(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6590140
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】エンジンの排気浄化装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/20 20060101AFI20191007BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20191007BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20191007BHJP
F02D 41/04 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
F01N3/20 B
F01N3/08 A
F01N3/08 B
F01N3/28 301G
F02D41/04 355
F02D41/04 360A
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-58255(P2015-58255)
(22)【出願日】2015年3月20日
(65)【公開番号】特開2016-176430(P2016-176430A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2018年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】阿野田 洋
(72)【発明者】
【氏名】田代 圭介
(72)【発明者】
【氏名】川島 一仁
【審査官】
二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−059416(JP,A)
【文献】
特開2006−083746(JP,A)
【文献】
特開2008−286102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00− 3/38
F01N 9/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気通路に設けられ、排気中の窒素酸化物を吸蔵する窒素酸化物吸蔵還元触媒と、
前記窒素酸化物吸蔵還元触媒の下流側の前記排気通路に設けられ、窒素酸化物を浄化する窒素酸化物浄化触媒と、
前記窒素酸化物吸蔵還元触媒の窒素酸化物吸蔵量を推定する窒素酸化物吸蔵量推定部と、
前記窒素酸化物吸蔵量が所定の第1の吸蔵量より大きくなった状態で、所定のパージ条件が成立した場合に、排気の空燃比をストイキまたはリッチにして、前記窒素酸化物吸蔵還元触媒に吸蔵した前記窒素酸化物を還元するパージ制御を実行するパージ制御部と、
前記パージ条件が成立しない場合には、前記窒素酸化物吸蔵量が前記所定の第1の吸蔵量より大きく設定された所定の第2の吸蔵量になるまで前記パージ制御を実施しないパージ制御待機状態を維持し、前記窒素酸化物吸蔵量が前記第2の吸蔵量より大きくなった際に、排気の空燃比をリーンにするとともに、前記窒素酸化物浄化触媒の温度を活性温度以上に上昇させる昇温制御を実行する昇温制御部と、を備えることを特徴とするエンジンの排気浄化装置。
【請求項2】
前記所定の第2の吸蔵量は、前記パージ制御の実行の際に前記窒素酸化物吸蔵還元触媒で前記窒素酸化物が還元されずに放出が開始される前記窒素酸化物吸蔵還元触媒の吸蔵量より小さく設定されることを特徴とする請求項1に記載のエンジンの排気浄化装置。
【請求項3】
前記昇温制御は、前記エンジンの負荷が所定値より低い状態では、前記エンジンの吸気量を減少させて行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジンの排気浄化装置。
【請求項4】
前記昇温制御は、前記エンジンの負荷が前記所定値以上の状態では、前記エンジンの燃料噴射量を増加させて行うことを特徴とする請求項3に記載のエンジンの排気浄化装置。
【請求項5】
前記窒素酸化物浄化触媒は、アンモニアを用いて窒素酸化物を浄化する選択還元触媒であり、
前記窒素酸化物浄化触媒の上流側の前記排気通路に尿素水溶液を供給する尿素水溶液供給部を備え、
前記昇温制御は、前記尿素水溶液供給部により供給された尿素水溶液を加水分解してアンモニアが生成される温度に前記排気温度を上昇させることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のエンジンの排気浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気中の窒素酸化物を浄化する排気浄化触媒を備えたエンジンの排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの排気通路には、排気を浄化するための排気浄化装置が備えられている。例えば、エンジンの排気中のNOx(窒素酸化物)を浄化するために、NOx吸蔵触媒等の排気浄化触媒が開発されている。
NOx吸蔵触媒は、リーン雰囲気下でNOxを吸蔵し、ストイキまたはリッチ雰囲気下でNOxを窒素に還元する。更に、排気中のNOxの浄化率を向上させるために、エンジンの排気通路に、窒素酸化物を浄化するNOx浄化触媒をNOx吸蔵触媒と直列に配置するものもある。
【0003】
例えば特許文献1には、ディーゼルエンジンの排気通路に、NOx吸蔵触媒を備えるとともに、その下流側に排気中のPM(粒子状物質)を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタと、NOxを浄化する選択還元触媒(NOx浄化触媒)を備えた排気浄化装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4730336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、排気通路にNOx吸蔵触媒を備えたエンジンでは、NOx吸蔵触媒に吸蔵したNOxを除去するために、例えばエンジンの燃料噴射制御によってNOx吸蔵触媒にリッチ空燃比の排気を供給するNOxパージが必要に応じて行われる。
しかしながら、例えば低負荷運転が続いてNOx吸蔵触媒の温度が低下している場合には、NOxパージをすることができない。特許文献1のようにNOx吸蔵触媒の下流に選択還元触媒等のNOx浄化触媒を設けている構成では、NOx吸蔵触媒から流出したNOxを下流のNOx浄化触媒にて浄化可能であるものの、低負荷運転が続いていた状態ではNOx吸蔵触媒の温度低下とともにNOx浄化触媒の温度も低下しており、NOx浄化触媒においてNOxを十分に除去できず下流に流出してしまうといった虞がある。
【0006】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、排気通路に窒素酸化物吸蔵還元触媒及び窒素酸化物浄化触媒を備えたエンジンにおいて、排気浄化性能の優れた排気浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本願発明のエンジンの排気浄化装置は、エンジンの排気通路に設けられ、排気中の窒素酸化物を吸蔵する窒素酸化物吸蔵還元触媒と、前記窒素酸化物吸蔵還元触媒の下流側の前記排気通路に設けられ、窒素酸化物を浄化する窒素酸化物浄化触媒と、前記窒素酸化物吸蔵還元触媒の窒素酸化物吸蔵量を推定する窒素酸化物吸蔵量推定部と、前記窒素酸化物吸蔵量が所定の第1の吸蔵量より大きくなった状態で、所定のパージ条件が成立した場合に、排気の空燃比をストイキまたはリッチにして、前記窒素酸化物吸蔵還元触媒に吸蔵した前記窒素酸化物を還元するパージ制御を実行するパージ制御部と、前記パージ条件が成立しない場合には、前記窒素酸化物吸蔵量が前記所定の第1の吸蔵量より大きく設定された所定の第2の吸蔵量になるまで前記パージ制御を実施しないパージ制御待機状態を維持し、前記窒素酸化物吸蔵量が前
記第2の吸蔵量より大きくなった際
に、排気の空燃比をリーンにするとともに、前記
窒素酸化物浄化触媒の温度を活性温度以上に上昇させる昇温制御を実行する昇温制御部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、好ましくは、前記所定の第2の吸蔵量は、前記パージ制御の実行の際に前記窒素酸化物吸蔵還元触媒で前記窒素酸化物が還元されずに放出が開始される前記窒素酸化物吸蔵還元触媒の吸蔵量より小さく設定されるとよい
また、好ましくは、前記昇温制御は、前記エンジンの負荷が所定値より低い状態では、前記エンジンの吸気量を減少させて行うとよい。
【0009】
また、好ましくは、前記昇温制御は、前記エンジンの負荷が前記所定値以上の状態では、前記エンジンの燃料噴射量を増加させて行うとよい。
また、好ましくは、前記窒素酸化物浄化触媒は、アンモニアを用いて窒素酸化物を浄化する選択還元触媒であり、前記窒素酸化物浄化触媒の上流側の前記排気通路に尿素水溶液を供給する尿素水溶液供給部を備え、前記昇温制御は、前記尿素水溶液供給部により供給された尿素水溶液を加水分解してアンモニアが生成される温度に前記排気温度を上昇させるとよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のエンジンの排気浄化装置によれば、排気通路に窒素酸化物吸蔵還元触媒が設けられるとともに、その下流に窒素酸化物浄化触媒が設けられているので、排気中の窒素酸化物は始めに窒素酸化物吸蔵還元触媒に吸蔵される。そして、窒素酸化物吸蔵還元触媒の窒素酸化物吸蔵量が第1の吸蔵量より大きくなりパージ条件が成立するとパージ制御により窒素酸化物が還元除去され、窒素酸化物吸蔵還元触媒の吸蔵性能が回復する。
【0011】
ここで、例えば窒素酸化物吸蔵還元触媒が低温で窒素酸化物の還元除去が不能であってパージ条件が成立しない場合には、パージ制御が待機され、窒素酸化物吸蔵量が第2の吸蔵量よりも大きくなった際には、排気の空燃比をリーンにするとともに窒素酸化物浄化触媒を活性温度以上に上昇させる昇温制御を実行することで、燃料消費を抑制しつつ窒素酸化物浄化触媒における浄化を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態におけるエンジンの吸排気系の概略構成図である。
【
図2】本実施形態のエンジンコントロールユニットにおける排気浄化装置の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の排気浄化装置1が適用された第1の実施形態のディーゼルエンジン(以下、エンジン2という)の吸排気系の概略構成図である。
エンジン2は、走行駆動源として車両に搭載されており、多気筒の筒内直接噴射式エンジンであって、
図1では簡略して1つの気筒のみ記載している。エンジン2は、各気筒に設けられた燃料噴射ノズル3から、任意の噴射時期及び噴射量で各気筒の燃焼室4内に燃料を噴射可能な構成となっている。
【0014】
エンジン2の吸気通路5には、新気の流量を調整するための電子制御スロットルバルブ6が設けられている。
エンジン2の排気通路10には、エンジン2から下流に向かって順番に、NOx吸蔵触媒11(窒素酸化物吸蔵還元触媒)、ディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、フィルタ)12、選択還元触媒13(窒素酸化物浄化触媒)が設けられている。
【0015】
フィルタ12と選択還元触媒13との間の排気通路10には、尿素水(尿素水溶液)を噴射供給する尿素水インジェクタ14(尿素水溶液供給部)が設けられている。尿素水インジェクタ14には、車両に搭載した図示しない尿素水タンクから尿素水が供給される。
尿素水インジェクタ14から排気通路10内に噴射された尿素水が排気の熱によって加水分解されてアンモニアを発生し選択還元触媒13に到達するように、尿素水インジェクタ14の噴射位置が設定されている。
【0016】
NOx吸蔵触媒11は、排気中の窒素酸化物(以下、NOx)を吸蔵し、高温リッチ雰囲気下でNOxを還元除去する。
フィルタ12は、排気中の黒鉛を主成分とする微粒子状物資を捕集する。
選択還元触媒13は、尿素水から生成したアンモニアを還元剤として用いて排気中のNOxを還元浄化する。
【0017】
また、エンジン2には、排気還流装置15が備えられている。排気還流装置15は、吸気通路5と排気通路10とを連通する排気還流通路16と、排気還流通路16を開閉する排気還流バルブ17とにより構成されている。
更に、エンジン2には、エンジン2の回転速度を検出する回転速度センサ20が設けられている。エンジン2の吸気通路5には、吸気流量を検出するエアフローセンサ21が設けられている。選択還元触媒13には、選択還元触媒13の温度を検出する選択還元触媒温度センサ22が設けられている。NOx吸蔵触媒11には、NOx吸蔵触媒11の温度を検出するNOx吸蔵触媒温度センサ23が設けられている。
【0018】
エンジンコントロールユニット30(窒素酸化物吸蔵量推定部、パージ制御部、昇温制御部)は、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、タイマ及び中央演算処理装置(CPU)等を含んで構成され、回転速度センサ20、エアフローセンサ21、選択還元触媒温度センサ22、NOx吸蔵触媒温度センサ23等の各種センサの検出情報と、車両のアクセル操作量等の情報を入力し、当該各種情報に基づいて、燃料噴射ノズル3からの燃料噴射量、燃料噴射時期、電子制御スロットルバルブ6の開度、尿素水インジェクタ14からの尿素水噴射量、尿素水噴射時期、排気還流バルブ17の開度を演算して、上記各種機器の作動制御を行うことで、エンジン2の運転制御を行う。
【0019】
また、エンジンコントロールユニット30は、ポスト噴射等により、空燃比を14.7以下のストイキまたはリッチとするとともに選択還元触媒13を所定温度以上に昇温させることで、NOx吸蔵触媒11に吸蔵したNOxを還元除去するNOxパージを実行するパージ制御機能を有している(パージ制御部)。
次に、
図2を用いて、NOx吸蔵触媒11に吸蔵されたNOxを還元除去するNOxパージについて説明する。
【0020】
図2は、エンジンコントロールユニット30におけるNOxパージ制御手順を示すフローチャートである。
図2に示す本実施形態の排気浄化装置1の制御は、エンジン運転時にエンジンコントロールユニット30において所定期間毎に繰り返し実行される。
始めに、ステップS10では、NOx吸蔵触媒11に吸蔵されているNOx吸蔵量Qa(窒素酸化物吸蔵量)が所定値A(第1の吸蔵量)より大きいか否かを判別する。NOx吸蔵量Qaは、例えば前回のNOxパージ終了からそれまでのエンジン2の運転時間とその運転状態に基づいて推定すればよい(窒素酸化物吸蔵量推定部)。所定値Aは、NOxパージを実行するか否かを判別する閾値であり、NOx吸蔵触媒11におけるNOx吸蔵量Qaの最大許容量より少ない値に設定すればよい。NOx吸蔵量Qaが所定値Aより大きい場合には、ステップS20に進む。NOx吸蔵量Qaが所定値A以下である場合には、本ルーチンを終了する。
【0021】
ここで、ステップS10からステップS20へ進む間は、パージ制御を実施しないパージ制御待機状態を維持する。
ステップS20では、NOx吸蔵量Qaが所定値C(第2の吸蔵量)より大きいか否かを判別する。所定値Cは、所定値Aより大きい値であり、NOxパージを行った際にNOxが還元除去しきれずに流出してしまう所謂スリップ判定値B(スリップ値)よりも小さい値に設定すればよい。NOx吸蔵量Qaが所定値Cより大きい場合には、ステップS30に進む。NOx吸蔵量Qaが所定値C以下である場合には、ステップS40に進む。
【0022】
ステップS30では、選択還元触媒温度センサ22から選択還元触媒温度Tbを入力し、選択還元触媒温度Tbが所定値T1より高いか否かを判別する。所定値T1は、選択還元触媒13においてNOxを十分に還元除去可能となる活性温度に設定すればよい。選択還元触媒温度Tbが所定値T1より高い場合には、ステップS40に進む。選択還元触媒温度Tbが所定値T1以下である場合には、ステップS60に進む。
【0023】
ステップS40では、NOxパージ条件が成立しているか否かを判別する。NOxパージ条件は、例えばNOx吸蔵触媒11の温度がNOxパージ可能な温度以上であることを検出したり、NOxパージ可能な排気温度になる高負荷運転であることを判定したりすればよい。NOxパージ条件が成立している場合には、ステップS50に進む。NOxパージ条件が成立していない場合には、本ルーチンを終了する。
【0024】
ステップS50では、NOxパージ(パージ制御)を実行する。NOxパージは、上記のように、ポスト噴射等により、NOx吸蔵触媒11をパージ可能な温度以上に維持しつつ空燃比を14.7以下のストイキまたはリッチとすることで行われる。そして、本ルーチンを終了する。
ステップS60では、NOx吸蔵触媒温度センサ23からNOx吸蔵触媒温度Taを入力し、NOx吸蔵触媒温度Taが所定値T2より低いか否かを判別する。所定値T2は、ポスト噴射を行ってNOx吸蔵触媒11が昇温可能となる温度に設定すればよい。NOx吸蔵触媒温度Taが所定値T2より低い場合には、ステップS70に進む。NOx吸蔵触媒温度Taが所定値T2以上である場合には、ステップS80に進む。
【0025】
ステップS70では、エンジンの1の吸気量を減少させる吸気絞りを実行する。詳しくは、電子制御スロットルバルブ6の開度を減少させて空燃比を低下させ、NOx吸蔵触媒温度Taを上昇させる。そして、ステップS60に戻る。
ステップS80では、ポスト噴射を実行する。そして、ステップS30に戻る。
以上のように、本実施形態では、排気通路10に低温領域で浄化性能の優れたNOx吸蔵触媒11と高温領域で浄化性能の優れた選択還元触媒13を備えているので、広範囲の排気温度でNOxの浄化性能を向上させることができる。上流側のNOx吸蔵触媒11にNOxが所定値Aよりも多く吸蔵された場合には、NOxパージが要求されるが、例えばアイドリング運転のような低負荷運転が継続されてNOx吸蔵触媒11の温度が低下していてNOxパージが不能である場合には、NOx吸蔵触媒11におけるNOx吸蔵量Qaが更に増加する。そして、NOx吸蔵量がスリップ判定値Bよりも大きくなってしまうと、NOx吸蔵触媒11からNOxが流出する可能性がある。本実施形態では、NOxの発生を抑える装置として排気還流装置15を備えているが、アイドリング運転のような運転状況では燃焼安定性を確保するため、排気の還流量が抑えられ、NOxの発生を十分に抑制することが困難である。
【0026】
そこで、本実施形態では、NOx吸蔵量Qaが所定値Aより大きく設定された所定値Cを超えると、吸気絞りまたはポスト噴射による昇温制御が行
われ、選択還元触媒13の温度を活性温度以上にする。これにより、例えNOx吸蔵触媒11からNOxが流出しても下流側の選択還元触媒13において除去することが可能となる。また、所定値Cは、スリップ判定値Bよりも低く設定されているので、NOx吸蔵量Qaがスリップ判定値Bに到達する前に、選択還元触媒13の温度を上昇させることができる。
【0027】
昇温制御をする際には、NOx吸蔵触媒温度Taが所定値T2より低い場合には、ポスト噴射をしても燃料が燃焼せずに昇温しないので、吸気絞りを行うことで排気温度を上昇させる。NOx吸蔵触媒温度Taが所定値T2以上となれば、ポスト噴射を行って燃料噴射量を増量させ効率的に昇温させることができる。
また、この昇温制御では空燃比をリーンに留めておくことで、NOx吸蔵触媒11からのNOxの流出を抑えるとともに、燃料消費を抑えることができる。
【0028】
このように、本実施形態では、NOx吸蔵量Qaが所定値Aを超えてNOxパージが要求されている状態において、NOx吸蔵触媒11におけるNOx吸蔵量Qaがスリップ判定値Bよりも小さい所定値Cより大きくなった場合には、NOxパージから昇温制御に切換えて行うことで、NOxパージがスリップ判定値Bに到達する前に選択還元触媒13の温度を上昇させておくことができる。したがって、例えば高負荷運転が行なわれてNOxパージが可能となったときにNOx吸蔵量Qaがスリップ判定値Bを超えていて、NOxパージの開始時においてNOx吸蔵触媒11からNOxが流出したとしても選択還元触媒13によってすぐにかつ十分に浄化することができ、大気中へのNOxの排出を減少させ、排気浄化性能を向上させることができる。また、この昇温制御によりNOx吸蔵触媒11も昇温するので、NOxパージの開始を早めることができる。
【0029】
本実施形態のように、NOx吸蔵触媒11の下流の触媒を選択還元触媒13にしている場合には、昇温制御を行うことで、排気温度を上昇させ、尿素水を噴射した際にすぐにアンモニアを生成し、選択還元触媒13にアンモニアを確保しておくことができる。これにより、NOx吸蔵触媒11から流出したNOxを選択還元触媒13において迅速に浄化させることができる。
【0030】
また、本願発明は、上記実施形態に限定するものではない。本実施形態ではNOx吸蔵触媒11の下流に選択還元触媒13を設けているが、NOxを浄化する触媒であれば他のものでもよい。例えば、選択還元触媒13の代わりに上流側のNOx吸蔵触媒11と同様のNOx吸蔵触媒を設けてもよい。このように同じ種類の触媒を2つ設けても、特にその間にフィルタ12が設けられていることから2つの触媒温度が異なるので、上流側の触媒と下流側の触媒とで広範囲の排気温度で浄化効率を上昇させることができ、本実施形態と同様に下流側の触媒を昇温させて上流側からNOxが流出した際に下流側の触媒ですぐに浄化可能にすることができる。
【0031】
本願発明は、排気浄化装置として排気通路にNOx吸蔵触媒とNOx排気浄化触媒を備えたエンジンに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
2 エンジン
10 排気通路
11 NOx吸蔵触媒(窒素酸化物吸蔵還元触媒)
13 選択還元触媒(窒素酸化物浄化触媒)
30 エンジンコントロールユニット(窒素酸化物吸蔵量推定部、パージ制御部、昇温制御部)