(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記振動伝達部は前記耳当て部を二つ有しており、二つの前記耳当て部はそれぞれ前記本体部の前記上端部の左側、右側に取り付けられていることを特徴とする請求項1記載のギター。
前記胴体部に設けられる、前記ギター本体を演奏者の脚で支持するための脚用支持部と、前記胴体部に設けられる、前記ギター本体を演奏者の腕で支持するための腕用支持部と、演奏者の胸と対向する前記本体部の所定位置に設けられる、前記本体部を介して前記ギター本体を演奏者の胸で支持するための胸用支持部とのうち少なくとも一つの支持部を具備することを特徴とする請求項1、2又は3記載のギター。
前記本体部は、前記本体部が前記胴体部の裏面に取り付けられている取付位置から前記上端部までの長さ、及び、前記取付位置から前記上端部に向かう方向と前記ネック部の長手方向とのなす角度が調整可能であるように構成されていることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のギター。
前記耳当て部は、演奏者の前後方向における傾き角度、及び/又は、演奏者の左右方向における傾き角度が調整可能であるように構成されていることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載のギター。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、演奏者がヘッドホンを介して聞く音は、電気的に処理された音であり、弦の弾き方の巧拙にかかわらず、誰が弾いても同じような音になる。すなわち、従来のサイレントギターでは、演奏者は弦の振動による音を忠実に再現した音を聞くことができない。一方、演奏者は、ヘッドホンを使わずに、弦の振動による音を直接聞くことにすると、サイレントギターには共鳴胴が設けられていないため、音が小さく、物足りなく感じてしまう。そこで、周囲にいる人に気兼ねすることなく、しかも演奏者が弦の振動に忠実な大きな音を聞くことができるサイレントギターの実現が望まれている。
【0005】
本発明は上記事情に基づいてなされたものであり、周囲に大きな音を出すことなく、演奏者だけが、弦の振動に忠実な大きな音を聞くことができるギターを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本発明は、共鳴胴を備えていないギターであって、
細長い胴体部と、胴体部の一方の端部に設けられたネック部と、ネック部の先端に設けられた、弦を巻くためのペグを有するヘッド部と、胴体部の他方の端部に設けられた、弦の端部を固定するブリッジ部とを有し、ペグとブリッジ部との間に弦が張設されたギター本体と、
演奏者の耳に近接するように配置される少なくとも一つの耳当て部と、上端部には耳当て部が取り付けられると共に上端部が演奏者の顔の近傍に位置するように胴体部の裏面に取り付けられた本体部とを有し、胴体部から本体部に伝えられた弦の振動を本体部の上端部から耳当て部に伝達する振動伝達部と、
を具備することを特徴とするものである。
【0007】
本発明に係るギターは、共鳴胴を備えていないが、少なくとも一つの耳当て部と、上端部に耳当て部が取り付けられると共に上端部が演奏者の顔の近傍に位置するように胴体部の裏面に取り付けられた本体部とを有する振動伝達部を備えていることにより、演奏者が耳に耳当て部を近接させた状態でギターを弾くと、弦の振動がブリッジ部を介して胴体部を振動させ、その振動が胴体部に固定されている本体部を介して耳当て部にまで伝達される。この耳当て部の振動が空気を振動させて音となり、演奏者は耳元でギターの音を聞くことができる。このように、本発明では、電子ギター等のようにピックアップを用いて弦の振動を電気信号に変換しているのではなく、弦の振動を直接、胴体部及び振動伝達部を介して演奏者の耳元まで伝えているので、演奏者は、ヘッドホンで聞く音とは異なり、低音から高音まで弦の振動に忠実な大きな音を聞くことができる。また、ギター本体は共鳴胴を有しておらず、ギター本体から直接外部に出る生音は非常に小さいので、演奏者は、その周囲にいる人に迷惑をかけることなく、いつでもどこででもギターを弾くことができる。
【0008】
また、本発明に係るギターでは、振動伝達部は耳当て部を二つ有しており、二つの耳当て部はそれぞれ本体部の上端部の左側、右側に取り付けられていることが望ましい。これにより、演奏者は二つの耳当て部の間に頭を入れ、両耳に耳当て部を近接させることができる。このため、演奏者は、両方の耳で耳当て部からの音を聞くことができるので、一方の耳だけに耳当て部を近接させる場合に比べて音の広がりを感じることができる。
【0009】
また、本発明に係るギターでは、胴体部、耳当て部及び本体部は木材で作製されていることが望ましい。このように、胴体部、耳当て部及び本体部の材質として、金属等に比べて軽量な木材を用いることにより、弦の振動が胴体部及び振動伝達部で大きく減衰してしまうのを防止し、弦の振動を耳当て部に確実に伝達することができる。
【0010】
また、本発明に係るギターは、胴体部に設けられる、ギター本体を演奏者の脚で支持するための脚用支持部と、胴体部に設けられる、ギター本体を演奏者の腕で支持するための腕用支持部と、演奏者の胸と対向する本体部の所定位置に設けられる、本体部を介してギター本体を演奏者の胸で支持するための胸用支持部とのうち少なくとも一つの支持部を具備することが望ましい。このように、本発明のギターが、脚用支持部と、腕用支持部と、胸用支持部とのうち少なくとも一つの支持部を備えることにより、演奏者は、その支持部を使ってギターを身体に固定することができるので、ギターを安定させた状態で弾くことができる。
【0011】
また、本発明に係るギターは、本体部は、本体部が胴体部の裏面に取り付けられている取付位置から上端部までの長さ、及び、取付位置から上端部に向かう方向とネック部の長手方向とのなす角度が調整可能であるように構成されていることが望ましい。これにより、演奏者は、本体部の長さ及び角度を調整して、耳当て部の位置を自分の耳の位置に容易に合わせることができる。
【0012】
更に、本発明に係るギターでは、耳当て部は、演奏者の前後方向における傾き角度、及び/又は、演奏者の左右方向における傾き角度が調整可能であるように構成されていることが望ましい。これにより、演奏者は、耳当て部の角度を調整して、演奏時に自分の耳に耳当て部を確実に近接させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るギターでは、弦の振動を直接、胴体部及び振動伝達部を介して演奏者の耳元まで伝えているので、演奏者は、ヘッドホンで聞く音とは異なり、低音から高音まで弦の振動に忠実な大きな音を聞くことができる。また、ギター本体は共鳴胴を有しておらず、ギター本体から直接外部に出る生音は非常に小さいので、演奏者は、その周囲にいる人に迷惑をかけることなく、いつでもどこででもギターを弾くことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照して、本願に係る発明を実施するための形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態であるギターの概略斜視図、
図2はそのギターの概略背面図である。
【0016】
本実施形態のギターは、
図1及び
図2に示すように、ギター本体10と、振動伝達部20と、脚用支持部30と、腕用支持部40と、胸用支持部50とを備える。このギターには、通常のアコースティックギターが有する共鳴胴が設けられていない。振動伝達部20はギター本体10の裏側に取り付けられている。また、脚用支持部30及び腕用支持部40はそれぞれギター本体10の左側(本実施形態では左側面)、右側(本実施形態では右側面)に取り付けられ、胸用支持部50は振動伝達部20の裏面に取り付けられている。
【0017】
図3は本実施形態のギターにおけるギター本体10、脚用支持部30及び腕用支持部40の概略正面図、
図4はそのギター本体10、脚用支持部30及び腕用支持部40の概略側面図、
図5はそのギター本体10、脚用支持部30及び腕用支持部40の概略背面図である。また、
図6は本実施形態のギターにおける振動伝達部20及び胸用支持部50の概略斜視図、
図7はその振動伝達部20及び胸用支持部50の概略正面図、
図8はその振動伝達部20及び胸用支持部50の概略側面図、
図9はその振動伝達部20及び胸用支持部50の概略背面図である。
【0018】
ギター本体10は、
図1乃至
図5に示すように、細長い胴体部11と、ネック部12と、ヘッド部13と、ブリッジ部14とを備える。ネック部12は胴体部11の一方の端部に設けられている。ネック部12の表面には指板12aが接合されている。そのネック部12の先端にはヘッド部13が設けられている。このヘッド部13は、複数の弦を巻くための複数のペグ131を有している。また、ブリッジ部14は複数の弦の端部を固定するものであり、胴体部11の他方の端部の表面に設けられている。複数の弦は、複数のペグ131とブリッジ部14との間に張設されている。これらネック部12、ヘッド部13及びブリッジ部14としては通常のギターにおけるものと同じものを用いることができる。
【0019】
胴体部11は、木材で細長い略四角柱の形状に作製されている。この胴体部11の上端における横幅はネック部12の横幅と略同じである。具体的に、
図3及び
図4に示すように、胴体部11の長手方向の長さH1は約40cm、その奥行きD1は約4cmである。胴体部11の下端における横幅W1は約7.5cmである。また、胴体部11の裏面には、
図5に示すように、振動伝達部20をネジで固定するための金属製の雌ネジ(ナット)111が、その一方の端部表面が露出するようにして埋設されている。この雌ネジ111の内径は約6mmである。
【0020】
図3に示すように、胴体部11の右側面には脚用支持部30が取り付けられ、胴体部11の左側面には腕用支持部40が取り付けられている。これらの支持部30,40を胴体部11に取り付けるには、例えば接着剤やネジを使用することができる。本実施形態では、脚用支持部30と腕用支持部40を接着剤で胴体部11に接合している。また、脚用支持部30は、
図3及び
図5に示すように、二つの部品31,32からなり、部品32は部品31の裏面にネジで固定されている。脚用支持部30はギター本体10を演奏者の脚で支持するためのものであり、腕用支持部40はギター本体10を演奏者の腕(又は肘)で支持するためのものである。具体的に、胴体部11に取り付けられた脚用支持部30及び腕用支持部40は、例えば通常のエレキギターにおけるボディーの外形の一部と略同じような形状をしている。右利きの演奏者は、ギターを演奏するときに、脚用支持部30を自分の太ももに載せると共に、自分の右腕を腕用支持部40に載せるようにする(後述の
図10参照)。これにより、演奏者はギターを安定させた状態で保持して弾くことができる。尚、脚用支持部30及び腕用支持部40は胴体部11に着脱自在に取り付けるようにしてもよい。これにより、本実施形態のギターを持ち運ぶ際に、ギターを分解してケースに収納することができる。
【0021】
振動伝達部20は、
図1、
図2、
図6乃至
図9に示すように、二つの耳当て部21,21と、本体部22と、顎載置台23とを備える。これら耳当て部21,21、本体部22及び顎載置台23は木材で作製されている。耳当て部21は演奏者が演奏時に耳を当てるためのものである。このため、耳当て部21,21は、演奏者の耳に近接する位置に配置される。二つの耳当て部21,21はそれぞれ本体部22の上端部の左側面、右側面に取り付けられている。本体部22は、
図2に示すように、胴体部11の裏面に着脱自在に取り付けられている。具体的に、本体部22はその上端部が演奏者の顔の近傍に位置するように取り付けられる。振動伝達部20は、胴体部11から本体部22に伝えられた弦の振動を本体部22の上端部から耳当て部21,21に伝達する役割を果たす。
【0022】
本体部22は、
図6乃至
図9に示すように、平板状のものであり、本体部22の上端部である頭部221と、脚部222と、二つの角度調整板223,223と、押圧板224とを有する。この本体部22の厚さD2は約2cmである。頭部221は略長方形状に形成されている。具体的に、この頭部221の横幅W21は約12cm、その縦幅H21は約8cmである。また、脚部222は頭部221の下端に連なっている。実際、この脚部222は、頭部221に連なる部分の近傍を除いて、細長い略長方形状に形成されている。具体的に、脚部222の縦方向の長さH22は約31cmであり、脚部222の下端における横幅W22は約4.5cmである。この脚部222の中央部には、その長手方向に沿って長孔222aが形成されている。ここで、その長孔222aの幅は約1cm、長さは約23cmである。
【0023】
図9に示すように、二つの角度調整板223,223はそれぞれ、頭部221の裏面の左端部、右端部にネジ226で回動可能に固定されている。ここで、各角度調整板223,223は、
図7に示すように、その側端部が頭部221の側面よりも外側に突出するように配置されている。各角度調整板223,223のその突出した側面には耳当て部21,21が取り付けられる。また、押圧板224は、二つの角度調整板223,223を頭部221の裏面に押し付けるようにして固定するものである。
図9に示すように、押圧板224は、二つの角度調整板223,223と接していない部分においてネジで頭部221の裏面に固定されている。演奏者は、各角度調整板223,223に力を加えてネジ226を中心にして当該角度調整板を回転させることにより、当該角度調整板に取り付けられた耳当て部21についてその左右方向の傾き角度を調整することができる。本実施形態では、二つの耳当て部21,21が互いに平行な状態にあるときの耳当て部21,21の間隔Dは約16cmである。演奏者は、左右方向における各耳当て部21,21の傾き角度を調整して、演奏時に二つの耳当て部21,21の間に顔を入れることになる。
【0024】
具体的に、本実施形態では、本体部22を、一つの雄ネジ24を用いて胴体部11に固定することにしている。ここで、雄ネジ24としては金属製のもの(ボルト)を用いている。また、雄ネジ24は、その頭部が回転しないように頭部用木片24aに埋め込まれて固定されている。この雄ネジ24の軸の外径は、脚部222に形成された長孔222aの幅よりも小さい約6mmである。この雄ネジ24に対応する雌ネジが胴体部11の裏面に埋設された雌ネジ111である。本体部22を胴体部11に固定するには、まず、
図6乃至
図9に示すように、雄ネジ24の軸を所定の当て板25に形成された孔に通す。この当て板25はワッシャーと同様の役割を果たすものである。ここで、当て板25は略長方形状に形成されており、その長辺の長さは長孔222aの幅よりも長くなっている。その後、頭部用木片24aを用いて、当て板25に通された雄ネジ24を、長孔222aを介して胴体部11の裏面に埋設された雌ネジ111にねじ込んで締め付ける。これにより、
図2に示すように、本体部22は当て板25によって胴体部11に押し付けられてしっかり固定される。尚、本体部22の取付位置とは、本体部22が胴体部11の裏面に取り付けられている位置、すなわち、雌ネジ111に対応する長孔222aの位置のことである。
【0025】
また、雄ネジ24を少し緩めて、雌ネジ111に対応する長孔222aの位置を変更することにより、本体部22の取付位置から頭部(上端部)221までの長さを容易に調整することができる。しかも、このとき、胴体部11に対する本体部22の傾き角度を変更することにより、本体部22の取付位置から頭部221に向かう方向とネック部12の長手方向とのなす角度を容易に調整することができる。このように、本実施形態では、本体部22は、取付位置から頭部221までの長さ、及び、取付位置から頭部221に向かう方向とネック部12の長手方向とのなす角度が調整可能であるように構成されている。更に、雄ネジ24を一つ外すだけで、本体部22を胴体部11から簡単に取り外すことができる。
【0026】
また、本体部22の上端には、演奏者が演奏時に顎を載せるための顎載置台(顎載置部)23が設けられている。この顎載置台23は平板状のものであり、木材で略長方形状に形成されている。具体的に、顎載置台23の横幅は本体部22の頭部221の横幅W21と同じ約12cmであり、その縦幅は約5.5cmであり、その厚さは約1.8cmである。顎載置台23は、
図6乃至
図9に示すように、それを水平に寝かせた状態で演奏者の側に突出するように配置されている。顎載置台23はネジで本体部22の上端に固定されている。
【0027】
また、演奏者の胸と対向する本体部22の頭部221の所定位置には、胸用支持部50が設けられている。胸用支持部50はギター本体10を演奏者の胸で支持するためのものである。演奏者がギターを弾くときに、この胸用支持部50を胸に当てると、ギターが安定する。この胸用支持部50としては、平板状の木材を用い、略長方形状に形成されたものを用いている。具体的に、
図8及び
図9に示すように、胸用支持部50の横幅W3は約18cm、その縦幅H3は約5cm、厚さは約1.8cmである。胸用支持部50は、
図8に示すように、顎載置台23よりも演奏者の側に突出している。胸用支持部50を本体部21に取り付けるには、例えばネジや接着剤等を使用することができる。
【0028】
このように、本実施形態では、脚用支持部30、腕用支持部40及び胸用支持部50という合計三つの支持部を設けているので、演奏者は、共鳴胴を有する通常のアコースティックギターを弾くときと同様のホールド感覚で、本実施形態のギターを保持して弾くことができる。
【0029】
耳当て部21は、
図6乃至
図9に示すように、平板状のものであり、頭部211と、その頭部211の下端に連なる脚部212とを有する。
図7に示すように、この耳当て部21の厚さD4は約1.8cmである。頭部211は、少なくとも耳の大きさよりも大きな略長方形の形状に形成されている。具体的に、
図7及び
図8に示すように、頭部211の横幅W41は約9cm、その縦幅H41は約12cmである。また、脚部212は細長い略長方形状に形成されている。具体的に、
図7及び
図8に示すように、脚部212の横幅W42は約2cm、その縦方向の長さH42は約12cmである。脚部212の下端部は本体部22の角度調整板223の側面にネジ213で、
図7の前後方向(
図8の左右方向)において回動可能に固定されている。ここで、二つの耳当て部21,21は、二つの頭部211,211の表面が互いに対向するように配置されている。演奏者は、各耳当て部21,21に力を加えてネジ213を中心にして当該耳当て部を回転させるだけで、演奏者の前後方向における耳当て部の傾き角度を簡単に調整することができる。これにより、演奏者は、耳当て部21,21の角度を調整して、演奏時に自分の耳に耳当て部21,21を確実に近接させることができる。
【0030】
本実施形態のギターでは、このような構成の振動伝達部20を備えることにより、胴体部11から本体部22に伝えられた弦の振動を本体部22の頭部(上端部)221から耳当て部21,21に伝達することができる。しかし、音の振動が物体内を伝わる際には、その物体は質量が重いほど振動の伝達に大きな抵抗を与えることになる。このため、振動伝達部20については、なるべく軽量化を図ることが望ましい。耳当て部21や本体部22として、その全体を長方形状に形成したものを用いるのではなく、脚部を細長い長方形状に形成して脚部の横幅をなるべく小さくしたものを用いているのはこの理由からである。また、本実施形態では、胴体部11、耳当て部21,21及び本体部22の材質として金属等に比べて軽量な木材を用いているが、これも、同様に、弦の振動が胴体部11及び振動伝達部20で大きく減衰してしまうのを防止し、弦の振動を耳当て部21,21に確実に伝達するためである。
【0031】
次に、本実施形態のギターの使い方を説明する。
最初に、演奏者は、振動伝達部20が演奏時の自分の姿勢に合うように、本体部22の取付位置から頭部221までの長さと本体部22の角度とについての調整を行う。具体的に、演奏者は、雄ネジ24を少し緩めて、本体部22の頭部221が自分の顔の近傍に位置し、顎載置台23が自分の顎と略同じ高さに位置するように、本体部22の取付位置から頭部221までの長さ、及び、本体部22の取付位置から頭部221に向かう方向とネック部12の長手方向とのなす角度を調整する。こうして、本体部22の取付位置から頭部221までの長さと本体部22の角度とが決まると、演奏者は雄ネジ24を締めて、振動伝達部20をギター本体10に固定する。
【0032】
次に、演奏者は、二つの耳当て部21,21の間隔が自分の耳の間隔になるように、ネジ226,226を中心にして角度調整板223,223を回転することにより、
図9の左右方向における各耳当て部21,21の傾き角度を調整する。また、二つの耳当て部21,21が演奏時の自分の耳の位置に来るように、ネジ213,213を中心にして耳当て部21,21を回転することにより、
図9の前後方向における各耳当て部21,21の傾き角度を調整する。
【0033】
こうして振動伝達部20の調整作業が終了すると、演奏者は本実施形態のギターを演奏することができる。
図10は演奏者が本実施形態のギターを演奏しているときの様子を示す図である。演奏者は、
図10に示すように、自分の頭を二つの耳当て部21,21の間に入れると共に、顎を顎載置台23に載せる。このとき、各耳はそれに対応する耳当て部21に軽く接するようになる。演奏者はこの状態でギターを演奏する。
【0034】
演奏者が両耳に耳当て部21,21を近接させた状態でギターを弾くと、弦の振動がブリッジ部14を介して胴体部11を振動させる。そして、その胴体部11の振動が胴体部11に固定されている本体部22を介して耳当て部21,21にまで伝達される。この耳当て部の振動が空気を振動させて音となり、演奏者は耳元でギターの音を聞くことができる。ここで、本実施形態では、耳当て部21,21を二つ設けているので、演奏者は、両方の耳で耳当て部21,21からの音を聞くことができる。このように、弦の振動を直接、胴体部11及び振動伝達部20を介して演奏者の耳元に伝えているので、演奏者は、ヘッドホンで聞く音とは異なり、低音から高音まで弦の振動に忠実な大きな音を聞くことができる。また、本実施形態のギターでは、振動伝達部20を木材で作製していることにより、演奏者は、既存の木製のアコースティックギターの音色に近い音を聞くことになる。実際、演奏者が聞く音は、通常のアコースティックギターから発せられる生音に負けない音である。尚、本実施形態のギターは、共鳴胴を有していないので、ギター本体10から直接外部に出る生音は非常に小さい。
【0035】
また、演奏者が、両耳に耳当て部21,21を近接させた状態で、しかも顎を顎載置台23に載せた状態でギターを弾くと、本体部22から顎載置台23に伝えられた弦の振動は、骨伝導によって顎の骨から頭蓋骨を介して演奏者の聴覚器官に伝えられる。このため、演奏者は、耳からの音と骨伝導による音とを合わせた音を聞くことができる。このように、本実施形態のギターでは、骨伝導による音も聞くことができるので、このギターを使えば聴覚障害者もギターの演奏を楽しむことができる。特に、本実施形態のギターを聴覚障害者専用のギターとして用いる場合には、例えば、顎載置台23の代わりに口でくわえる部位を設けておくようにしてもよい。また、この場合、耳当て部21を必ずしも設ける必要はない。
【0036】
本実施形態のギターは、共鳴胴を備えていないが、二つの耳当て部と、上端部(頭部)に二つの耳当て部が取り付けられると共に上端部(頭部)が演奏者の顔の近傍に位置するように胴体部の裏面に取り付けられた本体部とを有する振動伝達部を備えていることにより、演奏者が耳に耳当て部を近接させた状態でギターを弾くと、弦の振動がブリッジ部を介して胴体部を振動させ、その振動が胴体部に固定されている本体部を介して耳当て部にまで伝達される。この耳当て部の振動が空気を振動させて音となり、演奏者は耳元でギターの音を聞くことができる。このように、本実施形態では、電子ギター等のようにピックアップを用いて弦の振動を電気信号に変換しているのではなく、弦の振動を直接、胴体部及び振動伝達部を介して演奏者の耳元まで伝えているので、演奏者は、ヘッドホンで聞く音とは異なり、低音から高音まで弦の振動に忠実な大きな音を聞くことができる。また、ギター本体は共鳴胴を有しておらず、ギター本体から直接外部に出る生音は非常に小さいので、演奏者は、その周囲にいる人に迷惑をかけることなく、いつでもどこででもギターを弾くことができる。
【0037】
また、本実施形態のギターでは、本体部は、本体部が胴体部の裏面に取り付けられている取付位置から上端部までの長さ、及び、取付位置から上端部に向かう方向とネック部の長手方向とのなす角度が調整可能であるように構成されていることにより、演奏者は、本体部の長さ及び角度を調整して、耳当て部の位置を自分の耳の位置に容易に合わせることができる。更に、耳当て部は、演奏者の前後方向における傾き角度及び演奏者の左右方向における傾き角度が調整可能であるように構成されていることにより、演奏者は、耳当て部の角度を調整して、演奏時に自分の耳に耳当て部を確実に近接させることができる。
【0038】
尚、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々の変形が可能である。
【0039】
例えば、上記の実施形態では、耳当て部を、演奏者の左右方向における傾き角度が調整可能であるように構成した場合について説明したが、必ずしも耳当て部をこのように構成する必要はない。具体的には、本体部の頭部としてその横幅が演奏者の顔の間隔に略一致するものを用い、二つの耳当て部を頭部の側面に取り付けるようにしてもよい。
【0040】
また、上記の実施形態では、振動伝達部が二つの耳当て部を有する場合について説明したが、振動伝達部には耳当て部を一つだけ設けるようにしてもよい。この場合も、演奏者は、低音から高音まで弦の振動に忠実な大きな音を聞くことができる。但し、実際には、耳当て部を二つ設けることが望ましい。演奏者は、両方の耳で耳当て部からの音を聞くことができるので、一方の耳だけを耳当て部に当てる場合に比べて音の広がりを感じることができるからである。
【0041】
また、上記の実施形態では、胴体部、耳当て部及び本体部を木材で作製した場合について説明したが、音の振動を大きく減衰させることなく確実に伝達することができる材質であれば、胴体部、耳当て部及び本体部をどのような材質で作製するようにしてもよい。例えば、胴体部、耳当て部及び本体部の材質としては、プラスチック等を用いることができる。
【0042】
また、上記の実施形態では、本発明のギターが、脚用支持部と、腕用支持部と、胸用支持部とを備える場合について説明したが、一般に、本発明のギターは、これら三つの支持部のうち少なくとも一つの支持部を備えていればよい。少なくとも一つの支持部があれば、ギターを安定させた状態で弾くことができる。更に、これら三つの支持部は、音質や音の大きさと無関係であるので、省略することも可能である。
【0043】
更に、上記の実施形態では、本発明のギターが一つの振動伝達部を備える場合について説明したが、本発明のギターは、二つ以上の振動伝達部を備えることができる。いま、本発明の変形例として二つの振動伝達部を備えるギターを説明する。
図11は本発明の変形例であるギターの概略斜視図である。
【0044】
本発明の変形例のギターは、
図11に示すように、ギター本体10と、二つの振動伝達部20a,20bと、脚用支持部30と、腕用支持部40と、胸用支持部50,50と、連結部材60とを備える。ここで、二つの振動伝達部20a,20bはそれぞれ、上記実施形態のギターにおける振動伝達部材20と同じものである。この変形例のギターが上記実施形態のギターと異なる点は、振動伝達部20a,20bを二つ備えている点、及び、二つの振動伝達部20a,20bを連結するための棹状の連結部材60を備えている点である。その他の構成は上記実施形態のギターにおける構成と同様である。尚、本発明の変形例において、上記実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
【0045】
連結部材60は、細長い棹状のものであり、木材で作製されている。例えば、この連結部材の長さは約80cmである。この連結部材60の右端部には、雄ネジ24の軸よりも大きな一つの孔(不図示)が形成されている。また、連結部材60の左端部には、雄ネジ24に対応する雌ネジ61が、その端部表面が露出するようにして埋設されている。
【0046】
一方の振動伝達部20aについては、その本体部22が連結部材60を介して胴体部11の裏面に取り付けられる。すなわち、雄ネジ24を、この振動伝達部20aの長孔222a及び連結部材60の孔を介して胴体部11の裏面に埋設された雌ネジ111にねじ込んでいる。また、他方の振動伝達部20bについては、その本体部22を、一方の振動伝達部20aの取付箇所と異なる連結部材60の所定箇所に取り付ける。すなわち、雄ネジ24を、他の振動伝達部20bの長孔222aを介して連結部材60の雌ネジ61にねじ込んでいる。尚、連結部材60には、複数の雌ネジを埋設するようにしてもよい。この場合、他方の振動伝達部20bの取付箇所を変更することにより、二つの振動伝達部20a,20bの間隔を変えることができる。
【0047】
このように、本発明の変形例のギターでは、一方の振動伝達部20aの本体部22を連結部材60を介して胴体部11の裏面に取り付けると共に、他方の振動伝達部20bの本体部22を連結部材60に取り付けていることにより、弦の振動を連結部材60を介して二つの振動伝達部20a,20bに伝達することができる。このため、演奏者が自分の耳に一方の振動伝達部20aの耳当て部21,21を近接させた状態でギターを演奏する際に、演奏者以外の者が自分の耳に他方の振動伝達部20bの耳当て部21,21を近接させた状態にすれば、演奏者以外の者は弦の振動に忠実な大きな音を聞くことができ、演奏者とともにギターの演奏を楽しむことができる。
【0048】
また、上記の実施形態のギターでは、複数の弦が複数のペグとブリッジ部との間に張設されている場合について説明したが、弦は少なくとも一本張設されていればよい。