(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
カーペットや、劇場や映画館、車両、家庭用ソファなどの座席などの繊維製品には臭い物質が吸着しやすい。例えば、映画館や車両の座席などは取り外しができないために、脱臭スプレーなどを吹きかけて脱臭処理をしているが、座席の表面のみが脱臭されるだけであって、座席の内部の脱臭にはほとんど効果がない。
また、床や壁に含まれる揮発性有機化合物(VOC)を除去する空気浄化装置が知られている。例えば、特開2007−152026号公報(特許文献1)にその構造が開示されていて、
図8に示されている。
【0003】
図8において、空気浄化装置20は、清掃ヘッド21を有し、図示しない加熱部で加熱された空気が、送風路22を介して送風室24に送られ、その下端の吹出口26から床面などに吹き付けられ、建材に含まれる揮発性ガス(VOCガス)を揮発させる。
揮発したVOCガスは吸込口27から吸引室25内に吸い込まれ、ここでオゾン発生器30からのオゾンによって酸化分解し、VOCガスが除去された空気は吸引路23を経て外部に排気されるものである。
【0004】
このように、特許文献1の装置は、建材に含まれるVOCガスを吸引し、この吸引されたVOCガスを清浄ヘッド内でオゾンにより分解除去するものであって、座席などの繊維製品の内部に含まれる臭い物質を分解除去するものではない。
つまり、建材等の対象物から吸引したVOCガスをオゾンによって分解処理するにすぎない。
仮にこの空気浄化装置をカーペットや座席など、洗浄できない繊維製品の脱臭に利用した場合には、オゾンはこの繊維製品から吸い出されたVOCガスの分解にのみにしか利用されない。つまり、繊維製品の内部にまでオゾンを供給するものではないので、脱臭対象物の内部に残留する臭い成分の分解除去はできないという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、上記従来技術の問題点に鑑みて、脱臭箇所にオゾンを含む気体を供給して、脱臭箇所の脱臭を行う脱臭装置であって、繊維製品などの脱臭対象物の内部に存在する臭い物質を分解除去することのできる脱臭装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明に係わる脱臭装置は、脱臭箇所に当接される脱臭ヘッドを備え、前記脱臭ヘッドは、オゾンを含む気体を前記脱臭箇所に供給する給気口が設けられた第1室と、前記第1室と隣接して設けられ、前記脱臭箇所に供給された気体を吸引する排気口が設けられた第2室と、前記第1室と前記第2室を隔離する隔壁とを有することを特徴とする。
また、前記隔壁が前記脱臭ヘッドの下端にまで延在して設けられていることを特徴とする。
また、前記第1室には、波長200nm以下の紫外線を放射する紫外線ランプが設けられていることを特徴とする。
また、前記第2室には、オゾン分解手段が設けられていることを特徴とする。
また、前記第2室内には、波長230〜300nmの光を放射する紫外線ランプが配置されていることを特徴とする
【発明の効果】
【0008】
この発明にかかる脱臭装置によれば、オゾンを含む気体を第一室の給気口から繊維製品などの脱臭対象物の脱臭箇所に供給して、当該脱臭対象物の内部にまでオゾンを供給するので、当該脱臭対象物の内部に含まれている臭い物質をオゾンにより効果的に分解除去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に本発明のオゾンを利用した脱臭装置1が示されていて、この脱臭装置1は、下端に脱臭ヘッド2を備えるとともに、一対の給気路3と排気路4とを備えている。これら給気路3の下端は第1室5に連結され、排気路4の下端は第2室6にそれぞれ連結されている。
図1(B)にも示すように、前記第1室5と第2室6とは隔壁7によって隔離されていて、第1室5の下端には給気口8が形成され、第2室6の下端には排気口9が形成されている。そして、隔壁7は、脱臭ヘッド2の下端にまで延在していて、脱臭ヘッド2が座席やカーペットなどの脱臭対象物Wの脱臭箇所に当接されたとき、当該隔壁7も脱臭対象物Wの脱臭箇所に当接する。
【0011】
前記給気路3中には、オゾン供給手段として紫外線ランプ10が設けられている。この紫外線ランプ10は、波長200nm以下の紫外線(真空紫外線)を放射するものである。その一例としては、キセノンエキシマランプが採用される。
また、前記排気路4中には、オゾン分解手段11が設けられている。このオゾン分解手段11は、オゾン分解触媒(フィルター)や、活性炭、ハロゲンヒータなどの熱源、波長230〜300nmの光を放射する紫外線光源(ランプやLEDなど)が用いられる。
【0012】
図1に示すように、脱臭装置1の脱臭ヘッド2は、座席やカーペットなどの脱臭対象物Wの脱臭箇所に当接される。ここで、給気路3から空気が供給されると、紫外線ランプ10からの真空紫外光によって空気中の酸素からオゾンが発生し、そのオゾンと空気とは、第1室5を経てその下端の給気口8から脱臭対象物Wに吹き付けられて、その内部にまで到達し、ここで臭い物質と反応してこれを分解する。
次いで、空気は排気口9から第2室6内に吸引され、排気路4を経て外部に排出される。このとき、排気路4中のオゾン分解手段11によって残留するオゾンが分解除去されて排気される。これにより、作業者に不快感を与えることがなくなる。
【0013】
このとき、第1室5と第2室6を隔離する隔壁7は、脱臭ヘッド2の下端にまで延在しているので、当該隔壁7もまた脱臭対象物Wに当接し、第1室5の給気口8からの空気およびオゾンが、第2室6の排気口9に短絡的に流入することがなく、脱臭対象物Wの内部に的確に到達する。
そして、脱臭対象物Wの内部に滞留する臭い物質を確実に分解除去する。
なお、前記隔壁7は脱臭ヘッド2の下端まで延在して、脱臭対象物Wに当接すると記載したが、厳密な意味で脱臭ヘッド2の下端と全く一致している必要はなく、第1室5の給気口8からの供給された空気およびオゾンが、第2室6の排気口9に短絡的に流入してしまって脱臭対象物Wの内部に到達しなくなることを防止できる程度であってよい。
【0014】
なお、上記構成において、給気路3には送風ファンが、排気路4には吸引ファンが設けられるが、風量などによってはこのうち吸引ファンのみで対応することもできる。
また、上記実施例において、給気路3と第1室5、および排気路4と第2室6はそれぞれ別構造として記載したが、それぞれが一体化した構造、つまり、給気路3と第1室5が一体化し、また、排気路4と第2室6が一体化した構造であってもよい。
【0015】
図2には脱臭ヘッド2の異なる第2実施例が示されていて、
図2(B)に示しように、第1室5と、第2室6とは、同心状に配置されている。即ち、第1室5の円周上の周囲に第2室6が形成されているものである。なお、
図2(B)で示すように、ここでは、第1室5および第2室6は、断面4角形状とされているが、同心円形状であってもよいし、同心楕円形状であってもよい。
更には、
図3に示すように、第1室5と第2室6は同心状でなくてもよく、中央に第1室5が、その両側に第2室6が配置されるものであってもよい。
この第2実施例では、中央の第1室5から空気およびオゾンが脱臭対象物Wに供給されて、その内部に至り、ここで臭い物質を分解除去し、外側にある第2室6を経て排気される。
【0016】
図4に第4実施例が示されていて、この実施例では、
図2の第2実施例における第1室5と第2室6との関係が逆になっていて、中央に第2室6が配置され、その周囲に第1室5が配置されているものである。
この場合も、第1室5には紫外線ランプ10が配置され、第2室6にはオゾン分解手段11が配置されている。
この第4実施例では、周囲の第1室5に流入する空気が紫外線ランプ10からの紫外線に曝されてオゾンを発生し、このオゾンと空気が脱臭対象物Wの内部に流入して対流する臭い物質を分解除去する。そして、脱臭処理後の空気は、中央の第2室6内に吸引されてオゾン分解手段11により残留するオゾンが分解除去された後に、排気路4から外部に排気される。
【0017】
図5に他の第5実施例が示されていて、(A)は側断面図、(B)はそのB−B断面図、(C)はC−C断面図である。
この実施例では、隔壁7によって隔離された第1室5内には波長200nm以下の紫外線(真空紫外線)を放射する紫外線ランプ10(真空紫外線ランプ)が配置され、第2室6内には、例えば、波長230〜300nmの光を放射する紫外線ランプ12が配置される。
この紫外線ランプ12としては、キセノンエキシマランプの発光管に真空紫外線で励起される蛍光体を塗布した蛍光体ランプを用いることができる。そして、このような波長域の光を放射する蛍光体としては、プラセオジウムリン酸賦活ランタンや、プラセオジウム賦活アルミノホウ酸イットリウムなどが挙げられる。
また、第1室5に連結された給気路3には送風ファン13が設けられ、第2室6に連結された排気路4には吸引ファン14がそれぞれ設けられている。
【0018】
送風ファン13によって給気路3を経て第1室5の送り込まれた空気は、真空紫外線ランプ10からの真空紫外線によってオゾンを発生し、このオゾンが脱臭対象物W中に送り込まれて臭い物質を分解する。そして、第2室6内の紫外線ランプ12からの紫外線が脱臭箇所に直接照射され、この脱臭箇所に存在する臭い物質を光の作用で分解する。
またこのとき、第1室5内で発生して脱臭箇所に到達したオゾンに紫外線ランプ12からの光が吸収されて活性酸素種やラジカルが生成され、これらも脱臭対象物Wの脱臭に寄与するので、脱臭効果がより大きくなる。
こうして脱臭作用を行った気体は、吸引ファン14により排気路4を経て外部に排気される。
【0019】
以上の実施例では、第1室でのオゾン生成手段として真空紫外線ランプを用いたものであるが、これに限られず、プラズマ放電や無声放電を利用したものであってもよい。
図6に真空紫外線ランプ以外のオゾン生成器をもった脱臭装置が示されていて、第1室5の給気路3に、プラズマ放電や無声放電を利用したオゾン生成器
15が備えられている。
給気路3に流入した空気からオゾン生成器
15によってオゾンが発生し、これが第1室5の吸気口8から脱臭対象物Wに供給されるものである。
【0020】
本発明の効果を実証する実験を行った。
サンプルとして、7cm×7cmのカーペットを9枚用意して3グループに分け、各グループの3枚のカーペットにそれぞれ以下3種類の悪臭物質溶液を滴下した。
(1)第1グループの3枚には、trans−2−ノネナール(和光純薬工業 和光一級)を10マイクロリットル滴下。
(2)第2グループの3枚には、イソ吉草酸(和光純薬工業 和光特級)を純水で1000倍希釈した溶液を10マイクロリットル滴下。
(3)第3グループの3枚には、25%アンモニア水(和光純薬工業 和光一級)を10マイクロリットル滴下。
この各グループの3種類のサンプルの各々に対して、
(1)本発明の第1実施例に基づく脱臭装置による処理を30秒間処理。
(2)第1実施例の真空紫外線ランプを消灯し、吸引のみを30秒間(比較例1)。
(3)何もせず放置(比較例2)。
の3種類の処理を行った。
【0021】
<臭いの評価方法とその結果>
5人の評価者による感応評価を行った。具体的には、前記3種類の悪臭物質のサンプルにそれぞれ前記3種類の処理を行い、処理後のサンプルの溶液滴下部に鼻を近づけて感じる臭いの強さの順に順位付けを行った。
臭いの表示は以下の6段階臭気強度表示法に従って採点した。
<臭気強度の評価基準(6段階臭気強度表示法)>
5点:強烈な臭い
4点:強い臭い
3点:楽に感知できる臭い
2点:何の臭いか分かる弱い臭い
1点:やっと感知できる臭い
0点:無臭
その結果が、
図7の表1〜3に表されている。いずれの場合も本発明の効果が実証された。
【0022】
以上説明したように、本発明に係る脱臭装置によれば、脱臭を行う座席やカーペットなどの繊維製品の内部にまでオゾンを供給するので、当該部位に浸み込んだ臭い物質をオゾンによって効果的に分解除去することができる。
また、第1室から脱臭対象物に供給されたオゾンは、該脱臭対象物の内部に到達した後に、第2室に移動するため、脱臭箇所にオゾンが集中するので、それ以外の領域におけるオゾン濃度を高濃度としなくても効率的な脱臭効果が得られる。このとき、第1室と第2室を隔離する隔壁を脱臭箇所に当接するように延在させることで、オゾンが第1室から第2室に短絡的に流れることがなく、脱臭箇所の深部にまで到達して効果的に臭い物質を分解除去することができる。