特許第6590375号(P6590375)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6590375直列ハイブリッドを含むハイブリッドパワーモードで動作する駆動装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6590375
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】直列ハイブリッドを含むハイブリッドパワーモードで動作する駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/4096 20100101AFI20191007BHJP
   F15B 1/033 20060101ALI20191007BHJP
   F16H 61/02 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
   F16H61/4096
   F15B1/033
   F16H61/02
【請求項の数】14
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-546443(P2016-546443)
(86)(22)【出願日】2015年2月3日
(65)【公表番号】特表2017-512944(P2017-512944A)
(43)【公表日】2017年5月25日
(86)【国際出願番号】EP2015052208
(87)【国際公開番号】WO2015117960
(87)【国際公開日】20150813
【審査請求日】2017年10月18日
(31)【優先権主張番号】61/935,610
(32)【優先日】2014年2月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515207385
【氏名又は名称】ダナ イタリア エスピーエー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】オルネーラ、ギウリオ
(72)【発明者】
【氏名】ゼンドリ、ファブリツィオ
(72)【発明者】
【氏名】コソリ、エトーレ
(72)【発明者】
【氏名】レンボスキ、ドナルド
(72)【発明者】
【氏名】モーシェック、ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】セラオ、ロレンツォ
【審査官】 渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/159851(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0014499(US,A1)
【文献】 特開2014−145387(JP,A)
【文献】 特表2012−524227(JP,A)
【文献】 特開2009−275772(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/025416(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 59/00− 61/12
F16H 61/14
F16H 61/16− 61/24
F16H 61/38− 61/64
F16H 61/66− 61/70
F16H 63/40− 63/50
F15B 11/02− 1/033
E02F 3/42− 3/43
E02F 3/84− 3/85
E02F 9/20− 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のための直列油圧ハイブリッド駆動装置であって、
動力源と、
第2油圧移動ユニットと流体連通している第1油圧移動ユニットを有する油圧回路であって、
前記第1油圧移動ユニットは、前記第1油圧移動ユニットの第1流体ポートおよび前記第2油圧移動ユニットの第1流体ポートを流体連結する第1メイン流体ラインを介して、かつ前記第1油圧移動ユニットの第2流体ポートおよび前記第2油圧移動ユニットの第2流体ポートを流体連結する第2メイン流体ラインを介して、前記第2油圧移動ユニットと流体連結しており、
前記第1油圧移動ユニットは前記動力源と駆動係合している、前記油圧回路と、
少なくとも1つの蓄圧器弁と、
高油圧蓄圧器と低油圧蓄圧器とを有する油圧蓄圧器アセンブリであって、前記高油圧蓄圧器および前記低油圧蓄圧器は、前記少なくとも1つの蓄圧器弁を介して、前記第1メイン流体ラインおよび前記第2メイン流体ラインに流体連結している、前記油圧蓄圧器アセンブリと、
少なくとも1つの入力装置と、
制御ユニットと、
を備え、
前記制御ユニットは、
前記入力装置からの入力命令に基づき、前記動力源から要求される出力を計算し、
前記計算された要求される出力を少なくとも1つの閾値出力と比較し、
前記比較の結果に基づき、前記蓄圧器弁の弁状態を制御し、
前記弁状態の制御は、前記弁状態を第1開状態、第2開状態、および閉状態の間で前記弁状態を変更する制御を含み、
前記少なくとも1つの蓄圧器バルブの前記弁状態が前記第1開状態にあることは、
(i)前記高油圧蓄圧器が、前記第1メイン流体ラインに流体連結され、前記低油圧蓄圧器が、前記第2メイン流体ラインに流体連結されること、又は
(ii)前記高油圧蓄圧器が、前記第2メイン流体ラインに流体連結され、前記低油圧蓄圧器が、前記第1メイン流体ラインに流体連結されること
のうちのいずれか一方の状態であり、
前記第2開状態は、(i)、(ii)のうちの他方であり、
前記閉状態は、前記高油圧蓄圧器および前記低油圧蓄圧器が、前記第1メイン流体ラインおよび前記第2メイン流体ラインのいずれとも流体連結されていない状態である、
直列油圧ハイブリッド駆動装置。
【請求項2】
前記制御ユニットは、前記要求される出力を繰り返し計算し、前記要求される出力を前記閾値出力と繰り返し比較する、
請求項1に記載の直列油圧ハイブリッド駆動装置。
【請求項3】
前記入力装置は、アクセルペダルとブレーキとのうち少なくとも1つを含み、前記入力命令は、加速命令と、減速命令と、ブレーキ命令とのうち少なくとも1つを含む、
請求項1または2に記載の直列油圧ハイブリッド駆動装置。
【請求項4】
作動油圧アセンブリをさらに備え、
前記入力装置は、作動油圧制御装置を有し、
前記入力命令は、作動油圧制御命令を含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の直列油圧ハイブリッド駆動装置。
【請求項5】
前記閾値出力はブースト閾値を含み、
前記制御ユニットは、前記計算された要求される出力が前記ブースト閾値より高いとき、または前記ブースト閾値より高くまで増大したとき、前記弁状態を前記第1開状態に変更する、または前記弁状態を前記第1開状態に維持する、
請求項1から4の何れか一項に記載の直列油圧ハイブリッド駆動装置。
【請求項6】
前記閾値出力は再充填閾値を含み、
前記制御ユニットは、前記計算された要求される出力が前記再充填閾値より低いとき、または前記再充填閾値より低く低下したとき、前記弁状態を前記第2開状態に変更する、または前記弁状態を前記第2開状態に維持する、
請求項1から5の何れか一項に記載の直列油圧ハイブリッド駆動装置。
【請求項7】
前記制御ユニットは、前記第2開状態において、前記第1油圧移動ユニットを駆動させるように前記動力源に命令して、前記第1油圧移動ユニットが油圧流体を前記低油圧蓄圧器から前記高油圧蓄圧器へ移動させ、前記高油圧蓄圧器内の静油圧を増大させて油圧エネルギーを前記油圧蓄圧器アセンブリ充填する、
請求項6に記載の直列油圧ハイブリッド駆動装置。
【請求項8】
前記制御ユニットは、前記計算された要求される出力が前記ブースト閾値より低い場合であってかつ前記再充填閾値より高い場合に、前記弁状態を前記閉状態に変更する、または前記弁状態を前記閉状態に維持する、
請求項5に従属する請求項6または7に記載の直列油圧ハイブリッド駆動装置。
【請求項9】
前記制御ユニットはさらに、
前記少なくとも1つの入力装置からの前記入力命令に基づき、および車両状態に基づき、前記第2油圧移動ユニットの出力に提供されることになる要求されるトルクを計算し、
前記油圧蓄圧器アセンブリの充填状態に基づき、前記油圧蓄圧器アセンブリを介して利用可能な最大蓄圧器トルクを計算し、
前記要求されるトルクを前記最大蓄圧器トルクと比較し、
前記計算された要求される出力が前記ブースト閾値より高い場合または前記ブースト閾値より高く増大した場合であってかつ前記最大蓄圧器トルクが前記要求されるトルクより大きい場合に、前記弁状態を前記第1開状態に変更する、または前記弁状態を前記第1開状態に維持する、
請求項5に記載の直列油圧ハイブリッド駆動装置。
【請求項10】
前記車両状態は、車両速度と、前記車両の移動方向と、ギア選択とのうち少なくとも1つを含む、
請求項9に記載の直列油圧ハイブリッド駆動装置。
【請求項11】
前記制御ユニットは、前記要求されるトルクと前記最大蓄圧器トルクとを繰り返し計算し、前記要求されるトルクを前記最大蓄圧器トルクと繰り返し比較する、
請求項9または10に記載の直列油圧ハイブリッド駆動装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つの蓄圧器弁が前記第1開状態にある場合で、前記計算された要求される出力が前記ブースト閾値より高い場合でかつ前記最大蓄圧器トルクが前記要求されるトルクより高い場合に
(i)前記制御ユニットは、前記第1油圧移動ユニットを前記動力源から係合解除して、および/または、
(ii)前記第1油圧移動ユニットは可変油圧移動量を有し、前記制御ユニットは、前記第1油圧移動ユニット油圧流体の移動量をゼロにセットして、
前記動力源から前記第2油圧移動ユニットへエネルギーが伝えられないようにし、出力される前記要求されるトルクが前記油圧蓄圧器アセンブリを介して提供されるようにする、
請求項9から11の何れか一項に記載の直列油圧ハイブリッド駆動装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つの蓄圧器弁が前記第1開状態にある場合で、前記計算された要求される出力が前記ブースト閾値より高い場合でかつ前記最大蓄圧器トルクが前記要求されるトルクより大きい場合に、前記制御ユニットはさらに、前記作動油圧アセンブリを駆動させるように前記動力源に命令して、前記動力源により提供される全ての出力が前記作動油圧アセンブリを駆動するために用いられる、
請求項4に従属する請求項12に記載の直列油圧ハイブリッド駆動装置。
【請求項14】
請求項1から13の何れか一項に記載の直列油圧ハイブリッド駆動装置を制御する方法であって、少なくとも、
前記入力装置からの入力命令に基づき、前記動力源から要求される出力を計算する段階と、
前記計算された前記動力源から要求される出力を前記少なくとも1つの閾値出力と比較する段階と、
前記比較の結果に基づき、前記少なくとも1つの蓄圧器弁の弁状態を制御する段階と、
を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、主に、特に自動推進車両のための直列油圧ハイブリッドトランスミッションシステムに関する。より具体的には、本願発明は、油圧回路と、油圧回路に流体連通する蓄圧器アセンブリと、システムを制御するための制御ユニットとを備える直列油圧ハイブリッドトランスミッションシステムに関する。本願発明は、さらに、直列油圧ハイブリッドトランスミッションシステムを制御する方法に関する。この種の油圧ハイブリッドトランスミッションシステムは、トラクタ、ホイールローダ、ホイール掘削機、バックホウローダ、テレハンドラー、またはダンプカーなどの、農業、鉱業または建設業に用いられるオフハイウェイ作業機械に応用されうる。
【0002】
本明細書は、2014年2月4日出願の米国仮特許出願No.61/935,610からの優先権を主張し、その全体を参照として本明細書に組み込まれる。
【0003】
油圧回路および油圧エネルギー貯蔵のための1または複数の油圧蓄圧器を有する油圧ハイブリッドトランスミッションシステムは既知の技術である。蓄圧器によって回復した油圧エネルギーは、主要なエネルギー源、例えば内燃エンジンを置換するまたは補うべく、システムに再導入される。
【0004】
しかし、油圧ハイブリッドトランスミッションシステムの燃料消費および性能は、車両を動作させるために用いられる制御方法に非常に依存し、開発者にとってのチャレンジが残っている。
【0005】
したがって、本発明の目的は、改善された車両性能および/または改善された燃料効率を提供する油圧ハイブリッドシステムを発展させることである。
【0006】
本目的は、車両のための直列油圧ハイブリッド駆動装置であって、動力源と、第2油圧移動ユニットと流体連通している第1油圧移動ユニットを有する油圧回路であって、第1油圧移動ユニットは動力源と、駆動係合、または選択的に駆動係合している、油圧回路と、少なくとも1つの蓄圧器弁と、高油圧蓄圧器と低油圧蓄圧器とを有する蓄圧器アセンブリであって、蓄圧器弁を介して油圧回路に選択的に流体連結している蓄圧器アセンブリと、少なくとも1つの入力装置と、制御ユニットとを備え、制御ユニットは、入力装置からの入力命令に基づき、動力源から要求される総出力を計算し、動力源から要求される計算された総出力値(または、簡潔には、要求される総出力)を少なくとも1つの出力閾値と比較し、比較の結果に基づき、蓄圧器弁の弁状態を制御するよう構成されおよび/またはプログラミングされる、直列油圧ハイブリッド駆動装置によって解決される。
【0007】
制御ユニットが、蓄圧器弁の弁状態を、要求される出力が少なくとも1つの出力閾値より高いまたは低いのいずれであるかに基づき制御するように構成されるという事実に起因して、動力源から油圧回路へ伝えられる出力は、現在の動作条件および/またはドライバーの要求に従って蓄圧器アセンブリを介して提供される油圧出力により自動的に補われうるまたは置換されうる。加えてまたは代替的に、蓄圧器は、現在の動作条件および/またはドライバーの要求に従って自動的に再充填されうる。このように、駆動装置は、現在のドライバーの要求を満たしながら、省エネルギーな方法で制御されうる。
【0008】
制御ユニットにより実行される要求される総出力の計算は、さらに、現在の車両状態および/または現在の動力源速度(rpmで測定される)に基づきうる。車両状態は、例えば、車両速度と、車両の移動方向と、ギア選択とのうち少なくとも1つを含みうる。本明細書の範囲内で、明確な語句「Xi、・・・、Xnのうち少なくとも1つ」は、Xi、・・・、Xnのうちの、完全なセットを含む任意のサブセットを含みうる。
【0009】
弁状態は、開状態および閉状態の間で変更され得、開状態では、蓄圧器弁は、蓄圧器弁を介した油圧回路と蓄圧器アセンブリとの間の油圧流体の流れを可能にする。閉状態では、蓄圧器弁は、蓄圧器弁を介した油圧回路と蓄圧器アセンブリとの間の油圧流体の流れを止める。
【0010】
動力源は、典型的には、内燃エンジンまたは電気エンジンなどのエンジンを含む。
【0011】
第1油圧移動ユニットは、油圧ポンプを含みうる。例えば、第1油圧移動ユニットは、静油圧ラジアルピストンポンプまたは静油圧アキシャルピストンポンプなどの静油圧ポンプを含みうる。第1油圧移動ユニットは、可変の油圧移動を有しうる。例えば、第1油圧移動ユニットは、可動斜板または斜軸デザインを有しうる。
【0012】
第2油圧移動ユニットは、1または複数の油圧モータを含みうる。例えば、第2油圧移動ユニットは、静油圧ラジアルピストンモータまたは静油圧アキシャルピストンモータなどの静油圧モータを含みうる。第2油圧移動ユニットは、可変の油圧移動を有しうる。例えば、第2油圧移動ユニットは、可動斜板または斜軸デザインを有しうる。第2油圧移動ユニットは、通常、車両出力と駆動係合されるまたは選択的に駆動係合される。車両出力は、例えば、ギアボックス、駆動シャフト、車軸、終減速機構、および1または複数のホイールのうち少なくとも1つを含みうる。
【0013】
通常、第1油圧移動ユニットおよび第2油圧移動ユニットは、各々、第1流体ポートおよび第2流体ポートを有する。油圧回路は、第1油圧移動ユニットの第1流体ポートを第2油圧移動ユニットの第1流体ポートに流体的に連結するまたは選択的に流体的に連結する第1メイン流体ラインを含み得、油圧回路は、第1油圧移動ユニットの第2流体ポートを第2油圧移動ユニットの第2流体ポートに流体的に連結するまたは選択的に流体的に連結する第2メイン流体ラインを含みうる。油圧回路は、第1および第2油圧移動ユニットと第1および第2メイン流体ラインとを含む密閉形静油圧回路であってよい。油圧回路は、典型的には、外部環境から密閉されている。例えば、油圧回路の最小油圧は、少なくとも10barまたは少なくとも20barであってよい。油圧回路はさらに、少なくとも300barまたは少なくとも400barの最大油圧のために構成されうる。
【0014】
制御ユニットは、要求される出力を繰り返し計算し、要求される出力を閾値出力と繰り返し比較するように構成されまたはプログラミングされうる。このように、弁状態は、最大速度および効率を含む現在の車両動作条件および/またはドライバーの要求に応じて調節されうる。例えば、制御ユニットは、最大で500ms、最大で200ms、または最大で100msのサンプリング時間間隔内に少なくとも一度、計算および比較を実行するよう構成されうる。また、制御ユニットは、計算された要求される出力および閾値出力に基づき、サンプリング時間間隔の期間を調整するよう構成されることが考えられる。例えば、制御ユニットは、計算された要求される出力が閾値出力を含む予め定められた出力区間内にある場合、サンプリング時間間隔の期間を短くするよう構成されうる。
【0015】
入力装置は、アクセルペダルを含みうる。入力命令は、それから、加速命令または減速命令を含みうる。入力装置は、ブレーキペダルを含みうる。入力命令は、それから、ブレーキ命令を含みうる。例えば、入力命令は、アクセルペダルの位置および/またはブレーキペダルの位置に関連付けられ得る。静油圧トランスミッションを有する車両は、典型的には、アクセルペダルがリリースされるときに速く減速する。したがって、ブレーキペダルを押すことはしばしば、車両を減速するために必須ではない。
【0016】
駆動装置はさらに、作動油圧アセンブリを備えうる。作動油圧アセンブリは、通常、動力源と駆動係合するまたは選択的に駆動係合する油圧作動ポンプと、作動ポンプと流体連通する油圧機器とを備える。油圧機器は、例えば、1または複数の油圧シリンダおよび/または油圧モータを含みうる。機器は、作動ポンプを用いて機器へ/から油圧流体を移動させることにより、作動ポンプを介して駆動されうる。入力装置はそれから、作動油圧アセンブリを制御するための装置を含み得、入力命令はそれから、作動油圧制御命令を含みうる。
【0017】
出力閾値は、ブースト閾値を含みうる。制御ユニットはそれから、要求される総出力の計算された値がブースト閾値より高い場合に、弁状態を開状態に変更するまたは弁状態を開状態に維持するよう構成されうる。ブースト閾値は、予め定められた出力値でありうる。例えば、ブースト閾値は、動力源が油圧回路および/または作動アセンブリに提供可能である、最大出力または最大出力の予め定められた(典型的には高い)割合でありうる。すなわち、制御ユニットは、要求される総出力がブースト閾値に到達するまたは超える場合に、複数の蓄圧器弁を開き、複数の蓄圧器を油圧回路に流体的に連結するように適合される。蓄圧器弁を開くことにより、蓄圧器に貯蔵された油圧エネルギーがそれから、追加の出力を、油圧回路、および特に第2油圧移動ユニットに提供するために用いられうる。
【0018】
加えてまたは代替的に、出力閾値は、再充填閾値を含みうる。制御ユニットはそれから、要求される総出力が再充填閾値未満であるまたは再充填閾値未満になる場合に、弁状態を開状態に変更するまたは弁状態を開状態に維持するよう構成されうる。再充填閾値は予め定められた出力値でありうる。例えば、再充填閾値は、無条件の出力値または動力源の最大出力の所定の(典型的には低い)割合でありうる。再充填閾値は、通常、ブースト閾値より低い。
【0019】
入力命令および場合によっては車両状態および/または蓄圧器の充填状態に応じて、要求される総出力が再充填閾値未満である場合または未満に低下する場合、制御ユニットは、回生制動を開始するために蓄圧器弁を開きうる。すなわち、第2油圧移動ユニットが車両出力から取り込まれる動的なエネルギーを用いて油圧流体を低圧蓄圧器から高圧蓄圧器へ移動させるように、制御ユニットは蓄圧器弁を作動させて、蓄圧器を第2油圧移動ユニットに流体的に連結し、これにより蓄圧器アセンブリを充填する。
【0020】
さらに、入力命令に応じて、および場合によっては車両状態および/または蓄圧器の充填状態に応じて、要求される総出力が再充填閾値未満である場合または未満に低下する場合、制御ユニットは、動力源および第1油圧移動ユニットを介して蓄圧器を再充填すべく、蓄圧器弁を開きうる。すなわち、制御ユニットは、第1油圧移動ユニットが油圧流体を低圧蓄圧器から高圧蓄圧器へ移動させて蓄圧器アセンブリを充填するように、第1油圧移動ユニットを駆動するよう動力源に命令しうる。
【0021】
このように第1油圧移動ユニットを介して蓄圧器を再充填する場合、制御ユニットは、第2油圧移動ユニットによってエネルギーが取り込まれず、再充填プロセスが車両出力に干渉しないように、第2油圧移動ユニットを第1油圧移動ユニットと蓄圧器とから流体的に切断しうる。加えてまたは代替的に、制御ユニットは、第2油圧移動ユニットの油圧移動をゼロ移動にセットし、および/または制御ユニットは、例えばクラッチを作動させることによって、車両出力を第2油圧移動ユニットから係合解除しうる。もちろん、上記説明したように、蓄圧器が第1油圧移動ユニットを介して再充填される間、第2油圧移動ユニットは、第1油圧移動ユニットおよび蓄圧器に流体連結されたままであることは同様に考えられる。
【0022】
制御ユニットは、1または複数の隔離弁を閉じることによって、第2油圧移動ユニットを、第1油圧移動ユニットからおよび/または蓄圧器から流体的に切断しうる。隔離弁は例えば、一方の第2油圧移動ユニットと他方の蓄圧器および/または第1油圧移動ユニットとの間の流体経路に沿って配置可能である。
【0023】
制御ユニットは、要求される総出力がブースト閾値未満であり再充填閾値より高い場合に、弁状態を閉状態に変更するまたは弁状態を閉状態に維持するよう構成されうる。
【0024】
要求される総出力がブースト閾値より高い場合またはブースト閾値より高く増大される場合に、制御ユニットは、少なくとも1つの入力装置からの入力命令に基づき、かつ車両状態に基づき、第2油圧移動ユニットの出力に提供される要求されるトルクを計算する段階と、蓄圧器アセンブリの充填状態に基づき、蓄圧器アセンブリを介して利用可能な最大蓄圧器トルクを計算する段階と、要求されるトルクを最大蓄圧器トルクと比較する段階と、を実行するように構成されおよび/またはプログラミングされうる。
【0025】
制御ユニットは、最大蓄圧器トルクTacc,maxを関係式Tacc,max=a・Δp・αに従って計算しうる。ここで、Δp=pHP−pLPは蓄圧器4a、4bの油圧の間の圧力差であり、αは(最大移動量により制限される)モータ9の油圧移動量であり、aは典型的には最大モータ移動でのモータ9の効率を含むシステム依存定数である。
【0026】
制御ユニットはそれから、さらに、要求される総出力がブースト閾値より高く、最大蓄圧器トルクが要求されるトルクより大きい場合に、弁状態を開状態に変更するまたは弁状態を開状態に維持するように構成されおよび/またはプログラミングされうる。これは、蓄圧器内に貯蔵された油圧エネルギーがトルクに関する要求を満たすのに十分であることを確実にする。この場合、制御ユニットは、動力源に、例えば、燃料消費を減らすべくその速度を低減するように命令しうる。
【0027】
この手順をさらにより効果的にするために、制御ユニットは、要求されるトルクと最大蓄圧器トルクとを繰り返し計算し、要求されるトルクを最大蓄圧器トルクと繰り返し比較するようにさらに構成されうる。
【0028】
制御ユニットはさらに、蓄圧器弁が開状態であり、要求される総出力がブースト閾値より高く、最大蓄圧器トルクが要求されるトルクより大きい場合に、第1油圧移動ユニットを動力源から係合解除するおよび/または第1油圧移動ユニットの油圧移動をゼロ移動にセットするよう構成されうる。すなわち、制御は、動力源から第2油圧移動ユニットへエネルギーが伝えられないように、第2油圧移動ユニットから動力源を接続解除するよう構成されうる。この場合、要求される出力トルクは、蓄圧器アセンブリだけを介して提供される。
【0029】
同時に、制御ユニットは、動力源に、作動油圧アセンブリを駆動させるように命令しうる。言い換えれば、要求される総出力がブースト閾値より高く、同時に、最大蓄圧器トルクが要求されるトルクより大きいときまたは大きい間は、制御ユニットは、蓄圧器を油圧回路に流体的に連結し、動力源を油圧回路から切断し、動力源に作動油圧アセンブリを駆動させるように命令しうる。この状況では、動力源から利用可能な全ての出力は、作動油圧を駆動させるために用いられる。同時に、蓄圧器は、オペレータの出力トルクに関する要求を満たすように、第2油圧移動ユニットに必要な出力を提供する。
【0030】
さらに、上記説明した直列油圧ハイブリッド駆動装置を制御する方法を提案する。 方法は、少なくとも、入力装置からの入力命令に基づき、動力源から要求される総出力を計算する段階と、計算された要求される総出力を少なくとも1つの閾値出力と比較する段階と、比較の結果に基づき、蓄圧器弁の弁状態を制御する段階と、を備える。
【0031】
方法はさらに、制御ユニットが実行するよう構成された上記説明した段階のうちの1または複数を含みうる。
【0032】
現在提案している駆動装置の実施形態は、以下の詳細な記載において説明され、添付の図面において図示される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】直列油圧ハイブリッド駆動装置を示す。
図2】作業機械の動作サイクルのフロー図を示す。
図3図2の動作サイクルの間の総出力要求、トラクション力要求、および車両速度の時系列を示す。
図4図2の動作サイクルの間に図1の駆動装置を制御するための制御アルゴリズムのフロー図を示す。
【0034】
添付される複数の図面に図示され、以下の明細書において説明される複数の具体的な装置およびプロセスは、単に、本明細書にて定義される発明の複数の概念の例示的な複数の実施形態であることが理解される。従って、開示される複数の実施形態に関連した、具体的な寸法、方向、または、その他の物理的な特性は、そうでないということが明示的に述べられていなければ、限定的であるとみなされるべきではない。
【0035】
図1は、フロントエンドローダ(不図示)の直列油圧ハイブリッド駆動装置1を示す。駆動装置1は、内燃エンジン2、静油圧回路3、油圧蓄圧器アセンブリ4、蓄圧器弁5a−c、6a−c、電子制御ユニット7、アクセルペダル15、およびジョイスティック16を含む。
【0036】
静油圧回路は、可変容量静油圧アキシャルピストンポンプ8、可変容量静油圧アキシャルピストンモータ9、第1メイン流体ライン10、および第2メイン流体ライン11を含む。2/2ウェイ遮断弁12a−dを開くことによって、静油圧回路3は、ポンプ8およびモータ9がメインライン10、11を介して流体連結されるように閉じられうる。静油圧回路3が閉じられる場合、油圧流体は、ポンプ8、モータ9、およびメインライン10、11を介して循環されうる。メインライン10、11は、少なくとも400barの最大圧力までの静油圧に耐えるよう構成された流体パイプおよび/またはチューブを含む。
【0037】
ポンプ8は、機械的スプリッタボックス13を介してエンジン2に選択的に駆動係合される。すなわち、スプリッタボックス13は、エンジン2をポンプ8と係合または係合解除するように作動されうる。スプリッタボックス13がエンジン2をポンプ8に駆動係合する場合、エンジン2は、油圧流体が静油圧回路3内を循環されるようにポンプ8を駆動し、これによりモータ9を駆動する。モータ9は、ギアボックス(不図示)を介して車両出力14と選択的に駆動係合される。車両出力は、駆動シャフト、車軸、終減速機構、および1または複数のホイールのうち少なくとも1つを含みうる。
【0038】
蓄圧器アセンブリ4は、高圧油空圧ブラダー蓄圧器4aおよび低圧油空圧ブラダー蓄圧器4bを有する。蓄圧器4a、4bは、各々、容器内に配置された弾力のあるブラダーを含む中空容器として構成される。ブラダーは、窒素などの不活性ガスを含む。このタイプのブラダー蓄圧器は、油などの油圧流体により蓄圧器を充填または部分的に充填することにより加圧されうる。油圧流体が蓄圧器に入ると、不活性ガスが圧縮され、これにより蓄圧器内の静油圧を増大させる。同様に、蓄圧器は、ブラダー内の不活性ガスを膨張させることにより減圧され得、これにより蓄圧器に含まれる油圧流体を蓄圧器の外へ移動させ、流体の流れを作る。例えば、高圧蓄圧器4aは、少なくとも450barの最大圧力までの静油圧に耐えるよう構成され、低圧蓄圧器4bは、少なくとも150barの最大圧力までの静油圧に耐えるよう構成される。
【0039】
蓄圧器4a、4bは、蓄圧器弁5a−c、6a−cを介して、静油圧回路3のメインライン10、11に選択的に流体連結される。蓄圧器弁5a−c、6a−cは、それぞれ開位置および閉位置を有する複数の2/2ウェイ遮断弁として構成される。開位置(例えば図1の弁5a、6a参照)では、油圧流体は、遮断弁を介して流れ得るが、閉位置では、遮断弁を介する油圧流の流れは止められる。
【0040】
図1の概要から当業者が容易に理解するように、弁5a−c、6a−cは、少なくとも閉弁状態、第1開弁状態、および第2開弁状態とすることができる。閉弁状態では、少なくとも弁5a、6aは閉じられ、これにより蓄圧器4a、4bを静油圧回路3から流体的に切断する。第1開弁状態では、蓄圧器4a、4bがメインライン10、11にそれぞれ流体連結されるように、弁5a、5b、6a、6cは開いており、弁5c、6bは閉じられている。第2開弁状態では、蓄圧器4a、4bがメインライン11、10にそれぞれ流体連結されるように、弁5a、5c、6a、6bは開いており、弁5b、6cは閉じられている。
【0041】
駆動装置1はさらに、油圧作動アセンブリ17を含む。作動アセンブリ17は、流体ライン21a−eおよび4/3ウェイディレクショナル制御弁22を介して互いに流体連通する、油圧作動ポンプ18、油圧機器19、および流体貯蔵部20を含む。作動ポンプ18は、スプリッタボックス13を介してエンジン2に選択的に駆動係合される。機器19は、少なくとも1つの油圧シリンダおよびシリンダ内に移動可能に配置された油圧ピストンを含む。ここで、機器19は、フロントエンドローダのバケット(不図示)を持ち上げて傾けるためのリフトおよびチップメカニズムの一部である。すなわち、作動アセンブリ17は、例えば、砂などの材料の堆積物にバケットを突っ込み、バケットをいっぱいにし、いっぱいになったバケットを持ち上げ、バケットを傾けて材料をおろし、再びバケットを下げるように用いられうる。
【0042】
機器19の油圧ピストンを動かして上記説明した複数の作動油圧オペレーションを実行するために、制御弁は、作動ポンプ18、機器19、および貯蔵部20を流体的に連結するべく、適切なスプール位置に切り替えられうる。作動ポンプ14はそれから、エンジン2を介して駆動されて、油圧流体を貯蔵部20から機器19のシリンダへ移動させ、ピストンを動かし得る。同時に、油圧流体は、機器19から貯蔵部へ移動される。図1の概要から当業者が容易に推察しうるように、機器19のピストンは、制御弁22を対応するスプール位置へ切り替えることによって2つの方向のうちの一方に選択的に動かされうる。制御弁22が機器19を貯蔵部20と作動ポンプ18とから流体的に切断するニュートラル位置に、制御弁22を切り替えることによって、機器19のピストンはロックされうる。
【0043】
アクセルペダル15およびジョイスティック16を介して、車両のオペレータは、後に制御ユニット7へ送られる1または複数の入力命令を入力しうる。制御ユニット7は、1または複数のプロセッサを含み、静油圧回路3の弁5a−c、6a−c、12a−dの各々、ポンプ8、モータ9、モータ9と車両出力14との間のギアボックス(不図示)、エンジン2、スプリッタボックス13、および制御弁22に電気的に連結される。明りょうの問題のためだけに、制御ユニット7と制御ユニット7により制御される複数のコンポーネントとの間の電気的連結は、図1においては不図示である。アクセルペダル15およびジョイスティック16からの入力命令に基づき、制御ユニット7は、静油圧回路3の弁5a−c、6a−c、12a−d、ポンプ8とモータ9の移動、モータ9と車両出力14との間のギアボックス(不図示)のギア選択、エンジン2、スプリッタボックス13、および制御弁22のうち少なくとも1つを制御しうる。特に、制御ユニット7は、エンジン2をオンおよびオフし得、エンジン速度(rpmで測定される)を制御しうる。制御ユニット7はさらに、エンジン2を、一度に、ポンプ8、18の両方と、またはポンプ8、18のうちの一つだけと選択的に駆動係合させるように、スプリッタボックス13を作動させうる。特に、ジョイスティック16は、作動油圧制御命令を入力するために用いられてよく、アクセルペダル15は、トラクション命令を入力するために用いられてよい。
【0044】
本明細書に提示された実施形態は、掘削サイクルなどのサイクルにおける限定された期間について、フロントエンドローダの利用可能出力を増大させる駆動装置1の制御方法を記載する。説明された解決策/方法は、Yサイクル(図2参照)の間に実行される典型的な動作を分析し、その特定のデューティサイクルの実行の間の車両ブーストまたはエネルギー回復のために蓄圧器4a、4bを連結する複数の最適な段階を規定する。さらに、蓄圧器4a、4bにおいて利用可能なエネルギーの管理の方法が提示される。
【0045】
図2のフロー図は、Yサイクルの間に実行される典型的なステップA〜Hを要約する。図3aは、図2で概説されたステップA〜Hの実行の間の合計の要求されたエンジン出力23および要求されたトラクション力24(モータ9の出力軸で要求される出力)の時系列を示す。図3bは、図2のステップA〜Hの実行の間の車速25の時系列を示す。ここで、以下では、繰り返される複数の特徴が同じ複数の参照符号により特定される。
【0046】
図2では、車両は、最初に、空のバケットで、開始位置で止まっている。ステップAの間、車両は、空のバケットで、開始位置から(例えば砂利の)堆積物へ進む。図3bは、車両が堆積物へ向かって動くように加速し、続いて車両が堆積物へ近づくに従って減速するように、車速を増大させそれから減少させることを図示する。同様に、図3aは、ステップAの間の対応する合計エンジン出力23およびトラクション力24を示す。
【0047】
ステップBの間、車両は、堆積物を掘削する。必要な出力は、静油圧回路3を介して車両出力14と、作動アセンブリ17を介してバケットとの両方へ伝えられる。ステップBの間、車両速度は低く(図3b参照)、しかし合計の要求されるエンジン出力23と要求されるトラクション力24とは、堆積物内へバケットを駆動するためにそれらの最高レベルである。
【0048】
ステップCの間、車両は、図3bにおいて負の速度で示されるように、開始位置へ後方に移動する。バケットはステップCの間に充填される。
【0049】
ステップDの間、車両は、車両がバケットのものをおろす予定であるトラックへ向かって行くべく、後方移動から前方移動へ変更する。ステップDの最後に、車両は、開始位置に到達し、再び止まる(ゼロ速度)。
【0050】
ステップEの間、車両は、前方向のトラックに向けて移動する。再び、車両は、開始位置から離れるに従って加速し、続いてトラックに近づくに従って減速する。車両が減速しトラックに近づくと、トラクション出力においてトルクが要求されないまたは基本的には要求されない。しかし、合計の要求されるエンジン出力23は、トラックの荷積みスペースより高くまでバケットを上げるためのドライバー命令に起因して増大される。
【0051】
ステップFの間、車両は止まり、バケットからトラックの荷積みスペース内に材料をおろす。トラクション出力で要求される出力24は、ゼロまたはほとんどゼロである。再び、ゼロではない合計の要求されるエンジン出力23は、バケットのものをおろすプロセスの間のリフトメカニズムおよびチップメカニズムの操作に起因する。
【0052】
ステップGの間、車両は、後方に移動して開始位置に戻る。開始位置に到達すると、車両は方向を再び変更して堆積物に戻る(ステップH)。ステップA〜Hは、トラックが満載されるまで繰り返される。
【0053】
図2および3において示されるYサイクルの間に制御ユニットにより実行される制御手順の複数のステップを示すフロー図が、概略的に図4に図示される。
【0054】
40(図4参照)では、制御ユニット7は、静油圧モードで車両を操作する。静油圧モードでは、蓄圧器弁5a−c、6a−cは閉じられ、これにより蓄圧器アセンブリ4を静油圧回路3から流体的に切断する。エンジン2からのエネルギーが、閉じられた静油圧回路3を介して車両出力14に伝えられる。制御ユニット7は、アクセルペダル15を介して及び場合によってはジョイスティック16を介してドライバーにより提供される入力命令に基づき、エンジン速度をセットする。制御ユニット7はさらに、エンジン速度に基づきポンプ8の移動を制御し、現在の車両速度に基づきモータ9の移動量およびギア比を制御する。
【0055】
41(図4参照)では、まだ静油圧モードにあり、制御ユニット7は連続的に(例えば、少なくとも100msに1回)、エンジン2(図3a参照)から要求された総出力23を、アクセルペダル15を介して(および場合によってはジョイスティック16を介して)ドライバーによって提供された入力命令に基づき計算する。要求される総出力23の計算はさらに、現在の車両速度とモータ9の出力軸および車両出力14(例えば車軸)の間の現在のギア比とに基づく。
【0056】
図3aはさらに、ブースト閾値出力26および再充填閾値出力27を示す2つの水平破線を図示する。ブースト閾値出力26は、エンジン2により提供されうる最大出力の約90パーセントに対応する。すなわち、蓄圧器アセンブリ4によって提供される追加出力を用いることなく、エンジン2の総出力が、ブースト閾値26に対応する出力レベルより高くまで上昇することはほとんどない。しかし、制御ユニット7は、エンジン2から要求された総出力23がブースト閾値26に近くなるまたはより高くなる期間を特定し、蓄圧器4a、4bを静油圧回路3に流体的に連結させることによって、その期間の間に追加のトラクション力を提供するよう構成される。
【0057】
具体的には、42(図4参照)では、制御ユニット7は連続的に(例えば100msに少なくとも1回)、エンジン2から要求された計算された総出力23を、ブースト閾値26(図3a参照)と比較し、エンジン2から要求された総出力23がブースト閾値26より高いか低いかに基づき蓄圧器弁5a−c、6a−cを制御する。
【0058】
図3aでは、エンジン2から要求された総出力23は、車両が堆積物を掘っているタイムスパンtの間はブースト閾値26より高い。制御ユニット7が総出力要求23がブースト閾値26より高くまで上昇したことを検出すると、制御ユニット7は、蓄圧器弁5a−c、6a−cを作動して、上記説明した第1開弁状態に変更して、これにより、図4の43において示されるように、蓄圧器4a、4bをメインライン10、11にそれぞれ流体的に連結させる。44では、制御ユニット7に電気的に連結した1または複数の弁センサーは、蓄圧器弁5a−c、6a−cが第1開弁状態に切り替えられたことを決定する。そのような場合には、制御ユニット7は、図4の45に示されるように、ハイブリッドブーストモードに切り替える。
【0059】
高圧蓄圧器4aからの油圧流体は、直ちにモータ9を介して低圧蓄圧器4bに移動させられ、これによりモータ9と車両出力14とにトルクを加える。
【0060】
蓄圧器4a、4bが静油圧回路3に連結している間、すなわち図3aのタイムスパンtの間、制御ユニット7は、上記説明したように、繰り返し(例えば100msに少なくとも1回)、エンジンから要求された総出力23を計算することを継続する。加えて、制御ユニット7は、図4の46に示されるように、繰り返し(例えば100msに少なくとも1回)、現在のアクセルペダル位置、現在の車両速度、現在の車両の移動方向、およびモータ9と車両出力14(例えば車軸)との間の現在のギア比またはギア選択に基づいて、要求されたトラクション出力トルクを計算する。図3aに図示された要求されるトラクション力24は、現在の車両速度および現在のギア比を介して、要求されたトラクション出力トルクと関連付けられる。
【0061】
図4の47において、図3aのタイムスパンtの間に、制御ユニット7はさらに、連続的に(例えば100msに少なくとも1回)、蓄圧器4a、4bがモータ9に加えうる最大トルクTacc,maxを、関係式Tacc,max=a・Δp・αに従って計算する。ここで、Δp=pHP−pLPは蓄圧器4a、4bの油圧間の圧力差であり、αは(最大移動量により制限される)モータ9の油圧移動量であり、aは、典型的には最大モータ移動量でのモータ9の効率に関連付けられるシステム依存定数である。
【0062】
まだ図4の47において、図3aのタイムスパンtの間、制御ユニット7は、繰り返し(例えば100msに少なくとも1回)、トラクション出力で要求されたトルクを、蓄圧器4a、4bを介して利用可能な最大トルクTacc,maxと比較する。(i)Tacc,maxがトラクション出力で要求されるトルクより大きく、
(ii)エンジン2から要求される総出力23がブースト閾値26より高い間は、
制御ユニット7は、ハイブリッドブーストモードにとどまり、蓄圧器弁5a−c、6a−cを作動して、蓄圧器4a、4bが静油圧回路3に連結された状態を維持する。
【0063】
すなわち、ステップ45、46、47は、連続的に繰り返される。条件(i)、(ii)を満たす間は、トラクション出力で要求されるトルクは、蓄圧器4a、4bだけを介して提供されうる。エンジン2は、静油圧回路3がエンジン2からエネルギーを消費しないように、静油圧回路3から係合解除されうる。
【0064】
したがって、蓄圧器4a、4bが連結され、上記説明した条件(i)、(ii)を満たす間は、制御ユニット7は、スプリッタボックス13に、エンジン2からポンプ8を係合解除させ(図1参照)、エンジン2を作動ポンプ18と係合させるように命令する。この構成では、エンジン2から利用可能な全てのエネルギーが、作動油圧アセンブリ17に伝えられ、堆積物を掘るときにバケットに最大限のエンジン出力を提供する。ポンプ8からエンジン2を係合解除する代替方法として、制御ユニット7は、隔離弁12a、12b(図1参照)を閉じることによって、ポンプ8を蓄圧器4a、4bとモータ9とから流体的に切断しうる。
【0065】
条件(i)、(ii)のうち少なくとも1つがもはや満たされなくなると、制御ユニット7は、図4の49で示されるように、蓄圧器弁5a−c、6a−cを作動して、閉弁状態へ変更し、これにより蓄圧器4a、4bを、静油圧回路3のメインライン10、11から切断する。図2および3のYサイクルの間、これは、エンジン2から要求される総出力23がタイムスパンtの終了においてブースト閾値23未満に低下する場合である。蓄圧器弁5a−c、6a−cが閉弁状態に完全に切り替えられると、図4の50に示されるように、制御ユニット7は切り替わって静油圧モードに戻る。
【0066】
ハイブリッドブーストモード(図3aのタイムスパンtおよび図4の参照符号45,46,47参照)の間、制御ユニット7は、アクセルペダル15を介しかつジョイスティック16を介してドライバーにより提供される入力命令に基づき、エンジン速度を制御し、エンジン速度に基づき、ポンプ8の移動を制御し、要求されたトラクショントルクに基づきかつTacc,maxに基づき、モータ9の移動量を制御し、車両速度に基づきギア比を制御する。
【0067】
図2および3で説明したYサイクルの各々の間、上記説明したハイブリッドブーストオペレーションを実行するのに十分な油圧エネルギーが蓄圧器アセンブリ4に貯蔵されるように、蓄圧器アセンブリ4は、各サイクルの間に再充填されることを必要とする。
【0068】
提案したハイブリダイゼーションがトランスミッション側であるため、蓄圧器による出力は、要求されるトラクション力24(図3a参照)を超えないことが望ましいであろう。理想的には、各サイクルの間に蓄圧器に貯蔵される油圧エネルギーは、ハイブリッドブーストフェーズ(図3aのタイムスパンtおよび図4の参照符号45,46,47参照)の間にトランスミッションから要求される油圧エネルギーと等しいであろう。言い換えれば、各サイクルの間に、蓄圧器アセンブリ4に貯蔵される油圧エネルギー量Eboost、回生制動Eregenを介して回復する油圧エネルギー量、およびエンジン2が蓄圧器4a、4bを再充填すべくポンプ8を駆動する上記説明した手順を介して得られる油圧エネルギー量EICEは、以下の条件:Eboost+Elosses=Eregen+EICEを満たすであろう。この条件が各サイクルの間満たされる場合、トラクションのために必要とされる全てのエネルギーは、蓄圧器アセンブリ4を介して提供され得、エンジン2から利用可能な全ての出力は、作動アセンブリ17を駆動させるために用いられうる。
【0069】
各サイクルの間に、制御ユニット7は、蓄圧器4a、4bが図3aに図示された再充填閾値27を用いたエネルギーの回復のために静油圧回路3に流体連結されうる複数の期間を特定する。図4の42で、エンジンから要求される総出力23がブースト閾値26未満である場合、図4の51に示されるように、制御ユニット7は、連続的に(例えば100msに少なくとも1回)、エンジン2から要求された総出力23を、再充填閾値27と比較する。要求される総出力23が再充填閾値27より高くブースト閾値26より低い間は、ステップ40、41、42、51が繰り返される。
【0070】
要求される出力23が再充填閾値出力27より低い(図3a参照)期間t,t,t,t,tは、回復手順のために用いられうる。再充填閾値出力27は、ブースト閾値出力26より低い。例えば、再充填閾値出力27は、エンジン2がエネルギーの回復のために追加の出力を提供するのに十分な容量を有するように選択されうる。
【0071】
図4の51において制御ユニット7は要求される総出力23が再充填閾値より低いと決定すると、図4の52に示されるように、制御ユニットは、蓄圧器弁5a−c、6a−cを作動させて、エネルギーの回復のために、蓄圧器4a、4bを静油圧回路3に連結する。53において蓄圧器4a、4bが完全に連結される場合、図4の54に示されるように、制御ユニット7は、ハイブリッド回復モードに切り替える。
【0072】
ハイブリッド回復モードは、エンジン2およびポンプ8を介した回生制動および蓄圧器再充填を含みうる。エネルギーの回復のために回生制動または蓄圧器再充填のいずれが実行されるかは、現在の車両速度およびドライバーからの入力命令に依存しうる。例えば、回生制動は、ドライバーが車両に減速するように命令する場合にだけ実行されうる。さもなければ、制御ユニット7は、エンジン2に、ポンプ8を駆動させて、油圧流体を低圧蓄圧器4bから高圧蓄圧器4bへ移動させるように命令し得、これにより蓄圧器アセンブリ4を再充填する。ハイブリッド回復モードの間、制御ユニット7は、トラクショントルクに関する要求に基づきモータ9の移動量(displacement)を制御する。制御ユニット7は、それぞれエンジン速度および車速に基づきポンプ8の移動およびギア比を制御する。制御ユニット7は、要求される出力23が再充填閾値より高く上昇するまでハイブリッド回復モードにとどまりうる。
【0073】
制御ユニット7はさらに、1または複数のサイクルにわたって、要求される出力23および要求されるトラクション力24をモニタリングし、ブースト閾値26および再充填閾値27を、上記説明した関係式Eboost+Elosses=Eregen+EICEが各サイクルの間満たされるように調節するように構成されうる。要求される総出力23および要求されるトラクション力24が十分に同様の経過をたどれば、そのような推定が適正な精度で良好に可能でありうる。
【0074】
制御ユニット7は、蓄圧器4a、4bの連結および切断の条件を認識するよう構成される、エンジン2を介しかつ運動エネルギー回復(回生制動)を介して蓄圧器を充填するための方法を規定するように構成される、蓄圧器4a、4bの連結/切断の遷移を管理するための複数の最適な方法を規定するよう構成される、および蓄圧器4a、4bが連結されている間の最適な静油圧コンポーネント作動を規定するよう構成される、という複数の特性を組み合わせる。
[項目1]
車両のための直列油圧ハイブリッド駆動装置であって、
動力源と、
第2油圧移動ユニットと流体連通している第1油圧移動ユニットを有する油圧回路であって、上記第1油圧移動ユニットは上記動力源と、駆動係合、または選択的に駆動係合している、上記油圧回路と、
少なくとも1つの蓄圧器弁と、
高油圧蓄圧器と低油圧蓄圧器とを有する油圧蓄圧器アセンブリであって、上記蓄圧器弁を介して上記油圧回路に選択的に流体連結している、上記油圧蓄圧器アセンブリと、
少なくとも1つの入力装置と、
制御ユニットと、
を備え、
上記制御ユニットは、
上記入力装置からの入力命令に基づき、上記動力源から要求される総出力を計算し、
上記計算された要求される総出力を少なくとも1つの閾値出力と比較し、
上記比較の結果に基づき、上記蓄圧器弁の弁状態を制御する、
直列油圧ハイブリッド駆動装置。
[項目2]
上記制御ユニットは、上記要求される総出力を繰り返し計算し、上記要求される総出力を上記閾値出力と繰り返し比較する、
項目1に記載の直列油圧ハイブリッド駆動装置。
[項目3]
上記入力装置は、アクセルペダルとブレーキとのうち少なくとも1つを含み、上記入力命令は、加速命令と、減速命令と、ブレーキ命令とのうち少なくとも1つを含む、
項目1または2に記載の直列油圧ハイブリッド駆動装置。
[項目4]
作動油圧アセンブリをさらに備え、
上記入力装置は、作動油圧制御装置を有し、
上記入力命令は、作動油圧制御命令を含む、
項目1から3のいずれか一項に記載の直列油圧ハイブリッド駆動装置。
[項目5]
上記閾値出力はブースト閾値を含み、
上記制御ユニットは、上記計算された要求される総出力が上記ブースト閾値より高いとき、または上記ブースト閾値より高くまで増大したとき、上記弁状態を開状態に変更する、または上記弁状態を上記開状態に維持する、
項目1から4の何れか一項に記載の直列油圧ハイブリッド駆動装置。
[項目6]
上記閾値出力は再充填閾値を含み、
上記制御ユニットは、上記計算された要求される総出力が上記再充填閾値より低いとき、または上記再充填閾値より低く低下したとき、上記弁状態を開状態に変更する、または上記弁状態を上記開状態に維持する、
項目1から5の何れか一項に記載の直列油圧ハイブリッド駆動装置。
[項目7]
上記制御ユニットは、上記計算された要求される総出力が上記再充填閾値より低いとき、または上記再充填閾値より低く低下したとき、上記第1油圧移動ユニットを駆動させるように上記動力源に命令して、上記第1油圧移動ユニットが油圧流体を上記低油圧蓄圧器から上記高油圧蓄圧器へ移動させ、これにより上記蓄圧器アセンブリを充填する、
項目6に記載の直列油圧ハイブリッド駆動装置。
[項目8]
上記制御ユニットは、上記計算された要求される総出力が上記ブースト閾値より低く、上記再充填閾値より高いとき、上記弁状態を閉状態に変更する、または上記弁状態を上記閉状態に維持する、
項目5に従属する項目6または7に記載の直列油圧ハイブリッド駆動装置。
[項目9]
上記制御ユニットはさらに、
上記少なくとも1つの入力装置からの上記入力命令に基づき、および車両状態に基づき、上記第2油圧移動ユニットの出力に提供されることになる要求されるトルクを計算し、
上記蓄圧器アセンブリの充填状態に基づき、上記蓄圧器アセンブリを介して利用可能な最大蓄圧器トルクを計算し、
上記要求されるトルクを上記最大蓄圧器トルクと比較し、
上記計算された要求される総出力が上記ブースト閾値より高く、または上記ブースト閾値より高く増大し、上記最大蓄圧器トルクが上記要求されるトルクより大きいとき、上記弁状態を上記開状態に変更する、または上記弁状態を上記開状態に維持する、
項目5に記載の直列油圧ハイブリッド駆動装置。
[項目10]
上記車両状態は、車両速度と、上記車両の移動方向と、ギア選択とのうち少なくとも1つを含む、
項目9に記載の直列油圧ハイブリッド駆動装置。
[項目11]
上記制御ユニットは、上記要求されるトルクと上記最大蓄圧器トルクとを繰り返し計算し、上記要求されるトルクを上記最大蓄圧器トルクと繰り返し比較する、
項目9または10に記載の直列油圧ハイブリッド駆動装置。
[項目12]
上記蓄圧器弁が上記開状態にあるとき、上記計算された要求される総出力が上記ブースト閾値より高いとき、および上記最大蓄圧器トルクが上記要求されるトルクより高いとき、上記制御ユニットは、上記第1油圧移動ユニットを上記動力源から係合解除して、および/または、上記第1油圧移動ユニットの油圧移動量をゼロ移動量にセットして、上記動力源から上記第2油圧移動ユニットへエネルギーが伝えられないようにし、出力される上記要求されるトルクが上記蓄圧器アセンブリを介して提供されるようにする、
項目9から11の何れか一項に記載の直列油圧ハイブリッド駆動装置。
[項目13]
上記蓄圧器弁が上記開状態にあるとき、上記計算された要求される総出力が上記ブースト閾値より高いとき、および上記最大蓄圧器トルクが上記要求されるトルクより大きいとき、上記制御ユニットはさらに、上記作動油圧アセンブリを駆動させるように上記動力源に命令して、上記動力源により提供される全ての出力が上記作動油圧アセンブリを駆動するために用いられる、
項目4に従属する項目12に記載の直列油圧ハイブリッド駆動装置。
[項目14]
項目1から13の何れか一項に記載の直列油圧ハイブリッド駆動装置を制御する方法であって、少なくとも、
上記入力装置からの入力命令に基づき、上記動力源から要求される総出力を計算する段階と、
上記計算された要求される総出力を上記少なくとも1つの閾値出力と比較する段階と、
上記比較の結果に基づき、上記蓄圧器弁の弁状態を制御する段階と、
を備える方法。
図1
図2
図3
図4