【実施例1】
【0018】
図1(a)、(b)は、本発明に係る2軸ヒンジを用いた電子機器の1例としてのノートパソコン1を示す。このノートパソコン1は、キーボード部2aを設けた第1筐体2と、ディスプレイ部3aを設けた第2筐体3の各後部の左右個所を、本発明に係る一対の2軸ヒンジ4と6で相対的に360°に渡って開閉可能に連結させて成るもので、第2筐体3に設けたディスプレイ部3aは、手指によるタッチ操作可能な機能を有するタブレット型である。また、第1筐体2と第2筐体3には、その後部にそれぞれ2軸ヒンジ4と6を収容させる取付凹部2b、2bと3b、3bが設けられている。
【0019】
2軸ヒンジ4と6の構成は、左右対称である点を除けば、両者共に同じ構成であるので、以下、その一方の指示記号4のもののみを説明し、他方の指示記号6で示したものの説明は省略する。勿論、動作に支障がない場合には、指示記号6で示した2軸ヒンジの構成を別なものとしても良い。
【0020】
また、以下に説明する2軸ヒンジ4の2軸ヒンジ部4aや操作手段の1例である沈込み手段40、さらには作動機構50は図示したものに限定されない。
【0021】
図2〜
図14は、本発明に係る2軸ヒンジ4の一実施例を示す。まず、この2軸ヒンジ4の2軸ヒンジ部4aの部分から説明する。とくに
図2〜
図5において、指示記号10で示したものは、2軸ヒンジ部4aの第1ヒンジシャフトである。この第1ヒンジシャフト10は、とくに
図4A、Bと
図5に示したように、その一端部側から断面扁平形状を呈し、その表面に取付孔10b、10bを設けた取付板部10aと、この取付板部10aに続いて設けられたフランジ部10cと、このフランジ部10cに続いて設けられた第1円形軸部10dと、この第1円形軸部10dに続いて設けられた当該第1円形軸部10dより小径の第2円形軸部10eと、この第2円形軸部10eに続いて設けられたところのその両側を削除することにより、断面略楕円形状を呈するように加工して成る第1変形軸部10fと、この第1変形軸部10fに続いて設けられたところの当該第1変形軸部10fよりもやや薄い同じく断面略楕円形状を呈している第2変形軸部10gと、この第2変形軸部10gに続いて設けられた雄ネジ部10hとから構成されている。
【0022】
図2と
図4A、Bに示したように、第1ヒンジシャフト10の取付板部10aには、第1取付プレート11が取り付けられており、この第1取付プレート11の取付板部10aへの取付方法は、第1ヒンジシャフト10の取付孔10b、10bと第1取付プレート11の取付孔11a、11aを通したフランジ付きの取付ピン10i、10iの各端部をかしめることによって取り付けられている。そして、第1取付プレート11は、とくに
図2と
図4A、Bに示したように、当該第1取付プレート11に設けた取付孔11b、11b・・と、第1取付プレート11に連結ピン11g、11gを用いて取り付けた補助取付プレート11fの取付孔11h、11hを介して、図示してない取付ネジを用いて第1筐体2の上面側へ取り付けられる構成である。尚、取付ピン10i、10iはナット付きの取付ネジとしてもよい。
【0023】
次に、同じくとくに
図4A、Bと
図6に示したように、指示記号12で示したものは、第1ヒンジシャフト10に対して上方へ平行に配置された第2ヒンジシャフトであり、この第2ヒンジシャフト12は、とくに
図6に示したように、その一端部側から断面扁平形状を呈し、その表面に取付孔12b、12bを設けた取付板部12aと、この取付板部12aに続いて設けられたフランジ部12cと、このフランジ部12cに続いて設けられた円形軸部12dと、この円形軸部12dに続いて設けられたところの断面略楕円形状を呈して成る第1変形軸部12eと、この第1変形軸部12eに続いて設けられた第1変形軸部12eよりもやや薄い第2変形軸部12fと、この第2変形軸部12fに続いて設けられた雄ネジ部12gとから構成されている。
【0024】
とくに
図3と
図4Aに示したように、第1ヒンジシャフト10と第2ヒンジシャフト12は、所定間隔を空けて対置させたところの、後述する
第1の連結手段を兼ねる同期回転手段14のギアサポート部材15に設けた第1A軸受孔15c、第1B軸受孔15dと、
第2の連結手段を兼ねるフリクショントルク発生手段30のフリクションプレート31に設けた第2A軸受孔31a、第2B軸受孔31bと、
第3の連結手段を兼ねる吸込み手段35のカムプレート36に設けた第3A軸受孔36a、第3B軸受孔36b内を回転可能に挿通することにより、互いに平行状態で軸支されている。
【0025】
図2乃至
図4A、Bと
図6に示したように、取付板部12aには、第2取付プレート13が取り付けられており、この第2取付プレート13の取付板部12aへの取付方法は、第2ヒンジシャフト12の取付孔12b、12bと第2取付プレート13の取付孔13a、13aを通したフランジ付きの取付ピン12h、12hの端部をかしめることによって取り付けられている。そして、第2取付プレート13は、とくに
図2乃至
図4Aに示したように、当該第2取付プレート13に設けた取付孔13b、13b・・を介して、図示してない取付ネジを用いて第2筐体3の下面側へ取り付けられる構成である。尚、取付ピン12h、12hはこれをナット付きの取付ネジとしてもよい。
【0026】
次に、2軸ヒンジ部4aの第1ヒンジシャフト10と第2ヒンジシャフト12の間に設けられた回転制御手段5について説明する。この回転制御手段5は、第1回転制御手段5aと第2回転制御手段5bから成り、第1回転制御手段5aと第2回転制御手段5bは、同期回転手段14、弾性手段21、フリクショントルク発生手段30、及び吸込み手段35から構成されている。さらに詳しくは、第1回転制御手段5aは、同期回転手段14、第1弾性手段21a、第1フリクショントルク発生手段30a、及び第1吸込み手段35aから構成され、第2回転制御手段5bは、同期回転手段14、第2弾性手段21b、第2フリクショントルク発生手段30b、及び第2吸込み手段35bから構成されている。
【0027】
そこでまず、同期回転手段14から説明する。この同期回転手段14は、とくに
図3と
図4Aに示したように、下部と上部に一側方に向けて設けた下部突出部15aと上部突出部15bにそれぞれ第1A軸受孔15cと第1B軸受孔15dを有し、この各第1A軸受孔15cと第1B軸受孔15dに、第1ヒンジシャフト10の第2円形軸部10eと第2ヒンジシャフト12の円形軸部12dをそれぞれ回転可能に挿通させて成る
第1の連結手段を兼ねるギアサポート部材15と、このギアサポート部材15の下部突出部15aの上側と上部突出部15bの下側に設けた第1軸支溝15eと第2軸支溝15fに、軸心を共通にして設けた下部支軸20aと上部支軸20bを回転可能に挿入支持させたところのその下部と上部に下部傘歯部20cと上部傘歯部20dを有する中間ギア20と、この中間ギア20の下部傘歯部20cと噛合させ、第1ヒンジシャフト10の第1変形軸部10fに、その中心部軸方向に設けた変形挿通孔17aを挿通係合させた傘歯車から成る第1ギア17と、中間ギア20の上部傘歯部20dと噛合させ、第2ヒンジシャフト12の第1変形軸部12eにその中心部軸方向に設けた変形挿通孔18aを挿通係合させた同じく傘歯車から成る第2ギア18とで構成されている。尚、第1ギア17と第2ギア18は構成が同じであるので、
図9においては、第1ギア17のみを示し、第2ギア18の指示記号は括弧書きで表示してある。また、ギアサポート部材15の略中央部に設けられた楕円形状の孔は、後述する作動機構50のカム部材51用の係止長孔15gである。さらに、
図4Aにおいて、指示記号16a、16bで示されたものは、ギアサポート部材15用のワッシャーである。
【0028】
次に、2軸ヒンジ部4aの各第1ヒンジシャフト10と第2ヒンジシャフト12の各先端部側に設けられている弾性手段21について説明する。この弾性手段21は、とくに
図4A、Bに示したように、第1ヒンジシャフト10側の第1弾性手段21aと第2ヒンジシャフト12側の第2弾性手段21bから成る。第1弾性手段21aは、その各円形挿通孔22aに第1ヒンジシャフト10の第2変形軸部10gを挿通させつつ重ねて設けた複数の皿バネ、或いはスプリングワッシャーなどの第1弾性部材22と、この第1弾性部材22に隣接して設けたところのその変形挿通孔23aに第2変形軸部10gを挿通係合させて設けた第1押えワッシャー23と、この第1押えワッシャー23に隣接して第1ヒンジシャフト10の雄ネジ部10hにその雌ネジ孔24aをネジ着させて設けた第1締付ナット24とで構成されている。
【0029】
第2弾性手段21bは、とくに
図4Aに示したように、その各円形挿通孔25aに第2ヒンジシャフト12の第2変形軸部12fを挿通させつつ重ねて設けた複数枚の皿バネ、或いはスプリングワッシャーなどの第2弾性部材25と、この第2弾性部材25に隣接して設けたところのその変形挿通孔26aに第2変形軸部12fを挿通係合させて設けた第2押えワッシャー26と、この第2押えワッシャー26に隣接して第2ヒンジシャフト12の雄ネジ部12gに雌ネジ孔27aをネジ着させて設けた第2締付ナット27とで構成されている。
【0030】
この弾性手段21は、後述するように、フリクショントルク発生手段30と、吸込み手段35に圧接力を作用させ、第1筐体2と第2筐体3の開閉操作時の第1ヒンジシャフト10と第2ヒンジシャフト12の回転時に、フリクショントルク創出機能と吸込み機能を発揮させるものである。
【0031】
次に、フリクショントルク発生手段30について説明する。とくに
図3と
図4Aと
図10に示したように、このフリクショントルク発生手段30は、同期回転手段14に隣接して設けられており、下側の第1フリクショントルク発生手段30aと上側の第2フリクショントルク発生手段30bとから構成されている。このうち第1フリクショントルク発生手段30aは、とくに
図3と
図4Aに示したように、その下部側と上部側に第1ヒンジシャフト10の第1変形軸部10fと第2ヒンジシャフト12の第1変形軸部12eをそれぞれ回転可能に挿通させた第2A軸受孔31aと第2B軸受孔31bを有するフリクションプレート31の下部側を挟んで両側に配置され、第1ヒンジシャフト10の第1変形軸部10fをその第1変形挿通孔32aと第2変形挿通孔32bに挿通係合させて設けた第1Aフリクションワッシャー32A及び第1Bフリクションワッシャー32Bと、上述した第1弾性手段21aとで構成されている。
【0032】
このうち第1Aフリクションワッシャー32Aは、フリクションプレート31の下部側の一側部と同期回転手段14の第1ギア17との間に挟まれており、第1Bフリクションワッシャー32Bは、フリクションプレート31の下部側の他側部と、吸込み手段35のカムプレート部材36の下部側の一側面との間に挟まれている。そして、これらの第1Aフリクションワッシャー32Aと第1Bフリクションワッシャー32Bは、第1ヒンジシャフト10が回転すると第1ギア17と共に回転し、第1Aフリクションワッシャー32Aは、フリクションプレート31の片側との間、第1Bフリクションワッシャー32Bは、フリクションプレート31のもう一方の側と、カムプレート部材36の下側の片側との間において、フリクショントルクが創出される構成である。このようにフリクショントルクが創出される第1Aフリクションワッシャー32A及び第1Bフリクションワッシャー32Bとフリクションプレート31の各両側、及びカムプレート部材36の片側には、それぞれナナコメ加工部32c、32d・31c、31d・32e、32f・36gが設けられており、耐久性の向上が図られている。尚、第1Aフリクションワッシャー32Aが第1ギア17と接する側のナナコメ加工部32cは省略することができる。
【0033】
第2フリクショントルク発生手段30bは、とくに
図3と
図4Aと
図10に示したように、その下部側と上部側に第1ヒンジシャフト10の第1変形軸部10fと第2ヒンジシャフト12の第1変形軸部12eをそれぞれ回転可能に挿通させた第2A軸受孔31aと第2B軸受孔31bを有するフリクションプレート31の上部側を挟んで両側に配置され、第2ヒンジシャフト12の第1変形軸部12eをその第3変形挿通孔33aと第4変形挿通孔33bに挿通係合させて設けた第2Aフリクションワッシャー33A及び第2Bフリクションワッシャー33Bと、上述した第2弾性手段21bとで構成されている。このうち第2Aフリクションワッシャー33Aは、フリクションプレート31の上部側の一側部と同期回転手段14の第2ギア18との間に挟まれており、第2Bフリクションワッシャー33Bは、フリクションプレート31の上部側の他側部と、吸込み手段35のカムプレート部材36の上部側の一側面との間に挟まれている。そして、第2ヒンジシャフト12が回転すると第2ギア18と共に回転し、第2Aフリクションワッシャー33Aは、フリクションプレート31の片側との間、第2Bフリクションワッシャー33Bは、フリクションプレート31のもう一方の側と、カムプレート部材36の上部片側との間において、フリクショントルクが創出される構成である。
【0034】
以上のようにフリクショントルクが創出される第2Aフリクションワッシャー33Aとと第2Bフリクションワッシャー33B及びフリクションプレート31の各両側、及びカムプレート部材36の上部一方の側には、それぞれナナコメ加工部33c、33d・31e、31f・33e、33f・36hが設けられており、耐久性の向上が図られている。尚、第2Aフリクションワッシャー33Aが第2ギア18と接する側のナナコメ加工部33cは省略することができる。
【0035】
次に、フリクショントルク発生手段30に隣接して弾性手段21との間に吸込み手段35が設けられている。この吸込み手段35は、下側の第1ヒンジシャフト10側の第1吸込み手段35aと、上側の第2ヒンジシャフト12側の第2吸込み手段35bとから成る。まず、第1吸込み手段35aは、とくに
図12に示したように、
第3の連結手段を兼ねるカムプレート部材36の下部側の第3A軸受孔36a側の一側部側に設けた略円弧状の第1Aカム凹部36c及び第1Bカム凹部36dと、その変形挿通孔37aへ第1ヒンジシャフト10の第1変形軸部10fを挿通係合させることによって拘束されると共に、その側面の外側に対向させて設けた大小の第1Aカム凸部37b及び第1Bカム凸部37cを、第1Aカム凹部36c及び第1Bカム凹部36dと対向させて設けた第1カムフォロワー37と、この第1カムフォロワー37に接して当該第1カムフォロワー37をカムプレート部材36に圧接させる第1弾性手段21aとで構成されている。
【0036】
第2吸込み手段35bは、とくに
図12に示したように、
第3の連結手段を兼ねるカムプレート部材36の上部側の第3B軸受孔36b側の一側部外側に設けた略円弧状の第2Aカム凹部36e及び第2Bカム凹部36fと、その変形挿通孔38aを第2ヒンジシャフト12の第2変形軸部12fを挿通係合させることによって拘束されると共に、その側面の外側に設けた大小の第2Aカム凸部38b及び第2Bカム凸部38cを、第2Aカム凹部36e及び第2Bカム凹部36fと対向させて設けた第2カムフォロワー38と、この第2カムフォロワー38に接して当該第2カムフォロワー38をカムプレート部材36に圧接させる第2弾性手段21bとで構成されている。尚、第1カムフォロワー37と第2カムフォロワー38は、それぞれ第1ヒンジシャフト10と第2ヒンジシャフト12に回転を拘束されているが、軸方向にスライド可能である。
尚、カムプレート部材36は、その一側面の下部側と上部側の第3A軸受孔36aと第3B軸受孔36bの回りにナナコメ加工部36g、36hが設けられることにより、フリクショントルク発生手段30の第2のフリクションプレートを兼ねている。
【0037】
尚、2軸ヒンジ部4aには、同期回転手段14から弾性手段21に至る回転制御手段5が収容されるヒンジケース7を取り付けることが推奨される。このヒンジケース7は、とくに
図2と
図4A、B及び
図14に示したように、断面長孔形状を示した筒状のものであり、その内部にその中央部を横切って取付筒部7aを設けた取付部7bが設けられている。このヒンジケース7には、同期回転手段14と、フリクショントルク発生手段30と、吸込み手段35と、弾性手段21が収容され、図示してない取付ネジで取付部7bに設けた取付筒部7aを介して、カムプレート部材36に設けた雌ネジ孔36iに取り付けられる構成である。そして、下部収容部7c側には、同期回転手段14と、第1フリクショントルク発生手段30aと、第1吸込み手段35aと、第1弾性手段21aが収容され、上部収容部7d側には、同期回転手段14と、第2フリクショントルク発生手段30bと、第2吸込み手段35bと、第2弾性手段21bが収容されている。
【0038】
そして、ヒンジケース7は、とくに
図2に示したように、本発明に係る2軸ヒンジ4で連結されたノートパソコン1の第1筐体2と第2筐体3を閉じた際には、当該第1筐体2と第2筐体3に設けた取付凹部2bと3b内に収容されている。また、もう一方の2軸ヒンジ6のヒンジケース8も同じ構成である。
【0039】
次に、操作手段の1例であるキーボード部2aの沈込み手段40の構成について説明する。この沈込み手段40は、
図17A〜Eに示したように、第1筐体2上に設けたキーボード部収容部41内に設けたベースプレート42と、このベースプレート42上に所定間隔を空けて設けられたところのキーボード部2aを保持するキーボード部保持プレート46と、ベースプレート42とキーボード部保持プレート46との間に設けたカム機構43と、キーボード部2aをキーボード部収容部41内に押圧する弾性部材47とで構成されている。カム機構43は、ベースプレート42上にスライド可能に設けられたスライド部材44と、このスライド部材44に所定間隔を空けて取り付けられ、キーボード部保持プレート46を保持する複数のカム部材45、45・・・とで構成され、各カム部材45、45・・・は傾斜部45a、45a・・・を有し、この傾斜部45a、45a・・・の上端部に平坦なキーボード部保持プレート46を載置保持するキーボード載置部45b、45b・・・を有している。キーボード載置部45b、45b・・・はさらに係止溝部45c、45c・・・を有し、キーボード部保持プレート46に設けた長孔部46a、46a・・・とそのスライド位置により、係合解離するように構成されている。尚、このカム機構43は1例であって、実施例のものに限定されない。リンク機構によっても良い。
【0040】
次に、沈込み手段40に対する作動機構について説明する。この作動機構50は、実施例では、略中央部に第1ヒンジシャフト10を回転可能に挿通させる取付孔51aと、この取付孔51aを挟んで一端部側にギアサポート部材15に設けた係止長孔15gへ挿入係止される軸部51bと、他端部側の外周に設けた円弧状を呈したカム部51cとを有し、第1筐体2と第2筐体3の開閉操作に伴い第1ヒンジシャフト10を支点に回転動作するカム部材51と、とくに
図16に示したように、基部52aと、この基部52aの一端部側から突設されたカム部52bと、基部52aの他端部側から所定間隔を空けて突設された一対のガイド筒部52c、52cを有し、第1ヒンジシャフト10に取り付けられたところの第1取付プレート11に一段下げて設けた装着プレート部11cに所定間隔を空けた設けた各一対の取付片11d、11d・11d、11dの間にスライド可能に設けられた作動部材52と、この作動部材52のスライド動作をガイドするスライドガイド部材53と、各取付片11d、11d・11d、11dに設けた取付孔11e、11e・11e、11eに取り付けられて当該各取付片11d、11d・11d、11d、の間に軸架され、作動部材52のガイド筒体52c、52c内を貫通して設けられた一対のガイドピン54、54と、このガイドピン54、54に環巻きされ、作動部材52をカム部材51の方向へスライド付勢させるために、各取付片11d、11d・11d、11dの一端部側と作動部材52のとの間に弾設した一対の圧縮コイルスプリングから成る弾性部材55、55とで構成され、作動部材52に設けた連結部52dには沈込み手段40を動作させる連結部材57が取り付けられている。
【0041】
尚、指示記号56、56で示したものは、ガイドピン54、54用のワッシャーである。スライドガイド部材53は、同じくとくに
図16に示したように、一端部側に第1ヒンジシャフト10の第1円形軸部10dを挿通させる取付孔53aを有し、他端部側を折り曲げてガイド孔53bを設け、さらに、上下位置にガイド片53c、53cを設けて成り、ガイド片53c、53cの間に作動部材52を挟んでガイドする構成である。
【0042】
次に、上記した本発明に係る2軸ヒンジ4の動作について以下に説明する。まず、本発明に係る2軸ヒンジ部4aの部分から説明する。2軸ヒンジ部4aは、電子機器の1例であるタブレット型のノートパソコン1を構成する第1筐体2と第2筐体3を相対的に開閉させるものである。その特徴は、第1筐体2側へ第1取付プレート11を介して取り付けられる第1ヒンジシャフト10と、第2筐体3側へ第2取付プレート13を介して取り付けられる第2ヒンジシャフト12とを、それぞれ
第1の連結手段を兼ねる同期回転手段14のギアサポート部材15と、
第2の連結手段を兼ねるフリクションプレート31と、
第3の連結手段を兼ねるカムプレート部材36と、で平行状態に連結して互いに回転可能に設けたものである。第1筐体2と第2筐体3のどちらか一方を他方に対して開閉させると、同期回転手段14によって他方のものも同時に開かれることから、開閉操作が短時間で済みかつ容易となる。
【0043】
即ち、第1筐体2に対して第2筐体3を
図1(b)に示した閉成状態から、例えば第1筐体2を片手に持って、もう一方の手で第2筐体3を時計方向へ開くと、まず、第1ヒンジシャフト10が時計方向へ回転し、同時に第1ギア17が同一方向の時計方向へ回転する。この第1ギア17が時計方向へ回転すると、共に回転する第1ギア17の第1傘歯部17bが噛み合っている中間ギア20の下部傘歯部20cを介して当該中間ギア20が反時計方向へ回転し、この中間ギア20の上部傘歯部20dとその第2傘歯部18bを噛み合わせている第2ヒンジシャフト12に取り付けた第2ギア18が反時計方向へ回転することから、第2ヒンジシャフト12が第1ヒンジシャフト10とは反対方向へ回転することになり、第1筐体2は第2筐体3と共にその反対方向へ回転して開閉されることになる。したがって、第1ヒンジシャフト10が回転している間は、選択的回転規制手段によって第2ヒンジシャフト12の回転が阻止されている従来の2軸ヒンジ部と比べて、第1筐体2と第2筐体3の開閉操作が容易となり、短時間で開閉操作を行うことができることから、操作性の向上を図ることができるものである。
【0044】
次に、吸込み手段35による吸込み動作は、第1筐体2と第2筐体3がともに360°まで開かれる際に、その少し手前から動作し、第1筐体2と第2筐体3は自動的に開かれ、その全開状態を維持することになる。この第1吸込み手段35aと第2吸込み手段35bの動作は、第1筐体2と第2筐体3が共に動作して、0°まで閉じられる時になされる。そして、この吸込み手段35によって、第1筐体2と第2筐体3の閉成状態において、第1筐体2と第2筐体3の間にラッチ機構を設けなくとも、自然に第1筐体2及び第2筐体3が開いてしまうことなく閉成状態を保持できるものである。
【0045】
さらに、この状態、つまり第1筐体2と第2筐体3が同期回転手段14を介して同期して互いに反対方向へ開かれ、合計で360°まで開かれた状態において、第1筐体2と第2筐体3は、その閉成状態の時とは逆の方向において互いに重なり合うことになる。
【0046】
以上の第1筐体2と第2筐体3の相対的開閉操作中において、フリクショントルク発生手段30の第1フリクショントルク発生手段30aと第2フリクショントルク発生手段30bは、第1ヒンジシャフト10と第2ヒンジシャフト12の相互の回転動作時にそれぞれ同時に動作する。そして、第1フリクショントルク発生手段30aは、第1Aフリクションワッシャー32A及び第1Bフリクションワッシャー32Bとで、フリクションプレート31の下部両側と
第3の連結手段を兼ねるカムプレート部材36の下部片側との間にフリクショントルクを発生させ、第1筐体2と第2筐体3の開閉動作時の任意の角度における安定停止作用を行うことができるものである。
【0047】
第2フリクショントルク発生手段30bは、第2Aフリクションワッシャー33A及び第2Bフリクションワッシャー33Bとで、フリクションプレート31の上部両側と
第3の連結手段を兼ねるカムプレート部材36の上部片側との間にフリクショントルクを発生させ、第1筐体2と第2筐体3の開閉動作時の任意の角度における安定停止作用を行うことができるものである。
【0048】
さらに、吸込み手段35は、上述したように、その第1吸込み手段35aと第2吸込み手段35bが、開閉角度0°と360°の時にその少し手前から動作し、第1カムフォロワー37の第1Aカム凸部37b及び第1Bカム凸部37cが、
第3の連結手段を兼ねるカムプレート部材36の第1Aカム凹部36c及び第1Bカム凹部36dへ落ち込み、第2カムフォロワー38の第2Aカム凸部38b及び第2Bカム凸部38cが、
第3の連結手段を兼ねるカムプレート部材36の第2Aカム凹部36e及び第2Bカム凹部36fに落ち込むことにより、吸込み機能を発揮し、第1筐体2と第2筐体3を自動的に開成方向及び閉成方向へ回転付勢させるものである。
【0049】
そして、本願発明に係る2軸ヒンジ4は、ノートパソコン1をそれ本来の用い方で用いることができた上で、第1筐体2を第2筐体3に対して2軸ヒンジ部4aを介して互いに反対方向へ同期して開閉させて、略L時形状にしたり、山形状にしたり、重ね合わせて平板状としたりして、第2筐体3を操作者側に向けてタブレットとして種々多様な用い方をすることができるものである。
【0050】
次に、第1筐体と第2筐体が0°の閉成状態から相対的に360°まで開閉される際の、操作手段の1例であるキーボード部2aの沈込み手段40と、この沈込み手段40を動作させる作動機構50の動きについて、図面に基づいて説明する。
【0051】
図17Aに示したように、第1筐体2と第2筐体3が閉じられた開閉角度0°の時には、ヒンジケース7は直立状態にあり、作動機構50の作動部材52は、そのカム部52bがカム部材51のカム部51cに押され、弾性部材55、55(一方のみ表示)の弾力に抗して図中右側に移動しており、沈込み手段40のカム機構43を介してキーボード部保持プレート46は、キーボード部2aの上部を第1筐体2の上面より突出させた状態を保っている。この状態を示したのが
図17Aである。
【0052】
この閉成状態から、第1筐体2と第2筐体3を相対的に90°まで開くと、
図17Bに示したように、ヒンジケース7は直立状態から45°反時計方向へ倒れた状態となり、カム部材51はそれにつれて反時計方向へ回転するが、この状態においても作動部材52のカム部52bは、カム部材51のカム部51cに当接した状態であり、スライド部材44は移動しないことから、キーボード部保持プレート46は第1筐体2と第2筐体3の閉成状態の時と同じ位置を保っている。
【0053】
この作動部材52が同じ位置を保っている状態は、
図17Cに示したように第1筐体2と第2筐体3が180°まで開かれた状態まで保たれる。この180°を超えて第1筐体2と第2筐体3が開かれると、作動部材52のカム部52bとカム部材51のカム部51cが解離し、作動部材52は弾性部材55、55(一方のみ表示)の弾力により図中左方向へ移動し始めるので、沈込み手段40のカム機構43を構成するスライド部材44が、連結部材57によって引っ張られて図中左方向へ移動することになり、カム部材45、45・・・を介してキーボード部保持プレート46がキーボード部2aと共に、キーボード部収容部41内に沈み始める。
図17Dは、第1筐体2と第2筐体3が270°まで開かれた状態を示しており、図面に示したように、キーボード部保持プレート46は、キーボード部2aと共に第1筐体2のキーボード部収容部41内に沈み込むことになる。第1筐体2と第2筐体3をさらに開いて行き360°になって第1筐体2と第2筐体3が反対方向に重なり合った状態を
図17Eに示してあるが、キーボード部保持プレート46はキーボード部2aと共に第1筐体2の中に沈み込んだままである。したがって、第1筐体2のキーボード部2a側が台上に置かれても、キーボード部2aの各種キーが誤作動するのを防止することができるものである。作動部材52の基部52aは、この作動部材52の左方向への移動幅を制限するためにあり、このことにより作動部材52は、270°の開成時に移動した幅以上に移動しない。
【0054】
次に、第1筐体2と第2筐体3を360°の開成位置から180°の開成角度まで戻すと、その手前でカム部材51が今度は時計方向へ回転し、180°に至る手前でこのカム部材51のカム部51cと作動部材52のカム部52bが互いに当接し、作動部材52を図中右方向へ押すことから、連結部材57を介してスライド部材44が今度は右方向へ移動し、キーボード部保持プレート46は、カム部材45、45・・・を介して上昇し、キーボード部2aを第1筐体2の上方へ移動させ、その上面から上部を突出させることになる。このキーボード部2aの第1筐体2からの突出状態は、第1筐体2と第2筐体3が相対的に0°まで閉じられるまで維持されることになる。
【0055】
尚、2軸ヒンジ部のその他の実施例としては、図示は省略するが、第1ギア17と第2ギア18を平歯車にして、互いに中間ギアを介さずに直接噛み合うように構成することができる。また、中間ギアを介して第1ギア17と第2ギア18が同期して互いに反対方向へ回転するように構成することもできる。さらに、弾性手段21に用いている第1弾性部材22及び第2弾性部材25は、これらを圧縮コイルスプリング或は弾性を備えたゴムを始めとする合成樹脂製のものなどに代えることが可能である。また、ヒンジケース7や8は、これがなくともとくに2軸ヒンジ4や6の機能に支障は生じないが、このヒンジケース7や8があると、2軸ヒンジ4や6をノートパソコン1へ取り付けた際に、同期回転手段14、フリクショントルク発生手段30、及び吸込み手段35等が外部へ露出することがないので、外観上すっきりとしたものになるという利点がある。
【0056】
また、本発明に係る動作機構で動作させることができるものは、キーボード部2aの沈込み手段40に限らず、第1筐体2に設けたゴム足の沈込み手段、その他の操作手段とすることができることは説明した。