特許第6590131号(P6590131)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6590131
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】RFIDシステム
(51)【国際特許分類】
   G06K 7/10 20060101AFI20191007BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20191007BHJP
   H01Q 1/50 20060101ALI20191007BHJP
   H04B 1/59 20060101ALI20191007BHJP
   H04B 5/02 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
   G06K7/10 164
   G06K7/10 224
   G06K7/10 264
   G06K19/077 220
   G06K19/077 248
   G06K19/077 276
   G06K19/077 296
   H01Q1/50
   H04B1/59
   H04B5/02
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-536998(P2019-536998)
(86)(22)【出願日】2019年2月20日
(86)【国際出願番号】JP2019006189
【審査請求日】2019年7月5日
(31)【優先権主張番号】特願2018-142807(P2018-142807)
(32)【優先日】2018年7月30日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】越智 達也
【審査官】 境 周一
(56)【参考文献】
【文献】 中国実用新案第202486829(CN,U)
【文献】 国際公開第2018/012427(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0205894(US,A1)
【文献】 国際公開第2018/043012(WO,A1)
【文献】 特開2016−062576(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0211397(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 1/00−21/08
H01Q 1/00−1/52
H04B 1/59
H04B 5/00−5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の内側に金属面を有するラックと、
前記筐体の内側に挿抜方向に挿抜可能に収納されるラック収納機器と、
一対の端子電極を有するRFIC素子と、前記一対の端子電極の一方に接続される放射素子と、前記一対の端子電極の他方に接続される接地導体と、を備えるRFIDタグと、
前記筐体の内側に配線され、前記RFIDタグと無線通信可能なケーブル状のリーダライタアンテナと、
を備えるRFIDシステムであって、
前記ラック収納機器は、前記挿抜方向に対して平行なタグ取付面を有し、
前記RFIDタグは、前記放射素子が前記ラック収納機器から前記挿抜方向に突出するとともに、前記接地導体の少なくとも一部が前記タグ取付面に対向するように取り付けられ
前記筐体には、複数の前記ラック収納機器が前記挿抜方向に対して直交する上下方向に並ぶように収納され、
前記リーダライタアンテナは、
一端部が給電部に接続され、前記一端部から他端部まで延在する第1導体と、前記第1導体に沿って一端部から他端部まで延在する第2導体と、を有するケーブル状本体部と、
前記第1導体の他端部と前記第2導体の他端部とに接続され、前記第1導体のインピーダンスと前記第2導体のインピーダンスとを整合させる整合回路部を有する整合回路基板と、を備え、
前記ケーブル状本体部は、前記筐体の内面に沿って前記上下方向に延在するように配置され、
前記RFIDタグと前記ケーブル状本体部とは、前記筐体の内側において前記挿抜方向の上流側に偏って配置されている、
RFIDシステム。
【請求項2】
前記ラックは、直方体形状の筐体の複数の内面に金属面を有するサーバラックである、請求項1に記載のRFIDシステム。
【請求項3】
前記ケーブル状本体部は、前記挿抜方向及び前記上下方向に対して直交する横方向から見た側面視において、前記RFIDタグの前記放射素子と重なる位置に設けられている、請求項1又は2に記載のRFIDシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFID(Radio-Frequency IDentification)システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のRFIDシステムとして、例えば、特許文献1に記載されたRFIDシステムが知られている。特許文献1には、サーバラック内に収納されるラック収納機器の表面にRFIDタグを取り付け、当該RFIDタグに対向するようにサーバラックに設けられた識別情報読取部によってRFIDタグを読み取るように構成されたRFIDシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−221911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のRFIDシステムにおいては、ラック収納機器の表面が金属などの導電体である場合には、当該導電体が識別情報読取部とRFIDタグとの無線通信を阻害して、RFIDタグを読み取ることできないことが起こり得る。
【0005】
本発明の目的は、ラック収納機器の表面の材質に依存せず、RFIDタグをより確実に読み取ることができるRFIDシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るRFIDシステムは、
筐体の内側に金属面を有するラックと、
前記筐体の内側に挿抜方向に挿抜可能に収納されるラック収納機器と、
一対の端子電極を有するRFIC素子と、前記一対の端子電極の一方に接続される放射素子と、前記一対の端子電極の他方に接続される接地導体と、を備えるRFIDタグと、
前記筐体の内側に配線され、前記RFIDタグと無線通信可能なケーブル状のリーダライタアンテナと、
を備えるRFIDシステムであって、
前記ラック収納機器は、前記挿抜方向に対して平行なタグ取付面を有し、
前記RFIDタグは、前記放射素子が前記ラック収納機器から前記挿抜方向に突出するとともに、前記接地導体の少なくとも一部が前記タグ取付面に対向するように取り付けられるように構成されている。
【0007】
本発明に係るRFIDタグ付きラック収納機器は、
ラックの内側に挿抜方向に挿抜可能に収納されるラック収納機器と、
一対の端子電極を有するRFIC素子と、前記一対の端子電極の一方に接続される放射素子と、前記一対の端子電極の他方に接続される接地導体と、を備えるRFIDタグと、
を備え、
前記ラック収納機器は、前記挿抜方向に対して平行なタグ取付面を有し、
前記RFIDタグは、前記放射素子が前記ラック収納機器から前記挿抜方向に突出するとともに、前記接地導体の少なくとも一部が前記タグ取付面に対向するように取り付けられるように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ラック収納機器の表面の材質に依存せず、RFIDタグをより確実に読み取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係るリーダライタ装置を備えるRFIDシステムの概略構成を示す斜視図である。
図2図1のRFIDシステムの正面図である。
図3図1のRFIDシステムの内部を透過して示す側面図である。
図4】RFIDタグの一例を示す平面図である。
図5】RFIC素子の一例を示す分解斜視図である。
図6A】リーダライタアンテナの一例を示す概略構成図である。
図6B図6Aのリーダライタアンテナが備える整合回路部の概略図である。
図7A図6Aのリーダライタアンテナが備える整合回路部の平面図である。
図7B図7AのA1−A1線断面図である。
図7C図6Aのリーダアンテナが備える整合回路部の等価回路図である。
図8】RFIDタグをラック収納機器の底面に取り付けた変形例を示す正面図である。
図9】RFIDタグをラック収納機器の側面に取り付けた変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一態様に係るRFIDシステムは、
筐体の内側に金属面を有するラックと、
前記筐体の内側に挿抜方向に挿抜可能に収納されるラック収納機器と、
一対の端子電極を有するRFIC素子と、前記一対の端子電極の一方に接続される放射素子と、前記一対の端子電極の他方に接続される接地導体と、を備えるRFIDタグと、
前記筐体の内側に配線され、前記RFIDタグと無線通信可能なケーブル状のリーダライタアンテナと、
を備えるRFIDシステムであって、
前記ラック収納機器は、前記挿抜方向に対して平行なタグ取付面を有し、
前記RFIDタグは、前記放射素子が前記ラック収納機器から前記挿抜方向に突出するとともに、前記接地導体の少なくとも一部が前記タグ取付面に対向するように取り付けられるように構成されている。
【0011】
この構成によれば、タグ取付面が金属などの導電体で構成される場合であっても、当該導電体をブースターアンテナとして利用することができ、アンテナの利得を向上させることができる。すなわち、前記構成によれば、ラック収納機器の表面の材質に依存せず、RFIDタグをより確実に読み取ることができる。
【0012】
なお、前記ラックは、直方体形状の筐体の複数の内面に金属面を有するサーバラックであってもよい。
【0013】
また、前記筐体には、複数の前記ラック収納機器が前記挿抜方向に対して直交する上下方向に並ぶように収納され、前記リーダライタアンテナは、一端部が給電部に接続され、前記一端部から他端部まで延在する第1導体と、前記第1導体に沿って一端部から他端部まで延在する第2導体と、を有するケーブル状本体部と、前記第1導体の他端部と前記第2導体の他端部とに接続され、前記第1導体のインピーダンスと前記第2導体のインピーダンスとを整合させる整合回路部を有する整合回路基板と、を備え、前記ケーブル状本体部は、前記筐体の内面に沿って前記上下方向に延在するように配置されてもよい。この構成によれば、1本のリーダライタアンテナによって複数のラック収納機器のRFIDタグをより効率良く読み取ることができ、リーダライタアンテナの長さをより短くすることができる。
【0014】
また、前記RFIDタグと前記ケーブル状本体部とは、前記筐体の内側において前記挿抜方向の上流側に偏って配置されてもよい。この構成によれば、1本のリーダライタアンテナによって複数のラック収納機器のRFIDタグをより確実に読み取ることができる。
【0015】
また、前記ケーブル状本体部は、前記挿抜方向及び前記上下方向に対して直交する横方向から見た側面視において、前記RFIDタグの前記放射素子と重なる位置に設けられてもよい。この構成によれば、1本のリーダライタアンテナによって複数のラック収納機器のRFIDタグをより確実に読み取ることができる。
【0016】
本発明の一態様に係るRFIDタグ付きラック収納機器は、
ラックの内側に挿抜方向に挿抜可能に収納されるラック収納機器と、
一対の端子電極を有するRFIC素子と、前記一対の端子電極の一方に接続される放射素子と、前記一対の端子電極の他方に接続される接地導体と、を備えるRFIDタグと、
を備え、
前記ラック収納機器は、前記挿抜方向に対して平行なタグ取付面を有し、
前記RFIDタグは、前記放射素子が前記ラック収納機器から前記挿抜方向に突出するとともに、前記接地導体の少なくとも一部が前記タグ取付面に対向するように取り付けられるように構成されている。
【0017】
この構成によれば、タグ取付面が金属などの導電体で構成される場合であっても、当該導電体をブースターアンテナとして利用することができ、アンテナの利得を向上させることができる。すなわち、前記構成によれば、ラック収納機器の表面の材質に依存せず、RFIDタグをより確実に読み取ることができる。
【0018】
以下、実施の形態に係るRFIDシステム及びRFIDタグ付きラック収納機器について、添付図面を参照しながら説明する。なお、図面において実質的に同一の部材については同一の符号を付している。
【0019】
また、以下では、説明の便宜上、通常使用時の状態を想定して「上」、「下」、「横」等の方向を示す用語を用いている。しかしながら、これらの用語は、本発明のRFIDシステム及びRFIDタグ付きラック収納機器の使用状態等を限定することを意味するものではない。
【0020】
(実施の形態)
図1は、本実施形態に係るリーダライタ装置を備えるRFIDシステムの概略構成を示す斜視図である。図2は、図1のRFIDシステムの正面図である。図3は、図1のRFIDシステムの内部を透過して示す側面図である。
【0021】
本実施形態に係るRFIDシステムは、データセンタに設置されるサーバラックの内側に収納される複数のラック収納機器を、RFIDタグを利用して管理するシステムである。このシステムによれば、例えば、ラック収納機器がオフラインであっても、RFIDタグの情報を読み取ることによってラック収納機器の管理を行うことが可能になる。
【0022】
図1図3に示すように、本実施形態に係るRFIDシステム1は、ラックの一例であるサーバラック2と、サーバラック2に収納されるラック収納機器3と、ケーブル状のリーダライタアンテナ4とを備えている。
【0023】
サーバラック2は、外郭となる筐体21の内側に金属面を有している。本実施形態において、サーバラック2は、直方体形状の筐体21の複数の内面に金属面を有している。より具体的には、筐体21は、上側内面21A、下側内面21B、及び左右の内側面21C,21Dが金属で構成されている。なお、本実施形態において、筐体21の前面(図3の右側)及び背面(図3の左側)は、開口面としているが、例えば、開閉可能な扉が設けられてもよい。
【0024】
ラック収納機器3は、サーバラック2の筐体21の内側に挿抜方向Xに挿抜可能に収容される機器である。本実施形態において、筐体21には、複数のラック収納機器3が挿抜方向Xに対して直交する上下方向Zに並ぶように収納される。各ラック収納機器3は、例えば、挿抜方向Xに延在するように設けられた一対のレール(図示せず)に底部を支持される。また、筐体21の左右の内側面21C,21Dには、上下方向Zに延在する金属柱21E,21Fが設けられている。各ラック収納機器3は、ボルトなどの締結部材により金属柱21E,21Fに固定される。互いに上下方向Zに隣接するラック収納機器3の間隔は、例えば5cmである。
【0025】
各ラック収納機器3は、挿抜方向Xに対して平行なタグ取付面3Aを有している。タグ取付面3Aは、金属などの導電体で構成されている。タグ取付面3Aには、RFIDタグ5が挿抜方向Xに対して平行に取り付けられている。RFIDタグ5には、例えば、ラック収納機器3の機器情報や位置情報などが記憶されている。
【0026】
リーダライタアンテナ4は、筐体21の内側に配線され、RFIDタグ5と無線通信可能に構成されている。リーダライタアンテナ4は、ケーブル状本体部41と、ケーブル状本体部41の一端部に接続された通信モジュール42と、ケーブル状本体部41の他端部に接続された整合回路基板43とを備えている。
【0027】
ケーブル状本体部41は、筐体21の内側面21Cに沿って上下方向Zに延在するように配置されている。整合回路基板43は、筐体21の上側内面21Aに取り付けられている。通信モジュール42は、外部通信用アンテナ(図示せず)を備え、ケーブル状本体部41を通じて読み取ったRFIDタグ5の情報を外部装置に送信するとともに、外部装置から受信した情報をケーブル状本体部41を通じてRFIDタグ5に書き込むように構成されている。RFIDタグ5とケーブル状本体部41とは、筐体21の内側において挿抜方向Xの上流側(図3の右側)に偏って配置されている。
【0028】
本実施形態においては、サーバラック2とリーダライタアンテナ4とで、RFIDタグ5と無線通信して、RFIDタグ5に対して情報の読み取り及び書き込みを行う「リーダライタ装置」が構成されている。
【0029】
図4は、RFIDタグ5の一例を示す平面図である。図4に示すように、RFIDタグ5は、一対の端子電極51a,51bを有するRFIC(Radio-Frequency Integrated Circuit)素子51と、一方の端子電極51aに接続される放射素子52と、他方の端子電極51bに接続される接地導体53とを備えている。
【0030】
RFIDタグ5は、図1に示すように、放射素子52がラック収納機器3から挿抜方向Xに突出するとともに、図4にて点線で示すように接地導体53の少なくとも一部がタグ取付面3Aに対向するように取り付けられる。ケーブル状本体部41は、図3に示すように、挿抜方向X及び上下方向Zに対して直交する横方向Yから見た側面視において、RFIDタグ5の放射素子52と重なる位置に設けられている。また、ケーブル状本体部41は、図2に示すように、挿抜方向Xから見た正面視において、RFIDタグ5と重ならない位置に設けられている。
【0031】
図5は、RFIC素子51の一例を示す分解斜視図である。RFIC素子51は、例えば、900MHz帯、すなわち、UHF帯の通信周波数に対応するRFIC素子である。本実施形態において、RFIC素子51は、多層基板51Aと、多層基板51Aに内蔵されたRFICチップ51B及び整合回路51Cを備えている。
【0032】
本実施形態において、多層基板51Aは、積層された3つのシート状の絶縁層51Aa,51Ab,51Acによって構成されている。図5において最上位に位置する絶縁層51Aaの上面には、一対の端子電極51a,51bが互いに間隔を空けて設けられている。
【0033】
図5において中位に位置する絶縁層51Abには、一方の端子電極51aに対向する位置に第1コイルパターン51Caが設けられるとともに、他方の端子電極51bに対向する位置に第2コイルパターン51Cbが設けられている。第1コイルパターン51Caの一端部は層間接続導体を介して一方の端子電極51aに接続され、第1コイルパターン51Caの他端部は第2コイルパターン51Cbの他端部に接続されている。第2コイルパターン51Cbの一端部は、層間接続導体を介して他方の端子電極51bに接続されている。第1コイルパターン51Caと第2コイルパターン51Cbとの間には、RFICチップ51Bが挿入される貫通穴H1が設けられている。
【0034】
図5において最下位に位置する絶縁層51Acには、第1コイルパターン51Caに対向する位置に第3コイルパターン51Ccが設けられるとともに、第2コイルパターン51Cbに対向する位置に第4コイルパターン51Cdが設けられている。第3コイルパターン51Ccと第4コイルパターン51Cdとの間には、RFICチップ51Bが実装されている。第3コイルパターン51Ccの一端部は層間接続導体を介して第1コイルパターン51Caの一端部に接続され、第3コイルパターン51Ccの他端部はRFICチップ51Bの一方の入出力端子に接続されている。第4コイルパターン51Cdの一端部は層間接続導体を介して第2コイルパターン51Cbの一端部に接続され、第4コイルパターン51Cdの他端部はRFICチップ51Bの他方の入出力端子に接続されている。
【0035】
本実施形態において、整合回路51Cは、第1コイルパターン51Caと、第2コイルパターン51Cbと、第3コイルパターン51Ccと、第4コイルパターン51Cdと、各層間接続導体とで構成されている。整合回路51Cは、RFICチップ51Bと放射素子52及び接地導体53との間でインピーダンスを整合するように機能する。RFICチップ51Bは、アンテナとして機能する放射素子52及び接地導体53が外部から高周波信号を受信すると、その受信によって誘起された電流の供給を受けて起動する。また、起動したRFICチップ51Bは、高周波信号を生成し、その生成信号を放射素子52及び接地導体53を介して電波として外部に出力する。
【0036】
放射素子52と接地導体53とは、図4に示すように、それぞれ一部がミアンダ状に形成されている。これにより、全体の電気長を保ちながら長手方向の長さを圧縮することができる。また、本実施形態において、接地導体53の端部53aとは、それぞれラック収納機器3のタグ取付面3Aと容量結合可能に構成されている。放射素子52は、接地導体53よりも電気長が長くなるように設計されている。なお、本発明はこれに限定されず、接地導体53が、放射素子52よりも電気長が長くなるように設計されてもよい。
【0037】
RFIC素子51と、放射素子52と、接地導体53とは、基材54上に設けられている。基材54は、矩形状の薄板であって、一様な厚さを有している。本実施形態において、放射素子52の端部52aと接地導体53の端部53aとは、いずれもラック収納機器3のタグ取付面3Aと基材54を介して容量結合可能に構成されている。基材54は、例えば、比誘電率が10以下の低誘電率を有する誘電体材料で構成されている。基材54は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、フッ素系樹脂、ウレタン系樹脂、紙などの可撓性を有する誘電体材料で構成されている。
【0038】
図6Aは、リーダライタアンテナ4の一例を示す概略構成図である。図6Bは、図6Aのリーダライタアンテナ4が備える整合回路部の概略図である。図7Aは、図6Aのリーダライタアンテナ4が備える整合回路部の平面図である。図7Bは、図7AのA1−A1線断面図である。図7Cは、図6Aのリーダライタアンテナ4が備える整合回路部の等価回路図である。
【0039】
リーダライタアンテナ4は、図6Aに示すように、同軸ケーブルで構成されるケーブル状本体部41を備えている。ケーブル状本体部41は、第1導体の一例である内部導体44と、内部導体44に沿って設けられた第2導体の一例である外部導体45とを有している。内部導体44は、一端部が給電部46に接続され、一端部から他端部まで延在する線状の導体である。給電部46は、図1図3に示す通信モジュール42に内蔵されている。外部導体45は、絶縁体(図示せず)を介して内部導体44を覆うように、内部導体44に沿って一端部から他端部まで延在する管状の導体である。
【0040】
また、リーダライタアンテナ4は、図6Aに示すように、ケーブル状本体部41の一端部に設けられた整合回路部47と、ケーブル状本体部41の一端部から離れた位置で外部導体45の外周面に沿うように設けられた磁性体48とを有している。
【0041】
整合回路部47は、図6Bに示すように、内部導体44の他端部と外部導体45の他端部とに接続され、内部導体44のインピーダンスと外部導体45のインピーダンスとを整合させるように機能するものである。
【0042】
整合回路部47は、図7A及び図7Bに示すように、内部導体44に接続された平面状の第1導体層471と、ビアホール導体472と、「電極パターン」の一例である平面状の第2導体層473とを有している。第1導体層471と第2導体層473とは、外部導体45の外径よりも広い幅を有し、内部導体44の延在方向に沿って延在している。また、第1導体層471と第2導体層473とは、絶縁体474を介して互いに対向するように設けられ、2つのビアホール導体472によって互いに接続されている。第2導体層473は、第1導体層471よりもケーブル状本体部41の延在方向の長さが長く形成されている。これにより、第2導体層473の一部と外部導体45とが、絶縁体474を介して互いに対向するように設けられている。なお、図7Bでは、ビアホール導体472及び内部導体44の両方を断面で図示するために、図7AのA1−A1線で示すように、便宜上、切断面を途中でずらしている。
【0043】
内部導体44は、第1導体層471に電気的に接続されている。第1導体層471は、2つのビアホール導体472を介して第2導体層473に電気的に接続されている。第2導体層473は、絶縁体474を介するキャパシタ成分475を有する容量結合によって外部導体45に接続されている。すなわち、図7Cに示すように、内部導体44と外部導体45とは、キャパシタ成分475とインダクタ成分476とを有する整合回路部47を介して接続されている。
【0044】
磁性体48は、例えば、フェライトで構成されている。磁性体48は、図6Aに示すように、RFIDタグ5に対して無線通信を行う放射部61と、RFIDタグ5に対して通信しない非放射部62とにリーダライタアンテナ4を区切るように機能する。すなわち、放射部61は、ケーブル状本体部41の一端部から磁性体48まで延在する。非放射部62は、磁性体48からケーブル状本体部41の他端部まで延在する。非放射部62は、シールド部材として機能する。ケーブル状本体部41の他端部は、給電部46に接続されている。また、外部導体45は、電気的に安定するように、グランドに接続されている。
【0045】
なお、リーダライタアンテナ4は、外部導体45に生じる定在波を利用したアンテナであって、いわゆる誘導磁界を利用するループアンテナではない。また、リーダライタアンテナ4の検知領域(電波エリア)は、約1m以内に限られる。また、リーダライタアンテナ4の近傍に金属体や磁性体があっても、周波数特性は大きく変わらない。また、リーダライタアンテナ4は、屈曲させても屈曲部分間での干渉等が生じない。このため、リーダライタアンテナ4は、2次元的又は3次元的に比較的自由に配置することが可能である。リーダライタアンテナ4はケーブル状に形成されているので、リーダライタアンテナ4の長さに応じて、リーダライタアンテナ4の検知範囲を調整することが可能になる。
【0046】
また、整合回路部47は、図1図3に示す整合回路基板43に設けられている。整合回路基板43は、図7Bに示すように、絶縁体474を介して外部導体45と対向する対向面OSに形成された電極パターンである第2導体層473を有している。整合回路基板43は、第2導体層473が金属面である筐体21の上側内面21Aに対して交差するように、上側内面21Aに直接又はスペーサを介して間接的に取り付けられている。例えば、整合回路基板43は、第2導体層473が上側内面21Aに対して成す角度が45度以上135度以下の範囲となる上側内面21Aに取り付けられている。本実施形態において、整合回路基板43は、第2導体層473が上側内面21Aに対して直交又は略直交するように、上側内面21Aに取り付けられている。
【0047】
また、第2導体層473は、整合回路基板43が取り付けられる上側内面21Aとは異なる金属面に対して、予め決められた距離以上離れて設けられている。例えば、筐体21の前面(図3の右側)に金属製の扉が設けられる場合、第2導体層473は、当該扉に対して5cm以上離れて設けられる。
【0048】
本実施形態によれば、第2導体層473が金属面である上側内面21Aに対して交差するように整合回路基板43を上側内面21Aに取り付けているので、第2導体層473と上側内面21Aとの対向面積をより小さくすることができる。これにより、第2導体層473と上側内面21Aとの間に容量成分が生じることを抑えることができる。その結果、リーダライタアンテナ4のアンテナ特性の低下を抑えることができる。
【0049】
また、本実施形態によれば、第2導体層473が上側内面21Aに対して直交又は略直交するように整合回路基板43を上側内面21Aに取り付けているので、第2導体層473と上側内面21Aとの間に容量成分が生じることを一層抑えることができる。その結果、リーダライタアンテナ4のアンテナ特性の低下を一層抑えることができる。
【0050】
また、本実施形態によれば、ケーブル状本体部41が筐体21の内側面21Cに沿って上下方向Zに延在するように配置され、整合回路基板43が筐体21の上側内面21A又は下側内面21Bに取り付けられている。この構成によれば、筐体21内に配置された複数のRFIDタグ5を1本のリーダライタアンテナ4で効率良く読み取ることができ、リーダライタアンテナ4の長さをより短くすることができる。
【0051】
また、本実施形態によれば、整合回路基板43が取り付けられる上側内面21Aとは異なる金属面に対して、第2導体層473が予め決められた距離以上離れて設けられているので、複数の金属面から受ける影響を抑えることができる。その結果、リーダライタアンテナ4のアンテナ特性の低下を一層抑えることができる。
【0052】
また、本実施形態によれば、RFIDタグ5は、放射素子52がラック収納機器3から挿抜方向Xに突出するとともに、接地導体53の少なくとも一部がタグ取付面3Aに対向するように取り付けられている。この構成によれば、タグ取付面3Aが金属などの導電体で構成される場合であっても、当該導電体をブースターアンテナとして利用することができ、アンテナの利得を向上させることができる。すなわち、前記構成によれば、ラック収納機器3の表面の材質に依存せず、RFIDタグ5をより確実に読み取ることができる。また、通常インターフェースが設けられるラック収納機器3の前面又は背面には、RFIDタグ5が取り付けられないので、インターフェースの視認性の低下を抑えることができるとともに、インターフェースへの配線の接続を阻害しない。
【0053】
また、本実施形態によれば、RFIDタグ5とケーブル状本体部41とが、筐体21の内側において挿抜方向Xの上流側に偏って配置されている。この構成によれば、1本のリーダライタアンテナ4によって複数のラック収納機器3のRFIDタグ5をより確実に読み取ることができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、ケーブル状本体部41は、挿抜方向X及び上下方向Zに対して直交する横方向から見た側面視において、RFIDタグ5の放射素子52と重なる位置に設けられている。この構成によれば、1本のリーダライタアンテナ4によって複数のラック収納機器3のRFIDタグ5をより確実に読み取ることができる。
【0055】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、前記では、整合回路基板43は、筐体21の上側内面21Aに取り付けられるものとしたが、本発明はこれに限定されない。整合回路基板43は、筐体21の下側内面21Bに取り付けられてもよい。また、整合回路基板43は、筐体21の内側面21C,21Dに取り付けられてもよい。また、整合回路基板43は、筐体21の内面に取り付けられることに限定されず、筐体21内に設けられた金属面に取り付けられてもよい。例えば、サーバラック2が金属製の間仕切りを有する場合、整合回路基板43は、当該間仕切りに取り付けられてもよい。なお、「金属面」は、平板状の面に限定されるものではなく、例えば、メッシュ状の面であってもよい。
【0056】
また、前記では、整合回路基板43は、図1に示すように、長手方向が上側内面21Aに沿うように取り付けられるものとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、整合回路基板43は、短手方向が上側内面21Aに沿うように取り付けられてもよい。
【0057】
また、前記では、複数のラック収納機器3が上下方向Zに並べられるものとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、複数のラック収納機器3は、横方向Yに並べられてもよい。この場合、ケーブル状本体部41は、横方向Yに延在するように筐体21の内面に取り付けられてもよい。
【0058】
また、前記では、ラック収納機器3のタグ取付面3Aは、金属などの導電体で構成されるものとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、タグ取付面3Aは、金属などの導電体を樹脂でコーティングした面であってもよい。なお、タグ取付面3Aが導電体で構成され、当該タグ取付面3AにRFIDタグ5を直接取り付けた場合には、アンテナの特性が向上し、RFIDタグ5の情報の読み取り精度を高くすることができる。
【0059】
また、前記では、図1図3に示すように、ラック収納機器3のタグ取付面3Aがラック収納機器3の上面であるものとしたが、本発明はこれに限定されない。ラック収納機器3のタグ取付面3Aは、挿抜方向Xに対して平行な面であればよい。例えば、図8に示すように、タグ取付面3Aは、ラック収納機器3の底面であり、当該底面にRFIDタグ5が取り付けられてもよい。また、例えば、図9に示すように、タグ取付面3Aは、ラック収納機器3の側面であり、当該側面にRFIDタグ5が取り付けられてもよい。なお、この場合、ケーブル状本体部41がRFIDタグ5の延在方向の延長線上に位置すると、ケーブル状本体部41がRFIDタグ5の情報を読み取りにくくなる。このため、挿抜方向Xから見た正面視において、ケーブル状本体部41は、RFIDタグ5と重ならない位置に設けることが好ましい。
【0060】
また、前記では、リーダライタアンテナ4のケーブル状本体部41が同軸ケーブルで構成されるものとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、ケーブル状本体部41は、帯状の絶縁体と、当該絶縁体の一方の主面に沿って設けられた帯状の第1導体と、当該絶縁体の他方の主面に沿って設けられた帯状の第2導体とを備えるフラットケーブルで構成されてもよい。
【0061】
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施の形態に関連して充分に記載されているが、この技術に熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、ラック収納機器の表面の材質に依存せず、RFIDタグをより確実に読み取ることができるので、例えば、データセンタに設置されるサーバラックの内側に収納される複数のラック収納機器を、RFIDタグを利用して管理するRFIDシステムに有用である。
【符号の説明】
【0063】
1 RFIDシステム
2 サーバラック
3 ラック収納機器
3A タグ取付面
4 リーダライタアンテナ
5 RFIDタグ
21 筐体
21A 上側内面
21B 下側内面
21C,21D 内側面
21E,21F 金属柱
41 ケーブル状本体部
42 通信モジュール
43 整合回路基板
44 内部導体(第1導体)
45 外部導体(第2導体)
46 給電部
47 整合回路部
48 磁性体
51 RFIC素子
51a,51b 端子電極
51A 多層基板
51Aa,51Ab,51Ac 絶縁層
51B RFICチップ
51C 整合回路
51Ca 第1コイルパターン
51Cb 第2コイルパターン
51Cc 第3コイルパターン
51Cd 第4コイルパターン
52 放射素子
52a 端部
53 接地導体
53a 端部
54 基材
61 放射部
62 非放射部
471 第1導体層
472 ビアホール導体
473 第2導体層(電極パターン)
474 絶縁体
475 キャパシタ成分
476 インダクタ成分
H1 貫通穴
【要約】
本発明に係るRFIDシステムは、筐体の内側に金属面を有するラックと、筐体の内側に挿抜方向に挿抜可能に収納されるラック収納機器と、一対の端子電極を有するRFIC素子と、一対の端子電極の一方に接続される放射素子と、一対の端子電極の他方に接続される接地導体と、を備えるRFIDタグと、筐体の内側に配線され、RFIDタグと無線通信可能なケーブル状のリーダライタアンテナとを備えるRFIDシステムである。ラック収納機器は、挿抜方向に対して平行なタグ取付面を有する。RFIDタグは、放射素子がラック収納機器から挿抜方向に突出するとともに、接地導体の少なくとも一部がタグ取付面に対向するように取り付けられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8
図9