(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6590369
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】USB通信ラインの保護装置及び保護方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/00 20060101AFI20191007BHJP
H03K 19/003 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
G06F3/00 Y
G06F3/00 X
H03K19/003 220
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-248332(P2015-248332)
(22)【出願日】2015年12月21日
(65)【公開番号】特開2017-116987(P2017-116987A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年5月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097205
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 正樹
(72)【発明者】
【氏名】秡川 祐樹
【審査官】
田名網 忠雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−112891(JP,A)
【文献】
特開2015−019190(JP,A)
【文献】
特開2011−118768(JP,A)
【文献】
特開2012−029017(JP,A)
【文献】
特開2008−283274(JP,A)
【文献】
特開2013−182400(JP,A)
【文献】
米国特許第09041490(US,B1)
【文献】
米国特許第08767370(US,B1)
【文献】
特開2012−88322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/00
G06F 13/00−13/14
G06F 13/20−13/42
H03K 19/003
H04L 12/40−12/417
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスト装置と周辺機器とを接続するUSB通信ラインの保護装置であって、
前記USB通信ライン上のノイズを検出するノイズ検出部と、
電気的に接続して通信ライン上のノイズを除去するノイズ除去部と、
前記ノイズ除去部を、前記USB通信ラインに電気的に接続する第1の状態と、前記USB通信ラインに電気的に接続しない第2の状態とのいずれかに切り替える第1の切替部と、
前記ノイズ検出部が前記USB通信ライン上のノイズを検出しているときに、前記第1の切替部を、前記ノイズ除去部が第1の状態になるように、前記ノイズ検出部が前記USB通信ライン上のノイズを検出していないときに、前記第1の切替部を、前記ノイズ除去部が第2の状態になるように、制御する制御部と、を有するUSB通信ラインの保護装置。
【請求項2】
更に、USB給電ラインの電流を検出する電流検出部と、
電気的に接続して通信ライン上の過電圧となる静電気を外部に放出する帯電放出部と、
前記帯電放出部を、前記USB通信ラインに電気的に接続する第3の状態と、前記USB通信ラインに電気的に接続しない第4の状態とのいずれかに切り替える第2の切替部と、を有し、
前記制御部は、前記電流検出部が前記USB給電ラインの電流を検出しているときに、前記第2の切替部を、前記帯電放出部が第4の状態になるように、前記電流検出部が前記USB給電ラインの電流を検出していないときに、前記第2の切替部を、前記帯電放出部が第3の状態となるように制御する、請求項1に記載のUSB通信ラインの保護装置。
【請求項3】
ホスト装置と周辺機器とを接続するUSB通信ラインの保護方法であって、
前記USB通信ライン上のノイズを検出するノイズ検出ステップと、
前記ノイズ検出ステップにおいて、前記USB通信ライン上のノイズが検出されているときに、電気的に接続して通信ライン上のノイズを除去するノイズ除去部を、前記USB通信ラインに電気的に接続する第1の状態にし、前記ノイズ検出ステップにおいて、前記USB通信ライン上のノイズが検出されていないときに、前記ノイズ除去部を前記USB通信ラインに電気的に接続しない第2の状態にする、制御ステップと、を有するUSB通信ラインの保護方法。
【請求項4】
更に、USB給電ラインの電流を検出する電流検出ステップと、を有し、
前記制御ステップは、前記電流検出ステップにおいて、前記USB給電ラインの電流が検出されているときに、電気的に接続して通信ライン上の過電圧となる静電気を除去する帯電放出部を、前記USB通信ラインに電気的に接続しない第4の状態にし、前記電流検出ステップにおいて、前記USB給電ラインの電流が検出されていないときに、前記帯電放出部を前記USB通信ラインに電気的に接続する第3の状態にする、請求項3に記載のUSB通信ラインの保護方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスト装置と周辺機器とを接続するUSB通信ラインの保護装置及び保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーナビゲーション装置等の車載機器では、利用の向上を図るべく乗員の所有するスマートフォン等の周辺機器対との接続をUSBラインにより可能としている。しかし、車載機器と周辺機器とを接続する、車内のUSBラインが比較的長くなり(
図4の長さL参照)、USBコンプライアンスを満足する通信の波形品位を維持することが難しい場合がある。例えば、車載機器とスマートフォンとの接続の概略を示す
図4において、デザイン上の理由等から車載機器101にはUSBポート101aが機器本体の背面側や側面側等に設けられている場合があり、車内の所定位置に設けたUSBポート部103までは車内を配線で引き回すため、USBコネクタ105、USBケーブル106a、中継コネクタ107(107a、107b)、USBケーブル106b及びUSBコネクタ108が中継機器等として設けられている。そして、両端にUSBコネクタ112(Aプラグ112a、bプラグ112b)を設けたUSBケーブル113を介して周辺機器となるスマートフォン111がUSBポート部103に接続され、USBライン(USBハーネス)が構成されている。
【0003】
一方で、USBラインには、所定の通信状態を維持すべく、高いESD耐性とノイズ耐性とが求められている。上記したESD耐性及びノイズ耐性の向上を図るには、ツェナーダイオード、バリスタ、コンデンサ等の電気部品から成る所定の電気回路をデータラインに対GNDに配置し、静電気による帯電放出、ノイズ除去処理をするのが一般的である。
【0004】
しかしながら、上記したコンデンサ等の電気部品は所定の容量成分を持つことから、USBの通信ラインの通信波形を鈍らせると共に、少なからず通信波形の劣化を引き起こしている。
【0005】
通信波形の遷移を多数サンプリングし、グラフィカルに表示した、いわゆるアイパターンを
図3に示す。
図3は、横軸を時間(ns:ナノセカント)、縦軸を電圧(Differential signal V)としたグラフで、上側波形115a及び下側波形115bが示されている。上記した上側波形115a及び下側波形115bがそれぞれ重なり合い、かつ、アイパターン部116(図中斜線で示す領域)と交わらないときが品質の良い波形となる。しかしながら、ESD耐性及びノイズ耐性の向上を図るべく、コンデンサ等を設けると、上側波形115a及び下側波形115bが変動して所定位置で重ならず、或いはアイパターン部116に含まれるなど、品質の悪い劣化した波形となってしまい、通信障害を招くことになる。
【0006】
上記した通信障害の解消を図るべく、帯電物の接近を検知し、放電された静電気からデバイスを保護する静電気保護回路が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−108318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に記載の静電気保護回路によれば、帯電物の接近を検出すると、スイッチ部が導電パターンとデバイスとの接続を解除すると共に、当該導電パターンを放電経路に接続するので、デバイスを静電気から保護することが可能となるが、帯電物の接近の検出による導電パターンとデバイスとの接続解除のタイミングを的確に行うには装置構成が複雑になり、デバイスの的確の保護に欠けることがある。
【0009】
本発明は、ESD耐性、ノイズ耐性等を図ると共に、通信波形の品質低下を抑えたUSB通信ラインの保護装置及び保護方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係るUSB通信ラインの保護装置は、ホスト装置と周辺機器とを接続するUSB通信ラインの保護装置であって、USB給電ラインの電流を検出する電流検出部と、前記USB通信ラインの通信状態を回復させる通信状態回復部と、該通信状態回復部と前記USB通信ラインとを接続状態又は切断状態に切り替える切替部と、前記電流検出部による検出結果に基づいて、前記切替部に対して前記切り替えを指示する切替制御部と、を有し、前記切替制御部は、前記切替部に対して、前記USB給電ラインの電流を検出しない検出結果のときは前記接続状態への切り替えを指示し、前記電流を検出する検出結果のときは前記切断状態への切り替えを指示する構成である。
【0011】
このような構成によれば、USB給電ライン上の電流を検出する検出結果に基づいて、USB通信ラインと通信状態回復部とを接続状態又は切断状態とするので、例えば、ホスト装置にUSBラインを介して周辺機器が接続されたときに、USB給電ライン上の電流検出に基づいて、USB通信ラインと通信状態回復部とを接続状態から切断状態へと切り替えることで、周辺機器の接続前は通信状態回復部により静電気等からの保護を図ることができ、周辺機器の接続後は通信状態回復部の容量成分による通信波形の劣化等を防止することができる。例えば、通信状態回復部としてバリスタを設けている場合に、従来はバリスタが常時接続されているため、バリスタの容量成分により通信波形の劣化が生じていたが、本発明の上記構成によれば、USB通信ラインと通信状態回復部とは、USB給電ライン上の電流の検出結果に応じて接続状態又は切断状態とするので、通信波形の常時劣化を防止することができる。
【0012】
さらに、本発明に係るUSB通信ラインの保護装置は、ホスト装置と周辺機器とを接続するUSB通信ラインの保護装置であって、前記USB通信ライン上のノイズを検出するノイズ検出部と、前記USB通信ラインの通信状態を回復させる通信状態回復部と、該通信状態回復部と前記USB通信ラインとを接続状態又は切断状態に切り替える切替部と、前記ノイズ検出部の検出結果に基づいて、前記切替部に対して前記切り替え指示する切替制御部と、を有し、前記切替制御部は、前記切替部に対して、前記ノイズを検出する検出結果のときは前記接続状態への切り替えを指示し、前記のノイズを検出しない検出結果のときは前記切断状態への切り替えを指示する構成である。
【0013】
このような構成によれば、切替制御部は、ノイズを検出する検出結果のときはUSB通信ラインと通信状態回復部とを接続状態への切り替えを指示し、ノイズを検出しない検出結果のときは切断状態への切り替えを指示するので、ノイズが発生したときは通信状態回復部に接続させ、ノイズ除去等により通信状態の回復を図ることができ、ノイズの検出がないときは切断状態とするので、所定の容量成分を持つ通信状態回復部の影響を受けることがないので、通信波形の劣化等を防止することができる。
【0014】
本発明に係るUSB通信ラインの保護装置において、上述したUSB給電ラインの電流を検出する電流検出部の他に、前記USB通信ライン上のノイズを検出するノイズ検出部を更に有し、前記切替制御部は、前記切替部に対して、前記ノイズを検出する検出結果のときは前記接続状態への切り替えを指示し、前記のノイズを検出しない検出結果のときは切断状態への切り替えを指示する構成とすることができる。
【0015】
このような構成によれば、周辺機器をUSBラインに接続する前は、給電ラインの電流が検出されないので、通信状態回復部に接続状態となるので、静電気等による損傷を防止でき、周辺機器の接続後は電流が検出されて通信状態回復部と切断状態となるので、通信波形の劣化等を防止でき、さらにノイズ検出のときに通信状態回復部と接続状態となってノイズから保護されると共にノイズ未検出であるときは切断状態となるので通信状態回復部の容量成分による通信波形の劣化等を防止することができる。
【0016】
本発明に係るUSB通信ラインの保護装置において、前記通信状態回復部は、前記通信ライン上の過電圧の静電気を外部に放出する帯電放出部と、前記ノイズを除去するノイズ除去部と、を有する構成とすることができる。
【0017】
このような構成によれば、通信状態回復部は、通信ライン上の過電圧の静電気を外部に放出する帯電放出部と前記ノイズを除去するノイズ除去部を有するので、静電気とノイズからUSB通信ラインを有効に保護することができると共に、通信波形の劣化等を防止することができる。
【0018】
本発明に係るUSB通信ラインの保護装置において、前記切替制御部は、前記切替部に対して、前記USB給電ラインの電流を検出しない検出結果のときは前記帯電放出部との前記接続状態への切り替えを指示し、前記電流を検出する検出結果のときは前記帯電放出部との前記切断状態への切り替えを指示する構成とすることができる。
【0019】
このような構成によれば、USBラインに周辺機器が接続される前はUSB給電ラインの電流を検出しない検出結果となり、USB通信ラインを帯電放出部へ接続状態とするので、静電気による回路破壊等を防止することができ、周辺機器接続後のUSB給電ラインの電流検出により帯電放出部と切断するので、放電放出部の持つ容量成分による波形への影響を抑えることができる。
【0020】
本発明に係るUSB給電ラインの保護装置において、前記切替制御部は、前記切替部に対して、前記ノイズ検出部による検出結果がノイズを検出する検出結果のときは前記ノイズ除去部との前記接続状態への切り替えを指示し、前記ノイズを検出しない検出結果のときは前記ノイズ除去部との前記切断状態への切り替えを指示する構成とすることができる。
【0021】
このような構成によれば、ノイズが検出されたときにノイズ除去部への接続がなされ、ノイズが未検出のときはノイズ除去部と切断されるので、発生したノイズの除去を図ることができると共に、ノイズ除去部の持つ容量成分による通信波形への影響を抑えることができる。
【0022】
また、本発明に係るUSB通信ラインの保護方法は、ホスト装置と周辺機器とを接続するUSB通信ラインの保護方法であって、USB給電ラインの電流を検出する電流検出ステップと、前記USB通信ラインの通信状態を回復させる通信状態回復ステップと、該通信状態回復ステップの実行に切り替える切替ステップと、前記電流検出ステップによる検出結果に基づいて、前記切替ステップに前記切り替えを指示する切替制御ステップと、を有し、前記切替制御ステップは、前記USB給電ラインの電流を検出しない検出結果のときは前記切り替えを指示し、前記電流を検出する検出結果のときは前記切り替えを解除する指示をする構成である。
【0023】
さらに、本発明に係るUSB通信ラインの保護方法は、ホスト装置と周辺機器とを接続するUSB通信ラインの保護方法であって、前記USB通信ライン上のノイズを検出するノイズ検出ステップと、前記USB通信ラインの通信状態を回復させる通信状態回復ステップと、該通信状態回復ステップの実行に切り替える切替ステップと、前記ノイズ検出ステップの検出結果に基づいて、前記切替ステップに前記切り替え指示する切替制御ステップと、を有し、前記切替制御ステップは、前記ノイズを検出する検出結果のときは前記切り替えを指示し、前記のノイズを検出しない検出結果のときは前記切り替えを解除する指示をする構成である。
【0024】
本発明に係るUSB通信ラインの保護方法において、上述したUSB給電ラインの電流を検出する電流検出ステップの他に、前記USB通信ライン上のノイズを検出するノイズ検出ステップを更に有し、前記切替制御ステップは、前記ノイズを検出する検出結果のときは前記切り替えを指示し、前記のノイズを検出しない検出結果のときは前記切り替えを解除する指示をする構成とすることができる。
【0025】
本発明に係るUSB通信ラインの保護方法において、前記通信状態回復ステップは、前記通信ライン上の過電圧の静電気を外部に放出する帯電放出ステップと、前記ノイズを除去するノイズ除去ステップと、を有する構成とすることができる。
【0026】
本発明に係るUSB通信ラインの保護方法において、前記切替制御ステップは、前記USB給電ラインの電流を検出しない検出結果のときは前記帯電放出ステップへの切り替えを指示し、前記電流を検出する検出結果のときは前記帯電放出部との前記切断状態への切り替えを指示する構成とすることができる。
【0027】
本発明に係るUSB通信ラインの保護方法において、前記切替制御ステップは、前記ノイズを検出する検出結果のときは前記ノイズ除去ステップへの切り替えを指示し、前記ノイズを検出しない検出結果のときは前記ノイズ除去ステップ切り替えを解除する指示をする構成とすることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、USBラインの検出結果に応じて、USB通信ラインの通信状態を回復させる通信状態回復部とUSB通信ラインとを接続又は切断とに切り替えるので、ESD耐性、ノイズ耐性等を図ると共に、通信波形の品質低下を抑えることができるUSB通信ラインの保護装置及び保護方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係るUSB通信ラインの保護装置のブロック構成図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すUSB通信ラインの保護装置のUSBコントローラによる処理手順を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、USBの通信波形の遷移をサンプリングし、グラフィカルに表示した概略図である。
【
図4】
図4は、ホスト装置である車載機器と、周辺機器であるスマートフォンとをUSBラインで接続した従来の配線概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。本発明の実施の形態に係るUSB通信ラインの保護装置を構成するブロック図を
図1に示す。
【0031】
図1において、ホスト装置(不図示)とUSB周辺機器とを接続するUSB通信ラインの保護装置11(以下、適宜「保護装置11」と略す。)は、USBライン12に含まれるUSBデータ線(DATA+、DATA‐)12a、12bに接続されるUSBコントローラ13と、USBデータ線12a、12b及びUSB電源線(VBUS、GND)12c、12dに接続されるUSBコネクタ15を有する。USBコネクタ15は、例えば、USB周辺機器30(鎖線で示す)とUSBケーブル31(鎖線で示す)及びプラグ32(鎖線で示す)を介して接続される。
【0032】
USB通信ラインの保護装置11は、さらにVBUS電源線(VBUS給電ライン)12cの電流を検出する電流検出部であるVBUS電源接続検出装置17と、USBデータ線12a、12b(USB通信ライン)上のノイズを検出するノイズ検出部であるノイズ検出装置18と、USBデータ線12a、12b上の過電圧となる静電気を外部に放出する帯電放出部21と、USBデータ線12a、12b上のノイズを外部に除去するノイズ除去部22と、帯電放出部21及びノイズ除去部22の外部との接地線を接続と切断とを切り替える切替部である切替スイッチ25a、25bと、を有する。なお、帯電放出部21とノイズ除去部22とで通信状態回復部23を構成する。
【0033】
USBコントローラ13は、コンピュータユニット(CPU、ROM、RAM、I/Oインターフェース及びバス等)によって構成され、ノイズ検出装置18のノイズ検出信号に基づいて切替スイッチ25bを開閉させ(ON/OFF)、さらにVBUS電源接続検出装置17による接続検出信号に基づいて切替スイッチ25aを開閉させる(ON/OFF)。具体的には、USBコントローラ13は、切替スイッチ25に対してスイッチの開閉を指示する信号を送信する。
【0034】
VBUS電源接続検出装置17は、VBUS給電ラインであるUSB電源線12cに流れる電流を検出する電流計を備えた装置であり、例えばUSB周辺機器30がUSBコネクタ15に接続されるとVBUS電流が流れることから、所定の電流値が検出されることでUSB周辺機器30の接続を確認することができる。
【0035】
ノイズ検出装置18は、USB信号ライン等に発生したノイズを検出する装置であるが、表示された信号波形を解析(基準となる波形との比較)し、ノイズの発生を確認することも可能であるが、以下のようにしてノイズ発生の検出を行うことができる。例えば、タッチパネルを入力に用いるタッチパネル入力装置(4線式抵抗膜式タッチパネル等)において、タッチされた位置の検出座標から入力座標を算定する際に、所定時間間隔(例えば4ms)毎に取得した複数個の検出座標(例えば、4個)の最大値と最小値の範囲が所定のしきい値以上となるときに、ユーザがタッチパネルにタッチしながらタッチする位置を大きく移動する操作(手書き操作、スライド操作、フリック操作等)によるものか、又はチャタリング等によるノイズの発生によるものかの判定が困難となる場合がある。このとき、以下の手順によりノイズの発生が否かの判定を行うことができる。
【0036】
4msの時間間隔で取得した各4個の座標に含まれるX座標とY座標の何れも、最大値と最小値の差が所定しきい値より小さいときは、チャタリング等のノイズが発生していないものと推定されるので、例えば、最大値及び最小値を除く2つのX座標、Y座標の平均値を入力座標とすることができる。また、X座標、Y座標の少なくとも何れか一方が、その最大値と最小値の差がしきい値以上のときは、その原因について、チャタリング等のノイズによる誤検出であるか、ユーザのタッチ移動を移動する操作であるかを確定することができない。そこで、4個のX座標、4個のY座標が時間的に漸増又は漸減座標群であるか否かを判定する。漸増又は漸減座標群であると判定したときは、再度4個の検出座標を取得する。取得した4個の検出座標のX座標とY座標の何れもしきい値より小さいときは、最大値及び最小値を除く2つのX座標、Y座標の平均値を入力座標とすることができるが、すくなくとも一方がしきい値以上となったときは、再び4個のX座標、4個のY座標が時間的に漸増又は漸減座標群であるか否かを判定し、前回同様に漸増又は漸減座標群であるときは、再度のしきい値以上となった原因がユーザのタッチ位置を移動する操作であると推定することができる。上記のように、ユーザのタッチ位置を移動する操作によるものと推定できない場合は、しきい値以上の原因はチャタリング等のノイズによるものと推定することができる(ノイズを検出したと判定できる)。このようにして、ノイズの発生の有無を判定することができる。
【0037】
通信状態回復部23に含まれる帯電放出部21は、例えば、バリスタなどから成り、切替部25aがスイッチON状態(接続状態)のときに、接地(FG等)によりUSBデータ線12a、12bに帯電した過電圧の静電気を放出することができる。また、通信状態回復部23に含まれるノイズ除去部22は、例えば、コンデンサ等からなり、切替部25bがスイッチON状態(接続状態)のときに、接地によりUSBデータ線12a、12bに生じたノイズを放出することができる。
【0038】
次に、
図1に示すUSB通信ラインの保護装置11の動作手順について、
図2を参照して説明する。
図2において、コネクタ15にUSB周辺機器(例えば、USB周辺機器30)が接続されていないときは、USBコントローラ13は、通信状態回復部23の帯電放出部21を切替部25aによりON状態(接続状態)として接地(FG等)させている(S11)。これにより、例えば帯電した手等の物体がUSB通信ラインの保護装置11に触れた場合でも、USBデータ線12a、12bに生じた静電気は、帯電放出部21から外部に放出されるので、USBデータ線12a、12bに接続されるUSBホスト装置(不図示)等が静電気による破壊から保護される。
【0039】
USBコントローラ13は、VBUS電源接続検出装置17によりVBUS電流(例えば、100mA以上)の検出の有無により周辺機器がUSBコネクタ15に接続されたか否かを判定する(S12)。コネクタ15にUSB周辺機器(例えば、USB周辺機器30)が接続されると、数百mAのVBUS電流が流れるので、VBUS電源接続検出装置17により検出することができる。上記VBUS電流が検出されず、周辺機器の接続が検出されないとの判定のときは(S12のNO)、USBコントローラ13は、引き続き帯電放出部21を切替部25aによりON状態(接続状態)として接地(FG等)させる。VBUS電流が検出され、周辺機器の接続有りの判定のときは(S12のYES)、USBコントローラ13は、切替部25aによりOFF状態(切断状態)として、帯電放出部21の接地状態を解除する(S13)。これにより、USBコネクタ15に接続されたUSB周辺機器(例えば、USB周辺機器30)は、帯電放出部21の有する容量成分の影響を受けることがないので、通信波形の鈍りや劣化が防止される。USB周辺機器30がUSBコネクタ15に接続される前は、保護装置11に接続されるホスト装置(不図示)等が帯電物による損傷防止のために、帯電放出部21を接地状態(ON)にする必要があるが、USB周辺機器がUSBコネクタ15に接続された後は、バリスタ等から成る帯電放出部21の有する容量成分による波形の劣化等を抑えるために、帯電放出部21を接地から切断状態(OFF)としたものである。
【0040】
コネクタ15にUSB周辺機器30が接続された後、USBコントローラ13は、ノイズ検出装置18を介してノイズ発生の有無を判定する(S14)。ノイズが検出されないときは(S14のNO)、所定時間間隔毎にノイズ検出装置18によりノイズ検出を行い、発生の有無を繰り返し判定する。USBコントローラ13は、ノイズが検出されたときには(S14のYES)、切替部25bによりノイズ除去部22を接地させる接続状態(ON状態)にする(S15)。これにより、USBデータ線12a、12bからノイズを外部に除去することができる。USBコントローラ13は、上記したようにノイズ除去部22を接続状態にしたときは、所定時間経過後にノイズ検出装置18を介してノイズが解消したか否かを判定する(S16)。ノイズが繰り返し検出され、解消していないと判定されたときは(S16のNO)、所定時間間隔毎にノイズ検出装置18を介してノイズが解消したか否かの判定を行う(S16)。USBコントローラ13は、ノイズが検出されず解消したと判定したときは(S16のYES)、切替部25bによりノイズ除去部22を接地から切断する切断状態(OFF状態)にする(S17)。これにより、ノイズが検出されないときは、ノイズ除去部22の有する容量成分による影響を受けることがなくなるので、USB通信波形の鈍り、劣化等を抑制することができる。
【0041】
その後、USBコントローラ13は、VBUS電源接続検出装置17を介してVBUS電流が未検出となったか否か、すなわちUSB周辺機器30の接続が解消されたか否かの判定を行う(S18)。USB周辺機器がUSBコネクタ15から取り外され、VBUS電流が未検出となったときは(S18のYES)、USBコントローラ13は、切替部25aにより帯電放出部21を接地させて接続状態(ON状態)にする。これにより、静電気を帯びた物体との接触によるホスト装置等の損傷を防止することができる。なお、USB周辺機器30の接続が解消されず、VBUS電流が検出されているときは(S18のNO)、USBコントローラ13は、所定時間間隔毎にノイズ検出装置18を介してノイズの発生の有無を判定する(S14)。
【0042】
上述したように、本実施形態に係るUSBラインの保護装置11によれば、USB周辺機器30が接続される前は、帯電放出部21を接地させる接続状態(ON状態)にするので、帯電物の接触によるホスト装置等の損傷を防止することができ、さらにUSB周辺機器30が接続された後は、帯電放出部21の接地を解除して切断状態(OFF状態)にするので、帯電放出部21の有する容量成分による通信波形への悪影響(鈍り、劣化等)を抑制することができる。さらに、USB周辺機器30の接続後には、ノイズ検出されたときにノイズ除去部22を接続状体(ON状態)にするので、ノイズによる通信波形の劣化等を防止することができ、ノイズ検出がされないときはノイズ除去部22を切断状態(OFF状態)とするので、ノイズが検出されない場合にはUSB通信波形がノイズ除去部22による悪影響(鈍り、劣化等)を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上、説明したように、本発明よれば、USBラインの検出結果に応じて、USB通信ラインの通信状態を回復させる通信状態回復部23(帯電放出部21及びノイズ除去部22)とUSB通信ラインとを接続又は切断とに切り替えるので、ESD耐性、ノイズ耐性等を図ると共に、通信波形の品質低下を抑えることができるUSB通信ラインの保護装置及び保護方法を提供することができるので、ホスト装置と周辺機器とを接続するUSB通信ラインの保護装置及び保護方法として有用である。
【符号の説明】
【0044】
11 USB通信ラインの保護装置
12 USBライン
12a USBデータ線(DATA+)
12b USBデータ線(DATA−)
12c USB電源線(VBUS)
12d USB電源線(GND)
13 USBコントローラ
15 USBコネクタ
17 VBUS電源接続検出装置(電流検出部)
18 ノイズ検出装置(ノイズ検出部)
21 帯電放出部
22 ノイズ除去部
23 通信状態回復部
25a、25b 切替部
30 USB周辺機器