特許第6590136号(P6590136)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6590136
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】DC/DCコンバータ及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20191007BHJP
   A61N 5/00 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
   H02M3/155 C
   H02M3/155 F
   A61N5/00
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-526842(P2014-526842)
(86)(22)【出願日】2013年7月8日
(86)【国際出願番号】JP2013068600
(87)【国際公開番号】WO2014017279
(87)【国際公開日】20140130
【審査請求日】2016年6月3日
【審判番号】不服2018-5683(P2018-5683/J1)
【審判請求日】2018年4月24日
(31)【優先権主張番号】特願2012-162164(P2012-162164)
(32)【優先日】2012年7月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303018827
【氏名又は名称】Tianma Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(72)【発明者】
【氏名】大賀 功一
【合議体】
【審判長】 酒井 朋広
【審判官】 井上 信一
【審判官】 佐々木 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−170730(JP,A)
【文献】 実開昭63−55785(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子に一端が接続されたインダクタと、
前記インダクタの他端と接地との間に接続されたスイッチング素子と、
前記インダクタの他端と出力端子との間に接続されたダイオードと、
前記出力端子と接地との間に接続されたコンデンサと、
前記出力端子と接地との間に接続され、出力電圧を分圧したフィードバック電圧を出力するフィードバック回路と、
前記フィードバック電圧が入力され、前記フィードバック電圧に応じた周波数で前記スイッチング素子をON/OFF制御する発振回路と、
外部磁界を検出し、検出した磁界が予め定めた閾値を超えるか否かに応じて異なる信号を出力する検出回路と、
前記出力電圧が一定の状態にて、検出した磁界が前記閾値を超えることを示す前記信号が前記検出回路から出力されると、電圧出力の停止を抑制する制御回路と、を備える、
ことを特徴とするDC/DCコンバータ。
【請求項2】
前記制御回路は、前記検出回路が前記閾値を超える磁界を検出したときに出力される信号が入力されたら、前記スイッチング素子をON/OFF制御する周波数を高くする制御を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項3】
外部磁界が無い又は非常に小さい場合の前記スイッチング素子を駆動する周波数をf0、前記スイッチング素子のターンON時間をTon、ターンOFF時間をToffとした場合、
前記制御回路は、前記スイッチング素子をON/OFF制御する周波数fmが、
f0<fm<1/(Ton+Toff)
を満たすように制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項4】
前記制御回路は、第2のスイッチング素子と、前記第2のスイッチング素子がON又はOFFの時に前記インダクタに直列に接続される第2のインダクタと、前記第2のスイッチング素子をON/OFF制御するトランジスタと、を含み、前記検出回路が前記閾値を超える磁界を検出したときに出力される信号が前記トランジスタに入力されたら、前記インダクタと前記第2のインダクタとを直列に接続して、インダクタンス値を高くする制御を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項5】
外部磁界が無い又は非常に小さい場合の前記インダクタのインダクタンス値をL0、外部磁界が前記閾値を超える場合の前記インダクタのインダクタンス値と前記第2のインダクタのインダクタンス値との総和値をLmとした場合、前記第2のインダクタは、L0とLmとが略等しくなるように設定される、
ことを特徴とする請求項4に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項6】
前記制御回路は、前記フィードバック電圧の出力経路に一端が接続される抵抗と、前記抵抗の他端と接地との間に接続されるトランジスタと、を含み、前記検出回路が前記閾値を超える磁界を検出したときに出力される信号が前記トランジスタに入力されたら、前記抵抗を無効にして、前記DC/DCコンバータの出力電圧を低くする制御を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項7】
前記フィードバック回路の分圧用の抵抗をR1、R2、前記制御回路の抵抗をR3、外部磁界が無い又は非常に小さい場合の前記DC/DCコンバータの出力電圧をVOUT、外部磁界が前記閾値を超える場合の前記DC/DCコンバータの出力電圧をVOUTm、前記フィードバック電圧の設定値をVf/bicとした場合、
VOUT=Vf/bic×(1+(R1×((1/R2)+(1/R3))))
VOUTm=Vf/bic×(1+(R1×(1/R2)))
で表され、
前記制御回路は、
VOUTm<VOUT
を満たすように制御する、
ことを特徴とする請求項6に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一に記載のDC/DCコンバータを備える、
ことを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DC/DCコンバータ及び表示装置に関し、特に、強磁界下で使用されるDC/DCコンバータ及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば医療向けの表示装置において、MRI(Magnetic Resonance Imaging system)等の磁場発生装置が使用されるような環境下に表示装置を設置し、モニタとして用いる場合、表示装置を駆動している電子部品が周辺の磁界変化の影響を受けて誤動作を起こし、想定していなかった動作をすることが考えられる。具体的には、表示装置を駆動するための電源回路に含まれるインダクタは、周囲の磁界の影響を直接的に受けるため、本来期待している動作と異なる動作をし、それが起因となって電源回路を誤動作させる可能性がある。また、集積回路(IC)においても磁場の影響を受ける場合が考えられ、同様に期待している動作と異なる動作をする可能性がある。
【0003】
特に電源回路(DC/DCコンバータ)の回路構成として、昇圧回路や降圧回路に用いられるスイッチング回路がある。このスイッチング回路は、主にインダクタ、電界効果トランジスタ(FET)、整流用のダイオード、平滑用のコンデンサから構成され、入力電圧を変換して入力電圧とは異なる電圧値の出力電圧を生成する。また、DC/DCコンバータには、出力電流が異常に大きくなった場合に、電子部品の発熱・発火等の危険を防止するための過電流防止回路が設けられている。
【0004】
このような構成のDC/DCコンバータを搭載する表示装置を磁界の強力な空間下(強磁界下と呼ぶ。)に置いた場合、インダクタが磁界の影響を受けて磁束飽和の方向へ向かうと電流値が大きくなり、これが過電流防止回路の閾値を超えてしまうとDC/DCコンバータはラッチ動作に入ってしまう。ラッチ動作が働くとDC/DCコンバータは出力を停止し、その結果、表示装置は停止して何も表示しなくなってしまう。つまり、強磁界下に表示装置を置いた場合、周囲の磁界変化により表示装置が突然停止してしまう不具合が生じ、停止した表示装置を再復帰させるための作業が必要となるという問題がある。
【0005】
このような問題を回避する方法として、例えば、下記特許文献1には、交流電源の交流電圧を直流電圧に変換するAC/DCコンバータと、この直流電圧を平滑する平滑コンデンサと、パワートランジスタから構成され、このパワートランジスタをON/OFF制御することにより、平滑された直流電圧を交流電圧に変換するスイッチング回路と、指令電圧と搬送波とを比較し、前記スイッチング回路のパワートランジスタをON/OFF制御する制御信号を出力するPWM回路と、前記交流電源と前記電力変換装置との間に接続される高調波ノイズ抑制用のリアクトルの磁束飽和の是非を判断し、磁束飽和と判断した場合に前記搬送波のスイッチング周波数を変更する比較器と、を備えた電力変換装置が開示されている。この公報には、電動機を可変速駆動するインバーター装置において、高調波ノイズ抑制用のリアクトルの磁気飽和を防ぐため、磁束検出器にて検出した磁束と予め指定していた閾値レベルとを比較し、レベルを超えた場合は、リアクトルとその先に付いている平滑コンデンサで構成されるLC共振周波数を回避するために電源回路のパワートランジスタを制御する発振周波数を減少させ、発振周波数を減少させた後、再度磁束を検出し、先の検出磁束よりも大きい場合には発振周波数を増加させてリアクトルが磁気飽和しない周波数領域に発振周波数を変更することが記載されている。
【0006】
また、下記特許文献2には、送信用信号を増幅する増幅回路を駆動するための電力を生成する電力制御装置であって、前記送信用信号に応じて前記増幅回路から出力されるべき送信信号の単位時間毎の最大電圧値に基づいてPWM信号を生成する生成手段と、選択手段と、インダクタンスの異なるものを含む複数のインダクタを含み、前記複数のインダクタのうち前記選択手段により選択されたインダクタを用いたチョッパ回路により、前記PWM信号に基づいて、前記電力を生成する電力生成手段と、を備え、前記選択手段は前記最大電圧値を反映した値を取得し、当該値と予め設定されている一以上の閾値とを比較し、比較結果に応じて前記電力生成手段にて用いるインダクタを選択する電力制御装置が開示されている。この公報には、昇圧回路において昇圧回路ラインを予め2系統用意しておき、出力電圧値や負荷に応じて昇圧経路(主にインダクタ)を変更することが記載されている。
【0007】
また、下記特許文献3には、リアクトルとスイッチング素子とを備え、前記スイッチング素子の周期的なスイッチング制御によって前記リアクトルに流れる電流量を制御して入力電圧を所定の出力電圧に変換する電圧変換器に用いられる装置であって、前記リアクトルの電流量を検出する電流検出部と、前記スイッチング素子のON又はOFF期間の中心タイミングとは異なるタイミングを含む複数のタイミングでそれぞれ前記電流検出部にて得られる複数の検出値と、前記リアクトルの容量が所定値である場合の前記検出値に関する基準値とに基づいて、前記リアクトルの容量変化を検出する検出制御部と、を備えた装置が開示されている。この公報には、リアクトルの劣化等によりリアクトル電流が増加した場合、その電流を検出し、検出した電流値と正常状態(基準値)との差分を比較して差分があればスイッチをOFFするか、またはSW周期を減少することが記載されている。
【0008】
また、下記特許文献4には、電磁アクチュエータを駆動するアクチュエータ駆動装置において、電源電圧を昇圧する昇圧回路を設け、この昇圧回路の下流側に昇圧後電圧制御手段を設けたアクチュエータ駆動装置が開示されている。この公報には、入力電圧をモニタし、入力電圧が低下した場合に、昇圧部のF/B分圧抵抗値を切り替えて出力電圧を小さくし、入力電圧センサの判定結果によってスイッチをON/OFFすることが記載されている。
【0009】
また、下記特許文献5には、等価的に1つのリアクトルを構成する2分割した2つの主リアクトルと、一方の極を前記主リアクトルの直列接続体の一端に接続し、他方の極を直流電源の一方の電圧端子に直接に接続した主スイッチと、前記主スイッチの両極聞に接続した、スナバダイオードとスナバコンデンサの直列接続体と、前記スナバダイオードとスナバコンデンサとの接続点と、前記2つの主リアクトルの直列接続体の接続点との聞に接続した補助スイッチとを備え、当該補助スイッチは、スナバコンデンサの電圧を零電圧とすることにより主スイッチのターオン時の電圧を零電圧とするチョッパ回路が開示されている。この公報には、各スイッチのON/OFFタイミングに関して、S2をS1よりわずかに早くONさせるソフトスイッチング動作と、S2とS1を同時もしくはS2をS1より遅くONさせる回生動作が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−260963号公報
【特許文献2】特開2009−225592号公報
【特許文献3】特開2010−279150号公報
【特許文献4】特開2005−333768号公報
【特許文献5】WO2006−098376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように、表示装置が強磁界下に置かれた場合において、特許文献1のように、図8(特許文献1の図1)に示す電力変換装置を用いて発振周波数を制御しようとした場合、図9(特許文献1の図5)のフローチャート図では、ステップS3にて発振周波数を減少させる動作になっているため、ステップS3の動作を実行した際に発振周波数が低くなり、ラッチ動作を引き起こすという問題がある。
【0012】
また、特許文献1の構成において、接地コンデンサとノイズ抑制用コモンモードリアクトルによって構成されるLC回路の共振周波数と、負荷を駆動するスイッチング周波数とが近くなる領域へ入ろうとした場合に、共振が起こって増幅されてしまうため、これを回避することを目的として、発振周波数をLC回路の共振周波数を近づけないように制御する必要があり、制御が複雑になるという問題がある。
【0013】
また、図10に示すように、特許文献2では、電源生成ラインを2系統用意しておき、負荷の大きい場合と小さい場合とで電源生成部(コイル、FET、平滑コンデンサ等)を切り替えることで、負荷に応じて電力損失の少なくなる回路を実現しているが、この回路構成では、常に2系統の回路を具備しておく必要があり、回路面積とコストが大幅にかかるという問題がある。
【0014】
また、図11に示すように、特許文献3では、電流値の変動をモニタして、その結果、基準値に差分があると判定した場合にSW制御を開始するが、この動作では、電流値差分を計算・判定している時点において既に電流値が許容値をオーバーしている。そのため、例えば判定している最中に過電流によりDC/DCコンバータが停止する可能性がある。
【0015】
また、図12に示すように、特許文献4では、スイッチ(トランジスタまたはFETのゲート)の先にホール素子の出力部が直接接続されておらず、入力電圧のみモニタしてスイッチのON/OFFを判定する構成となっているため、強磁界下においてはこの従来例のスイッチは動作せず、過電流によりDC/DCコンバータが停止する可能性がある。
【0016】
また、図13に示すように、特許文献5では、スイッチ(トランジスタまたはFETのゲート)の先に抵抗とTrを介してホール素子の出力部が接続されていないため、強磁界下においてはこの従来例のスイッチは動作せず、従来例に記載のターンオン/ターンオフ時のスパイク的な電圧電流変動起因ではなく、定常的な過電流によりDC/DCコンバータが停止する可能性がある。
【0017】
また、別の方法として、例えば表示装置が強磁界下でも磁界の影響を受けないようにシールドをする、あるいは磁性体を含む部品を使用しない等の方法も考えられるが、これらの方法ではコストが大幅にかかってしまうことになる。
【0018】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その主たる目的は、強磁界下に置かれた場合でもDC/DCコンバータがシャットダウンして表示装置が停止することを回避することができるDC/DCコンバータ及び表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するため、本発明は、入力端子に一端が接続されたインダクタと、前記インダクタの他端と接地との間に接続されたスイッチング素子と、前記インダクタの他端と出力端子との間に接続されたダイオードと、前記出力端子と接地との間に接続されたコンデンサと、出力端子と接地との間に接続され、前記出力電圧を分圧したフィードバック電圧を出力するフィードバック回路と、前記フィードバック電圧が入力され、前記フィードバック電圧に応じた周波数で前記スイッチング素子をON/OFF制御する発振回路と、を備えるDC/DCコンバータにおいて、外部磁界を検出し、検出した磁界が予め定めた閾値を超えるか否かに応じて異なる信号を出力する検出回路と、前記信号が入力され、前記信号に応じて前記DC/DCコンバータを制御することにより、強磁界下における前記DC/DCコンバータの過電流を抑制する制御回路と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明のDC/DCコンバータ及び表示装置によれば、強磁界下に置かれた場合でもDC/DCコンバータがシャットダウンして表示装置が停止することを回避することができる。
【0021】
その理由は、DC/DCコンバータに、磁界を検出し、検出した磁界が予め定めた閾値を超えるか否かに応じて異なる信号を出力する強磁界下検出回路と、出力される信号に応じて、スイッチングFETをON/OFF制御する発振周波数を高くしたり、他のインダクタを直列に接続してインダクタンス値を高くしたり、分圧用の抵抗を切り離してF/B電圧を高くしたりして、強磁界下であることを検出した場合にDC/DCコンバータがラッチ動作に入らないように制御する強磁界下ラッチ動作回避回路と、を設けるからである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1の実施例に係る表示装置の全体構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第1の実施例に係るDC/DCコンバータの構成を示すブロック図である。
図3】本発明の第1の実施例に係るDC/DCコンバータにおける発振周波数の制御動作を示す図である。
図4】本発明の第2の実施例に係るDC/DCコンバータの構成を示すブロック図である。
図5】本発明の第2の実施例に係るDC/DCコンバータにおけるインダクタンスの制御動作を示す図である。
図6】本発明の第3の実施例に係るDC/DCコンバータの構成を示すブロック図である。
図7】本発明の第3の実施例に係るDC/DCコンバータにおけるF/B電圧の制御動作を示す図である。
図8】特許文献1(特開2004−260963号公報)の電力変換装置の回路構成例を示す図である。
図9】特許文献1(特開2004−260963号公報)の電力変換装置の回路アルゴリズムを示す図である。
図10】特許文献2(特開2009−225592号公報)の電力制御装置の回路構成例を示す図である。
図11】特許文献3(特開2010−279150号公報)の検出回路の回路構成例を示す図である。
図12】特許文献4(特開2005−333768号公報)のアクチュエータ駆動装置の回路構成例を示す図である。
図13】従来(WO2006−098376号公報)のチョッパ回路の回路構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
背景技術で示したように、強磁界下にインダクタを有するDC/DCコンバータが置かれた場合、外部磁界によりインダクタに過剰な磁束が発生して電流値が増大し、これにより出力電流が大きくなるため、DC/DCコンバータに設けられている過電流防止回路(ラッチ回路)が動作してしまう場合がある。ラッチ回路が動作した場合、DC/DCコンバータは一定時間後に出力電圧をOFFとさせるため(シャットダウン)、表示装置の映像としては何も表示せず停止状態となり、これを復帰させるには電源を再投入する必要がある。
【0024】
この問題に対して様々な方法が提案されているが、いずれの方法も、DC/DCコンバータのシャットダウンを効果的に防止することができない。また、別の方法として、回路部材として磁界に影響を受ける部品の使用を避ける、または強固なシールドを施すという方法も考えられるが、この方法ではコストが大幅にかかってしまう。
【0025】
そこで、本発明の一実施の形態では、入力端子に一端が接続されたインダクタと、前記インダクタの他端と接地との間に接続されたスイッチング素子と、前記インダクタの他端と出力端子との間に接続されたダイオードと、前記出力端子と接地との間に接続されたコンデンサと、前記出力端子と接地との間に接続され、出力電圧を分圧したフィードバック電圧を出力するフィードバック回路と、前記フィードバック電圧が入力され、前記フィードバック電圧に応じた周波数で前記スイッチング素子をON/OFF制御する発振回路と、を備えるDC/DCコンバータにおいて、外部磁界を検出し、検出した磁界が予め定めた閾値を超えるか否かに応じて異なる信号を出力する検出回路と、前記信号が入力され、前記信号に応じて前記DC/DCコンバータを制御することにより、強磁界下における前記DC/DCコンバータの過電流を抑制する制御回路と、を備える。これにより、強磁界下に置かれた場合においても表示装置が停止しないように、つまりDC/DCコンバータがシャットダウンしないような回路構成とする。
【0026】
具体的には、強磁界下であることを検出する強磁界下検出回路と、強磁界下であることを検出した場合にDC/DCコンバータがラッチ動作に入らないように制御する強磁界下ラッチ動作回避回路と、を含む回路構成にする。強磁界下検出回路としては、例えば、周囲の磁場の強弱に反応して出力論理(HiまたはLow)を切り替えるホール素子(ホールIC)を用いて構成する。また、強磁界下ラッチ動作回避回路としては、例えば、ホールICの出力状態によりDC/DCコンバータの出力電圧生成動作を変更する回路(発振周波数制御回路、インダクタンス制御回路、F/B電圧制御回路など)を用いて構成する。
【実施例1】
【0027】
上記した本発明の実施の形態についてさらに詳細に説明すべく、本発明の第1の実施例に係るDC/DCコンバータ及び表示装置について、図1乃至図3を参照して説明する。図1は、本実施例の表示装置の構成を示すブロック図であり、図2は、本実施例のDC/DCコンバータの構成を示すブロック図である。また、図3(a)〜3(d)は、DC/DCコンバータにおける発振周波数の制御動作を示す図である。
【0028】
図1に示すように、本実施例の表示装置10は、バッテリーなどの電源供給源20と、DC/DCコンバータなどの電源生成回路30と、映像信号を供給する映像信号供給源40と、映像信号を処理するICなどの映像信号処理回路50と、表示装置を駆動するICなどの表示装置駆動ドライバ60と、表示装置を走査するICなどの表示装置走査用ドライバ70と、映像を表示するLCDなどの映像表示部80とで構成される。
【0029】
上記表示装置10の内、電源生成回路30にはインダクタが使用され、このインダクタが磁界の影響を受けて誤動作することから、本実施例では、この電源生成回路30を強磁界下でも正常に動作するように、図2のような構成にする。まず、電源生成回路30の一例として、DC/DCコンバータ30aの基本的な動作について説明する。
【0030】
DC/DCコンバータ30aは、入力電圧VINが入力されると、インダクタ31でエネルギーを充電し、発振IC33で決められた周期でスイッチングFET32のゲートを開き、昇圧ラインのON/OFFを繰り返して入力よりも高い電圧を生成し、整流ダイオード34で一方向に電流が流れるように整流し、平滑コンデンサ35にて安定した電圧を得て、出力電圧VOUTとして出力する。また、出力電圧が想定している電圧よりも高くならないようにするために出力電圧を常に監視し、抵抗36と抵抗37で定められるフィードバック(F/B)電圧として出力電圧の分圧値を発振IC33へ戻し(図2のF/B検知Divider)、発振IC33中に存在するエラーアンプで出力電圧値をモニタし、出力電圧が高くなった場合は低くなるように、また出力電圧が低くなった場合は高くなるように調整し、常に所定の一定電圧が得られるような回路構成となっている。
【0031】
ここで、例えば数mT(ミリテスラ)を超えるような強い磁束(数値を限定するものではない)がDC/DCコンバータ30aを構成する部品以外(DC/DCコンバータ外部)から印加されるような場(以下、強磁界下という。)にDC/DCコンバータ30aが置かれた場合、DC/DCコンバータ30aの昇圧スイッチング用や降圧スイッチング用に使われるインダクタ31が外部磁界の影響を受けて磁束飽和の傾向になる。磁束飽和の傾向へ向かうとインダクタ31のインダクタンス値はそれに伴って低下していく。インダクタンス値が低下していくということは出力電圧を生成するのに充分なエネルギーがインダクタ31に蓄えられなくなることを意味し、スイッチングFET32がON/OFFをして次のON/OFF駆動が始まるまでに充分なエネルギーを保持できずに電圧低下を起こし、これによってDC/DCコンバータ30aのF/B回路にて異常状態と認識され、ラッチ回路が動作することとなる。その結果、表示装置10が停止状態となり、突然画面に何も映像が表示されなくなる。
【0032】
この問題に対して、DC/DCコンバータ30aが強磁界下に置かれ、インダクタ31のインダクタンス値が低下した際に、インダクタ31に蓄えられたエネルギーでは次のスイッチングFET32のON/OFF動作のタイミングまで出力電圧が保持できない状態となる前に、スイッチングFET32のON/OFFのタイミングを早めることでスイッチング動作を繋ぎ、出力電圧の保持が可能となる。つまり、出力電圧を保持できるように、強磁界を検知した時の発振周波数を高くすれば良いことになる。
【0033】
そこで、本実施例では、強磁界下に置かれた場合でも表示装置10が停止状態になることを回避するために、DC/DCコンバータ30aに、強磁界であることを検出する強磁界下検出回路38と、強磁界下であることを検出した場合にDC/DCコンバータ30aがラッチ動作に入らないように制御する強磁界下ラッチ動作回避回路とを設ける。具体的には、強磁界下ラッチ動作回避回路は、前記強磁界下検出回路38が閾値を超える磁界を検出したときに出力される信号が入力されたら、スイッチングFET32をON/OFF制御する周波数を高くする制御を行う。
【0034】
この強磁界下検出回路38としては、周囲の磁場の強弱に反応して出力論理(HiまたはLow)を切り替える部品、例えばホール素子(ホールIC)を用いて構成することができる。また、強磁界下ラッチ動作回避回路としては、ホールICの出力論理(HiまたはLow)によりDC/DCコンバータ30aの発振周波数を制御する発振周波数制御回路39aを用いて構成することができる。
【0035】
なお、ホールICはデジタル出力タイプのものでもアナログ出力タイプ(リニアホールIC等)のものでも良く、ホールICの種類は限定されない。但し、速い動作を実現するためにはアナログ値で制御できるリニアホールICの方が適している。また、磁界の検出はホールICに限るものではなく、磁界の強さを検出してその強さによって出力論理状態が切り替えられる装置または部品であれば良い。
【0036】
この強磁界下検出回路38と発振周波数制御回路39aとが搭載されている場合の動作について説明する。ホールICの動作として、外部磁界が無い、または非常に小さい環境下においてはHiレベルを出力し、一定の閾値を超えた強磁界下に置かれた場合、ホールICが動作し、Lowレベルを出力する仕様とする。発振周波数制御回路39aは、ホールICの出力レベルを判定し、Hiレベルであれば通常駆動時の発振周波数f0(kHz)にてスイッチングFET32を駆動し、Lowレベルであれば発振周波数を下記の式1を満たす周波数fmに切り替える。
【0037】
f0<fm<fmax … 式1
【0038】
ここで、fmaxの値は、下記の式2のように、スイッチングFET32を駆動する際のFETのターンON時間(Ton)とターンOFF時間(Toff)の和の逆数よりも小さい値とする必要がある。その理由は、スイッチングFET32を駆動する際において、FETのターンON時間とターンOFF時間の和の逆数を超えた周波数で駆動しようとしても、FETのスイッチング動作として充分にON/OFF反応しない領域で駆動することとなるため、正常なスイッチング動作が行われなくなるためである。
【0039】
fmax<1/(Ton+Toff) … 式2
【0040】
上記動作について、図3(a)〜3(d)を用いて具体的に説明する。外部磁界が無い環境下(ここでは図3(a)の磁束密度B(T)がホール素子の閾値(Bth)を超えない場合)は、ホールICの出力論理(図3(b)の強電磁下検知回路出力V(v)参照)はHiレベルとなっており、発振周波数制御回路39aはDC/DCコンバータ30aのスイッチングFET32を発振周波数f0にてON/OFF駆動し(図3(c)参照)、スイッチングFET32は通常の駆動となる(図3(d)参照)。
【0041】
一方、このDC/DCコンバータ30aが強磁界下に置かれた場合(ここでは図3(a)の磁束密度B(T)がホール素子の閾値(Bth)を超えた場合)は、強磁界下検出回路38にて外部磁界を検知し、発振周波数制御回路39aは、スイッチングFET32をON/OFF駆動させる発振周波数(図3(c)のf(kHz))の値をfmとなるように高くし、スイッチングFET32のON/OFF回数を増やす(図3(d)のV(v)の波形を参照)。これによって外部磁界の影響を受けたインダクタ31のインダクタンス値低下に伴う出力電圧低下を防ぎ、ラッチ回路が動作することを回避する。
【0042】
このように、DC/DCコンバータ30aに強磁界下検出回路38と発振周波数制御回路39aとを設け、強磁界下検出回路38が閾値を超える磁界を検知したときに、発振周波数制御回路39aがスイッチングFET32を駆動するための発振周波数を、通常駆動時のf0よりも大きく、ターンON時間とターンOFF時間の総和の逆数よりも小さいfmに変更することによって、出力電圧低下を防止することができるため、DC/DCコンバータ30aが強磁界下に置かれた場合でも出力停止することがなく、表示装置10が突然シャットダウンすることを回避することが可能となる。
【0043】
また、常に高い発振周波数でスイッチングFET32を駆動すると、スイッチング回数の増加によりスイッチングロス(DC/DCコンバータ30aの効率低下)が発生するため、必要最小限の期間のみ、つまり強磁界下にある場合のみ発振周波数を高くし、外部磁界が無くなった場合は、通常駆動の発振周波数に戻すことで効率の良いDC/DCコンバータ30aを実現することができる。
【0044】
なお、上記説明では、ホールICは外部磁界が無い場合はHi出力、強磁界下でLow出力をするものとしたが、このホールICにオープンドレインタイプのものを用いても良い。
【実施例2】
【0045】
次に、本発明の第2の実施例に係るDC/DCコンバータ及び表示装置について、図4及び図5(a)〜5(d)を参照して説明する。図4は、本実施例のDC/DCコンバータの構成を示すブロック図であり、図5(a)〜5(d)は、DC/DCコンバータにおけるインダクタンスの制御動作を示す図である。
【0046】
前記した第1の実施例では、強磁界下ラッチ動作回避回路として発振周波数制御回路39aを用い、強磁界下でスイッチングFET32を駆動する発振周波数を大きくすることによって、インダクタ31のインダクタンス値低下に起因するラッチ回路の動作を抑制したが、本実施例では、インダクタンスを制御することによってラッチ回路の動作を抑制する。具体的には、第2のスイッチング素子と、前記第2のスイッチング素子がON又はOFFの時にインダクタ31に直列に接続される第2のインダクタと、前記第2のスイッチング素子をON/OFF制御するトランジスタと、を含むインダクタンス制御回路を用い、強磁界下検出回路が閾値を超える磁界を検出したときに出力される信号が前記トランジスタに入力されたら、インダクタ31と前記第2のインダクタとを直列に接続して、インダクタンス値を高くする制御を行う。
【0047】
その場合の構成は図4のようになり、DC/DCコンバータ30bに、強磁界であることを検出する強磁界下検出回路38と、ホールICの出力状態によりDC/DCコンバータの昇圧(降圧)ラインに用いているインダクタンス値を変更するインダクタンス制御回路39b(強磁界下ラッチ動作回避回路)とを設ける。このインダクタンス制御回路39bは、インダクタL1と、ホールICの出力に応じてインダクタL1を接続するか否かを制御する回路要素(トランジスタとスイッチングFETと抵抗など)と、を備えている。
【0048】
なお、表示装置10及びDC/DCコンバータの基本構成は第1の実施例と同様である。また、強磁界下検出回路38の構成も第1の実施例と同様であり、ホールICはデジタル出力タイプのものでもアナログ出力タイプ(リニアホールIC等)のものでも良く、ホールICの種類は限定されない。但し、速い動作を実現するためにはアナログ値で制御できるリニアホールICの方が適している。また、磁界の検出はホールICに限るものではなく、磁界の強さを検出してその強さによって出力論理状態が切り替えられる装置または部品であれば良い。
【0049】
この強磁界下検出回路38とインダクタンス制御回路39bとが搭載されている場合の動作について説明する。ホールICの動作としては、実施例1と同様に外部磁界が無い、または非常に小さい環境下においてはHiレベルを出力し、一定の閾値を超えた強磁界下に置かれた場合、ホールICが動作し、Lowレベルを出力する仕様とする。インダクタンス制御回路39bは、ホールICの出力レベルを判定し、Hiレベルであれば通常駆動時のインダクタL0のみを用いて駆動し、LowレベルであればインダクタL0にインダクタL1を加算した形でDC/DCコンバータ30bを駆動する。
【0050】
上記動作について、図5(a)〜5(d)を用いて具体的に説明する。外部磁界が無い環境下(ここでは図5(a)の磁束密度B(T)がホール素子の閾値(Bth)を超えない場合)は、ホールICの出力論理(図5(b)の強電磁下検知回路出力V(v))はHiレベルとなっており、ホールICの出力端子に接続されるトランジスタ(Tr)はON状態となる。ここでR3とR4の抵抗により分圧された電位でFET0はONとなり、L1のインダクタンスには電流は流れないため、DC/DCコンバータ30bはL0のインダクタ31のみで駆動されることとなる(図5(c)のL(μH)、図5(d)のI(A)参照)。
【0051】
一方、このDC/DCコンバータ30bが強磁界下に置かれた場合は(ここでは図5(a)の磁束密度B(T)がホール素子の閾値(Bth)を超えた場合)は、強磁界下検出回路38にて外部磁界を検知し、ホールICの出力論理がLowレベルとなり、ホールICの出力端子に接続されるTrがOFF状態となる。これによってR3とR4にかかる電位は同電位となり、FET0はOFF状態となるため、DC/DCコンバータ30bはL0とL1が加算された形で駆動されることとなる(図5(c)のL(μH)、図5(d)のI(A)参照)。
【0052】
ここで、DC/DCコンバータ30bを駆動するインダクタ31としてL0のみで駆動するよりもL0+L1で駆動する方がインダクタンス値としては大きくなるため、出力電圧を保持するのに充分なエネルギーが蓄えられることなり、出力電圧低下を防ぎ、ラッチ回路が動作することを回避することができる。
【0053】
なお、強磁界下において、正確にはインダクタは外部磁界の影響を受けて磁束飽和の傾向へ向かうためL0+L1のインダクタンス値よりも減少している。そのため、下記の式3に示すように、減少したインダクタンス値が通常状態のインダクタンス値相当となるように予め定数を考慮しておくと良い。
【0054】
L0〜L0m+L1m … 式3
〜:ニアリーイコール
L0:外部磁界が無い場合のインダクタL0のインダクタンス値
L0m:強磁界下でのインダクタL0のインダクタンス値
L1m:強磁界下でのインダクタL1のインダクタンス値
【0055】
このように、DC/DCコンバータ30aに強磁界下検出回路38とインダクタンス制御回路39bとを設け、強磁界下検出回路38が閾値を超える磁界を検知したときに、インダクタンス制御回路39bのインダクタが加算されてインダクタンス値が大きくなり、出力電圧低下を防止することができるため、DC/DCコンバータ30aが強磁界下に置かれた場合でも出力停止することがなく、表示装置10が突然シャットダウンすることを回避することが可能となる。
【実施例3】
【0056】
次に、本発明の第3の実施例に係るDC/DCコンバータ及び表示装置について、図6及び図7(a)〜7(d)を参照して説明する。図6は、本実施例のDC/DCコンバータの構成を示すブロック図であり、図7(a)〜7(d)は、DC/DCコンバータにおけるF/B電圧の制御動作を示す図である。
【0057】
前記した第1の実施例では、強磁界下でスイッチングFET32を駆動する発振周波数を大きくすることによってインダクタ31のインダクタンス値低下に起因するラッチ回路の動作を抑制し、第2の実施例では、強磁界下でインダクタンス値を大きくすることによってラッチ回路の動作を抑制したが、本実施例では、F/B電圧を制御することによってラッチ回路の動作を抑制する。具体的には、F/B電圧の出力経路に一端が接続される抵抗と、前記抵抗の他端と接地との間に接続されるトランジスタと、を含むF/B電圧制御回路を備え、強磁界下検出回路が閾値を超える磁界を検出したときに出力される信号が前記トランジスタに入力されたら、前記抵抗を無効にして、DC/DCコンバータの出力電圧を低くする制御を行う。
【0058】
その場合の構成は図6のようになり、DC/DCコンバータ30cに、強磁界であることを検出する強磁界下検出回路38と、ホールICの出力状態によりDC/DCコンバータ30cの出力電圧生成動作を変更するF/B電圧制御回路39c(強磁界下ラッチ動作回避回路)とを設ける。このF/B電圧制御回路39cは、抵抗R3と、ホールICの出力に応じて抵抗R3の接続/切断を制御する回路要素(トランジスタなど)と、を備えている。
【0059】
なお、表示装置10及びDC/DCコンバータの基本構成は第1及び第2の実施例と同様である。また、強磁界下検出回路38の構成も第1及び第2の実施例と同様であり、ホールICはデジタル出力タイプのものでもアナログ出力タイプ(リニアホールIC等)のものでも良く、ホールICの種類は限定されない。但し、速い動作を実現するためにはアナログ値で制御できるリニアホールICの方が適している。また、磁界の検出はホールICに限るものではなく、磁界の強さを検出してその強さによって出力論理状態が切り替えられる装置または部品であれば良い。
【0060】
まず、F/B電圧に関して説明する。出力電圧VOUTをR1とR2の抵抗で分圧した電圧値(Vf/b)として、下記の式4が得られ、この電圧値を発振IC33のF/B端子に入力することで一定の出力電圧値が得られることとなる。さらに、発振IC33の仕様上、F/B電圧は常に一定の電圧値となるように発振IC33にて決められており(Vf/bicとする。)、これによって出力電圧値が調整されることとなる。
【0061】
Vf/b=VOUT×(R2)/(R1+R2) … 式4
【0062】
具体的に式で書くと、Vf/bicは常に一定値であるため、もしF/B電圧制御部39cが無かった場合、F/B抵抗部を流れる電流値(If/b)は、下記の式5によって決定され、R1にも同じ電流が流れるため、VOUTは、下記の式6となり、式5と式6より、式7が得られる。
【0063】
If/b=Vf/bic/R2 … 式5
VOUT=(R1+R2)×If/b … 式6
VOUT=Vf/bic×(R1+R2)/R2=Vf/bic×(1+(R1/R2)) … 式7
【0064】
式7より、R2の値を小さくすると出力電圧は大きくなり、R2の値を大きくすると出力電圧は小さくなることが分かる。
【0065】
ここで、本実施例のF/B電圧制御部39cが搭載されている場合を考える。外部磁界が無い場合にはホールICの動作としてはHiレベルを出す仕様になっているため、ホールICの出力端子に接続されるTr(NPNトランジスタとする。)はON状態となり、R2と並列にR3の抵抗が合成されることになる。つまり、従来構成(F/B電圧制御部39cが無い場合)のVOUTの式は下記の式8で表される。
【0066】
VOUT=Vf/bic×(1+(R1×((1/R2)+(1/R3)))) …式8
【0067】
そこで、図7(a)〜7(d)に示すように、まず、式8で得られるVOUTの値を外部磁界がない環境下(ここでは図7(a)の磁束密度B(T)がホール素子の閾値(Bth)を超えない場合)での出力電圧値(図7(d)のV(v))として設定する。次に、強磁界下になった場合(ここでは図7(a)の磁束密度B(T)がホール素子の閾値(Bth)を超えた場合)、ホールICはそれを検知してLowレベルを出力するため(図7(b)の強電磁下検知回路出力V(v)参照)、ホールICの出力端子に接続されるTrはOFF状態となる。つまりR3は無効となり、R2のみがF/B電圧に関わるため(図7(c)のR(Ω)参照)、出力電圧は下記の式9で表される。
【0068】
VOUTm=Vf/bic×(1+(R1×(1/R2))) … 式9
VOUTm:DC/DCコンバータが強磁界下に置かれた場合の出力電圧値
【0069】
VOUTとVOUTmとを比較した場合、VOUT>VOUTmとなるため、外部磁界が無い場合に比べて強磁界下の出力電圧は小さくなっていることが分かる(図7(d)のV(v)参照)。
【0070】
このように、強磁界下において出力電圧値を低減することでDC/DCコンバータ30cの昇圧ラインの電流値を低減し、DC/DCコンバータ30cのシャットダウン閾値電流を超えないように制御することができるため、本実施例のF/B電圧制御回路39cを搭載した表示装置が強磁界下におかれた場合でもDC/DCコンバータ30cがシャットダウンして突然表示装置が映らなくなるという問題を回避することができる。
【0071】
上記では、ホールICは外部磁界が無い場合はHi出力、強磁界下でLow出力をする仕様としたが、外部磁界が無い場合はHi−Z(OPEN)、強磁界下でLow出力をするものを用いると、ホールICの出力端子に接続していたTrが不要となる(ホールICと抵抗1個のみで強磁界下検出回路38とF/B電圧制御回路39cを構成できる)ため、部品点数を減らすことができる。
【0072】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、その構成や制御は適宜変更可能である。例えば、上記実施例では、昇圧型のDC/DCコンバータについて説明したが、降圧型のDC/DCコンバータに対しても同様に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、DC/DCコンバータ、特に、強磁界下で使用されるDC/DCコンバータ及び当該DC/DCコンバータを電源生成回路として使用する表示装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0074】
10 表示装置
20 電源供給源
30 電源生成回路
30a、30b、30c DC/DCコンバータ
31 インダクタ
32 スイッチングFET
33 発振IC
34 整流ダイオード
35 平滑コンデンサ
36、37 抵抗
38 強磁界下検出回路
39 強磁界下ラッチ動作回避回路
39a 発振周波数制御回路
39b インダクタンス制御回路
39c F/B電圧制御回路
40 映像信号供給源
50 映像信号処理回路
60 表示装置駆動ドライバ
70 表示装置走査用ドライバ
80 映像表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13