(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下記の算定式(A1)を設定し、この算定式(A1)に基づいて前記高性能孔あき鋼板ジベルの軸引張力に対するせん断耐力Vを算定することを特徴とする請求項1に記載の高性能孔あき鋼板ジベルの耐力評価方法。
V=(α・Vpsud+Vfu)/γb ・・・・式(A1)
ここに、α:前記孔のせん断耐力の低減係数
Vpsud:前記フランジプレートを有しないと仮定した場合の前記高性能孔あき鋼板ジベルのせん断耐力(N)であり、下記の式(A2)により算定される値。
Vfu:前記フランジプレートの支圧耐力(N)であり、下記の式(A3)により算定される値。
γb:部材係数
Vpsud=(1.85A−26.1×103)/γb ・・・・式(A2)
ここに、A=π(d2−φ2)/4×fcd+πφ2/4×fud
(ただし、4.01×104<A<3.83×105)
d:前記孔の径(mm)
φ:前記貫通鉄筋の径(mm)
fcd:前記コンクリートの設計圧縮強度(N/mm2)
fud:前記貫通鉄筋の設計引張強度(N/mm2)
Vfu=fak・Ab=fak・(bf−t)・bp ・・・・式(A3)
ここに、fak:前記コンクリートの支圧強度(N/mm2)
Ab:前記フランジプレートの支圧面積(mm2)
bf:前記フランジプレートの幅(mm)
t:前記孔あき鋼板の板厚(mm)
bp:前記孔あき鋼板の幅(mm)
前記フランジプレートを有しないと仮定した場合の前記高性能孔あき鋼板ジベルの曲げ耐力を、前記高性能孔あき鋼板ジベルの設計せん断耐力と前記コンクリートの設計基準強度とに基づいて設定する一方、
前記フランジプレートの支圧による曲げ耐力を、前記フランジプレートにおける前記コンクリートが支圧強度に達したときの曲げモーメントに基づいて設定したことを特徴とする請求項3に記載の高性能孔あき鋼板ジベルの耐力評価方法。
下記の算定式(B1)を設定し、この算定式(B1)に基づいて前記高性能孔あき鋼板ジベルの曲げモーメントに対する曲げ耐力Muを算定することを特徴とする請求項3または4に記載の高性能孔あき鋼板ジベルの耐力評価方法。
Mu=(Mpu+Mfu)/γb ・・・・式(B1)
ここに、Mu:前記高性能孔あき鋼板ジベルの曲げ耐力(kN・m)
Mpu:前記フランジプレートを有しないと仮定した場合の前記高性能孔あき鋼板ジベルの曲げ耐力(kN・m)であり、下記の式(B2)により算定される値。
Mfu:前記フランジプレートの支圧による曲げ耐力(kN・m)であり、下記の式(B3)により算定される値。
γb:部材係数
Mpu=Vpsud(d1−Vpsud/(2・0.85σck・b)) ・・・・式(B2)
ここに、Vpsud:前記フランジプレートを有しないと仮定した場合の前記高性能孔あき鋼板ジベルのせん断耐力(N)
d1:引張側の前記高性能孔あき鋼板ジベルの有効高さ(mm)
σck:前記コンクリートの設計基準強度(N/mm2)
b:圧縮域の前記コンクリートの幅(mm)
Mfu=fak・Ab/2・bp/2 ・・・・式(B3)
ここに、Ab=(bf−t)・bp ・・・・式(B4)
fak:前記コンクリートの支圧強度(N/mm2)
Ab:前記フランジプレートの支圧面積(mm2)
bf:前記フランジプレートの幅(mm)
t:前記孔あき鋼板の板厚(mm)
bp:前記孔あき鋼板の幅(mm)
【背景技術】
【0002】
従来、鋼・コンクリート複合構造において、鋼材とコンクリートとの一体化ずれ止め効果(ジベル効果)を得るために孔あき鋼板ジベル(以下、PBLジベルということがある。)が広く使用されている。例えば、鋼桁とそのフランジ上に打設したコンクリートスラブとからなる合成桁橋においては、鋼桁のフランジ上にPBLジベルを設置することで鋼桁とコンクリートスラブとのずれを防止し、両者を一体化させる構造が数多く採用されている。
【0003】
こうした従来のPBLジベルは、主としてせん断力に抵抗することを念頭に置いて設計されてきた。例えば、従来のPBLジベルの設計せん断耐力の算定式として、ジベル周面を十分にコンクリートで拘束した場合のものが非特許文献1に示されている。しかしながら、この算定式は、PBLジベルの周面拘束が小さい断面の小さな鉄筋コンクリート部材と、鋼材とを接合するような構造に対しては厳密には適用できない。また、この算定式は、せん断力、軸力、曲げモーメントが同時に作用する場合を考慮したものではない。
【0004】
一方、本発明者は、既に特許文献1に示すような高性能孔あき鋼板ジベルを提案している。
図1に示すように、この高性能孔あき鋼板ジベル10は、孔あき鋼板16に溶接したフランジプレート20と、孔あき鋼板16の各孔18に配置した貫通鉄筋24と、孔あき鋼板16の周囲に配置した帯鉄筋22とを備えるものである。孔あき鋼板16は鋼桁フランジプレート12に溶接により突設され、孔あき鋼板16、フランジプレート20、貫通鉄筋24、帯鉄筋22はコンクリート部材14に埋め込まれる。この高性能孔あき鋼板ジベル10によれば、作用する軸力(引抜力)、曲げモーメントに対して、フランジプレート20前面のコンクリート支圧抵抗により大きな抵抗力を発揮することができる。また、作用するせん断力に対して、フランジプレート20が孔あき鋼板16の曲げ変形を防止し、残留ずれ変位を低減することが可能である。このため、特許文献1の高性能孔あき鋼板ジベルによれば、軸力、曲げモーメント、せん断力の同時作用下においても所要の性能を発揮することができる。
【0005】
また、従来のPBLジベルでは、ジベルの周面を十分に拘束するコンクリートが必要であるが、特許文献1の高性能孔あき鋼板ジベルによれば孔あき鋼板16の形状寸法を縮小するとともに、孔あき鋼板16周面を帯鉄筋22で補強することにより、小さな断面の鉄筋コンクリート部材と鋼桁との連結が可能になるという効果が期待できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記の特許文献1の高性能孔あき鋼板ジベルにおいて、設計に資する軸力や曲げモーメントに対する耐力の評価方法の確立が求められていた。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、軸力、曲げモーメント、せん断力の同時作用下において所要の性能を発揮可能な高性能孔あき鋼板ジベルの耐力評価方法および設計方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る高性能孔あき鋼板ジベルの耐力評価方法は、部材とコンクリートとの結合を図るために使用される高性能孔あき鋼板ジベルの耐力を評価する方法であって、前記高性能孔あき鋼板ジベルは、前記部材に突設され、かつ、前記コンクリートに埋め込まれ、孔が一段または複数段に開けられた鋼板により構成される孔あき鋼板と、前記孔を貫通するように配置した貫通鉄筋と、前記孔あき鋼板の前記部材に固定される側とは反対側に溶接したフランジプレートと、前記孔あき鋼板の周囲に配置した帯鉄筋とを備えるものであり、前記フランジプレートを有しないと仮定した場合の前記高性能孔あき鋼板ジベルのせん断耐力と、前記フランジプレートの支圧耐力とに基づいて、前記高性能孔あき鋼板ジベルの軸引張力に対するせん断耐力を評価することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る他の高性能孔あき鋼板ジベルの耐力評価方法は、上述した発明において、下記の算定式(A1)を設定し、この算定式(A1)に基づいて前記高性能孔あき鋼板ジベルの軸引張力に対するせん断耐力Vを算定することを特徴とする。
V=(α・Vpsud+Vfu)/γb ・・・・式(A1)
ここに、α:前記孔のせん断耐力の低減係数
Vpsud:前記フランジプレートを有しないと仮定した場合の前記高性能孔あき鋼板ジベルのせん断耐力(N)であり、下記の式(A2)により算定される値。
Vfu:前記フランジプレートの支圧耐力(N)であり、下記の式(A3)により算定される値。
γb:部材係数
Vpsud=(1.85A−26.1×10
3)/γb ・・・・式(A2)
ここに、A=π(d
2−φ
2)/4×fcd+πφ
2/4×fud
(ただし、4.01×10
4<A<3.83×10
5)
d:前記孔の径(mm)
φ:前記貫通鉄筋の径(mm)
fcd:前記コンクリートの設計圧縮強度(N/mm
2)
fud:前記貫通鉄筋の設計引張強度(N/mm
2)
Vfu=fak・Ab=fak・(bf−t)・bp ・・・・式(A3)
ここに、fak:前記コンクリートの支圧強度(N/mm
2)
Ab:前記フランジプレートの支圧面積(mm
2)
bf:前記フランジプレートの幅(mm)
t:前記孔あき鋼板の板厚(mm)
bp:前記孔あき鋼板の幅(mm)
【0012】
また、本発明に係る他の高性能孔あき鋼板ジベルの耐力評価方法は、部材とコンクリートとの結合を図るために使用される高性能孔あき鋼板ジベルの耐力を評価する方法であって、前記高性能孔あき鋼板ジベルは、前記部材に突設され、かつ、前記コンクリートに埋め込まれ、孔が一段または複数段に開けられた鋼板により構成される孔あき鋼板と、前記孔を貫通するように配置した貫通鉄筋と、前記孔あき鋼板の前記部材に固定される側とは反対側に溶接したフランジプレートと、前記孔あき鋼板の周囲に配置した帯鉄筋とを備えるものであり、前記フランジプレートを有しないと仮定した場合の前記高性能孔あき鋼板ジベルの曲げ耐力と、前記フランジプレートの支圧による曲げ耐力とに基づいて、前記高性能孔あき鋼板ジベルの曲げモーメントに対する曲げ耐力を評価することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る他の高性能孔あき鋼板ジベルの耐力評価方法は、上述した発明において、前記フランジプレートを有しないと仮定した場合の前記高性能孔あき鋼板ジベルの曲げ耐力を、前記高性能孔あき鋼板ジベルの設計せん断耐力と前記コンクリートの設計基準強度とに基づいて設定する一方、前記フランジプレートの支圧による曲げ耐力を、前記フランジプレートにおける前記コンクリートが支圧強度に達したときの曲げモーメントに基づいて設定したことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る他の高性能孔あき鋼板ジベルの耐力評価方法は、上述した発明において、下記の算定式(B1)を設定し、この算定式(B1)に基づいて前記高性能孔あき鋼板ジベルの曲げモーメントに対する曲げ耐力Muを算定することを特徴とする。
Mu=(Mpu+Mfu)/γb ・・・・式(B1)
ここに、Mu:前記高性能孔あき鋼板ジベルの曲げ耐力(kN・m)
Mpu:前記フランジプレートを有しないと仮定した場合の前記高性能孔あき鋼板ジベルの曲げ耐力(kN・m)であり、下記の式(B2)により算定される値。
Mfu:前記フランジプレートの支圧による曲げ耐力(kN・m)であり、下記の式(B3)により算定される値。
γb:部材係数
Mpu=Vpsud(d1−Vpsud/(2・0.85σck・b)) ・・・・式(B2)
ここに、Vpsud:前記フランジプレートを有しないと仮定した場合の前記高性能孔あき鋼板ジベルのせん断耐力(N)
d1:引張側の前記高性能孔あき鋼板ジベルの有効高さ(mm)
σck:前記コンクリートの設計基準強度(N/mm
2)
b:圧縮域の前記コンクリートの幅(mm)
Mfu=fak・Ab/2・bp/2 ・・・・式(B3)
ここに、Ab=(bf−t)・bp ・・・・式(B4)
fak:前記コンクリートの支圧強度(N/mm
2)
Ab:前記フランジプレートの支圧面積(mm
2)
bf:前記フランジプレートの幅(mm)
t:前記孔あき鋼板の板厚(mm)
bp:前記孔あき鋼板の幅(mm)
【0015】
また、本発明に係る高性能孔あき鋼板ジベルの設計方法は、部材とコンクリートとの結合を図るために使用される高性能孔あき鋼板ジベルを設計する方法であって、前記高性能孔あき鋼板ジベルは、前記部材に突設され、かつ、前記コンクリートに埋め込まれ、孔が一段または複数段に開けられた鋼板により構成される孔あき鋼板と、前記孔を貫通するように配置した貫通鉄筋と、前記孔あき鋼板の前記部材に固定される側とは反対側に溶接したフランジプレートと、前記孔あき鋼板の周囲に配置した帯鉄筋とを備えるものであり、前記高性能孔あき鋼板ジベルの耐力を上述した耐力評価方法により評価し、評価した耐力に基づいて前記高性能孔あき鋼板ジベルを設計することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る高性能孔あき鋼板ジベルの耐力評価方法によれば、部材とコンクリートとの結合を図るために使用される高性能孔あき鋼板ジベルの耐力を評価する方法であって、前記高性能孔あき鋼板ジベルは、前記部材に突設され、かつ、前記コンクリートに埋め込まれ、孔が一段または複数段に開けられた鋼板により構成される孔あき鋼板と、前記孔を貫通するように配置した貫通鉄筋と、前記孔あき鋼板の前記部材に固定される側とは反対側に溶接したフランジプレートと、前記孔あき鋼板の周囲に配置した帯鉄筋とを備えるものであり、前記フランジプレートを有しないと仮定した場合の前記高性能孔あき鋼板ジベルのせん断耐力と、前記フランジプレートの支圧耐力とに基づいて、前記高性能孔あき鋼板ジベルの軸引張力に対するせん断耐力を評価するので、軸力、曲げモーメント、せん断力の同時作用下において所要の性能を発揮可能な高性能孔あき鋼板ジベルの軸引張力に対するせん断耐力評価方法を提供することができるという効果を奏する。
【0017】
また、本発明に係る他の高性能孔あき鋼板ジベルの耐力評価方法によれば、下記の算定式(A1)を設定し、この算定式(A1)に基づいて前記高性能孔あき鋼板ジベルの軸引張力に対するせん断耐力Vを算定するので、高性能孔あき鋼板ジベルの軸引張力に対するせん断耐力を迅速かつ簡便に評価することができるという効果を奏する。
V=(α・Vpsud+Vfu)/γb ・・・・式(A1)
ここに、α:前記孔のせん断耐力の低減係数
Vpsud:前記フランジプレートを有しないと仮定した場合の前記高性能孔あき鋼板ジベルのせん断耐力(N)であり、下記の式(A2)により算定される値。
Vfu:前記フランジプレートの支圧耐力(N)であり、下記の式(A3)により算定される値。
γb:部材係数
Vpsud=(1.85A−26.1×10
3)/γb ・・・・式(A2)
ここに、A=π(d
2−φ
2)/4×fcd+πφ
2/4×fud
(ただし、4.01×10
4<A<3.83×10
5)
d:前記孔の径(mm)
φ:前記貫通鉄筋の径(mm)
fcd:前記コンクリートの設計圧縮強度(N/mm
2)
fud:前記貫通鉄筋の設計引張強度(N/mm
2)
Vfu=fak・Ab=fak・(bf−t)・bp ・・・・式(A3)
ここに、fak:前記コンクリートの支圧強度(N/mm
2)
Ab:前記フランジプレートの支圧面積(mm
2)
bf:前記フランジプレートの幅(mm)
t:前記孔あき鋼板の板厚(mm)
bp:前記孔あき鋼板の幅(mm)
【0018】
また、本発明に係る他の高性能孔あき鋼板ジベルの耐力評価方法によれば、部材とコンクリートとの結合を図るために使用される高性能孔あき鋼板ジベルの耐力を評価する方法であって、前記高性能孔あき鋼板ジベルは、前記部材に突設され、かつ、前記コンクリートに埋め込まれ、孔が一段または複数段に開けられた鋼板により構成される孔あき鋼板と、前記孔を貫通するように配置した貫通鉄筋と、前記孔あき鋼板の前記部材に固定される側とは反対側に溶接したフランジプレートと、前記孔あき鋼板の周囲に配置した帯鉄筋とを備えるものであり、前記フランジプレートを有しないと仮定した場合の前記高性能孔あき鋼板ジベルの曲げ耐力と、前記フランジプレートの支圧による曲げ耐力とに基づいて、前記高性能孔あき鋼板ジベルの曲げモーメントに対する曲げ耐力を評価するので、軸力、曲げモーメント、せん断力の同時作用下において所要の性能を発揮可能な高性能孔あき鋼板ジベルの曲げモーメントに対する曲げ耐力評価方法を提供することができるという効果を奏する。
【0019】
また、本発明に係る他の高性能孔あき鋼板ジベルの耐力評価方法によれば、前記フランジプレートを有しないと仮定した場合の前記高性能孔あき鋼板ジベルの曲げ耐力を、前記高性能孔あき鋼板ジベルの設計せん断耐力と前記コンクリートの設計基準強度とに基づいて設定する一方、前記フランジプレートの支圧による曲げ耐力を、前記フランジプレートにおける前記コンクリートが支圧強度に達したときの曲げモーメントに基づいて設定したので、高性能孔あき鋼板ジベルの曲げモーメントに対する曲げ耐力を簡便に評価することができるという効果を奏する。
【0020】
また、本発明に係る他の高性能孔あき鋼板ジベルの耐力評価方法によれば、下記の算定式(B1)を設定し、この算定式(B1)に基づいて前記高性能孔あき鋼板ジベルの曲げモーメントに対する曲げ耐力Muを算定するので、高性能孔あき鋼板ジベルの曲げモーメントに対する曲げ耐力を迅速かつ簡便に評価することができるという効果を奏する。
Mu=(Mpu+Mfu)/γb ・・・・式(B1)
ここに、Mu:前記高性能孔あき鋼板ジベルの曲げ耐力(kN・m)
Mpu:前記フランジプレートを有しないと仮定した場合の前記高性能孔あき鋼板ジベルの曲げ耐力(kN・m)であり、下記の式(B2)により算定される値。
Mfu:前記フランジプレートの支圧による曲げ耐力(kN・m)であり、下記の式(B3)により算定される値。
γb:部材係数
Mpu=Vpsud(d1−Vpsud/(2・0.85σck・b)) ・・・・式(B2)
ここに、Vpsud:前記フランジプレートを有しないと仮定した場合の前記高性能孔あき鋼板ジベルのせん断耐力(N)
d1:引張側の前記高性能孔あき鋼板ジベルの有効高さ(mm)
σck:前記コンクリートの設計基準強度(N/mm
2)
b:圧縮域の前記コンクリートの幅(mm)
Mfu=fak・Ab/2・bp/2 ・・・・式(B3)
ここに、Ab=(bf−t)・bp ・・・・式(B4)
fak:前記コンクリートの支圧強度(N/mm
2)
Ab:前記フランジプレートの支圧面積(mm
2)
bf:前記フランジプレートの幅(mm)
t:前記孔あき鋼板の板厚(mm)
bp:前記孔あき鋼板の幅(mm)
【0021】
また、本発明に係る高性能孔あき鋼板ジベルの設計方法によれば、部材とコンクリートとの結合を図るために使用される高性能孔あき鋼板ジベルを設計する方法であって、前記高性能孔あき鋼板ジベルは、前記部材に突設され、かつ、前記コンクリートに埋め込まれ、孔が一段または複数段に開けられた鋼板により構成される孔あき鋼板と、前記孔を貫通するように配置した貫通鉄筋と、前記孔あき鋼板の前記部材に固定される側とは反対側に溶接したフランジプレートと、前記孔あき鋼板の周囲に配置した帯鉄筋とを備えるものであり、前記高性能孔あき鋼板ジベルの耐力を上述した耐力評価方法により評価し、評価した耐力に基づいて前記高性能孔あき鋼板ジベルを設計するので、軸力、曲げモーメント、せん断力の同時作用下において所要の性能を発揮可能な高性能孔あき鋼板ジベルの設計方法を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明に係る高性能孔あき鋼板ジベルの耐力評価方法および設計方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下においては橋梁や高架道路などを構成する合成桁、すなわち鋼桁とコンクリート部材とを接合してなる合成桁に使用される高性能孔あき鋼板ジベルの場合について説明するが、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0024】
[高性能孔あき鋼板ジベル]
まず、本発明に係る高性能孔あき鋼板ジベルの耐力評価方法および設計方法の適用対象である高性能孔あき鋼板ジベルの構成例および作用について説明する。
【0025】
図1に示すように、本発明の適用対象の高性能孔あき鋼板ジベル(以下、PBLジベルという。)10は、鋼桁フランジプレート12(部材)に溶接により突設され、かつ、コンクリート部材14(コンクリート)に埋め込まれて、鋼桁フランジプレート12とコンクリート部材14との結合を図るために使用されるものである。このPBLジベル10は、孔18が複数開けられた孔あき鋼板16と、フランジプレート20と、孔あき鋼板16の周囲に配置した帯鉄筋22(スターラップ)と、各孔18に貫通配置した貫通鉄筋24とを備えている。
【0026】
孔あき鋼板16の形状は、軸力(引抜力)、曲げモーメント、せん断力に対応できるように、従来のPBLジベルに比べて幅(橋軸方向Xの延在長L)が狭く、かつ、コンクリート部材14に対する埋込長Hが長い長方形板状としてある。また、孔あき鋼板16の孔18は、鋼桁フランジプレート12の橋軸方向Xおよび直角方向Y(突設方向)についてそれぞれ所定間隔をあけて設けてある。図の例では孔18を方向Xに3個、方向Yに2個設けた場合を示しているが、これに限るものではなく、例えば孔18を方向Yに1個(一段)、あるいは3個以上(複数段)に設けるようにしても構わない。
【0027】
フランジプレート20は、孔あき鋼板16の鋼桁フランジプレート12に固定される側16aとは反対側16bに溶接される長方形板状のものである。このフランジプレート20は、長方形板の短手方向の中央位置で長手方向に沿って孔あき鋼板16に対して溶接され、フランジプレート20と孔あき鋼板16はT字状の断面を呈するように配置される。また、帯鉄筋22は、孔あき鋼板16の突設方向Yに所定の間隔Dで複数組配置される。図の例では帯鉄筋22を3組配置した場合を示しているが、配置する組数はこれに限るものではない。また、帯鉄筋22は孔あき鋼板16を拘束する効果を十分に発揮できる最小の間隔で密に配置することが好ましい。
【0028】
上記のように構成した高性能孔あき鋼板ジベル10によれば、作用する軸力(引抜力)、曲げモーメントに対して、フランジプレート20前面のコンクリート支圧抵抗により大きな抵抗力を発揮することができる。また、作用するせん断力に対して、フランジプレート20が孔あき鋼板16の曲げ変形を防止し、残留ずれ変位を低減することが可能である。したがって、高性能孔あき鋼板ジベル10によれば、軸力、曲げモーメント、せん断力の同時作用下においても所要の性能を発揮することができる。
【0029】
また、従来のPBLジベルは、孔あき鋼板ジベルの周面を十分に拘束するコンクリートが必要であったが、上記の高性能孔あき鋼板ジベル10によれば孔あき鋼板16の形状寸法を縮小するとともに、孔あき鋼板16周面を帯鉄筋22で補強することにより、小さな断面の鉄筋コンクリート部材と鋼桁との連結が可能になるという効果も期待できる。
【0030】
また、上記の高性能孔あき鋼板ジベル10と従来のPBLジベルの性能を比較すると、高性能孔あき鋼板ジベル10の引抜き耐力は、従来のPBLジベルの概ね2.3倍になると考えられる。また、高性能孔あき鋼板ジベル10の曲げ耐力は、従来のPBLジベルの概ね1.6倍になると考えられる。また、高性能孔あき鋼板ジベル10のせん断特性としては、設計荷重時における残留ずれ変位は従来のPBLジベルの0.5倍になると考えられる。
【0031】
[高性能孔あき鋼板ジベルの耐力評価方法および設計方法]
次に、本発明に係る高性能孔あき鋼板ジベルの耐力評価方法および設計方法の実施の形態として、「軸引張力に対するせん断耐力評価方法・設計方法」と、「曲げモーメントに対する曲げ耐力評価方法・設計方法」とについて説明する。
【0032】
<軸引張力に対するせん断耐力評価方法・設計方法>
まず、本発明の実施の形態として、軸引張力に対するせん断耐力評価方法・設計方法について説明する。
【0033】
図2(1)に示すように、本実施の形態に係る耐力評価方法は、フランジプレート20を有しないと仮定した場合の高性能孔あき鋼板ジベル10のせん断耐力Vpsudと、フランジプレート20の支圧耐力Vfuとを算定し(ステップS1、S2)、算定したせん断耐力Vpsud、支圧耐力Vfuに基づいて、高性能孔あき鋼板ジベル10の軸引張力に対するせん断耐力Vを算定評価するものである(ステップS3)。そして、本実施の形態に係る設計方法において、せん断耐力Vに安全率を考慮して許容せん断力Vaを算定する(ステップS4)。
【0034】
より具体的には、下記の算定式(A1)を設定し、この算定式(A1)に基づいて高性能孔あき鋼板ジベル10の軸引張力に対するせん断耐力Vを算定することになる。算定式(A1)は、終局限界状態における高性能孔あき鋼板ジベル10の軸引張力に対するせん断耐力の設計式と考えることができる。また、せん断耐力Vは、従来のPBLジベルのせん断耐力に、フランジプレート20前面のコンクリート部材14の支圧強度を加算したものに相当する。
【0035】
V=(α・Vpsud+Vfu)/γb ・・・・式(A1)
ここに、α:孔18のせん断耐力の低減係数(例えばα=0.7)
Vpsud:フランジプレート20を有しないと仮定した場合の高性能孔あき鋼板ジベル10の孔1個あたりのせん断耐力(N)であり、下記の式(A2)により算定される値。
Vfu:フランジプレート20前面の支圧耐力(N)であり、下記の式(A3)により算定される値。
γb:部材係数(例えばγb=1.0〜1.3)
【0036】
Vpsud=(1.85A−26.1×10
3)/γb ・・・・式(A2)
ここに、A=π(d
2−φ
2)/4×fcd+πφ
2/4×fud
(ただし、4.01×10
4<A<3.83×10
5)
d:孔18の径(mm)
φ:貫通鉄筋24の径(mm)
fcd:コンクリート部材14の設計圧縮強度(N/mm
2)
fud:貫通鉄筋24の設計引張強度(N/mm
2)
【0037】
Vfu=fak・Ab=fak・(bf−t)・bp ・・・・式(A3)
ここに、fak:コンクリート部材14の支圧強度(N/mm
2)
Ab:フランジプレート20前面の支圧面積(mm
2)
bf:フランジプレート20の幅(mm)
t:孔あき鋼板16の板厚(mm)
bp:孔あき鋼板16の幅(mm)
(bf、t、bpについては、
図3の説明図を参照のこと。)
【0038】
(せん断耐力の算定例)
以下に、上記の算定式(A1)等を用いた高性能孔あき鋼板ジベル10の軸引張力に対するせん断耐力Vの算定例を示す。なお、この例では、γb=1.0、d=70、φ=19、fcd=28.3、fud=590.2、fak=2×fcd、bf=60、t=19、bp=580、α=0.7とした。
【0039】
Vpsud=(1.85A−26.1×10
3)/γb
=(1.85×2.6809×10
5−26.1×10
3)/1.0
=470(kN)
【0040】
A=π(d
2−φ
2)/4×fcd+πφ
2/4×fud
(ただし、4.01×10
4<A<3.83×10
5)
=π(70
2−19
2)/4×28.3+π×19
2/4×590.2
=2.6809×10
5
【0041】
Vfu=fak・Ab
=fak・(bf−t)・bp
=2×28.3×(60−19)×580
=1346(kN)
【0042】
V=(α・Vpsud+Vfu)/γb
=(0.7×470×5+1346)/1.0
=2991(kN)
【0043】
また、本実施の形態に係る設計方法は、上記の耐力評価方法により算定評価した高性能孔あき鋼板ジベル10のせん断耐力Vに基づいて高性能孔あき鋼板ジベル10を設計するものである。より具体的には、せん断耐力Vに基づいて許容せん断力Vaを設定し、この許容せん断力Vaに基づいて高性能孔あき鋼板ジベル10の仕様諸元を設計する。
【0044】
許容せん断力Vaは、算定式(A1)により算定されたせん断耐力Vに安全率Fs(例えばFs=2.5)を考慮した下記の算定式(A4)を用いて算定することができる。
【0045】
Va=(1/Fs)・V=0.4・V ・・・・式(A4)
【0046】
この算定式(A4)は、使用限界状態における高性能孔あき鋼板ジベル10の軸引張力に対する許容せん断力の設計式に相当する。
【0047】
(効果の検証)
本実施の形態による効果を検証するため、上記の算定例の諸元を有する高性能孔あき鋼板ジベル10について引抜実験を行った。
図4に実験状況の写真を示す。
図5に実験により得られた荷重−ずれ変位曲線を示す。
【0048】
上記の算定例にあるように、せん断耐力Vの算定式としてフランジプレート20の効果を考慮した算定式(A1)を用いた場合には、せん断耐力V(設計せん断耐力)は2991kNとなる。したがって、算定式(A1)で算定したせん断耐力Vは、
図5に示される実験における引抜荷重の最大値3936kNに対して1.32の安全率を確保できている。このため、本実施の形態の耐力評価方法によれば、終局限界状態の安全性を確保することが可能である。
【0049】
また、許容せん断力Vaの算定式として算定式(A4)(終局限界に対する安全率Fs=2.5)を用いた場合には、許容せん断力Va=0.4・V=0.4・2991=1196kNとなる。
図5によれば、この許容せん断力時のずれ変位は0.5mm程度、残留ずれ変位は0.14mm以下であり、使用限界状態における健全性を確保することが可能である。なお、実験においては、許容せん断力Vaを若干超える引抜荷重1200kNで高性能孔あき鋼板ジベル10の周囲のコンクリート部材等にひび割れは発生しておらず、良好な使用状態であったことが確認されている。
【0050】
<曲げモーメントに対する曲げ耐力評価方法・設計方法>
次に、本発明の実施の形態として、曲げモーメントに対する曲げ耐力評価方法・設計方法について説明する。
【0051】
図2(2)に示すように、本実施の形態に係る耐力評価方法は、フランジプレート20を有しないと仮定した場合の高性能孔あき鋼板ジベル10の曲げ耐力Mpuと、フランジプレート20の支圧による曲げ耐力Mfuとを算定し(ステップT1、T2)、算定した曲げ耐力Mpu、Mfuに基づいて、高性能孔あき鋼板ジベル10の曲げモーメントに対する曲げ耐力Muを算定評価するものである(ステップT3)。そして、本実施の形態に係る設計方法において、曲げ耐力Muに安全率を考慮して許容曲げモーメントMaを算定する(ステップT4)。
【0052】
より具体的には、下記の算定式(B1)を設定し、この算定式(B1)に基づいて高性能孔あき鋼板ジベル10の曲げモーメントに対する曲げ耐力Muを算定することになる。算定式(B1)は、終局限界状態における高性能孔あき鋼板ジベル10の曲げモーメントに対する曲げ耐力の設計式と考えることができる。また、曲げ耐力Muは、従来のPBLジベルの曲げ耐力に、フランジプレート20前面のコンクリート部材14の支圧による曲げ耐力を加算したものに相当する。
【0053】
Mu=(Mpu+Mfu)/γb ・・・・式(B1)
ここに、Mu:高性能孔あき鋼板ジベル10の曲げ耐力(kN・m)
Mpu:フランジプレート20を有しないと仮定した場合の高性能孔あき鋼板ジベル10の曲げ耐力(kN・m)
Mfu:フランジプレート20前面の支圧による曲げ耐力(kN・m)であり、下記の式(B3)により算定される値。
γb:部材係数(例えばγb=1.0〜1.3)
【0054】
ここで、曲げ耐力Mpuは、従来のPBLジベルの設計せん断耐力を貫通鉄筋24の降伏時の引張力に置き換え、圧縮側のコンクリート部材14の幅を主桁(鋼桁フランジプレート12)の幅(100mm)とした曲げ耐力式である下記の算定式(B2)により算定する。
【0055】
Mpu=Vpsud(d1−Vpsud/(2・0.85σck・b)) ・・・・式(B2)
ここに、Vpsud:フランジプレート20を有しないと仮定した場合の高性能孔あき鋼板ジベル10の孔1個あたりのせん断耐力(N)であり、上記の「軸引張力に対するせん断耐力評価方法・設計方法」で説明した式(A2)により算定される値。
d1:引張側の高性能孔あき鋼板ジベル10の有効高さ(mm)
σck:コンクリート部材14の設計基準強度(N/mm
2)
b:圧縮域のコンクリート部材14の幅(mm)
【0056】
一方、支圧による曲げ耐力Mfuは、フランジプレート20前面のコンクリート部材14が支圧強度に達したときの曲げモーメントと考えて、下記の算定式(B3)により算定する。
【0057】
Mfu=fak・Ab/2・bp/2 ・・・・式(B3)
ここに、Ab=(bf−t)・bp ・・・・式(B4)
fak:コンクリート部材14の支圧強度(N/mm
2)
Ab:フランジプレート20の支圧面積(mm
2)
bf:フランジプレート20の幅(mm)
t:孔あき鋼板16の板厚(mm)
bp:孔あき鋼板16の幅(mm)
(bf、t、bpについては、
図3の説明図を参照のこと。)
【0058】
(曲げ耐力の算定例)
以下に、上記の算定式(B1)等を用いた高性能孔あき鋼板ジベル10の曲げモーメントに対する曲げ耐力Muの算定例を示す。なお、この例では、γb=1.0、d=70、φ=19、fcd=39.5、fud=569.2、fak=2×fcd、bf=60、t=19、bp=580、d1=650、σck=39.5、b=100とした。
【0059】
Vpsud=(1.85A−26.1×10
3)/γb
=(1.85×3.022×10
5−26.1×10
3)/1.0
=533.0(kN)
【0060】
A=π(d
2−φ
2)/4×fcd+πφ
2/4×fud
(ただし、4.01×10
4<A<3.83×10
5)
=π(70
2−19
2)/4×39.5+π×19
2/4×569.2
=3.02045×10
5
【0061】
Mpu=Vpsud(d1−Vpsud/(2・0.85σck・b))
=2×533.0×10
3(650−533.0×10
3/(2・0.85・39.5・100))
=2×304.1
=608(kN・m)
【0062】
Mfu=fak・Ab/2・bp/2
=fak・(bf−t)・bp/2・bp/2
=2×39.5(60−19)×580/2×580/2
=272.4(kN・m)
【0063】
Mu=(Mpu+Mfu)/γb
=608+272
=880(kN・m)
【0064】
また、本実施の形態に係る設計方法は、上記の耐力評価方法により算定評価した高性能孔あき鋼板ジベル10の曲げ耐力Muに基づいて高性能孔あき鋼板ジベル10を設計するものである。より具体的には、曲げ耐力Muに基づいて許容曲げモーメントMaを設定し、この許容曲げモーメントMaに基づいて高性能孔あき鋼板ジベル10の仕様諸元を設計する。
【0065】
許容曲げモーメントMaは、算定式(B1)により算定された曲げ耐力Muに安全率Fs(例えばFs=2.5)を考慮した下記の算定式(B5)を用いて算定することができる。
【0066】
Ma=(1/Fs)・Mu=0.4・Mu ・・・・式(B5)
【0067】
この算定式(B5)は、使用限界状態における高性能孔あき鋼板ジベル10の曲げモーメントに対する許容曲げモーメントの設計式に相当する。
【0068】
(効果の検証)
本実施の形態による効果を検証するため、上記の算定例の諸元を有する高性能孔あき鋼板ジベル10について曲げ実験を行った。
図6に実験状況の写真を示す。
図7に実験により得られた荷重−鉛直変位曲線を示す。
【0069】
上記の算定例にあるように、曲げ耐力Muの算定式としてフランジプレート20の効果を考慮した算定式(B1)を用いた場合には、曲げ耐力Mu(設計曲げ耐力)は880kN・mとなる。また、実験における荷重の最大値(1599kN)に対応する終局曲げモーメントは、1599/2×1.15+27.2=947kN・mと算定できる。設計終局荷重Puは、(880−27.2)×2/1.15=1481kNと算定できる。したがって、算定式(B1)で算定した曲げ耐力Muは、
図7に示される実験における荷重の最大値(1599kN)に対応する終局曲げモーメント947kN・mに対して1.08の安全率を確保できている。このため、本実施の形態の耐力評価方法によれば、終局限界状態の安全性を確保することが可能である。
【0070】
また、許容曲げモーメントMaの算定式として算定式(B5)(終局限界に対する安全率Fs=2.5)を用いた場合には、許容曲げモーメントMa=0.4・Mu=0.4・880=352kN・mとなる。なお、実験においてひび割れは発生しておらず、良好な使用状態であったことが確認されている。また、初期ひび割れは、M=620kN・m、すなわち許容曲げモーメントMaの1.8倍程度で発生したことが確認されている。
【0071】
以上説明したように、本発明に係る高性能孔あき鋼板ジベルの耐力評価方法によれば、部材とコンクリートとの結合を図るために使用される高性能孔あき鋼板ジベルの耐力を評価する方法であって、前記高性能孔あき鋼板ジベルは、前記部材に突設され、かつ、前記コンクリートに埋め込まれ、孔が一段または複数段に開けられた鋼板により構成される孔あき鋼板と、前記孔を貫通するように配置した貫通鉄筋と、前記孔あき鋼板の前記部材に固定される側とは反対側に溶接したフランジプレートと、前記孔あき鋼板の周囲に配置した帯鉄筋とを備えるものであり、前記フランジプレートを有しないと仮定した場合の前記高性能孔あき鋼板ジベルのせん断耐力と、前記フランジプレートの支圧耐力とに基づいて、前記高性能孔あき鋼板ジベルの軸引張力に対するせん断耐力を評価するので、軸力、曲げモーメント、せん断力の同時作用下において所要の性能を発揮可能な高性能孔あき鋼板ジベルの軸引張力に対するせん断耐力評価方法を提供することができる。
【0072】
また、本発明に係る他の高性能孔あき鋼板ジベルの耐力評価方法によれば、下記の算定式(A1)を設定し、この算定式(A1)に基づいて前記高性能孔あき鋼板ジベルの軸引張力に対するせん断耐力Vを算定するので、高性能孔あき鋼板ジベルの軸引張力に対するせん断耐力を迅速かつ簡便に評価することができる。
V=(α・Vpsud+Vfu)/γb ・・・・式(A1)
ここに、α:前記孔のせん断耐力の低減係数
Vpsud:前記フランジプレートを有しないと仮定した場合の前記高性能孔あき鋼板ジベルのせん断耐力(N)であり、下記の式(A2)により算定される値。
Vfu:前記フランジプレートの支圧耐力(N)であり、下記の式(A3)により算定される値。
γb:部材係数
Vpsud=(1.85A−26.1×10
3)/γb ・・・・式(A2)
ここに、A=π(d
2−φ
2)/4×fcd+πφ
2/4×fud
(ただし、4.01×10
4<A<3.83×10
5)
d:前記孔の径(mm)
φ:前記貫通鉄筋の径(mm)
fcd:前記コンクリートの設計圧縮強度(N/mm
2)
fud:前記貫通鉄筋の設計引張強度(N/mm
2)
Vfu=fak・Ab=fak・(bf−t)・bp ・・・・式(A3)
ここに、fak:前記コンクリートの支圧強度(N/mm
2)
Ab:前記フランジプレートの支圧面積(mm
2)
bf:前記フランジプレートの幅(mm)
t:前記孔あき鋼板の板厚(mm)
bp:前記孔あき鋼板の幅(mm)
【0073】
また、本発明に係る他の高性能孔あき鋼板ジベルの耐力評価方法によれば、部材とコンクリートとの結合を図るために使用される高性能孔あき鋼板ジベルの耐力を評価する方法であって、前記高性能孔あき鋼板ジベルは、前記部材に突設され、かつ、前記コンクリートに埋め込まれ、孔が一段または複数段に開けられた鋼板により構成される孔あき鋼板と、前記孔を貫通するように配置した貫通鉄筋と、前記孔あき鋼板の前記部材に固定される側とは反対側に溶接したフランジプレートと、前記孔あき鋼板の周囲に配置した帯鉄筋とを備えるものであり、前記フランジプレートを有しないと仮定した場合の前記高性能孔あき鋼板ジベルの曲げ耐力と、前記フランジプレートの支圧による曲げ耐力とに基づいて、前記高性能孔あき鋼板ジベルの曲げモーメントに対する曲げ耐力を評価するので、軸力、曲げモーメント、せん断力の同時作用下において所要の性能を発揮可能な高性能孔あき鋼板ジベルの曲げモーメントに対する曲げ耐力評価方法を提供することができる。
【0074】
また、本発明に係る他の高性能孔あき鋼板ジベルの耐力評価方法によれば、前記フランジプレートを有しないと仮定した場合の前記高性能孔あき鋼板ジベルの曲げ耐力を、前記高性能孔あき鋼板ジベルの設計せん断耐力と前記コンクリートの設計基準強度とに基づいて設定する一方、前記フランジプレートの支圧による曲げ耐力を、前記フランジプレートにおける前記コンクリートが支圧強度に達したときの曲げモーメントに基づいて設定したので、高性能孔あき鋼板ジベルの曲げモーメントに対する曲げ耐力を簡便に評価することができる。
【0075】
また、本発明に係る他の高性能孔あき鋼板ジベルの耐力評価方法によれば、下記の算定式(B1)を設定し、この算定式(B1)に基づいて前記高性能孔あき鋼板ジベルの曲げモーメントに対する曲げ耐力Muを算定するので、高性能孔あき鋼板ジベルの曲げモーメントに対する曲げ耐力を迅速かつ簡便に評価することができる。
Mu=(Mpu+Mfu)/γb ・・・・式(B1)
ここに、Mu:前記高性能孔あき鋼板ジベルの曲げ耐力(kN・m)
Mpu:前記フランジプレートを有しないと仮定した場合の前記高性能孔あき鋼板ジベルの曲げ耐力(kN・m)であり、下記の式(B2)により算定される値。
Mfu:前記フランジプレートの支圧による曲げ耐力(kN・m)であり、下記の式(B3)により算定される値。
γb:部材係数
Mpu=Vpsud(d1−Vpsud/(2・0.85σck・b)) ・・・・式(B2)
ここに、Vpsud:前記フランジプレートを有しないと仮定した場合の前記高性能孔あき鋼板ジベルのせん断耐力(N)
d1:引張側の前記高性能孔あき鋼板ジベルの有効高さ(mm)
σck:前記コンクリートの設計基準強度(N/mm
2)
b:圧縮域の前記コンクリートの幅(mm)
Mfu=fak・Ab/2・bp/2 ・・・・式(B3)
ここに、Ab=(bf−t)・bp ・・・・式(B4)
fak:前記コンクリートの支圧強度(N/mm
2)
Ab:前記フランジプレートの支圧面積(mm
2)
bf:前記フランジプレートの幅(mm)
t:前記孔あき鋼板の板厚(mm)
bp:前記孔あき鋼板の幅(mm)
【0076】
また、本発明に係る高性能孔あき鋼板ジベルの設計方法によれば、部材とコンクリートとの結合を図るために使用される高性能孔あき鋼板ジベルを設計する方法であって、前記高性能孔あき鋼板ジベルは、前記部材に突設され、かつ、前記コンクリートに埋め込まれ、孔が一段または複数段に開けられた鋼板により構成される孔あき鋼板と、前記孔を貫通するように配置した貫通鉄筋と、前記孔あき鋼板の前記部材に固定される側とは反対側に溶接したフランジプレートと、前記孔あき鋼板の周囲に配置した帯鉄筋とを備えるものであり、前記高性能孔あき鋼板ジベルの耐力を上述した耐力評価方法により評価し、評価した耐力に基づいて前記高性能孔あき鋼板ジベルを設計するので、軸力、曲げモーメント、せん断力の同時作用下において所要の性能を発揮可能な高性能孔あき鋼板ジベルの設計方法を提供することができる。