特許第6590352号(P6590352)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6590352
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】咬合紙ホルダー
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/05 20060101AFI20191007BHJP
【FI】
   A61C19/05 120
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-514907(P2018-514907)
(86)(22)【出願日】2017年9月5日
(86)【国際出願番号】JP2017031904
(87)【国際公開番号】WO2018047807
(87)【国際公開日】20180315
【審査請求日】2018年9月9日
(31)【優先権主張番号】特願2016-174464(P2016-174464)
(32)【優先日】2016年9月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504205521
【氏名又は名称】国立大学法人 長崎大学
(74)【代理人】
【識別番号】100174643
【弁理士】
【氏名又は名称】豊永 健
(72)【発明者】
【氏名】田上 直美
【審査官】 佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭52−29793(JP,U)
【文献】 実開昭62−122610(JP,U)
【文献】 米国特許第1910740(US,A)
【文献】 米国特許第5902318(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 19/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の上下の歯列を閉じたときの咬合確認に用いる咬合紙ホルダーにおいて、
前記歯列の外側に配置され、対向して開閉自在の上アームと下アームとで咬合紙を挟んで保持する咬合紙挟み部と、
前記咬合紙挟み部の一方の端部に接続されて挟み込みおよび解放で前記上アームと前記下アームとを開閉させる把持部と、
前記咬合紙挟み部から前記歯列の幅よりも広い間隔で離間して前記歯列の内側に設けられて舌を押し込む舌圧子と、
前記咬合確認を妨げないように前記歯列の最奥臼歯よりも奥側に位置して前記咬合紙挟み部の前記把持部に対して反対側の端部と前記舌圧子とを連結する連結部と、
を有することを特徴とする咬合紙ホルダー。
【請求項2】
前記舌圧子は、前記咬合紙を含む平面において略円弧状であることを特徴とする請求項1に記載の咬合紙ホルダー。
【請求項3】
前記舌圧子は、前記咬合紙を含む平面において略直線状であることを特徴とする請求項1に記載の咬合紙ホルダー。
【請求項4】
前記連結部が、前記上アームおよび前記下アームのいずれか一方のみに接続されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の咬合紙ホルダー。
【請求項5】
前記連結部が、前記上アームに接続された上側連結部と前記下アームに接続された下側連結部から成り、
前記舌圧子が、前記上側連結部および前記下側連結部に接続されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の咬合紙ホルダー。
【請求項6】
前記連結部が、前記上アームに接続された上側連結部と前記下アームに接続された下側連結部から成り、
前記舌圧子が、前記上側連結部に接続された上側舌圧子と前記下側連結部に接続された下側舌圧子から成る、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の咬合紙ホルダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯列の咬合を検査する咬合紙を保持する咬合紙ホルダーに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科治療において咬合の確認や調整は大変重要である。咬合確認には通常、咬合紙を用いるが、咬合紙単独では使用しづらいため咬合紙ホルダーで保持して口腔内に挿入するのが一般的である。
【0003】
しかしながら、全身麻酔や静脈麻酔で歯科処置を行う場合、麻酔薬の作用により舌が弛緩、肥大するために咬合が妨げられ,従来の咬合紙ホルダーの使用では咬合の確認が大変困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2732179号
【特許文献2】意匠登録第1194749号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および特許文献2に開示されている咬合紙ホルダーは、咬合紙を装着して保持する機能は有しているが、咬合の妨げとなる舌を内部に押し込むための舌圧子の機能を有しておらず、麻酔薬の作用等により舌が歯列より前方に出てきた場合には、咬合の確認を実施することができない。
【0006】
そこで、本発明は、舌による咬合確認の妨げを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するため、本発明の咬合紙ホルダーは、対向して開閉自在の上アームと下アームとで咬合紙を挟んで保持する咬合紙挟み部と、前記咬合紙挟み部の一方の端部に接続された把持部と、前記咬合紙挟み部から離間して設けられて舌を押し込む舌圧子と、一方の端部が前記咬合紙挟み部の前記把持部に対して反対側の端部に接続され、他方の端部が前記舌圧子に接続される連結部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、舌による咬合確認の妨げを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る咬合紙ホルダーの第1の実施の形態の使用状態における上面図である。
図2】本発明に係る咬合紙ホルダーの第1の実施の形態の正面図である。
図3】本発明に係る咬合紙ホルダーの第1の実施の形態の側面図である。
図4】本発明に係る咬合紙ホルダーの第2の実施の形態の斜視図である。
図5】本発明に係る咬合紙ホルダーの第3の実施の形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る咬合紙ホルダーのいくつか実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、この実施の形態は単なる例示であり、本発明はこれに限定されない。同一または類似の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明に係る咬合紙ホルダーの第1の実施の形態の咬合紙を保持した使用状態における上面図である。図2は、本実施の形態の咬合紙ホルダーの正面図である。図3は、本実施の形態の咬合紙ホルダーの側面図である。
【0012】
本実施の形態の咬合紙ホルダーは、人の上下の歯列91を閉じたときの噛み合わせを調べる際に用いられる。つまり、咬合紙ホルダーは、咬合確認の際に用いられる。咬合確認は、上下の歯によって挟まれた圧力によって変色する咬合紙90を用いて調べられる。人の歯列91は、略半円弧状である。
【0013】
本実施の形態の咬合紙ホルダーは、咬合紙挟み部20と把持部10と舌圧子41と連結部30とを有している。咬合紙挟み部20は、対向する上アーム21と下アーム22とを有している。咬合紙挟み部20は、人の歯列91に沿った略円弧状に形成されている。上アーム21および下アーム22は、開閉自在に設けられている。
【0014】
把持部10は、咬合紙挟み部20の中央部において、すなわち、咬合紙挟み部20の右側アームおよび左側アームの端部において、咬合紙挟み部20と接続している。把持部10は、たとえば上下2本の細長い平板11であって、咬合紙挟み部20に対して反対側の端部が互いに結合している。把持部10の2本の平板の間には、たとえばばね12が設けられていて、2本の平板が離れる方向に付勢されている。
【0015】
舌圧子41は、左右それぞれの咬合紙挟み部20から歯列91を挟むように離間して設けられている。舌圧子41は、全体として、保持された咬合紙を含む平面において人の歯列91に沿った略円弧状に形成されている。
【0016】
連結部30の一方の端部は、咬合紙挟み部20の把持部10に対して反対側の端部に接続されている。連結部30の他方の端部は舌圧子41に接続されている。連結部30は、歯列91の両端、すなわち最も奥に存在する奥歯(最奥臼歯)よりも奥側に位置している。ここで、奥側とは、口を口腔の前方とした場合に後方のことである。
【0017】
連結部30は、上アーム21および下アーム22のそれぞれに接続された上側連結部と下側連結部とからなる。舌圧子41は、上側連結部および下側連結部のそれぞれに接続された上側舌圧子と下側舌圧子とからなる。
【0018】
本実施の形態の咬合紙ホルダーは、たとえばステンレス鋼で形成されている。
【0019】
次に、本実施の形態の咬合紙ホルダーを用いた咬合確認の方法について説明する。
【0020】
咬合確認の際には、まず、把持部10を手で持った状態で咬合紙90を所定の位置に移動させる。その後、把持部10の上下の平板11を手で挟み込むことにより、咬合紙挟み部20の上アーム21および下アーム22が咬合紙90を挟んで閉じる。このようにして咬合紙90が咬合紙挟み部20の上アーム21および下アーム22で挟んで保持される。
【0021】
次に、咬合紙90が咬合紙挟み部20で挟んだ状態で、咬合紙ホルダーを口腔内に挿入する。咬合紙ホルダーは、連結部30が歯列91の最奥部よりも奥側になる位置まで挿入される。連結部30を歯列91の最奥部よりも奥側に押し込んだ状態で、患者に上下の歯を閉じさせる。これにより、咬合紙90に咬合状態が記録される。その後、患者に上下の歯を開けさせ、咬合紙ホルダーを取出し、把持部を挟む力を小さくすることにより、咬合紙90が上アーム21および下アーム22で挟んだ状態から解放される。
【0022】
舌圧子41は、歯列91の内側に略円弧状に形成されている。つまり、舌圧子41は、舌の側方を内側に押し込む側方舌圧部と、舌を咽頭側に押し込む前方舌圧部とを備えている。このため、咬合確認の際に、舌が咽頭側に押し込まれる。
【0023】
歯科治療において咬合の確認や調整は大変重要である。全身麻酔(静脈麻酔を含む)で歯科処置を行う場合、麻酔薬の作用により舌が弛緩、肥大するために咬合が妨げられる場合がある。たとえば、麻酔薬の作用により、舌が歯列より前方に出てくることがある。
【0024】
しかし、本実施の形態の咬合紙ホルダーを用いると、咬合確認の際に、舌が咽頭側に押し込まれるため、舌による咬合確認の妨げを抑制することができる。その結果、患者に麻酔をした状態でも安全に咬合確認を行うことができる。また、別途、舌圧子を用いる必要がないため、咬合確認を簡単、かつ、確実に行うことができる。つまり、一人が単独の舌圧子によって舌を押さえた状態で、別の人が咬合紙ホルダーを口腔内に挿入するという必要がない。よって、咬合確認に要する時間も短縮できる。患者の負担も小さくなる。
【0025】
[第2の実施の形態]
図4は、本発明に係る咬合紙ホルダーの第2の実施の形態の斜視図である。
【0026】
本実施の形態の咬合紙ホルダーは、咬合紙挟み部20が略直線状である。この咬合紙ホルダーは、歯列91(図1参照)の左右のどちらか一方の咬合を確認する場合に用いる。
【0027】
本実施の形態の咬合紙ホルダーは、咬合紙挟み部20と把持部10と舌圧子42と連結部30とを有している。咬合紙挟み部20は、対向する上アーム21と下アーム22とを有している。開閉自在に設けられている。
【0028】
把持部10は、咬合紙挟み部20の端部において、咬合紙挟み部20と接続している。把持部10は、たとえば上下2本の細長い平板11であって、咬合紙挟み部20に対して反対側の端部が互いに結合している。把持部10の上側の平板11は、下アーム22に接続している。把持部10の下側の平板11は、上アーム21に接続している。把持部10の2枚の平板11は、開く側に付勢されている。つまり、把持部10を手で把持していない状態では、咬合紙挟み部20は閉じた状態である。
【0029】
舌圧子42は、咬合紙挟み部20から歯列91を挟むように離間して設けられている。舌圧子42は、舌の側方を内側に押し込む側方舌圧部のみからなり、たとえば保持された咬合紙(図示せず)を含む平面において略直線のスプーン状に形成されている。
【0030】
連結部30の一方の端部は、咬合紙挟み部20の把持部10に対して反対側の端部に接続されている。連結部30の他方の端部は舌圧子42に接続されている。連結部30は、歯列91の端部、すなわち最も奥に存在する奥歯よりも奥側に位置している。
【0031】
連結部30は、上アーム21および下アーム22のそれぞれに接続された上側連結部と下側連結部とからなる。舌圧子42は、連結部30側に水平に伸びるスリットを有し、スリットの上側および下側が、上側連結部および下側連結部のそれぞれに接続されている。
【0032】
本実施の形態の咬合紙ホルダーを用いると、咬合確認の際に、舌が歯列より内部に押し込まれるため、舌による咬合確認の妨げを抑制することができる。本実施の形態では、咬合紙挟み部20の両側、すなわち、把持部10側の端部および連結部30側の端部が、いずれも把持部10に押しつけ力を加えない状態では、閉じる側に付勢されていることになり、咬合紙の保持力が高まる。また、上下を入れ替えることにより、左右どちらの歯列の咬合確認も行うことができ、所望の歯列部分だけを確認するために操作性が良い。
【0033】
[第3の実施の形態]
図5は、本発明に係る咬合紙ホルダーの第3の実施の形態の斜視図である。
【0034】
本実施の形態の咬合紙ホルダーは、咬合紙挟み部20が略直線状である。この咬合紙ホルダーは、歯列91(図1参照)の左右のどちらか一方の咬合を確認する場合に用いる。
【0035】
本実施の形態の咬合紙ホルダーは、咬合紙挟み部20と把持部10と舌圧子43と連結部30とを有している。咬合紙挟み部20は、対向する上アーム21と下アーム22とを有している。開閉自在に設けられている。
【0036】
把持部10は、咬合紙挟み部20の端部において、咬合紙挟み部20と接続している。把持部10は、たとえば上下2本の細長い平板11であって、咬合紙挟み部20に対して反対側の端部が互いに結合している。把持部10の上側の平板11は、下アーム22に接続している。把持部10の下側の平板11は、上アーム21に接続している。把持部10の2枚の平板11は、開く側に付勢されている。つまり、把持部10を手で把持していない状態では、咬合紙挟み部20は閉じた状態である。
【0037】
舌圧子43は、咬合紙挟み部20から歯列91を挟むように離間して設けられている。舌圧子43は、保持された咬合紙(図示せず)を含む平面において歯列91(図1参照)に沿った略円弧状に形成されている。
【0038】
連結部30の一方の端部は、咬合紙挟み部20の把持部10に対して反対側の端部に接続されている。連結部30の他方の端部は舌圧子43に接続されている。連結部30は、歯列91の端部、すなわち最も奥に存在する奥歯よりも奥側に位置している。
【0039】
連結部30は、上アーム21に接続された上側連結部からなる。つまり、上アーム21にのみ連結部を接続している。舌圧子43は、上側連結部に接続されている。
【0040】
本実施の形態の咬合紙ホルダーを用いると、咬合確認の際に、舌が咽頭側に押し込まれるため、舌による咬合確認の妨げを抑制することができる。本実施の形態では、咬合紙挟み部20と連結部30との接続、および連結部30と舌圧子43との接続が、それぞれ1カ所であるため、製造が容易である。
【0041】
本実施の形態の咬合紙ホルダーは、上下を入れ替えることにより、左右どちらの歯列の咬合確認も行うことができる。また連結部30は、下アーム22に接続された下側連結部からなるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0042】
10…把持部、11…平板、12…ばね、20…咬合紙挟み部、21…上アーム、22…下アーム、30…連結部、41…舌圧子、42…舌圧子、43…舌圧子、90…咬合紙、91…歯列
図1
図2
図3
図4
図5