(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記見守り対象移動予測手段は、見守り対象の推定現在地を含むエリアのマップデータから移動可能経路を特定し、見守り対象の移動速度vと移動時間tとに基づく移動距離Lだけ全ての移動可能経路上を移動した地点までを移動予測範囲として求め、
前記ビーコン発信タイミング変更判定手段は、移動予測範囲と危険エリアとの重なりである侵入距離と、移動予測範囲の総距離との割合が、所定のビーコン発信タイミング変更条件を満たしているか否かに基づいて、ビーコン発信タイミングの変更可否を判定する、
ようにしたことを特徴とする請求項1に記載の見守りシステム。
前記見守り対象移動予測手段は、見守り対象の推定現在地を含むエリアのマップデータから移動可能経路を特定し、見守り対象の移動速度vと移動時間tとに基づく移動距離Lだけ全ての移動可能経路上を移動した移動予測地点を求め、全ての移動予測地点を包含する凸包領域を移動予測範囲とし、
前記ビーコン発信タイミング変更判定手段は、移動予測範囲と危険エリアとの重なりである侵入面積と、移動予測範囲の全面積との割合が、所定のビーコン発信タイミング変更条件を満たしているか否かに基づいて、ビーコン発信タイミングの変更可否を判定する、
ようにしたことを特徴とする請求項1に記載の見守りシステム。
前記ビーコン発信タイミング変更制御手段は、見守り対象移動予測手段による見守り対象の移動予測範囲が所定の危険エリアに接する境界値よりも短い時間を発信変更時間に設定するようにしたことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の見守りシステム。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、添付図面に基づいて、本発明に係る見守りシステムを高齢者の見守りに適用した実施形態につき説明する。
【0016】
図1に示す見守りシステム1は、少なくとも、見守り対象者が所持するビーコン発信装置2と、このビーコン発信装置2からのビーコンを受信するビーコン受信装置としての中継装置3と、この中継装置3とネットワーク4を介して接続される見守り管理サーバ5と、を含む。
【0017】
ビーコン発信装置2は、見守り対象者が携帯し易いように軽量小形に構成することが望ましく、その動作用電源として小型・低容量のバッテリーを用いる。このため、ビーコン発信装置2を低消費電力化して運用する工夫が重要となる。
【0018】
中継装置3は、ビーコン発信装置2を所持する見守り対象者が生活する行動範囲をカバーできるように、屋内および屋外になるべく多く設置されていることが望ましい。そのために、本見守りシステム1専用の中継装置3を多数設置してインフラを整備するには、コストも期間も相当かかることになる。しかしながら、屋内外に設置されている既存の通信設備(例えば、通信キャリアが設置した基地局、電気メータやガスメータ等のWi−SUN(登録商標)機器など)に対して、ビーコン発信装置2との双方向通信が可能な機能を付加することにより、中継装置3として利用すれば、低コスト且つ短期間に見守りシステム1の適用範囲を広げることができる。
【0019】
なお、中継装置3の設置場所や、ビーコン発信装置2を所持する見守り対象者の現在位置によって、中継装置3が複数のビーコン発信装置2からのビーコンを受信したり(
図1においては、中継装置3aがビーコン発信装置2a,2bの受信エリア、中継装置3bがビーコン発信装置2c,2dの受信エリア、中継装置3cがビーコン発信装置2e,2fの受信エリア)、1つのビーコン発信装置2からのビーコンを複数の中継装置3で受信したり(
図1においては、ビーコン発信装置2fが中継装置3c,3dの受信エリア)することとなる。各中継装置3は、原則として、受信した全てのビーコンに対応する見守り対象特定情報を見守り管理サーバ5へ送信する。
【0020】
見守り管理サーバ5は、ネットワーク4を介して、中継装置3から見守り対象特定情報(後に詳述する)を受信し、見守り対象者の現在位置(実質的に、ビーコン発信装置2の現在位置)を推定し、これから見守り対象者に危険が及ぶ虞がないかを判定し、必要に応じて、見守り実行者(見守り対象の家族など)に危険を報らせたり、見守り対象者の行動を細かく把握できるように、中継装置3へ指示する。
【0021】
このように、見守りシステム1では、ビーコン発信装置1からのビーコンに基づく諸情報が中継装置3を介して見守り管理サーバ5へ送信され、見守り対象者の安全が脅かされる可能性が低いと見守り管理サーバ5が判定した場合には、ビーコン発信装置2からのビーコン送信間隔は比較的長い時間として、ビーコン発信装置2の電力消費を抑制する一方、見守り対象者の安全が脅かされる可能性が高いと見守り管理サーバ5が判定した場合には、ビーコン発信装置2からのビーコン送信間隔を短くして、見守り対象者の行動を詳細に把握するのである。従って、見守りシステム1によれば、見守り対象者の安全を損なうことがないように、ビーコン発信装置2の省電力化を効率的に実現できる。
【0022】
次に、ビーコン発信装置2、中継装置3、見守り管理サーバ5の詳細な機能を、
図2のシーケンス図を参照しつつ説明する。
【0023】
ビーコン発信装置2は、ビーコンの発信間隔の基準となる発信基準時間を計る発信基準時間計時手段21を備え、発信基準時間計時手段21によって発信基準時間の経過が判断されると、ビーコンが発信される。なお、ビーコンのパケット構造は特に限定されるものではないが、少なくとも、識別情報記憶手段22に記憶されている自機のユニークな識別情報(例えば、MACアドレス)を含ませておく。そして、ビーコン送信手段23によって送信された無指向性で一定強度のビーコンは、その受信可能範囲にある全ての中継装置3によって受信される。
【0024】
なお、上記発信基準時間計時手段21によって計時される発信基準時間は、ビーコン発信装置2の初期設定によって任意の時間に設定することが可能である。また、外部(例えば、見守り管理サーバ5)からの発信基準時間変更コマンドを受信することで、そのコマンドに応じた発信基準時間を計時するように、発信基準時間計時手段21のカウント時間を変更できる機能を持たせておけば、ビーコン発信装置2の発信基準時間を任意のタイミングで変更することが可能となる。
【0025】
中継装置3は、ビーコン受信手段31によってビーコン発信装置2からのビーコンを受信し、その受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indication, Received Signal Strength Indicator)を一時的に記憶しておく。ビーコンを受信した中継装置3は、そのビーコンの発信元が見守り対象者の所持するビーコン発信装置2に該当するか否かを判定するビーコン判定処理を、フィルタリングマップを参照して行う。なお、フィルタリングマップは、事前に設定されたMACアドレスの範囲として各中継装置3に記憶させておいても良いし、見守り管理サーバ5から適宜なタイミングで提供されるようにしても良い。
【0026】
中継装置3がビーコン判定処理を行い、見守り対象者が所持するビーコン発信装置2からのビーコンであると判定した場合、見守り対象特定情報を見守り管理サーバ5へ送信する。なお、見守り対象特定情報のパケット構造は特に限定されるものではないが、例えば、当該ビーコン送信元のMACアドレス(ビーコン発信装置2のユニーク情報)、当該ビーコンの受信時刻、当該ビーコンのRSSI、自機のルータID(自局情報記憶手段32に記憶されているユニークな識別情報)、自機のロケーション情報(自局情報記憶手段32に記憶されている自機の位置情報)を含ませておく。
【0027】
中継装置3の見守り対象特定情報送信手段33により送信された見守り対象特定情報を受信した見守り管理サーバ5は、見守り対象位置推定手段51によって、見守り対象者の現在位置(ビーコン発信装置2の現在位置)を推定する。
【0028】
なお、ビーコン発信装置2の現在位置をリアルタイムに推定する手法は特に限定されるものではないが、本実施形態においては、ビーコン発信装置2の省電力化を期するために、ビーコン発信装置2からのビーコンを複数の中継装置3で受信して、それぞれの中継装置3におけるビーコンのRSSI値から、ビーコン発信装置2の位置を推定するものとした。すなわち、
図3に示すように、六角形のエリア1〜エリア15に分割した地域内に中継装置3が分散配置されているとき、それぞれのエリアにビーコン発信装置2をおいたときに、そのビーコンを各中継装置3が受信するRSSI値からRSSIマップを事前に作成しておき、RSSIマップとのパターンマッチングによって、ビーコン発信装置2の存在エリアを推定するのである。
【0029】
なお、ビーコン発信装置2の現在位置をリアルタイムに推定する他の手法としては、ビーコン発信装置2に測位手段24を設けておき、4つ以上のGPS衛星が見える開けた所で衛星測位を行い、その位置情報を含ませたビーコンを送信し、この位置情報を見守り対象特定情報に含ませて見守り管理サーバ5へ送信する方法がある。この方法によれば、ビーコン発信装置2の現在地位をピンポイントで特定することができる反面、GPS衛星との通信のために消費電力が増えてしまうというデメリットもある。
【0030】
上記のようにして、見守り対象者の現在位置を推定した見守り管理サーバ5では、見守り対象移動予測手段52によって、見守り対象者が任意時間の経過後に移動する可能性のある移動予測範囲を求める見守り対象移動予測処理を行う。見守り対象者の移動予測手法も特に限定されるものではないが、最も単純な手法として、見守り対象者の現在位置から360゜の全方位へ移動可能と過程した円形領域内を移動予測範囲とする場合を説明する。
【0031】
図4(a)に示すように、RSSIマップから見守り対象者がいるであろうと推定されたエリアをビーコン発信エリアとし、このビーコン発信エリアの中心Oから六角形の頂点までの距離E
hexを半径とする円形領域内に見守り対象者がいるものと考えられる。そして、見守り対象者が移動速度v〔m/s〕で移動した場合、移動時間t〔秒〕の後に進む距離r〔m〕は、v×tで求められるので、見守り対象者の移動予測範囲は、E
hex+rを半径とする円形範囲と予測できる。なお、見守り対象者の移動速度vは、年齢等で標準化された値を用いても良いし、予め作成しておいた見守り対象者データベースから、該当する見守り対象者の通常歩行速度を読み出して用いても良い。
【0032】
なお、ビーコン発信装置2に測位手段24を設けた場合は、
図4(b)に示すように、ビーコン発信装置2の現在位置Oから半径rの円形範囲が見守り対象者の移動予測範囲となる。
【0033】
上記のように、任意時間経過後の見守り対象移動予測範囲を見守り対象移動予測手段52によって得ることができるので、ビーコン発信タイミング変更判定手段53は、ビーコン発信装置2の発信基準時間経過後における見守り対象の移動予測範囲を求め、この移動予測範囲が所定の危険エリアに侵入している割合が、所定のビーコン発信タイミング変更条件を満たしているか否かに基づいて、ビーコン発信タイミングの変更を行うか否かのビーコン発信タイミング変更判定処理を行う。
【0034】
例えば、ビーコン発信装置2に設定されている発信基準時間が経過した時の見守り対象移動予測範囲が危険エリアに侵入していなければ、このビーコン発信装置2から次回に発されるビーコンを受信した時に、見守り対象者の推定位置が危険エリアになる可能性は無い、もしくは極めて低い。従って、比較的長い期間である発信基準時間を変更する必要は無いと判定できる。
【0035】
一方、ビーコン発信装置2に設定されている発信基準時間が経過した時の見守り対象移動予測範囲が危険エリアに侵入していれば、このビーコン発信装置2から次回の発信タイミングに出力されるビーコンを受信した時には、見守り対象者の推定位置が危険エリアになっている可能性がある。危険エリアとは、河川敷の護岸など地形的に危険なエリアや、立ち入り禁止となっている危険建造物の敷地内などであり、見守り対象者の身に危険が及ぶ可能性があるエリアである。従って、この危険を回避するためには、比較的長期間の発信基準時間の経過を待つこと無く早いタイミングで次回のビーコンを送信させるように、次のビーコン発信までのインターバルを短い時間に変更し、見守り対象者が危険エリアに侵入する可能性が低い時点で、ビーコン発信装置2からビーコンを発信させることが望ましい。
【0036】
しかしながら、見守り対象者の移動予測範囲が危険エリアに侵入していても、それは、見守り対象者が即座に危険に遭遇する事を示すものでは無い。あくまでも、ビーコン発信装置2の現在位置と推定される場所から、見守り対象者が危険エリアに向かって移動速度を落とすこと無く進んだ希有なケースとして、危険エリアに到達してしまう可能性を示すものである。よって、見守り対象者の移動予測範囲が危険エリアに少しでも侵入していれば、ビーコン発信タイミング変更条件を満たすものと設定した場合、見守り対象者が危険エリアに到達する前に次の移動位置を把握することができるものの、過剰にビーコン発信タイミングを早めることとなり、それだけビーコン発信装置2のバッテリー切れを早めてしまう。すなわち、見守り対象者の危険回避とビーコン発信タイミングの短縮化とは、トレードオフの関係にあり、ほどよいバランスがとれるようにビーコン発信タイミング変更条件を設定することが望ましい。
【0037】
そこで、見守り対象者が危険に遭遇する度合いを定量的に判断する値として、危険度判定値P
danger(t)を設定する。この危険度判定値P
danger(t)は、t経過後における見守り対象者の移動予測範囲の面積A
moving(t)に対して、危険エリアに侵入した危険エリア侵入範囲A
intersect(t)の占める割合である(P
danger(t)=A
intersect(t)/A
moving(t))。
【0038】
この危険度判定値P
danger(t)がビーコン発信タイミング変更条件を満たす値を低く設定(例えば、0<P
danger(t)≦10%)すると、見守り対象者の危険回避可能性を高くできる反面、ビーコン発信装置2からのビーコン発信が頻回となって電力の消耗を早めてしまう。一方、危険度判定値P
danger(t)がビーコン発信タイミング変更条件を満たす値を高く設定(例えば、10%<P
danger(t))すると、ビーコン発信装置2からのビーコン発信を極力抑制できる反面、見守り対象者に対する危険回避の信頼性が損なわれてしまうおそれがある。
【0039】
このように、危険度判定値P
danger(t)の設定は任意設計事項であり、見守りシステム1の実施環境等に応じて適切な値に設定すれば良い。ここで、
図5を参照しつつ、ビーコン発信タイミング変更判定処理の一例を説明する。
【0040】
ビーコン発信装置2の発信基準時間が5分であれば、見守り対象者の移動予測範囲は5分後の移動予測外縁の内側領域となり、危険エリアには侵入していないので、A
intersect(5)=0であるから、P
danger(t)=0%となり、ビーコン発信タイミング変更条件を満たさないので、ビーコン発信タイミングの変更判定とはならない。
【0041】
一方、ビーコン発信装置2の発信基準時間が10分であれば、見守り対象者の移動予測範囲は10分後の移動予測外縁の内側領域となり、危険エリアには侵入している割合(例えば、A
intersect(10)/A
moving(10)=0.08)からP
danger(10)=8%となる。ここで、ビーコン発信タイミング変更条件が「P
danger(10)>10%」であれば、P
danger(10)はビーコン発信タイミング変更条件を満たさないので、ビーコン発信タイミングの変更判定とはならない。しかしながら、ビーコン発信タイミング変更条件が「P
danger(10)>5%」であれば、P
danger(10)はビーコン発信タイミング変更条件を満たすので、ビーコン発信タイミングの変更判定となる。
【0042】
上記のように、ビーコン発信タイミング変更判定手段53によってビーコン発信タイミングを変更すると判定されると、この見守り対象者の見守り実行者ら(たとえば、親族や見守りサービス運営会社など)にアラートを送信し、見守り対象者が危険エリアへ侵入する可能性があることを報らせる。加えて、ビーコン発信タイミング変更制御手段54が、発信基準時間よりも短い発信変更時間を設定し、この発信変更時間によるビーコン発信タイミングを該当する中継装置3へ指示する。
【0043】
なお、ビーコン発信タイミング変更制御手段54によって設定する発信変更時間の決定手法は特に限定されるものでは無く、少なくとも、発信基準時間(通常のビーコン発信間隔)よりも短い時間とすることで、より早く危険エリアへの侵入状況等を把握できれば良い。
【0044】
例えば、見守り対象移動予測手段52による見守り対象の移動予測範囲が危険エリアに接する境界値となる移動時間(境界時間)を取得し、この境界時間よりも短い時間を発信変更時間に設定すれば、確実に、見守り対象者が危険エリアに到達する前に、次回のビーコン送信を行わせることができる。
図5においては、7分後の移動予測外縁が危険エリアに接しているので、境界時間=7〔分〕となり、発信変更時間を7分よりも短い時間とすれば良い。
【0045】
あるいは、見守り対象移動予測手段52によって、見守り対象の移動予測範囲が危険エリアに侵入している割合が、ビーコン発信タイミング変更条件と一致する移動時間(変更臨界時間)を取得し、この変更臨界時間よりも短い時間を発信変更時間に設定すれば、確実に、ビーコン発信タイミング変更条件が成立する前に、次回のビーコン送信を行わせることができる。
【0046】
上記のようにして、見守り管理サーバ5のビーコン発信タイミング変更制御手段54の制御によって発信変更時間が設定され、その発信変更時間を含む発信タイミング変更指示を中継装置3が受けると、発信タイミング制御信号送信手段34によって、対象となるビーコン発信装置2へ発信タイミング制御信号が送信される。なお、ビーコン発信装置2のビーコンを複数の中継装置3が受信していた場合、該当する全ての中継装置3へ発信タイミング変更指示を送信しても良いし、RSSI値の最も高い中継装置3のみへ発信タイミング変更指示を送信しても良い。
【0047】
中継装置3からのビーコン発信タイミング制御信号を受けたビーコン発信装置2は、ビーコン送信タイミング補正手段25によって、ビーコン送信タイミング補正処理を行い、前回のビーコン送信から発信変更時間が経過した時(発信基準時間が経過する前)に、ビーコンを発する。
【0048】
なお、ビーコン発信装置2のビーコン送信タイミング補正手段25は、発信変更時間を自律的に計時して、発信変更時間の経過時にビーコン送信手段23を動作させ、発信基準時間経過前にビーコンを発信させるものとしたが、ビーコン送信タイミングを補正する手法は、これに限定されるものでは無い。例えば、見守り管理サーバ5によって発信変更時間を計時し、発信変更時間の経過時に、見守り管理サーバ5から中継装置3を介して目的とするビーコン発信装置2へビーコンリクエストを送り、このビーコンリクエストを受信したビーコン発信装置2が直ちにビーコンを送信するようにしても構わない。
【0049】
また、見守り管理サーバ5が行う発信基準時間経過後の見守り対象移動予測で得られた見守り対象移動予測範囲がビーコン発信タイミング変更条件を満たしていなかった場合は、より長い移動時間である安全想定時間(例えば、発信基準時間の2倍の時間)で見守り対象移動予測範囲を求め、それでもビーコン発信タイミング変更条件を満たしていなかった場合、すなわち、発信基準時間よりも長い安全想定時間の経過後でも見守り対象者に危険が及ぶおそれが無いと考えられる場合には、その安全想定時間の経過時にビーコン発信装置2が次回のビーコンを発するようなビーコン発信タイミング制御信号を見守り管理サーバ5が送信するようにしても良い。かくすれば、ビーコン発信装置2からビーコンが発信される間隔が、発信基準時間よりも長くなるので、一層の省電力化を期待できる。
【0050】
上記のように変更されたビーコン発信タイミングにビーコン発信装置2から発されたビーコンを受信した中継装置3は、前述したと同様にビーコン判定処理を行って見守り対象特定情報を見守り管理サーバ5へ送信し、この見守り対象特定情報を受けた見守り管理サーバ5は、前述したと同様に、見守り対象位置推定処理、見守り対象移動予測処理、ビーコン発信タイミング変更判定処理、必要に応じてビーコン発信タイミング変更処理を行う。これらプロセスを繰り返すことで、見守り対象者の現在位置を把握し、危険エリアへの侵入可能性をいち早く予測し、アラートの送信など適切な見守りサービスを実行できるのである。
【0051】
なお、見守り管理サーバ5は、予め設定した危険エリアの情報などを含むマップを記憶しておくマップ記憶手段55を備えており、このマップから見守り対象者が移動可能な経路(道路、階段、広場など)を特定することができるので、このマップデータを用いることで、より信頼度の高い見守り対象移動予測を行う事ができる。
【0052】
例えば、
図6に示すように、ビーコン発信装置2からのビーコン発信位置Oがマップ上の道路にいると推定されるとき、このビーコン発信位置Oから移動できる移動可能経路を特定し、見守り対象者の移動速度vと移動時間tとに基づく移動距離L(t)だけ全ての移動可能経路上を移動した地点までを移動予測範囲として求める。ビーコン発信装置2の発信基準時間t=2〔分〕であった場合、見守り対象者が2分後に到達し得る距離L(2)の移動予測範囲は、L(2)a〜L(2)fの6地点までとなるが、何れも危険エリアに到達していないので、ビーコン発信タイミングの変更は行わない。
【0053】
一方、ビーコン発信装置2の発信基準時間t=4〔分〕であった場合、見守り対象者が4分後に到達し得る距離L(4)の移動予測範囲は、L(4)a〜L(4)nの14地点となる。このうち、危険エリアに到達しているのは、地点L(4)aに至る1経路のみであるから、危険エリアに至る経路を選択する割合は、1/14である。また、危険エリアに至る経路において、危険エリアに侵入している距離の割合は、1/4である。そこで、危険度判定値P
danger(4)=1/14×1/4=1/56とすると、この危険度判定値P
danger(4)が所定のビーコン発信タイミング変更条件を満たすか否かで、ビーコン発信タイミングの変更可否を判定することができる。
【0054】
上述したように、見守り対象者がマップ上の道路等を移動すると考えて、見守り対象者の移動経路を道路等に特定する行動予測は、都市部などの道路以外は通行不可能なエリアでは有用であるものの、開けた空き地や田畑など、道路以外に移動可能な領域があるエリアでは、見守り対象移動予測として不十分である。そこで、見守り対象者が道路に沿って移動するだけで無く、道路に挟まれた領域に入って移動する可能性も考慮した移動予測手法の一例について、
図7に基づき説明する。
【0055】
図6と同様に、ビーコン発信装置2の発信基準時間=4〔分〕であった場合、移動時間t=4〔分〕として、見守り対象者が4分後に到達し得る距離L(4)の移動予測地点は、L(4)a〜L(4)nの14地点となる。これらL(4)a〜L(4)nの14地点全てを包含する最小の凸多角形(凸包領域)を見守り対象者の移動予測範囲とするのである。この見守り対象移動予測範囲が危険エリアと交わる範囲が危険エリア侵入範囲となる。なお、移動時間tにおける見守り対象の移動予測範囲である凸包領域の面積(A
moving(t))は、三角分割など公知既存の数学的手法により求めることができる。危険エリア侵入範囲の面積(A
intersect(t))も同様である。
【0056】
例えば、
図7において、見守り対象移動予測範囲が危険エリアに侵入している割合が0.06(A
intersect(4)/A
moving(4)=0.06)の場合、危険度判定値P
danger(4)=6%となる。ここで、ビーコン発信タイミング変更条件が「P
danger(4)>10%」であれば、P
danger(4)はビーコン発信タイミング変更条件を満たさないので、ビーコン発信タイミングの変更判定とはならない。しかしながら、ビーコン発信タイミング変更条件が「P
danger(4)>5%」であれば、P
danger(4)はビーコン発信タイミング変更条件を満たすので、ビーコン発信タイミングの変更判定となる。
【0057】
このように、移動時間tにおける移動予測地点を全て包含する凸包領域を見守り対象移動予測範囲に設定すれば、見守り対象者が道路から外れて移動した場合の行動予測も含まれるので、道路以外に歩行可能な領域が存在するエリアにも適用でき、より一般化した見守り対象移動予測手法となる。
【0058】
さらに、見守り管理サーバ5に見守り対象行動ログ管理手段56を設けておき、見守り対象者の過去の行動履歴や行動傾向といった諸情報を収集管理しておくと、一層、信頼度の高い見守り対象移動予測を行う事ができる。例えば、ビーコン発信装置2を所持する見守り対象者の通常歩行速度や、嗜好や身体的制限による移動先の傾向(例えば、上り坂は敬遠する)などを加味すると、マップ上の移動経路の中でも、移動先として選定される可能性の高低を推測できるので、移動経路毎に重み付けを変えて、危険度判定値を設定すれば、より精度の高い見守り対象移動予測を行う事ができる。
【0059】
また、上述した実施形態では、ビーコン発信装置2からのビーコンを受信するビーコン受信装置として、屋内外に設置されている固定機器を想定した中継装置3を用いたが、これに限定されず、多くの人が利用しているスマートフォンなどの携帯型無線通信機器をビーコン受信装置として用いることもできる。このように、携帯型無線通信機器をビーコン受信装置として用いれば、ビーコン発信装置2からのビーコンを一層効率良く受信でき、見守り対象者の見守り精度も高めることができる。
【0060】
また、ビーコン発信装置2とビーコン受信装置との双方向通信に、次世代無線通信規格の一つであるWireless Smart Utility Network(IEEE 802.15.4g)技術を用いると、Wi−SUN(登録商標)技術を搭載した電気メータ等のスマート機器をビーコン受信装置として用いることができる。しかも、Wi−SUN(登録商標)通信は、通信速度がそれほど速くない(1Mbps以下)ものの、低消費電力であり、920MHz帯を使えることから、大規模マルチホップが可能である上に干渉問題が起き難いので、ビーコン発信装置2の省電力化に大きく寄与できる。
【0061】
また、上述した実施形態では、ビーコン発信装置2に対して初期設定した基準発信時間を不変とし、見守り管理サーバ5からの発信タイミング変更指示により、一時的にビーコン発信装置2のビーコン送信タイミングを短くしたり長くしたりするものであったが、見守り対象者のおかれた状況に応じて、ビーコン発信装置2に対して適切な発信基準時間を可変設定するようにしても良い。例えば、見守り対象者が自宅にいる時や、見守り対象者の現在位置から広範囲に危険エリアが存在しない時には、見守り管理サーバ5から当該ビーコン発信装置2へ発信基準時間変更コマンドを送信して、長い発信基準時間に変更させることで、一層の省電力化を図ることができる。逆に、見守り対象者が自宅から外に出た時や、見守り対象者の現在位置から近い範囲に危険エリアが存在する時には、見守り管理サーバ5から当該ビーコン発信装置2へ発信基準時間変更コマンドを送信して、元の発信基準時間あるいは更に短い発信基準時間に変更させることで、見守り対象者の危険回避を優先するのである。
【0062】
なお、ビーコン発信装置2の基準発信時間を変更可能な運用とする場合、そのビーコン発信装置2に現在設定されている基準発信時間を見守り管理サーバ5が把握できるようにしておく必要がある。例えば、見守り対象者が所持するビーコン発信装置2から送信されるビーコンに自機のIDと共に基準発信時間設定値を含ませておき、このビーコンを受けた中継装置3が基準発信時間設定値を含めた見守り対象特定情報を見守り管理サーバ5へ送信すれば、見守り管理サーバ5は、各ビーコン発信装置2の基準発信時間設定値を知ることができる。或いは、見守り管理サーバ5が各ビーコン発信装置2の基準発信時間設定値をデータベース化して管理するようにしても良い。
【0063】
以上、本発明に係る見守りシステムを一実施形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の構成を変更しない限りにおいて実現可能な全ての地域見守りシステムを権利範囲として包摂するものである。