(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6590425
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】軽金属射出成形機の射出装置およびその射出制御方法
(51)【国際特許分類】
B22D 17/32 20060101AFI20191007BHJP
B22D 17/30 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
B22D17/32 A
B22D17/32 H
B22D17/30 E
【請求項の数】16
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-189978(P2018-189978)
(22)【出願日】2018年10月5日
【審査請求日】2019年3月22日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
(72)【発明者】
【氏名】藤川 操
【審査官】
坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2018−089675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/32
B22D 17/30
B29C 45/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給ユニットの中の軽金属材料の溶湯を連通路を通して射出ユニットの中に供給して、前記射出ユニットの中に有するプランジャを後退させて前記射出ユニットの中に所定の容量の前記溶湯を計量して、前記連通路を閉じて、前記プランジャを前進させて前記射出ユニットの中の前記溶湯を前記射出ユニットに有する射出ノズルを通して金型装置の中に射出して成形品を得ることを繰り返し行なう軽金属射出成形機の射出装置の射出制御方法であって、
毎回あるいは複数回に1回の頻度で、前記溶湯を射出したあと前記溶湯を計量する前に、前記射出ユニットの中の前記溶湯が前記射出ノズルから出ない圧力で前記プランジャを前進させて、開いた前記連通路を通して前記射出ユニットの中の少なくとも一部の前記溶湯を前記供給ユニットの中に逆流させることを特徴とする軽金属射出成形機の射出装置の射出制御方法。
【請求項2】
前記溶湯を逆流させる前に、前記プランジャを後退させて、前記供給ユニットの中から前記射出ユニットの中に前記連通路を通して前記溶湯を補充することを特徴とする請求項1に記載の軽金属射出成形機の射出装置の射出制御方法。
【請求項3】
前記溶湯を逆流させたあと、前記プランジャを後退させて、前記供給ユニットの中から前記射出ユニットの中に前記連通路を通して前記溶湯を補充して再び前記溶湯を逆流させることを少なくとも1回行い、そのあと前記溶湯を計量することを特徴とする請求項1に記載の軽金属射出成形機の射出装置の射出制御方法。
【請求項4】
計量時の前記溶湯の前記所定の容量を超えて前記射出ユニットの中に前記溶湯を補充して、前記射出ユニットの中に前記所定の容量の前記溶湯を残して前記溶湯を逆流させて計量することを特徴とする請求項2または3に記載の軽金属射出成形機の射出装置の射出制御方法。
【請求項5】
前記連通路を閉じるときに、弁棒の内部を流れる冷却媒体で前記弁棒を冷却し、前記弁棒の周囲に前記溶湯の半固化物を生成し、前記連通路の供給ユニット側開口の周囲に形成される弁座に前記弁棒を着座させて前記連通路を閉じて、前記弁座と前記弁座に着座している前記弁棒の間を前記半固化物でシールし、前記連通路を開くときに、前記弁座と前記弁棒の間を前記連通路の内径の20%以下の距離を離して開き、逆流する前記溶湯で前記弁座と前記弁棒の間の前記半固化物を排除することを特徴とする請求項1に記載の軽金属射出成形機の射出装置の射出制御方法。
【請求項6】
前記所定の容量を計量したときの前記プランジャの計量位置を検出し、前記計量位置から所定の圧力で前進したときの前記プランジャの前進位置を検出することを特徴とする請求項1に記載の軽金属射出成形機の射出装置の射出制御方法。
【請求項7】
軽金属材料の溶湯を供給する供給ユニットと、
前進後退するプランジャを内蔵しかつ射出ノズルが接続された射出ユニットと、
前記供給ユニットと前記射出ユニットを連結し、前記供給ユニットの中と前記射出ユニットの中を連通する連通路が形成されている連結部材と、
前記連通路を開閉する逆流防止装置と、
前記供給ユニットと前記射出ユニットと前記逆流防止装置を制御して、前記供給ユニットの中の前記溶湯を前記連通路を通して前記射出ユニットの中に供給し、前記プランジャを後退させて前記射出ユニットの中に所定の容量の前記溶湯を計量し、前記連通路を閉じ、前記プランジャを前進させて前記射出ユニットの中の前記溶湯を前記射出ノズルを通して金型装置の中に射出して成形品を得ることを繰り返し行う、一連の制御を行うとともに、毎回あるいは複数回に1回の頻度で、前記溶湯を射出したあと前記溶湯を計量する前に、前記射出ユニットの中の前記溶湯が前記射出ノズルから出ない圧力で前記プランジャを前進し、開いた前記連通路を通して前記射出ユニットの中の少なくとも一部の前記溶湯を前記供給ユニットの中に逆流させる、一連の制御を行う射出制御ユニットと、
を備えることを特徴とする軽金属射出成形機の射出装置。
【請求項8】
前記射出制御ユニットが、前記溶湯を逆流させる前に、前記プランジャを後退させて、前記溶融ユニットの中から前記射出ユニットの中に前記連通路を通して前記溶湯を補充する、一連の制御を行うことを特徴とする請求項7に記載の軽金属射出成形機の射出装置。
【請求項9】
前記射出制御ユニットが、前記溶湯を逆流させたあと、前記プランジャを後退させて、前記供給ユニットの中から前記射出ユニットの中に前記連通路を通して前記溶湯を補充して再び前記溶湯を逆流させることを少なくとも1回行い、そのあと前記溶湯を計量する、一連の制御を行うことを特徴とする請求項7に記載の軽金属射出成形機の射出装置。
【請求項10】
前記射出制御ユニットが、計量時の前記溶湯の前記所定の容量を超えて前記射出ユニットの中に前記溶湯を補充して、前記射出ユニットの中に前記所定の容量の前記溶湯を残して前記溶湯を逆流させて計量する、一連の制御を行うことを特徴とする請求項8または9に記載の軽金属射出成形機の射出装置。
【請求項11】
前記逆流防止装置が、前記連通路の供給ユニット側開口の周囲に形成される弁座と、前記弁座に着座して前記連通路を閉じてかつ前記弁座から離れることで前記連通路を開く弁棒と、前記弁棒を駆動する弁棒駆動装置と、前記弁棒の中に設けられて冷却媒体を流す冷却配管と、を備えて、
前記射出制御ユニットが、前記連通路を閉じるときに、前記冷却配管を流れる前記冷却媒体で前記弁棒を冷却し、前記弁棒の周囲に前記溶湯の半固化物が生成させ、前記弁座に前記弁棒を着座させて前記連通路を閉じて、前記弁座と前記弁座に着座している前記弁棒の間を前記半固化物でシールし、前記連通路を開くときに、前記弁座と前記弁棒の間を前記連通路の内径の20%以下の距離を離して開き、逆流する前記溶湯で前記弁座と前記弁棒の間の前記半固化物を排除する、一連の制御を行うことを特徴とする請求項7に記載の軽金属射出成形機の射出装置。
【請求項12】
前記射出ユニットが、前記所定の容量を計量したときの前記プランジャの計量位置と、前記計量位置から所定の圧力で前進したときの前記プランジャの前進位置とを検出する位置検出器を備えることを特徴とする請求項7に記載の軽金属射出成形機の射出装置。
【請求項13】
前記供給ユニットが、外部から供給される未溶融の前記軽金属材料を内部で前記溶湯に溶融し、前記溶湯を前記連通路を通して前記射出ユニットに供給する溶融ユニットであることを特徴とする請求項7に記載の軽金属射出成形機の射出装置。
【請求項14】
前記溶融ユニットが、外部から供給される前記未溶融の軽金属材料を内部で前記溶湯に溶融しかつ前記溶湯を前記連通路を通して前記射出ユニットに供給する溶融シリンダと、前記溶融シリンダに接続されて当該溶融シリンダの中の余剰の前記溶湯を収容し、収容した前記溶湯の上方を不活性ガス雰囲気にする不活性ガス貯留部とを備える請求項13記載の軽金属射出成形機の射出装置。
【請求項15】
前記溶融ユニットが、水平方向に横長で、先端側に前記連通路が接続され、後端側に前記未溶融の軽金属材料が供給される溶融炉と、前記溶融炉の前記後端から前記先端に延び少なくとも前記先端と前記後端の両端を除いた内部を仕切る仕切板と、前記仕切板の周囲を循環するように前記溶湯を攪拌する攪拌装置とを備える請求項13に記載の軽金属射出成形機の射出装置。
【請求項16】
前記供給ユニットが、外部から供給される前記溶湯を前記射出ユニットに供給することを特徴とすることを特徴とする請求項7に記載の軽金属射出成形機の射出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給ユニットの中の軽金属材料の溶湯を連通路を通して射出ユニットに供給し、そして、射出ユニットの中の溶湯を射出ノズルを通して金型装置の中に射出する軽金属射出成形機の射出装置およびその射出制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軽金属射出成形機の射出装置は、供給ユニットの中の軽金属材料の溶湯を射出ユニットの中に供給し、射出ユニットの中の溶湯を金型の中に射出する。供給ユニットは、外部から溶湯が供給される。供給ユニットは、外部から供給される未溶融の軽金属材料を溶湯に溶融し、溶湯を射出ユニットの中に供給する溶融ユニットも含まれる。
【0003】
特許文献1の射出成形機は、前述の溶融ユニットに相当する溶融装置と前述の射出ユニットに相当する射出部を有する。溶融装置は、溶融シリンダと、溶融シリンダの中に不活性ガスを供給する不活性ガス供給装置とを有する。射出部は、射出シリンダと、射出シリンダの中を進退するプランジャと、射出シリンダの先端に射出ノズルとを有する。溶融装置と射出部は、連結部材で連結されている。溶融シリンダの中と射出シリンダの中は、連結部材に有する連通路で連通されている。連通路は、逆流防止装置で開閉する。溶融シリンダ、射出シリンダ、連結部材および射出ノズルは、外周にヒータが巻き回されて加熱される。
【0004】
溶融シリンダは、外部から供給される軽金属材料を前述の溶湯に相当する溶融材料に溶融して、溶融材料を連通路を通して射出シリンダに供給する。このとき、逆流防止装置は、連通路を開いている。不活性ガス供給装置は、溶融シリンダの中の溶融材料の上方に不活性ガスを供給する。溶融シリンダの中の溶融材料は、不活性ガス供給装置から供給される不活性ガスで液面の上方が覆われている。
【0005】
射出シリンダは、プランジャを後退させて溶融シリンダから供給される溶融材料を計量する。逆流防止装置は、計量が完了すると連通路を閉じる。射出シリンダは、プランジャを前進させて、射出ノズルを通して金型の中のキャビティ空間に溶融材料を射出する。溶融材料は、金型装置の中で冷却されて所望の成形品に固化する。
【0006】
逆流防止装置は、弁棒と、弁棒を駆動する弁棒駆動装置とを有する。弁棒は、溶融シリンダの中を通り、溶融シリンダの中の弁座に着座する。弁座は、溶融シリンダのシリンダ孔の内周面上に開口する連通路の溶融シリンダ側開口の周囲に形成されている。
【0007】
特許文献2の軽金属射出成形機の射出装置の逆流防止装置は、弁棒と、弁棒を駆動する弁棒駆動装置と、弁棒の中に冷却流体を流動させる2重のパイプと、を有する。前述の弁座に相当するシール座は、射出シリンダの内孔面に開口する連通路の射出シリンダ側開口の周囲に形成されている。弁棒は、射出シリンダの中を通り、射出シリンダの中のシール座に着座する。
【0008】
弁棒の中の2重のパイプは、弁棒の先端だけを冷却するために弁棒の先端以外の部分が断熱材で覆われている。弁棒は、冷却される先端の周りに溶融材料が半ば固化した半固化物が付着する。半固化物は、弁棒がシール
座に着座する際に、弁棒とシール材の間に倣って隙間を埋めて、より効果的に溶融材料の逆流を防止する。半固化物は、冷却媒体が流れていなければ、周囲の溶融材料によって加熱されて溶融される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第6300882号公報
【特許文献2】特開2005−199335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
射出シリンダの中にわずかに残るガスは、溶湯と一緒に金型装置の中に射出される際に、金型装置に有するエアベントから金型装置の外に排出される。しかしながら、排出されなかったわずかなガスは、成形品の中に巣を形成する原因となる。したがって、射出シリンダの中は、できる限りガスを残留させないことが望まれる。
【0011】
また別の課題として、連通路を閉じる際に、弁座と当該弁座に着座した弁棒との間の隙間を溶湯の半固化物で埋めている場合において、連通路を開く際に、弁座から弁棒を離しても、即座に半固化物が溶融することなく、半固化物が連通路の開口をしばらく塞ぎ、連通路の中の溶湯の流れを悪くする原因となる。したがって、弁座から弁棒を離した直後に弁座に付着して残る半固化物は、できる限り除去されることが望まれる。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みて、射出シリンダの中にわずかなに残留するガスを溶融シリンダの中に排出して、成形品の中に発生する巣を防止して、さらに、連通路を開いた直後から十分な流量で速やかに溶融シリンダから射出シリンダに溶湯を供給することを可能にする軽金属射出成形機の射出装置およびその射出制御方法を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の軽金属射出成形機の射出装置の射出制御方法は、上記課題を解決するために、供給ユニット(2)の中の軽金属材料の溶湯を連通路(40)を通して射出ユニット(3)の中に供給して、前記射出ユニットの中に有するプランジャ(32)を後退させて前記射出ユニットの中に所定の容量の前記溶湯を計量して、前記連通路を閉じて、前記プランジャを前進させて前記射出ユニットの中の前記溶湯を前記射出ユニットに有する射出ノズル(35)を通して金型装置(8)の中に射出
して成形品を得る
ことを繰り返し行う軽金属射出成形機の射出装置(1)の射出制御方法であって、
毎回あるいは複数回に1回の頻度で、前記溶湯を射出したあと前記溶湯を計量する前に、前記射出ユニットの中の前記溶湯が前記射出ノズルから出ない圧力で前記プランジャを前進させて、開いた前記連通路を通して前記射出ユニットの中の少なくとも一部の前記溶湯を前記供給ユニットの中に逆流させることを特徴とする。
【0014】
本発明の軽金属射出成形機の射出装置は、上記課題を解決するために、軽金属材料の溶湯を供給する供給ユニット(2)と、前進後退するプランジャ(32)を内蔵しかつ射出ノズル(35)が接続された射出ユニット(3)と、前記供給ユニットと前記射出ユニットを連結し、前記供給ユニットの中と前記射出ユニットの中を連通する連通路(40)が形成されている連結部材(4)と、前記連通路を開閉する逆流防止装置(5)と、前記供給ユニットと前記射出ユニットと前記逆流防止装置を制御して、前記供給ユニットの中の前記溶湯を前記連通路を通して前記射出ユニットの中に供給し、前記プランジャを後退させて前記射出ユニットの中に所定の容量の前記溶湯を計量し、前記連通路を閉じ、前記プランジャを前進させて前記射出ユニットの中の前記溶湯を前記射出ノズルを通して金型装置(8)の中に射出
して成形品を得る
ことを繰り返し行う、一連の制御を行うとともに、
毎回あるいは複数回に1回の頻度で、前記溶湯を射出したあと前記溶湯を計量する前に、前記射出ユニットの中の前記溶湯が前記射出ノズルから出ない圧力で前記プランジャを前進し、開いた前記連通路を通して前記射出ユニットの中の少なくとも一部の前記溶湯を前記供給ユニットの中に逆流させる、一連の制御を行う射出制御ユニット(70)と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の軽金属射出成形機の射出装置およびその射出制御方法は、成形品に形成される巣の発生を防止して、さらに射出ユニットに速やかに溶湯を供給することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の軽金属射出成形機の射出装置の基本的な構成を示す概略図である。
【
図2】溶湯を計量したときの本発明の射出装置を示す概略図である。
【
図3】溶湯を金型装置に射出したときの本発明の射出装置を示す概略図である。
【
図4】金型装置を開いて成形品が取り出されたときの本発明の射出装置を示す概略図である。
【
図5】射出したあとにプランジャを前進させて溶湯を逆流させたときの本発明の射出装置を示す概略図である。
【
図6】射出したあとにプランジャを後退させて溶湯を補充したときの本発明の射出装置を示す概略図である。
【
図7】溶湯を補充したあと、溶湯を逆流させたときの本発明の射出装置を示す概略図である。
【
図8】溶湯を逆流させたあと、溶湯を計量したときの本発明の射出装置を示す概略図である。
【
図9】射出したあとにプランジャを後退させて計量される容量よりも大きな容量の溶湯を補充したときの本発明の射出装置を示す概略図である。
【
図10】計量される容量よりも大きな容量の溶湯を補充したあと、計量される溶湯を残して溶湯を逆流させたときの本発明の射出装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の軽金属射出成形機の射出装置1は、基本的な構成が
図1で示される。本発明の軽金属射出成形機の射出装置1の射出制御方法は、基本的な射出装置1の動作が
図2ないし
図7で示される。
図1は、射出装置1を示す。
図2は、溶湯を計量したときの射出装置1を示す。
図3は、溶湯を金型装置8に射出したときの射出装置1を示す。
図4は、金型装置8を開いて成形品9が取り出されたときの射出装置1を示す。
図5は、射出したあと、プランジャ32を前進させて溶湯を逆流させたときの射出装置1を示す。
図6は、射出したあと、プランジャ32を後退させて溶湯を補充したときの射出装置1を示す。
図7は、溶湯を補充したあと、溶湯を逆流させたときの射出装置1を示す。
図8は、溶湯を逆流させたあと、溶湯を計量したときの射出装置1を示す。
図9は、射出したあとにプランジャ32を後退させて計量される容量よりも大きな容量の溶湯を補充したときの射出装置1を示す。
図10は、計量される容量よりも大きな容量の溶湯を補充したあと、計量される溶湯を残して溶湯を逆流させたときの射出装置1を示す。
【0018】
軽金属射出成形機は、射出装置1と、型締装置と、それらを制御する制御装置7とを有する。射出装置1および制御装置7は、
図1で示される。型締装置は、図示省略される。型締装置は、金型装置8を搭載する。金型装置8は、図示省略される。金型装置8は、型締装置によって開閉および型締めされる。制御装置7は、射出装置1を制御する射出制御ユニット70を含む。なお、各種装置を駆動する駆動源は、詳しい説明を省略するが、油圧式、空圧式または電動式などの各種方式の駆動源が適宜使用されている。
【0019】
軽金属射出成形機は、型締装置で金型装置8を閉じ、さらに金型を締め付けて、射出装置1で金型装置8の中のキャビティ空間に向けて軽金属材料の溶湯を射出して充填し、金型装置8の中で溶湯を冷やして固めたあと、型締装置で金型装置8を開いて成形品9を取り出す。
【0020】
軽金属射出成形機は、成形材料が軽金属材料である射出成形機に適する構造を有する。本発明における軽金属材料は、比重が4以下の金属をいう。実用上は、特に、アルミニウムとマグネシウムが成形材料として有効である。成形材料がアルミニウムの場合、溶損しないように、成形材料と接触する部位は、基本的にサーメット系の材料で被覆されている。
【0021】
図1に示す射出装置1は、供給ユニット2と射出ユニット3を有する。供給ユニット2は、射出ユニット3に溶湯を供給する。供給ユニット2は、溶融ユニット2を一例にして、以下説明される。溶融ユニット2は、溶融シリンダ20を有する。射出ユニット3は、射出シリンダ30を有する。溶融シリンダ20と射出シリンダ30は、連結部材4で連結されている。溶融シリンダ20の中と射出シリンダ30の中は、連結部材4に形成されている連通路40で連通されている。連通路40は、逆流防止装置5で開閉されている。射出シリンダ30と溶融シリンダ20と連結部材4は、外周にヒータが巻き回されている。
【0022】
図1に示す溶融ユニット2は、ビレット押出装置23を有する。ビレット押出装置23は、所定の長さの丸棒の軽金属材料(以下、ビレット22と称する。)を順番に溶融シリンダ20の中に押し込む。溶融シリンダ20は、射出シリンダ30の上方に水平に設置されている。連結部材4は、溶融シリンダ20の先端側の下部に接続されている。連通路40の溶融シリンダ側開口40aは、溶融シリンダ20のシリンダ孔の先端側でかつ当該シリンダ孔の下部に開口している。ビレット22は、ヒータで加熱されている溶融シリンダ20の中を前進するにしたがい温度が上昇して、溶融シリンダ20の前半部分を越えたあたりから溶融を開始する。ビレット22は、前進することで溶融する前の軟化した部分が拡径する。ビレット22の拡径部は、溶融シリンダ20のシリンダ孔に摺動可能に当接して、溶融シリンダ20とビレット22の間をシールする。ビレット22は、前進することで溶融シリンダ20の中の溶湯を前に押し出す。溶融シリンダは、先端側を下方に後端側を上方にして、斜めに設けられてもよい。
【0023】
溶融シリンダ20のシリンダ孔の内径は、後端部がその他の部分よりも小さくかつビレット22の外径よりも大きく形成されている。溶融シリンダ20は、後端部に縮径部21を有する。縮径部21の内径は、溶融シリンダ20のシリンダ孔の内径よりも小さくかつビレット22の外径よりも大きく形成されている。溶融シリンダ20と縮径部21は、一体に形成されてもよい。
【0024】
溶融シリンダ20は、後端部のヒータの温度が制御されて、縮径部21とビレット22の間に溶湯のある程度に軟化した状態にあって溶湯のバックフローを防止する程度に固化した固化物であるシール部材を生成する。シール部材は、溶融シリンダ20の後端部とビレット22の間をシールして、溶湯のもれを防止する。シール部材は、溶融シリンダ20とビレット22の間の摩擦を小さくしてビレット22の円滑な移動を可能にする。シール部材は、縮径部21の内周面に形成される
環状溝または溶融シリンダ20のシリンダ孔と縮径部21の間の段差に引っかかることで溶湯の圧力を受けても溶融シリンダ20の後端部から抜け出ない。
【0025】
また、
図1に示す溶融シリンダ20は、不活性ガス貯留部60を有する。不活性ガス貯留部60は、水平に設置された溶融シリンダ20の先端側の上部に設けられて、溶融シリンダ20の中に連通している。不活性ガス貯留部60は、溶融シリンダ20の中の余剰の溶湯を収容して、その収容した溶湯の上方を不活性ガス雰囲気にする。不活性ガス貯留部60は、不活性ガス供給口60aと不活性ガス排出口60bを有する。不活性ガス供給口60aは
、不活性ガス供給装置6に接続されている。不活性ガス排出口60bは、リリーフバルブを通して外部に連通されている。リリーフバルブは、不活性ガス貯留部の中の不活性ガスの圧力を一定に維持するために、所定の圧力を超えるとバルブを開いて不活性ガスを外に排出する。不活性ガス供給装置6は、不活性ガス貯留部の中に常時または適時に所望の流量で不活性ガスを供給する。
【0026】
不活性ガス貯留部60は、溶融シリンダ20の中、射出シリンダ30の中および連通路40の中に侵入した不活性ガスや空気などの各種ガスが集まる。不活性ガス貯留部60は、所定の圧力の不活性ガスの雰囲気が維持されていて、常時または適時に不活性ガスが供給されて、空気などのガスを外に排出される。不活性ガスは、例えば、アルゴンガス(Ar)が好ましい。アルゴンガスは、空気よりも比重が重い。不活性ガス貯留部60の中の溶湯は、液面センサ25で液面の高さが検出されるとよい。不活性ガス貯留部60は、溶融シリンダ20の中の余剰の溶湯を収容可能であれば、1ショット分に満たない容量から複数ショット分の容量まで必要とされる容量が収容可能に設計されている。
【0027】
図1に示す射出ユニット3は、
射出シリンダ
30と射出ノズル35とプランジャ32を有する。射出シリンダ30は、溶融シリンダ20の下方に水平に配置されている。射出ノズル35は、射出シリンダ30の先端に設けられている。プランジャ32は、プランジャ駆動装置33で前進または後退する。連結部材4は、射出シリンダ30の先端側の上部に接続されている。連通路40の射出シリンダ側開口40bは、射出シリンダ30のシリンダ孔の先端側でかつ当該シリンダ孔の上部に開口している。
【0028】
射出シリンダ30のシリンダ孔の内径は、後端部がその他の部分よりも小さくかつプランジャ32の外
径よりも大きく形成されている。射出シリンダ30は、後端部に縮径部31を有する。縮径部31の内径は、射出シリンダ30のシリンダ孔の内径よりも小さくかつプランジャ32の外径よりも大きく形成されている。射出シリンダ30と縮径部31は、一体に形成されてもよい。
【0029】
射出シリンダ30は、後端部のヒータの温度が制御されて、縮径部31とプランジャ32の間に溶湯のある程度に軟化した状態にあって溶湯のバックフローを防止する程度に固化した固化物であるシール部材が生成されている。シール部材は、射出シリンダ30の後端部とプランジャ32の間をシールして、溶湯のもれを防止する。シール部材は、射出シリンダ30とプランジャ32の間の摩擦を小さくしてプランジャ32の円滑な移動を可能にする。シール部材は、縮径部31の内周面に形成される
環状溝または射出シリンダ30のシリンダ孔と縮径部31の間の段差に引っかかることで溶湯の圧力を受けても射出シリンダ30の後端部から抜け出ない。
【0030】
図1に示す逆流防止装置5は、弁棒50を有する。弁棒50は、不活性ガス貯留部60の上部に有する弁棒駆動装置51によって不活性ガス貯留部60を通して弁座41に対して前進または後退する。弁座41は、供給ユニット2の中に開口する連通路40の供給ユニット側開口の周囲に形成される。例えば、弁座41は、溶融シリンダ20の中に開口する連通路40の溶融シリンダ側開口40aの周囲に形成される。弁棒50は、溶融シリンダ20の中で弁座41に着座する。弁棒50は、下降して弁座41に着座して連通路40を閉じ、上昇して弁座41から離れて連通路40を開く。弁棒50は、射出圧力に抗して弁座41に着座して、連通路40を閉じる。弁棒50は、弁棒50の先端を冷却するために内部に冷却媒体を通す冷却配管50aを有してもよい。例えば、弁棒50は、弁座41に着座する直前に先端部が冷却されて、先端部の周囲に溶湯がある程度軟化した状態の固化物を形成してもよい。弁棒50先端の固化物は、弁棒50が弁座41に着座する際に弁座41に倣って変形して、弁棒50と弁座41の間の隙間を無くすことで流動性が高い溶湯のもれをさらに防止することができる。弁棒50先端の固化物は、弁座41と弁棒50がお互いに当接する面の面粗度が粗くとも高いシール性能を維持できる。弁棒50先端の固化物は、弁棒50を弁座41に押し付ける圧力が小さくても十分なシール性能を実現できるので弁座41と弁棒50の耐久性が良くなる。
【0031】
図1に示す実施の形態の射出装置1は、基本的に装置内に溶湯が密閉されている。射出装置1は、射出シリンダ30の中で後退するプランジャ32に合わせて、溶融シリンダ20の中から射出シリンダ30の中に連通路40を通して移動した溶湯の分を補うために、例えば、溶融シリンダ20の中にビレット22が供給されるか、または、不活性ガス貯留部60の中に不活性ガスが供給される。例えば、溶融シリンダ20の中から射出シリンダ30の中に補充または計量される溶湯は、溶融シリンダ20と射出シリンダ30の間の高低差によって溶融シリンダ20の中から射出シリンダ30の中に自重で落下する。また例えば、溶湯は、射出シリンダ30の中で後退するプランジャ32によって溶融シリンダ20の中から吸引される。また例えば、溶湯は、溶融シリンダ20の中に連通する不活性ガス貯留部60の中に供給される不活性ガスの圧力で射出シリンダ30の中に押し出される。また例えば、溶湯は、溶融シリンダ20の中を前進するビレット22で射出シリンダ30の中に押し出される。
【0032】
図1に示す射出制御ユニット70は、射出装置1をつぎのように制御する。最初に溶融シリンダ20の中を溶湯で満たすための制御を行う。逆流防止装置5が連通路40を閉じる。ビレット押出装置23が未溶融のビレット22を溶融シリンダ20の中に供給する。溶融シリンダ20の中でビレット22が溶湯に溶融される。溶融シリンダ20は、シリンダの中に1ショット分よりも多く、成形サイクルの時間に応じた十分な容量の溶湯が貯められるとよい。溶融シリンダ20は、1ショット分が同じ容量でも1回の成形サイクルの時間が短い場合の方が長い場合よりも大きな容量の溶湯が貯められるとよい。溶融シリンダ20に連通する不活性ガス貯留部60は、射出シリンダ30の中から溶融シリンダ20の中に逆流する溶湯を収容する十分な空間を有し、溶湯の上方が不活性ガスで満たされている。不活性ガス貯留部60は、後述されるように、射出シリンダ30の中に溶湯を補充するために、予め溶湯を収容しておくこともできる。
【0033】
つぎに成形サイクルのための制御が行われる。1回の成形サイクルは、つぎの通りである。
図2に示すように型締装置が金型装置8を閉じる。閉じた金型装置8を型締装置がさらに締め付ける。逆流防止装置5が連通路40を開く。ビレット22を前進させて溶融シリンダ20の中の溶湯が連通路40を通して射出シリンダ30の中に供給される。プランジャ32が後退する位置を図示省略される位置検出器で検知して射出シリンダ30の中に所定の溶湯が計量される。このとき射出ノズル35の先端は、溶湯が冷えて固化したコールドプラグ35aで封止されている。
図3に示すように、逆流防止装置5が連通路40を閉じる。プランジャ32が所定の位置まで前進して射出シリンダ30の中の計量された溶湯を射出する。溶湯は、射出ノズル35を通して型締めされた金型装置8のキャビティ空間の中に大きな射出圧力で射出される。このとき、コールドプラグ35aも一緒に射出される。溶湯は、キャビティ空間の中に射出されると速やかに固化する。必要に応じてキャビティ空間のゲート部分の溶湯が固化するまで、または、コールドプラグ35aが生成されるまで射出シリンダ30の中に残る溶湯を介してプランジャ32がキャビティ空間の中の溶湯に所定の保持圧力を付与してもよい。
図4に示すように、プランジャ32の前進を停止して、射出圧力または保持圧力を減圧する。型締装置が金型装置8を開く。開いた金型装置8から成形品9を取り出す。成形サイクルは、繰り返し行われる。なお、前進したビレット22は、溶融シリンダ20の中の前半部分に到達した部分から溶湯に溶融される。
【0034】
コールドプラグ35aは、射出ノズル35の中の溶湯が射出ノズル35の先端部分で冷えて固化することで生成される固化物である。射出ノズル35は、ヒータで加熱されている。射出ノズル35の先端部分は、ヒータの温度制御によって所定のタイミングで温度を上げ下げすることができる。また射出ノズル35の先端部分は、金型装置8に当接すると金型装置8に熱を奪われて温度が下がる。コールドプラグ35aは、溶湯が金型装置8に射出される際の大きな射出圧力で射出ノズル35から抜け出て、溶湯と一緒に金型装置8の中に射出される。
図2に示すように、金型装置8のキャビティ空間は、製品の部分とは異なる部分にコールドプラグ35aを収容するコールドスラグウェルが形成されている。なお、射出ノズル35を開閉する手段は、コールドプラグ35aを使って開閉する手段が好ましいが、ノズル先を蓋部材で開閉する機構、あるいは、流路途中をバルブで開閉する機構など、各種機構を採用してもよい。
【0035】
ここからは、本発明の特有の構成が説明される。
図1に示す射出制御ユニット70は、繰り返される成形サイクルの中で毎回あるいは複数回に1回の頻度で、プランジャ32の前進を停止して射出圧力または保持圧力を減圧してから新たに溶湯を計量する前までの間に射出装置1をつぎのように制御する。
図5に示すように、射出装置1は、連通路40を開き、プランジャ32を前進させて射出シリンダ30の中の少なくとも一部の溶湯を連通路40を通して溶融シリンダ20の中に逆流させる。プランジャ32は、コールドプラグ35aが射出ノズル35から抜け出ない圧力で前進する。逆流した溶湯は、溶融シリンダ20の中から溢れる分が不活性ガス貯留部60の中に収容される。溶湯の逆流は、好ましくは、計量を実施する前に毎回実施されるとよい。
【0036】
プランジャ32は、溶湯を射出したあと、射出シリンダ30の中に少しの溶湯を残して、例えば、射出シリンダ30の中の連通路40の射出シリンダ側開口40bの手前で停止する。溶湯を射出したあとに射出シリンダ30の中に残る溶湯の量は、クッション量と称される。連通路40を開き、プランジャ32をさらに短い距離だけ前進させて、射出シリンダ30の中の溶湯を連通路40を通して溶融シリンダ20の中に逆流させる。
図1に示す実施の形態において、プランジャ32は、連通路40の射出シリンダ側開口40bを超えて前進しない方が好ましい。逆流する溶湯の容量は少ない。逆流する溶湯は、弁棒50の先端部に冷却されて、連通路40の溶融シリンダ側開口40aおよびその周囲の弁座41に付着している溶湯の半固化物を速やかに排除する。
【0037】
排除された半固化物は、逆流してくる溶湯および移動した先の周囲の溶湯に加熱されて速やかに再び溶湯に溶融する。排除された半固化物は、速やかに再び溶湯に溶融して、溶融シリンダ20から連通路40を介して射出シリンダ30に流れる溶湯の移動を妨げない。弁座41から弁棒50を離す距離を計量時よりも小さくすることで、逆流する溶湯が弁座41と弁棒50の間から勢いよく噴出して、溶湯の半固化物をさらに効率よく排除することができる。弁座41から弁棒50を離す距離は、連通路40の内径の20%以下の距離、好ましくは、連通路40の内径の10%以下の距離とするとよい。例えば、弁座41から弁棒50を離す距離は、連通路40の内径が10mmの場合、2mm以下、好ましくは、1mm以下であるとよい。溶融シリンダ20の中から射出シリンダ30の中に向けて連通路40の中を通る溶湯の流れが良くなる。特に、溶湯が自重または弱い圧力で連通路40を通して射出シリンダ30の中に移動する場合でも溶湯が速やかに移動を開始できる。さらに、半固化物は、前回の半固化物および酸化固化物を強制的に排除してから新たに生成されることで、軟化状態を一定に保つことができる。半固化物の一部が硬くなることで逆流防止状態の弁座41と弁棒50の間に隙間ができてしまうことを防止できる。
【0038】
射出シリンダ30の中において連通路40の射出シリンダ側開口40bの付近に溜まった各種ガスの一部は、開かれた連通路40の中を上昇して溶融シリンダ20の中に排出される。しかし、少量の各種ガスは、射出シリンダ30の中に残留する。例えば、射出シリンダ30の中において連通路40の射出シリンダ側開口40bから離れたところに溜まった各種ガスは、連通路40が開かれただけでは移動できない。また例えば、連通路40が開いたあとすぐに計量が開始されると、射出シリンダ30の中に流れ込む溶湯によって、各種ガスは、射出シリンダ30の中において連通路40から離れた位置に移動させられる。逆流する溶湯は、射出シリンダ30の中に存在する各種ガスを溶融シリンダ20の中に強制的に移動させる。射出シリンダ30の中の各種ガスは、排除される。各種ガスが排除されたあとの射出シリンダ30の中に溶湯が計量される。金型装置8に射出される溶湯は、各種ガスを含まない。したがって、成形品9に巣が発生することを防止できる。また、射出シリンダ30の中に各種ガスが無いので溶湯を計量する精度が向上する。計量される溶湯は、計量毎の容量のばらつきがなくなる。
【0039】
溶湯を射出したあと、溶湯を逆流させる前に、
図6に示すように、連通路40を開いて、ビレット22を前進させて、プランジャ32を後退させて、溶融ユニット2の中から射出シリンダ30の中に所定の容量の溶湯を補充してもよい。補充される溶湯は、例えば、計量される容量と同じでもよい。補充される溶湯は、例えば、プランジャ32が後退可能な限界位置まで後退して、射出シリンダ30の中に収容できる最大容量でもよい。補充される溶湯は、射出シリンダ30の中に収容できる最大容量を超えなければ必要な容量を設定できる。弁座41から弁棒50を離す距離は、可能な限り大きくすることで、特に射出シリンダ30の中に溶湯を計量する際または射出シリンダ30の中から各種ガスを溶湯と一緒に排除する際に、速やかに溶湯を溶融シリンダ20と射出シリンダ30の間で移動させることができる。弁座41から弁棒50を離す距離は、連通路40の内径以上の距離とするとよい。例えば、弁座41から弁棒50を離す距離は、連通路40の内径が10mmの場合、10mm以上であるとよい。
図7に示すように、逆流する溶湯は、不活性ガス貯留部60の中に収容される。逆流する溶湯が多ければ、連通路40の溶融シリンダ側開口40aおよびその周囲の弁座41に付着している溶湯の半固化物を確実に排除することができる。逆流する溶湯が多ければ、射出シリンダ30の中に存在する各種ガスを溶湯と一緒に溶融シリンダ20の中に各自に移動させることができる。射出したあとに溶湯を補充する場合には、ビレット22を供給して溶融シリンダ20の中の溶湯を供給してもよい。また、射出したあとに溶湯を補充する場合には、予め溶融シリンダ20の中に余剰の溶湯を準備して不活性ガス貯留部60の中に予め補充する溶湯を収容しておいてもよい。
【0040】
溶湯を射出したあと、射出シリンダ30の中に溶湯を補充せずに、少ない溶湯を溶融シリンダ20の中に逆流させてから射出シリンダ30の中に溶湯を補充して、再び溶湯を溶融シリンダ20の中に逆流させてもよい。溶湯を補充したあと溶湯を逆流させることを繰り返し実施してもよい。溶湯の逆流を複数回繰り返すことで、連通路40の中を通る溶湯の流れがさらに良くなり、射出シリンダ30の中に残留する各種ガスを確実に排除することができる。各種ガスは、連通路40が開くことで、連通路40の中を上昇して溶融シリンダ20の中に移動することもできる。各種ガスは、射出シリンダ30から溶融シリンダ20に逆流する溶湯で強制的に溶融シリンダ20の中に移動させられる。各種ガスは、連通路40の中の溶湯が射出シリンダ30から逆流する溶湯で置換されることで、溶融シリンダ20の中に移動しやすくなる。
【0041】
溶湯を逆流させたあとに計量される溶湯は、例えば、
図8に示すように、不活性ガス貯留部60の中に収容された溶湯でもよいし、ビレット22を前進させて溶融シリンダ20の中から押し出される溶湯でもよいし、それらをあわせた溶湯でもよい。溶湯を逆流させたあとに計量された溶湯は、各種ガスを含んでいない。1回目の成形サイクルで成形された成形品でも巣の発生を防止できる。
【0042】
また、
図9に示すように、射出装置1は、計量される容量よりも大きな容量の溶湯を射出シリンダ30の中に補充して、
図10に示すように計量される容量の溶湯を射出シリンダ30の中に残して、射出シリンダ30の中から溶融シリンダ20の中に溶湯を逆流させてもよい。射出装置1は、溶湯を逆流させる動作を完了させた時点で、溶湯を計量する動作も完了させることができる。例えば、射出装置1は、まず溶湯を射出し、つぎに溶湯を逆流し、つぎに計量する容量よりも大きな容量の溶湯を補充し、最後に計量する容量の溶湯を残して溶湯を逆流させることができる。
【0043】
図1に示す逆流防止装置5は、溶融シリンダ20の中に弁座41と弁棒50を有しているので、溶湯を逆流させるときに、連通路40の溶融シリンダ側開口40aおよびその周囲の弁座41に付着する溶湯の半固化物を連通路40の外に排除しやすい。しかしながら、逆流防止装置5は、
図1に示す実施の形態に限定されない。本発明は、図示省略するが、射出シリンダ30の中に弁座と弁棒を有する逆流防止装置で射出シリンダ30の中から連通路40を開閉する構成でも適用が可能である。射出シリンダ30の中に弁座と弁棒を有しているので、溶湯を補充するときに、連通路40の射出シリンダ側開口40bおよびその周囲の弁座に付着する溶湯の半固化物を連通路40の外に排除しやすい。また、本発明は、射出シリンダ30の中の各種ガスを含む溶湯を溶融シリンダ20の中に逆流させることができれば、図示省略するが、連通路40の途中で連通路40を遮断する逆流防止装置、例えば、ロータリバルブなどで構成されていても適用が可能である。
【0044】
溶融ユニット2は、
図1に示す実施の形態に限定されない。例えば、溶融シリンダ20に替えてバケット型の溶融炉を採用してもよい。溶融炉は、底面に連通路40の一端を接続する。溶融炉の底面に形成される連通路40の溶融炉側開口の周囲は、逆流防止装置5の弁座41となる。連通路40の他端は、射出シリンダ30に接続される。未溶融の軽金属材料は、溶融炉の上方から溶融炉の中に投入される。溶融炉の溶湯は、当該溶湯の液面の上方に不活性ガス供給装置6から供給される不活性ガスで覆われるとよい。溶融炉は、溶湯の上方を覆う蓋を有してもよい。蓋は、上方から未溶融の軽金属材料を溶融炉の中に投入するための投入口が開いていてもよい。蓋の内側でかつ溶湯の液面の上方に不活性ガスを充満させるとよい。溶融炉の容量は、射出シリンダ30の中から逆流する溶湯を一時的に収容しても溶湯が溶融炉から溢れ出ることがない十分な容量を有する。また、溶融炉は、水平方向に横長で、先端側の底面に連通路40の溶融炉側開口が形成されて、後端側に未溶融の軽金属材料が投入される投入口が形成されてもよい。横長の溶融炉は、後端から先端に延び少なくともそれら両端を除いた内部を仕切る仕切板を設けて、攪拌装置で仕切板の周囲を溶湯が循環するように溶湯を攪拌させてもよい。また、溶融炉は、外部で軽金属材料を溶融された溶湯が供給されてもよい。
【0045】
射出装置1は、前述の実施の形態に限定されない。例えば、制御装置7は、射出ユニット3が備えているプランジャ32が前進または後退する位置を検出する位置検出器を用いて、溶湯を逆流させてから溶湯を計量したあと連通路40を閉じた状態におけるプランジャ32の計量位置を検出し、計量位置から所定の圧力で射出シリンダ30の中の溶湯を圧縮した状態におけるプランジャ32の前進位置を検出する。各種ガスは、溶湯に比べて圧縮されやすい。制御装置7は、計量位置と前進位置の差分を演算し、差分が予め設定されている基準値を超えて大きいと、射出シリンダ30の中から各種ガスが適切に排出されておらず、射出シリンダ30の中に各種ガスが残っていると判定して、射出装置を停止するようにしてもよい。また、制御装置7は、計量位置、前進位置、または、判定結果のうちの必要なデータを成形サイクル毎に記憶して、数値、グラフあるいはリストなどの各種形式で表示装置に表示させてもよい。溶湯に含まれる各種ガスは、溶湯に比べて圧縮されやすい。所定の圧力で前進するプランジャの前進位置によって、溶湯に含まれる各種ガスの量を測定する。溶湯に含まれる各種ガスは、成形品に巣を発生させし、成形品の重量がばらつく原因となる。前記判定方法は、各成形品の重量を測定するよりも各成形品に含まれる各種ガスの量を示すデータの測定および管理を容易にする。
【0046】
本発明は、例えば、キャビティ空間にエアベントが接続されている金型装置8、およびキャビティ空間に真空引き装置が接続されている金型装置8にも適用が可能である。また、本発明は、射出ノズル35を有する射出装置1、および、射出シリンダ30の先端が金型装置8に直接接続されている射出装置1にも適用可能である。特に本発明は、真空引き装置が接続されている金型装置8と、射出ノズル35から溶湯を射出する射出装置1とを用いることで、射出ノズル35を閉じることで金型装置8のキャビティ空間の各種ガスを真空引き装置で容易に排出することが可能であって、さらに射出装置1の射出ユニット3の中の各種ガスも容易に排出することが可能であるので、成形品9の中の巣の発生を抑制する効果を高めることができる。
【0047】
以上説明した本発明は、この発明の精神および必須の特徴的事項から逸脱することなく他のいろいろな形態で実施することができる。したがって、本明細書に記載した実施例は例示的なものであり、これに限定して解釈されるべきものではない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、軽金属の射出成形に利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 軽金属射出成形機の射出装置
2 溶融ユニット(供給ユニット)
3 射出ユニット
4 連結部材
5 逆流防止装置
6 不活性ガス供給装
置
7 制御装置
8 金型装置
9 成形品
20 溶融シリンダ
21 縮径部
22 ビレット
23 ビレット押出装置
25 液面センサ
30 射出シリンダ
31 縮径部
32 プランジャ
33 プランジャ駆動装置
35 射出ノズル
35a コールドプラグ
40 連通路
40a 連通路の溶融シリンダ側開口
40b 連通路の射出シリンダ側開口
41 弁座
50 弁棒
50a 冷却配管
51 弁棒駆動装置
60 不活性ガス貯留部
60a 不活性ガス供給口
60b 不活性ガス排出口
70 射出制御ユニット
【要約】
【課題】軽金属の成形品に発生する巣を防止する。射出ユニット(3)に速やかに溶湯を供給する。
【解決手段】供給ユニット(2)の軽金属材料の溶湯を連通路(40)を通して射出ユニット(3)に供給し、射出ユニットのプランジャ(32)を後退させて所定容量の溶湯を計量し、連通路を閉じ、プランジャを前進させて射出ユニットの溶湯を射出ユニットの射出ノズル(35)を通して金型装置(8)の中に射出する軽金属射出成形機の射出装置およびその射出制御方法であって、溶湯を射出したあと溶湯を計量する前に、射出ユニットの中の溶湯が射出ノズルから出ない圧力でプランジャを前進させ、開いた連通路を通して射出ユニットの中の少なくとも一部の溶湯を供給ユニットに逆流させる。
【選択図】
図5