)とインダクタンスL1〜L4(4つのインダクタンス素子のインダクタンス)により、RFICチップ34とアンテナパターン20との間のインピーダンスの整合をとる整合回路35が構成されている。インダクタンスL5は、第2アンテナパターン24のインダクタンス成分を示している。
【0052】
また、
図4は、第2アンテナパターン24と接続される容量結合部50が、物品W1の金属面W1aに対して容量的に接続している状態を示している。例えば、厚さtの絶縁性両面テープを介して容量結合部50が金属面W1aに取り付けられることにより、容量結合部50と金属面W1aとの間に容量C2が形成されている状態を示している。また電界放射型のアンテナとするため、
図4のインダクタンスL5と容量C3の回路で、直列共振回路を構成している。直列共振とは、共振器のインピーダンスがゼロ(実際にはインダクタンスなどの抵抗成分が残るので1Ω以下)となる共振であり、
図4のRFICモジュール30の外部接続端子38、40間に、容量C1(RFICチップ34の内部容量)を残した状態でインピーダンスを測定する場合、特性インピーダンスがほぼゼロオームとなる共振である。
【0053】
また、第1アンテナパターン22と容量結合部50から延びる容量パターン60との間に容量C3が形成されている。容量C3により、アンテナパターン20の共振周波数f0を高周波数側にシフトすることができる。これにより、アンテナパターン20の長さが、通信周波数の4分の1波長(λ/4)よりも短くても、通信することができる。
【0054】
次に、RFIDタグ10の製造方法について
図5を参照して説明する。
図5は、RFIDタグの製造手順を示すフローチャートである。
【0055】
ステップS1において、絶縁シート12上にアンテナパターン20、容量結合部50、容量パターン60を例えば、印刷によりパターン形成する。ステップS2では、第1アンテナパターン22のランド部22aおよび第2アンテナパターン24のランド部24aにRFICモジュール30を実装する。ステップS3では、絶縁シート12のアンテナパターン20が形成された側に両面テープの一方の面を貼り付ける。これにより、RFICモジュール30が両面テープに固定される。ユーザは、アンテナパターン20が物品W1から突出するように、かつ、容量結合部50が物品W1の金属面W1aに対向するように両面テープの他方の面を金属面W1aに貼り付ける。これにより、RFIDタグ10が電界放射型アンテナとして機能し、さらに、金属面W1aを放射体として機能することができる。
【0056】
以上より、実施の形態1のRFIDタグ10は、物品W1の金属面W1aに取り付けられるRFIDタグ10であって、RFICチップ34と、RFICチップ34と電気的に接続され、電界放射型のアンテナパターン20と、RFICチップ34とアンテナパターン20との整合をとる整合回路35とを備える。また、RFIDタグ10は、アンテナパターン20と接続され、金属面W1aと容量結合する容量結合部50と、アンテナパターン20および容量結合部50が形成された絶縁シート12と、を備える。アンテナパターン20は、整合回路35を介してRFICチップ34と接続される第1アンテナパターン22と、一端が整合回路35を介してRFICチップ34と接続され、他端が容量結合部50に接続される第2アンテナパターン24と、を有する。RFIDタグ10は、第1アンテナパターン22と容量結合部50との間に容量を有する容量パターン60を有する。
【0057】
これにより、直列共振パターンを構成することができ、アンテナパターン20から電界を放射することができる。電界放射アンテナは、遠方にまで電波を伝送できるので、RFIDタグ10は、単体でも数cm〜数十cmの通信距離がある。また、アンテナパターン20と容量結合部50と容量パターン60とは、ループ状に接続されている。したがって、ループアンテナとして、ループ中心を通るように磁界を発生させることができる。直列共振により励起された高周波電流が容量結合部50により容量結合された金属面W1aに流れることで、金属面W1aからも電界を放射する事が可能となり、放射素子として機能することで、金属面W1aからも電界を放射することができる。このように、アンテナパターン20および金属面W1aの両方から電界を放射することができるので、RFIDタグ10の通信距離を長くすることができる。RFICチップ34と容量結合部50とは、それぞれ間隔を置いて配置され、整合回路35と容量結合部50とは、それぞれ間隔を置いて配置されている。容量パターン60による容量C3と第2アンテナパターン24のインダクタンスL5とが直列に接続されている。
【0058】
また、逆L字アンテナのアンテナパターン20において、金属面W1aから離れた先端側に設けられたランド部22a、24aを給電点としてRFICモジュール30が配置されている。RFICモジュール30内のインダクタンスL1〜L4および容量C1が金属面W1aから離れることで、整合性能が安定する。また、RFICモジュール30を金属面W1aから離れて配置することで、RFIDタグ10を金属面W1aに貼付ける場合の位置ずれによるRFICモジュール30の共振周波数の変化を低減することができる。これはRFICモジュール30が開磁路のインダクタンスL1〜L4であるので、金属面W1aにRFICモジュール30のインダクタンス値が変化することによる。
【0059】
また、RFICチップ34および整合回路35と容量結合部50とは、絶縁シート12の対向する端辺に沿ってそれぞれ配置されている。RFICチップ34および整合回路35は、容量結合部50と対向して配置されているので、金属面W1aに貼り付けられる容量結合部50からRFICチップ34および整合回路35を離れて配置することができる。したがって、容量C1およびインダクタンスL1〜L4が金属面W1aに影響されるのを低減することができる。
【0060】
また、容量パターン60と容量結合部50とは、絶縁シート12の対向する端辺に沿ってそれぞれ配置されている。容量パターン60が、容量結合部50と対向して配置されているので、容量パターン60と第1アンテナパターン22との容量C3が、容量結合部50が貼り付けられる金属面W1aからの距離を確保することができる。したがって、容量C3が金属面W1aに影響されるのを低減することができる。
【0061】
第2アンテナパターン24は、絶縁シート12の一方の端辺に平行な長辺と絶縁シート12の他方の端辺に平行な短辺とが繰り返されて構成されるミアンダパターン部24cを有する。ミアンダパターン部24cを有することで、第2アンテナパターンのパターン長を確保することができる。この結果、RFIDタグ10を小型化することができる。
【0062】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2のRFIDタグ70について
図6を参照して説明する。
図6は、実施の形態2のRFIDタグ70の構成を示す図である。
【0063】
実施の形態2のRFIDタグ70は、実施の形態1のRFIDタグ10に、折り曲げ用の折り目72aが絶縁シート12および容量結合部50に形成されている。なお、実施の形態2におけるRFIDタグ70は、以下に記載した事項以外の構成は、実施の形態1のRFIDタグ10と共通である。
【0064】
折り目72aは、ミシン目、溝、Vノッチまたはプレス溝である。折り目72aは、絶縁シート12の端辺と平行に形成されている。ユーザは予め形成された折り目72に沿って絶縁シート12を折り曲げることで、金属面W1aと対向する容量結合部50とRFICモジュール30との間隔および距離Dを折り曲げ方によって変化するのを防止することができる。このように、折り目72が形成されていると斜めに折られるのを防止することができ、折り曲げを原因とする性能バラツキを低減することができる。
【0065】
また、実施の形態2におけるRFIDタグ70は、実施の形態1における第2アンテナパターン24の接続部24eが第2アンテナパターン24の他の導体パターンの幅よりも幅広である。また、容量パターン60の接続部60cも容量パターン60の他の導体パターンの幅よりも幅広である。これにより、RFIDタグ70を折り曲げる際に、接続部24eおよび接続部60cの導体パターンが割れるのを防止することができ、第2アンテナパターン24および容量パターン60が完全に断線するのを防止することができる。
【0066】
図7は、実施の形態2のRFIDタグ70が物品W1に取り付けられた状態を示す説明図である。第1領域Ar1は、物品W1の金属面W1bに対向して貼り付けられる。第2領域Ar2は、第1領域Ar1に対して、垂直または傾斜関係となるように曲げられている。ここで、実施の形態における傾斜関係とは、垂直方向(b方向)から、45度までの範囲の傾き関係である。これにより、金属面W1bに対して平行に磁界が形成される。さらに、金属面W1bに対して垂直に電界が形成され、この電界ループにより磁界が誘起され、この連鎖により電磁界分布が広がる。このようにして、金属面W1bを放射板として機能させることができる。
【0067】
以上のように、実施の形態2によれば、絶縁シート12および容量結合部50に折り目72aが形成されているので、絶縁シート12を折り目72aに沿って折り曲げやすい。また、絶縁シート12の剛性が強ければ、折り曲げられた状態を維持することができる。また、実施の形態1において、
図1のX方向の正方向および負方向はアンテナのNull点となる。このNull点のあるRFIDタグを金属面W1aに貼りつけた場合、このRFIDタグのNull点の方向からは、RFIDタグの読み取り距離が非常に短くなるか、読み取れなくなっている。しかし実施の形態2のように第2アンテナパターン24を折り曲げて第1領域Ar1と第2領域Ar2は垂直または傾斜関係となるようにすることで、上記のNull点がほぼ無くなることが実験により確認できた。このNull点の無いRFIDタグを金属面W1aに貼ることで、金属面W1aの上面方向はもちろん、どの縁端方向からでもRFIDタグの読み取りが可能となる金属対応タグを構成することができる。
【0068】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3のRFIDタグ80について
図8を参照して説明する。
図8は、実施の形態3のRFIDタグ80の構成を示す図である。実施の形態3のRFIDタグ80は、実施の形態2のRFIDタグ80の絶縁シート12に、第2領域の上方にさらに延びた領域を有する。なお、実施の形態3のRFIDタグ80は、以下に記載した事項以外の構成は、実施の形態2のRFIDタグ70と共通である。
【0069】
実施の形態3のRFIDタグ80は、第2領域Ar2から連続する第3領域Ar3と、第3領域Ar3から連続する第4領域Ar4と、を有する。第2領域Ar2と第3領域Ar3との境には、絶縁シート12に折り目72bが形成されている。折り目72bは、絶縁シート12の端辺と平行である。第3領域Ar3と第4領域Ar4との境には、絶縁シート12に折り目72cが形成されている。折り目72cは、絶縁シート12の端辺と平行である。折り目72b、72cは、折り目72aと同様に、ミシン目、溝、Vノッチまたはプレス溝である。第2領域Ar2と第3領域Ar3とは同じ面積で同じ外形をしているので、折り目72bに沿って折られた際に、両者の外形を一致して貼り合わせることができる。第1領域Ar1と第4領域Ar4とは、同じ面積で同じ外形であるが、異なる面積で異なる外形でもよい。
【0070】
図9は、実施の形態3のRFIDタグ80が物品W1に取り付けられた状態を示す説明図である。第1領域Ar1および第4領域Ar4は、物品W1の金属面W1bに対向して貼り付けられる。第2領域Ar2および第3領域Ar3は、第1領域Ar1および第4領域Ar4に対して、垂直または傾斜関係となるように曲げられている。これにより、金属面W1bを放射板として機能させることができる。
【0071】
図10は、実施の形態3のRFIDタグの出荷時の形態の一例を示す模式平面図である。RFIDタグ80の折り目72bで折り曲げることで、第2領域Ar2と第3領域Ar3とを貼り合わせ、第1領域Ar1と第4領域Ar4との間に台紙82を挟んで貼り合わせる。これにより、ユーザは、絶縁シート12から台紙82を外して、折り目72aに沿って第1領域Ar1を折り曲げ、折り目72cに沿って第4領域Ar4を折り曲げる。このような状態で、物品W1の金属面W1bにRFIDタグ80を貼り付ける。
【0072】
出荷時において、第2領域Ar2と第3領域Ar3とが既に貼り合わされているので、ユーザが、物品W1にRFIDタグ80を貼り付ける際の負担を軽減することができる。なお、RFIDタグ80の出荷形態として、
図8に示されている状態で連続ロール紙上に貼り付けた状態でもよい。
【0073】
次に、
図11を参照して実施の形態3のRFIDタグ80の製造方法を説明する。
図11は、RFIDタグ80の製造手順のフローチャートである。ステップS1〜S3までは、実施の形態1のRFIDタグ10の製造方法と共通しているので、説明を省略する。ステップS4において、両面テープが裏面に貼り付けられたRFIDタグ80の予め定められた箇所に各折り目72a、72b、および、72cが形成される。次に、ステップS5において、第2領域Ar2と第3領域Ar3との折り目72bで折り目が外側に出るように折り曲げて、第2領域Ar2と第3領域Ar3とを貼り合わせる。
【0074】
また、ステップS6では、第1領域Ar1と第4領域Ar4との間に台紙82を挟んでそれぞれの領域を台紙82に貼り合わせる。以上で、RFIDタグ80が製造される。なお、
図8に示す状態でロール紙に貼り付けて出荷する場合は、ステップS4で各折り目72a〜72cを形成した後にロール紙に貼り付けてもよい。
【0075】
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態3のRFIDタグ90について
図12を参照して説明する。
図12は、実施の形態4のRFIDタグ90の構成を示す図である。実施の形態4のRFIDタグ90は、実施の形態3のRFIDタグ80の第1アンテナパターン22が第3領域Ar3にわたって形成されている点で異なる。なお、実施の形態4のRFIDタグ90は、以下に記載した事項以外の構成は、実施の形態3のRFIDタグ80と共通である。
【0076】
実施の形態4のRFIDタグ90は、第2領域Ar2に形成された第1アンテナパターン22のランド部22aから導体パターンが第3領域Ar3に延びて、折り目72bに沿って折り曲げられた際に、容量パターン60と容量C3を発生させる電極22cが第3領域Ar3に形成されている。また、第2領域Ar2に形成された容量パターン60も、折り目72bに沿って折り曲げられた際に、電極22cと対向するように形成された電極60dを有する。第1アンテナパターン22と容量パターン60との容量C3を大きくすることができるので、第2アンテナパターン24のパターン長をより短くすることができ、RFIDタグ90をより小型化することができる。
【0077】
本発明は、上記実施の形態のものに限らず、次のように変形実施することができる。
【0078】
(1)上記実施の形態1において、絶縁シート12を折り曲げることなく、RFIDタグ10を金属面W1aに貼り付けていたが、これに限られない。実施の形態2のように、容量結合部50の長手方向に沿って、容量結合部50上で折り曲げて、金属面W1aに貼り付けてもよい。
【0079】
(2)上記各実施の形態において、第2アンテナパターン24は、ミアンダパターン部24cを有していたがこれに限られない。ミアンダパターン部24cの替わりに、帯状部24bおよび接続部24dをそれぞれ対応する長さの分だけ絶縁シート12のそれぞれの端辺に沿って延ばしてもよい。
【0080】
(3)上記各実施の形態において、物品の平面状の金属面に貼り付けていたが、これに限られない。
図13に示すように、物品W2の曲面状の金属面に貼り付けることもできる。この場合、第1領域Ar1および第4領域Ar4を曲面に沿わして変形して貼り付けることができる。また、第2領域Ar2および第3領域Ar3は変形されないので、予め形成されたアンテナパターン20の形を保持することができる。この結果、アンテナ特性が変化しない。
【0081】
また、RFIDタグ10が貼り付けられる物品は、例えば、プリント基板W3でもよい。この場合、プリント基板W3が有するグランド導体W3aに、RFIDタグ10の容量結合部50を容量結合させる。したがって、グランド導体W3aと対向するように、容量結合部50がプリント基板W3に張り付けられる。プリント基板W3は、プリント配線板(PWB)でもよいし、プリント回路板(PCB)でもよい。
【0082】
(4)上記各実施の形態において、容量結合部50から第1アンテナパターン22の方へ延びる導体パターンを形成することで容量パターン60が配置されていたが、これに限られない。
図14に示すように、RFICモジュール30と接続される第1アンテナパターン22のランド部22dが容量結合部50の方へ延びて形成されることで、ランド部22dと容量結合部50との間で容量C3の容量部を形成してもよい。
【0083】
(5)上記各実施の形態において、アンテナパターン20は、逆L字形状の導体パターンであったがこれに限られない。アンテナパターン20は、逆F字形状の導体パターンであっても、電界放射型アンテナとして機能することができる。
無線IC チップ(34)と、アンテナパターン(20)と、整合回路(35)と、アンテナパターンと接続され、金属面(W1a)と容量結合する容量結合部(50)と、アンテナパターンおよび容量結合部が形成された絶縁基材(12)と、を備え、アンテナパターンは、整合回路を介して無線IC チップと接続される第1アンテナパターン(22)と、一端が整合回路を介して無線IC チップと接続され、他端が容量結合部と接続される第2アンテナパターン(24)と、を有し、RFID タグ(10)は、第1アンテナパターンと容量結合部との間に容量を有する容量部(60a)を有し、前記アンテナパターンと前記容量結合部と前記容量部とは、ループ状に接続されている、RFID タグである。