(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献の空調システムは、空調機室から送気用区画部への空調済空気の送り出しに、空調機室に設けた複数台の送風機を用いている。こうした送風形態では、シロッコファンを内蔵した送風機が多用されている。この送風機は、例えば30cm角の略正方形の吸込パネルにより吸込口側の壁面に配設され、直径15cm程の吹出口から吸入空気を吹き出す構造を備えている。こうしたシロッコファン内蔵の送風機を複数台配設するに当たり、30cm角の吸込パネルを例えば縦横に並べてそれぞれの送風機からほぼ均等に送気用区画部に空調済空気を送り込めれば、特段の支障は無い。ところが、空調機室を屋根裏や送気用区画部に隣接した2階住居域に設ける場合、屋根組や2階の間取りと言った住居構造の制約を受けて、いくつかの送風機を送気用区画部から離れて配設せざるを得ないことも有り得る。送風機から送気用区画部までの隔たりが不均一であると、空調機室から送気用区画部に到る間において空調済空気の流れの乱れによる圧力損失が起きた状態で、送気用区画部に空調済空気が入り込み得る。こうしたことから、空調機室で得た空調済空気を、複数台の送風機を用いてムラなく送気用区画部に導き入れることが要請されるに到った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本発明の一形態によれば、空調システムが提供される。この空調システムは、複数の住居域を有する住居のための空調システムであって、空調機を有する空調機室と、該空調機で空調済みの空調済空気を前記複数の住居域に送風するために前記空調機室の側から形成された送気用区画部と、該送気用区画部に前記空調済空気を送風する複数の送風機と、該複数の送風機のそれぞれから前記送気用区画部に亘って個別に設けられた複数の送風ダクトとを備える。
【0007】
この形態の空調システムでは、空調機で空調した空調済空気の空調機室から送気用区画部への送風を、複数の送風機のそれぞれから送気用区画部に亘って設けられた複数の送風ダクトで担う。よって、住居構造の制約やショートサーキット回避のためにいくつかの送風機を送気用区画部から離れて配設せざるを得ない場合でも、これら送風機を含む総ての送風機からの送風ダクトを送気用区画部まで延伸できる。このため、総ての送風機からの送風ダクトにより安定した空気の流れで送気用区画部に空調済空気を送風できると共に、ある送風機から送気用区画部への送風に他の送風機からの送風に影響を及ぼさない。この結果、この形態の空調システムによれば、空調機室で得た空調済空気を複数台の送風機を用いてムラなく送気用区画部に導き入れることができる。
【0008】
(2)上記形態の空調システムにおいて、前記複数の送風ダクトは、ダクト一端が前記送風機の吹出口に接続され、ダクト他端が前記送気用区画部に位置すると共に、前記ダクト他端の側において隣接する送風ダクト間の隔たりを前記ダクト一端の側において隣接する送風ダクト間の隔たりよりも小さくして配設されているようにしてもよい。こうすれば、総ての送風機からの送風ダクトを、ダクト他端が送気用区画部に位置して近接するように、送気用区画部まで延伸できる。このため、より安定した空気の流れでの送気用区画部への空調済空気の送風が可能となり、送気用区画部への空調済空気の導き入れをよりムラのない状態で実行できる。
【0009】
(3)上記形態の空調システムにおいて、前記送気用区画部と前記空調機室との連設箇所に、前記空調機室と仕切壁を隔てて形成された送風機用チャンバー室を備え、前記複数の送風機は、前記送風機用チャンバー室の前記仕切壁に配設されているようにしてもよい。こうすれば、送風機用チャンバー室の仕切壁に、複数の送風機を例えば縦横に配設できるので、送風機用チャンバー室における送風ダクトの設置作業や保守点検も容易となる。
【0010】
(4)上記のいずれかの形態の空調システムにおいて、前記送風ダクトは消音機能を有するようにしてもよい。こうすれば、送気用区画部への空調済空気の送風に際して発生し得る異音、例えば送気用区画部に空調済空気が到るまでの間の共鳴音などを抑制できる。
【0011】
(5)上記のいずれかの形態の空調システムにおいて、前記送気用区画部に内接配置されるダクト保持体を有し、該ダクト保持体は、前記送気用区画部に位置するダクト他端が入り込む複数の貫通孔を有するようにしてもよい。こうすれば、送風ダクトの設置作業がより簡便となる。
【0012】
(6)上記のいずれかの形態の空調システムにおいて、前記送風機は一定風量の送風機能を有するようにしてもよい。こうすれば、それぞれの送風ダクトから送気用区画部に送風される空調済空気の風量と風速が定量となるので、送気用区画部での空調済空気の合流の際、および送気用区画部を空調済空気が通過する際に発生し得る異音を抑制できる。
【0013】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能である。例えば、空調システムの送風機構の他、空調システムを有する住居等の形態で実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の実施形態としての空調システム120を有する住居100の概略構成を模式的に縦断面視して示す説明図である。
【0016】
図示するように、住居100は、基礎101に建てられた高気密・高断熱の2階建て住居であって、各階に複数の住居域を区画して有し、各住居域を後述の空調システム120にて空調する。住居域の割り当ては、各住居ごとに個別に設定でき、本実施形態では、例えば次のようにした。住居100は、
図1に示す紙面において、1階に住居域210と住居域211を備え、2階に住居域221と住居域222を備える。この他、住居100は、
図1の紙面奥側にも住居域を備える。1階の住居域210などは、基礎101に形成される床下空間111と住居床112を隔てて、当該床下空間の上に並んでいる。なお、住居域の構成は、本発明の要旨と直接関係しないので、住居域形状等については、適宜、簡略して説明する。
【0017】
1階の住居域210は、図示しない玄関領域と1階廊下領域と階段ステップSが配列済みの階段領域を含み、階段ステップSを含む領域において、天井が2階天井まで届くいわゆる吹き抜け形態を採る。よって、住居域210は、住居床112から天井までの住居域高さが1階の他の住居域より高く、その天井108を隔てて空調機室121の下方まで延びる高天井住居域となっている。こうした高天井住居域の住居域210を、1階部分にリビングやキッチンを階段領域と共に有するいわゆる共有住居域とするようにしてもよい。1階の他の住居域は、居間や客間等として利用可能である。これら1階の住居域は、住居構成基材としての住居内外壁および各住居域の天井にて区画されている。2階の住居域は、子供部屋や寝室等として利用可能であり、住居構成基材としての住居内外壁および各住居域の天井にて区画されている。
【0018】
住居100は、屋根109と2階の天井108の間の屋根裏110に、空調システム120を有する。この空調システム120は、空調機室121と、後述の送気用区画部113の上部を占める送風機用チャンバー室124と、空調機140と、外気導入系150とを有する。空調機室121は、既述した住居域210等の各住居域とは別に形成され、その内壁である仕切壁122を断熱材にて被覆し、後述の空調機140にて空調された空気の熱を外部に漏らさないようにしている。
図2は、空調機室121と送風機用チャンバー室124の様子を
図1における2−2線に沿った方向から正面視して概略的に示す説明図である。
【0019】
空調機室121と送風機用チャンバー室124は、仕切壁122を挟んで隣り合い、送風機用チャンバー室124は、後述の送気用区画部113と空調機室121との連設箇所に仕切壁122を隔てて形成されている。空調システム120は、空調機室121の側から住居100の床下の側、詳しくは床下空間111までに亘って住居外壁の側に形成された送気用区画部113を備える。この送気用区画部113は、その上端側で送風機用チャンバー室124の空調側域に連通し、下端側では、床下空間連通箇所114にて床下空間111と連通し、住居域210に隣接して送風機用チャンバー室124から床下空間111まで延びる。このように延びる送気用区画部113は、その上端から下端までに亘って内部に送風路を形成し、空調機室121にて空調機140により空調された空調済空気CAを住居域210等の複数の住居域に送風するために機能する。本実施形態では、送気用区画部113は、長辺と短辺の比が略2:1の長方形断面の送風路を形成する。空調システム120は、空調機室121の仕切壁122に設けた複数台のモーター駆動の送風機123aにより、送気用区画部113に空調済空気CAを送風し、送気用区画部113の下端側に設けた複数台のモーター駆動の送風機123bにより、送気用区画部113を経て空調機室121から床下空間111に送風する。
【0020】
空調機室121は、内部に1台の空調機140を備え、後述の外気導入系150による住居外からの外気の送気と、住居域210に後述するように送気済みの空気のリターンとを受ける。この場合、住居域210に送気済みの空気の空調機室121へのリターンは、天井108に設けた図示しない送気口でなされる。空調機140は、空調機室121に外気導入系150から導入されて除塵済みの外気と住居域210からリターンしたリターン空気を目標温度に空調する市販のエアコンであり、空調済空気CAを吹き出す。この場合、住居規模によっては、空調機室121に2〜3台程度の少数台の空調機140を設けてもよい。空調機140の室外機(図示略)は、住居100の外に設置されている。外気導入系150は、住居外壁に設置済みの外気吸入部151から空調機室121の接続部153までの外気導入管154に、熱交換器155と、エアフィルター156を有する。熱交換器155は、後述の排気管157を流れる空気と外気導入管154を通過する空気の熱交換を行い、空調機140による空調のエネルギーロスの低減を図る。なお、空調の目標温度や総風量は、本発明の要旨と直接関係しないので、その説明を省略する。
【0021】
次に、各階の住居域への空調済空気CAの導入構成と各住居域での空気導入・排出の様子について説明する。
【0022】
1階の住居域210は、住居床112に、送気口115とモーター駆動の吸引送風機116とを備える。送気口115と吸引送風機116とは対となって住居床112に複数対設置され、送気口115は、吸引送風機116が床下空間111から吸引した空気、即ち、送気用区画部113を経て空調機室121から床下空間111(詳しくは、住居域210の下方を占める床下空間111a)に送り出された空調済空気CAを、住居域210の内部に導き入れる。本実施形態では、住居域210の占有容積が大きいことを考慮して、住居域210に送気口115と吸引送風機116とを4対設置したが、送気口115の送風能力によっては、住居域210の占有容積を考慮して、5対以上としたり、2〜3対としてもよい。また、床下空間111aには送風機123bにて空調済空気CAが送り出されるので、この空調済空気CAは、それぞれの送気口115から住居域210に流入可能となる。よって、複数の送気口115のうちのいくつかについて、或いは全部について吸引送風機116を省略してもよい。
【0023】
住居域211を始めとする住居域210以外の1階住居域は、各住居域が占める住居床112に、送気口115を備え、住居域210との区画箇所である住居内壁に、流出口130とこれに対となるモーター駆動の吸引送風機131とを備える。住居域210以外の1階住居域は住居域210に比べて占有容積が小さいことから、送気口115については、一つとされている。この他、住居域210以外の1階住居域は、住居床112の下方の床下空間111に、住居域ごとのダクト211dとモーター駆動のダクト内送風機119を備える。ダクト211dは、断熱性を備え、送気用区画部113と住居域210の下方を占める床下空間111aとの床下空間連通箇所114を基点とし、当該連通箇所から住居域210以外の1階住居域の下方を占める住居域ごとの床下空間111bまで延び、床下空間連通箇所114において、送風機123bと接続され、各住居域では、送気口115に接続される。
【0024】
ダクト内送風機119は、送気口115の下方側においてダクト内に配設され、ダクト211d内での送気を図る。従って、住居域210以外の1階の各住居域は、住居域210の下方を占める床下空間111aに送気用区画部113を経て送り出された空調済空気CAを、各住居域に該当するダクト211dと各ダクトのダクト内送風機119とを介して送気口115から導き入れる。そして、住居域210以外の1階の各住居域は、導き入れた空調済空気CAを、吸引送風機131にて流出口130から住居域210に流出する。なお、ダクト211dを介した空調済空気CAの導入に際しては、ダクト内送風機119に代えて床下空間連通箇所114に設けた送風機123bを用いてもよい。また、住居域210以外の1階の各住居域には、ダクト内送風機119により送気口115から空調済空気CAが導入されていることから、住居域210への空気流出を図る吸引送風機131については、省略してもよい。
【0025】
住居域221を始めとする2階の各住居域は、各住居域が占める2階床231に、送気口115とこれに対となる吸引送風機116とを備え、2階床下空間232に導入された空調済空気CAを、吸引送風機116にて送気口115から導き入れる。住居域221は、その天井108に排気口170とこれに対となるモーター駆動の吸引送風機172とを備え、住居域221に導入された空調済空気CAを、吸引送風機172にて排気口170から外気導入系150の排気管157に排気する。他の2階の住居域にあっては、2階部分における住居域210との区画箇所である住居内壁に、流出口130とこれに対となるモーター駆動の吸引送風機131とを備え、上記の各住居域に導入された空調済空気CAを、住居域210に流出させる。2階床下空間232への空調済空気CAの導入は種々の手法で達成でき、例えば、空調機室121が有する一つの送風機123aから2階床下空間232まで、或いは、送気用区画部113から2階床下空間232までダクトを延ばし、このダクトを介して2階床下空間232に空調済空気CAを導き、その空調済空気CAを送気口115から2階の各住居域に導入できる。また、空調機室121が有する一つの送風機123a或いは送気用区画部113から2階床下空間232までダクトを延ばし、ダクトをそれぞれの住居域の送気口115に繋いでも良い。この他、1階の住居域211にも、その天井に流出口130と吸引送風機131とを設け、住居域211から2階床下空間232に空調済空気CAを導入してもよい。
【0026】
次に、空調機室121から送風機用チャンバー室124を経た送気用区画部113への空調済空気CAの送風について説明する。
図3は、空調機室121と送風機用チャンバー室124の様子を
図2における3−3線に沿った方向から平面視して概略的に示す説明図である。
【0027】
空調機室121は、保守点検用の前面扉125で開閉可能な空間であり、
図2の正面視奥側上方に空調機140を備える。送風機用チャンバー室124は、屈曲した仕切壁122で空調機室121と仕切られた平面視L字状の区画領域であり、住居側壁102に沿って、空調機室121の正面視奥側の仕切壁122と、空調機室121の正面視左方側の仕切壁122とで空調機室121を取り囲む。この送風機用チャンバー室124は、
図1に示すように、送気用区画部113と空調機室121との連設箇所に位置する。本実施形態では、送風機用チャンバー室124は、既述したようにL字状の形状であるが、住居100の構造により、その形状や内容積は、種々の形態を採り得る。なお、住居側壁102は、外壁下地材と内壁下地材との間に断熱材を設けた断熱性の外壁である。
【0028】
図2に示すように、空調機140は、空調機室121の上方側において仕切壁122に固定され、吹出口から空調済空気CAを空調機室121に吹き出す。本実施形態の空調システム120は、8台の送風機123a(送風機123a1〜123a8)を仕切壁122に配設して備える。
図2に示すように、送風機123a1〜123a8の総ては、空調機140の下方側に位置する。そして、送風機123a1と送風機123a2は、
図2および
図3に示すように、空調機室121の正面視左方側の仕切壁122に上下に配設されている。他の送風機123a3〜送風機123a8は、空調機室121の正面視奥側の仕切壁122に上下に横2列で配設されている。送風機123a1〜123a8の各送風機は、シロッコファンを内蔵し、30cm角の略正方形の吸込パネルにより仕切壁122に配設・固定され、直径15cm程の吹出口を吸込パネルの背面側で下方に向けている。なお、吹出口は、ダクト配設の都合により、側方や斜め方向を向いてもよい。送風機123a1〜123a8の各送風機は、風量一定制御を行う直流モーターを搭載し、風路の圧力損失が多少異なっても回転数を増減させて所定の風量で送風できるように制御されることで、一定風量の送風機能を発揮する。なお、送風機123a1〜123a8の吸込パネルは、30cm角より大きくても小さくてもよく、吹出口にあっても、その直径が15cmより大きくても小さくてもよい。
【0029】
空調システム120は、送風機123a1〜123a8の各送風機ごとに送風ダクト128を備える。この送風ダクト128は、線材からなる螺旋状の心材を円筒状のグラスウールなどで内部と外部から被覆して構成され、全体に屈曲可能なフレキシブルダクトである。こうした構成を有する送風ダクト128は、通風時の消音機能と断熱機能を発揮する。そして、送風ダクト128は、
図2に示すように、ダクト一端が送風機123a1〜123a8の各送風機の吹出口に接続され、送気用区画部113が形成する送風路の上端側、即ち送気用区画部113自体の上端側にダクト他端が位置するように、送風機123a1〜123a8の各送風機から送気用区画部113まで延伸して配設されている。そして、送風機123a1〜123a8の設置位置が異なることから、送風機ごとの送風ダクト128のダクト寸法(ダクト長)は、送風機ごとに異なる。
図4は、送気用区画部113までの送風ダクト128の延伸の様子を概略的に示す説明図である。
【0030】
送風機123a1〜123a8の各送風機ごとの送風ダクト128は、それぞれ異なる経路で各送風機から送気用区画部113まで延伸し、ダクト一端128aが該当する送風機の吹出口に接続され、ダクト他端128bが送気用区画部113に位置する。また、送風機123a1〜123a8の各送風機ごとの送風ダクト128は、
図4に示すように、ダクト他端128bの側において隣接する送風ダクト間の隔たりを送風機側のダクト一端128aの側において隣接する送風ダクト間の隔たりよりも小さくして、送気用区画部113に配設されて、送気用区画部113においてダクト他端128bを近接させている。本実施形態の空調システム120は、送気用区画部113の送風路の上端にダクト保持体126を内接配置して備える。このダクト保持体126は、送風機123a1〜123a8の8台の送風機分の貫通孔126hを有する。貫通孔126hは、送風ダクト128のダクト端部、即ち上記したダクト他端128bが入り込む貫通孔であって、
図3および
図4に示すように、4個並びが2列の列状で8個形成されている。そして、貫通孔126hは、この2列の並びで、送風ダクト128のダクト他端128bを送気用区画部113の送風路において近接させて保持する。つまり、ダクト保持体126が装着される送気用区画部113の縦横の内寸法は、送風ダクト128が4個並びで2列に収まる程の大きさであればよく、これ以上の大きさとする必要は無い。この場合、送風機ごとの送風ダクト128は、定寸法でダクト保持体126からダクト他端128bが突出するように保持され、ダクト他端128bは、総て同じ向きで送気用区画部113の通風方向に向いている。そして、貫通孔126hと送風ダクト128との隙間には、コーキング材が塗布、または気密用フランジが取り付けられる。
【0031】
上記した空調システム120を有する住居100の建築工程においては、柱や間柱を組み立てる上棟に続き、住居外壁と屋根109や窓の取り付け工程、床を張る工程等を行い、その後、送気用区画部113の上端側にダクト保持体126を内接配置し、このダクト保持体126に各送風機ごとの送風ダクト128を仮配設する。この際、送風機123a1〜123a8への電気配線を仮配設する。建物内部の仕切り壁や天井を組み付ける内装工程では、送気用区画部113の他、空調機室121や送風機用チャンバー室124が形成され、その内部には各送風機ごとの送風ダクト128や電気配線が配設済である。そして内装仕上げ工程の終了後に、送風機123a1〜123a8のそれぞれの吹出口に送風ダクト128を接続するとともに、仕切壁122に予め設けた送風機取付用の開口部に送風機123a1〜123a8を設置する。これにより、空調システム120が構築される。
【0032】
以上説明した本実施形態の空調システム120は、空調機140で空調した空調済空気CAの空調機室121から送気用区画部113への送風を、送風機123a1〜123a8のそれぞれの吹出口に接続されて送気用区画部113に亘って設けられた送風機ごとの送風ダクト128で担う。よって、
図3に示すように、送風機123a1と送風機123a2が他の送風機に比べて送気用区画部113から離れていても、これら送風機123a1〜123a2を含む総ての送風機123a1〜123a8からの送風ダクト128を、ダクト他端128bが送気用区画部113に位置して近接するように、送気用区画部113まで延伸できる。このため、送風機123a1〜123a2を含む8台の総ての送風機から、送風ダクト128により安定した空気の流れで送気用区画部113に空調済空気CAを送風できると共に、例えば送風機123a1から送気用区画部113への送風に他の送風機からの送風に影響を及ぼさない。この結果、本実施形態の空調システム120によれば、空調機室121で得た空調済空気CAを複数台の送風機123a1〜123a8を用いて同じ方向にムラなく送気用区画部113に導き入れることができる。換言すれば、空調機室121から送気用区画部113への空調済空気CAの送風を担う複数台の送風機の配設の自由度が高まるので、送風機用チャンバー室124の形状の制約が低くなり、空調システム120の導入が容易となる。
【0033】
本実施形態の空調システム120は、送気用区画部113と空調機室121との連設箇所に送風機用チャンバー室124を設け、この送風機用チャンバー室124と空調機室121を隔てる仕切壁122に、送風機123a1〜123a8を上下2列に配設して備える。よって、本実施形態の空調システム120によれば、
図2および
図3に示すように、送風機用チャンバー室124における送風ダクト128の設置作業や保守点検も容易となる。また、空調機室121の側での送風機123a1〜123a8の配置作業や保守点検も容易となる。
【0034】
本実施形態の空調システム120は、送風機123a1〜123a8のそれぞれから送気用区画部113まで延伸させた送風ダクト128を、消音機能を有するフレキシブルダクトとした上で、送風機用チャンバー室124において延ばしている。よって、本実施形態の空調システム120によれば、送気用区画部113への空調済空気CAの送風に際して発生し得る異音、例えば空調済空気CAが送気用区画部113に到るまでの間の共鳴音等を送風機用チャンバー室124の形状に拘わらず抑制できる。また、消音機能に加え断熱機能も有する送風ダクト128を送風機用チャンバー室124に配設する事で、次の利点がある。送風機用チャンバー室124では、送風機123a1〜123a8の運転音による共鳴が起き得るが、送風機用チャンバー室124に延びる複数本の送風ダクト128により、送風機運転音による共鳴の消失、或いは抑制を図ることができる。そして、送風機123a1〜123a8の吸込パネル側から外に漏れる運転音も低減できた。つまり、送風機123a1〜123a8の吸込パネル前方10cmでの送風機運転音を、送風ダクト128が無い場合とある場合とで測定したところ、送風ダクト128を送風機用チャンバー室124に延伸させれば、送風ダクト128が無い場合の運転音46.8dB(Aレンジによる)に比べ2dB程度の運転音を低減できた。よって、空調機室121と送風機用チャンバー室124とを例えば2階に設けた場合には、その周辺に廊下等が配置されるが、廊下等での送風機運転音の認知を抑制できる。
【0035】
本実施形態の空調システム120は、空調機室121から送気用区画部113にまで送風ダクト128を延伸させるに当たり、送気用区画部113の送風路の上端にダクト保持体126を内接配置して、このダクト保持体126の複数の貫通孔126hで送風ダクト128のダクト他端128bを保持する。よって、本実施形態の空調システム120によれば、送風ダクト128の設置作業をより簡便とできる。
【0036】
本実施形態の空調システム120は、送風機123a1〜123a8の各送風機による送風機能を、直流モーターの制御を通した一定風量の送風機能とした。よって、本実施形態の空調システム120によれば、送風機123a1〜123a8の各送風機ごとの送風ダクト128から送気用区画部113に送風される空調済空気CAの風量と風速が定量となるので、送気用区画部113で空調済空気CAが合流する際の圧損をダクト長さに拘わらず効果的に抑制できる。
【0037】
本実施形態の空調システム120は、送風機123a1〜123a8の各送風機ごとの送風ダクト128をダクト保持体126で保持するに当たり、貫通孔126hと送風ダクト128との隙間にコーキング材や気密用フランジを設けた。よって、本実施形態の空調システム120によれば、送風機123a1〜123a8からの送風により送気用区画部113の内圧が上がっても、送風済みの空調済空気CAが送風機用チャンバー室124に漏れることを防止できるので、送風機用チャンバー室124内部の気密コーキングは不要となり、送気用区画部113内側の送風路のみを気密とすればよい。換言すれば、送風機用チャンバー室124は、仕切壁122以外の壁面を備えず、送風機123a1〜123a8を取り付ける支柱等の枠体で構成される区画であっても構わない。また、コーキングすることで、送風機123a1〜123a8を配設するまでの工事の間に送風ダクト128が移動したりすることを防止することもできる。
【0038】
本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0039】
既述した実施形態では、仕切壁122で区切られた空調機室121と送風機用チャンバー室124とを屋根裏110に設けたが、送気用区画部113を有する住居100の適宜な箇所、例えば2階の住居域の一部である押し入れや2階廊下の一画などに設けてもよい。
【0040】
既述した実施形態では、送風機用チャンバー室124を屈曲した仕切壁122で空調機室121と仕切られた平面視L字状の区画領域としたが、住居100における屋根裏110や2階住居域の構造、或いは送気用区画部113が形成する送風路の形状等に応じて、L字状以外の区画領域としてもよい。
図5は、変形例の送風機用チャンバー室124の平面視態様を示す説明図である。この変形例の送風機用チャンバー室124は、平板状の仕切壁122で空調機室121と仕切られた平面視扁平長方形の区画領域となる。
【0041】
既述した実施形態では、それぞれの送風機に接続した送風ダクト128をダクト保持体126により保持したが、これに限らない。例えば、送風ダクトごとに金具等を用いて、送風ダクト128のダクト他端128bが近接するように、送気用区画部113の上端に送風ダクト128を直接保持してもよい。また、送気用区画部113の上端を覆っている送風機用チャンバー室124の床自体に、貫通孔126hに相当する貫通孔を形成して、送風ダクト128をそのダクト他端128bの側で保持してもよく、こうすれば、ダクト保持体126を用いなくてもよい。この他、送気用区画部113の上端までそれぞれの送風機から延在した送風ダクト128を、そのダクト他端128bにおいて、結束バンドで結束し、その結束状態のまま、複数の送風ダクト128を金具等を用いて送気用区画部113の上端に直接保持してもよい。
【0042】
既述した実施形態では、複数の送風ダクト128を保持するダクト保持体126を、貫通孔126hを縦横に2列有する保持体としたが、貫通孔126hを千鳥状に備えたり、送気用区画部113の中央領域に貫通孔126hを集めて形成した保持体としてもよい。この他、貫通孔126hを送気用区画部113の壁面寄りに離して形成したダクト保持体126としたり、格子状の枠体とし、それぞれの格子を貫通孔126hに代用してもよい。
【0043】
既述した実施形態では、送気用区画部113を、空調機室121の側から住居100の床下の側に向けて住居外壁の側に形成したが、例えば吹き抜けの住居域210の域内に中空の柱を設け、この中空の柱を送気用区画部113としてもよい。この他、既設の住居100の住居外壁の外壁面に、新たに送気用区画部113を液密・気密に追加・形成してもよい。
【0044】
既述した実施形態では、送風機ごとの送風ダクト128をダクト他端128bが定寸法でダクト保持体126から突出するように保持したが、ダクト他端128bの吐出寸法は、例えば数センチ程度の差があってもよい。
【0045】
既述した実施形態では、ダクト保持体126に貫通孔126hを4個の2列の並びで設けたが、3個の並びが2列で2個の並びが1列の都合3列で8個、有するようにしても意よい。また、送風機123aが6台であれば、貫通孔126hを3個の2列の並びとしてもよい。