(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第3上部当接部材、前記第4上部当接部材、前記第3下部当接部材、および前記第4下部当接部材を構成する転動部材は、それぞれ転動する面との接触の衝撃を減衰させる減衰材を有することを特徴とする請求項1に記載の免震機構。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態による免震機構について、
図1乃至
図18に基づいて説明する。
図1および
図2に示すように、第1実施形態による免震機構1Aは、上部構造体11と下部構造体12との間の免震層13に設けられている。下部構造体12は地盤に支持されている。上部構造体11と下部構造体12とは水平方向に相対変位可能に構成されている。なお、免震層13には複数の免震機構1Aが設けられているものとする。
免震機構1Aは、上部構造体11の底部に固定される上部案内部材2と、上部案内部材2の下側に配置され下部構造体12の上部に固定される下部案内部材3と、上部案内部材2および下部案内部材3との間に介装される可動子4と、を有している。
上部案内部材2と下部案内部材3とは、水平方向に相対変位可能に構成されていて、鉛直方向の相対変位は水平方向の相対変位により決定される。
【0019】
図1乃至3に示すように、上部案内部材2は、長尺のブロック状の部材で構成され、長手方向が一の水平方向(X方向とする)となる向きに配置されている。本実施形態では、
図1および
図2に示すように上部案内部材2は、平板状の固定板部22を介して上部構造体11に固定されている。なお、
図3では、固定板部22を省略している。
図2および
図3に示すように、上部案内部材2の下面は、X方向に沿ってX方向の略中央部が上側に凸となるように形成されている。この上部案内部材2の下面を上部当接面21とし、上部当接面21のX方向の略中央部を上側中央部21aとする。
上部当接面21は、上側中央部21aからX方向の一方側に延びる第1上部傾斜面211と、上側中央部21aからX方向の他方側に延びる第2上部傾斜面212と、第1上部傾斜面211のX方向の一方側の端部からX方向の一方側に延びる第3上部傾斜面213と、第2上部傾斜面212のX方向の他方側の端部からX方向の他方側に延びる第4上部傾斜面214と、を有している。
【0020】
第1上部傾斜面211は、上側中央部21aからX方向の一方側に向かうに従って漸次下側に向かう平面に形成されている。第1上部傾斜面211の水平面に対する傾斜角度はθ
1となっている。
第2上部傾斜面212は、上側中央部21aからX方向の他方側に向かうに従って漸次下側に向かう平面に形成されている。第2上部傾斜面212の水平面に対する傾斜角度は、第1上部傾斜面211の水平面に対する傾斜角度と同じθ
1となっている。第1上部傾斜面211と第2上部傾斜面212とは、上側中央部21aにおいて連続している。
【0021】
第3上部傾斜面213は、X方向の一方側に向かうに従って漸次下側に向かう平面に形成されている。第3上部傾斜面213の水平面に対する傾斜角度は、第1上部傾斜面211の水平面に対する傾斜角度θ
1よりも大きいθ
2となっている。第1上部傾斜面211と第3上部傾斜面213は所定の角度をなすように連続している。
第4上部傾斜面214は、X方向の他方側に向かうに従って漸次下側に向かう平面に形成されている。第4上部傾斜面214の水平面に対する傾斜角度は、第2上部傾斜面212の水平面に対する傾斜角度θ
1よりも大きく、かつ第3上部傾斜面213の水平面に対する傾斜角度と同じθ
2となっている。傾斜角度のθ
1とθ
2とは、θ
2>θ
1となっている。
これらの第1から第4上部傾斜面214には、それぞれテフロン(登録商標)などの滑り材が設けられている。
【0022】
上部案内部材2には、X方向の両端部それぞれに上部当接面21から下側に突出する一対のストッパ23,23が形成され、これらの一対のストッパ23,23の互いに対向する面に、可動子4がストッパ23,23に衝突した場合の衝撃を吸収する緩衝材24,24が設けられている。ストッパ23,23および緩衝材24,24は、上部案内部材2と可動子4とが相対変位する際の可動子4の軌道上に配置されている。
緩衝材24,24には、例えば、弾性体、粘性体、粘弾性体などが用いられていて、具体的には、防振ゴム、シリコン系粘性体、高減衰ゴムなどが用いられている。
【0023】
図1乃至3に示すように、下部案内部材3は、上部案内部材2と略同じ長尺のブロック状の部材で構成され、長手方向が平面視においてX方向に直交する他の水平方向(Y方向とする)となる向きに配置されている。本実施形態では、
図1および
図2に示すように下部案内部材3は、平板状の固定板部32を介して下部構造体12に固定されている。なお、
図3では固定板部32を省略している。
図1および
図3に示すように、下部案内部材3の上面は、Y方向に沿ってY方向の略中央部が下側に凸となるように形成されている。この下部案内部材3の上面を下部当接面31とし、下部当接面31のY方向の略中央部を下側中央部31aとする。
下部当接面31は、下側中央部31aからY方向の一方側に延びる第1下部傾斜面311と、下側中央部31aからY方向の他方側に延びる第2下部傾斜面312と、第1下部傾斜面311のY方向の一方側の端部からY方向の一方側に延びる第3下部傾斜面313と、第2下部傾斜面312のY方向の他方側の端部からY方向の他方側にのびる第4下部傾斜面314と、を有している。
【0024】
第1下部傾斜面311は、下側中央部31aからY方向の一方側に向かうに従って漸次上側に向かう平面に形成されている。第1下部傾斜面311の水平面に対する傾斜角度はθ
1となっている。
第2下部傾斜面312は、下側中央部31aからY方向の他方側に向かうに従って漸次上側に向かう平面に形成されている。第2下部傾斜面312の水平面に対する傾斜角度は、第1下部傾斜面311の水平面に対する傾斜角度と同じθ
1となっている。第1下部傾斜面311第2下部傾斜面312とは、下側中央部31aにおいて連続している。
【0025】
第3下部傾斜面313は、Y方向の一方側に向かうに従って漸次上側に向かう平面に形成されている。第3下部傾斜面313の水平面に対する傾斜角度は、第1下部傾斜面311の水平面に対する傾斜角度θ
1よりも大きいθ
2となっている。第1下部傾斜面311第3下部傾斜面313とは所定の角度をなすように連続している。
第4下部傾斜面314は、Y方向の他方側に向かうに従って漸次上側に向かう平面に形成されている。第4下部傾斜面314の水平面に対する傾斜角度は、第2下部傾斜面312の水平面に対する傾斜角度θ
1よりも大きく、かつ第3下部傾斜面313の水平面に対する傾斜角度と同じθ
2となっている。傾斜角度のθ
1とθ
2とは、θ
2>θ
1となっている。
これらの第1から第4下部傾斜面314には、それぞれテフロン(登録商標)などの滑り材が設けられている。
【0026】
下部案内部材3には、Y方向の両端部それぞれに下部当接面31から上側に突出する一対のストッパ33,33が形成され、これらの一対のストッパ33,33の互いに対向する面に、可動子4がストッパ33,33に衝突した場合の衝撃を吸収する緩衝材34,34が設けられている。ストッパ33,33および緩衝材34,34は、下部案内部材3と可動子4とが相対変位する際の可動子4の軌道上に配置されている。
緩衝材34,34には、例えば、弾性体、粘性体、粘弾性体などが用いられていて、具体的には、防振ゴム、シリコン系粘性体、高減衰ゴムなどが用いられている。
【0027】
このような上部案内部材2と下部案内部材3とは、上下方向に可動子4が配置される間隔をあけて重なるように配置されている。
図4に示すように、上部案内部材2と下部案内部材3との間のうちの上部案内部材2と下部案内部材3とが上下方向に重なる交差部5に可動子4が配置されている。
【0028】
図1乃至
図3および
図5乃至
図8に示すように、可動子4は、本体部41と、本体部41の上部に設けられた第1〜第4上部当接部材42〜45と、本体部41の下部に設けられた第1〜第4下部当接部材46〜49と、を有している。
第1〜第4上部当接部材42〜45は、上部当接面21に沿って摺動可能な摺動部材で構成され、第1〜第4下部当接部材46〜49は下部当接面31に沿って摺動可能な摺動部材で構成されている。
【0029】
本体部41は、略直方体状に形成された基部411と、基部411から上側に突出する一対の上部突出板部412,412(
図1および
図3参照)と、基部411から下側に突出する一対の下部突出板部413,413(
図2および
図3参照)と、を有している。
基部411は、上面および下面がそれぞれ上下方向を向き、対向する一対の側面がそれぞれX方向を向き、他の対向する一対の側面がそれぞれY方向を向くように配置されている。
【0030】
一対の上部突出板部412,412は、基部411のY方向の両端部それぞれから上側に突出し、それぞれ板面がY方向を向く平板状に形成されている。一対の上部突出板部412,412の間には、第1〜第4上部当接部材42〜45が配置されている。
一対の上部突出板部412,412の互いに対向する面における上端部近傍には、それぞれテフロン(登録商標)などの滑り材414,414(
図1および
図5参照)が設けられている。
一対の上部突出板部412,412それぞれの上端部近傍は、第1〜第4上部当接部材42〜45よりも上側に突出し、可動子4が上部案内部材2の下側に配置されると、上部案内部材2をY方向の両側から挟み込むように上部案内部材2の側方に配置され、それぞれに設けられた滑り材414,414が上部案内部材2の側面と当接するように構成されている。
【0031】
一対の下部突出板部413,413は、基部411のX方向の両端部それぞれから下側に突出し、それぞれ板面がX方向を向く平板状に形成されている。一対の下部突出板部413,413の間には、第1〜第4下部当接部材46〜49が配置されている。
一対の下部突出板部413,413の互いに対向する面における下端部近傍には、それぞれテフロン(登録商標)などの滑り材415,415(
図2および
図6参照)が設けられている。
一対の下部突出板部413,413それぞれの下端部近傍は、第1〜第4下部当接部材46〜49よりも下側に突出し、可動子4が下部案内部材3の上側に配置されると、下部案内部材3をX方向の両側から挟み込むように下部案内部材3の側方に配置され、それぞれに設けられた滑り材415,415が下部案内部材3の側面と当接するように構成されている。
【0032】
図2、3、5および7に示すように、第1〜第4上部当接部材42〜45は、それぞれ略板状に形成されていて、一方の板面42a〜45aが上部当接面21に向いていて、他方の板面側が本体部41に固定されている。この一方の板面42a〜45aをそれぞれ上面42a〜45aとする。
第1〜第4上部当接部材42〜45は、X方向に配列されていて、X方向の他方側に向かって第3上部当接部材44、第1上部当接部材42、第2上部当接部材43、第4上部当接部材45の順番に配置されている。
また、第1上部当接部材42と第2上部当接部材43とは同じ高さに配置され、第3上部当接部材44と第4上部当接部材45とは同じ高さに配置されていて、第1上部当接部材42および第2上部当接部材43が第3上部当接部材44および第4上部当接部材45よりも上側に配置されている。
【0033】
第1上部当接部材42は、上面42aがX方向の一方側に向かうに従って漸次下側に向かう平面に形成されている。第1上部当接部材42の上面42aの水平面に対する傾斜角度はθ
1となっている(
図7参照)。第1上部当接部材42は、第1上部傾斜面211と面接触可能に構成されている。
第2上部当接部材43は、上面43aがX方向の他方側に向かうに従って漸次下側に向かう平面に形成されている。第2上部当接部材43の上面43aの水平面に対する傾斜角度は、第1上部当接部材42の上面42aの水平面に対する傾斜角度θ
1と同じθ
1となっている(
図7参照)。第2上部当接部材43は、第2上部傾斜面212と面接触可能に構成されている。
【0034】
第3上部当接部材44は、上面44aがX方向の一方側に向かうに従って漸次下側に向かう平面に形成されている。第3上部当接部材44の上面44aの水平面に対する傾斜角度は、第1上部当接部材42の上面42aの水平面に対する傾斜角度θ
1よりも大きいθ
2となっている(
図7参照)。
第4上部当接部材45は、上面45aがX方向の他方側に向かうに従って漸次下側に向かう平面に形成されている。第4上部当接部材45の上面45aの水平面に対する傾斜角度は、第2上部当接部材43の上面43aの水平面に対する傾斜角度θ
1よりも大きく、第3上部当接部材44の上面44aの水平面に対する傾斜角度と同じθ
2となっている(
図7参照)。第4上部当接部材45は、第4上部傾斜面214と面接触可能に構成されている。
【0035】
図1、6および8に示すように、第1〜第4下部当接部材46〜49は、それぞれ略板状に形成されていて、一方の板面46a〜49aが下部当接面31に向いていて、他方の板面側が本体部41に固定されている。この一方の板面46a〜49aをそれぞれ下面46a〜49aとする。
第1〜第4下部当接部材46〜49は、Y方向に配列されていて、Y方向の他方側に向かって第3下部当接部材48、第1下部当接部材46、第2下部当接部材47、第4下部当接部材49の順番に配置されている。
また、第1下部当接部材46と第2下部当接部材47とは同じ高さに配置され、第3下部当接部材48と第4下部当接部材49とは同じ高さに配置されていて、第1下部当接部材46および第2下部当接部材47が第3下部当接部材48および第4下部当接部材49よりも下側に配置されている。
【0036】
第1下部当接部材46は、下面46aがY方向の一方側に向かうに従って漸次上側に向かう平面に形成されている。第1下部当接部材46の下面46aの水平面に対する傾斜角度はθ
1となっている(
図8参照)。第1下部当接部材46は、第1下部傾斜面311と面接触可能に構成されている。
第2下部当接部材47は、下面47aがY方向の他方側に向かうに従って漸次上側に向かう平面に形成されている。第2下部当接部材47の下面47aの水平面に対する傾斜角度は、第1下部当接部材46の下面46aの水平面に対する傾斜角度θ
1と同じθ
1となっている(
図8参照)。第2下部当接部材47は、第2下部傾斜面312と面接触可能に構成されている。
【0037】
第3下部当接部材48は、下面48aがY方向の一方側に向かうに従って漸次上側に向かう平面に形成されている。第3下部当接部材48の下面48aの水平面に対する傾斜角度は、第1下部当接部材46の下面46aの水平面に対する傾斜角度θ
1よりも大きいθ
2となっている(
図8参照)。第3下部当接部材48は、第3下部傾斜面313と面接触可能に構成されている。
第4下部当接部材49は、下面49aがY方向の他方側に向かうに従って漸次上側に向かう平面に形成されている。第4下部当接部材49の下面49aの水平面に対する傾斜角度は、第2下部当接部材47の下面47aの水平面に対する傾斜角度θ
1よりも大きく、第3下部当接部材48の下面48aの水平面に対する傾斜角度と同じθ
2となっている(
図8参照)。第4下部当接部材49は、第4下部傾斜面314と面接触可能に構成されている。
【0038】
このような免震機構1Aは、初期状態では、
図1、
図2および
図4に示すように、上部案内部材2の上側中央部21aと、下部案内部材3の下側中央部31aとが上下方向に重なり、これらの上部案内部材2の上側中央部21aと、下部案内部材3の下側中央部31aとの間に可動子4が配置されている。
図2に示すように、第1上部当接部材42は、上面42aが第1上部傾斜面211と面接触し、第2上部当接部材43は、上面43aが第2上部傾斜面212と面接触している。なお、第3上部当接部材44は、第1上部傾斜面211の下側に配置されていて上面44aが第1上部傾斜面211と離間している。また、第4上部当接部材45は、第2上部傾斜面212の下側に配置されていて、上面45aが第2上部傾斜面212と離間している。
図1に示すように、第1下部当接部材46は、下面46aが第1下部傾斜面311と面接触し、第2下部当接部材47は、下面46aが第2下部傾斜面312と面接触している。なお、第3下部当接部材48は、第1下部傾斜面311の上側に配置されていて下面46aが第1下部傾斜面311
と離間している。また、第4下部当接部材49は、第2下部傾斜面312の上側に配置され、下面46aが第2下部傾斜面312と離間している。
【0039】
初期状態では、第1上部当接部材42、第2上部当接部材43、第1下部当接部材46および第2下部当接部材47は、それぞれ
上部構造体11の荷重を負担している。
【0040】
続いて、本実施形態による免震機構1Aの挙動について説明する。
図9乃至
図16に示すように、地震が生じて上部構造体11と下部構造体12とが水平方向に相対変位すると、上部案内部材2と下部案内部材3とが水平方向に相対変位して、上部案内部材2と下部案内部材3に対して交差部5が移動する。
可動子4は、常に上部案内部材2と下部案内部材3との交差部5に配置されている。このため、
図1および
図2に示す初期状態から、
図9乃至
図12に示すように、可動子4と下部案内部材3とがY方向に相対変位した状態となると、下部案内部材3に対する可動子4の位置が初期状態よりも高い位置となり、ポテンシャルエネルギー(位置エネルギー)が蓄積される。また、初期状態から
図13乃至
図16に示すように、可動子4と上部案内部材2とがX方向に相対変位した状態となると、可動子4に対する上部案内部材2の位置が初期状態よりも高い位置となり、ポテンシャルエネルギー(位置エネルギー)が蓄積される。
【0041】
図9に示すように、可動子4が初期状態から下部案内部材3に対してY方向の一方側に向かい、第1下部当接部材46が第1下部傾斜面311と当接するとともに第3下部当接部材48が第3下部傾斜面313と当接するまでの間は、第1下部当接部材46が第1下部傾斜面311と当接する。このとき、第2下部当接部材47は、第2下部傾斜面312と離間しているとともに第1下部傾斜面311とも離間するため、第1〜第4下部当接部材46〜49のうち、第1下部当接部材46のみが下部当接面31と当接し、第2〜第4下部当接部材47〜49が下部当接面31と離間した状態となる。
【0042】
図10に示すように、第1下部当接部材46が第1下部傾斜面311と当接するとともに第3下部当接部材48が第3下部傾斜面313と当接した状態から、更に可動子4が下部案内部材3に対してY方向の一方側に向かう状態では、第3下部当接部材48が第3下部傾斜面313と当接する。このとき、第1下部当接部材46は、第1下部傾斜面311と離間しているとともに第3下部傾斜面313とも離間するため、第1〜第4下部当接部材46〜49のうち、第3下部当接部材48のみが下部当接面31当接し、第1、第2および第4下部当接部材46,47,49が下部当接面31と離間した状態となる。
なお、可動子4は、下部案内部材3のストッパ33の緩衝材34と当接すると、下部案内部材3に対する更にY方向の一方側へ向かう移動が拘束される。
【0043】
図11に示すように、可動子4が初期状態から下部案内部材3に対してY方向の他方側に向かい、第2下部当接部材47が第2下部傾斜面312と当接するとともに第4下部当接部材49が第4下部傾斜面314と当接するまでの間は、第2下部当接部材47が第2下部傾斜面312と当接する。このとき、第1下部当接部材46は、第1下部傾斜面311と離間しているとともに第2下部傾斜面312とも離間するため、第1〜第4下部当接部材46〜49のうち、第2下部当接部材47のみが下部当接面31と当接し、第1、第3および第4下部当接部材46,48,49が下部当接面31と離間した状態となる。
【0044】
図12に示すように、更に可動子4が下部案内部材3に対してY方向の他方側に向かう状態では、第4下部当接部材49が第4下部傾斜面314と当接する。このとき、第2下部当接部材47は、第2下部傾斜面312と離間しているとともに第4下部傾斜面314とも離間するため、第1〜第4下部当接部材46〜49のうち、第4下部当接部材49のみが下部当接面31と当接し、第1〜第3下部当接部材46〜48が下部当接面31と離間した状態となる。
なお、可動子4は、下部案内部材3のストッパ33の緩衝材34と当接すると、下部案内部材3に対する更にY方向の他方側へ向かう移動が拘束される。
【0045】
図13に示すように、可動子4が初期状態から上部案内部材2に対してX方向の一方側に向かい、第1上部当接部材42が第1上部傾斜面211と当接するとともに第3上部当接部材44が第3上部傾斜面213と当接するまでの間は、第1上部当接部材42が第1上部傾斜面211と当接する。このとき、第2上部当接部材43は、第2上部傾斜面212と離間しているとともに第1上部傾斜面211とも離間するため、第1〜第4上部当接部材42〜45のうち、第1上部当接部材42のみが上部当接面21と当接し、第2〜第4上部当接部材43〜45が上部当接面21と離間した状態となる。
【0046】
図14に示すように、第1上部当接部材42が第1上部傾斜面211と当接するとともに第3上部当接部材44が第3上部傾斜面213当接した状態から更に可動子4が上部案内部材2に対してX方向の一方側に向かう状態では、第3上部当接部材44が第3上部傾斜面213と当接する。このとき、第1上部当接部材42は、第1上部傾斜面211と離間しているとともに第3上部傾斜面213とも離間するため、第1〜第4上部当接部材42〜45のうち、第3上部当接部材44のみが上部当接面21と当接し、第1、第2および第4上部当接部材42,43,45が上部当接面21と離間した状態となる。
なお、可動子4は、上部案内部材2のストッパ23の緩衝材24と当接すると、上部案内部材2に対する更にX方向の一方側へ向かう移動が拘束される。
【0047】
図15に示すように、可動子4が初期状態から上部案内部材2に対してX方向の他方側に向かい、第2上部当接部材43が第2上部傾斜面212と当接するとともに第4上部当接部材45が第4上部傾斜面214と当接するまでの間は、第2上部当接部材43が第2上部傾斜面212と当接する。このとき、第1上部当接部材42は、第1上部傾斜面211と離間しているとともに第2上部傾斜面212とも離間するため、第1〜第4上部当接部材42〜45のうち、第2上部当接部材43のみが上部当接面21と当接し、第1、第3および第4上部当接部材42,44,45が上部当接面21と離間した状態となる。
【0048】
図16に示すように、第2上部当接部材43が第2上部傾斜面212と当接するとともに第4上部当接部材45が第4上部傾斜面214に当接した状態から更に可動子4が上部案内部材2に対してX方向の他方側に向かう状態では、第4上部当接部材45が第4上部傾斜面214と当接する。このとき、第2上部当接部材43は、第2上部傾斜面212と離間しているとともに第4上部傾斜面214とも離間するため、第1〜第4上部当接部材42〜45のうち、第4上部当接部材45のみが上部当接面21と当接し、第1〜第3上部当接部材42〜44が上部当接面21と離間した状態となる。
なお、可動子4は、上部案内部材2のストッパ23の緩衝材24と当接すると、上部案内部材2に対する更にX方向の他方側へ向かう移動が拘束される。
【0049】
図17(a)に示すように免震機構1Aの支持する軸力(自重)をWとすると、
図17(b)に示す第1上部傾斜面211の傾斜による復元力(水平力)F
1は式(1)で表され、
図17(c)に示す第3上部傾斜面213の傾斜による復元力(水平力)F
2は、式(2)で表される。なお、
図17では、上部案内部材2の第1上部傾斜面211の傾斜角度θ1と、第3上部傾斜面213の傾斜角度θ
2との違いを分かりやすくするため、他の図と比べてX方向の寸法を縮尺している。
【0051】
ここで、θ
2>θ
1であるため、
F2>
F1となる。
また、第1上部当接部材42の摩擦係数をμ
1=0.1とすると、上部案内部材2に作用する復元力F
1は式(3)で表される。
【0053】
これは、上部構造体11と下部構造体12との間に予引張力Fの定荷重ばねを設置した場合と同じで、上部構造体11と下部構造体12の相対変位量によらず一定の復元力Fが作用することになる。tanθ
1≧μ
1ならば、残留変位を完全に除去できるが、この1/2〜1/10に相当する値であっても、残留変位を除去できることが、特開2011−201873号公報に記載されている。このように、本実施形態では、定荷重ばねを設置しなくても同様の効果を奏することがわかる。
第2上部当接部材43の摩擦係数をμ
2とすると、(μ
2+tanθ
2)>(μ
1+tanθ
1)となる。
【0054】
なお、第2上部傾斜面212、第1下部傾斜面311および第2下部傾斜面312の傾斜による復元力(水平力)は上式(1)、(3)のF
1で表され、第4上部傾斜面214、第3下部傾斜面313および第4下部傾斜面314の傾斜による復元力(水平力)は上式(2)のについてもF
2で表される。
【0055】
本実施形態による免震機構1Aの復元力特性(荷重−変形関係)を
図18に示す。
第1〜
第4上部当接部材42〜45および第1〜
第4下部当接部材46〜49が摺動する際の摩擦抵抗による復元力特性(μ
1W
1、μ
2W
2)、傾斜による復元力特性(F
1=Wtanθ
1、F
2=Wtanθ
2)およびストッパ23,33による復元力特性を合成したものが本実施形態による免震機構1Aの復元力特性となる。
図18におけるL1は、上部当接面21および下部当接面31の傾斜角度がθ1の範囲を示し、L2は上部当接面21および下部当接面31の傾斜角度がθ2の範囲を示している。
【0056】
次に、上述した第1実施形態による免震機構1Aの作用・効果について図面を用いて説明する。
上述した第1実施形態による免震機構1Aでは、第3上部傾斜面213の水平面に対する勾配は、第1上部傾斜面211の水平面に対する勾配よりも大きくなるように構成されている。これにより、初期状態から可動子4が上部案内部材2に対してX方向の一方側に向かうように可動子4と上部案内部材2とが相対変位した際に、可動子4が第1上部傾斜面211に沿ってX方向の一方側に向かう相対変位と比べて、可動子4が第3上部傾斜面213に沿ってX方向の一方向に向かう相対変位の方が傾斜角度によって減速されるため、
可動子4が第3上部傾斜面213よりもX方向の一方側に移動することを抑制でき、可動子4が上部案内部材2から外れることを防止することができる。
同様に、第4上部傾斜面214の水平面に対する勾配は、第2上部傾斜面212の水平面に対する勾配よりも大きくなるように構成されていることにより、可動子4が第4上部傾斜面214よりもX方向の他方側に移動することを抑制でき、可動子4が上部案内部材2から外れることを防止することができる。
【0057】
また、第3下部傾斜面313の水平面に対する勾配は、第1下部傾斜面311の水平面に対する勾配よりも大きくなるように構成されている。これにより、初期状態から可動子4が上部案内部材2に対してY方向の一方側に向かうように可動子4と上部案内部材2とが相対変位した際に、可動子4が第1下部傾斜面311に沿ってY方向の一方側に向かう相対変位と比べて、可動子4が第3下部傾斜面313に沿ってX方向の一方向に向かう相対変位の方が傾斜角度によって減速されるため、
可動子4が第3上部傾斜面213よりもY方向の一方側に移動することを抑制でき、可動子4が下部案内部材3から外れることを防止することができる。
同様に、第4下部傾斜面314の水平面に対する勾配は、第2下部傾斜面312の水平面に対する勾配よりも大きくなるように構成されていることにより、可動子4が第4下部傾斜面314よりもY方向の他方側に移動することを抑制でき、可動子4が下部案内部材3から外れることを防止することができる。
【0058】
また、上部案内部材2および下部案内部材3を可動子4と相対変位する方向に長くする必要がないため、免震機構1Aを小型化することができる。
また、第1〜
第4上部当接部材42〜45、および第1〜第4下部当接部材46〜49は、それぞれ傾斜面を摺動可能な摺動部材で構成されていることにより、これらの第1〜
第4上部当接部材42〜45、および第1〜第4下部当接部材46〜49が、傾斜面を転動可能な転動部材で構成されている場合と比べて、免震機構の1つあたりの耐荷重を大きくすることができる。
【0059】
(第2実施形態)
次に、他の実施形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1実施形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1実施形態と異なる構成について説明する。
図19に示すように、第2実施形態による免震機構1Bは、可動子4Bの第3上部当接部材44B、第4上部当接部材45B、第3下部当接部材48B、および第4下部当接部材49Bが、第1実施形態のような摺動部材に代わって、それぞれ略同じ形状の3つのローラー(転動部材)7,7,7で構成されている。なお、上部案内部材および下部案内部材は、第1実施形態の上部案内部材2および下部案内部材3(
図1および
図2参照)と同様に構成されている。
【0060】
第3上部当接部材44Bの3つのローラー7,7,7は、それぞれ軸線がY方向に延びる姿勢で一対の上部突出板部412,412の間に配置され、一対の上部突出板部412,412に軸線回りに回転可能に支持されている。3つのローラー7,7,7は、X方向の一方側に向かうに従って漸次下側となる平面状の第1上部仮想傾斜面75aに沿って配置されている。第1上部仮想傾斜面75aは、第1上部当接部材42の上面42aを含む面76aと連続しているとともに、水平面に対する傾斜角度が第1実施形態の第3上部当接部材44の上面44aの水平面に対する傾斜角度と同じθ
2に設定されている。このため、3つのローラー7,7,7は、可動子4Bが第3上部傾斜面213(
図14参照)の下側に配置されると、それぞれ第3上部傾斜面213に当接して第3上部傾斜面213に沿って転動可能に構成されている。
【0061】
第4上部当接部材45Bの3つのローラー7,7,7は、それぞれ軸線がY方向に延びる姿勢で一対の上部突出板部412,412の間に配置され、一対の上部突出板部412,412に軸線回りに回転可能に支持されている。3つのローラー7,7,7、X方向の他方側に向かうに従って漸次下側となる平面状の第2上部仮想傾斜面75bに沿って配置されている。第2上部仮想傾斜面75bは、第2上部当接部材43の上面43aを含む面76bと連続しているとともに、水平面に対する傾斜角度が第1実施形態の第4上部当接部材45の上面45aの水平面に対する傾斜角度と同じθ
2に設定されている。このため、3つのローラー7,7,7は、可動子4Bが第4上部傾斜面214(
図16参照)の下側に配置されると、それぞれ第4上部傾斜面214に当接して第4上部傾斜面214に沿って転動可能に構成されている。
【0062】
第3下部当接部材48Bの3つのローラー7,7,7は、それぞれ軸線がX方向に延びる姿勢で一対の下部突出板部413,413の間に配置され、一対の下部突出板部413,413に軸線回りに回転可能に支持されている。3つのローラー7,7,7は、Y方向の一方側に向かうに従って漸次上側となる平面状の第1下部仮想傾斜面75cに沿って配置されている。第1下部仮想傾斜面75cは、第1下部当接部材46の下面46aを含む面76cと連続しているとともに、水平面に対する傾斜角度が第1実施形態の第3下部当接部材48の下面48aの水平面に対する傾斜角度と同じθ
2に設定されている。このため、3つのローラー7,7,7は、可動子4Bが第3下部傾斜面313(
図10参照)の上側に配置されると、それぞれ第3下部傾斜面313に当接して第3下部傾斜面313に沿って転動可能に構成されている。
【0063】
第4下部当接部材49Bの3つのローラー7,7,7は、それぞれ軸線がX方向に延びる姿勢で一対の下部突出板部413,413の間に配置され、一対の下部突出板部413,413に軸線回りに回転可能に支持されている。3つのローラー7,7,7は、X方向の他方側に向かうに従って漸次上側となる平面状の第2下部仮想傾斜面75dに沿って配置されている。第2下部仮想傾斜面75dは、第2下部当接部材47の下面47aを含む面76dと連続しているとともに、水平面に対する傾斜角度が第1実施形態の第4下部当接部材49の下面49aの水平面に対する傾斜角度と同じθ
2に設定されている。このため、3つのローラー7,7,7は、可動子4Bが第4下部傾斜面314(
図12参照)の上側に配置されると、それぞれ第4下部傾斜面314に当接して第4下部傾斜面314に沿って転動可能に構成されている。
【0064】
図20に示すように、これらのローラー7,7…は、それぞれ外周部に配置されるパイプなどの管体71と、管体71の内部に挿入された軸部72と、軸部72と管体71の内周面との間に充填された減衰材73と、を有している。減衰材73としては、粘弾性体などが採用されている。
【0065】
第2実施形態による免震機構1Bでは、可動子4Bの第3上部当接部材44Bがローラー7,7,7で構成されていることにより、上部案内部材2に対してX方向の一方側に向かう可動子4が第1上部傾斜面211と第2上部傾斜面212との境界を通過し第1上部傾斜面211と接触したときや、第1上部傾斜面211と第3上部傾斜面213の境界を通過し第3上部傾斜面213に接触したときに、第3上部当接部材44Bのローラー7,7,7が転動することで接触の衝撃を吸収することができる。
また、可動子4Bの第4上部当接部材45Bがローラー7,7,7で構成されていることにより、上部案内部材2に対してX方向の他方側に向かう可動子4が第1上部傾斜面211と第2上部傾斜面212との境界を通過し第2上部傾斜面212と接触したときや、第2上部傾斜面212と第4上部傾斜面214の境界を通過し第4上部傾斜面214に接触したときに、第4当接部材のローラー7,7,7が転動することで接触の衝撃を吸収することができる。
これらのことにより、可動子4と上部案内部材2とがスムーズに相対変位することができる。
【0066】
また、可動子4Bの第3下部当接部材48Bがローラー7,7,7で構成されていることにより、下部案内部材3に対してY方向の一方側に向かう可動子4が第1下部傾斜面311と第2下部傾斜面312との境界を通過し第1下部傾斜面311と接触したときや、第1下部傾斜面311と第3下部傾斜面313の境界を通過し第3下部傾斜面313に接触したときに、第3下部当接部材48Bのローラー7,7,7が転動することで接触の衝撃を吸収することができる。
また、可動子4の第4下部当接部材49がローラー7,7,7で構成されていることにより、下部案内部材3に対してY方向の他方側に向かう可動子4が第1下部傾斜面311と第2下部傾斜面312との境界を通過し第2下部傾斜面312と接触したときや、第2下部傾斜面312と第4下部傾斜面314の境界を通過し第4下部傾斜面314に接触したときに、第4下部当接部材49Bのローラー7,7,7が転動することで接触の衝撃を吸収することができる。
これらのことにより、可動子4と下部案内部材3とがスムーズに相対変位することができる。
【0067】
また、ローラー7,7,7は、それぞれ上部当接面21および下部当接面31との衝撃を減衰させる減衰材73を有していることにより、これらの減衰材73が、ローラー7,7,7が上部当接面21または下部当接面31と接触した際の衝撃を吸収することができるため、可動子4と、上部案内部材2および下部案内部材3とがスムーズに相対変位することができる。
また、第3、第4上部当接部材44,45および第3、第4下部当接部材のローラー7,7,7は、第1上部当接部材42および第2上部当接部材43のような摺動部材と比べて摩擦係数が小さいため、可動子4が自重のみでも初期状態の位置に戻りやすくなる。
【0068】
(第3実施形態)
図21および
図22に示すように、第3実施形態による免震機構1Cでは、上部案内部材2Cの第1上部傾斜面211Cと第3上部傾斜面213CとがX方向に連続しておらず、第3上部傾斜面213CのY方向の両側にそれぞれ第1上部傾斜面211C,211Cが形成されている。第1上部傾斜面211C,211Cの水平面に対する傾斜角度は、上記の実施形態と同様にθ
1となっていて、第3上部傾斜面213Cの水平面に対する傾斜角度は、上記の実施形態と同様にθ
2となっている。
2つの第1上部傾斜面211C,211Cは、Y方向から見て重なる位置に配置されている。2つの第1上部傾斜面211C,211CのX方向の一方側の部分と、第3上部傾斜面213CのX方向の他方側の部分とは、Y方向から見て重なる位置に配置されている。この2つの第1上部傾斜面211C,211Cと、第3上部傾斜面213CのY方向から見て重なる部分を第1上部重ね範囲215とする。
【0069】
上部案内部材2Cの第2上部傾斜面212Cと第4上部傾斜面214CとがX方向に連続しておらず、第4上部傾斜面214CのY方向の両側にそれぞれ第2上部傾斜面212C,212Cが形成されている。第2上部傾斜面211C,211Cの水平面に対する傾斜角度は、上記の実施形態と同様にθ
1となっていて、第4上部傾斜面214Cの水平面に対する傾斜角度は、上記の実施形態と同様にθ
2となっている。
2つの第2上部傾斜面212C,212Cは、Y方向から見て重なる位置に配置されている。2つの第2上部傾斜面212C,212CのX方向の他方側の部分と、第4上部傾斜面214CのX方向の一方側の部分とは、Y方向から見て重なる位置に配置されている。この2つの第2上部傾斜面212C,212Cと、第4上部傾斜面214CのY方向から見て重なる部分を第2上部重ね範囲216とする。
【0070】
下部案内部材3Cの第1下部傾斜面311Cと第3下部傾斜面313CとがX方向に連続しておらず、第3下部傾斜面313CのX方向の両側にそれぞれ第1下部傾斜面311C,311Cが形成されている。第1下部傾斜面311C,311Cの水平面に対する傾斜角度は、上記の実施形態と同様にθ
1となっていて、第3下部傾斜面313Cの水平面に対する傾斜角度は、上記の実施形態と同様にθ
2となっている。
2つの第1下部傾斜面311C,311Cは、X方向から見て重なる位置に配置されている。2つの第1下部傾斜面311C,311CのY方向の一方側の部分と、第3下部傾斜面313CのY方向の他方側の部分とは、X方向から見て重なる位置に配置されている。この2つの第1下部傾斜面311C,311Cと、第3下部傾斜面313CのX方向から見て重なる部分を第1下部重ね範囲315とする。
【0071】
下部案内部材3Cの第2下部傾斜面312Cと第4下部傾斜面314CとがX方向に連続しておらず、第4下部傾斜面314CのX方向の両側にそれぞれ第2下部傾斜面312C,312Cが形成されている。第2下部傾斜面312C,312Cの水平面に対する傾斜角度は、上記の実施形態と同様にθ
1となっていて、第4下部傾斜面314Cの水平面に対する傾斜角度は、上記の実施形態と同様にθ
2となっている。
2つの第2下部傾斜面312C,312Cは、X方向から見て重なる位置に配置されている。2つの第2下部傾斜面312C,312CのY方向の他方側の部分と、第4下部傾斜面314CのY方向の一方側の部分とは、X方向から見て重なる位置に配置されている。この2つの第2下部傾斜面312C,312Cと、第4下部傾斜面314CのX方向から見て重なる部分を第2下部重ね範囲316とする。
【0072】
また、
図21および
図23に示すように、第3実施形態では、可動子4Cの第1上部当接部材42Cと第3上部当接部材44CとがX方向に配列されておらず、第3上部当接部材44CのY方向の両側にそれぞれ第1上部当接部材42C,42Cが設けられている。第1上部当接部材42C,42Cの上面42aの水平面に対する傾斜角度は、上記の実施形態と同様にθ
1となっている。第3上部当接部材44の上面44aの水平面に対する傾斜角度は、上記の実施形態と同様にθ
2となっている。
2つの第1上部当接部材42C,42Cは、それぞれ第1上部傾斜面211C,211Cと面接触可能に構成されている。第3上部当接部材44Cは、第3上部傾斜面213Cと面接触可能に構成されている。
【0073】
可動子4Cの第2上部当接部材43Cと第4上部当接部材45CとがX方向に配列されておらず、第4上部当接部材45CのY方向の両側にそれぞれ第2上部当接部材43C,43Cが設けられている。第2上部当接部材43C,43Cの上面43aの水平面に対する傾斜角度は、上記の実施形態と同様にθ
1となっている。第4上部当接部材45の上面45aの水平面に対する傾斜角度は、上記の実施形態と同様にθ
2となっている。
2つの第2上部当接部材43C,43Cは、それぞれ第2上部傾斜面212C,212Cと面接触可能に構成されている。第4上部当接部材45Cは、第4上部傾斜面214Cと面接触可能に構成されている。
【0074】
可動子4Cの第1下部当接部材46Cと第3下部当接部材48CとがY方向に配列されておらず、第3下部当接部材48CのY方向の両側にそれぞれ第1下部当接部材46C,46Cが設けられている。第1下部当接部材46C,46Cの下面46aの水平面に対する傾斜角度は、上記の実施形態と同様にθ
1となっている。第3下部当接部材48の下面48aの水平面に対する傾斜角度は、上記の実施形態と同様にθ
2となっている。
2つの第1下部当接部材46C,46Cは、それぞれ第1下部傾斜面311C,311Cと面接触可能に構成されている。第3下部当接部材48Cは、第3下部傾斜面313Cと面接触可能に構成されている。
【0075】
可動子4Cの第2下部当接部材47Cと第4下部当接部材49CとがY方向に配列されておらず、第4下部当接部材49CのY方向の両側にそれぞれ第2下部当接部材47C,47Cが設けられている。第2下部当接部材47C,47Cの下面47aの水平面に対する傾斜角度は、上記の実施形態と同様にθ
1となっている。第4下部当接部材49の下面49aの水平面に対する傾斜角度は、上記の実施形態と同様にθ
2となっている。
2つの第2下部当接部材47C,47Cは、それぞれ第2下部傾斜面312C,312Cと面接触可能に構成されている。第4下部当接部材49Cは、第4下部傾斜面314Cと面接触可能に構成されている。
【0076】
このような免震機構1Cは、初期状態では、
図21に示すように、上部案内部材2Cの上側中央部21aと、下部案内部材3Cの下側中央部31aとが上下方向に重なり、これらの上部案内部材2Cの上側中央部21aと、下部案内部材3Cの下側中央部31aとの間に可動子4Cが配置されている。
第1上部当接部材42Cは、上面42aが第1上部傾斜面211Cと面接触し、第2上部当接部材43Cは、上面43aが第2上部傾斜面212Cと面接触している。なお、第3上部当接部材44Cは、第1上部傾斜面211Cと上下方向に重ならず離間している。また、第4上部当接部材45Cは、第2上部傾斜面212Cと上下方向に重ならず離間している。
【0077】
第1下部当接部材46Cは、下面46aが第1下部傾斜面311Cと面接触し、第2下部当接部材47Cは、下面47aが第2下部傾斜面312Cと面接触している。なお、第3下部当接部材48Cは、第1下部傾斜面311Cと上下方向に重ならず離間している。また、第4下部当接部材49Cは、第2下部傾斜面312Cと上下方向に重ならず離間している。
【0078】
図24に示すように、可動子4Cが初期状態から下部案内部材3Cに対してY方向の一方側に向かい、第1下部重ね範囲315までの間は、第1下部当接部材46Cが第1下部傾斜面311Cと当接する。このとき、第2下部当接部材47Cは、第2下部傾斜面312Cと離間しているとともに第1下部傾斜面311Cとも離間するため、第1〜第4下部当接部材46C〜49Cのうち、第1下部当接部材46Cのみが下部当接面31と当接し、第2〜第4下部当接部材47〜49Cが下部当接面31と離間した状態となる。なお、
図24では可動子4Cが第1下部傾斜面311Cの上側に配置された状態、および第2下部傾斜面312Cの上側に配置された状態を併せて示している。
【0079】
図25に示すように、更に可動子4Cが下部案内部材3Cに対してY方向の一方側に向かい、第1下部重ね範囲315に到達すると、第1下部当接部材46Cが第1下部傾斜面311Cと当接し、第3下部当接部材48Cが第3下部傾斜面313Cと当接する。このとき、第1〜第4下部当接部材46C〜49Cのうち、第1および第3下部当接部材48Cが下部当接面31と当接し、第2および第4下部当接部材49Cが下部当接面31と離間した状態となる。なお、
図25では可動子4Cが第1下部重ね範囲315、第3下部傾斜面313C,第2下部重ね範囲316、および第4下部傾斜面314Cの上側に配置された状態を併せて示し、上部構造体11の表示を省略している。
【0080】
第1下部重ね範囲315から更に可動子4Cが下部案内部材3Cに対してY方向の一方側に向かう状態では、第3下部当接部材48Cが第3下部傾斜面313Cと当接する。このとき、第1下部当接部材46Cは、第1下部傾斜面311Cと離間するため、第1〜第4下部当接部材46C〜49Cのうち、第3下部当接部材48Cのみが下部当接面31と当接し、第1、第2および第4下部当接部材49Cが下部当接面31と離間した状態となる。
【0081】
図24に戻り、可動子4Cが初期状態から下部案内部材3Cに対してY方向の他方側に向かい、第2下部重ね範囲316までの間は、第2下部当接部材47Cが第2下部傾斜面312Cと当接する。このとき、第1下部当接部材46Cは、第1下部傾斜面311Cと離間しているとともに第2下部傾斜面312Cとも離間するため、第1〜第4下部当接部材46C〜49Cのうち、第2下部当接部材47Cのみが下部当接面31と当接し、第1、第3および第4下部当接部材46C,48C,49Cが下部当接面31と離間した状態となる。
【0082】
図25に示すように、更に可動子4Cが下部案内部材3Cに対してY方向の他方側に向かい、第2下部重ね範囲316に到達すると、第2下部当接部材47Cが第2下部傾斜面312Cと当接し、第4下部当接部材49Cが第4下部傾斜面314Cと当接する。このとき、第1〜第4下部当接部材46C〜49Cのうち、第2および第4下部当接部材49Cが下部当接面31と当接し、第1および第3下部当接部材46C,48Cが下部当接面31と離間した状態となる。
【0083】
第2下部重ね範囲316から更に可動子4Cが下部案内部材3Cに対してY方向の他方側に向かう状態では、第4下部当接部材49Cが第4下部傾斜面314Cと当接する。このとき、第2下部当接部材47Cは、第2下部傾斜面312Cと離間するため、第1〜第4下部当接部材46C〜49Cのうち、第4下部当接部材49Cのみが下部当接面31と当接し、第2、第3および第4下部当接部材46C,47C,49Cが下部当接面31と離間した状態となる。
【0084】
図26に示すように、可動子4Cが初期状態から上部案内部材2Cに対してX方向の一方側に向かい、第1上部重ね範囲215までの間は、第1上部当接部材42C第1上部傾斜面211Cと当接する。このとき、第2上部当接部材43Cは、第2上部傾斜面212Cと離間しているとともに第1上部傾斜面211Cとも離間するため、第1〜第4上部当接部材42C〜45Cのうち、第1上部当接部材42Cのみが上部当接面21と当接し、第2〜第4上部当接部材43C〜45Cが上部当接面21と離間した状態となる。なお、
図26では可動子4Cが第1上部傾斜面211Cの下側に配置された状態、および第2上部傾斜面212Cの上側に配置された状態を併せて示している。
【0085】
図27に示すように、更に可動子4Cが上部案内部材2Cに対してX方向の一方側に向かい、第1上部重ね範囲215に到達すると、第1上部当接部材42Cが第1上部傾斜面211Cと当接し、第3上部当接部材44Cが第3上部傾斜面213Cと当接する。このとき、第1〜第4上部当接部材42C〜45Cのうち、第1および第3上部当接部材44Cが下部当接面31と当接し、第2および第4下部当接部材47C,49Cが下部当接面31と離間した状態となる。なお、
図27では可動子4Cが第1上部重ね範囲215、第3上部傾斜面213C,第2上部重ね範囲216、および第4上部傾斜面214Cの下側に配置された状態を併せて示し、下部構造体12の表示を省略している。
【0086】
第1上部重ね範囲215から更に可動子4Cが上部案内部材2Cに対してX方向の一方側に向かう状態では、第3上部当接部材44Cが第3上部傾斜面213Cと当接する。このとき、第1上部当接部材42Cは、第1上部傾斜面211Cと離間するため、第1〜第4上部当接部材42C〜45Cのうち、第3上部当接部材44Cのみが上部当接面21と当接し、第1、第2および第4上部当接部材42C,43C,45Cが上部当接面21と離間した状態となる。
【0087】
図26に戻り、可動子4Cが初期状態から上部案内部材2Cに対してX方向の他方側に向かい、第2上部重ね範囲216までの間は、第2上部当接部材43Cが第2上部傾斜面212Cと当接する。このとき、第1上部当接部材42Cは、第1上部傾斜面211Cと離間しているとともに第2上部傾斜面212Cとも離間するため、第1〜第4上部当接部材42C〜45Cのうち、第2上部当接部材43Cのみが上部当接面21と当接し、第1、第3および第4上部当接部材42C,44C,45Cが上部当接面21と離間した状態となる。
【0088】
図27に示すように、更に可動子4Cが上部案内部材2Cに対してX方向の他方側に向かい、第2上部重ね範囲216に到達すると、第2上部当接部材43Cが第2上部傾斜面212Cと当接し、第4上部当接部材45Cが第4上部傾斜面214Cと当接する。このとき、第1〜第4上部当接部材42C〜45Cのうち、第2および第4上部当接部材45Cが上部当接面21と当接し、第1および第3上部当接部材42C,44Cが上部当接面21と離間した状態となる。
【0089】
第2上部重ね範囲216から更に可動子4Cが上部案内部材2Cに対してX方向の他方側に向かう状態では、第4上部当接部材45Cが第4上部傾斜面214Cと当接する。このとき、第2上部当接部材43C、第2上部傾斜面212Cと離間するため、第1〜第4上部当接部材42C〜45Cのうち、第4上部当接部材45Cのみが上部当接面21と当接し、第1〜第3上部当接部材42C〜44Cが上部当接面21と離間した状態となる。
【0090】
第3実施形態による免震機構1Cによれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。
また、可動子4Cが第1上部重ね範囲215をX方向の一方側に向かって移動することによって、可動子4Cと上部案内部材2Cとの相対変位を減速させることができるとともに、可動子4Cが第2上部重ね範囲216をX方向の他方側に向かって移動することによって、可動子4Cと上部案内部材2Cとの相対変位を減速させることができる。これにより、可動子4CがX方向に大きく移動することがないため、上部案内部材2CのX方向の長さを抑えることができる。
【0091】
また、可動子4Cが第1下部重ね範囲315をY方向の一方側に向かって移動することによって、可動子4Cと下部案内部材3Cとの相対変位を減速させることができるとともに、可動子4Cが第2下部重ね範囲316をY方向の他方側に向かって移動することによって、可動子4Cと下部案内部材3Cとの相対変位を減速させることができる。これにより、可動子4CがY方向に大きく移動することがないため、上部案内部材2CのY方向の長さを抑えることができる。
【0092】
また、第1上部重ね範囲215、第2上部重ね範囲216、第1下部重ね範囲315、および第2下部重ね範囲316では、復元力F
3は下式(4)のように表される。
【0094】
このため、第1上部重ね範囲215、第2上部重ね範囲216、第1下部重ね範囲315、および第2下部重ね範囲316の寸法を調整することによって、所望の位置で減速させることができる。
【0095】
以上、本発明による免震機構の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の第1実施形態では、第1〜第4上部当接部材42〜45は上部当接面を摺動可能に構成されているが、転動可能に構成されていてもよい。また、第1〜第4下部当接部材46〜49は下部当接面を摺動可能に構成されているが、転動可能に構成されていてもよい。
また、上記の第2実施形態では、第3上部当接部材44、第4上部当接部材45、第3下部当接部材48、および第4下部当接部材49は、それぞれ3つのローラー7,7,7を有しているが、ローラー7の数は適宜設定されていてもよい。
また、上記の第2実施形態では、第1〜第4上部当接部材42〜45および第1〜第4下部当接部材46〜49はローラー7で構成されているが、ローラー7に代わってベアリングで構成されていてもよい。
また、上記の実施形態では、ローラー7は、減衰材73を有しているが、減衰材73を有していなくてもよい。
【0096】
また、上記の実施形態では、第1上部傾斜面211のX方向の一方側に第3上部傾斜面213が形成され、第2上部傾斜面212のX方向の他方側に第4上部傾斜面214が形成され、第1下部傾斜面311のY方向の一方側に第3下部傾斜面313が形成され、第2下部傾斜面312のY方向の他方側に第4下部傾斜面314が形成されている。これに対し、第3上部傾斜面213のX方向の一方側に更に勾配が大きい傾斜面が形成され、第4上部傾斜面214のX方向の他方側に更に勾配が大きい傾斜面が形成され、第3下部傾斜面313のY方向の一方側に更に勾配が大きい傾斜面が形成され、第4下部傾斜面314のY方向の他方側に更に勾配が大きい傾斜面が形成され、これらの傾斜面を可動子4Cが移動し、減速されるように構成されていてもよい。
【0097】
また、上記の第3実施形態では、第1上部傾斜面211Cが第3上部傾斜面213CのY方向の両側それぞれに配置され、第2上部傾斜面212Cが第4上部傾斜面214CのY方向の両側それぞれに配置され、第1下部傾斜面311Cが第3下部傾斜面313CのX方向の両側それぞれに配置され、第2下部傾斜面312Cが第4下部傾斜面314CのX方向の両側それぞれに配置されている。これに対し、第3上部傾斜面213Cが第1上部傾斜面211CのY方向の両側それぞれに配置され、第4上部傾斜面214Cが第2上部傾斜面212CのY方向の両側それぞれに配置され、第3下部傾斜面313Cが第1下部傾斜面311CのX方向の両側それぞれに配置され、第4下部傾斜面314Cが第2下部傾斜面312CのX方向の両側それぞれに配置されていてもよい。