(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
各種の掘進機による地山の掘削に際し、地山の切羽又は掘削土砂による土水圧力及びせん断力が作用する掘進機の各部に設置され、掘進機の各部に作用する土水圧力及びせん断力を測定する土水圧力・せん断力測定センサであって、
先端に開口を有する略筒状のケースと、
前記ケースの開口面内に配置され、前記土水圧力及びせん断力を受ける受圧部と、
前記ケース内に設置されて前記受圧部を支持し、前記受圧部が前記土水圧力を受けて前記受圧部を前記ケースの軸心方向に進退可能に歪み変形し、かつ前記受圧部が前記せん断力を受けて前記受圧部を前記ケースの軸心を中心に揺動可能に歪み変形して、前記土水圧力による歪み量及び前記せん断力による歪み量を電気抵抗の変化として検出する感度部と、
を備え、
地山の切羽又は掘削土砂による土水圧力及びせん断力を同時に測定する、
ことを特徴とする土水圧力・せん断力測定センサ。
ケースは、先端に受圧部を配置可能な開口を有し、後端に感度部のための取付基部を有する有底円筒状のケース本体と、前記ケース本体の周面の後端又は先端に前記ケース本体の軸方向に対して略直角に外側に向けて張り出され、外周端に取付ねじのための取付穴を有する取付フランジとからなる請求項1に記載の土水圧力・せん断力測定センサ。
受圧部は、前記ケース内で前記感度部の先端に取り付けられる円形の支持板と、前記支持板に取り付けられ、前記ケースの開口面内に配置される円形の受圧板とからなる請求項1又は2に記載の土水圧力・せん断力測定センサ。
感度部は、受圧部を先端に支持し、前記受圧部が土水圧力を受けてその土水圧力に応じて歪み変形し、前記受圧部がせん断力を受けてそのせん断力に応じて歪み変形する起歪体と、前記起歪体の歪みの発生位置に貼着され、前記受圧部の受ける土水圧力を測定する土水圧力用歪みゲージ及び前記受圧部の受けるせん断力を測定するせん断力用歪みゲージとを有する請求項1乃至3のいずれかに記載の土水圧力・せん断力測定センサ。
【背景技術】
【0002】
本願発明者らは、先の出願(特許文献1)において、シールド掘進機を使用して掘削する地山の土砂の性質について、砂質土、砂礫は、粘着性がないが、土粒子のかみ合わせ効果やダイレイタンシーがあり、これがカッターの回転、土砂撹拌時の抵抗となり、粘性土は土粒子のかみ合わせ効果は少ないものの、粘着性、つまり土粒子間の吸着、土粒子とカッターや隔壁との吸着があり、これがカッターの回転、土砂撹拌時の抵抗となり、これらの抵抗の大きさは一般に土砂の硬軟によって異なることに着目し、これらの大きさを隔壁やカッタースポーク、又は撹拌翼、固定翼に設置するせん断力計により測定し、その測定値の大小によって土砂の性状を評価する方法を提案した。
【0003】
また、本願発明者らは、今般、先の出願(特許文献1)に関連して、土圧式シールド掘進機、泥土圧式シールド掘進機などの土圧系シールド掘進機を使用するシールド工法、土圧式掘進機、泥土圧式掘進機などの土圧系掘進機を使用する推進工法など、各種の掘削工法に用いるチャンバー内の掘削土砂の性状評価判定方法において、掘進路線上で土被り圧や地下水圧が変化したり、地表やトンネル直上に重量物が存在したりして、掘進路線上で地山の土圧や水圧が変化する場合でも、同一路線内でチャンバー内の掘削土砂の性状を相対的に評価判定すること、併せて土圧式シールド掘進機、泥土圧式シールド掘進機などの土圧系シールド掘進機、泥水式シールド掘進機を使用するシールド工法、土圧式掘進機、泥土圧式掘進機などの土圧系掘進機、泥水式掘進機を使用する推進工法など、各種の掘削工法に用いるカッターヘッド前方の切羽の土質評価判定方法において、カッターヘッド前方の地山の土質を相対的に評価判定することを目的として、新たに、各種の掘削工法に用いるチャンバー内の掘削土砂の性状評価判定方法、及びカッターヘッド前方の切羽の土質評価判定方法(特許文献2)を提案した。
【0004】
これらの方法では、カッターヘッドにより地山を掘削するときの地山とカッターヘッドとの間の土水圧力やせん断力を測定したり、カッターヘッドで地山を掘削する間、掘削土砂や泥土がチャンバーやスクリューコンベアに及ぼす土水圧力やせん断力を測定したりするため、多くの土圧計とせん断力計が、地山の掘削に使用する各種のシールド掘進機のカッターヘッドの面盤(チャンバー側の面、地山側の面)、カッタースポーク(チャンバー側の面、地山側の面、側面)、チャンバーのバルクヘッド(隔壁)、バルクヘッドに配設されるスクリューコンベア、カッターヘッドの背面に配設される撹拌翼やバルクヘッドに配設される固定翼などに、個別の配置により又は略同一位置になるように設置されて、これらの土圧計、せん断力計により、カッターヘッドやチャンバー内の各部に作用する土水圧力、せん断力を測定する。
したがって、これらの方法には、多くの土圧計とせん断力計が必要となる。
なお、これらの土圧計、せん断力計は汎用品である。土圧計は、土圧(圧力)を検知する略平板形状の計測機材で、片側一方の面が圧力を受け反応(受圧)する受圧面になっている。せん断力計はせん断力を感知する略平板形状の計測機材で、片側一方の面が圧力を受け反応(感知)する受感面になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば特許文献2の掘削土砂の性状評価判定方法のように、掘削土砂による圧力及びせん断力が作用するチャンバー内の各部に、土圧計及びせん断力計を略同一の位置となるように近接して配置し、各部の土圧計及びせん断力計により得た両者の値を用いて、チャンバー内の掘削土砂の性状を評価する方法では、チャンバー内に相当数の土圧計、せん断力計を配置する必要があり、中小口径のシールド掘進機の場合、チャンバーを構成するバルクヘッドに土圧計及びせん断力計を設置可能な不可動部分が少なく、また、カッターヘッドを構成するカッタースポークの大きさに制限があり、土圧計及びせん断力計の設置個所や設置空間が少なく、また、実際には、土圧計及びせん断力計の両方を略同一の位置に設置できないことが多い、という問題がある。
【0007】
本発明は、上記従来の問題を解決するものであり、各種のシールド工法に使用する中小口径以上の各種のシールド掘進機や各種の推進工法に使用する各種の掘進器のカッターヘッドの面盤、カッタースポーク、チャンバーのバルクヘッド、バルクヘッドに配設されるスクリューコンベア、カッターヘッドの背面に配設される撹拌翼やバルクヘッドに配設される固定翼など、2種類の測定器(土圧計やせん断力計)では略同一の位置になるように設置することが困難な狭隘な設置個所や空間にも設置可能で、全体として多くの設置個所や空間に設置して、各設置個所において、1台のセンサで土水圧力とせん断力とを同時に測定することのできる土水圧力・せん断力測定センサを提供すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、各種の掘進機による地山の掘削に際し、地山の切羽又は掘削土砂による土水圧力及びせん断力が作用する掘進機の各部に設置され、掘進機の各部に作用する土水圧力及びせん断力を測定する土水圧力・せん断力測定センサであって、
先端に開口を有する略筒状のケースと、
前記ケースの開口面内に配置され、前記土水圧力及びせん断力を受ける受圧部と、
前記ケース内に設置されて前記受圧部を支持し、前記受圧部が前記土水圧力を受けて前記受圧部を前記ケースの軸心方向に進退可能に歪み変形し、かつ前記受圧部が前記せん断力を受けて前記受圧部を前記ケースの軸心を中心に揺動可能に歪み変形して、前記土水圧力による歪み量及び前記せん断力による歪み量を電気抵抗の変化として検出する感度部と、
を備え、
地山の切羽又は掘削土砂による土水圧力及びせん断力を同時に測定する、
ことを要旨とする。
また、この土水圧力・せん断力測定センサは、次のように具体化される。
(1)ケースは、先端に受圧部を配置可能な開口を有し、後端に感度部のための取付基部を有する有底円筒状のケース本体と、前記ケース本体の周面の後端又は先端に前記ケース本体の軸方向に対して略直角に外側に向けて張り出され、外周端に取付ねじのための取付穴を有する取付フランジとからなる。
(2)受圧部は、前記ケース内で前記感度部の先端に取り付けられる円形の支持板と、前記支持板に取り付けられ、前記ケースの開口面内に配置される円形の受圧板とからなる。
(3)感度部は、受圧部を先端に支持し、前記受圧部が土水圧力を受けてその土水圧力に応じて歪み変形し、前記受圧部がせん断力を受けてそのせん断力に応じて歪み変形する起歪体と、前記起歪体の歪みの発生位置に貼着され、前記受圧部の受ける土水圧力を測定する土水圧力測定用歪みゲージ及び前記受圧部の受けるせん断力を測定するせん断力測定用歪みゲージとを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の土水圧力・せん断力測定センサによれば、上記の構成により、このセンサ1台で、地山の切羽又は掘削土砂による土水圧力及びせん断力を同時に測定するようにしたので、各種のシールド工法に使用する中小口径以上の各種のシールド掘進機や各種の推進工法に使用する各種の推進器のカッターヘッドの面盤、カッタースポーク、チャンバーのバルクヘッド、バルクヘッドに配設されるスクリューコンベア、カッターヘッドの背面に配設される撹拌翼やバルクヘッドに配設される固定翼など、2種類の測定器(土圧計やせん断力計)では略同一の位置になるように設置することが困難な狭隘な設置個所や空間にも設置可能で、全体として多くの設置個所や空間に設置して、土水圧力とせん断力とを同時に測定することができる、という本発明独自の格別な効果を奏する。
また、本発明の土水圧力・せん断力測定センサを、本願発明者らが今般出願した特許文献2の各種の掘削工法に用いるチャンバー内の掘削土砂の性状評価判定方法、及びカッターヘッド前方の切羽の土質評価判定方法に用いることにより、その効果を確実に実現することができ、その実用性は大きい、という本発明独自の格別な効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、この発明を実施するための形態について図を用いて説明する。
図1、
図2に土水圧力・せん断力測定センサを示している。
図1、
図2に示すように、この土水圧力・せん断力測定センサM(以下、単にセンサMという。)は、各種の掘進機による地山の掘削に際し、地山の切羽又は掘削土砂による土水圧力及びせん断力が作用する掘進機の各部に設置され、掘進機の各部に作用する土水圧力及びせん断力を測定するもので、先端に開口30を有する略筒状のケース3と、ケース3の開口30面内に配置され、土水圧力及びせん断力を受ける受圧部4と、ケース3内に設置されて受圧部4を支持し、受圧部4が土水圧力を受けて受圧部4をケース3の軸心方向に進退可能に歪み変形し、かつ受圧部4がせん断力を受けて受圧部4をケース3の軸心を中心に揺動可能に歪み変形して、土水圧力による歪み量及びせん断力による歪み量を電気抵抗の変化として検出する感度部5とを備えて構成される。
また、このセンサMは、基本的に、掘進機の各部において埋め込み設置され、また、掘進機の各部によって設置形式が異なり、2種類の設置形式があるため、A型、B型の2種類のセンサM(A)、(B)がある。これらセンサM(A)、(B)はケース3(3A、3B)の形状のみが若干異なる。
【0012】
A型のセンサM(A)のケース3Aは、
図1に示すように、先端に受圧部4を配置可能な開口30を有し、後端に感度部5のための取付基部33を有する有底円筒状のケース本体31と、ケース本体31の周面の後端にケース本体31の軸方向に対して略直角に外側に向けて円形に張り出され、外周端に取付ねじのための取付穴34aを有する取付フランジ32aとからなる。
このケース3Aの場合、ケース本体31の外周面の先端に浅い溝310aが全周に形成され、この溝310aに断面L字形の円形のリング部材からなる土砂浸入防止リング311aがケース本体31の外周面に一体的に環装されて、この土砂浸入防止リング311aによりケース本体31の先端開口30と受圧部4との間の隙間が覆われ、この隙間から土砂が侵入するのを防止する。ケース本体31の後端は底部として塞がれていて、その内側の面の中央に感度部5のための取付基部33が形成される。取付基部33は感度部5の基端面の大きさより大きい円形の凹状に形成され、その中心から半径方向所定の位置に複数のねじ挿通部331が穿たれる。また、この取付基部33とは反対側の外側の面にはその中央に取付基部33よりも大きい円形の浅い凹部36を形成され、凹部36の中心と外周との間に円形の凸状部37が突設されるとともに、この凸状部37の外側で凹部36の外周近傍の所定の位置に複数のねじ孔38が形成され、さらに、この凸状部37と各ねじ孔38との間に円周方向に幅狭の浅い溝39を形成されて、測定ケーブルチャンバー6のための取付部35が設けられる。なお、この取付フランジ32の取付基部33と取付部35との間には貫通穴(図示省略)が形成され、この貫通穴に感度部5の電気信号を外部に導出するための端子部(図示省略)が併せて設けられる。この取付部35に取り付けられる測定ケーブルチャンバー6は全体が略ハット形に形成され、一端が肉厚で、その中心にケーブル挿通部60を有する円筒部61と、この円筒部61の他端に外周方向に向けて円形に張り出され、その外周近傍の所定の位置に複数のねじ挿通部63を有する取付フランジ62とからなる。この測定ケーブルチャンバー6はケーブル挿通部60に測定ケーブル7をグランドパッキン64を介して挿通され、取付部35の溝39に防水Oリング65が嵌着されて、円筒部61の他端が取付部35の凸状部37の外周面に嵌合されるとともに、取付フランジ62が取付部35の凹部36に嵌め込まれ、取付ねじ66を測定ケーブルチャンバー6の取付フランジ62のねじ挿通部63を通し取付部35のねじ孔38に締結して、チャンバー6内部を水密に密閉して取り付けられる。なお、この測定ケーブルチャンバー6に通された測定ケーブル7は取付基部33と取付部35との間に設けられる端子部に電気的に接続される。また、このケース3Aの取付フランジ32aの各取付穴34aは全体が同径の円筒形で、取付ねじのねじ部のみが挿通可能になっている。なお、この取付穴34aは、取付ねじのねじ部が挿通可能な小径のねじ挿通部と取付ねじの頭部が嵌合可能な大径の頭部嵌合部とからなり、取付ねじを取付フランジ32aの後面と面一に埋め込む形式としてもよい。
B型のセンサM(B)のケース3Bは、
図2に示すように、先端に受圧部4を配置可能な開口30を有し、後端に感度部5のための取付基部33を有する有底円筒状のケース本体31と、ケース本体31の周面の先端にケース本体31の軸方向に対して略直角に外側に向けて円形に張り出され、外周端に取付ねじのための取付穴34bを有する取付フランジ32bとからなる。
このケース3Bの場合、ケース本体31先端の開口30縁部全周に浅い溝310bが円周方向に形成され、この溝310bに平坦形の円形のリング部材からなる土砂浸入防止リング311bがケース本体31の開口30縁部に一体的に環装されて、この土砂浸入防止リング311bによりケース本体31の先端開口30と受圧部4との間の隙間が覆われ、この隙間から土砂が侵入するのを防止する。ケース本体31の後端は、A型のケース3Aと同様で、底部として塞がれ、その内側の面に感度部5のための取付基部33が形成され、外側の面に取付部35が設けられ、取付部35に測定ケーブルチャンバー6が取り付けられる(
図1参照)。また、このケース3Bの取付フランジ32bの各取付穴34bは、取付ねじのねじ部が挿通可能な小径のねじ挿通部と取付ねじの頭部が嵌合可能な大径の頭部嵌合部とからなり、取付ねじを取付フランジ32bの前面と面一に埋め込む形式になっている。
【0013】
受圧部4は、
図1、
図2に示すように、ケース3内で感度部5の先端に取り付けられる円形の支持板42と、支持板42に取り付けられ、ケース3の開口30面内に配置される円形の受圧板41とからなる。
この受圧部4の場合、支持板42はケース本体31内に嵌合可能にケース本体31の内径と略同じ又は僅かに小さい外径を有する円形の板からなり、その片側一方の面はフラットで、片側他方の面は中央に円形の凹部420を形成されて、その底部の直径上の位置に複数のねじ挿通孔421が片側一方の面に貫通して穿たれ、この凹部420の外側に周方向に等間隔に複数のねじ孔422が形成され、さらに、外周面には軸方向中間部に幅狭の浅い溝423が全周に亘って形成され、この溝423に防水Oリング424が嵌着される。受圧板41は支持板42と同様にケース本体31の先端開口30内に嵌合可能に開口30の内径と略同じ又は僅かに小さい外径を有する円形の板からなり、その片側一方の面の中央には支持板42の凹部420に対して奥側に所定のスペースを残して嵌入可能に円形の凸部411が形成されるとともに、この凸部411の外周に幅狭の浅い溝412が全周に亘って形成され、さらに、外周部には支持板42の各ねじ孔422に連通可能に周方向に等間隔に複数のねじ挿通孔413が形成される。受圧部4はこのような構成からなり、支持板42が片側一方の面を後述する感度部5の先端に向けて感度部5に複数の取付ねじ43を介して取り付けられた後、受圧板41が支持板42の片側他方の面に複数の取付ねじ44を介して取り付けられる。この点は後述する。
【0014】
感度部5は、
図1、
図2に示すように、受圧部4を先端に支持し、受圧部4が土水圧力を受けてその土水圧力に応じて歪み変形し、受圧部4がせん断力を受けてそのせん断力に応じて歪み変形する起歪体51と、起歪体51の歪みの発生位置に貼着され、受圧部4の受ける土水圧力を測定する土水圧力測定用歪みゲージ52及び受圧部4の受けるせん断力を測定するせん断力測定用歪みゲージ53とを有する。
この感度部5の場合、平行板ばね型のロードセルが採用され、起歪体51はニッケルクロムモリブデン鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金などからなる弾性体の長方形のブロックで上下に薄肉の歪み部を有し、土水圧力測定用、せん断力測定用の各歪みゲージ52、53は起歪体51の上下の各面において幅方向中央を境に対称的な配置で、土水圧力測定用の歪みゲージ52が起歪体51の上下の歪み部にそれぞれ2箇所ずつ合計4か所に貼着され、せん断力測定用の歪みゲージ53が起歪体51の上下の歪み部にそれぞれ2箇所ずつ合計4か所に貼着される。そして、これら4つの土水圧力測定用歪みゲージ52、せん断力測定用の歪みゲージ53はそれぞれ、
図3(a)、(b)にR1,R2,R3,R4で示すように、ブリッジ回路に接続されて、土水圧力測定用ブリッジ回路52C、せん断力測定用ブリッジ回路53Cが構成され、これらのブリッジ回路52C、53Cの入力端及び出力端がそれぞれ、ケース3の取付フランジ32に設けられる端子部に電気的に接続されて、各ブリッジ回路52C、53Cから得られる電気信号が測定ケーブル7により外部に導出される。
また、この感度部5の場合、起歪体51の先端部に受圧部4の支持板42の各ねじ挿通孔421に連通可能に複数のねじ孔511が形成され、起歪体51の基端部にケース3の取付フランジ32の各ねじ挿通部331に連通可能に複数のねじ孔512が形成される。このようにして感度部5は起歪体51の基端部が取付フランジ32の内面の取付基部33に当接して設置された状態で、取付ねじ54を取付フランジ32の外側から各ねじ挿通部331に通し、感度部5(起歪体51)の基端部の各ねじ孔512に締結して固定される。そして、ケース3に固定された感度部5(起歪体51)の先端部に支持板42が取り付けられて、この支持板42に受圧板41が取り付けられる。この場合、支持板42は片側一方の面を感度部5に向けてケース3内に挿入され、支持板42の中央が感度部5の先端に当接されて、この状態で取付ねじ43を支持板42の各ねじ挿通孔421を通し感度部5先端の各ねじ孔511に締結して固定される。そして、受圧板41は片側一方の面の凸部411外周の溝412に防水Oリング414を嵌着され、この凸部411が支持板42の凹部420に嵌合されて、受圧板41の片側一方の面と支持板42の片側他方の面が面接触され、この状態で取付ねじ44を受圧板42の外周部の各ねじ挿通孔413に通し、支持板42の外周部の各ねじ孔422に締結して固定される。なお、これにより、ケース3内部はケース3と支持板42との間の防水Oリング424により、支持板42と受圧板41との間が防水Oリング414により水密に密閉される。
【0015】
このようにしてセンサMは、各種の掘進機の各部に、取付フランジ32を取付ねじにより固定することにより設置され、各部においてこのセンサ1台で、地山の切羽又は掘削土砂による土水圧力及びせん断力を同時に測定できるようになっている。
図4に掘進機の各部取付部におけるセンサM(A)、(B)の取付例、及びその作用を例示している。
図4に示すように、掘削機の各部には、センサM(A)、(B)を埋め込み設置するため、取付部が形成されるが、各部によって取付部の形態が少し異なり、A型、B型の2種類の取付部が設けられる。A型の取付部P1はセンサM(A)の取付フランジ32aを除くケース本体31のみを嵌挿可能に全体が同径の穴のみからなり、その挿入側の開口周囲に複数のねじ孔が形成される。B型の取付部P2はセンサM(B)のケース本体31を取付フランジ32bとともに嵌挿可能な小径の穴と大径の穴とからなり、大径の穴内で小径の穴の周囲に複数のねじ孔が形成される。例えば、センサMをチャンバー12のバルクヘッド121の内面などに取り付ける場合は、A型のケース3AのセンサM(A)が使用され、バルクヘッド121の内面にA型の取付部P1が形成されて、このセンサM(A)のケース本体31がバルクヘッド121のA型の取付部P1に後方から嵌挿され、取付フランジ32aがバルクヘッド121の外面に当接されて、複数の取付ねじが取付フランジ32aの各取付穴34aに挿通され、バルクヘッド121のねじ孔に締結されて固定される。これにより、センサM(A)はバルクヘッド121の内面に埋め込まれ、先端の受圧部4がバルクヘッド121の内面に沿って表出される。また、センサMをバルクヘッド121に突設される固定翼132の先端などに取り付ける場合は、B型のケース3BのセンサM(B)が使用され、固定翼132の先端にB型の取付部P2が形成されて、このセンサM(B)のケース本体31が取付フランジ32bとともに固定翼132のB型の取付部P2に前方から嵌挿され、取付フランジ32bが取付部P2の小径の穴の周囲に当接されて、複数の取付ねじが取付フランジ32bの各取付穴34bに挿通され、固定翼132のねじ孔に締結されて固定される。これにより、センサM(B)は固定翼132の先端面に埋め込まれ、先端の受圧部4が固定翼132の先端面に沿って表出される。
このようにして掘進機の各部に埋設された各センサMは、受圧部4が土水圧力(受圧部4の受圧面に対して略垂直の圧力)を受けると、(
図1、
図2参照)受圧部4が感度部5の起歪体51の歪み変形によりケース3の開口30面内の定位置からケース3の基端側に後退し、このときの起歪体51の歪み量が土水圧力測定用の4つの歪みゲージ52の抵抗変化により電気信号として測定される。なお、受圧部4は土水圧力を受けない状態では、起歪体51の弾性復帰により受圧部4がケース3の開口30面内の定位置に戻される。
また、受圧部4がせん断力(受圧部4の受圧面に対して略平行の力)を受けると、(
図1、
図2参照)受圧部4が感度部5の起歪体51の歪み変形によりケース3の開口30面内で揺動し、このときの起歪体51の歪み量がせん断力測定用の4つの歪みゲージ53の抵抗変化により電気信号として測定される。なお、受圧部4はせん断力を受けない状態では、起歪体51の弾性復帰により受圧部4がケース3の開口30面内の定位置に戻される。そして、これらの電気信号は測定ケーブル7により外部に出力され、測定ケーブル7に接続された図示されない表示器などに表示される。
【0016】
したがって、このセンサMによれば、このセンサ1台で、地山の切羽又は掘削土砂による土水圧力及びせん断力を同時に測定するようにしたので、各種のシールド工法に使用する中小口径以上の各種のシールド掘進機や各種の推進工法に使用する各種の推進器の各部で、2種類の測定器(土圧計やせん断力計)では略同一の位置になるように設置することが困難な狭隘な設置個所や空間にも設置可能で、全体として多くの設置個所や空間に設置して、土水圧力とせん断力とを同時に測定することができる。
【0017】
図5にこのセンサMの使用例を示している。これは、本願発明者が先に提案した方法をこのセンサMを用いて実施するものである。
図5に示すように、先端にカッターヘッド11を有し、カッターヘッド11の後部にチャンバー12を備える泥土圧式シールド掘進機1(以下、単に掘進機1という。)を使用して行う泥土圧式シールド工法では、カッターヘッド11前方の地山の掘削面である切羽Gを掘削し、掘削した土砂をチャンバー12に取り込み、加泥材を注入して、カッターヘッド11並びにチャンバー12内に配置される撹拌翼131、固定翼132により撹拌混合することにより、掘削土砂を塑性流動性と不透水性を有する泥土に変換し、この泥土をチャンバー12内とチャンバー12から後方に延びるスクリューコンベア14などからなる排土装置内に充満させ、この状態を維持しながらシールドジャッキ15の推力によりチャンバー12内の泥土に泥土圧を発生させて、この土砂の土圧を切羽に作用させることにより切羽Gの土圧と地下水圧に対抗して、切羽Gを安定化させ、掘進機1をその推進量と排土量のバランスを図りながら地山を掘進することが行われる。
このような泥土圧式シールド工法においては、切羽Gの安定を適切に保つために、チャンバー12内の掘削土砂を良好に塑性流動化する必要があり、このため、チャンバー12内掘削土砂の性状の適切な評価が重要となる。
そして、このチャンバー12内の掘削土砂の性状評価判定方法では、掘削土砂による圧力及びせん断力が作用するチャンバー12内の各部に、複数の土水圧力・せん断力測定センサM(以下、単にセンサMという。)をそれぞれの受圧面を基本的にチャンバー12の内側に向けて取り付け、チャンバー12内の各部に作用する土水圧力及びせん断力をセンサMにより測定し、チャンバー12内の各部におけるせん断力の値を土水圧力の値で除して得た数値によって、チャンバー12内の掘削土砂の性状を評価判定する。
【0018】
この評価判定方法においては、特にチャンバー12内のセンサMの配置位置として、チャンバー12の内面、撹拌翼131の表面、固定翼132の表面、アジテータの表面(不図示)、カッターヘッド11のチャンバー12に対向する背面にそれぞれ、センサMを設置して、泥土がチャンバー12の内面、撹拌翼131の表面、固定翼132の表面、アジテータの表面、カッターヘッド11の背面に作用する圧力及びせん断力を計測する。
この場合、チャンバー12の内面はチャンバー12の底となるバルクヘッド(隔壁)121、及びチャンバー12の内周面となるシールドスキンプレート10の前端部側内周面であり、このチャンバー12に設置するセンサMは、センサMの受圧面がチャンバー12のバルクヘッド121とシールドスキンプレート10の前端部側内周面に略同一面となるように、チャンバー12のバルクヘッド121とシールドスキンプレート10の前端部側内周面の適宜の計測位置に埋め込み設置する。
撹拌翼131の表面は、カッターヘッド(カッタースポーク)11の背面に突設されてチャンバー12に向けて延び、カッターヘッド11とともに回転される撹拌翼131の周面であり、固定翼132の表面は、チャンバー12のバルクヘッド121に固定されてシールドスキンプレート10の前端部に向けて延びる固定翼132の周面であり、この撹拌翼131、固定翼132に設置するセンサMは、センサMの受圧面をカッターヘッド11の回転方向に対して略直交する方向に向けて、すなわちセンサMの受圧面がチャンバー12内の掘削土砂の流れに略対向するように、又はカッターヘッド11の回転方向と略平行にして、すなわちセンサMの受圧面がチャンバー12内の掘削土砂の流れに略沿うように設置する。
なお、この場合、カッターヘッド11は正転方向又は逆転方向に回転可能になっているので、いずれの方向の回転に対しても撹拌翼131、固定翼132のセンサが掘削土砂に反応できるように、2方向のセンサMを設置してもよい。また、この場合、センサMはその受圧面をシールド掘進機1の軸芯に向けて設置してもよく、シールド掘進機1の周面(シールドスキンプレート10の内周面)に向けて設置してもよく、さらに、2方向のセンサMを設置してもよい。また、センサMはその受圧面をシールド掘進機1の後方、すなわちチャンバー12のバルクヘッド121に向けて設置してもよく、シールド掘進機1の前方、すなわちカッターヘッド11の背面に向けて設置してもよく、さらに、その2方向のセンサMを設置してもよい。また、センサMは上記各種の設置形式を組み合せて設置してもよい。さらに、このセンサMは撹拌翼131、固定翼132の先端に設置されてもよく、この場合、受圧面をカッターヘッド11の回転方向と略平行に向ければよい。
アジテータについては特に図示していないが、アジテータの表面に設置するセンサはその受圧面をアジテータの回転方向に対して略直交する方向に向けて又は略平行に設置する。
なお、この場合、アジテータは正転方向又は逆転方向に回転可能になっているので、いずれの方向の回転に対してもアジテータのセンサが掘削土砂に反応できるように、2方向のセンサMを設置してもよい。
カッターヘッド(カッタースポーク)11の背面に設置するセンサMはその受圧面をカッターヘッド11の回転方向に対して略直交する方向に向けて又は略平行に設置する。
なお、この場合、カッターヘッド11は正転方向又は逆転方向に回転可能になっているので、いずれの方向の回転に対してもカッターヘッド11のセンサが掘削土砂に反応できるように、2方向のセンサMを設置してもよい。
【0019】
このようにしてこのチャンバー12内の掘削土砂の性状評価判定方法では、掘進機1のカッターヘッド11で掘削した土砂をカッターヘッド11後部に設けたチャンバー12に取り込み、加泥材を注入して、チャンバー12内の撹拌翼131、固定翼132、アジテータにより撹拌混合する間、この撹拌混合時の土砂の流動により、チャンバー12を構成するバルクヘッド121及びシールドスキンプレート10の内面、撹拌翼131及び固定翼132の表面、アジテータの表面、カッターヘッド11の背面にそれぞれ圧力、せん断力が発生し、その大きさは一般に土砂の硬軟によって異なるので、その大きさを各センサMにより測定し、これにより得たせん断力の値を土水圧力の値で除した数値(「せん断力/土水圧力」で算出される掘削土砂とバルクヘッド121などチャンバー12内の各部との摩擦係数に相当)の大きさ(大小)で、掘削土砂の性状を評価する。このようにせん断力の値を土水圧力の値で除して無次元化することで、土被り圧や地下水圧、さらに重量物などによる土圧の変化に影響されることなしに、チャンバー12内の掘削土砂の性状を相対評価することが可能となる。
図6,
図7は縦軸にせん断力S(せん断応力τ)、横軸に直力N(直応力σ)をとったMohrの応力場を表す。せん断力計(センサM)はS
1,S
2,S
3を測定するものであり、土圧計(センサM)は測定される土水圧に当該受圧面積を乗ずることで直力Nを算出するものである。直力Nの大きさは土被り圧や地下水圧、さらに重量物などによって変化する。
図6は砂質土の場合で、状態(1)はある粘着力C(一般にはほとんど0に近い)と内部摩擦角φ
1を有する原地盤の状態とする。これに加泥材を添加し撹拌すると、砂粒子のかみ合わせの抵抗が減少し、状態(2)(内部摩擦角φ
2)、または状態(3)(内部摩擦角φ
3)の性状となる(φ
1>φ
2>φ
3)。
一方,理論上ある直力場N(直応力場σ)において、状態(1),(2),(3)でそれぞれせん断力S
1,S
2,S
3(またはせん断応力τ
1,τ
2,τ
3)が表される(S
1,S
2,S
3は状態(1),(2),(3)を表す直線と直応力場Nを通り縦軸に並行な直線との交点をも表す)。また、せん断力/土水圧力は,ある直力場N(直応力場σ)において、状態(1),(2),(3)に応じてS
1/N,S
2/N,S
3/Nを表すもので、これは原点OとそれぞれS
1,S
2,S
3を結ぶ直線の勾配を表す(S
1/N>S
2/N>S
3/N)。
すなわち,S
1/N,S
2/N,S
3/Nを算出評価することは状態(1),(2),(3)の内部摩擦角φ
1,φ
2,φ
3を評価することと同値であるので、掘削土砂の性状を相対評価できると言える。
図7は粘性土の場合で、状態(1)はある内部摩擦角φ(一般にはほとんど0に近い)と粘着力C
1を有する原地盤の状態とする。これに加泥材を添加し撹拌すると、土粒子間の分子間力が減少し、状態(2)(粘着力C
2),または状態(3)(粘着力C
3)の性状となる(C
1>C
2>C
3)。
一方,理論上ある直力場N(直応力場σ)において,状態(1),(2),(3)でそれぞれせん断力S
1,S
2,S
3(またはせん断応力τ
1,τ
2,τ
3)が表される(S
1,S
2,S
3は状態(1),(2),(3)を表す直線と直応力場Nを通り縦軸に並行な直線との交点をも表す)。また、せん断力/土水圧力は、ある直力場N(直応力場σ)において、状態(1),(2),(3)に応じてS
1/N,S
2/N,S
3/Nを表すもので、これは原点OとそれぞれS
1,S
2,S
3を結ぶ直線の勾配を表す(S
1/N>S
2/N>S
3/N)。
すなわち,S
1/N,S
2/N,S
3/Nを算出評価することは状態(1),(2),(3)の粘着力C
1,C
2,C
3を評価することと同値であるので,掘削土砂の性状を相対評価できると言える。
【0020】
そして、チャンバー12内の各部において得られた土水圧力、せん断力、せん断力/土水圧力の各値を、カッターヘッド11の回転角度に基づくチャンバー12内のセンサMの位置とともに、一般のPC(パーソナルコンピュータ)で既存のソフトウェアを用いてデータ処理し、その結果をPCのディスプレイ上にコンター図化して表すことにより、チャンバー12内の掘削土の性状を可視化することが可能である。
【0021】
以上説明したように、このセンサMは、中小口径に限らず大口径の泥土圧式シールド掘進機1のチャンバー12に装備される土圧計及びせん断力計に代えて用いることができ、全体として少ないセンサ数で、チャンバー12内の掘削土砂の性状を評価判定することができる。また、このセンサMは、中小口径に限らず大口径の泥土圧式シールド掘進機1のチャンバー12内に装備される土圧計及びせん断力計に代えて用いることにより、従来と同一のセンサ数でより多くの測定値を得ることができ、チャンバー12内の掘削土砂の性状をより高精度に評価することができる。
そして、このセンサMを用いたチャンバー内の掘削土砂の性状評価判定方法によれば、掘削土砂による圧力及びせん断力が作用するチャンバー12内の各部に、複数のセンサMを設置し、チャンバー12内の各部に作用する圧力及びせん断力をセンサMにより同時に測定し、チャンバー12内の各部におけるせん断力の値を土水圧力の値で除して得た数値(「せん断力/土水圧力」で算出される掘削土砂とバルクヘッド121などチャンバー12内の各部との摩擦係数に相当)の大きさ(大小)によって、チャンバー12内の掘削土砂の性状を評価判定するようにしたので、掘進路線上で土被り圧や地下水圧が変化したり、地表やトンネル直上に重量物が存在したりして、掘進路線上で地山の土圧や水圧が変化する場合でも、同一路線内でチャンバー12内の掘削土砂の性状を相対的に評価判定することができる。
また、この場合、チャンバー12内の各部において得られた土水圧力、せん断力、せん断力/土水圧力の各値を、カッターヘッド11の回転角度に基づくチャンバー12内のセンサMの位置とともに、コンター図にして表すことで、チャンバー12内の掘削土砂の性状を可視化して容易に確認することができる。
【0022】
なお、この実施の形態では、泥土圧式シールド掘進機を使用する泥土圧式シールド工法に用いるチャンバー内の掘削土砂の性状評価判定方法について例示したが、土圧式シールド掘進機を使用する土圧式シールド工法に用いるチャンバー内の掘削土砂の性状評価判定方法にも同様に適用することができ、この場合でも、上記実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0023】
さらに、この実施の形態で例示した泥土圧式シールド工法に用いるチャンバー内の掘削土砂の性状評価判定方法は、土圧式シールド掘進機を使用する土圧式シールド工法、泥土圧式シールド掘進機を使用する泥土圧式シールド工法、泥水式シールド掘進機を使用する泥水式シールド工法において、カッターヘッド前方の地山切羽の土質評価判定方法にも利用することができる。
【0024】
次に、これらの工法のうち、泥水式シールド掘進機を使用する泥水式シールド工法に用いるカッターヘッド前方の地山切羽の土質評価判定方法について、
図8を用いて説明する。
【0025】
図8に示すように、先端にカッターヘッド21を有し、カッターヘッド21の後部にチャンバー22を備える泥水式シールド掘進機2(以下、単に掘進機2という。)を使用して行う泥水式シールド工法に用いるカッターヘッド前方の地山切羽の土質評価判定方法では、カッターヘッド21でカッターヘッド21前方の地山の掘削面である切羽Gを掘削するとともに、チャンバー22に泥水を供給して切羽Gに泥水を送り加圧することにより切羽Gを安定化させ、地山を掘進することが行われる。
そして、このカッターヘッド21の地山切羽の土質評価判定方法では、地山の切羽Gによる圧力及びせん断力が作用するカッターヘッド21の各部に、複数のセンサMをそれぞれの受圧面を基本的に地山の切羽に向けて取り付け、カッターヘッド21の各部に作用する圧力及びせん断力をセンサにより測定し、カッターヘッド21の各部におけるせん断力の値を土水圧力の値で除して得た数値によって、カッターヘッド21前方の切羽Gの土質を評価判定する。
【0026】
この評価判定方法においては、特にカッターヘッド21におけるセンサMの配置位置として、カッターヘッド21の面盤211の最外周部、コピーカッター212の先端などから適宜選定する。
【0027】
このようにしてこのカッターヘッド21前方の地山切羽の土質評価判定方法では、掘進機2の掘進停止中に、カッターヘッド21を1回転以上回転させ、同時に、センサMで土水圧力及びせん断力を測定し、これにより得たせん断力の値を土水圧力の値で除した数値(「せん断力/土水圧力」で算出される切羽G外周とカッターヘッド21の面盤211の最外周部、コピーカッター212の先端との摩擦係数に相当)の大きさ(大小)で、地山切羽Gの土質を評価判定する。このようにせん断力の値を土水圧力の値で除して無次元化することで、土被り圧や地下水圧、さらに重量物などによる土圧の変化に影響されることなしに、カッターヘッド21前方の地山切羽Gの土質を相対評価することが可能となる。
そして、カッターヘッド21の各部において得られた土水圧力、せん断力、せん断力/土水圧力の各値を、カッターヘッド21の回転角度に基づくカッターヘッド21各部のセンサMの位置とともに、一般のPC(パーソナルコンピュータ)で既存のソフトウェアを用いてデータ処理し、その結果をPCのディスプレイ上にコンター図化して表すことにより、カッターヘッド21前方の地山切羽Gの土質を可視化することが可能である。
【0028】
以上説明したように、このセンサMは、泥水式シールド掘進機2において、カッターヘッド21の各部、例えば側面などの狭隘な場所にでも設置することができ、カッターヘッド21回転時の地山の抵抗を測定することができる。
そして、このセンサMを用いたカッターヘッド21前方の地山切羽の土質評価判定方法によれば、地山の切羽Gによる圧力及びせん断力が作用するカッターヘッド21の各部に、複数のセンサMを設置し、掘進停止中にカッターヘッド21を1回転以上回転して、カッターヘッド21の各部に作用する圧力及びせん断力をセンサMにより測定し、カッターヘッド21の各部におけるせん断力の値を土水圧力の値で除して得た数値(「せん断力/土水圧力」で算出される切羽Gとカッターヘッド21の各部との摩擦係数に相当)の大きさ(大小)によって、カッターヘッド21前方の切羽Gの土質を評価判定するようにしたので、カッターヘッド21前方の地山Gの土質を相対的に評価判定することができる。
また、この場合、カッターヘッド21の各部において得られた土水圧力、せん断力、せん断力/土水圧力の各値を、カッターヘッド21の回転角度に基づくカッターヘッド21の各部のセンサMの位置とともに、コンター図にして表すことで、地山の切羽Gの土質を可視化して容易に確認することができる。
【0029】
なお、この実施の形態では、泥水式シールド掘進機を使用する泥水式シールド工法に用いるカッターヘッド前方の地山切羽の土質評価判定方法について例示したが、土圧式シールド掘進機を使用する土圧式シールド工法や泥土圧式シールド掘進機を使用する泥土圧式シールド工法に用いるカッターヘッド前方の地山切羽の土質評価判定方法にも同様に適用することができ、この場合でも、上記実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。