【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的が本発明の主題によって解決される。
【0014】
本発明によれば、
図1において列挙されるようなCDR1配列〜CDR3配列またはそれらの機能的に活性なCDR変化体のいずれかを含む抗体重鎖可変領域(VH)を少なくとも含む、大腸菌菌株のO25b抗原に特異的に結合する単離された抗体が提供される。
【0015】
本発明によれば、表1において列挙されるようなCDR1配列〜CDR3配列(これらはKabatの番号表記システムに従って示される)または表2において列挙されるようなCDR1配列〜CDR3配列(これらはIMGT番号表記システムに従って示される)あるいはそれらの機能的に活性なCDR変化体のいずれかを含む抗体重鎖可変領域(VH)を少なくとも含む、大腸菌菌株のO25b抗原に特異的に結合する単離された抗体が提供される。
【0016】
具体的には、上記大腸菌菌株はMDR菌株である。
【0017】
下記では、別途示される場合を除き、参照は、Kabatに従って番号表記されるようなCDR配列に対して、すなわち、Kabat命名法に従って決定されるようなCDR配列に対してなされ(Kabat他、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、米国保健福祉省公衆衛生局(1991年)を参照のこと)、具体的には、表1において列挙されるようなそれらのCDR配列(配列番号1〜97)に対してなされる。本発明、および、請求項の範囲はまた、同じ抗体およびCDRではあるが、異なる番号表記の示されたCDR領域を有するもの、例えば、表2において列挙されるようなもの(配列番号98〜183および配列番号39)(ただし、この場合、CDR領域はIMGTシステムに従って定義される;The international ImMunoGeneTics、Lefranc他、1999、Nucleic Acids Res.、27:209〜212)も包含することになることが十分に理解される。
【0018】
具体的には、上記抗体は、
A)
下記の群要素i)〜群要素xiv)からなる群から選択される:
i)
a)配列番号1のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号2のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号3のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
ii)
a)配列番号7のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号8のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号9のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
iii)
a)配列番号11のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号12のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号13のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
iv)
a)配列番号17のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号18のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号19のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
v)
a)配列番号23のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号24のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号25のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
vi)
a)配列番号29のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号30のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号31のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
vii)
a)配列番号34のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号35のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号36のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
viii)
a)配列番号29のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号40のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号41のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
ix)
a)配列番号44のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号45のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号46のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
x)
a)配列番号50のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号51のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号52のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
xi)
a)配列番号50のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号55のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号56のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
xii)
a)配列番号57のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号58のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号59のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
xiii)
a)配列番号61のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号62のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号63のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
xiv)
a)配列番号66のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号67のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号68のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
あるいは
B)Aの前記群要素のいずれかである親抗体の機能的に活性な変化体である抗体で、前記親抗体のCDR1、CDR2またはCDR3のいずれかの少なくとも1つの機能的に活性なCDR変化体を含む抗体
である。
【0019】
具体的には、機能的に活性な変化体は、少なくとも1つの点変異を元のCDR配列において含み、かつ、元のCDR配列との少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ酸配列、好ましくは少なくとも70%の配列同一性、少なくとも80%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、または、そのようなアミノ酸配列からなる機能的に活性なCDR変化体である。
【0020】
具体的な局面によれば、本発明の抗体は、
a)
図2に示されるようなVH配列のいずれかから選択されるVHアミノ酸配列、好ましくは、配列番号184〜配列番号231のいずれかまたは配列番号312〜配列番号315のいずれかである抗体重鎖(HC)アミノ酸配列のVHアミノ酸配列;
b)配列番号184〜配列番号231のいずれかまたは配列番号312〜配列番号315のいずれかである抗体重鎖(HC)アミノ酸配列;あるいは
c)配列番号184〜配列番号231のいずれかまたは配列番号312〜配列番号315のいずれかであり、かつ、C末端アミノ酸の欠失および/またはQ1E点変異(ただし、VH配列の最初のアミノ酸がQである場合)をさらに含む抗体重鎖(HC)アミノ酸配列
を含む。
【0021】
例えば、親抗体のそのような機能的に活性な変化体は、O25b抗原のみと特異的に結合するO25b特異的抗体である。例示的な親抗体が
図1において列挙されており(群1の抗体)、例えば、8A1、3E9または2A7である親抗体のヒト化変化体(例えば、
図2において列挙される抗体など)である。具体的には、そのような変化体のVH配列またはHC配列は別の変化体のVH配列およびHC配列によってそれぞれ置換されてもよく、特にこの場合、他の変化体は、同じ親抗体のどのような他の抗体であってもよい。
【0022】
具体的な局面によれば、本発明の抗体は場合により、表1において列挙されるようなCDR4配列〜CDR6配列(これらはKabatの番号表記システムに従って示される)または表2において列挙されるようなCDR4配列〜CDR6配列(これらはIMGT番号表記システムに従って示される)あるいはそれらの機能的に活性なCDR変化体のいずれかを含む抗体軽鎖可変領域(VL)をさらに含む。
【0023】
具体的には、上記抗体は、
A)
下記の群要素i)〜群要素xiv)からなる群から選択される:
i)
a)配列番号4のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号5のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号6のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
ii)
a)配列番号10のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号5のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号6のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
iii)
a)配列番号14のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号15のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号16のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
iv)
a)配列番号20のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号21のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号22のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
v)
a)配列番号26のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号27のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号28のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
vi)
a)配列番号20のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号32のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号33のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
vii)
a)配列番号37のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号27のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号38のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
viii)
a)配列番号42のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号32のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号43のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
ix)
a)配列番号47のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号48のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号49のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
x)
a)配列番号53のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号32のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号54のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
xi)
a)配列番号57のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号32のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号54のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
xii)
a)配列番号26のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号27のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号60のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
xiii)
a)配列番号64のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号65のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号38のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
xiv)
a)配列番号69のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号70のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号71のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
あるいは
B)Aの前記群要素のいずれかである親抗体の機能的に活性な変化体である抗体で、前記親抗体のCDR4、CDR5またはCDR6のいずれかの少なくとも1つの機能的な活性なCDR変化体を含む抗体
である。
【0024】
具体的には、上記抗体は、
図2に示されるようなVL配列のいずれかから選択されるVLアミノ酸配列、好ましくは、配列番号248〜配列番号295のいずれかまたは配列番号316〜配列番号319のいずれかである抗体軽鎖(LC)アミノ酸配列のVLアミノ酸配列を含み、あるいは、配列番号248〜配列番号295のいずれかまたは配列番号316〜配列番号319のいずれかである抗体軽鎖(LC)アミノ酸配列を含む。
【0025】
具体的な局面によれば、本発明の抗体は、例えば、同等な親和性、同等を超える親和性、類似する親和性または異なる親和性を伴って、O25a抗原およびO25b抗原によって共有されるエピトープに対して交差特異的である。
【0026】
具体的には、本発明の抗体は、O25b抗原およびO25a抗原と結合するために交差特異的であり、かつ/または、大腸菌のO25a抗原と比較してO25b抗原に優先的に結合する。ただし、これには、O25a菌株に対して惹起されるポリクローナルなタイプ決定用血清と比較して、好ましくは、免疫アッセイによって明らかにされるような、O25(このO25は現在、O25aとして知られており、本明細書中ではO25aとして示される)大腸菌菌株に対して惹起されるポリクローナル血清によってO25b抗原と結合することと比較してより大きい親和性が伴っており、この場合、好ましくは、抗体は、免疫アッセイ(好ましくは、免疫ブロッティング、ELISAまたは他の免疫学的方法)によって明らかにされるように、両者に対する、すなわち、O25b抗原およびO25a抗原に対する少なくとも同等の親和性を有する。
【0027】
「交差特異的」として示される場合を除き、本発明の抗体は、O25b特異的であるとして、すなわち、O25b抗原のみを特異的に認識する抗体、例えば、表1の群1の抗体のいずれかであるとして、または、交差特異的抗体として、すなわち、O25b抗原およびO25a抗原の間において共有されるエピトープを特異的に認識する抗体、例えば、表1の群2の抗体のいずれかであるとしてそのどちらでも本明細書中では理解される。したがって、用語「本発明の抗体」は、O25b特異的抗体およびO25b/O25a交差特異的抗体の両方を包含する。本発明の抗体は具体的にはさらに、どのような他の大腸菌抗原とも交差反応しないことにおいて特徴づけられ、かつ/または、本発明の抗体は、どのような他の大腸菌抗原に対してもより低い親和性で結合すること、この場合、例えば、(O25b抗原またはO25a抗原とは異なる)他の大腸菌抗原よりもO25b抗原と優先的に結合するためのKd差が対数で少なくとも2の差であり、好ましくは対数で少なくとも3の差である。
【0028】
具体的には、上記の交差特異的抗体は、
A)
下記の群要素i)〜群要素vii)からなる群から選択される:
i)
a)配列番号72のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号73のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号74のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
ii)
a)配列番号77のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号78のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号79のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
iii)
a)配列番号81のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号82のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号83のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
iv)
a)配列番号84のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号85のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号86のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
v)
a)配列番号77のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号89のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号90のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
vi)
a)配列番号92のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号93のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号94のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
vii)
a)配列番号95のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号96のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号97のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
あるいは
B)Aの前記群要素のいずれかである親抗体の機能的に活性な変化体である抗体で、前記親抗体のCDR1、CDR2またはCDR3のいずれかの少なくとも1つの機能的な活性なCDR変化体を含む抗体
である。
【0029】
具体的には、上記抗体は、
a)
図2に示されるようなVH配列のいずれかから選択されるVHアミノ酸配列、好ましくは、配列番号232〜配列番号247のいずれかまたは配列番号312〜配列番号315のいずれかである抗体重鎖(HC)アミノ酸配列のVHアミノ酸配列;
b)配列番号232〜配列番号247のいずれかまたは配列番号312〜配列番号315のいずれかである抗体重鎖(HC)アミノ酸配列;あるいは
c)配列番号232〜配列番号247のいずれかまたは配列番号312〜配列番号315のいずれかであり、かつ、C末端アミノ酸の欠失および/またはQ1E点変異(ただし、VH配列の最初のアミノ酸がQである場合)をさらに含む抗体重鎖(HC)アミノ酸配列
を含む。
【0030】
例えば、親抗体のそのような機能的に活性な変化体は交差特異的抗体である。例示的な親抗体が
図1において列挙されており(群2の抗体)、例えば、4D5である親抗体のヒト化変化体(例えば、
図2において列挙される抗体など)である。具体的には、そのような変化体のVH配列またはHC配列は別の変化体のVH配列およびHC配列によってそれぞれ置換されてもよく、特にこの場合、他の変化体は、同じ親抗体のどのような他の抗体であってもよい。
【0031】
具体的な局面によれば、本発明の交差特異的抗体は場合によりさらに、表1において列挙されるようなCDR4配列〜CDR6配列(これらはKabatの番号表記システムに従って示される)または表2において列挙されるようなCDR4配列〜CDR6配列(これらはIMGT番号表記システムに従って示される)あるいはそれらの機能的に活性なCDR変化体(具体的には、どのような交差特異的抗体であれ、そのCDR配列が含まれる)のいずれかを含む抗体軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0032】
具体的には、上記の交差特異的抗体は、
A)
下記の群要素i)〜群要素vi)からなる群から選択される:
i)
a)配列番号75のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号32のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号76のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
ii)
a)配列番号75のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号32のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号80のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
iii)
a)配列番号69のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号70のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号71のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
iv)
a)配列番号42のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号87のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号88のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
v)
a)配列番号37のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号27のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号91のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
vi)
a)配列番号42のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号32のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号88のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
あるいは
B)Aの前記群要素のいずれかである親抗体の機能的に活性な変化体である抗体で、前記親抗体のCDR4、CDR5またはCDR6のいずれかの少なくとも1つの機能的な活性なCDR変化体を含む抗体
である。
【0033】
具体的には、機能的に活性な変化体は、少なくとも1つの点変異を元のCDR配列において含み、かつ、元のCDR配列との少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ酸配列、好ましくは少なくとも70%の配列同一性、少なくとも80%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、または、そのようなアミノ酸配列からなる機能的に活性なCDR変化体である。
【0034】
具体的な局面によれば、本発明の交差特異的抗体は、
図2に示されるようなVL配列のいずれかから選択されるVLアミノ酸配列、好ましくは、配列番号296〜配列番号311のいずれかまたは配列番号316〜配列番号319のいずれかである抗体軽鎖(LC)アミノ酸配列のVLアミノ酸配列を含み、あるいは、配列番号296〜配列番号311のいずれかまたは配列番号316〜配列番号319のいずれかである抗体軽鎖(LC)アミノ酸配列を含む。
【0035】
具体的な実施形態によれば、本発明の抗体は具体的には、
a)表1において列挙されるような抗体のいずれかのCDR1配列〜CDR6配列、または、
b)
図2に示されるような抗体のいずれかのVH配列およびVL配列、または、
c)
図2において列挙されるような抗体のいずれかのHC配列およびLC配列
を含み、あるいは
d)a)〜c)の配列によって特徴づけられる親抗体の機能的に活性な変化体であり、
好ましくは、
i.前記機能的に活性な変化体は、前記親抗体のCDR1〜CDR6のいずれかの少なくとも1つの機能的に活性なCDR変化体を含み、かつ/または
ii.前記機能的に活性な変化体は少なくとも1つの点変異を前記親抗体のVH配列およびVL配列ならびに/あるいはHC配列およびLC配列のいずれかのフレームワーク領域において含み、場合により、Q1E点変異(VHフレームワーク領域(VH FR1)の最初のアミノ酸がQである場合)を含み、
さらには
iii.前記機能的に活性な変化体は、前記親抗体と同じエピトープと結合するための特異性を有し、かつ/または
iv.前記機能的に活性な変化体は、前記親抗体のヒト変化体、ヒト化変化体、キメラ変化体またはマウス変化体および/または親和性成熟化変化体である。
【0036】
具体的な局面によれば、本発明の抗体は、当該抗体が依然として機能的に活性であるならば、表1において列挙されるようなCDR組合せを含む。
【0037】
具体的には、本発明の抗体は、表1において列挙されるような抗体のいずれかのCDR1〜CDR6を含む。しかしながら、代替となる実施形態によれば、抗体は、異なるCDR組合せを含む場合があり、例えば、この場合、表1において列挙されるような抗体は、表1において列挙されるような抗体のいずれかの1つの抗体の少なくとも1つのCDR配列(例えば、1つのCDR配列、2つのCDR配列、3つのCDR配列、4つのCDR配列、5つのCDR配列または6つのCDR配列など)と、異なる抗体の少なくとも1つのさらなるCDR配列とを含む。具体的な一例によれば、抗体は、1つのCDR配列、2つのCDR配列、3つのCDR配列、4つのCDR配列、5つのCDR配列または6つのCDR配列を含み、ただし、これらのCDR配列は、2つ以上の抗体(例えば、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つの異なる抗体)のCDR組合せである。例えば、これらのCDR配列は、表1において列挙されるような抗体のいずれかのCDR1〜CDR3のうちの1つ、2つ、または3つすべてと、表1において列挙される同じ抗体またはいずれか他の抗体のCDR4〜CDR6のうちの1つ、2つ、または3つすべてとを好ましくは含むために組み合わされる場合がある。
【0038】
CDR1、CDR2およびCDR3と番号がつけられるCDRはVHドメインの結合領域を表し、CDR4、CDR5およびCDR6はVLドメインの結合領域を表すことが、本明細書中では特に理解される。
【0039】
具体的な局面によれば、本発明の抗体は、
図2に示されるようなHCアミノ酸配列およびLCアミノ酸配列の組合せのいずれかを含み、または、HCアミノ酸配列およびLCアミノ酸配列のそのような組合せによって形成される結合部位を含む。代替において、抗体が依然として機能的に活性であるならば、2つの異なる抗体の免疫グロブリン鎖の組合せが使用される場合がある。例えば、1つの抗体のHC配列が別の抗体のLC配列と組み合わされる場合がある。さらなる具体的な実施形態によれば、
図2において提供されるようなフレームワーク領域のいずれもが、本明細書中に記載されるようなCDR配列および/またはVH/VL組合せのいずれかに対するフレームワークとして用いられる場合がある。
【0040】
本発明の抗体は必要に応じて、
図2のそのようなアミノ酸配列をそれぞれのシグナル配列を伴って、または伴うことなく、あるいは、代替となるシグナル配列またはリーダー配列を伴って含むことが理解される。
【0041】
具体的な局面によれば、
図2の配列のそれぞれが定常領域において末端で伸張または欠失される場合がある(例えば、C末端アミノ酸の1つまたは複数の欠失)。
【0042】
具体的には、C末端のリシン残基を含む
図2のHC配列のそれぞれが好ましくは、そのようなC末端リシン残基の欠失とともに用いられる。
【0043】
図2は種々のHC配列および種々のLC配列を示し、どのようなHC/LC組合せをも裏づけており、したがって、親抗体のそれぞれについての一連の異なるHC/LC組合せを裏づけている。したがって、それぞれの親抗体の具体的な変化体は、どのようなHC/LC組合せであっても、同じ親抗体から派生する
図2に示される変化体抗体のそれぞれのHC/LC組合せを含む場合がある。
【0044】
具体的には、
図2は、O25b抗原のみを特異的に認識する群1の抗体の親抗体(8A1、3E9(1G8)または2A7)のそれぞれの変化体、ならびに、O25b抗原およびO25a抗原と交差特異的に結合する群2の抗体の親抗体4D5の変化体である4つの異なるHC配列および4つの異なるLC配列を示す。16の異なるHC/LC組合せがこれらの親抗体のそれぞれについて示される。
【0045】
加えて、
図2は、O25b抗原のみを特異的に認識する群1の抗体の親抗体3E9(1G8)の変化体である2つのさらなる異なるHC配列および2つのさらなる異なるLC配列を示す。
【0046】
加えて、
図2は、O25b抗原およびO25a抗原と交差特異的に結合する群2の抗体の親抗体4D5の変化体である2つのさらなる異なるHC配列および2つのさらなる異なるLC配列を示す。
【0047】
CDR配列は、
図1において列挙されるようなそれぞれのCDR配列と同一である:親の8A1抗体、1G8抗体、2A7抗体または4D5抗体のCDR配列は、
図1の8A1−1G8抗体、3E9−G11抗体、2A7−F1抗体および4D5−D4抗体のCDR配列とそれぞれ同一である。
【0048】
具体的には、配列番号184〜配列番号247および配列番号312〜配列番号315は、
図2に示されるVHアミノ酸配列を含むHC配列を示し、ただし、この場合、それぞれのHC配列がおそらくはシグナル配列によってN端側で伸張している。特異的抗体は、そのようなVHアミノ酸配列またはHCアミノ酸配列をそれぞれのシグナル配列を伴って、または伴うことなく、あるいは、代替となるシグナル配列またはリーダー配列を伴って含むことが理解される。
【0049】
具体的には、配列番号248〜配列番号311および配列番号316〜配列番号319は、
図2に示されるVLアミノ酸配列を含むLC配列を示し、ただし、この場合、それぞれのLC配列がおそらくはシグナル配列によってN端側で伸張している。特異的抗体は、そのようなVLアミノ酸配列またはLCアミノ酸配列をそれぞれのシグナル配列を伴って、または伴うことなく、あるいは、代替となるシグナル配列またはリーダー配列を伴って含むことが理解される。
【0050】
本発明はさらに、本発明の抗体のいずれかである親抗体(例えば、表1において列挙されるような抗体)の機能的に活性な抗体変化体、または、
図2に示されるようなHCアミノ酸配列およびLCアミノ酸配列の組合せのいずれかを含む機能的に活性な抗体変化体、または、HCアミノ酸配列およびLCアミノ酸配列のそのような組合せによって形成される結合部位を含む機能的に活性な抗体変化体を製造する方法であって、少なくとも1つの点変異をフレームワーク領域(FR)または定常ドメインあるいは相補性決定領域(CDR1〜CDR6)のいずれかにおいて設計して、変化体抗体を得ること、および、前記変化体抗体の機能的活性を明らかにすること、具体的にはO25b抗原と10
−6M未満のKdにより結合するための親和性によって、好ましくは10
−7M未満のKdまたは10
−8M未満のKdまたは10
−9M未満のKd、それどころか、10
−10M未満のKdまたは10
−11M未満のKdにより結合するための親和性によって、例えば、ピコモル濃度範囲での親和性により結合するための親和性によって明らかにすることを含む方法を提供する。機能的活性が明らかにされると、機能的に活性な変化体は、さらなる使用のために、また、場合により、組換え製造方法による製造のために選択される。
【0051】
好ましいCDR変化体は、グリコシル化または脱アミド化を受けやすいモチーフの変異を含む。例えば、CDR配列のいずれかにおけるN結合型グリコシル化モチーフNXS/T(ただし、Xは任意のアミノ酸である)において、このモチーフにおける「N」は、グリコシル化のための潜在的可能性を除くために、どのようなアミノ酸であれ、他の異なるアミノ酸に変異させられる場合があり、好ましくは、「Q」、「S」または「D」に変異させられる場合がある。さらなる例では、CDR配列のいずれにおいても、アスパラギンまたはアスパラギン酸の脱アミド化を受けやすいかもしれないアミノ酸モチーフのNGまたはNNが示される。他のモチーフに含まれるアスパラギンは脱アミド化をそれほど受けやすくない。
【0052】
例えば、4D5のVL CDR1(CDR4)に見出されるアミノ酸モチーフSNGは、アスパラギンのアスパラギン酸への脱アミド化を受けやすい可能性がある。したがって、mAb 4D5のVL CDR1でのSNGモチーフにおける「N」の「磨きをかける」変異が、潜在的な脱アミド化部位を除くために、どのようなアミノ酸であれ、他の異なるアミノ酸に変異させられる場合があり、好ましくは、「Q」、「S」または「D」に変異させられる場合がある。
【0053】
具体的な局面によれば、変化体抗体は、親抗体と同じエピトープと結合する。
【0054】
さらなる具体的な局面によれば、変化体抗体は、親抗体と同じ結合部位を含む。
【0055】
機能的に活性な変化体抗体はVH配列またはVL配列のいずれかにおいて異なる場合があり、あるいは、共通のVH配列およびVL配列を共有する場合があり、また、修飾をそれぞれのFRにおいて含む場合がある。変異誘発によって親抗体に由来する変化体抗体が、この技術分野では広く知られている方法によって製造される場合がある。
【0056】
例示的な親抗体が、下記の実施例の節において、また、
図1(表1)および
図2に記載される。具体的には、抗体は、表1において列挙されるような親抗体の機能的に活性な誘導体である。1つまたは複数の改変されたCDR配列を有する、かつ/または、1つまたは複数の改変されたFR配列(例えば、FR1、FR2、FR3またはFR4の配列など)、あるいは改変された定常ドメイン配列を有する変化体が設計される場合がある。
【0057】
例えば、表1において列挙される親抗体に由来し、かつ、変異誘発によって、具体的には親和性成熟および/またはヒト化によって得られている機能的に活性な変化体抗体が本発明に従って提供され、
図2において列挙される。
図2の変化体抗体は依然として、それぞれの親抗体の共通したVH配列およびVL配列を共有するにもかかわらず、機能的に活性である変化したVH鎖およびVL鎖がまた、例えば、それぞれのFR配列またはCDR配列における改変を有する変化したVH鎖およびVL鎖が製造され得ることは実現可能である。
【0058】
親抗体の例示的な変化体抗体はCDR1〜CDR6のいずれかにおける少なくとも1つの点変異および/またはFR領域における少なくとも1つの点変異を含み、好ましくは、この場合、抗体は、親抗体と同じエピトープと結合するための特異性を有する。
【0059】
ある特定の局面において、本発明は、重鎖および軽鎖を含み、軽鎖可変領域またはVL可変領域またはそれぞれのCDRのいずれもが、少なくとも1つのFR配列またはCDR配列の改変によって、8D5−1G10または4D5−D4と称される抗体あるいは表1または
図2において列挙されるようないずれかの他の抗体である親抗体に由来するようなアミノ酸配列を含むそのような機能的に活性な変化体抗体、好ましくはモノクローナル抗体、最も好ましくはヒト抗体を提供する。
【0060】
4D5−D4と称され、かつ、表1において列挙される抗体は、抗体8D10−C8(これは、下記で示されるような寄託物によって特徴づけられる)と同じCDR配列を含むことが判明した。しかしながら、同じVH/VL配列でさえ、定常ドメインまたは定常領域において異なり、すなわち、少なくとも1つの改変を定常ドメインのいずれかにおいて含む。
【0061】
具体的な実施形態によれば、本発明の抗体は、8D5−1G10または8D10−C8と称される抗体を除くどのような他の抗体でもある。そのような抗体は具体的には、可変ドメイン(VH/VL)の1つまたは2つのみから構成されることが理解され、また、さらには本明細書中に記載されるような寄託されたVH/VL物によって定義される。しかしながら、8D5−1G10または8D10−C8と称される抗体の具体的な変化体が本願請求項の主題に特に含まれ、それらには、様々なタイプの全長抗体、Fab、scFvなどを含めて、CDR変化体、FR変化体、マウス変化体、キメラ変化体、ヒト化変化体またはヒト変化体、あるいは、どのような抗体ドメイン組合せであれ、VH/VL組合せの1つまたは2つから構成される組合せではない抗体ドメイン組合せが含まれるが、それらに限定されない。
【0062】
具体的な実施形態では、
図1に示され、さらには
図2において指定されるそれぞれの抗体のCDR配列および可変ドメインによって特徴づけられる4D5−D4(4D5)抗体または8A1−1G8(8A1)抗体が示され、この場合、そのような抗体は可変ドメインおよび定常ドメインを含み、例えば、全長抗体であり、また、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である。
【0063】
しかしながら、8D5−1G10または8D10−C8と称される抗体は、その機能的に活性な変化体を設計するための親抗体として使用される場合がある。具体的には、8D5−1G10または8D10−C8と称される抗体、あるいは、どのようなその機能的に活性な変化体もが、本明細書中に提供されるような配列を用いて組換え手段によって、必要な場合には、さらなる免疫グロブリン配列を、例えば、IgG抗体を製造するために用いて製造される場合がある。具体的には、8D5−1G10または8D10−C8と称されるそのような抗体の機能的に活性な変化体が、少なくとも1つのFR配列またはCDR配列の改変によって製造される場合がある。
【0064】
具体的な局面によれば、本発明は、多剤耐性(MDR)大腸菌菌株のO25b抗原に特異的に結合する単離されたモノクローナル抗体のなかで、抗体8D5−1G10の抗原結合部位を含む、あるいは、抗体8D5−1G10に由来する、または、抗体8D5−1G10の機能的に活性な変化体である単離されたモノクローナル抗体を提供し、ただし、好ましくは、この場合、抗体8D5−1G10は、
a)DSM26763で寄託される宿主細胞によって産生される抗体軽鎖の可変領域;および/または
b)DSM26762で寄託される宿主細胞によって産生される抗体重鎖の可変領域;
c)あるいは、(a)および/または(b)の機能的に活性な変化体が用いられること
によって特徴づけられる。
【0065】
具体的には、8D5−1G10と称される抗体は、DSM26763で寄託される大腸菌宿主細胞に含まれるプラスミドのコード配列によってコードされる可変領域を含む抗体軽鎖と、DSM26762で寄託される大腸菌宿主細胞に含まれるプラスミドのコード配列によってコードされる可変領域を含む抗体重鎖とから構成される。
【0066】
別の具体的な局面によれば、本発明は、O25a抗原およびO25b抗原によって共有されるエピトープと結合するために交差特異的であり、かつ、抗体8D10−C8の抗原結合部位を含む、あるいは、抗体8D10−C8に由来する、または、抗体8D10−C8の機能的に活性な変化体である単離されたモノクローナル抗体を提供し、ただし、好ましくは、この場合、抗体8D10−C8は、
a)DSM28171で寄託される宿主細胞によって産生される抗体軽鎖の可変領域;および/または
b)DSM28172で寄託される宿主細胞によって産生される抗体重鎖の可変領域;
c)あるいは、(a)および/または(b)の機能的に活性な変化体が用いられること
によって特徴づけられる。
【0067】
具体的には、8D10−C8と称される抗体は、DSM28171で寄託される大腸菌宿主細胞に含まれるプラスミドのコード配列によってコードされる可変領域を含む抗体軽鎖と、DSM28172で寄託される大腸菌宿主細胞に含まれるプラスミドのコード配列によってコードされる可変領域を含む抗体重鎖とから構成される。
【0068】
具体的には、抗体は、表1において列挙されるようなCDR配列のいずれかの機能的に活性なCDR変化体を含み、ただし、この場合、機能的に活性なCDR変化体は、
a)元のCDR配列における1つ、2つまたは3つの点変異;ならびに/あるいは
b)元のCDR配列の4つのC末端アミノ酸位置もしくは4つのN末端アミノ酸位置または4つの中心アミノ酸位置のいずれかにおける1つまたは2つの点変異;ならびに/あるいは
c)元のCDR配列との少なくとも60%の配列同一性
のうちの少なくとも1つを含む。
【0069】
具体的には、機能的に活性な変化体抗体は本発明の機能的に活性なCDR変化体の少なくとも1つを含む。具体的には、機能的に活性なCDR変化体の1つまたは複数を含む機能的に活性な変化体抗体は、親抗体と同じエピトープと結合するための特異性を有する。
【0070】
具体的には、機能的に活性な変化体はCDR変化体であり、例えば、少なくとも60%の配列同一性、好ましくは少なくとも70%、80%または90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するCDR(より具体的にはCDRループ配列)を含むCDR変化体である。
【0071】
具体的な局面によれば、上記少なくとも1つの点変異は、1つまたは複数のアミノ酸のアミノ酸置換、アミノ酸欠失および/またはアミノ酸挿入のいずれかである。
【0072】
具体的には、機能的に活性な変化体は、アミノ酸配列における、好ましくはCDRにおける少なくとも1つの点変異において親抗体とは異なり、ただし、この場合、CDRアミノ酸配列のそれぞれにおける点変異の数は、0、1、2または3のいずれかである。
【0073】
具体的には、抗体は、それぞれのCDR配列またはCDR変異体(機能的に活性なCDR変化体、例えば、1つ、2つまたは3つの点変異を1つのCDRループの中に、例えば、5アミノ酸〜18アミノ酸のCDR長さの中に、例えば、5アミノ酸〜15アミノ酸または5アミノ酸〜10アミノ酸のCDR領域の中に有する機能的に活性なCDR変化体を含む)を用いて、そのような抗体に由来する。代替において、機能的に活性なCDR変化体を含む抗体を提供するために、1つ〜2つの点変異が1つのCDRループの中に、例えば、5アミノ酸未満のCDR長さの中に存在する場合がある。具体的なCDR配列は短いかもしれず、例えば、CDR2配列またはCDR5配列であるかもしれない。具体的な実施形態によれば、機能的に活性なCDR変化体は、1つまたは2つの点変異を、4個未満または5個未満のアミノ酸からなるいずれかのCDR配列において含む。
【0074】
具体的な局面によれば、本発明の抗体はCDR配列およびフレームワーク配列を含み、ただし、この場合、CDR配列およびフレームワーク配列の少なくとも1つが、ヒト配列、ヒト化配列、キメラ配列、マウス配列または親和性成熟化配列を含み、好ましくは、フレームワーク配列はIgG抗体のものであり、例えば、IgG1サブタイプ、IgG2サブタイプ、IgG3サブタイプまたはIgG4サブタイプのものであり、あるいは、IgA1抗体、IgA2抗体、IgD抗体、IgE抗体またはIgM抗体のものである。
【0075】
具体的な抗体が、例えば、親抗体の製造性または耐容性を改善するために、例えば、親抗体と比較して、低い免疫原能を有する改善された(変異させられた)抗体(例えば、変異をCDR配列および/またはフレームワーク配列のいずれかに有するヒト化抗体など)を提供するために、フレームワーク変異抗体として提供される。
【0076】
さらなる具体的な抗体が、例えば、抗体の親和性を改善するために、および/または、親抗体によって標的化されるエピトープに近い同じエピトープ(1つまたは複数)を標的化するために(エピトープシフトするために)、CDR変異抗体として提供される。
【0077】
したがって、表1または
図2において列挙されるような抗体のどれもが、改良型を設計するための親抗体として使用される場合がある。
【0078】
具体的な局面によれば、本発明の抗体は、O25b抗原と10
−6M未満のKdにより、好ましくは10
−7M未満または10
−8M未満のKdにより結合するための親和性を有する。親和性成熟を受けた変化体は典型的には、O25b抗原と10
−8M未満のKdにより結合するための親和性を有する。
【0079】
具体的には、本発明の抗体は大腸菌のO25a抗原と比較してO25b抗原に優先的に結合し、または、少なくとも両方の抗原に対する同等の親和性により結合する。
【0080】
具体的な実施形態によれば、抗体は、O25b抗原と結合することについてはO25a抗原と比較して少なくとも2倍大きい親和性を有しており、具体的には、O25b抗原またはO25a抗原のいずれかと結合することにおける、例えば、親和性および/またはアビディティーでの差における少なくとも2倍の差、あるいは、少なくとも3倍の差、少なくとも4倍の差、少なくとも5倍の差、または、それどころか少なくとも10倍の差を有する。
【0081】
具体的な局面によれば、O25bに対する特異的な結合が、O25b抗原と結合することについては免疫アッセイ(好ましくは、免疫ブロッティング、ELISAまたは他の免疫学的方法)によって明らかにされるように、O25またはO25aの大腸菌菌株に対して惹起されるポリクローナル血清によってO25b抗原と結合することと比較してより大きい親和性によって特徴づけられる。このより大きい結合親和性は具体的には、少なくとも2倍の差、あるいは、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、または、それどころか少なくとも10倍の差を伴うものである。
【0082】
具体的には、本発明の抗体によって標的化されるようなO25b抗原は、ST131菌株の1つまたは複数において、より具体的にはST131菌株の大多数において広く認められている。
【0083】
具体的には、抗体によって認識されるエピトープが、被包性および非被包性のST131−O25b:H4菌株(例えば、変異菌株)の表面に存在する。
【0084】
さらなる具体的な局面によれば、抗体は、インビトロ殺菌能を、野生型MDR大腸菌の生菌株を含む血清サンプルにおいて示す。
【0085】
さらなる具体的な局面によれば、抗体は、食作用細胞による野生型MDR大腸菌の生菌株の取り込みをインビトロにおいて刺激する。
【0086】
さらなる具体的な局面によれば、抗体は、特異的なLPS分子の内毒素影響をインビトロにおいて中和する。
【0087】
具体的には、抗体は、全長モノクローナル抗体、抗原結合部位を取り込む少なくとも1つの抗体ドメインを含むその抗体フラグメント、または、抗原結合部位を取り込む少なくとも1つの抗体ドメインを含む融合タンパク質である。好ましくは、抗体は、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体、重鎖抗体、Fab抗体、Fd抗体、scFv抗体、および、VH、VHHまたはVLのような単一ドメイン抗体からなる群から選択され、好ましくはヒトIgG1抗体である。
【0088】
さらなる具体的な局面によれば、抗体は、全長モノクローナル抗体の結合部位、または、結合部位を取り込む少なくとも1つの抗体ドメインを含むその抗体フラグメントの結合部位を有しており、この場合、そのような抗体は好ましくは、マウス抗体、ラマ抗体、ウサギ抗体、ヤギ抗体、ウシ抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体、重鎖抗体、Fab抗体、Fd抗体、scFv抗体、および、VH、VHHまたはVLのような単一ドメイン抗体からなる群から選択される抗体であり、好ましくはヒトIgG抗体またはマウスIgG抗体である。
【0089】
本発明によれば、本発明の抗体は具体的には、医療、診断または分析での使用のために提供される。
【0090】
具体的な局面によれば、本発明の抗体は、大腸菌感染症(具体的にはMDR大腸菌菌株による感染症)の危険性がある対象、または、大腸菌感染症(具体的にはMDR大腸菌菌株による感染症)に罹患している対象を処置することにおける使用のために提供され、ただし、この場合、そのような使用は、対象における感染症を制限するために、または、前記感染症から生じる疾患状態を改善するために、好ましくは、腎盂腎炎、二次的菌血症、敗血症、腹膜炎、髄膜炎および人工呼吸器関連肺炎の処置または予防のために、効果的な量の抗体を対象に投与することを含む。
【0091】
したがって、本発明は具体的には、大腸菌感染症の危険性がある対象、または、大腸菌感染症に罹患している対象が、効果的な量の抗体を対象に投与することによって処置される処置方法を提供する。
【0092】
具体的には、抗体が、MDR大腸菌(好ましくはST131−O25b:H4菌株)の殺菌的死滅を、当該菌株によって発現される莢膜多糖に関係なく行うために提供される。
【0093】
具体的な局面によれば、本発明の抗体を使用する免疫療法は、例えば、様々な動物モデルにおいて明らかにされるように、生細菌攻撃からの効果的な保護をもたらす場合がある。
【0094】
抗体により、具体的には、致死的な内毒素血症が中和される場合がある。そのような機能的活性が、適切なインビボモデル(精製LPSによる免疫原投与)において明らかにされる場合がある。
【0095】
抗体は具体的には、例えば、インビトロでの血清殺菌アッセイ(SBA)によって明らかにされるように、例えば、(抗体が加えられないか、または、無関係なコントロールmAbが加えられる)コントロールサンプルよりも少なくとも20%大きい細菌殺傷を伴って、補体媒介殺傷によってMDR大腸菌に対して効果的である。
【0096】
抗体は具体的には、例えば、インビトロでのオプソニン作用殺傷アッセイ(OPK)によって明らかにされるように、例えば、(抗体が加えられないか、または、無関係なコントロールmAbが加えられる)コントロールサンプルよりも少なくとも20%大きい投入細菌の取り込みまたは20%小さい最終のCFUカウント数を伴って、抗体媒食作用によってMDR大腸菌に対して効果的である。
【0097】
抗体は具体的には、例えば、インビトロでのLALアッセイまたはtoll様受容体4(TLR4)レポーターアッセイによって明らかにされるように、例えば、(抗体が加えられないか、または、無関係なコントロールmAbが加えられる)コントロールサンプルとの比較でのエンドトキシン活性における少なくとも20%の低下を伴って、エンドトキシン機能を中和することによってMDR大腸菌に対して効果的である。
【0098】
本発明はさらに、本発明の抗体を含み、好ましくは非経口用配合物または粘膜用配合物を含み、場合により医薬的に許容されるキャリアまたは賦形剤を含有する医薬調製物を提供する。
【0099】
そのような医薬組成物は抗体を唯一の活性物質として、あるいは、他の活性物質との組合せで、または、活性物質のカクテル、例えば、少なくとも2つもしくは3つの異なる抗体の組合せもしくはカクテルなどとの組み合わせで含有する場合がある。
【0100】
具体的な局面によれば、本発明の抗体は、大腸菌菌株によって引き起こされる対象における大腸菌感染症または大腸菌菌血症を、具体的には、LPS O25bを発現するMDR菌株によって引き起こされる感染症を、例えば、上部尿路感染症および下部尿路感染症(膀胱炎または尿道炎、上行性または血行性の腎盂腎炎を含む)などをとりわけ糖尿病患者において、同様にまた、菌血症、敗血症、腹膜炎または腸管コロニー形成とともに明らかにするための診断使用のために提供される。
【0101】
具体的には、抗体が、対象におけるMDR大腸菌による全身的感染症が、前記対象の体液のサンプルを抗体と接触させることによってエクスビボで明らかにされる本発明による使用のために提供され、ただし、この場合、抗体の特異的な免疫反応により、感染症が明らかにされる。
【0102】
具体的には、体液のサンプルが、特異的な免疫反応について試験され、ただし、そのようなサンプルは、尿、血液、血液単離物または血液培養物、吸引物、痰、挿管された対象の洗浄液、および便からなる群から選択される。
【0103】
具体的には、本発明による診断使用は、大腸菌の血清型を臨床検体から回収される純粋な大腸菌培養物からインビトロにおいて決定することを示す。
【0104】
さらなる局面によれば、本発明は、本発明の抗体の診断用調製物であって、標識を伴う抗体および/または標識を伴うさらなる診断試薬(例えば、抗体、または、それぞれの標的抗原との抗体の免疫複合体を特異的に認識する試薬など)、ならびに/あるいは、抗体および診断試薬の少なくとも1つを固定化するための固相を必要に応じて含有する診断用調製物を提供する。
【0105】
本発明はさらに、本発明の抗体を含む診断用調製物であって、前記抗体およびさらなる診断試薬を組成物または部分品のキットにおいて含み、下記の成分:
a)前記抗体;および
b)前記さらなる診断試薬;
c)ならびに、必要な場合には、前記抗体および前記診断試薬の少なくとも1つを固定化するための固相
を含む診断用調製物を提供する。
【0106】
本発明はさらに、大腸菌菌株によって引き起こされる対象における大腸菌感染症または大腸菌菌血症を診断する方法であって、
a)本発明の抗体を提供すること、および
b)抗体がO25b抗原と特異的に免疫反応するかを、例えば、O25b抗原のみとの免疫反応によって、または、O25aおよびO25bと反応するための交差反応性免疫反応によって、試験される対象の生物学的サンプル(例えば、血液または血清)において、好ましくは凝集試験によって検出し、それにより、MDR大腸菌の感染症または菌血症を診断すること
を含む方法を提供する。
【0107】
対象の好適な生物学的サンプルが具体的には、血液、血清、血液単離物または血液培養物、尿、吸引物、痰、挿管された対象の洗浄液、および便からなる群から選択される場合がある。
【0108】
本発明の好ましい診断アッセイは、例えば、O25b抗原を発現する細菌の抗体による凝集、または、試験されるサンプルから得られる遊離状態の(または単離された)O25b抗原による凝集を試験するために固相(例えば、ラテックスビーズ、金粒子など)に固定化された本発明の抗体を含む。
【0109】
いくつかの診断アッセイでは、O25bおよび/またはO25aと結合するための異なる特異性および/または親和性を有し、したがって、O25b抗原とO25a抗原とを識別するかもしれない2つの異なる抗体が伴う場合がある。
【0110】
具体的な局面によれば、本発明は、大腸菌(具体的にはMDR大腸菌)による対象の感染症を本発明の診断剤または本発明の診断方法によって明らかにして、そのような感染症に対する治療剤による処置、例えば、免疫療法(例えば、本発明の抗体により処置することなど)を用いる処置の基礎を提供するためのコンパニオン診断剤を提供する。
【0111】
具体的な局面によれば、本発明は、遊離状態のLPSを、例えば、生細菌の量が限定される臨床検体から明らかにすることによって、MDR大腸菌(具体的にはMDR大腸菌)による対象の感染症を診断するための高感度なベッドサイド診断剤を提供する。そのようなアッセイの感度は具体的には、100ng未満のLPSであり、好ましくは10ng未満のLPSである。
【0112】
本発明はさらに、本発明の抗体をコードする単離された核酸を提供する。
【0113】
本発明はさらに、
a)本発明の抗体のVHおよび/またはVL;あるいは
b)あるいは本発明の抗体のHCおよび/またはLC
を発現させるためのコード配列を含む発現カセットまたはプラスミドを提供する。
【0114】
本発明はさらに、本発明の発現カセットまたはプラスミドを含む宿主細胞を提供する。
【0115】
具体的には、DSM26763またはDSM26762で寄託されるプラスミドおよび宿主細胞は除外される。そのような寄託物は、プラスミドにより形質転換された大腸菌宿主細胞であり、この場合、DSM26763で寄託された宿主細胞は、8D5−1G10−LCと称される抗体軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含むプラスミドにより形質転換され、一方、DSM26762で寄託された宿主細胞は、8D5−1G10−HCと称される抗体重鎖をコードするヌクレオチド配列を含むプラスミドにより形質転換される。
【0116】
具体的には、さらに除外されるものが、DSM28171またはDSM28172で寄託されるプラスミドおよび宿主細胞である。そのような寄託物は、プラスミドにより形質転換された大腸菌宿主細胞であり、この場合、DSM28171で寄託された宿主細胞は、8D10−C8−LCと称される抗体軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含むプラスミドにより形質転換され、一方、DSM28172で寄託された宿主細胞は、8D10−C8−HCと称される抗体重鎖をコードするヌクレオチド配列を含むプラスミドにより形質転換される。
【0117】
本発明はさらに、発明の抗体を製造する方法であって、本発明の宿主細胞が、前記抗体を産生させるための条件のもとで培養または維持される方法を提供する。
【0118】
さらなる局面によれば、本発明は、本発明の抗体を製造する方法であって、
a)ヒト以外の動物を大腸菌のO25b抗原により免疫化し、抗体を産生するB細胞を単離すること;
b)不死化された細胞株を単離されたB細胞から形成すること;
c)細胞株をスクリーニングして、O25b抗原および場合によりO25a抗原に特異的に結合するモノクローナル抗体を産生する細胞株を特定すること(例えば、O25aと比較して、O25bに対する優先的な結合が明らかにされる);および
d)前記モノクローナル抗体または該抗体のヒト化形態もしくはヒト形態、あるいは、前記モノクローナル抗体と同じエピトープ結合特異性を有するそれらの誘導体を製造すること
を含む方法を提供する。